Title
患者からの攻撃的行動への看護実践を支える看護管理の
検討
Author(s)
鈴木, 啓子; 大城, 凌子; 永田, 美和子; 石野, 麗子; 金城, 祥
教
Citation
名桜大学紀要 = THE MEIO UNIVERSITY BULLETIN(14):
245-255
Issue Date
2009-06-30
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/8581
才.桜 人17=糸Lt柴14シナ 6-30(2009)
患者か らの攻撃的行動への看護実践を支える
看護管理の検討
鈴木啓子
■)
、大域凌子
1)、永 田美和子
1)
、石野麗子2
)
、金城祥
数 日 1)名桜大学人間健康学部看護学科、2)聖隷 ク リス トファー大学看護学部 要 旨 本研究の 口的は、医療機 関を利用す る患者 に よる攻撃的行動 に焦点 を当て、患者 、看護師双 方の安全お よび安心感 を確保 す る効果的看護 実践 を支 える看護管理 について検討す ることであ る。看護 部長お よび看護師長 を対象に院 内にお ける患者か らの攻撃的行動 に対す る看護 実践 を 支える看護管理について半構造的面接調査 を実施 し、内容 を質的に検討 した。その結果 、患者 か らの攻撃的行動の 予防お よび危険防止のための看護実践 を支 えるための看護管理 と しては、 ①攻撃的行動 に関す る正 しい知識や情報 を院内で共有す ること、② 医療 チームの信頼 関係 を維 持す ること、③精神症状 に適切に対応 できる医療チー ムであること、(彰ケア困難 な患者 の コン サルテー シ ョンを依頼 できる精神科 医療機 関 との連携 を図 ることの必要性 が明 らかになった。 また、攻撃的行動が起 こった場合 には、(丑患者か らの攻撃的行動 を受 けたスタ ッフ-の対応 、 ②攻撃的行動 を行 なった患者 -の対応 、③イ ンシデ ン トの振 り返 りも含 めた看護 チー ムあるい は医療チー ムと しての取 り組みの必要性 が明 らかになった。以上の よ うに、組織 として患者 か らの攻撃的行動-の理解 と対策への共通認識 を持 てることが、個 々の看護師お よび看護 チー ム による効果的看護実践の其盤 にな っていることが確認 された。A St
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Keiko Suzuki■
)
,Ryoko Oshirol'
,M iwako Nagata】'
,
Reiko Ishin
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2),YoshinoriKinjoり1)FacultyofHumanHealthSciences,MeioUniversity 2)FacultyofNursing,SeireiChristopherUniversity ABSTRACT
The purpose ofthis research is to clarify nursing supervision efforts which supporteffectlVenurSingan densurethesafetyofbothnursesandpatientslntheface
ofpatlentViolence. A semi-structured interview study wasconducted,targetlng a
chiefnurseandaheadnurse,SeveralkeysupervislOnObjectiveswereidentified:① To sharecorrectinformatlOn and knowledge ofpatientattacks in a hospital,② To malntain trustworthy relationshlpSin a medicalteams,③ To beabletocopewlth patients一mentalconditionsappropriately,④ To havecooperatlVerelatlOnShlpSWith mentalinstltutionsexperiencedlnthreatingdifficultpatients.
When attacks occur,the followlngS Steps are necessary:① To care for the attackedstaffs,② Todealwiththeattackingpatients,③ TotakeactionasamedlCal ornurslng team,includlng adocumentedreview oftheincident.
I
twasconfirmed thathavlng aCOmmOn understanding ofpatientattacksasan organlZatlOn isthe bas上sforeffectivenurslng,Whetherbyanindividualnurseoranursingteam.-鈴木啓子 、大城凌子 、永 田美和子、石野麗子 、金城祥教
Ⅰ.はじめに
近年、医療機 関において心身の健康問題 を抱 え治療や ケアを必要 とす る人々か ら、ケア提供 者 が攻撃や暴力 を受 ける リス クが高ま ってい る。2
0
0
8
年4
月 に全 日本病院協会か ら 「院内暴力 な ど院内 リス ク管理体制 に関す る医療機 関実態調査」の結果が報告 されたが、回答 した1
1
0
6
医 療機 関の5割 で院内暴力 の事例 を経験 し、警察 -の届 け出は5.8%、対策マニュアルの牽備 され ている施 設は1
6
.
