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岡山県のアマモ場造成の取組みⅠ アマモ場の現状とアマモ場造成事業の概要について

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岡山県のアマモ場造成の取組み Ⅰ

-アマモ場の現状とアマモ場造成事業の概要について-

乾 元気(岡山県水産課)・中力健治(岡山水研) 1.はじめに 岡山県の海域は瀬戸内海の中央部に位置し,その面 積は約 800 平方キロメートル(瀬戸内海総面積の約 3.4%)と非常に狭いうえ,水深 10m以浅の海域が 50% 以上,水深 20m以浅の海域が約 85%を占めている。海 域は静穏で浅い多島海域であり,吉井川,旭川,高梁 川の三大河川の流入による陸域からの豊富な栄養塩の 供給と複雑な潮流環境の恩恵を受け,多様で豊かな環 境が形成され,漁船漁業のほか,ノリやカキの養殖が 盛んに行われている。また,かつては水深 10m以浅の 浅海域に水産生物の産卵,育成の場として重要な藻場 が広がっており,1925 年に実施された藻場分布調査で は,約 4,300ha ものアマモ場が存在していたとされる。 しかし,その後は沿岸域の開発や透明度の低下等に伴 いアマモの生育海域が失われ,1989 年には 549ha まで 減少した。 そうしたなか,県東部に位置する備前市日生町の漁 業者は,アマモ場再生を目指して,わずかに残ったア マモ場から種を採取し,かつてアマモが生育していた 場所に船上から播種する取り組みを 1985 年から始め, 約 30 年間続けている。現在,この取り組みは,漁業者 だけでなく,地元の中学生,NPO 法人などへの広がり をみせている。近年,このような漁業者等によるアマ モ場再生の取組とともに,海域環境の改善などもあり, アマモ場の面積は増加傾向で,2015 年には 1,845ha ま で回復した1,2)(図 1,図 2) 2.アマモ場造成事業の概要 漁業者等による播種により,アマモの生育に必要な 光量が確保できる水深 2mより浅い場所においてはア マモ場の回復が認められた。しかし,かつてアマモが 生育していた水深帯でも,水深 2mより深い場所では 透明度の低下や底質の悪化等で十分な効果が認められ なかった。 そこで,本県では,備前市日生町沖の鹿久居島千軒 湾において,水深 2mより深い海域におけるアマモ場 の造成を主な目的とした漁場整備事業に 2002 年から 着手した3)。アマモの生育に好適な光環境を創出する ために,水深 4~5mの場所に潜堤を構築し,その岸側 に覆砂を行う等の土木的手法により海底地盤を嵩上げ し,生育基盤を造成した。また,アマモの生育の制限 要因となる波浪を軽減するため,造成地の沖合に消波 施設を設置した(図 3)。現在,千軒湾内の西泊,奥泊, まほろば下,首切島前面及び水ノ浦工区の合計 5 カ所 で海底地盤の嵩上げなどアマモの生育基盤の造成が完 了し,漁業者等が播種により,アマモ場の再生を促し ている。 また,造成工区の周辺施設として,稚魚や未成魚の 餌場や隠れ家としての機能を持つ構造物(餌料培養礁) を,またその沖合には成魚の生息場となる構造物(滞 図 2 岡山県備前市日生町の位置 備前市日生町 -41-1)食害の回避 磯焼けの持続要因の一つとされる食害動物のウ ニ類や小型巻貝は,砂地に設置された柱状礁では, 生息密度が低かった.このことから,食害から海 藻類を守るには砂地に設置することが有効である ことが示唆された. ただし,砂による埋没,砂の堆積を考慮して,背 が高く安定性のある構造とする必要がある. 2)海藻のタネの供給 隠岐ではクロメの子嚢斑形成は 10 月下旬~12 月下旬頃に見られ,この時期に設置した設置群に は翌春にクロメが着生した.海藻の成熟前,ある いは成熟中に藻場礁の設置を行ったことで,近傍 の天然藻場からの海藻のタネの供給をうけ,早期 に想定した海藻が着生したと考えられた.