街なかの市民共同発電が住民の節電行動等に与える影響の分析
̶滋賀県湖南市と守山市を対象として̶
村上 一真
† 摘 要 市民共同発電の外部性として,住民の街なかの市民共同発電に係る知覚・認知や他者 との会話が,自宅での節電行動に影響を与えるか,さらに他の住民に節電行動を勧める 行為に影響を与えるかを,湖南市と守山市それぞれの住民への質問紙調査データを用い た分析により明らかにした。その際,街なかの太陽光発電と緑のカーテンに係る知覚や 他者との会話が与える影響との比較分析を行った。結果,湖南市でのみ,市民共同発電 に係る知覚・認知が自宅での節電行動促進に影響を与えること,市民共同発電に関する 会話が他の住民に節電行動を勧める行為に影響を与えることが明らかになった。また太 陽光発電に関する会話は,両市ともに他の住民に節電行動を勧める行為に影響を与える こと,緑のカーテンに関する会話は,両市ともに自宅での節電行動および他の住民に節 電行動を勧める行為に影響を与えることが明らかになった。さらに両市ともに,市民共 同発電に関する会話は,緑のカーテンに関する会話よりも,他の住民に節電行動を勧め る行為に与える影響が小さいことが示された。 キーワード: 市民共同発電,外部性,節電行動,太陽光発電,緑のカーテン 1. は じ め に 1.1 研究の背景 市民・地域共同発電注1は,市民や地域主体が共 同で再生可能エネルギーの発電設備の建設・運営を 行う取組みであり,必要となる資金を寄付や出資な どの形で共同拠出し,得られる発電収入が出資者 や地域に配当,還元される(豊田,2017a1))。豊田 (2017b)2)はアンケート調査に基づき,2017年1月 末時点で,全国に市民・地域共同発電に取組む団 体が約200団体,発電所が1,028基(太陽光発電所 984基,大型風力発電所30基,小型風車10基,小 水力発電4基)あるとしている。 市民・地域共同発電(以下,市民共同発電)に 関する研究として,出資動機などの出資者に係る 研究(飯田他,20033);西城戸・丸山,20064);大 室・大平,20135);西城戸,20156)),事業化プロセ スや事業スキームなどの事業運営に係る研究(杉 本 他,20127); 田 畑,20148); 中 島,20199)), 各 主体間でのガバナンス,社会関係資本の形成,地 域通貨・地域商品券の取組み,地域振興などの地 域社会との関係に及ぶ研究(西城戸,201410);八 木,201411); 和 田 他,201412); 諸 富,201513); 白 井・壽福,201714);升本,201815))などがある。 これらの研究では,市民共同発電への出資者,住 民,NPO,行政等の関わりや,市民共同発電が住 民や地域に与える社会面,経済面での影響が主に考 察されている。環境・エネルギー面に関しては,エ ネルギーの自立や地産地消として,地域での化石燃 料代替量やCO2削減量などのマクロ的な影響があ わせて示される程度である。 ここで,小中学校に設置されている太陽光発電の 知覚や物理的な接近が自宅での節電等の環境配慮行 動に与える影響(野田・本藤,201116),201217);溝 口・本藤,201418)),大型の風力発電の知覚が自宅 での省エネ等の環境配慮行動に与える影響(馬場・ 2020年8月6日受付,2021年1月22日受理 doi: 10.11353/sesj.34.139 滋賀県立大学,〒522‒8533 滋賀県彦根市八坂町2500 †Corresponding author: [email protected]田頭,200719)),街なかの緑のカーテンの知覚が自宅 での節電行動に与える影響(村上,202020))など, 住民に見える街なかの再生可能エネルギー(以下, 再エネ)の施設・設備や,省エネルギー(以下,省 エネ)の取組みが,住民個人の環境配慮行動に与え る影響としての外部性が検証されている。外部性と は,ある経済主体の行動が市場を経ずに他の経済主 体に与える影響である。市民共同発電も住民に見え る施設であり,これらと同様の外部性が生じている 可能性がある。住民の街なかの市民共同発電の知覚 や認知が,自宅での環境配慮行動に与える影響を検 証することで,市民共同発電の環境・エネルギー面 での住民個人へのミクロ的な影響を明らかにできる。 1.2 研究対象と研究目的 豊田(2017b)2)では,発電所数ベースで市民 共同発電の95%が太陽光発電とされている。した がって本研究では,太陽光発電を設置する市民共同 発電を研究対象とする。 太陽光発電が住民個人の意識や行動に与える影響 の研究は,前項で示した研究に加え,自宅への太陽 光発電設置が自身の節電行動に与える影響(本藤・ 馬 場,200821)), 近 隣 効 果・ 隣 人 効 果(neighbor effect, peer effect)として,自宅への太陽光発電の 設置判断に対して,他の住民の太陽光発電設置の知 覚(Bollinge and Gillingham, 201222); Graziano and Gillingham, 201523); Rode and Weber, 201624))や, 設置住民とのコミュニケーションや口コミ(Rai and Robinson, 201325);関他,201426))が与える影 響を明らかにする研究がなされている。さらに自 宅への太陽光発電の設置要因として,近隣住民の 設置の影響を質問紙調査の選択肢に入れ,分析す る研究も行われている(天野・寺田,200327);福 代,201128);鷲見他,201429);鶴崎他,201730))。 また白井他(2011)31)は市内の市民共同発電の存 在,白井(2018)32)は再エネ施設の知覚や行政・ 地域の計画や活動への関与が,自宅での省エネ等の 環境配慮行動,自宅への太陽光発電の設置意欲,市 民共同発電の出資意欲に与える影響を分析してい る。ただこれらの研究では,太陽光発電や市民共同 発電の知覚等が自身の意識や行動に与える影響が検 証され,会話などを通じ,他の住民の意識や行動に 影響を与えているかまでの検証はなされていない。 村上(2020)20)は,街なかでの他者の緑のカー テンの実施状況の知覚が,他者の緑のカーテン実施 の背後にある節電意図や,自治体の緑のカーテン普 及施策の貢献を住民に推測させることを通じ,自宅 での節電行動,温暖化防止に取組む自治体への信頼 評価に与える影響としての緑のカーテンの外部性を 検証している。ただし,他の住民の節電意識や行動 を高めるような働きかけに影響を与えるかについて の外部性の検証はなされていない。 