2
別こ留 まってい るこ とが明 らかにな っている りO唐津は医療安全管理責任者 の立場か ら、医療機 関にお ける組織 的な対策の必要性 を指摘 し2)、また、元警察官で現在病院 渉外担 当 として院内の暴力 、ク レーマ-対応 に当た っている横 内は、質の高い医療サー ビスの 提供 のためにも、ケアに当た る医療者 自身の安全 を施設経営者 、看護管理者 が守 る対策 を講 じ る必 要性 を指摘 して い る3)。 また、 高橋 は、看護 管理者 と して院 内暴 力事例 につ いてRoot CauseAnalysュs(根本原 因解析 、以下RCT) 4) を用 いて分析 し、対策 を立て取 り組 んだ経験 か ら、組織 が職 員 を守 る とい う体制づ くりの重要性 を指摘 してい る5)。 これ らは、いずれ も社 会的な犯罪 に もつなが るよ うな事例や事件 を踏 まえての ものであ り、われわれが調査 したよ う な臨床現場の中で、 日常的に看護者や介護 スタ ッフが出会 う患者か らの攻撃や暴力に対す る対 応 について管理的視 点か らの検討 は充分 され ていなか った。 そ こで、今回、患者 か ら看護師が 受 ける攻撃的行 動(例 :暴言、噛む、たた く、蹴 るな ど)に焦点 をあて、患者 と看護師双方の安 全お よび安心感 を保持す る上 での効果的看護 実践 を支 える看護管理 とは何かを明 らかにす るこ とを 目的 に研 究 に取 り組 んだ。Ⅱ. 研究 目的
本研 究の 目的は、医療機 関 を利用す る患者か ら看護師が受 ける攻撃的行動(例 :暴言 、噛む、 たた く、蹴 るな ど)に焦点 をあて 、患者 と看護師双方 の安全お よび安心感 を保持す る上での効 果的看護実践 を支 える看護管理 の内容 を明 らかにす ることであるDⅢ.用語 の操作的定義
今回の調査対象 は 一般病院 を利用 してい る患者 を対象 に した看護実践 を支 える看護管理 につ いての調査 を実施す るが、 これ まであま り注 目され て こなかった攻撃的行動 を受 ける看護師の 側 に焦 点 を当て て検討 す るため、 本研 究 では、 医療機 関 を利 用す る患者 に よる攻 撃的行動(aggressivebehavior)を、 「直接的 に他者 、 自己 自身 あ るいは物 に向け られ た有害な行動」 と し、 これ には身体的攻撃的行動(例 :叩 く、殴 る、蹴 るな ど)、言語的攻撃的行動(例 :誹誘、中 傷 、威嚇 な ど)、そ して性 的攻撃的行動(例 :卑殺 な発言 、性的 いやが らせ 、望まない身体的接 触 な ど)が含 まれ る と した。
Ⅳ.
