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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する救急看護の実態と課題 ―日本救急看護学会による実態調査―

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Academic year: 2021

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(1)日本救急看護学会雑誌:23. 《資料》 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する救急看護の実態と課題 ―日本救急看護学会による実態調査― Actual conditions survey and issues of emergency nursing for new coronavirus infection (COVID-19); Fact-finding survey by the Japanese Association for Emergency Nursing. 山勢 善江(Yoshie Yamase). 山勢 博彰(Hiroaki Yamase). 明石 惠子(Keiko Akashi). 浅香えみ子(Emiko Asaka). 木澤 晃代(Akiyo Kizawa). 剱持 功(Isao Kenmochi). 佐々木吉子(Yoshiko Sasaki). 佐藤 憲明(Noriaki Sato). 芝田 里花(Rika Shibata). 菅原 美樹(Miki Sugawara). 中村 美鈴(Misuzu Nakamura). 箱崎 恵理(Eri Hakozaki). 増山 純二(Junji Masuyama). 三上 剛人(Takehito Mikami). 藤原 正恵(Masae Fujiwara). . 森田 孝子(Takako Morita). キーワード:COVID-19,救急看護,実態調査 Key words:COVID-19, emergency nursing, fact-finding survey. 要 旨 2019 年 11 月に中国で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、わが国でも全国に拡大し、2020 年 4 月には第一波、夏に第二波、そして 11 月には第三波が到来した。 本学会では、COVID-19 緊急事態宣言下での救急看護の実態と課題を明らかにすることを目的に、学会ホーム ページを通じて、本学会員を中心に Web アンケート調査を実施した。調査内容は、COVID-19 患者への所属施設の 対応、具体的対応、感染防止策、看護師の認識や思い等である。調査には 425 名が回答した。 多くの施設で、待合室や診察室として「新設の専用エリア」や「陰圧室」を使用していたが、 「他患者と同じエ リア」を使用していた施設もあり、ハード面の迅速な設置の困難さが明らかになった。また、半数以上の者が、感 染防護具、看護師の不足を感じていた。さらに、救急看護師は未知の感染症への対応で、自分自身や家族への感染 の恐怖、行政や所属施設、上司への不満などネガティブな感情をもつ者が多く、調査時点で心理的不安定を経験し ていた看護師は 29.6%いた。 今後の医療の課題と対策には、感染対策指針やマニュアルの整備、検査体制の強化、ワクチンや治療薬の開発促 進、専門病院の整備、専門的スタッフの配置、日本版 CDC の設置、医療者への報酬増額があった。. 一般社団法人 日本救急看護学会 理事・監事 受付:2020 年 12 月 12 日 受理:2021 年 3 月 1 日. 37.