このこ とから,タネのある時期を考慮し設置することが 有効であると示唆された. また,天然からのタネの供給は一様ではなく, 礁の一部に着生したことから,背の高い構造で幅 広い水深帯に海藻の着生基質を提供できる構造が 有効であると考えられた. なお,タネの供給源からの距離も重要な要件と 考えられるが本報では十分なデータ検証ができな かった. 3)藻場の形成 肉食性の根魚を指標とした藻場形成の評価では, 海藻の少ない設置群は肉食性の根魚の定着が低く, 広い面積で海藻が繁茂している設置群となるほど に肉食性の根魚が増える傾向を確認した.また, 肉食性の根魚が住み付いた設置群は,長期にわた り藻場が安定しており,植食動物による食害の影 響が小さいと考えられ,食害が抑制されていると 推察された.このことから,藻場を安定的に形成 するにはある程度の規模で藻場造成を行う必要が あると示唆された. 以上のことから,藻場礁を用いて藻場を早期に形成 させ,維持して行くための要件は,次のとおりと考え る. ① 砂地に設置することでウニや小型巻貝による食 害を回避させる(植食動物の棲場と海藻の生育場 を分離させる).ただし,砂地に設置する場合に は,砂による埋没等の影響を受けにくい構造にす る必要がある. ② 藻場礁は繁茂させる海藻の成熟期直前か期間中 までに設置する. ③ 藻場礁は高さのある構造物で幅広く水深を確保 し多様な海藻の着生を促進させることが有効で ある. ④ 多くの肉食性魚類(生態系の上位捕食者)が生息 できる規模の藻場は,安定した藻場が形成される. 5.最後に 本報は,長期間の膨大なデータの整理に留まり,内 容が概説的となっている.今後もデータの精査に務め たい.しかし,本報の上位の捕食者を指標とした評価 手法は,藻場形成を評価するうえで有効な方法である と考えているので,より精度を上げて行きたい.また, 今後は,磯焼け海域における藻場礁の構造や配置の考 え方,藻場礁と天然礁のネットワークの関係性などの 調査を実施し,より有効な藻場礁の開発をして行く予 定である. 参考文献 1) 水産庁, 改訂磯焼け対策ガイドライン, 2015. 2) 水産庁, 藻場資源消滅防止対策ガイドライン, 2009. 3) 綿貫啓, 磯焼け地帯で順応的に進めるコンブ増殖 場造成(総説), 水産工学, 51: pp.33–37, 2014. 4) 一般社団法人 漁港漁場新技術研究会, 人工基質を 用いた磯焼け対策, 2017. 5) 吉田大輔, 島根県沿岸における藻場の状況と磯焼 けに関する聞き取り調査, 島根県水産技術センタ ー研究報告, 9: pp.37–42, 2016. -40-2019年度日本水産工学会学術講演会

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4.結果及び考察 1)播種数の推移 各造成工区におけるアマモ種子の播種数を表1に示 した。2009 年 11 月から 2017 年 11 月までの 9 年間で, 4,055 万粒を播種した。首切島全面工区については、 2016 年から播種を休止した。水の浦工区については、 播種を行わず2015年2月に工区の一部にアマモ栄養株 移植した。 2)アマモ分布面積及び平均株密度の推移と状況 各造成工区のアマモ分布面積の推移を表2に,平均 株密度の推移を表3に示した。 首切島全面工区は,2009 年に整備が完了し,同年 11 月から播種を開始した。2010 年 6 月の繁茂期に 709 ㎡ にアマモの分布が確認され,平均株密度が 7 株/㎡ と なった。アマモ分布面積は 2014 年 6 月の繁茂期に最大 (4,295 ㎡ )となった。平均株密度は 2016 年 6 月に 最大(92 株/㎡ )となった。播種休止後,夏期の高水 温,台風等により,アマモ分布面積が 2017 年 11 月の衰 退期に 264 ㎡ と減少したが,2018 年 6 月の繁茂期には 3,168 ㎡ まで回復し,維持管理の不要な自立したアマ モ場となっていると考えられる。 西泊工区は,2010 年に整備が完了し,2011 年 11 月か ら播種を開始した。2013 年 6 月の繁茂期には 1,285 ㎡ にアマモの分布が確認され,平均株密度は 3 株/㎡ と なった。アマモ分布面積は 2017 年 6 月の繁茂期に最も 高い値(6,008 ㎡ )となった。平均株密度は 2015 年 11 月に最も高い値(96 株/㎡ )となった。夏期に高水 温となった年は衰退期に大きく減少する傾向があるが, 播種の効果もあり,2014 年の繁茂期以降は 4,000 ㎡前 後で推移している。 