研究方法
1.対象者の選定手続 き-2
4
6-患者からの攻撃的行動への看護実践を支える看護管理の検討 本研究の趣 旨を理解 し研 究協力の承諾 の得 られたA県 内にある一般 リハ ビリテー シ ョン病院 の看護部長お よび看護 師長を対象 に院内にお ける患者 か らの攻撃的行動 に対す る看護 実践 を支 える看護管理 について半構造的面接調査 を実施 し、内容 を質的に検討 した。各々の対象者 に個 別 に研究協力依頼書お よび研究協力 同意書 を用いて実施 した。 2.面接およびデータ分析方法 事 前に行 った参加観察 による病棟 の特性や環境 を理解 の上で、看護 師が受 けた患者 か らの攻 撃的行動の-の効果的看護 実践 を支 える看護管理 について面接 ガイ ドを用 いて半構成的面接 調 査 を実施 した。個々の対象者 の語 りか ら逐語録 を作成 し、患者 と看護 師双方 の安全お よび安心 感 を保持す る看護実践 を支 える看護 管理 に関連す る部分 を意味のま とま りごとに抽 出 し、意味 内容が類似共通す るものグループ化 し、その内容 を要約 したO要約 の抽象度 を比較 しなが らグ ループ化 と要約 の作業 を繰 り返 し抽象度 を整 えた。次 に統合分析 にて個別分析 で得 られたすべ ての要約 内容 を、攻撃的行動への効果的看護実践 とは何 か とい う視点か らカテ ゴ リ化 した。結 果の妥当性 を確保す るために研究者 間での継続的検討 を重ね、また、信頼性 を高めるために、 分析結果を対象者 にフィー ドバ ック し意見 をもらい分析 を進 めた。 3.研究 に当たっての倫理的配慮 研 究協力者 に対 しては、研究依頼文書 を作成 し、研 究の趣 旨お よび 目的、研 究-の参加 お よ び 中止 は 自由であること、参加協力の有無 によ り不利益や 問題 は一切生 じない こと、プ ライバ シーが守 られ ること、研究成果の公表 について伝 えた。協力の承諾の得 られた対象者 には、面 接 当 日、再度文書お よび 口頭 で研 究の概要 と対象者 の権利 の擁護 について説明 し、研究 協力同 意書に署名 をもらい、研 究者、対象者双方で保管す るもの とした。 なお、本研 究は名桜大学 人 間健康学部研究倫理審査委員会 にお ける倫理審査 を受 け、研究倫理 に関す る承認 を得た後 に、 研究に着手 した。
V.
結果 1.対象者の概要 対象者は看護部長A
氏(
6
0
代 、女性)、回復期 リハ ビ リテー シ ョン病棟 師長B
氏(
4
0
代、女 悼) である。 臨床経験年数 はそれぞれ38年、15年 であった。 面接 回数 は、A氏3回面接総時間 数 は計4
時間1
0
分であった。B
氏6
回6
時間4
0
分であった。 2.患者か らの攻撃的言動に対する効果的看護実践を支える看護管理 について ここでは、対象者 である看護部長お よび看護師長が、何が リハ ビリテー シ ョン病院で患者 に よる攻撃的行動 をエスカ レー トさせ る と認識 しているか医療者側 のかかわる問題 についての認 識 に焦点 を当て、その後、攻撃的行動-の効果的看護 実践 を支 える看護管理 につ いて、そ して 患者か らの攻撃的行動が起 きた ときの対応 について述べ る。 カテ ゴ リは 【 】、対象者 の語 り は√
ノで表現 し述べ る。 247鈴木啓子、入城唆子、永田美和子、石野麗子、金城件数 1)患者 に よる攻撃 的行 動 をめ ぐる問題 の認識 につ いて 高齢者 に よる攻 撃的行 動 をェ スカ レー トさせ る看護 者側個 々の要因 と しては、 【高齢者 の不 安や 混乱 を気 づ か な い声 か け】、 【高齢 者 の行 動変容 を意 図 した説 明や説 得 】
、
【身体 的距離 が 近 い 関わ り】
、
【高齢 者 の安全 を確保 す るた めの行 動 を制 限す る介 入 】、【攻 撃的行 動 を受 けな い とい う誤 った 自信 】が あが り、 これ らは、精神科 にお ける看護管理経験お よび臨床経験 のあ る対象者達 が、 自らの経験お よび 同僚 の経験 か ら明確 に語 ってい る内容 であった。 た とえば、 一般科 か ら転職 してきたばか りのベ テ ラン看護 師が、高齢者 の不安や混乱 につ いてのアセ ス メ ン トが不十分 であ った り、熱 心 にケアす るあま り、不用意 に顔 を近づ け高齢者 の話 を聞 こ うと した り、また、高齢者 に看護者側 の思 うこ とを熱 心 に伝 えるあま り、説得 して しま ってい る状 況 で、高齢者 の攻撃的行動 がエ スカ レー トす る具体的例 が挙が っていた。 具体的 な語 りは下記 の とお りである。 r台
