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制度ロジック多元性下において科学と事業を両立させる組織の対応 ―産学連携プロジェクトを題材とした事例研究―

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Academic year: 2021

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(1)【査読付き論文】. 組織科学 Vol.54 No. 2 : 48-61(2020). 自 由 論 題. 制度ロジック多元性下において科学と事業を両 立させる組織の対応 ―産学連携プロジェクトを題材とした事例研究―. 本研究の目的は,産学連携プロジェクトを題材として,制度 ロジック多元性下において組織がどのように多元な制度ロジッ クを両立すべくコンフリクトに対応するのかについて明らかに することにある.本研究は事例研究を通じて,科学ロジックと 事業ロジックが構成する制度ロジック多元性が生み出すコンフ リクトに対し,組織が科学とも事業とも異なる「第 3 のロジ. 舟津 昌平(京都産業大学 経営学部 助教). ック」を道具的に活用して制度ロジックを両立することを明ら かにした.. キーワード: 制度ロジック,イノベーション,科学と事業の関係,産学連携,事例研究 Kline, 1990)など,その関係を表現する手段も多. Ⅰ .はじめに. 様である. これらの研究は主に科学と事業が企業にとって. 本稿は,科学と事業1)の関係およびそこに生じ. 好影響をもたらす関係に注目しているが,科学と. るコンフリクトについて,制度ロジック2) 概念. 事業の間にはコンフリクトも生じ得る.科学と事. (Friedland & Alford, 1991;佐藤,2003;Thorn-. 業がどのような関係であるときに組織にコンフリ. ton, Ocasio, & Lounsbury, 2012)を用いて分析し. クトが生じるのかを分析するにおいて,本稿は科. た研究である.また本稿の目的は,制度ロジック. 学的営為を行う主体と事業活動を行う主体との間. 多元性下において組織がどのように多元な制度ロ. で当然視される規範や実践などの差異に注目し,. ジックを両立すべくコンフリクトに対応するのか. それらを読み解く概念レンズとして制度ロジック. について明らかにすることにある.. 概念を用い,特に「科学ロジック」と「事業ロジ. 科学の知見が企業活動にどのように結びつくの. ック」の二つの制度ロジックが構成する制度ロジ. かを明らかにすることは,イノベーション研究に. ック多元性(Besharov & Smith, 2014)について. おいてますます重要になっている(榊原・辻本・. 検討する.. 松本,2011) .また,特許分析によって科学と事. 近年数多く蓄積されている制度ロジック研究で. 業の関係を定量的に捕捉する「サイエンス・リン. は,制度ロジック多元性の存在を前提とすること. ケージ」や,学会など科学と事業が接近し関係を. が共通認識となっている(佐藤,2003;舟津,. 持 つ「 場(commons) 」 の 研 究(e.g., Nelson,. 2019).制度ロジック多元性はときに組織に大き. 2004;榊原ほか,2011) ,科学と事業の関係をモ. なコンフリクトをもたらす一方で,コンフリクト. デル化した「イノベーションモデル」研究(e.g.,. は組織にとってイノベーションの機会でもあり得. 48.