奥泊工区は, 2010 年に整備が完了し,2010 年 10 月か ら播種を開始した。2013 年 6 月の繁茂期には 7,829 ㎡ にアマモの分布が確認され,平均株密度は 14 株/㎡ と 最大(131 株/㎡ )となった。2018 年には調査は実施 しなかったが,2014 年以降繁茂期の面積は 30,000 ㎡  表2 各造成工区におけるアマモ分布面積(㎡) 2010.6 2010.11 2011.6 2011.11 2012.6 2012.11 2013.6 2013.11 2014.6 2014.11 2015.6 2015.11 2016.6 2016.11 2017.6 2017.11 2018.6 2018.11 首切島前面工区 709 402 1,084 133 1,376 688 1,951 626 4,295 1,201 3,916 2,040 2,856 1,752 4,208 264 3,168 384 西泊工区 1,285 565 3,632 472 3,644 1,788 4,212 432 6,008 792 3,620 392 奥泊工区 7,829 3,003 28,596 6,528 31,884 14,612 25,040 8,188 38,364 17,168 まほろば下工区 1,930 32 3,492 560 3,492 376 4,172 232 6,264 72 水ノ浦工区 8,032 3,552 9,928 1,980 15,944 2,372 17,404 240  表1 各造成工区におけるアマモ種子の播種数(万粒) 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 首切島前面工区 167 138 260 115 107 108 124 西泊工区 130 74 48 168 155 119 205 奥泊工区 167 138 260 103 160 263 222 157 まほろば下工区 46 138 116 140 228 水ノ浦工区 株移植  表3 各造成工区におけるアマモ平均株密度(株/㎡) 2010.6 2010.11 2011.6 2011.11 2012.6 2012.11 2013.6 2013.11 2014.6 2014.11 2015.6 2015.11 2016.6 2016.11 2017.6 2017.11 2018.6 2018.11 首切島前面工区 生殖株 1 0 2 0 6 0 2 0 4 0 11 0 6 0 4 0 4 0 栄養株 6 1 9 1 11 2 5 15 21 19 80 72 86 34 68 0 60 24 計 7 1 11 1 17 2 7 15 25 19 91 72 92 34 72 0 64 24 西泊工区 生殖株 9 0 2 0 9 0 15 0 5 0 8 0 6 0 栄養株 10 0 1 20 45 17 40 96 84 14 36 2 13 10 計 19 0 3 20 54 17 55 96 89 14 44 2 19 10 奥泊工区 生殖株 8 0 3 0 11 0 8 0 8 0 4 0 8 0 栄養株 17 1 11 7 53 38 77 106 123 25 63 26 95 31 計 25 1 14 7 64 38 85 106 131 25 67 26 103 31 まほろば下工区 生殖株 15 0 33 0 17 0 16 0 34 0 栄養株 11 0 28 7 11 4 11 0 14 6 計 26 0 61 7 28 4 27 0 48 6 水ノ浦工区 生殖株 5 0 9 0 6 0 12 0 栄養株 83 26 89 45 83 2 63 12 計 88 26 98 45 89 2 75 12 -43-留礁)を設置した。これは,アマモ場に生息する稚魚 等が成長に伴って生息範囲を拡大させ,沿岸から沖合 に徐々に移動することを想定したものである(図 4)。 整備完了後は,造成アマモ場を順応的に管理するた め, 株密度を指標とした「質的目標」及びアマモ場面 積を指標とした「量的目標」を維持管理の基準として 設定し,継続的にモニタリング調査を実施している4) 平成 27 年度に首切島前面工区についてモニタリング 調査の結果を報告した5)が,今回はその後の経過につ いて他の工区の形成過程に関する調査結果 6)も併せ て報告する。 