(2) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する救急看護の実態と課題. Ⅰ.はじめに. Ⅱ.調査の目的と意義. 2019 年 11 月に中国の武漢市で最初の事例が確認さ. 調査目的は、COVID-19 第一波中の緊急事態宣言下. れた Corona Virus Disease-19(以下、COVID-19 と略. での救急看護の実態と課題を明らかにすることである。. す)感染症は、中国大陸での感染広大の後、世界的な. 本学会が全国規模で調査し、わが国の COVID-19 に対. 流行へと広がり、2020 年 3 月には WHO によりパンデ. する救急看護の実態を明確化することは、COVID-19. ミック相当との認識が表明された。わが国では、初め. への救急看護における感染対策を検討すると同時に、. ての事例が 1 月に確認され、2 月にクルーズ客船での. 今後も訪れる可能性のある未知の感染症への救急医. 集団感染や主要都市でのクラスター発生、その後全国. 療・看護の対応にも寄与するものと考える。. 規模の市中感染へと広がりを見せた。4 月 7 日には国 による緊急事態宣言が発せられ、夏には第二波、そし. Ⅲ.調査方法. て 11 月には第三波が到来した。 日本救急看護学会 (以下、本学会とする) では、日々. 質問票を用いた実態調査で、COVID-19 に対する救. 報道される COVID-19 に対する救急医療現場の現状. 急看護の実態と課題を明らかにするために、救急看護. に危機を感じ、2020 年 4 月 15 日に代表理事名で緊急. 師を対象にインターネットを介した Web による調査. 声明を発表した(日本救急看護学会,2020a) 。また、. を行った。調査票は匿名設定のうえ Google フォーム. 現場の声を反映し、主として救急外来での対応のため. にて作成した。. の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応 1.調査期間. した救急看護実践ガイド」 (日本救急看護学会,2020b) および「救急初療看護に活かすフィジカルアセスメン. 2020 年 6 月 19 日〜 7 月 20 日. トミニガイド」 (日本救急看護学会,2020c)を公表し 2.調査対象者. た。 さらに、学会ホームページ上に学会員が自由に意見. 目的母集団を、わが国の医療施設で勤務する救急看. を述べられる入力サイトを設けたところ、数日で 200. 護師とした。救急部門(救急外来、救命救急センター、. 項目以上の救急看護師の声が寄せられた(日本救急看. 救急病棟など)専属の看護師、および他部門(看護管. 護学会,2020d) 。その内容は、自分が感染すること. 理部、一般病棟、検査部門、手術室など)に所属して. への恐怖を感じながら勤務しているにもかかわらず、. 救急医療現場にもかかわる看護師を対象とした。大. 症状を隠して受診する患者への怒り、隔離のための準. 学、専門学校、行政等で勤務し、救急医療実践にかか. 備が不十分なまま COVID-19 患者を受け入れざるを得. わっていない者は除外した。. ないことによって、他の疾患の救急・重症患者を断ら 3.調査依頼方法. なければならない現実、COVID-19 患者に対する命の 選別をせざるを得ない状況など、救急看護師を取り巻. 本学会の会員、救急看護認定看護師、それらが所属. く状況が語られていた。これらは【圧倒的な感染防御. する救急部門の看護師に対し、電子メールおよび学会. 具の不足】【COVID-19 患者の増加】 【患者や第三者の. ホームページでの調査協力をアナウンスし、所定の. 理解不足】 【職業倫理感との葛藤】 【誹謗中傷】 【疲弊】. Web 調査ページから回答するよう依頼した。. の 6 つに分類された。救急看護師は、こうした逼迫し. 本学会の会員には、学会のポータルサイトのシステ. た状況の中、感染防御に努めながら現場での実践を工. ムにて、会員への一斉メール配信で調査協力を依頼し. 夫し、その職務を全うしてきた。. た。救急看護認定看護師には、日本救急看護認定看護. COVID-19 緊急事態宣言下で救急医療の現場ではど. 師会に協力を求め、日本救急看護認定看護師会のメー. のような看護実践が行われ、どのような課題があるの. リングリストにて一斉メール配信で調査協力を依頼し. か、その実態を把握し今後の感染対策と救急対応に寄. た。救急部門の看護師には、会員と救急看護認定看護. 与したいと考え、本調査を実施した。. 師への調査協力依頼時に、会員だけでなく所属する救 急部門(救急外来、救命救急センター、救急病棟など). 38.

(3) 日本救急看護学会雑誌:23. 査を受け承認を得た(承認番号 No.20200218 号)。. の看護師にも調査に協力してもらうように依頼した。 4.調査内容. Ⅳ.結果. 1)基本属性(背景) 会員か非会員か、所属部署、年齢、救急看護師経験. 425 名から回答が得られた。. 年数、専門資格、施設の救急指定状況 1.基本属性 2)COVID-19 患者への所属施設の対応状況. 対象者の内訳は、会員 399 名(93.9%) 、非会員 26. 所属施設の患者受け入れ状況、対応策、受け入れ実. 名(6.1%)であった。対象者の年齢は、平均 42.5 歳〔SD. 績. (標準偏差)7.7〕 、救急看護師経験年数は平均 12.4 年 (SD 6.9)であった。. 3)COVID-19 患者への具体的対応(対応経験のあ. 専門的な資格は、救急看護認定看護師188名(44%) 、. る対象者が回答). 急性・重症患者看護専門看護師 16 名(5%) 、そのほ. 外来での対応(電話での受診相談、待合室 / 診察室. か、集中ケア認定看護師、小児救急看護認定看護師、. 状況、トリアージ状況、重視する症状など) 、入院後. Japanese Triage and Acuity Scale( 以 下、JTAS と. の対応(病室状況、ME 機器・医療器具状況、治療・. 略す)コース修了者、特定行為研修修了者などが含ま. 看護状況). れていた。 調査時点の所属部署は、救急外来・救急初療 269 名. 4)所属施設の感染防止策. (63.3%)、集中治療室 57 名(13.4%)、救急患者専用病. 感染防止策の不足 / 充足. 棟 41 名(9.6%)であり、回答者のうち 367 名(86%) が救急患者に直接的なケアを行う部署で勤務してい. 5)看護師の現状の認識や思い. た。また、看護管理部門が 14 名(3%)で、COVID-19. 認識の変化、職場や家庭での工夫と支援、仕事や生. 患者はじめ院内の看護全体を統括する立場の者もい. 活への思い、心理状態. た。. 6)課題と対策. 2.COVID-19 患者への所属施設の対応状況. 医療体制の問題、必要な対策など. 所属施設は、400 床以上が 260 名(61.2%) 、100 〜 400 床未満は 152 名(35.8%)であった。これらの病院の. 回答は、項目により、単一回答、複数回答、評価ス. 救急指定状況は、二次救急医療施設が 195 名(46.3%) 、. ケール、自由記述とした。. 全次型救急医療施設が 116 名(27.6%) 、三次救急医療 施設が 106 名(25.2%)、初期救急医療施設は 4 名(0.9%). 5.データ分析方法. であり、このうち 91% の病院で COVID-19 患者を受け 入れていた(図 1)。また、回答者の半数以上が数名〜. 調査項目毎に集計し、看護師の心理状況については. 多数の COVID-19 患者に直接対応していた(図 2)。. カットオフ値で 2 群に分けた。また、自由記述は項目 ごとに類似するものをまとめた。. 所属施設での COVID-19 への対応策は、専用マニュ アル作成、専門外来(部門)の設置、学会等による指. 6.調査対象者への説明と倫理的配慮. 針やマニュアルの参照、専門チーム編成 / 専門スタッ フ配置などと回答したものが多かった(図 3) 。. 調査依頼時のメール本文には、本調査の目的と概要 を明記して調査協力への依頼をした。また、回答ペー. 3.COVID-19 患者への外来での具体的対応. ジの前文には、本調査の目的・具体的方法・倫理的配 慮の詳細な説明文を掲載し、調査協力への同意確認. 外来での具体的対応では、231 名(72%)の看護師. チェック欄へのチェックをもって同意とみなした。調. が「多数の患者からの電話相談」に対応していた(図. 査にあたり、本学会倫理委員会に申請し、研究倫理審. 4)。また、来院後のトリアージの際に重視した症状. 39.