(2) 制度ロジック多元性下において科学と事業を両立させる組織の対応 49. る(Battilana & Dorado, 2010;Dalpiaz, Rindova,. ク研究のほとんどで題材となる,制度ロジック研. & Ravasi, 2016) .そのため,コンフリクトを軽. 究における中心概念である(舟津,2019).制度. 減することは組織にとってイノベーションの機会. ロジック多元性とは,業界や組織に対して複数の. を毀損する可能性がある(Busco, Giovannoni, &. 制度ロジックが関与し影響を持っている状態と定. Riccaboni, 2017) .このように,制度ロジック多. 義され,ふつう組織は複数の制度ロジックの影響. 元性下においてイノベーションを達成するために. を受ける(Besharov & Smith, 2014).かつ,複. は,制度ロジック多元性を保ちながらコンフリク. 数の制度ロジックが組織に多様な要求をもたらす. トをマネジメントすることが重要となる.また制. がゆえに,制度ロジック多元性は多寡はあれど組. 度ロジック研究では,制度ロジック多元性下での. 織にコンフリクトをもたらすと Besharov らは指. 組織の対応への注目が高い(e.g., Binder, 2007;. 摘する.制度ロジックの影響を受ける組織はコン. Dalpiaz et al., 2016;Kraatz & Block, 2008;. フリクトに対処する必要があると同時に,制度ロ. McPherson & Sauder, 2013;Pache & Santos,. ジックそのものが戦略的なリソースになり得る. 2013) .しかし,それらの研究は多元な制度ロジ. (Durand et al., 2013)などの理由から,組織がい. ックの両立に主眼を置いているわけではなく,本. かに制度ロジック多元性に対応するのかに注目が. 稿は制度ロジックの両立を前提として組織の対応. 集まっている.先行研究が示す組織の対応のパタ. について検討する.. ーンは,区分化を行ったうえで複合・ブレンドす. 本稿の対象となる事例は,産学連携プロジェク. る(Dalpiaz et al., 2016), 選 択 的 に 結 合 す る. トである.制度ロジックの観点からみた産学連携. (Pache & Santos, 2013),状況に応じてスイッチ. とは,科学ロジックに依拠する大学と事業ロジッ. する(McPherson & Sauder, 2013)など多様で. クに依拠する企業とが協働する営みである.産学. あるが,いずれの場合においても複数の制度ロジ. 連携では単一の制度ロジックだけがドミナントに. ックが競合するなかで,結果的には新しいドミナ. なることはプロジェクトの失敗を招きかねない.. ントな制度ロジックの構築によって競合状態が解. しかし,制度ロジックを両立し各々のミッション. 消 さ れ る と 整 理 さ れ て い る(Lounsbury, 2001,. を達成することもまた容易でない.本稿の問題意. 2007;Marquis & Lounsbury, 2007). つ ま り,. 識と照らし合わせて,産学連携プロジェクトは適. 既存研究では,多元な制度ロジックの影響下にお. した題材である.. いて組織がいかに多元性を削減し,新たにドミナ. 本稿の構成は以下の通りである.次節において. ントな制度ロジックを形成するのかが主題となっ. 制度ロジック多元性および産学連携に関する先行. てきた(Souitaris, Zerbinati, & Liu, 2012).しか. 研究をレビューし,研究課題を導く.第Ⅲ節にお. し多元性を削減することは場合によっては問題も. いて本稿の研究方法を説明し,第Ⅳ節で本稿が扱. 引き起こす.たとえばイノベーションの創造を志. う事例について記述する.第Ⅴ節で本稿において. 向する組織にとっては,制度ロジック多元性がも. 得られた示唆について検討し,第Ⅵ節においてま. たらすコンフリクトがイノベーションの契機にな. とめと貢献,研究の限界について述べる.. るため,コンフリクトの軽減は組織におけるイノ ベーションの機会を毀損する危険性がある(Bus-. Ⅱ .先行研究の検討. co et al., 2017;舟津,2019).一方で,コンフリ クトの存在はそもそもイノベーションを阻害し得. 1.制度ロジック多元性下におけるコンフリク トと組織的対応. るものである.制度ロジック多元性を削減するよ うな対応はかえって組織のイノベーションを阻害. 制度ロジック概念に関する研究は海外誌を中心. する可能性がある一方で,イノベーション創造の. に多くの研究が蓄積され,近年大きな注目を集め. 阻害になるコンフリクトには,適切に対処せねば. ている.また制度ロジック多元性は,制度ロジッ. ならない.つまり,イノベーションをめざす組織.