社会関係資本の形成や地域振興など,地域社会と の関係に及ぶ市民共同発電に係る既往研究10‒15)の 存在は,市民共同発電に関わる直接の利害関係者・ 団体だけでなく,市民共同発電が住民間のつながり をもとに,地域全体にも多様な影響を及ぼす可能 性を示唆している。また 市民共同 の位置づけとし て,環境保全意識の高い住民が他の住民に刺激を与 えたり,他の住民を巻き込んだりすることで,市民 共同発電の効果が地域全体に広がることが期待され ているとも捉えられる。 以上より本研究では,市民共同発電の外部性を明 らかにする目的から,住民の街なかの市民共同発電 に係る知覚・認知や他者との会話それぞれが,自宅 での自身の節電行動に影響を与えるか,さらに他の 住民に節電行動を勧める行為に影響を与えるかを検 証する。その際,先に示したように他の住民に節電 行動を勧める行為に影響を与えるかまでは検証され ていない,再エネ設備としての住宅等に設置されて いる街なかの太陽光発電の知覚や他者との会話,省 エネの取組みである街なかの緑のカーテンの知覚や 他者との会話の影響との比較を通じ, 市民共同 の 太陽光発電が与える影響の特性も考察する。つまり, 省エネと再エネの比較(緑のカーテン,太陽光発 電),再エネ内での比較(住宅等に設置の太陽光発 電,市民共同の太陽光発電)に基づき考察を進める。 本研究は,市民共同発電のマクロ的な影響である CO2削減量の推計等に係る既往研究に対して,ミク ロ的な影響としての住民個人の節電行動に与える効 果(直接効果),他者に節電行動を勧める行為に与 える効果(波及効果)を明らかにする研究として位 置づけられる。これにより,市民共同発電の環境・ エネルギー面での包括的な効果を明らかにすること に貢献できると考える。 2. 研 究 方 法 2.1 研究対象地域の選定 住民の市民共同発電の知覚や認知水準が高い地 域が望ましい。また,夏季に街なかに緑のカーテ ンがある程度見られることも求められる。これら を踏まえて,滋賀県湖南市を対象地域(自治体)と する。湖南市では,1997年に日本初の事業型市民 共同発電が設置され,現在までに6基が稼働してい る(表1)。また2012年に,日本初の罰則規定等を 定めるのではない理念型の再エネに関する条例で ある「湖南市地域自然エネルギー基本条例」が制定
された。同条例第6条は「市民は,自然エネルギー についての知識の習得と実践に努めるものとする」 とし,第8条で自然エネルギーに関する学習の推進 と普及啓発を謳い,2012年以降,年数回の外部講 師を招くなどの市民連続講座が開催されている注2。 これらより湖南市では,住民の市民共同発電の知覚 や認知水準が高いと想定される。また緑のカーテン 普及施策も実施されており,夏季に街なかで緑の カーテンが知覚される状況にあると想定される。 市民共同発電の外部性に係る共通性や差異の検討 のため,もう1地域を選定する。湖南市近隣の自治 体で,多くの市民共同発電が設置されていること, 緑のカーテン普及施策が実施されていることを基準 に文献調査等を行った。結果,滋賀県守山市を選定 した。守山市では表1のように2013年に最初の市 民共同発電が設置され,現在までに4基が稼働して いる注3。また緑のカーテン普及施策も実施されて いる。なお守山市には再エネに関する条例はない。 表1より,両市には市民共同発電の設置場所,設 置時期,発電容量に違いがある。設置場所は守山市 では保育・教育施設,湖南市では民間施設や団体施 設の屋根である。設置時期は,守山市では2012年 7月の固定価格買取制度(FIT)施行後の2013∼14 年の2年間に集中し,湖南市ではFIT施行前の1997 年から2016年までの期間にわたっている。発電容 量は守山市では15∼30 kW程度,湖南市では5 kW を下回るものから100 kWを超える施設がある。 次に質問紙配布地域(地区)を選定する。市民共 同発電は広報やHP等で出資募集や情報提供がなされ るため,知覚だけでなく存在の認知(見たことはな いが,そのようなものがあることは知っているなど) によっても存在を認識できる注4。市民共同発電の認 知水準は,広報やHP等での出資募集や情報提供の ため,市内での地理的な差異は小さいと想定される。 一方,市民共同発電の知覚水準は,市民共同発電へ の近接性が影響を与えると想定される。住民の市民 共同発電の知覚や認知水準の高い地区の選定のため, 両市ともに各市民共同発電が立地する町丁目とそれ に隣接する町丁目を配布地区として選定した。 また前述したように,街なかの太陽光発電の知覚 や他者との会話の影響も検証する。集合住宅世帯は 自宅に太陽光発電を設置しにくく,相対的な関心の 薄さから太陽光発電の知覚や他者との会話水準が低 くなるなどのバイアスが生じる可能性がある。その ため戸建て世帯に配布先を限定した。 2.2 仮説モデルの設定 仮説モデルを図1のように設定する。行動・行動 表1 湖南市と守山市の市民共同発電の概要 自治体 設置時期 発電所名 発電容量 設置場所 湖南市 1997年 6 月 てんとうむし 1 号 4.35 kW (株)なんてん共働サービス 2002年 12 月 てんとうむし 2 号 5.40 kW 高齢者グループホームわいわい 2013年 2 月 コナン市民共同発電所初号機 20.00 kW 地域活動センターバンバン 2013年 9 月 コナン市民共同発電所弐号機 105.60 kW 甲西陸運(株) 2016年 3 月 コナン市民共同発電所参号機 16.00 kW 柑子袋まちづくりセンター 2016年 3 月 コナン市民共同発電所四号機 26.00 kW 十二坊温泉ゆらら 守山市 2013年 3 月 もりやま市民ソーラー 1 号機 15.00 kW 市立守山中学校 2013年 6 月 もりやま市民ソーラー 2 号機 21.56 kW 市立小津こども園 2013年 9 月 もりやま市民ソーラー 3 号機 27.93 kW 市立河西幼稚園 2014年 9 月 もりやま市民ソーラー 4 号機 31.59 kW 市立吉身保育園 資料: 滋賀県(2019)33)等を参考に作成。 図1 仮説モデル 6つの説明変数,性別ダミー,年齢ダミーそれぞれの間に 双方向の関係(共分散)を設定し,6つの目的変数それぞ れの間にも共分散を設定しているが省略して描図。また性 別ダミー,年齢ダミーそれぞれから6つの目的変数にパス を設定しているが簡略化して描図。