(4) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する救急看護の実態と課題. 患者を受け入れた ことはない 48 名(11.3%). 初期救急 4 名(0.9%). 三次救急 106 名 (25.2%). 二次救急 195 名 (46.3%). 多数の患者に自分が 直接対応した 77 名(18.2%). ほかのスタッフまたは ほかの部署で対応した 135 名(31.8%). 全次型救急 116 名 (27.6%). 図 1 所属する施設の救急指定状況(n = 421 名). 数名の患者に自分が 直接対応した 164 名(38.7%). 図 2 COVID-19 患者への対応(n = 424 名). 0. 50. 100. 150. 200. 250. 300. 350. 400(件). 355. 専用マニュアル作成 248. 専門外来(部門)の設置. 238. 学会等による指針やマニュアルの参照. 233. 専門チーム編成 / 専門スタッフ配置 186. 勉強会の開催 125. 受け入れ体制の変更(診療時間帯の変更など). 113. 救急患者の受け入れ制限 外部組織からの応援. 16. その他. 19. 図 3 所属施設での COVID-19 患者への対応策(複数回答 n = 423 名). や徴候は、発熱、呼吸困難、咳、味覚・嗅覚障害など. 相談はなかった 19 名(6.0%). であった(図 5) 。診察までの待合室では「感染防止策 の徹底」を重視し「既存の感染患者専用待合室」が 176 件、 「新設した専用の待合室」が 172 件あったが、 「ほ かの救急患者と同じ待合室」も 45 件であった(図 6)。. 数名からの相談が あった 68 名(21.4%). さらに、患者の診察には「既存の感染症患者専用の診 察室」が 203 件でもっとも多く、次いで「新設した専 用の診察室」149 件や、 「陰圧室」の使用が 139 件であっ. 多数の相談があった 231 名(72.6%). たが、58 件は「ほかの救急患者と同じ診察室」を使 用していた(図 7) 。 救急外来での対応時の工夫の自由記述では、 「待合 室も診察室も限られており、既存のエリアを急遽ビ ニールシートで囲って使用した」 「スクリーニング時. 図 4 電話での受診相談(n = 318 名). 点では接触歴はないと言っていたが、医師の診察時に. 40.