(3) 50 組織科学 Vol. 54 No. 2. にとっては,制度ロジック多元性を削減すること. して,大学が知財オフィスを設置するなどして積. なく,維持したまま,制度ロジック多元性が生み. 極的に科学知識の特許を取得し,事業に活用しよ. 出すコンフリクトに対応する必要がある.. うとする「私科学(private science)」の推進が 挙げられる.この私科学化の傾向はアメリカで顕 在化したのち世界の大学組織に浸透しつつあり. 2.産学連携と研究課題の導出 科学が企業にとって重要なイノベーションの源. (上山,2010),Colyvas & Powell(2006)は大学. 泉たり得ることは論を俟たないが,科学と事業の. における知財オフィスの設置を題材として,私科. 関係は時代や国によって変容してきた(山口・水. 学化の推進における正統性と当然性が高まってい. 上・藤村,2000) .たとえば産業界ではオープン. った過程,すなわち,当初は例外的で特異な活動. イノベーション(Chesbrough, 2003)に移行する. とみられていた研究成果の特許取得が,次第に大. 傾向が近年強まっており,イノベーションのオー. 学内で重要かつ当たり前のものとみなされ,それ. プン化は,産業における科学の意義をより高める. に伴う事務的手続きも効率化されていったことを. 可能性を持つ(榊原ほか,2011) .企業外におけ. 示している.このような私科学化を制度ロジック. る知識の源泉として期待される代表例に大学があ. の観点からみると,公益性を重視し研究成果を無. り,大学と企業との連携活動は「産学連携」と総. 償公開して科学の発展に寄与することを規範とし. 称される.. てきた大学が,特許取得などを通して研究成果を. 本稿と同様に制度ロジック概念を用いて産学連. 私的に保護することで私益を追求するよう変化し. 携を分析した先行研究においては,大学と企業に. たというように,大学組織におけるドミナントな. よる産学連携は「科学ロジック」と「事業ロジッ. 制度ロジックが科学ロジックから事業ロジックに. ク」それぞれをドミナントとする主体の協働と捉. シフトする現象であると解釈できる.. えられており(Perkmann, McKelvey, & Phillips,. 一方で,大学が私科学化を推進すると,基礎研. 2018),本稿ではこの枠組みに則って産学連携を. 究と応用研究といった大学と企業間の補完的関係. 分析する.なお,主題となる二つの制度ロジック. が失われる危険性があり(Sauermann & Stephan,. について Perkmann et al.(2018)をもとに整理. 2013),また特許が知識移転の障壁として働くゆ. し,表 1 に示した.. えに業界規模ではイノベーションが遅滞する. 産学連携は,共同研究,大学発ベンチャー,知. (Fabrizio, 2006)など,大学が私科学化を推進す. 識移転など元来様々な形態を内包する概念である. ることの問題点も指摘されている.Perkmann et. が, そ の 形 態 は 近 年 い っ そ う 多 様 化 し て い る. al.(2013) は, 大 学 の 関 与(academic engage-. (Perkmann et al., 2013) . 「多様化」の具体例と. ment)という概念を提唱したうえで,産学連携に. 表 1 産学連携活動における二つの制度ロジック 科学ロジック 経済システム 活動の性質 タスクの選択基準 アウトプットされた 知識の活用 個人の関心事. 公益/非営利. 事業ロジック 私益/営利. 基礎科学:科学的な新奇性の追求と 応用科学:問題解決のための知識の 科学的議論への貢献が目的 活用と製品の開発が目的 意思決定は個人の自律性に委ねら れ,科学的好奇心に基づく 研究の公的な普及 (制限のない公表). 意思決定が階層的に行われ,プロジ ェクトは大規模化する傾向がある イノベーション創造への貢献 (多くの場合,機密性と保護が必要). (各分野における)科学界での承認, 組織内の認知と承認,それに伴う事 それに伴う論文の公表 業への貢献. 出所:Perkmann et al.(2018)の表(p. 302)をもとに筆者作成.