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、
【効果 的 薬物 療 法 の選 択 の タイ ミン グのずれ】
、
【専 門医- の コンサル テー シ ョンの遅れ】
、【拘 束の手 順 の未整備 】が あが った。 具体的 な語 りは下記 の とお りで あ る。 r# 桝 カーら番が暑 frtさに
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患者 か らの攻撃的行動-の効果的看護実践 を支 える看護管理 患者か らの攻撃や暴力に対す る効果的看護 実践 を支 える看護管理 には、予防的看護 実践 を支 える管理 と、攻撃や暴力が起 きて しまった時あるいは事後の対応 とい う危機発生時の看護 実践 を支える管理の2つの内容 に整理 して述べ る。 (1)予防 としての効_果的看護実践 を支 える看護管理 患者か らの攻撃や暴力 を予期 して 日常の組織の中で、予防的看護実践 を実施す るために必要 な管理 と して、【患者 に よる攻撃的行動- の正 しい認識 の共有 】、【患者 に よる攻撃的行動 に関 す る情報 の共有 】、【患者 に よる攻撃的行動- の効果 的対応 につ いての知識 の共有 】、【医師 と 看護者 ・他 コメデ ィカル ス タ ッフ との信頼 関係 の促進 】、【精神 症状-の対応 が適切 にで きる 医療チー ムの存在 】、【ケアの困難 な高齢者 を依頼 で きる精神科 医療機 関 との連携 】の6つが 語 られた。 高齢者 による攻撃的行動-の効果的対応 についての知識 については、た とえば、生 活 リズムの乱れや昼夜逆転が夜間せん妄 の発生に影響す ることか ら、生活 リズムの改善に、看 護師や介護スタ ッフが取 り組 むわけではあるが、医師 も薬物療法の調整や患者-の説 明な どで 先の同 じ目標 を 目指 してかかわ るものでなければ、効果的な改善 につ なが っていかない こ とが 語 られていた。 また、精神症状への対応 が適切 にできる医療チー ムの存在 は非常に重要で、看 護師だけが精神科の臨床経験があ り看護上の問題 -の対応 が適切 にできたか ら精神症状 が改善 され るのではな く、医師が精神的症状-の適切 な薬物治療ができていない場合、高齢患者の場 合、混乱や不穏が長引き、益 々セル フケアやQOLが低下す ることに繋が りかねない問題 も指 -249-鈴木啓子、大城凌子、永田美和子、石野麗子、金城祥教 摘 され ていた。 【患者 に よる攻 撃 的行 動 - の正 しい認識 の共有 】、 【患者 に よる攻 撃的行 動 に 関す る情報 の 共有 】、 【患者 に よる攻 撃 的行動 - の効果 的対応 につ いて の知識 の共有 】は、 日 ごろのケアにつ いて医療 チー ムにお け る情報 の共有 とその評価 、また、研修等 を活用 した教育 に よ り、患者 か らの攻撃 ・暴力 の問題 - の理解 を深 め るこ とを促進す る必要性 を示 していた。 具体 的な語 りは次 の通 りで ある。 在倣 暴力 を受 〆ナf=ノ女人/
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をこttLT、bLIに g'分力)つ てあら之acfjに/Tつ ていっ jFL-A/ですソ (%p-者AbG) 【医師 と看護者 ・他 コメデ ィカル ス タ ッフ との信 頼 関係 の促進 】、 【精神 症状 - の対応 が適 切 にで きる医療 チー ムの存在 】のカテ ゴ リは、院 内にお ける医療 チー ムの連携 を さ していた。 了やぼり、岸 樹 邑コン/iE7-