(5) 日本救急看護学会雑誌:23. 0. 50. 100. 150. 200. 250. 300. 350(件). 331. 発熱 308. 呼吸困難. 297. 咳 268. 味覚・嗅覚障害 192. 怠感 131. 咽喉痛. 117. 鼻汁・鼻閉 77. 消化器症状 53. 頭痛 40. 胸部痛 接触歴 渡航歴 その他. 11 5 10. 図 5 重視した症状や徴候(複数回答 n = 342 名). (件) 0. (件). 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200. 0. 既存の感染患者 専用待合室. 176. 既存の感染患者 専用の診察室. 新設した専用の 待合室. 172. 新設した専用の 診察室. ほかの救急患者 と同じ待合室 その他. 45. 50. 100. 149 139. ほかの救急患者 と同じ診察室 その他. 図 6 待合室の場所(複数回答 n = 336 名). 200. 203. 陰圧室. 32. 150. 58 19. 図 7 診察室の場所(複数回答 n = 339 名). 濃厚接触者であることがわかり一時騒然となったが、 徹底した消毒を行い次の患者に備えた」 「COVID-19. (32.7%)、「ほかの患者と同じもの」が 90 名(28.0%). 疑い患者を受け入れたため、唯一の初療室がレッド. であった。. ゾーンとなり、ほかの救急患者の診療をストップせざ. 所属施設で不足していたのは、「個人防護具」(306. るを得なかった」など、できるかぎりの工夫を凝らし. 件)、 「外来エリア(待合室など)」(282 件)、 「消毒剤・. た対応があった。 COVID-19 疑い患者の入院病床として「既存の感染. 物品」 (218 件)など、感染予防に関するものであった。. 患者専用病室」を使用していたと回答した者が 159 名. また、看護体制にかかわる「看護管理・体制」 (244 件) 、. (49.8%) 、 「COVID-19 専用の病室」は 154 名(47.2%). 「対応する看護師の人数」 (284 件) 、 「対応する看護師以. であった。また、入院中に治療で用いられる ME 機器. 外の医療者数」 (155 件) 、 「感染対策の知識・技術」 (234. や医療器具を「COVID-19 専用」で使用したのが 126. 件)などの不足・不備や、 「患者側の認識や理解不足」 (224 件)もあった。一方、不足と充足が同じあるいは. 名(39.3%)、「既存の感染患者専用のもの」は 105 名. 41.

(6) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する救急看護の実態と課題. 0. 50. 100. 個人防護具. 200. 250. 300. 284. 60. 外来エリア(待合室など). 282. 30. 病院の管理・体制. 253. 45. 看護管理・体制. 244. 36. 感染対策の知識・技術. 234. 44. 患者側の認識や理解不足. 224. 15. 消毒剤・物品. 218. 78. 対策にあてる費用. 192. 24. PCR 等の検査. 190. 64. 対応する看護師以外の医療者数. 350(件). 306. 72. 対応する看護師の人数. 155. 48 114 101. 病室・ベッド 71 70. 医療器具 看護用具. 57. 71. 61. 人工呼吸器 その他. 150. 3. 不足しているもの 90. 充足しているもの. 36. 図 8 所属施設で不足または充足していると思うもの(複数回答 n = 423 名). 充足していると感じていたのは、 「医療器具」 「看護用. ロアを一人で担当することがあった」 「レッドゾーン. 具(ベースンやピッチャーなど) 」 「人工呼吸器」であっ. に入ると 4 〜 5 時間は出られないため、トイレや水分. た(図 8)。. 補給が制限された」「家族の面会が禁止のため、臨終 にも立ち会えない家族への対応が難しかった」 「医療. 4.看護師の認識や思い. 者の接触も最低限にしなければならず、普段どおりの. 感染発生以降の仕事と生活への認識や思いについ. 看護ができないジレンマを感じた」 「感染を疑う患者. て、18 項目の質問に対し 4 件法(あてはまる〜あては. を一般病棟に入院させた結果、病棟スタッフが感染し. まらない)で回答を求めた。各項目の「あてはまる」. た」「患者から『自分はバイ菌扱いされている』と言. または「どちらかと言えばあてはまる」でもっとも多. われた」「限られたスタッフだけで対応したため、自. かったのは、自分自身への感染(375 件)であり、自. 分がほかのスタッフから差別的な発言を受けた」など. 分の家族への感染に対する不安(334 件) 、家計の経. であった。外来での困難に加え、入院患者とその家族. 済的圧迫(131 件)などもあった。また、政府や自治. への対応の苦悩や、仲間から傷つけられた経験の記述. 体の対応(318 件) 、所属施設や上司等に対する不満. もあった。 一方、看護師が支援されていると感じたものには、. (312 件)もあった。一方、看護師としての使命感(257 件)や部署内の結束が高まった(215 件) 、挑戦され. 「診療体制に工夫がなされていたことや、家族や上. ている気分になった(135 件)など肯定的にとらえて. 司・仲間からの励まし」などに加え、マスコミや SNS. いる者もいた(図 9) 。. 上での励ましも力になっていた(図 10) 。. 看護師が患者や家族への看護を通して困難だったこ. 感染発生以降、看護師が心理的に不安定な状態に. と(自由回答)は、 「個人防護具不足のため、ICU フ. あったか否かを明らかにするために、もっとも大変だ. 42.