(4) 制度ロジック多元性下において科学と事業を両立させる組織の対応 51. おける大学の関与は多様であり,商業成果のみを. クがどのように影響を受けるのかについては検討. 追求するわけではないことを実証的にも示してい. が看過されている.たとえば産学連携の代表例で. る.また Perkmann et al.(2018)は制度ロジッ. ある大学と企業との共同研究を行う場合,制度ロ. ク概念を用いたうえで,産学連携において大学組. ジック多元性はどのようにマネジメントされるだ. 織が科学ロジックから事業ロジックへシフトする. ろうか.先行研究に則れば,大学が事業ロジック. のではなく,大学において科学ロジックがドミナ. を新たに受け入れるか,あるいは大学が科学ロジ. ントなままに維持されながらも,多元性が生じる. ックを維持するために事業ロジックを忌避する. 「スペース」を活用しながら科学ロジックと事業. か,二つの制度ロジックをハイブリッドさせて新. ロジックをハイブリッドすることで制度ロジック. たな制度ロジックを構築するか,という帰結が導. 多元性に対応するという事例を示している.. かれるはずである.. しかし,Perkmann et al.(2018)をはじめと. しかし,現実の産学連携では,両組織は各々の. する議論において,見落とされている観点もあ. ドミナントな制度ロジックを維持して双方の制度. る.Perkmann らの論文のタイトルである“Pro-. ロジックにおける制度的合理性を満たしていきな. tecting scientists from Gordon Gekko3)”からも. がらも,プロジェクトを進めていくことが求めら. わかるように,Perkmann らは「大学における科. れる.すなわち,たとえば研究成果の活用に関し. 学ロジックを企業的な事業ロジックの侵食から守. ては,プロジェクト全体においては「論文か特許. る」という視点から産学連携を分析している.こ. か」という二択ではなく,大学にとって科学界で. の点で,Perkmann らの主張は,大学側における. の承認に繋がる論文公表を進めながらも,企業側. 制度的合理性の追求という視点に偏っており,結. では特許を取得し事業化を模索する,といった双. 論としては「大学を企業化していく」か, 「企業. 方の制度ロジックを満たす対応が望ましい.表 1. 化から大学を守る」かという二項対立に収束して. に示した二つの制度ロジックを対比したとき,活. いる.このように産学連携をめぐる議論は,大学. 動においてどちらかだけを満たすような意思決定. と企業との協働にはコンフリクトが生じることを. を選択するのでなく,どちらの制度ロジックの要. 所与のものとしながら,科学ロジックと事業ロジ. 求も満たしながら活動を推進するような,二つの. ックとを対立的に捉えつつ,大学側の視点に偏っ. 制度ロジックを「両立」する対応が,産学連携に. た結論が導かれている.このように二つの制度ロ. おいては求められるはずである.. ジックを対立させる構図を強調することは,制度. 以上から導かれる本稿の研究課題は,産学連携. ロジック研究における問題の一つであるとも指摘. において,科学ロジックと事業ロジックが生じさ. さ れ て い る(Sauermann & Stephan, 2013) .制. せる制度ロジック多元性に対して,二つの組織が. 度ロジック多元性が生み出す対立をいかに解消す. どのように二つの制度ロジックを両立できるの. るかが組織にとって重要であるにもかかわらず,. か,すなわち大学組織では科学ロジックの要求. そのような構図は両者の齟齬をより顕在化させる. を,企業組織では事業ロジックの要求をともに満. ことに繋がるからである.. たし得る組織的対応とはどのようなものであるか. またこのような対立構図が生じる理由として,. について明らかにすることにある.. 過去の制度ロジック研究では主に単一組織におけ る制度ロジック多元性が対象となっており,複数. Ⅲ .研究方法. の組織が協働することによって生じる制度ロジッ ク多元性への検討が乏しいことが挙げられる.先. 本稿は質的データの分析を通して研究課題の解. 行研究では,大学組織がどのように制度ロジック. 明をめざし,事例研究を行う.対象事例は X 大. 多元性に対応するかについては一定の議論が蓄積. 学医学研究科と製薬企業 A 社との間に行われた. されているが,それに伴って企業側の制度ロジッ. 産学連携プロジェクト 1 件である.データソース.