3.モニタリング調査 1)調査期間及び場所 整備した 5 工区の造成アマモ場と,比較対照として その近傍の天然アマモ場(現寺湾,大多府島北岸)にお いて,2010 年から,アマモの繁茂期の 6 月と衰退期の 11 月の年 2 回実施した(図 5,図 6)。なお,整備した 工区では,整備完了後から年 1 回の頻度で毎年 11 月頃 に船上または潜水による播種を実施した。(首切島前面 工区では 2015 年まで実施。水ノ浦工区ではアマモ 栄養株を 2015 年 2 月に移植し,播種は不実施。) 2)アマモ分布面積 造成工区内に 10m間隔で設置した調査測線上を DGPS 魚群探知機(FishElite480,EAGLE 及び HDS-5,LOWRANCE)及びサイドスキャンソナー(LOWRANCE HDS5 Gen2,StructureScan HD 及び LSS-1,LOWRANCE) で探査し,ダウンスキャン記録に写し出された草体の 影とその位置からアマモの分布範囲を特定した。 3)平均株密度 造成工区内に設けた調査測線(2~5 定線)において, 5mの等間隔に設定した調査地点(30~110 点)に方形 枠(0.5m×0.5m)を設置し,枠内に生育するアマモ の株数を計数して単位面積当りの株数(平均株密度) を求めた。2014 年 6 月からは,アマモの分布範囲内に 調査側線(2~5 定線)を設け,その範囲内に均等に調 査地点(27~45 点)を設定し,枠内に生育するアマモ の株数を計数して平均株密度を求めた(図 6)。 図 3 造成アマモ場の概念図 図 4 水産生物の成長を想定した施設の配置図 図 5 造成アマモ場及び天然アマモ場の位置図 図 6 首切島前面工区の調査地点 海底の嵩上げ 潜堤 消波施設 -42-2019年度日本水産工学会学術講演会

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4.結果及び考察 1)播種数の推移 各造成工区におけるアマモ種子の播種数を表1に示 した。2009 年 11 月から 2017 年 11 月までの 9 年間で, 4,055 万粒を播種した。首切島全面工区については、 2016 年から播種を休止した。水の浦工区については、 播種を行わず2015年2月に工区の一部にアマモ栄養株 移植した。 2)アマモ分布面積及び平均株密度の推移と状況 各造成工区のアマモ分布面積の推移を表2に,平均 株密度の推移を表3に示した。 首切島全面工区は,2009 年に整備が完了し,同年 11 月から播種を開始した。2010 年 6 月の繁茂期に 709 ㎡ にアマモの分布が確認され,平均株密度が 7 株/㎡ と なった。アマモ分布面積は 2014 年 6 月の繁茂期に最大 (4,295 ㎡ )となった。平均株密度は 2016 年 6 月に 最大(92 株/㎡ )となった。播種休止後,夏期の高水 温,台風等により,アマモ分布面積が 2017 年 11 月の衰 退期に 264 ㎡ と減少したが,2018 年 6 月の繁茂期には 3,168 ㎡ まで回復し,維持管理の不要な自立したアマ モ場となっていると考えられる。 西泊工区は,2010 年に整備が完了し,2011 年 11 月か ら播種を開始した。2013 年 6 月の繁茂期には 1,285 ㎡ にアマモの分布が確認され,平均株密度は 3 株/㎡ と なった。アマモ分布面積は 2017 年 6 月の繁茂期に最も 高い値(6,008 ㎡ )となった。平均株密度は 2015 年 11 月に最も高い値(96 株/㎡ )となった。夏期に高水 温となった年は衰退期に大きく減少する傾向があるが, 播種の効果もあり,2014 年の繁茂期以降は 4,000 ㎡前 後で推移している。 奥泊工区は, 2010 年に整備が完了し,2010 年 10 月か ら播種を開始した。2013 年 6 月の繁茂期には 7,829 ㎡ にアマモの分布が確認され,平均株密度は 14 株/㎡ と 最大(131 株/㎡ )となった。