(7) 日本救急看護学会雑誌:23. 0. 50. 100. 150. 200. 250. 300. 350. 自分自身の感染を心配した. 375. 医療崩壊が起こるのではと思った. 370. 家族に感染させてしまうのではと思った. 334. 政府や自治体の対応に不満を感じた. 318. 所属施設や上司に不満を感じた. 312. いつもの患者・家族との コミュニケーションができなかった. 264. 看護師としての使命感を高めた. 257. 患者(家族)の思いと 自分の思いの違いにジレンマがあった. 253. 活動制限にうんざりした. 243. 部署内の結束が高まった. 215. 近所の目が気になった. 155. 挑戦されている気分になった. 135. 家計などの経済的な心配事が増えた. 131. 仲間との人間関係がぎくしゃくした 理不尽な. 400(件). 110. 謗中傷、差別、不利益を受けた. 106. 感染した患者を腹立たしく思った. 96. 家庭内のいざこざが増えた. 36. 看護師になったことを後悔した. 35. 図 9 感染発生以降の仕事や生活への思い(複数回答 n = 422 名). 0. 50. 100. 150. 200(件). 診療体制の工夫. 197. 家族からの支援・励まし. 155. 所属部署のサポート体制の強化. 153. 看護チームの団結. 150. 他人からの励まし. 145. 学習・シミュレーションの促進. 141. 医療チームの団結. 129. 同僚からの支援・励まし. 120. マスコミ等による応援. 98. 政府や自治体からの支援. 93. 患者やその家族からの励まし. 89. 上司からの支援・励まし. 83. SNS 上での支援・励まし その他. 71 44. 図 10 職場や家庭での工夫や感じた支援など(複数回答 n = 403 名). 43.

(8) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する救急看護の実態と課題. 0. 50. 100. 150. 200. 250. 300. 350. ワクチンや治療薬の開発促進. 357. 医療者への報酬増額. 325. PCR など検査体制の強化. 286. 感染対策指針やマニュアルの整備. 283. 専門病院の整備. 263. 専門的スタッフの配置. 246. 専門の医療者養成の促進. 214. 日本版 CDC 設置 その他. 400(件). 188 22. 図 11 必要と思われる医療対策(複数回答 n = 425 名). あったと思われる。. と感じていた時期の心理状態に関する質問 12 項目に ついて、 「あてはまる〜あてはまらない」に 4 〜 1 の. 近年、世界的に大流行した感染症には、2002 年の. 数値を割り当て、12 項目を合計し、最小値と最大値. severe acute respiratory syndrome(以下、SARS と. の中央値(30 点)をカットオフポイントとし、2 群に. 略す)や、2009 年の新型インフルエンザがある。こ. 分けた。その結果、心理的不安定を経験していた看護. れらについて、国立感染症研究所(2003)や厚生労働. 師は 126 名(29.6%) 、心理的不安定を経験していな. 省(2009)からガイドラインが公表されており、今回、. かったのは 299 名(70.4%)であった。. 各医療施設ではこれらに加え、本学会や日本クリティ カルケア看護学会のガイドラインを、自施設に合わせ. 5.必要と思われる医療対策. て変更し実践していた。しかし、COVID-19 は未知の. 今後必要と思われる医療対策としては、ワクチンや. ウイルスによるものであり、当初は検査体制の不備や. 治療薬の開発促進(357 件) 、医療者への報酬増額(325. 重症者の致死率の高さもあり、医療現場では大きな混. 件) 、検査体制の強化 (286件) 、感染対策指針やマニュ. 乱が起こった。 本学会では、これらの現場への一助として、2020 年. アルの整備(283 件) 、専門病院の整備(263 件) 、専 門スタッフの配置(246 件) 、日本版 CDC 設置(188 件). 4 月に主として救急外来での対応のための「新型コロ. であった(図 11) 。. ナウイルス感染症(COVID-19)に対応した救急看護 実践ガイド」 (日本救急看護学会,2020b)を公表した。 このガイドは、救急外来受け入れ準備、トリアージ、. Ⅴ.考察. 診療の補助、家族への対応や看護師のメンタルヘルス. 1.COVID-19 患者への所属施設の対応状況. で構成されている。さらに、ダイジェスト版 の「救 急初療看護に活かすフィジカルアセスメントミニガイ. 調査対象者が所属する施設は 100 床以上の中〜大規 模の救急病院であった。対象者の施設では、未知のウ. ド」 (日本救急看護学会,2020c)も公表した。また、. イルスである COVID-19 患者に対し、専門外来や専門. 日本クリティカルケア看護学会でも、集中治療室での. チームを設け、専用マニュアルの作成や、学会等が公. COVID-19 患者の看護として「ICU における COVID-19. 表した指針やマニュアルを参考に対応していたことが. 患者に対する看護 Q&A」 (日本クリティカルケア看護. わかった。どの対応策も、通常ならば院内各部署間で. 学会, 2020a)や「COVID-19 重症患者看護実践ガイド」 (日本クリティカルケア看護学会,2020b)などを公表. 何度も検討やシミュレーションを重ねて完成させてい くべきものであるが、今回は急激な感染広大に伴い混. した。今後も、バージョンアップされるガイド等が、. 乱した状況で迅速に対応せざるを得なかった現実が. 感染拡大に伴う現場での対応に役立つと考える。. 44.