(5) 52 組織科学 Vol. 54 No. 2. は, 直 接 イ ン タ ビ ュ ー4) (延べ 7 名を対象とし て,計 5 件,470 分)に加えて,公的な資料・雑. 1.制度ロジック多元性が生み出す大学と企業 の差異. 誌記事・ウェブサイトでの公式ニュースリリース. 本プロジェクトは,「新薬の創製」を目的とし. などの二次資料を用いることで三角測量を行って. て立ち上げられた有期プロジェクトである.プロ. いる.. ジェクトに際して企業から大学へ研究者が派遣さ. 制度ロジックを用いた研究では,研究者も制度. れ,日常的なコミュニケーションを伴って共同研. ロジックを前提とした分析を行うことが求められ. 究を行うなかで新薬の創製がめざされた.プロジ. る(Thornton et al., 2012) .また,帰納的なデー. ェクトの資金は,A 社から提供を受けたものの. タを分析するにおいても,研究者の演繹的解釈が. 他に,国からの提供資金も含まれた.プロジェク. 伴うことを前提とする(Corbin & Strauss, 2008) .. ト内では合計して数十の研究テーマを取り扱い,. そのため,以下のような手順で分析を行った.な. 研究の進捗に合わせてスクリーニングして創薬の. お, 分 析 の 手 順 や 表 2 の 項 目 な ど に つ い て は. 標的を絞っていくという形が採られ,最終的には. Gioia, Corley, & Hamilton(2013) お よ び Pratt,. 十分の一程度にテーマが絞られることになった.. Rockmann, & Kaufmann(2006)を参考とした.. 研究テーマのスクリーニングにおいては,大学と 企業からそれぞれ代表者らが集まり,合議するこ. ⑴ 表 1 に示したように,分析に用いる二つの 制度ロジックを先行研究に基づき整理・概念 化した.. とで意思決定された. 以下では,科学ロジックと事業ロジックの差異 が大学と企業それぞれに志向性や行動パターンの. ⑵ ⑴の理念型および概念に従って,インタビ. 差異を生み出しているという前提のもと,制度ロ. ューデータをコーディングし,代表的なコー. ジックの差異がどのように各組織において志向性. ドおよび引用を表 2 にまとめた.なお「集約. や行動パターンの差異を生み出していたのかにつ. 的分析コード(aggregate dimension) 」とは. いて記述する.. 下位概念を内包した抽象次元において最も上. まず,研究成果の公表における志向が,各組織. 位に該当する概念群であり, 「二次概念」と. で異なっていた.プロジェクトの目的は「新薬の. は「研究テーマの選択基準」のように,原デ. 創製」として共通していたが,大学側では「新薬. ータの表現を⑴に示した理論的概念に従って. の創製」のほかに公的な目標として「研究者を養. 抽象化したものである.. 成する」という目標を掲げ,若手研究者を積極的. ⑶ インタビューを録音したうえで 24 時間以. にプロジェクトに加入させていた.研究者として. 内に調査メモを作成し(Eisenhardt, 1989) ,. の業績を挙げるためには論文の公表が第一となる. またインタビュイーに書き起こしのチェック. ため,大学側では新薬の創製に関わる論文を公表. を求めることで,バイアスを回避することに. することが最大の関心事となっていた.一方で,. 努めた.. 企業としては「新薬を創製する」ことは,新たな 市場を獲得することに繋がっているため,新薬の. Ⅳ .産学連携プロジェクト. 基となる特許の取得が最優先されていた. 次に,研究テーマの選択基準をめぐる差異であ. 本節では,プロジェクトの経緯と内容,科学ロ. る.本プロジェクトでは,特定の疾病がどういっ. ジックと事業ロジックおよびその関係について述. た因子によって引き起こされるのかという「メカ. べたうえで,制度ロジック多元性がコンフリクト. ニズム(機序)」を探究すること,あるいは,そ. を生じさせた点,ならびにそのコンフリクトに組. のメカニズムに効果的である化合物を特定するこ. 織がどのように対応したかという点に着目して分. とが科学研究の中心であった.換言すると,ある. 析した.. 疾病がおこる因果関係を特定し,さらにある化合.