2018 年には調査は実施 しなかったが,2014 年以降繁茂期の面積は 30,000 ㎡  表2 各造成工区におけるアマモ分布面積(㎡) 2010.6 2010.11 2011.6 2011.11 2012.6 2012.11 2013.6 2013.11 2014.6 2014.11 2015.6 2015.11 2016.6 2016.11 2017.6 2017.11 2018.6 2018.11 首切島前面工区 709 402 1,084 133 1,376 688 1,951 626 4,295 1,201 3,916 2,040 2,856 1,752 4,208 264 3,168 384 西泊工区 1,285 565 3,632 472 3,644 1,788 4,212 432 6,008 792 3,620 392 奥泊工区 7,829 3,003 28,596 6,528 31,884 14,612 25,040 8,188 38,364 17,168 まほろば下工区 1,930 32 3,492 560 3,492 376 4,172 232 6,264 72 水ノ浦工区 8,032 3,552 9,928 1,980 15,944 2,372 17,404 240  表1 各造成工区におけるアマモ種子の播種数(万粒) 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 首切島前面工区 167 138 260 115 107 108 124 西泊工区 130 74 48 168 155 119 205 奥泊工区 167 138 260 103 160 263 222 157 まほろば下工区 46 138 116 140 228 水ノ浦工区 株移植  表3 各造成工区におけるアマモ平均株密度(株/㎡) 2010.6 2010.11 2011.6 2011.11 2012.6 2012.11 2013.6 2013.11 2014.6 2014.11 2015.6 2015.11 2016.6 2016.11 2017.6 2017.11 2018.6 2018.11 首切島前面工区 生殖株 1 0 2 0 6 0 2 0 4 0 11 0 6 0 4 0 4 0 栄養株 6 1 9 1 11 2 5 15 21 19 80 72 86 34 68 0 60 24 計 7 1 11 1 17 2 7 15 25 19 91 72 92 34 72 0 64 24 西泊工区 生殖株 9 0 2 0 9 0 15 0 5 0 8 0 6 0 栄養株 10 0 1 20 45 17 40 96 84 14 36 2 13 10 計 19 0 3 20 54 17 55 96 89 14 44 2 19 10 奥泊工区 生殖株 8 0 3 0 11 0 8 0 8 0 4 0 8 0 栄養株 17 1 11 7 53 38 77 106 123 25 63 26 95 31 計 25 1 14 7 64 38 85 106 131 25 67 26 103 31 まほろば下工区 生殖株 15 0 33 0 17 0 16 0 34 0 栄養株 11 0 28 7 11 4 11 0 14 6 計 26 0 61 7 28 4 27 0 48 6 水ノ浦工区 生殖株 5 0 9 0 6 0 12 0 栄養株 83 26 89 45 83 2 63 12 計 88 26 98 45 89 2 75 12 -43-留礁)を設置した。これは,アマモ場に生息する稚魚 等が成長に伴って生息範囲を拡大させ,沿岸から沖合 に徐々に移動することを想定したものである(図 4)。 整備完了後は,造成アマモ場を順応的に管理するた め, 株密度を指標とした「質的目標」及びアマモ場面 積を指標とした「量的目標」を維持管理の基準として 設定し,継続的にモニタリング調査を実施している4) 平成 27 年度に首切島前面工区についてモニタリング 調査の結果を報告した5)が,今回はその後の経過につ いて他の工区の形成過程に関する調査結果 6)も併せ て報告する。 3.モニタリング調査 1)調査期間及び場所 整備した 5 工区の造成アマモ場と,比較対照として その近傍の天然アマモ場(現寺湾,大多府島北岸)にお いて,2010 年から,アマモの繁茂期の 6 月と衰退期の 11 月の年 2 回実施した(図 5,図 6)。なお,整備した 工区では,整備完了後から年 1 回の頻度で毎年 11 月頃 に船上または潜水による播種を実施した。