(9) 日本救急看護学会雑誌:23. 3.看護師の認識や思い. 2.COVID-19 患者への外来での具体的対応 患者トリアージ時には、発熱や呼吸困難・咳嗽、味. 救急看護師は未知の感染症への対応で、自分自身や. 覚・嗅覚障害など COVID-19 に特徴的な症状を重視し. 家族への感染に対する不安、政府や自治体・所属施設. ていた。患者の待合室や診察室としては、 「感染患者. や上司への不満などネガティブな感情をもつ者が多. エリア」 「新設の専用エリア」 「陰圧室」を使用してい. かった。しかし、少数ではあるが、この事態を肯定的. た。しかし、 「他患者と同じエリア」との回答もあり、. にとらえて対処しようとしている者もおり、職場内全. 隔離できる待合室や診察室など、とくにハード面の設. 体が心理的不均衡状態にあったことがわかった。自由. 置が困難で、救急診療においても事前の準備がないと. 記述の結果からは、未知の感染症への恐怖、少人数で. ころで設備を充実させることには限界があった。ハー. 担当する不公平感、患者や家族へのケアが通常どおり. ド面の工夫について、Maunder, Hunter, Vincent, et. に行えないジレンマ、隔離患者が感じる精神的疎外感. al.(2003)は、シンガポールでのSARS 感染症拡大の際. に対応できない無力感など、看護師が心身ともに不安. の経験を紹介している。また Asperges, Novati, Muzzi,. 定な状況で日々の勤務を行っていたことがうかがえる。. et al.(2020)は、COVID-19 の爆発的な感染広大を経. また、心理的不安定を経験していた看護師は 126 名. 験したイタリアでの救急外来 / 救急病棟の構造や診療. (29.6%)であった。今回の結果は、感染症に対応し. の流れを報告している。これらは、日本での対応の参. た看護師の精神的ストレスに関する多数の研究結果と. 考にできるものと思われる。. も一致している〔Quah, Tan, Fua, et al.(2020) ,Su & Guo.(2015),Hu, Y., Hu, Y., Yang, et al.(2014),. 各施設の具体的対応の中で、感染防護具、看護師、 COVID-19 専用エリアや、それらを管理する体制に不. Garcia-Rojas, Choi, Krause.(2015)。Su & Guo.(2015). 足や不満を感じている者が半数以上を占めていた。感. は、SARS、MERS(Middle East respiratory. 染防護具については、COVID-19 入院患者および疑い. syndrome) 〕 、エボラ出血熱などに対応した看護師や. 患者のすべてに、キャップ、N95 マスク、ゴーグル(ま. 医師は、燃え尽き症候群、思いやりの疲労、仕事の満. たはフェイスシールド) 、タイベック(または不織布ガ. 足度の低下、士気の低下、仕事のストレスが増加した. ウン) 、二重のグローブ、シューズカバーで対応する. と報告している。また、Mo, Deng, Zhang, et al.(2020). 必要があり、多くの者が圧倒的な不足を感じていたと. は、中国の医療従事者を対象とした横断研究におい. 思われる。一方、医療・看護用具、人工呼吸器につい. て、COVID-19 パンデミック中に 50%以上がうつ病を. て不足していると感じた者は比較的少なく、人工呼吸. 発症したことを報告している。さらに、Wu, J., Wu, X.,. 器は不足しているよりも充足していると答えた者のほ. Wu, F., et al.(2020)は、パンデミック対策について. うが多かった。これは、人工呼吸器や extracorporeal. のトレーニングを受けていなかった者の不安が非常に. membrane oxygenation(以下、ECMO と略す)での. 高かったと報告しており、困難な状況におけるストレ. 治療が必要な重症者を収容できる施設は限られていた. スの高さやメンタルヘルスの悪化が示されていた。一. ため、人工呼吸器は充足していると回答していたと思. 方、感染症対応を長いスパンでみた場合には、感染初. われる。. 期のころは、否定的な感情が支配的であるが、同時に. 今回の調査は 6 〜 7 月であり、呼吸器感染症の流行. または徐々に肯定的な感情が現れるといった感情の共. が比較的少ない時期であったため、COVID-19 患者へ. 存に言及した Sun, Wei, Shi, et al.(2020)の研究結果. の対応に既存の感染症エリアを使用することが可能で. もある。. あった。しかし、この感染症の初期症状は、味覚・嗅. 看護師などの医療従事者の精神的ストレスを軽減す. 覚障害以外は感冒やインフルエンザと類似している。. るためには、十分な物資と人材の確保、十分な休息、. もしこれらの感染症の蔓延期であれば、救急外来は今. 仕事量に見合った手当、上司や同僚からの精神的サポー. 回よりもさらに混乱を極めたと考えられる。これらの. ト、家族などの周囲からの励ましなどが必要である。. ことから、大規模な感染症流行に対応可能な待機室・. 医療従事者のメンタルヘルスに関しては、COVID-19. 診察室の設置や、感染防護具の備蓄と着脱訓練など、. パンデミック以降、アメリカの外傷ストレス研究セン. 各施設の状況に合わせた平時からの準備が必要であ. ター(重村淳監,2020)や日本赤十字社(2020)から. る。. 手引きが紹介されている。わが国でも、ストレスの高. 45.