(6) 制度ロジック多元性下において科学と事業を両立させる組織の対応 53 表 2 分析概念に対応するインタビューデータの抜粋 集約的分析 コード. 二次概念. 代表的な引用. 科学ロジック 活動の性質 「医学研究の基礎というのは何かというと,疾病のメカニズム,A が悪くなると B が悪くなっ. データ ソース A1. て結果としてこういう病気になりますと.そういうメカニズムの研究なんですね.」 ミッション 「大学としては,責務として,医者を輩出する.で,もう一つは,知の創造というんですか. C1. ね,医学的な知見を出していこうと.もう一個は,医療を作ろうと.この三つがあると思うん ですね.」 研究テーマ 「研究者っていう生き物は,サイエンスがおもしろいと感じる人たちなので.どっちかという. B1. (タスク) とビジネスという部分は考えないと思うんですけども.」 の選択基準 事業ロジック 活動の性質 「大学だけではできないことって何かっていうと,やっぱりモノなんですよね.モノっていう. A1. のは化合物です.あるいは技術.創薬技術ですかね.」 ミッション 「企業側は,新しい医療の進展に対してそれを利用した創薬をしないといけない.」. C1. 研究テーマ 「会社の姿勢としても,選択と集中っていうことで,色々なプロジェクトやって,ダメなら止 の選択基準 めて,止める時間は短い方がいいって感じだったんですが.」. E1. コンフリクト 知識の公開 「(論文)公表と特許出願のせめぎ合いというのは,いいサイエンスがあるところでは必ず起こ に関するコ るなっていうのは,実感しています.」 ンフリクト 「論文待ってくれっていうのは,研究戦略上も,公表されてしまうと皆さんができてしまうと いうことがあって,充分なデータが出るまで待ってくれというのは,期待値が高いプロジェク トなら必ず起こります.」 研究テーマ の選択に関 するコンフ リクト. 「動物で検証した安全性が,ヒトで本当に安全かというのは絶対に検証しなおさないと,(企業 にとっての創薬は)無理なんですよね.(中略)ペーパー書くという意味だと,有効性が先に 来ちゃうんですよ.(中略)それは微妙な違いだけども非常に大事な違いだというのが,お互 い認識してないと,先生方は効くじゃないですかと.でも企業側は危ないじゃないですかと. 不毛の議論になっちゃう.」 「アカデミアの研究というものはずっと続くものなので.ただ創薬という点から見ると,薬と いうゴールがあるものなので.そういう意味では,どっちかというと大学の方が(研究の継続 を希望する)ということが多かったですね.」 「A 社としては,(ある研究を)これ以上やっても,もう止めたい,ということはありますよ ね.そういったことについて,(大学側は)もうちょっとこういうことはできないだろうかと か.そういう話をすることは多かったですかね.」. B1 B1. A1. B1. B1. コンフリクト 道具的活用 「これ(本プロジェクト)の場合は,国のお金が半分入ってたんですよ.だから税金半分入っ への対応 (資源依存) てるじゃないのと,かなり強く言えたんですよ.」 「これ(本プロジェクト)の場合は税金半分入ってるから,死蔵させてはいけないでしょって いう理屈が立ったんですね.」 「企業側の立場としましてもね,チャレンジングなことに対して資金をつけてくれたというこ とでもあると思いますし,(中略)官からのお金があるということは,やっぱり大きなことや と思うんですよ.」. A1. 「新たな研究者をたくさん雇用できたり,共同研究たくさんできたり,いろんな試しができた りする.それが A 社だけやったらどうしても資金面では足りなくなるし,成功のチェックを するレンジが違ったりするかもしれない.」