意図としての目的変数と,知識・情報源としての説 明変数の関係を分析する。 図1(左)の6つの説明変数は,街なかの市民共 同発電,太陽光発電,緑のカーテンの知覚や認知 ([市民共同発電知覚認知],[太陽光発電推移知覚], [緑のカーテン推移知覚])と,それぞれに関する会 話([市民共同発電会話],[太陽光発電会話],[緑 のカーテン会話])である。村上(2019)34)は,街 なかの緑のカーテンの知覚だけでなく,近所の人と の会話や近所の人からの期待や競争意識等の近隣住 民との関わりが,緑のカーテンの実施意欲に与える 影響を検証している注5。本研究では他者に行動を 勧める行為への影響を検証するため,これに直接影 響を与えると想定される他者との会話に対象を絞 り,再エネの施設・設備や省エネの取組みの知覚や 認知と並列の知識・情報源として位置づけ,目的変 数に影響を与える構造とする。またコントロール変 数として,2つのダミー変数([性別ダミー],[年 齢ダミー])を設定する。[性別ダミー]は男性0, 女性1, [年齢ダミー]は一般的な定年年齢を踏ま え,60歳未満0, 60歳以上1とした注6。 図1(右)の6つの目的変数は,節電行動に加え, 市民共同発電出資,緑のカーテン実施についての 自身の行動・行動意図([節電行動の実施],[市民 共同発電出資意欲],[緑のカーテン実施意欲])と, 他者に行動を勧める行為([節電行動実施勧め], [市民共同発電出資勧め],[緑のカーテン実施勧 め])である。既往研究27‒30)では,コストの大きい 自宅への太陽光発電設置に対して,近隣住民の太陽 光発電設置が与える影響の小ささが示されている。 これを踏まえ,目的変数として自宅への太陽光発電 設置は設定せず,市民共同発電への出資,緑のカー テンの実施を加えた。 図1の構造として,節電行動([節電行動の実 施],[節電行動実施勧め])に対しては,6つの説 明変数のいずれもが影響を与えると仮定し,パス係 数の大きさの差異を検証する。次に説明変数の機能 範囲を踏まえ,市民共同発電出資([市民共同発電 出資意欲],[市民共同発電出資勧め])に対しては, 市民共同発電と太陽光発電の4つの説明変数が,緑 のカーテン実施([緑のカーテン実施意欲],[緑の カーテン実施勧め])に対しては,緑のカーテンの 2つの説明変数が影響を与えると仮定し,検証する。 2.3 質問紙調査の実施 2019年8月下旬∼9月上旬に,両市それぞれの配 布地区内の戸建て全世帯に対して,ポスティングに て質問紙を配布し(湖南市2,583部,守山市2,635 部),郵送にて回収した。結果,湖南市で565部, 守山市で500部の有効回答を得た。有効回答率はそ れぞれ21.9%と19.0%であった。 湖南市の回答 者の内訳は,未回答を除き男性 43.9%,女性54.5%,10代0.2%,20代1.2%,30代 5.5%,40代10.8%,50代18.2%,60代31.0%,70 代27.8%,80代以上5.1%となった。守山市では未回 答を除き男性47.6%,女性50.0%,10代0.6%,20 代0.2%,30代8.2%,40代14.0%,50代14.0%,60 代25.0%,70代29.4%,80代以上8.4%となった。 2.4 記述統計 2.4.1 説明変数 図1の説明変数の下位尺度に関する質問項目は, 表2記載のとおりである。[市民共同発電知覚認知] は,質問の前に市民共同発電の概要を説明し,「下 記の市内の施設で実施されている市民共同発電(屋 根に太陽光発電を設置)それぞれについて,「よく 知っている∼全く知らない」を1つずつ選択してく ださい」として回答を求めた。湖南市ではcp.1∼ 6の6つ,守山市ではcp.7∼10の4つそれぞれの市 民共同発電について,「よく知っている(6点)∼ 全く知らない(1点)」の6件法で測定した。尺度の 内的整合性を示すクロンバックα係数は,湖南市で 0.90,守山市で0.82となった。[市民共同発電知覚 認知]は施設の知覚だけでなく,出資募集や稼働 状況に係る広報やHP等での情報に基づく認知とし ての水準が測定される。湖南市の6つの施設の平均 値は2.87,守山市は2.76となり5%水準で有意な 差はない(t=1.36, p=0.18)。湖南市ではコナン市 民共同発電所参号機(柑子袋まちづくりセンター, 2016年3月,16 kW)が3.23で最も高く,守山市 ではもりやま市民ソーラー 1号機(市立守山中学 校,2013年3月,15 kW)が3.34で最も高い。 [太陽光発電推移知覚],[緑のカーテン推移知 覚],[市民共同発電会話],[太陽光発電会話],[緑 のカーテン会話]は,それぞれ表2に示した2項目 ずつにより,「強くそう思う(6点)∼全くそう思 わない(1点)」の6件法で測定した。α係数は両市 ともにいずれも0.70より大きくなった注7。[太陽光 発電推移知覚],[緑のカーテン推移知覚]は,市内 の公共施設や教育・福祉施設,家庭,事務系事業所 や各種店舗等での太陽光発電の設置や緑のカーテン の実施状況の過去からの推移に係る知覚水準が測定 される。[市民共同発電会話],[太陽光発電会話], [緑のカーテン会話]は,それぞれに関する会話の 頻度が測定される。 表2より両市の説明変数の水準を比較すると,守 山市の[緑のカーテン推移知覚]の2項目,[太陽 光発電会話]の2項目,[緑のカーテン会話]の1項
表2 記述統計 要素 設問文 湖南市 (n=565) (n=500)守山市 t値 mean SD mean SD 市民共同 発電知覚 認知 cp.1 てんとうむし 1 号((株)なんてん共働サービス; 石部南 6 丁目 10‒10) 3.06 (1.92) ̶ ̶ cp.2 てんとうむし 2 号(高齢者グループホームわいわい; 石部東 7丁目 5‒25) 2.59 (1.68) ̶ ̶ cp.3 コナン市民共同発電所初号機(地域活動センターバンバン; 西峰町 1‒1) 2.63 (1.63) ̶ ̶ cp.4 コナン市民共同発電所弐号機(甲西陸運(株); 柑子袋 278) 3.09 (1.82) ̶ ̶ cp.5 コナン市民共同発電所参号機(柑子袋まちづくりセンター; 柑子袋 860‒1) 3.23 (1.89) ̶ ̶ cp.6 コナン市民共同発電所四号機(十二坊温泉ゆらら; 岩根 678‒28) 2.62 (1.64) ̶ ̶ cp.7 もりやま市民ソーラー 1 号機(市立守山中学校; 石田町 350) ̶ 3.34 (1.88) ̶ cp.8 もりやま市民ソーラー 2 号機(市立小津こども園; 欲賀町 879) ̶ 3.00 (1.81) ̶ cp.9 もりやま市民ソーラー 3 号機(市立河西幼稚園; 今市町 25‒1) ̶ 2.31 (1.35) ̶ cp.10 もりやま市民ソーラー 4 号機(市立吉身保育園; 吉身 2‒6‒61) ̶ 2.37 (1.38) ̶ 太陽光発 電推移知 覚 sp.1 市内で太陽光発電を設置する人が増えてきている 3.98 (1.11) 3.94 (1.14) 0.56 sp.2 市内の太陽光発電の量が増えてきている 3.91 (1.12) 3.84 (1.17) 1.03 緑のカー テン推移 知覚 gp.1 市内で緑のカーテンに取組む人が増えてきている 3.08 (1.13) 3.31 (1.06) 3.38** gp.2 市内の緑のカーテンの量が増えてきている 3.01 (1.13) 3.23 (1.04) 3.27** 市民共同 発電会話 ct.1ct.2 近所の人と,市民共同発電の話をよくする友人・知人(近所の人以外)と,市民共同発電の話をよくする 1.841.85 (1.05)(1.08) 1.851.84 (0.97) 0.27(0.96) 0.15 太陽光発 電会話 st.1st.2 近所の人と,太陽光発電の話をよくする友人・知人(近所の人以外)と,太陽光発電の話をよくする 2.222.31 (1.19)(1.22) 2.382.50 (1.19) 2.24*(1.20) 2.54* 緑のカー テン会話 gt.1 近所の人と,緑のカーテンの話をよくする 2.27 (1.22) 2.49 (1.20) 2.93** gt.2 友人・知人(近所の人以外)と,緑のカーテンの話をよくする 2.33 (1.25) 2.46 (1.19) 1.67 節電行動 の実施 en.1en.2 エアコンの温度は 28°C を目安に設定するエアコンの不必要なつけっぱなしをしない 3.164.27 (1.55)(1.03) 3.294.22 (1.46) 1.35(1.04) 0.79 en.3 冷蔵庫にものを詰め込み過ぎないようにする 3.61 (1.20) 3.69 (1.11) 1.16 en.4 冷蔵庫のとびらの開閉回数は少なく・短くする 3.57 (1.07) 3.64 (1.02) 1.13 en.5 テレビは必要な時以外は消す 3.87 (1.20) 3.97 (1.09) 1.48 en.6 日中は照明を消して,夜間も照明をできるだけ減らす 3.87 (1.11) 3.88 (1.04) 0.16 en.7 シャワーは不必要に流したままにしない 4.24 (0.96) 4.27 (0.92) 0.54 en.8 電気製品は使わない時は,リモコンの電源ではなく本体の主電 源を切る,またはコンセントからプラグを抜く 2.35 (1.37) 2.33 (1.38) 0.23 節電行動 実施勧め 近所の人に節電を勧めている 1.94 (1.12) 2.08 (1.07) 2.17* 市民共同発電 出資意欲 市民共同発電が新しく設置されるとしたら,出資してみたい 2.39 (1.31) 2.64 (1.28) 3.14** 市民共同発電 出資勧め 市民共同発電が新しく設置されるとしたら,近所の人に出資を勧めたい 1.91 (1.10) 2.08 (1.13) 1.76 緑のカーテン 実施意欲 今夏前に緑のカーテンを実施してみようと思った 3.28 (1.66) 3.37 (1.65) 0.83 緑のカーテン 実施勧め 近所の人に緑のカーテン実施を勧めている 1.95 (1.08) 2.06 (1.03) 2.60** ** p<0.01, * p<0.05.
目(gt.1)が,湖南市よりも高い(p<0.05)。 2.4.2 目的変数 [ 節 電 行 動 の 実 施 ] は 省 エ ネ ル ギ ー セ ン タ ー (2012)35)を参考に,家庭の電力消費量上位5項目 であるエアコン,冷蔵庫,テレビ,照明,電気温水 器に係る節電項目を中心に選定した。表2の各節電 行動の2019年夏季の取組み状況について,「ほぼ実 施した(100%)‒概ね実施した(75%)‒たまに実施 した(50%)‒あまり実施せず(25%)‒ほとんど実施 せず(0%)」の5件法で測定した。そして各選択肢 の実施水準(100%,75%,50%,25%,0%)を 間隔尺度として捉え,5件法にて点数化した。 [節電行動実施勧め],[市民共同発電出資意欲], [市民共同発電出資勧め],[緑のカーテン実施意 欲],[緑のカーテン実施勧め]は,それぞれ表2に 示した項目により,「強くそう思う(6点)∼全く そう思わない(1点)」の6件法で測定した。両市の 目的変数の水準を比較すると,守山市の[節電行動 実施勧め],[市民共同発電出資意欲],[緑のカーテ ン実施勧め]が湖南市よりも高い(p<0.05)。 3. 分 析 結 果 3.1 分析モデルの設定 質問紙調査データをもとに,構造方程式モデリン グ(structural equation model)により,両市それ ぞれで図1の仮説モデルの妥当性の検証を行い,節 電行動,市民共同発電出資,緑のカーテン実施に係 る自身の行動・行動意図および他者に行動を勧める 行為に対し,影響を与える要因について考察する。 分析モデル設定のため,表2の[節電行動の実施] について,両市それぞれで最尤法,プロマックス回 転により因子分析を行った。両市ともにen.8の因子 負荷量が0.35を下回ったため,これを除外して再度 因子分析を行った結果,両市ともに同じ項目で2因 子が抽出された(表3)。これらを[節電行動(冷蔵 庫)],[節電行動(その他)]と命名した。また,尺 度の内的整合性を示すクロンバックα係数は,表3 に示すとおり一般的な基準である0.70を下回った が,項目数が少ないこと,もともと性質の異なる要 素が混在していることもあり,この結果を採用した。 以上をもとに,分析モデルを図2のように設定した。 3.2 分析モデルの検証 図2の分析モデルについて,モデルの識別性確保 のため,潜在変数から下位尺度の潜在変数および観 測変数へのパスで,それぞれ図上で最も上にあるパ ス係数を1に固定する制約を課し,最尤法により解 を求めた。また,AMOS19.0を用いた完全情報最 尤推定法により,欠損値を含めた分析を行った。 結果,表4のように,湖南市のモデルの適合度 はCFI=0.958, RMSEA=0.050,守山市ではCFI= 0.964, RMSEA=0.048と良好な適合度を示した注8。 なお,両市のモデルとも潜在変数から下位尺度の潜 在変数および観測変数へのパスは全て有意となっ た(p<0.05)。