(首切島前面 工区では 2015 年まで実施。水ノ浦工区ではアマモ 栄養株を 2015 年 2 月に移植し,播種は不実施。) 2)アマモ分布面積 造成工区内に 10m間隔で設置した調査測線上を DGPS 魚群探知機(FishElite480,EAGLE 及び HDS-5,LOWRANCE)及びサイドスキャンソナー(LOWRANCE HDS5 Gen2,StructureScan HD 及び LSS-1,LOWRANCE) で探査し,ダウンスキャン記録に写し出された草体の 影とその位置からアマモの分布範囲を特定した。 3)平均株密度 造成工区内に設けた調査測線(2~5 定線)において, 5mの等間隔に設定した調査地点(30~110 点)に方形 枠(0.5m×0.5m)を設置し,枠内に生育するアマモ の株数を計数して単位面積当りの株数(平均株密度) を求めた。2014 年 6 月からは,アマモの分布範囲内に 調査側線(2~5 定線)を設け,その範囲内に均等に調 査地点(27~45 点)を設定し,枠内に生育するアマモ の株数を計数して平均株密度を求めた(図 6)。 図 3 造成アマモ場の概念図 図 4 水産生物の成長を想定した施設の配置図 図 5 造成アマモ場及び天然アマモ場の位置図 図 6 首切島前面工区の調査地点 海底の嵩上げ 潜堤 消波施設 -42-2019年度日本水産工学会学術講演会

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地びき網 造成アマモ場 天然アマモ場 備前市 大多府島 鹿久居島 曽島 鴻島 日生町

岡山県のアマモ場造成の取組み Ⅱ

- アマモ場の造成過程における魚類相の変化 -

乾 元気(岡山県水産課)・中力健治(岡山水研) 1.はじめに アマモは海草の一種で,その群落はアマモ場と呼ば れている。アマモ場は,魚介類の産卵,仔稚魚の成育場 といった機能も有し,沿岸域の魚介類の生産において 大きな役割を果たしていることから,日本各地のアマ モ場において魚類相に関する研究が行われている1,2) しかし,これらは天然アマモ場での調査が大半であり, 人工的に造成したアマモ場での調査はほとんどない。 そこで,本研究では備前市日生町に位置する鹿久居 島沿岸域で人工的に造成されたアマモ場において,魚 類相の変化をモニタリングし,造成効果を評価するこ とを目的とした。平成 27 年度に 4 年間のモニタリング の結果を報告した3)が,今回はその後の結果も含め,8 年間の結果を報告する。 2.材料と方法 1)調査地点 調査は,2010 年に生育基盤工事が完了し,翌年の 2011 年からアマモの播種を実施している鹿久居島南 の造成アマモ場(西泊工区)で実施した。また,比較 対照として鹿久居島の南方に位置する大多府島北側の 天然アマモ場を選定し,同一の調査を行った(図1)。 天然及び造成アマモ場の繁茂期におけるアマモ場面 積及び平均株密度の推移を示した(図2,図3)。天然 アマモ場の面積は 2011~2018 年の間で 91~166 千㎡ の範囲で推移した。平均株密度は 2011~2018 年の間で 50~110 株/㎡ で推移した。一方,造成アマモ場の面 積は 2013 年の 1.3 千㎡ から 2014 年の 3.6 千㎡ と大 幅に拡大し,その後は 2014~2018 年の間で 3.6~6.0 千㎡ で推移した。平均株密度は 2012 年の 19 株/㎡ か ら 2013 年の 3 株/㎡ に低下したものの 2014 年には 54 株/㎡ と大幅に増加し,2015~2018 年の間で19~89 株 /㎡ で推移した。 2)調査方法 2011~2018 年の間に前述の天然及び造成アマモ場 の 2 カ所で,繁茂期の 6 月に各年 1 回,調査を実施し た(図 1)。調査は,小型地びき網(高さ 1.5m,長さ 31m,網目 30 節)を用いて,天然及び造成アマモ場で それぞれ 2 回曳網し,魚介類を採捕した。採捕した魚 介類は冷凍保存し,解凍後に,種ごとに尾数,全長及 び重量を測定した。採捕種類数及び個体数は,1 カ所 当たり 2 回の曳網分を合計し,200 ㎡当たりの単位面 積で集計した。また,8 年間の調査で 1 年だけ出現した 魚種と 2 年以上出現した魚種が存在したため,1 年だ けの単年出現種と 2 年以上の複数年出現種に分けた。 