. C1. 道具的活用 「臨床の先生が産学連携やるというのは,自分の研究で薬を作りたいというのがあるんです (社会貢献) よ.(中略)モチベーションはそこなんですよ.自分の研究成果で患者さんを助けたい.患者 さんに役立つ薬を使いたい.企業も,患者さんを助ける薬を作って,そこで利益上げたい.大 きなところではずれがないんですけども,そこに至るプロセスが違っている.」 「(大学研究者は)一人一人の患者さんをどうやったら治せるかっていう意識がすごく強くて, 一人一人のお医者さんが患者さんを治すっていうことに,非常に重きを置いていて.」 「 (プロジェクトにおいては, )患者さんというものを意識した.どういう患者さんやということ を意識したことを考えていくと, (中略)一般に言うギャップとかね,とかいうのは埋まってい く. 」 出所:筆者作成 . B1 C1. A1. B1 C1.

(7) 54 組織科学 Vol. 54 No. 2. 物がその因果関係に効果的であること,すなわち. マの選択は,事業ロジックに従って階層的な意思. 「有効性」が実証される過程を経て,科学知識が. 決定のもとでなされる.一方で,大学の研究にお. 創造される.つまり論文の核となるのは有効性の. いては,複数の研究テーマをスクリーニングする. 実証であり,大学側では科学ロジックに基づい. という手法は一般的に採られず,ある研究者は自. て,有効性が実証されているあるいは実証が期待. 律的に設定した特定かつ少数の研究テーマにより. できる研究テーマを選択しようとする志向が生じ. 長期に関わる傾向がある.つまり,企業としては. る.また有効性とは別に,研究者が「おもしろ. 有望な研究テーマに「選択と集中」をするために. い」と感じるかどうかという個人的な研究上の興. 多数の研究テーマから「どのテーマを打ち切る. 味も,研究テーマの選択に大きな影響を及ぼして. か」という判断を行う他方で,大学ではある少数. いた.. の研究テーマを「いかにして継続するか」という. 但し,有効性の立証だけでは,創薬は実現しな. 志向性が持たれる.. い.創薬に際してはその化合物を人体に投与した. こうした研究の継続性の差異は,先行研究では. 際の「安全性」を担保する必要があり,安全性の. 科学ロジックと事業ロジックの差異として明示的. 立証には,最終的にヒトを対象とした臨床試験. には指摘されてこなかった.しかし,企業におけ. (治験)が必須である.つまり,有効性の実証に. る活動の性質やタスクの選択基準をふまえると,. とどまらず安全性も担保されたうえで最終的に新. より多くの候補を揃えたうえで絞り込んでいく. 薬を上市することが,事業ロジックに基づくミッ. 「選択と集中」は一般的な経営行動であり,営利. ションとなる.なお,創薬には通常 9 ~ 17 年と. を目的とする経済システム下にあるがゆえに生じ. 非常に長い時間がかかり ,プロジェクト期間内. た行動パターンであるといえる.また同時に,大. で創薬を達成することは現実的ではないため,創. 学では個人の知的好奇心に基づいて自律的に研究. 薬の候補となる疾患のメカニズムあるいは化合物. テーマを決定するがゆえに,少数の研究テーマを. をいくつか選定していくことが,より現実的なプ. 長期的に扱う傾向があるといえる.つまり,科学. ロジェクトのミッションとして A 社で共有され. ロジックの影響を受けて生じる普遍的な行動パタ. ていた.このように,研究テーマの選択におい. ーンであると解釈できる.このように,制度ロジ. て,大学側は有効性あるいは研究上の興味を,企. ックの差異ゆえに,研究テーマの決定と研究の継. 業側は安全性をより優先するという差異が生じて. 