(10) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する救急看護の実態と課題. 本調査における筆頭著者および共著者の開示すべき. い状況下での医療従事者へのフォロー体制を平時から. 利益相反はない。. 構築しておく必要があるだろう。 4.今後の課題. 文 献. 2020 年末、世界的にも第三波が到来し、感染者数は. Asperges E., Novati S., Muzzi A., ··· Bruno R. (2020). Rapid Response to COVID-19 outbreak in Northern Italy: how to convert a classic infectious disease ward into a COVID-19 response centre. Journal of Hospital Infection, 105, 477-479.. 増加の一途である。医療全体の対策としては、感染拡 大当初と比較すれば抗原・抗体検査体制がかなり充実 し、ワクチン開発も進められ、感染拡大地域には専門. Garcia-Rojas, I. J., Choi, B., Krause, N. (2015). Psychosocial job factors and biological cardiovascular risk factors in Mexican workers. American Journal of Industrial Medicine, 58 (3), 331-351.. 病院も整備されつつあり、課題の一部は解決の方向に 進んでいる。しかし、多数の感染者に対応可能な待機 室・診察室の設置、感染防護具の備蓄、感染症マニュ. Hu, Y., Hu, Y., Yang, L., ··· Han, Z. (2014). Correlation analysis of mental health and social support status of the only child nurse. Chinese Nursing Management, 14 (S1), 37-39.. アルのバージョンアップも進めておく必要がある。 看護上の課題と対策については、パンデミックを見 据えた感染症について最新の知識を獲得し、各種マ. 国立感染症研究所(2003).医療機関における SARS 非流行期 の院内感染対策―SARS アラートの概念とアラートへの対処 法― http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/update99-GL.html(2020 年 11 月 10 日閲覧). ニュアルをブラッシュアップしておくこと、現在行わ れている防火訓練や災害訓練と同じく、感染防護具着 脱を含めた患者受け入れシミュレーション訓練の実施. 厚生労働省(2009).新型インフルエンザ対策ガイドライン― 医療体制に関するガイドライン― https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkakukansenshou04/pdf/090217keikaku-05.pdf(2020 年 11 月 10 日 閲覧). や、個々の看護師のストレス耐性の強化とフォロー アップ体制整備が必要と考える。 感染症患者を最初に受け入れる救急外来において は、これらの課題に常々対処しておくべきであるが、. Maunder R, Hunter J, Vincent L, ··· Mazzulli T. (2003). The immediate psychological and occupational impact of the 2003 SARS outbreak in a teaching hospital. CMAJ, 168 (10): 1245-1251.. 感染拡大が想定以上である場合には、一般病棟や周辺 地域に勤務する看護師もその対応にあたらざるを得な いことも考えておくべきだろう。. Mo, Y., Deng, L., Zhang, L., ··· Huang, H. (2020). Work stress among Chinese nurses to support Wuhan in fighting against COVID-19 epidemic. Journal of Nursing Management, 28 (5), 1002-1009. http://kns.cnki.net/kcms/detail/14.1272.r.20200214.1136.004. html(2020 年 1 月 10 日閲覧). Ⅵ.おわりに 今回、COVID-19 に対する救急看護の実態と課題を. 日本救急看護学会(2020a).新型コロナウイルス感染症に対応 する救急看護師の皆様へ(代表理事からの緊急声明) http://jaen.umin.ac.jp/pdf/urgent-statement_20200415.pdf (2020 年 05 月 01 日閲覧). 明らかにする目的で、救急看護師を対象に Web 調査 を行い、2020 年の緊急事態宣言下での救急外来での 看護の実態を明らかにした。2020 年末に到来してい. 日 本 救 急 看 護 学 会(2020b). 新 型 コ ロ ナ ウ イ ル ス 感 染 症 (COVID-19)に対応した救急看護実践ガイド(Ver.1.0). る第三波は、感染者数も重症者数も第一波と第二波を 超え、医療の状況は逼迫しつつあるが、経済・産業活. http://jaen.umin.ac.jp/pdf/guide_Emergencynursing_ COVID-19_v1.0.pdf(2020 年 1 月 05 日閲覧). 動施策も同時に進められており、今後の感染広大につ. 日本救急看護学会(2020c).救急初療看護に活かすフィジカル アセスメントミニガイド http://jaen.umin.ac.jp/pdf/physical_miniguide_20200428.pdf (2020 年 1 月 5 日閲覧). いては予断を許さない状況である。 本調査結果の詳細は、日本救急看護学会ホームペー. 日本救急看護学会(2020d).新型コロナウイルス感染症への救 急看護実践に関する会員の声(第 1 報) http://jaen.umin.ac.jp/pdf/important_information20200417. pdf(2020 年 08 月 25 日閲覧). ジ(日本救急看護学会 , 2020e)に掲載している。 最後に、未知の感染症への対応で大変ご多忙の中、. 日 本 救 急 看 護 学 会(2020e). 新 型 コ ロ ナ ウ イ ル ス 感 染 症 (COVID-19)に対する救急看護の実態と課題の調査結果 http://jaen.umin.ac.jp/pdf/investigation_ Emergencynursing_COVID-19.pdf(2020 年 08 月 20 日閲覧). 本調査にご協力いただいた全国の救急看護師の皆様方 に感謝申し上げます。. 46.