以下,[節電行動実施]へのパス, [節電行動実施勧め]へのパス,[市民共同発電出資 意欲]および[緑のカーテン実施意欲]へのパス, [市民共同発電出資勧め]および[緑のカーテン実 施勧め]へのパスごとに分析結果を示す。 表3 因子分析結果(左;湖南市,右;守山市) 湖南市 F1 F2 守山市 F1 F2 F1: 節電行動(その他)(α=0.63) F1: 節電行動(その他)(α=0.65) en.6 日中は照明を消して,夜間も 照明をできるだけ減らす 0.59 0.11 en.6 日中は照明を消して,夜間も 照明をできるだけ減らす 0.67 0.21 en.7 シャワーは不必要に流したま まにしない 0.56 0.21 en.7 シャワーは不必要に流したま まにしない 0.59 0.10 en.2 エアコンの不必要なつけっぱ なしをしない 0.50 0.20 en.5 テレビは必要な時以外は消す 0.54 0.19 en.5 テレビは必要な時以外は消す 0.46 0.12 en.1 エアコンの温度は 28°C を目 安に設定する 0.40 0.09 en.1 エアコンの温度は 28°C を目 安に設定する 0.40 0.15 en.2 エアコンの不必要なつけっぱ なしをしない 0.38 0.26 F2: 節電行動(冷蔵庫)(α=0.67) F2: 節電行動(冷蔵庫)(α=0.68) en.3 冷蔵庫にものを詰め込み過ぎ ないようにする 0.15 0.87 en.3 冷蔵庫にものを詰め込み過ぎ ないようにする 0.12 0.99 en.4 冷蔵庫のとびらの開閉回数は 少なく・短くする 0.44 0.51 en.4 冷蔵庫のとびらの開閉回数は 少なく・短くする 0.37 0.48 因子寄与 1.50 1.14 因子寄与 1.54 1.37 累積寄与率 21.40 37.70 累積寄与率 21.90 41.50
3.2.1 [節電行動実施]へのパスの分析結果 [緑のカーテン会話]からのパスが両市ともに有 意である(p<0.05)。なお[緑のカーテン会話]は [節電行動実施勧め],[緑のカーテン実施意欲],[緑 のカーテン実施勧め]へのパスも,両市ともにいず れも有意である(p<0.01)。また,湖南市のみ[市 民共同発電知覚認知]からのパスが有意である (p<0.05)。ただ両市とも,[節電行動実施]の決定 係数R2の値は相対的に低い。 3.2.2 [節電行動実施勧め]へのパスの分析結果 [市民共同発電知覚認知],[太陽光発電推移知 覚],[緑のカーテン推移知覚]からのパスは,両市 ともにいずれも5%水準で有意でない。他方,守山 市の「市民共同発電会話→節電行動実施勧め」を除 いて,[市民共同発電会話],[太陽光発電会話],[緑 のカーテン会話]からのパスは,両市ともに有意で ある(p<0.01)。 また表5のように,[節電行動実施勧め]へのパ ス係数の差異として,湖南市では[緑のカーテン 会話]からのパスが,[市民共同発電会話]およ び[太陽光発電会話]からのパスより大きい(p< 0.01)。守山市では[市民共同発電会話]からのパ スが,[太陽光発電会話]および[緑のカーテン会 話]からのパスより小さい(p<0.01)。 以上より,再エネ施設・設備や省エネの取組み の知覚や認知ではなく,それらに関する会話での知 識・情報の伝達や共有が,[節電行動実施勧め]に 正の影響を与える。ただ守山市では[市民共同発電 会話]の影響は大きいとはいえず,湖南市では[緑 のカーテン会話]の影響が大きい。 3.2.3 [市民共同発電出資意欲],[緑のカーテン実 施意欲]へのパスの分析結果 [市民共同発電出資意欲]へのパスについて,[市 民共同発電知覚認知],[市民共同発電会話],[太陽 光発電会話]からのパスが,両市ともにいずれも有 意である(p<0.05)。他方,[太陽光発電推移知覚] からのパスは,両市ともに5%水準で有意でない。 また表6のように,[市民共同発電出資意欲]へ のパス係数の差異について,湖南市では[市民共同 発電会話]からのパスが,[太陽光発電会話]およ び[市民共同発電知覚認知]からのパスより大きい (p<0.01)。守山市ではこれらパス間には5%水準 で有意な差はない。 [緑のカーテン実施意欲]へのパスについて,[緑 のカーテン会話]からのパスは両市ともに有意で ある(p<0.01)。守山市では[緑のカーテン推移知 覚]からのパスも有意である(p<0.01)。また両 市ともに「緑のカーテン会話→緑のカーテン実施 意欲」が「緑のカーテン推移知覚→緑のカーテン実 施意欲」よりも大きい(湖南市z=11.47, p<0.01, 守山市z=10.24, p<0.01)。つまり,街なかの緑の カーテンの知覚や認知よりも,緑のカーテンに関す る会話での知識・情報の伝達や共有が,[緑のカー テン実施意欲]に,より大きな正の影響を与える。 また守山市では,[緑のカーテン会話]からの知 識・情報以外の要素として,[緑のカーテン推移知 図2 分析モデル 説明変数,性別ダミー,年齢ダミーそれぞれの間の共分散,目的変数それぞれの間の共分散,誤差変数,攪乱変数は省略し て描図。2つのダミー変数それぞれからの目的変数へのパスは簡略化して描図。「市民共同発電知覚認知」の観測変数(cp.1 ∼cp.6)は湖南市のモデルを例に描図。
覚]としての他者の緑のカーテンの実施状況をもと に得られる知識・情報等も,自身の緑のカーテン実 施に影響を与える。 3.2.4 [市民共同発電出資勧め],[緑のカーテン実 施勧め]へのパスの分析結果 [市民共同発電出資勧め]へのパスについて,[市民 表4 分析結果 湖南市 (n=565) 守山市 (n=500) 市民共同発電知覚認知→節電行動実施 0.14* 0.02 太陽光発電推移知覚→節電行動実施 0.04 −0.08 緑のカーテン推移知覚→節電行動実施 −0.05 −0.06 市民共同発電会話→節電行動実施 −0.10 0.13 太陽光発電会話→節電行動実施 0.03 −0.07 緑のカーテン会話→節電行動実施 0.18* 0.19* 市民共同発電知覚認知→節電行動実施勧め −0.02 0.00 太陽光発電推移知覚→節電行動実施勧め −0.02 −0.04 緑のカーテン推移知覚→節電行動実施勧め 0.04 0.03 市民共同発電会話→節電行動実施勧め 0.17** 0.05 太陽光発電会話→節電行動実施勧め 0.14** 0.34** 緑のカーテン会話→節電行動実施勧め 0.43** 0.32** 市民共同発電知覚認知→市民共同発電出資意欲 0.11* 0.14** 