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にな っ Tいaカ)t思 いま すニJ (i義孝紡寿ノ 3)攻 撃行動や暴力発 生後 の看護 実践 を支 える管理 患者 に よる攻撃的行 動 が発 生 した後 の看護 管理 と しては、表 1の とお りであ る。 これ らか、 対象 とな った看護 部長 と師長の語 りよ り整理 され た内容 で ある0 - 250-患者からの攻撃的行動-の看護実践を支える看護管理の検討 表1 患者 による攻撃 的行動が発生 した ときの看護管理の内容 対象 三異体的内容 -;三…≡ 攻撃的行動 を受 けたスタ ッフ-の対 応 ① スタ ッフにつ い ては、怪我 の状 態 に もよるが、速や か に受診 を して もらい、必要な治療及び医療 的処置 をす る ② スタ ッフの状況に よっては勤務 の調整 をす る (参本人-ねぎ らいの言葉 を管理者 もかける (彰本 人 に否 が あ ったかの よ うな状況 につ いての問 いか けや情報収集 は しない (9今後 、 同 じよ うな状 況が生 じる可能性 の あ る場合 にお け る、対応 に ついて本人 を含 めて看護 チーム内で検討 をす る 攻撃的行動 を行 な (D問題 が深刻 な場合 には、精神科 医の コンサル テー シ ョンを依頼 し、 精神的症状 に関す る診察お よび評価 を して も らう ②本人が判断能力があって この よ うな問題 を引き起 こ してい るのであっ た ら、本 人 、家族 に対 して、毅然 とした態度 で事務長 、看護 部長 が 面談 し、医療契約 の解除 を伝 える つた患者-の対応 (診本人 の判断能 力が ない状態 で起 きた問題 であれ ば、今 後 の リスクア セ スメ ン トを した上で、 閉鎖的環境 にお けるケアが適切 であれ ば、 精神科病院-の転院 を検討す る 径)ケア上 の問題 や課題 が あ り、今後 の対策 を検討 で きるので あれ ば、 医療チーム内で再度 ケアプ ランお よび治療計画の検討 を行 な う 6)家族 に も患者 による言動にいて連絡報告 を してお く 看護チームあるいは医療チーム と しての取 り組み (Dア クシデ ン トの経緯 については、本人 を責 め るので はな く、他 のス タ ツフ も受 ける可能性 が あった 出来事 と して、組織 の問題 と して検 討す る ②検討 で きるよ うにア クシデ ン ト .イ ンシデ ン トレポー トを積極 的 に 皆で書 き残す よ うにす る (謬攻 撃的行 動 に よるア クシデ ン ト .イ ンシデ ン トにつ いては病 院 全体 で把握す る ④個 々の患者 の不穏 時の処方指示 内容 について医師 と話 し合 う 6)不穏 時の対応 につ いての医師 との連携 の必 要性 とその依頼 は、院長 -依頼 し、院長か ら医師たちに伝 えて もら う (砂個 々の不穏 事例 につ いては、主治医 を中心 に医療 チー ム内で対応方
Ⅵ.
考察
本研 究では、精神科 臨床経験 を含む看護経験 の豊富な看護部長お よび看護 師長各 1名 を対象 に、患者か らの攻撃的行動 に対す る看護 実践 を支 える看護管理 についての面接調査結果 につい て詳細に分析 した。対象者 の語 りよ り、患者か ら看護師が受 ける攻撃的行動 をめ ぐる効果 的看 護実践 を支える看護管理者 の攻撃的行動や暴力 -の認識 の重要性 と、攻撃的行動や暴力-の予 防的看護実践 を支える看護管理 と攻撃的行動や暴力が発生 して しまった ときの事後 の対応 とし ての看護実践 を支 える看護管理 に大 き く分 け られ た。本校 では、 この3点について検討す る。 1.患者か らの攻撃や暴力への看護管理者の認識 について 今 回 、 調査 協 力者 で あ る看 護 師長 は 、 か つ て は患者 か らの攻 撃 や 暴 力 的言 動 の 問題 を - 2 5 1-鈴木啓子、大城凌子、永田美和子、石野麗子、金城祥教 Pulsford D(2006)6)が指摘 してい るよ うに、取 り上 げるこ と-の抵抗感 を強 く抱いていた。 それが様 々な精神科看護領域か らの攻撃や暴力 の問題 に関す る情報や 自身の研修経験 な どを通 して大き く変化 し、医療チーム内での問題 と認識 し、きちん と対応す ること自体が、患者のQ O Lを尊重 したケアを提供す る上では不可欠であるとい う認識 に至った ことが明 らかになった。 