(11) 日本救急看護学会雑誌:23. 日 本 ク リ テ ィ カ ル ケ ア 看 護 学 会(2020a).ICU に お け る COVID-19 患者に対する看護 Q&A(Ver.1.0) https://www.jsicm.org/news/upload/COVID-19_nursing_ Q&A.pdf(2020 年 11 月 05 日閲覧). 日本語版 専門家向け全 6 編コロナウイルスやその他の感染症 アウトブレイク中における医療従事者の健康維持,日本スト レスマネジメント学会. https://www.cstsonline.org/covid-19/covid-19-fact-sheets-inother-anguages/japanese?fbclid=IwAR1KWuh5O0e9p43X 6d8_u7sL-NS9xT5o4OwFSu7qn1CRrzxZ6rmKHAJTR-E (2020 年 08 月 20 日閲覧). 日本クリティカルケア看護学会(2020b).COVID-19 重症患者 看護実践ガイド(Ver.1.0) https://www.jaccn.jp/guide/pdf/COVID-19_guide1. Ver1.0.pdf(2020 年 11 月 05 日閲覧). Su, Q., Guo, L. (2015). Relationship between psychological elasticity,work stress and social support of clinical female nurses. Chinese Occupational Medicine, 42 (1), 55-58.. 日本赤十字社(2020).新型コロナウィルス感染症対応に従事 されている方のこころの健康を維持するために http://www.jrc.or.jp/activity/saigai/news/200330_006139. html(2020 年 08 月 20 日閲覧). Sun, N., Wei, L., Shi, S., ··· Wang H. (2020). A qualitative study on the psychological experience of caregivers of COVID-19 patients. American Journal of Infection Control, 48 (6), 592598.. Quah, L. J. J., Tan, B. K. K., Fua, T. P., ··· Lim C. S. (2020). Reorganising the emergency department to manage the COVID-19 outbreak. International Journal of Emergency Medicine, 13 (1), 32.. Wu, J., Wu, X., Wu, F., ··· Gong, X. (2020). Survey of sleep quality of clinical front-line nurses and its influencing factors in the fight against new coronavirus pneumonia. Nursing Research, 344, 558-562.. 重村淳 監訳・監修(2020).トラウマティック・ストレス研 究センター「COVID-19 関連のメンタルヘルス・マニュアル」. 47.

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参照

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 新型コロナウイルスの流行以前  2020 年 4 月の初めての緊急事態宣言 以降、新型コロナウイルスの感染拡大

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