太陽光発電推移知覚→市民共同発電出資意欲 −0.04 0.07 市民共同発電会話→市民共同発電出資意欲 0.36** 0.14* 太陽光発電会話→市民共同発電出資意欲 0.12* 0.18* 市民共同発電知覚認知→市民共同発電出資勧め 0.02 0.04 太陽光発電推移知覚→市民共同発電出資勧め −0.02 0.05 市民共同発電会話→市民共同発電出資勧め 0.55** 0.32** 太陽光発電会話→市民共同発電出資勧め 0.15** 0.34** 緑のカーテン推移知覚→緑のカーテン実施意欲 0.06 0.17** 緑のカーテン会話→緑のカーテン実施意欲 0.45** 0.37** 緑のカーテン推移知覚→緑のカーテン実施勧め −0.01 0.04 緑のカーテン会話→緑のカーテン実施勧め 0.79** 0.77** 性別ダミー→節電行動の実施 0.02 0.04 性別ダミー→節電行動実施勧め −0.07* −0.01 性別ダミー→市民共同発電出資意欲 −0.04 −0.15** 性別ダミー→市民共同発電出資勧め −0.06 −0.10** 性別ダミー→緑のカーテン実施意欲 0.01 −0.02 性別ダミー→緑のカーテン実施勧め −0.05 −0.07* 年齢ダミー→節電行動の実施 0.28** 0.20** 年齢ダミー→節電行動実施勧め −0.04 0.02 年齢ダミー→市民共同発電出資意欲 0.01 −0.14** 年齢ダミー→市民共同発電出資勧め 0.03 −0.04 年齢ダミー→緑のカーテン実施意欲 0.10* 0.10* 年齢ダミー→緑のカーテン実施勧め −0.06 −0.01 R2[節電行動実施] 0.16 0.14 R2[節電行動実施勧め] 0.43 0.40 R2[市民共同発電出資意欲] 0.27 0.19 R2[市民共同発電出資勧め] 0.46 0.41 R2[緑のカーテン実施意欲] 0.28 0.27 R2[緑のカーテン実施勧め] 0.59 0.62
モデルの適合度 CFI=0.958, RMSEA=0.050 CFI=0.964, RMSEA=0.048
共同発電知覚認知],[太陽光発電推移知覚]からのパ スは,両市ともにいずれも5%水準で有意でない。他 方,[市民共同発電会話],[太陽光発電会話]からの パスは,両市ともにいずれも有意である(p<0.01)。 [緑のカーテン実施勧め]へのパスも同様の結果 である。[緑のカーテン推移知覚]からのパスは両 市ともにいずれも5%水準で有意でなく,[緑のカー テン会話]からのパスは両市ともにいずれも有意で ある(p<0.01)。 ここで[市民共同発電出資勧め]へのパス係数の 差異について,湖南市では[市民共同発電会話]か らのパスが[太陽光発電会話]からのパスより大き い(z=4.98, p<0.01)。守山市ではこれらパス間に は5%水準で有意な差はない(z=0.23, p=n.s.)。 以上より,[節電行動実施勧め]の分析結果と同 様に,再エネ施設・設備や省エネの取組みの知覚や 認知ではなく,それらに関する会話での知識・情報 の伝達や共有が,[市民共同発電出資勧め],[緑の カーテン実施勧め]に正の影響を与える。 ここで[性別ダミー],[年齢ダミー]の結果をま とめて示すと,湖南市では女性の[節電行動実施勧 め]へのパスは有意で負符号であり(p<0.05),高 年齢層の[節電行動実施],[緑のカーテン実施意 欲]へのパスは有意であった(p<0.05)。守山市で は女性の[市民共同発電出資意欲],[市民共同発 電出資勧め],[緑のカーテン実施勧め],高年齢層 の[市民共同発電出資意欲]へのパスは有意で負符 号であり(p<0.05),高年齢層の[節電行動実施], [緑のカーテン実施意欲]へのパスは有意であった (p<0.05)。両市に共通する結果として,高年齢層 の[節電行動の実施],[緑のカーテン実施意欲]が 有意となっている。 4. 考 察 市民共同発電([市民共同発電知覚認知],[市民 共同発電会話])の影響,緑のカーテン([緑のカー テン推移知覚],[緑のカーテン会話])の影響,太 陽光発電([太陽光発電推移知覚],[太陽光発電会 話])の影響ごとに,主に節電行動に関する分析結 果を考察する。 4.1 市民共同発電の影響 [市民共同発電知覚認知],[市民共同発電会話] 水準に,両市間で5%水準で有意な差はない。ただ 守山市では「市民共同発電知覚認知→節電行動実 施」,「市民共同発電会話→節電行動実施勧め」は, 湖南市と異なり5%水準で有意でない。また「市民 共同発電会話→市民共同発電出資意欲」,「市民共同 発電会話→市民共同発電出資勧め」のパス係数は, 湖南市と異なり,[太陽光発電会話]からのパスと 比べて有意には大きくない。これらより守山市で は,湖南市と比較すると,市民共同発電が節電行動 に与える外部性,および市民共同発電出資に与える 影響は大きくないといえる。 なお守山市では表2より,[節電行動実施勧め], [市民共同発電出資意欲]水準は湖南市よりも高い (p<0.05)。また表4より,守山市の[市民共同発電 出資意欲]の決定係数R2の値は相対的に低い。守 山市では,市民共同発電に拠らない要因が,これら に与える影響が相対的に大きいことが示唆される。 他方湖南市では,街なかの市民共同発電の知覚や 認知,市民共同発電に関する会話での知識・情報の 伝達や共有が,節電行動と市民共同発電出資に与え る影響は大きい。 4.2 緑のカーテンの影響 [緑のカーテン会話]からのパスは,両市ともに 表5 [節電行動実施勧め]へのパス係数の差の検定結果(z値) 湖南市 守山市 「市民共同発電会話→節電行動実施勧め」 vs 「太陽光発電会話→節電行動実施勧め」 0.56 2.59** 「市民共同発電会話→節電行動実施勧め」 vs「緑のカーテン会話→節電行動実施勧め」 2.81** 2.61** 「太陽光発電会話→節電行動実施勧め」 vs 「緑のカーテン会話→節電行動実施勧め」 3.46** 0.44 ** p<0.01, * p<0.05. 表6 [市民共同発電出資意欲]へのパス係数の差の検定結果(z値) 湖南市 守山市 「市民共同発電会話→市民共同発電出資意欲」 vs 「太陽光発電会話→市民共同発電出資意欲」 2.62** 0.15 「市民共同発電会話→市民共同発電出資意欲」 vs 「市民共同発電知覚認知→市民共同発電出資意欲」 3.05** 0.41 「太陽光発電会話→市民共同発電出資意欲」 vs 「市民共同発電知覚認知→市民共同発電出資意欲」 0.31 0.82 ** p<0.01, * p<0.05.