患者 か らの攻撃 は看護 師の受 け止 め方に よっては暴力 にもな りうるが、それ をそ う受 け とめる 看護師 白身 の認識 がおか しい と看護 師側 の問題 として しま うのではな く、また、身体的な外傷 があって初 めて暴力 と意味づ けるのではな く、た とえ原 因や理 由が様 々な疾患や病状 によるも の とはいえ、看護師 自身 の心身 に深刻 な影響 を与 える可能性 があることを認識 していた点が共 通 していた。 また、患者 に よる攻撃的行動 をエ スカ レー トさせ る看護者側個 々の要因 としては、【患者 の 不安や混乱 を気づ かない声か け
】
、【患者 の行動変容 を意 図 した説明や 説得 】、【身体的距離が 近 い関わ り】、 【患者 の安全 を確保す るた めの行動 を制 限す る介入 】、【攻撃的行動 を受 けない とい う誤 った 自信 】があがった。 これ は、調査協力者 である看護管理者 が精神科臨床経験 を有 し、精神症状のアセ スメン ト能力や、精神 的に不安定な患者や混乱や興奮のエスカ レー トす る 段階に合 わせ た コ ミュニケー シ ョン能力、そ してそ もそ もの患者 か らの攻撃や暴 力についての 正 しい理解 が、患者 の攻撃的行動 に影響す る看護者側 の要因 として認識 しているため といえる。 協力者 の語 りか らは、患者 か らの攻撃や暴力 に関す る正 しい知識 をもつ ことと、その段階に合 わせ た対応 の具体的方法、特 に コ ミュニケー シ ョン技術 について学ぶ経験 を持つための教育的 支援 の必要性 が示唆 され た。 また、 医療 チー ムの要 因 と して は、 【患者 の危機 状況 に関す るサイ ンの キャ ッチの遅れ 】、 【効果 的薬物療 法 の選択 の タイ ミン グのずれ 】、 【専 門医- の コンサル テー シ ョンの遅れ 】、 【拘束の手順 の未整備 】があがったが、今回の協 力者 の勤務す る施設 においては、かつては問 題 があった内容 も、効果的な看護実践 のために医師 との連携 を と り、かつ、薬物療法について は、医師 と看護 師が ともに率直に話 し合 える機会 を必要時 もて ること等の医療チー ム内での連 携の重要性が語 られ、そ うした ことを個々のスタッフが 自由にできるよ うに看護師長が看護チー ム内でスタ ッフの支援 にあた り、 さらに、師長 の支援 を看護部長が当たってい ることによ り、 医療 チーム内で他職種 と連携 を とりなが ら、攻撃や暴力の問題 に対応 できていることが明 らか になった。2.
攻撃的行動や暴力への予防的看護実践 を支 える看護管理 患者 か らの暴言 ・暴力 とい うと既述 した よ うに、悪質なク レーマ-や悪意 をもった人間によ る攻撃や暴力行為 が対象 と考 え られやす く、看護管理者 の対策 も主 として、組織的な対策 とし てはそ うした危険性 の高い事態-の対応策が中心 とな りやすい。 ところが、看護者 が 日々底面 す る患者 か らの攻撃的行動や暴力の問題 は、主に入院 している高齢患者 による攻撃や暴力の問 題 であ り、その多 くは 「ひっかかれ る」 「つね られ る」 「かまれ る」 「たたかれ る」 な どの行為 が含 まれ 、あま りに も 日常的に生 じてい るために、 しば しば大 した ことではない と認識 され こ とが多いO また、仕事 上は些細 な不便 さであ り、攻撃 を受 けているスタ ッフ間で も共有 され る ことはない。 三木 ら(2008)は、看護者 が受 ける暴言 ・暴力で苦慮 していることの特徴 として、 毎 日繰 り返 され回避 できない こと、突発的で 予測が困難 であること、暴 力のために必要なケア -252-患者からの攻撃的行動-の看護実践を支える看護管理の検討 ができない こと、ケア時の暴力 -の対応方 法がわか らない こと、そ して、認知症や不穏状態の 患者 に説明 しても理解 されず 、良い解決策 が兄いだせ ない こ とをあげている7)。 