図 1 調査地点 図 2 天然及び造成アマモ場の面積の推移 図 3 天然及び造成アマモ場の平均株密度の推移 -45-なった。アマモ分布面積は 2017 年 6 月の繁茂期に最大 (38,364 ㎡ )となった。平均株密度は 2016 年 6 月に 前後と安定して推移している。 まほろば下工区は, 2012 年に整備が完了し, 2013 年 9 月から播種を開始した。2014 年 6 月の繁茂期には 1,930 ㎡ にアマモの分布が確認され,平均株密度は 26 株/㎡ となった。アマモ分布面積は 2018 年 6 月の繁茂 期に最大(6,264 ㎡ )となった。平均株密度は 2015 年 6 月に最大(61 株/㎡ )となった。まほろば下工区 のアマモ場では他の工区と異なり,繁茂期の群落が栄 養株でなく,ほぼ生殖株により占められる特徴があっ た。工区内の濁りが強く, 例年衰退期にアマモの分布 面積及び平均株密度が大きく減少している。 水の浦工区は, 2014 年に整備が完了し,2015 年 2 月 に工区の一部にアマモ栄養株を移植した。2015 年 6 月 の繁茂期には 8,032 ㎡ にアマモの分布が確認され,平 均株密度は88 株/㎡ となった。アマモ分布面積は2018 年 6 月の繁茂期に最大(17,404 ㎡ )となった。平均 株密度は 2016 年 6 月に最大(98 株/㎡ )となった。 播種は実施していないが,繁茂期の分布面積及び平均 株密度は高い値となっており,2017 年及び 2018 年 6 月 には工区の 80%以上にアマモが分布した。 いずれの工区においても整備完了後,繁茂期のアマ モの分布面積は増加し,夏期の高水温,台風,アイゴ の食害及び工区内の濁り等で衰退期にアマモ分布面積 及び平均株密度が大きく減少する年もみられるが,播 種の効果もあり,翌年の繁茂期にはアマモの分布が確 認されている。また,同じ千軒湾内にあっても,工区 ごとに繁茂状況及び衰退の要因に違いがあることが確 認された。 5.最後に 今回,潜堤構築や覆砂,消波施設設置といった土木 的手法により,アマモの生育に適した環境を整備した 造成地に継続して種子を供給することで,安定したア マモ場が形成される過程を確認できた。また,工区毎に 繁茂状況及び衰退要因に違いがあり,同一の海域にお いても隣接する工区毎にアマモ場の形成に与える要因 が異なることが示された。 このようなアマモ場造成の事例は全国的にも少な く,依然として十分な知見がないことから,引き続き モニタリングを継続し,造成アマモ場の順応的な管理 を実施していく。 なお,この研究は東備地区水産環境整備事業再生ア マモ場順応的管理業務で得られた成果の一部である。 6.謝辞 岡山大学教授の大久保賢治氏ほか東備地区水産環境 整備事業アマモ場造成技術検討会の委員の皆様には, 検討会において貴重なご意見を頂き感謝申し上げます。 特に,本報告をまとめるにあたり株式会社シャトー海 洋調査の寺脇利信氏及び瀬戸内海区水産研究所の吉田 吾郎氏には貴重なご助言を頂きました。この場を借り て厚くお礼申し上げます。 参考文献 1)環境庁,1978:第 2 回自然環境保全基礎調査干潟・ 藻場・サンゴ礁分布調査報告書 2)環境庁,1994:第 4 回自然環境保全基礎調査海域 生物環境調査報告書.第 2 巻藻場Ⅲ資料 25,岡山県 3)東備地区広域漁場整備事業アマモ場造成技術検討 会・岡山県:平成 22 年度東備地区広域漁場整備事 業アマモ場造成技術検討会報告書 4)岡崎知治・後藤真樹・元谷 剛,2015:岡山県のア マモ場造成の取組み Ⅱ –造成アマモ場の現状及び 評価について-,平成 27 年度日本水産工学会学術講 演論文集,37-40. 5)後藤真樹・岡崎知治・元谷 剛,2015:岡山県のア マモ場造成の取組み Ⅰ –造成アマモ場の現状とア マモ場造成事業の概要について-,平成 27 年度日本 水産工学会学術講演論文集,33-36. 6)東備地区広域漁場整備事業アマモ場造成技術検討 会・岡山県:平成 30 年度東備地区広域漁場整備事 業アマモ場造成技術検討会報告書 -44-2019年度日本水産工学会学術講演会

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