全てのパス([節電行動実施],[節電行動実施勧 め],[緑のカーテン実施意欲],[緑のカーテン実施 勧め])が有意であった(p<0.05)。特に湖南市の [節電行動実施勧め]へのパスは,他の会話に係る パス([市民共同発電会話],[太陽光発電会話])か らの影響よりも大きい(p<0.01)。 節電行動([節電行動実施],[節電行動実施勧 め])への影響においては,緑のカーテンは省エネ の取組みであり,[緑のカーテン会話]において「省 エネの知識・情報→節電行動」の連想は自然といえ る。他方,市民共同発電,太陽光発電は再エネの 施設・設備である。両市とも[市民共同発電会話], [太陽光発電会話]から[節電行動実施]へのパス は5%水準で有意でない。また湖南市では[市民共 同発電会話],[太陽光発電会話]から[節電行動勧 め]へのパスは5%水準で有意であるが,前述した ようにいずれも[緑のカーテン会話]からのパスに 比べて小さい(p<0.01)。守山市では[太陽光発電 会話]から[節電行動勧め]へのパスは5%水準で 有意であるが,[市民共同発電会話]からのパスは 5%水準で有意でない。これらより,市民共同発電, 太陽光発電に係る会話での「再エネの知識・情報 →CO2削減→節電行動」としての節電行動への影響 は,緑のカーテンに係る会話よりも相対的に小さい といえる。これらが[緑のカーテン会話]の節電行 動への影響の大きさの要因の1つと考えられる。 4.3 太陽光発電の影響 [太陽光発電推移知覚]からのパスは,両市とも に全てのパス([節電行動実施],[節電行動実施勧 め],[市民共同発電出資意欲],[市民共同発電出 資勧め])が5%水準で有意でない。太陽光発電は 2012年のFIT以降急速に普及が進み,表2のように [太陽光発電推移知覚]水準は,両市ともに中点の 3.5を超え高い注9。既に太陽光発電の知覚から受け る影響は小さくなっていると考えられる。 また湖南市では,[太陽光発電会話]からのパス のうち,他の会話([市民共同発電会話],[緑のカー テン会話])からのパスと比較して,5%水準で大き いパスはない。表2のように[太陽光発電会話]水 準は,[市民共同発電会話]水準よりも高いが,自身 の行動・行動意図([節電行動の実施],[市民共同 発電出資意欲])と,他者に行動を勧める行為([節 電行動実施勧め],[市民共同発電出資勧め])に与 える影響は大きいとはいえない。このことは,太陽 光発電に関する会話内でのこれら行動・行動意図や 行為の促進に係る内容の弱さが示唆される。節電行 動に対しては,前項の[緑のカーテン会話]で示し た省エネと再エネの違いが要因として想定される。 他方守山市では,「太陽光発電会話→節電行動実 施勧め」が「市民共同発電会話→節電行動実施勧 め」よりも有意に大きい(p<0.05)。4.1で守山市 の市民共同発電の節電行動に与える外部性の小ささ を示したように,他の住民に節電行動を勧める行為 に対しては,[太陽光発電会話]の影響が大きい。 5. お わ り に 本研究は,市民共同発電の外部性を明らかにする 目的から,住民の街なかの市民共同発電に係る知 覚・認知や他者との会話が,自宅での節電行動に影 響を与えるか,さらに他の住民に節電行動を勧める 行為に影響を与えるかを,湖南市と守山市それぞれ の住民への質問紙調査データを用いた分析により明 らかにした。その際,街なかの太陽光発電と緑の カーテンに係る知覚や他者との会話が与える影響と の比較分析も行った。 結果,湖南市でのみ,市民共同発電に係る知覚・ 認知が自宅での節電行動に影響を与えること,市民 共同発電に関する会話が他の住民に節電行動を勧め る行為に影響を与えることが明らかになった。また 太陽光発電に関する会話は,両市ともに他の住民に 節電行動を勧める行為に影響を与えること,緑の カーテンに関する会話は,両市ともに自宅での節電 行動および他の住民に節電行動を勧める行為に影響 を与えることが明らかになった。さらに両市とも に,市民共同発電に関する会話は,緑のカーテンに 関する会話よりも,他の住民に節電行動を勧める行 為に与える影響が小さいことが示された。 市民共同発電の節電行動に対する外部性は湖南市 でのみ確認された。この外部性のメカニズムについ ては,今後検証が必要となる。仮説として,住民の 街なかの市民共同発電の知覚・認知や,市民共同発 電に関する会話でのポジティブな内容の知識・情報 の伝達や共有を通じての,市民共同発電による地域 のCO2削減に対する理解や賛同等が,自身の節電 行動および他者に節電行動を勧める行為に影響を与 えることが考えられる。 ここでSNSでの自身の節電行動等の情報発信など も,他者に行動を勧める行為となるが,他者との直 接の会話が一般的な手段である。そのため,会話水 準と他者に行動を勧める行為水準に関係があるのは 当然といえる。ただ,湖南市と守山市での分析結果 から,この関係の大きさの差異が示された。例えば, 両市間には[市民共同発電会話]水準に有意な差は ないが,「市民共同発電会話→節電行動実施勧め」の 有意性の有無の違いや,「市民共同発電会話→市民共 同発電出資勧め」のパス係数の「太陽光発電会話→
市民共同発電出資勧め」と比較した際の相対的な大 きさの差異である。つまり,会話の量と質の区別が 必要であり,対象の行動を促進するような内容の知 識・情報の伝達や共有が,会話内でどれだけなされ るかの違いといえる。 本研究では湖南市と守山市を対象に,市民共同発 電の外部性を検証した。緑のカーテン,太陽光発電 との比較では,他の住民に節電行動を勧める行為に 対しては,両市ともに市民共同発電に関する会話よ りも,緑のカーテンに関する会話の影響が大きい結 果が示された。また守山市では,太陽光発電に関す る会話が与える影響も,市民共同発電に関する会話 よりも大きい結果となった。今後,他地域での研究 を通じた市民共同発電の外部性に係る本分析結果の 頑健性の検証に加え,両市における緑のカーテンの 外部性のメカニズムの検証も求められる。 注 注1 豊田(2017a)1)は市民・地域共同発電の定義を 「(1)市民や地域主体からの資金が一定の割合を占 めていること,(2)その建設や運営にあたり市民 や地域主体が意思決定に関わっていること,(3) 収益の一定部分が何らかの方法で市民や地域に還 元されるなどの地域貢献があること,(4)温暖化 やエネルギー問題などの社会課題または地域課題 の解決に寄与することを目指した取組みであるこ と,の4点を条件として,この中のいくつかを満 たすもの」(p. 18)としている。 注2 市民連続講座の開催は,2012年度は8回(参加 者361名), 2013年度7回(169名), 2014年度5回 (170名 ), 2015年 度10回(498名 ), 2016年 度12 回(492名 ), 2017年 度8回(288名 ), 2018年 度 8回(453名)となっている(湖南市,202036))。 なお,湖南市も出資する地域新電力会社「こなん ウルトラパワー株式会社」が,質問紙調査実施後 の2019年11月から,家庭や店舗・事務所向けの 電力小売りサービスを開始している。地域新電力 会社のサービス開始は質問紙調査の実施後であ り,回答者は本調査の市民共同発電所と地域新電 力会社の取組みを混同することはないと考える。 注3 もりやま市民ソーラー 3号機,4号機では高齢 者の出資を促すために,子・孫を受取人として指 定できる生前贈与型出資も可能となっている。 注4 湖南市地域自然エネルギー地域活性化戦略プラ ン(2015年2月)内のアンケート調査結果では, 市民共同発電所の認知度は,「参加している」が 8.9%,「聞いたことがある」が46.8%,「聞いた ことがない」が44.4%となっている。 