しか し、慢性 的で継続的に生 じる不快感や苛立ちは、ケア提供者 自身の高齢者-の対応 を攻撃的で高圧 的な ものに して しま う可能性 が大 き く、ケアの悪循環 を引き起 こ しかねないoGatesら(2005)ボ'は 似 た よ うな施設 において も攻撃的事例 の発生率は人 き く異なることを報告す る中で、攻撃性 に 対応す るスタッフの さま ざまなや り方が影響 してい ることを指摘 してい る。 木研究では、患者か らの攻撃や暴力 を予期 して 日常の組織の中で、予防的看護実践 を実施す るために必要 な管坪 として、【患者 に よる攻撃的行動- の正 しい認識 の共有 】、【患者 による攻 撃的行動 に関す る情報の共有 】、 【患者 に よる攻撃的行 動への効 果的対応 につ いての知識 の共 有 】、【医師 と看護者 ・他 コメデ ィカル スタ ッフとの信頼 関係 の促進 】、【精神症状 -の対応 が 適切 にできる医療 チー ムの存在 】
、
【ケアの困難 な高齢者 を依頼 で きる精神 科 医療機 関 との連 携 】の6つが語 られ た。 日ごろのケアにつ いて医療チー ムにお ける情報 の共有 とその評価 、ま た、研修等 を活用 した教育 によ り、患者 か らの攻撃 ・暴力の問題-の理解 を深 めることを促進 す る必要性 を示 していた。攻撃的行動や暴力-の効果的看護実践 を可能にす るには、看護者 を 対象に した暴力の問題 とその背景、効果的対応方法等についての教育的支援 、そ して、医療チー ム内での信頼関係 の促進 と、患者 の攻撃的行動お よび暴力に関連す る情報の共有、危機 の収束 が困難 な場合にお ける精神科医療機 関 との連携の必要性 が示唆 された。暴言 ・暴力 問題 を職場 の安全管理 として とらえる と同時に、
医療 を受 ける対象者 のケア として どの よ うなシステムが 整 っている と,適切 なケアを心身 ともに受 けることができるのかに関す る綿密 な検討 も、効果 的看護 実践 を可能 にす る上では求 め られ る。 3.攻撃的行動や暴力の発生後 の対応 としての看護実践 を支える看護管理 患者か らの攻撃的行動や暴力の発生後重要 とな る看護管理 として、被害者である看護者-の 対応 、加害者 である患者-の対応 、そ して、看護 チーム、医療機 関全体での今後の対応 に分か れ る。 吉川(2008)は、事態が発生 した ときには、被害者 を守 ることを最優先 し、迅速 に対応す る必要があることを指摘 してい る`り。本研 究で も管理者 が語 っていた よ うに、本人に否 があっ たかの よ うな状況についての問いかけや情報収集 は しない ことが強調 され ていた。 しば しば事 実関係 の聴取が必要 と言いなが ら、管理者側 の聞き取 りが二次的ダメー ジを与 えることがある 点には 卜分配慮す る必要がある。被害者 の心理 は想像以上に複雑 であ り、管理者 が被害者の陥 りやすい状況を知識 と して正 しく理解 してお くことの重要性 を、佐藤が指摘 している川)。被 害 者 は状況 を単純 に説 明できず、 自身 も未整理 な感情 を受容 で きなかった り、また、時間が経過 してか ら影響が大 き く出て くる場合 もあることか ら、 日常業務 に戻 った際の見守 りが看護管理 者 には求め られ るO攻撃的行動 ・暴力の発生後、被害者 への暴力の影響 と事情の確認 、精神的 ケア、充分な休息 と刺激や ス トレス要因か らの保護 な どについては対応 をマニ ュアル化 してお くことは望ま しいが、実際には対象者の状況に応 じた様 々な対応や ケアが必要 となるため、 律 に明示できない ことを認識 してお く必要がある。 また、 ・方で加害者である患者には、①問題 が深刻な場合には、精神科医のコンサルテーシ ョ ンを依頼 し、精神的症状 に関す る診察お よび評価 を して もら う、(塾本人が判断能力があって こ の よ うな問題 を引き起 こ しているのであった ら、本人、家族 に対 して、毅然 とした態度 で事務 - 25 3-鈴木啓子、大城凌子、永田美和子、石野麗子、金城祥教 長 、看護部長が面談 し、医療契約 の解 除を伝 える、③本人の判断能力がない状態で起 きた問題 であれ ば、今後の リス クアセ スメン トを した上で、閉鎖的環境 にお けるケアが適切であれば、 精神科病院-の転院 を検討す る、④ ケア上の問題や課題 があ り、今後の対策 を検討 できるので あれ ば、医療 チーム内で再度 ケアプ ランお よび治療計画の検討 を行 な うが、本研究では対応 と して整理 された。 