概念化プロセスにおける質的研究手法とテキスト分析手法の比較
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(2) 中心となるカテゴリーを「コア・カテゴリーとしてい る。」「M-GTA はオープン・コーディング、軸足コー ディング、選択的コーディングの段階区分は用いず、連 続的プロセスと位置付ける。」 分析には、 「分析ワークシート」を用いる。これは概 念ごとに作成する。1枚のワークシートには、1つの 概念が入る。ワークシートには、概念名、定義、ヴァ リエーション(具体例)、理論的メモの欄がある。概念 とデータ(分析対象の文章)は、ヴァリェーション(具 体例)によって紐づけされる。この分析ワークシート を用いて分析を進めるところは、他の GTA にはない オリジナル部分の一つである。. 2.3. テキストマイニング. テキストマイニングには決まった手順はないが、一 般的には、文章データを形態素に分解し、集計を行った 数値情報から分析を進めていく。文章の傾向を読み解 くことに用いられることが多いが、本研究では、GTA、 M-GTA、KJ 法とよく似た使い方として、概念抽出の 可能性に着目する。そこで、木野 8) をベースに検討す る。木野 8) では、KH Coder9) を用いて、形態素解析 には、KH Coder から ChaSen10) を利用している。こ のとき、テキスト分析では形態素解析ツールを用いる ことにより、文章は単語単位に切断される。このこと から、GTA の切片化という考えにあてはめると、単語 単位に切片化されたとみなすことができる。次に再構 成化について、木野 8) では、頻出キーワードのリスト、 階層型クラスター分析、共起ネットワークの結果から、 概念を集約している。. 2.5. Table 1: 各手法の特徴 GTA M-GTA. KJ 法. KJ 法. KJ 方は、川喜田によって提唱された方法で、書籍「発 想法」7) の初版は 1967 年である。もちろん、いかなる 方法や考え方も、アイデアが出て、成長し、まとまった 本になるまでには時間がかかるものであるが、この「発 想法」が出版された年は、グレイザーとストラウスに よる GTA の「The Discovery of Grounded Theory」1) が出版されたのと同じ年である。川喜田は、発想法(KJ 法)は、「野外で観察した複雑多様なデータを、「デー タそれ自体に語らしめつつ、いかにして啓発的にまと めたらよいか」という課題から始まっている。」と述べ ている 7) 。このデータを啓発的にまとめる作業のやり 方が KJ 法であり、その手法をアイデアの発想に使え ることからビジネス社会をはじめ、多くの局面で利用 されている。KJ 法では、データ(発想法として使う場 合は、おもいついた考えやアイデア)を名刺大のカー ドに一行見出しとして書き、それらカード並べながら、 似たものを集め集約し、関係性を整理していく。この ことから、KJ 法で用いられる最小概念の単位は、名刺 大のカードに書き込める程度の一行見出しのような文 章と考えられる。また、KJ 法のもとになったフィール ドワークでのデータのとり方の説明においても、まず は、メモをとることからはじめており、文章を作成す るのはメモ作成後になることから切片化については特 に意識されていないと思われる。 2.4. は、多くの考慮点があるが、本稿では、GTA で語られ ている切片化と、概念を整理し、構成していく部分に 絞って確認する。その内容を表 1 に整理した。. 手法間の比較. ここまで、GTA, M-GTA, KJ 法, およびテキストマ イニングを利用した事例を見てきた。概念化について. テキスト マイニング. 3. 切片化 できるだけバラバラにす る。 (切片化の意義は、 文脈から切り離すこと) 切片化はしない。. 概念の整理と構成 オープン・コーディング(多角度から 検討)、選択的コーディング等のプロ セスがある。 分析ワークシートを用いて、概念を明 確化していく。そして複数の概念の関 係からなるものを「カテゴリー」「コ アカテゴリー」として整理していく。. 切片化は意識していない。 ※名刺大のカードに1行 同じ意味と思われるカードを集め、そ 見出しのように書くので、 こに名前をつけて集約していく。 その単位。 形態素の頻出回数や、複数の形態素が 形態素単位。 同時に文章内で出てくる回数等を集計 ※単語単位と考えてよい。 し、その集計値を用いて、 共起ネット ワーク図を作成し、人が確認しながら 概念候補を整理していく。. おわりに. 本研究では、顧客ニーズを把握、整理し、可視化す るための方法として、GTA, M-GTA, KJ 法といった質 的研究法、および、情報処理分野で発展してきたテキ ストマイニングをとりあげ、その内容を確認した。そ の結果、各手法は、それぞれ異なる発展経緯をもって いるが、俯瞰的な視点で見ると似たところを有してい る。その一方で、切片化や概念の構成化についての考 え方や中身については、それぞれの工夫があり、違い がある。 なお、今回はとりあげることができなかったが、概 念化については、ソフトウェア工学で発展してきた、フ ローチャート、ER 図、状態遷移図などのモデル化技法、 そして自然言語の文法も関係する。本研究では、今後、 それらを含めた形での整理を進めていきたいと考えて いる。. 参考文献 1) Glaser, Barney and Strauss, Anselm, The Discovery of Grounded Theory: Strategies for Qualitative Research, New York: Aldine Publishing Company, 1967. 2) 後藤隆, 大出春江, 水野節夫訳, データ対話型理論の発見, 新曜社, 1996. 3) Graser, Barney, Theoritical Sensitivity: Advances in the Methodology of Grounded Theory, Mill Valley: The Sociology Press, 1978. 4) Strauss, Anselm, Qualitative Analysis for Social Scientists, Cambridge: Cambridge University Press, 1987. 5) 木下康仁, グラウンデッド・セオリー・アプローチの実 践: 質的研究への誘い, 弘文堂, 2003. 6) 木下康仁, ライブ講義 M-GTA: 実践的質的研究法 修 正版グラウンデッド・セオリー・アプローチのすべて, 弘 文堂, 2007. 7) 川喜田二郎, 発想法, 中央公論新社, 1967. (本稿では、改 版 4 版を参照) 8) 木野泰伸, 高校生が考えるグルーバル人材に必要な能力 とその構造, 横幹 Vol.10, No.2, pp.116-123, 2016. 9) 樋口耕一, 社会調査のための計量テキスト分析, ナカニ シヤ出版, 2014. 10) ChaSen, https://chasen-legacy.osdn.jp/ (2020 年 8 月 参照).
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