注5 村上(2019)34)では,6つの質問項目で測定さ れた近隣住民との関わりを因子分析した結果, 1つの因子として抽出された。そのため,他者と の会話単独の影響は明らかにされていない。 注6 質問紙では,10歳単位の選択肢式(10代,20 代,30代,40代,50代,60代,70代,80代 以 上)で聞いた。 注7 [太陽光発電推移知覚]のα 係数は湖南市で 0.92, 守山市で0.94, [緑のカーテン推移知覚]の α係数は湖南市で0.96, 守山市で0.97, [市民共同発 電会話]のα係数は湖南市で0.99, 守山市で0.98, [太陽光発電会話]のα係数は湖南市で0.95, 守山 市で0.91, [緑のカーテン会話]のα係数は湖南市 で0.95, 守山市で0.96となった。 注8 適合度の水準として,狩野・三浦(1997)37),Hu and Bentler(1998)38),West et al.(2012)39), 豊 田(2014)40)はCFIは0.95以上が望ましいとする。 RMSEAに つ い て は, 狩 野・ 三 浦(1997)37), 豊 田(2014)40)は0.10以上だとモデルの当てはまり は悪いとし,Kline(2004)41)は0.05未満をClose fit (良好), 0.05‒0.08をfair(良), 0.08‒0.10をMediocre (可), 0.10以上をPoor(不可)と整理する。なお図2 のように[節電行動実施]を設定せずに,[節電行動 (冷蔵庫)], [節電行動(その他)]の2つそれぞれを 目的変数としたモデルで分析した結果,湖南市のモ デルはCFI: 0.939, RMSEA: 0.062, AIC: 1370.76, 守 山 市 がCFI: 0.939, RMSEA: 0.063, AIC: 1131.10と なった。図2のモデルでは湖南市のAICが1133.98, 守山市が903.55とこれらより小さくなった。また図 2のモデル適合度がより良好であった。したがって, 図2のように高次因子の[節電行動実施]を設定し たモデルを分析モデルとして採用した。 注9 市町村別データが公表されている最新版の平成 25年住宅・土地統計調査より,湖南市の持ち家総 数に占める「太陽光を利用した発電機器:あり」 の持ち家の割合は7.6%,2006∼2010年建築分の 持ち家での割合は13.0%,2011∼2013年9月建 築分の持ち家での割合は37.5%であり,守山市で は順に9.2%,15.5%,31.9%となっている。両市 とも2011∼2013年9月では,太陽光発電の設置 率は新築の3割を超えている。 文 献 1) 豊田陽介(2017a)広がる再生可能エネルギー 100%と日本の市民・地域共同発電所.都市問題, 108(11),16‒22. 2) 豊田陽介(2017b)市民・地域共同発電所全国 調 査 報 告 書2016, https://www.kikonet.org/info/ publication/citizens-co-owned-renewables-report- 2016, (参照2020-4-3). 3) 飯田哲也・丸山康司・柏谷 至・鈴木 亨・長谷 川公一(2003)市民主体型のエネルギー政策に関 する研究.財団法人消費生活研究所2003年度持 続可能な社会と地球環境のための研究助成成果報 告書,26pp. 4) 西城戸 誠・丸山康司(2006)「市民風車」に誰
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Analysis of the Impact of Community-based Power Plant on
Residents’ Power Saving Behavior and Other Behaviors
̶Case Studies of Konan City and Moriyama City, Shiga Prefecture̶
Kazuma Murakami
(The University of Shiga Prefecture,
2500 Hassaka-cho, Hikone-City, Shiga, 522‒8533, Japan)
Abstract
This study aims to analyze the externalities of community-based power plants, using questionnaire survey data collected from the residents of Konan and Moriyama cities. We examined the impact of the residents perceptions and cognition of community-based power plants, and their conversations with others, on their power saving behavior at home and on their recommendations to other residents on power saving. Additionally, we conducted a comparative analysis of the impact of their perceptions and conversations with others, on solar power and green curtains in the two cities. Results revealed that only in Konan city, the residents perceptions and cognition of community-based power plants influenced the promotion of power saving behavior at home. Moreover, conversations with others about community-based power plants influenced their recommendations to other residents on pow-er saving. In addition, in both cities, convpow-ersations about solar powpow-er influenced their recom-mendations to other residents on power saving. Conversations about green curtains also influenced power saving behavior at home and their recommendations to other residents on power saving. Furthermore, in both cities, conversations about green curtains were found to have a greater impact on their recommendations to other residents on power saving than conversations about community-based power plants.
Key Words: Community-based power plant, externality, power saving behavior, solar power, green curtains