伝統医療看護連携研究,第 2 巻第 1 号,pp15(2020) 一般演題(口演) O8 15 Ⅰ.緒言 灸は東洋医学を背景に多く知られている。會澤らは、灸 に関する基礎研究の中で灸の熱刺激に対する即時反応と して、その周囲の血管は拡張したと述べている1)。また、 楠見らの冷水負荷試験による冷え症の評価研究によれば、 手指皮膚温の 10 分後の回復不良群と良好群を比較し、手 指皮膚温、末梢血流量、基礎代謝量が低いほど、冷水負荷 試験による皮膚温回復率は低い傾向にあったと結論づけ ている2)。皮膚血管の拡張は皮膚温との関連が深い3)。そ こで手指冷水負荷試験における手指皮膚温の回復不良群 に灸を施した場合、即時反応としての手指皮膚温の変化か ら灸の効果を検討した。 Ⅱ.材料と方法 1) 使用備品:冷水負荷試験機材一式(冷水用容器、水温 計、水温調整用保冷剤等)、手指皮膚温測定機材一式 (サーモグラフィーカメラ FLIR 社製 FLIRONE PRO ア プリで動作))、施灸用具一式、計時タイマー、測定器 固定台他。 2) 実験環境:日常空調コントロール下(室温 22~23℃、 湿度 50~60%)、冷水負荷水温 15℃。 3) 手指皮膚温測定:冷水負荷前後の手指皮膚温をサー モグラフィーで測定する。 4) 冷水負荷:手指(手首から末梢)を冷水容器中へ 1 分 間の浸漬をする。 5) 冷水負荷解除後、手指皮膚温を 1 分毎に測定する。 冷水負荷解除後 10 分まで測定する。 6) 回復不良群を対象に、外関穴に施灸(カナ灸雅ソフト、 カナケン製台座灸)する。外関穴は水に濡れない位置 にあり、経絡を通して遠隔でも十分効果が得られる4) ため選定した。外関穴は、手の三焦経に属し骨度法に より肘窩~手関節横紋を 12 寸(約 36.3cm)とし、前腕 後面、橈骨と尺骨の骨間の中点、手関節背側横紋の上 方 2 寸(約 6cm)に位置する。 7) 施灸直後からの手指皮膚温測定:1 分毎に 10 分間サ ーモグラフィーで測定する。測定点は、中指基節骨底 部とする。 Ⅲ.倫理的配慮 対象者は、口頭による募集を原則とし、文書で同意を得 た。本研究は日本伝統医療看護連携学会倫理審査委員会に て承認を得た(承認番号:2020-2)。 Ⅳ.結果 研究に賛同を得た成人健常者28 名に一次試験の冷水負 荷試験を行った。その試験より抽出された 7 名の手指皮 膚温回復不良群に外関穴部に施灸を行った結果、3 分後で は平均手指皮膚温の回復率 100%には至らなかったが、6 分後にはすべての部位で達し、施灸無しに比べ施灸有り では施灸刺激により手指皮膚温の回復が早まる傾向を示 し改善効果がある事が分かった。 Ⅴ.考察 本研究では、抽出された 7 名の手指皮膚温回復不良群に 施灸を行い効果の検討を行った。それぞれ 7 か所の測定点 を計測し平均回復率で効果を検討した。個別に見ると回復 率の現れ方の順に違いが見られた。結果として 6 分後に平 均手指温回復率では 100%以上に達したが、個別に見た場 合では 10 分後に達した部位も見られた。 臨床において、冷えの症状の現れ方は手指だけでなく、 足や腹部などでも見られます。患者の問診などで症状や部 位を確認し、その症状に応じた施灸部位の選穴など検討し 治療する必要をこれまで以上に感じた。 Ⅵ.結語 今回、冷水負荷試験による外関穴の施灸により手指皮 膚温の変化をサーモグラフィーで実際に測定しその結果 をデータでまとめ、その効果を確認できたことは自分に とって意味のある研究であったと感じています。今後も サーモグラフィーを使い、個別の症状の違いや手指以外 部位でも活用しながら、臨床にさらに役立てて治療にあ たって行きたいと思います。 Ⅷ.利益相反 開示すべき利益相反状態はない。 Ⅸ.参考文献 1)會澤重勝ら(1988):灸に関する基礎的研究、昭和医学会 誌、48(6)、673-680 2)楠見由里子ら(2009):成熟期女性を対象とした冷水負荷 試験による冷え症の評価、日本助産学誌、23(2)、241-250 3)工藤奨ら(2012):寒冷血管拡張反応時の皮膚血流応答に 及ぼす環境温の影響、日本生理人類学会誌、17(1)、15-21 4)岡部素道(1964):経絡の証明と臨床、日本鍼灸治療学会 誌、14(1)、9-20
冷水負荷試験による施灸の効果の検討
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