本調査 において も対象者 が(丑か ら③ については看護管理者 も協力 し対応 しているが、 ここに 至 るまでの過程 において、臨床 の看護者 たちが 日々試行錯誤 を繰 り返 してい る中で、効果的ケ ア方法 について看護過程 を展 開 しなが ら、模 索 してい るのである。 (この内容 については別項 で述べた。) また、チーム としての対応 では、(丑ア クシデ ン トの経緯 については、本人 を責 めるのではな く、他 のスタ ッフも受 ける可能性 があった出来事 として、組織 の問題 として検討す る、②検討 できるよ うにアクシデ ン ト・イ ンシデ ン トレポー トには積極的に皆で書 き残す よ うにす る、③ 個 々の不穏事例 については、主治医を中心に医療 チーム内で対応方法 を検討す る等 に整理 され た。 これ らは、研 究者 らが精神科看護領域 にお ける組織的対応策 として整理 した内容11)とほぼ 同様 であ り、診療科 を超 えて、患者 か らの攻撃的行動 ・暴力の問題-の組織的対応 は活用でき ることが示唆 された。 3.本研究 の限界 と課題 について 本研 究の対象者 はネ ッ トワー クサ ンプ リングに よ り選定 され た対象者 であ り、地域や 医療 機 関の特性 、医療機 関を利用 してい る患者 の特性 、対象 となった看護管理者個 人の特性 が及 ぼ す研 究結果-の影響 を考慮すべ きである。 また、対象者数が少 ない とい うことも、結果 を一般 化できない研究の限界である と考え られ る。 また、今回は医療機 関を対象 に調査 を実施 したが、 さらに対象 を広 げて検討す ることも今後の課題 であるO
Ⅶ.
おわ りに
本研 究 は、近年 問題 になってい る 一般 の医療機 関 を利用す る高齢者 に よる怒 りや攻撃的言動 (例 :暴言、噛む、たた く、蹴 るな ど)に焦点 をあて、 高齢者 のQOL
を尊重 し、かつ高齢者 と 看護者双方 の安全お よび安心感 を保持す る看護実践 を支 える看護管理 とは何かを明 らかにす る ために、 リハ ビリテー シ ョン病院 に勤務す る看護部長お よび看護師長 を対象 に面接調査 を実施 した。本研 究で明 らかになったのは、先進的な取 り組み をここ数年 にわた り実施 してい る施設 の看護管理者 、看護師長 の語 りか ら抽 出 された内容 が中心であ り、対象者数 も少ない こと、ま た、対象者 が限定 され てい るため、ある地域 にお ける患者集 団や看護 師集 団に特徴的な結果が 導かれ た もの と考 え られ る。今後、 さらに対象者数 を増やす な どして、木研究で得 られた結果 に関す る妥 当性 の検証 を していきたい。謝辞
本研究 に御協力 を頂 きま した医療 関係者 の皆様 、特 に面接調査 に御協力 を噴きま した看護師 の皆様 には貴重な ご経験 を語 っていただ きま した こと感謝 申 し上げます。 - 254-患者か らの攻撃的行動への看護実践を支える看護管理の検討 最 後 に な りま した が 、本 研 究 の 一 部 は財 団 法 人 フ ラ ン スベ ッ ド ・メデ ィカル ホ ー ム ケ ア研 究 ・ 助 成 財 Ldか ら平成19年 度 の研 究 助 成 を受 け て 実施 した もの です . 関係 者 の 皆 様 に は 改 め て感 謝 申 し上 げ ます 。 引用文献 i.全 u木病院 脱会 ・院内暴ノ)等 に関す る実態調査 ワー キンググルー プ (2008):院内暴 力な どの院内 リ スク管舛体制に関す る医療機関実態調査. 2.倍喋秀治 (2009):医療現場の厳 しい状 況を考 える- 「院 内暴力 な どの院内 リス ク管理体制 に関す る 医療機 関実態調査」 を読んで,看護,60 (12),38-41. 3.横内昭光 (2OO9) 患者 と職員のための院内暴ノJ対処,看護,60 (12),42145. 4.高橋礼/-(2009):暴言 ・暴力対策マニュアル作成 職員を守 り,患者 を守 るために,看護,60(12), 54-59.
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