続について大学と企業の間に差異が生じていた.. 5). 最後に,打ち切られた研究への対応について. いた. 三つ目に,これも研究テーマの選択基準をめぐ. も,大学と企業との間には志向性の差異があっ. り,研究の継続性に関する差異が生じていた.本. た.プロジェクト内では継続しないと決まった研. プロジェクトでは既述のように,数十の研究テー. 究であっても,それが安全性の問題から打ち切ら. マを扱ったうえで創薬の見込みがあるものに絞り. れていた場合,大学としては科学ロジックに従っ. 込んでいくという手法が採られた.創薬はある単. て,ときに別の資金源を活用して研究の継続を試. 一のメカニズムや化合物に関する研究が創薬に繋. みる.しかし,仮に A 社と異なった企業がスポ. がる可能性が非常に低く,新規化合物発見の可能. ンサーになったとすれば他の企業を利する可能性. 性は約三万分の一ともいわれる .すなわち非常. もあるため,あくまで私益を追求する事業ロジッ. に高い不確実性をはらむため,多くの候補を有し. クに従い競争優位性のみを考えるのであれば,企. つつ,ステージゲート式にスクリーニングをする. 業である A 社は死蔵を厭わず研究成果を特許出. ことが当然視されている.よって企業の研究者. 願し,他の資金で研究が継続できないよう大学側. は,多くの場合企業から定められた研究テーマに. と契約を結ぶという選択肢も生じる.このよう. 従事し,スクリーニングの状況によって担当する. に,プロジェクト内は継続しないことが決まった. 研究を変えることとなる.換言すれば,研究テー. 研究の処遇についても大学と企業とでは対応が異. 5).

(8) 制度ロジック多元性下において科学と事業を両立させる組織の対応 55. が確認できなかった時点で創薬に繋がる可能性は. なっていた.. ないため,研究を継続する意義はなくなる.しか 2. 制度ロジック多元性が生み出すコンフリク ト. し,大学としては有効性が確認できる限りは研究 を継続しようとする.そのように有効性と安全性. 本項では,先述の大学と企業の対応の差異がど のようなコンフリクトを生じさせていたかについ. が両立しない例が多くあることは,以下のように インタビュー内で述べられた.. て述べる.なお,前項に挙げた四つの差異と,そ れらと表 1 に述べた制度ロジックとの対応関係,. 「結果として,有効だけども安全性が担保で. および本項において述べられるコンフリクトとの. きないからっていって,潰れたのがいっぱいあ. 関係について,表 3 にまとめた.. るんですよ.」(A1). まず研究の公開について,科学ロジックに依拠 する大学研究者は知識の公開,すなわち学術誌や. このように,有効性と安全性についての差異. 学会で研究成果を発表することを最優先するが,. は,研究を継続するか否かの意思決定においてコ. 企業にとっては論文や学会発表をしてしまうと特. ンフリクトを生じさせていた.. 許出願のための情報の機密性が失われてしまうた. また,先述のように,企業は多くの選択肢を確. め,順序としては論文公表よりも前に特許出願を. 保して「選択と集中」を行うことで事業における. 完了しないと,論文と特許とを両立させることは. 不確実性に対処する一方で,大学は比較的少数の. できなくなる.しかし,大学としては有効性が確. 研究テーマに携わり,論文になりそうな研究ある. 認できた時点で学会発表を行いたいため,特許出. いは「おもしろい研究」の継続を希望する.よっ. 願を待つことは大学のミッションを果たすうえで. て,企業はある研究テーマを比較的短期で打ち切. は阻害要因になり得る.また,プロジェクト以前. る傾向があるのに対し,大学は少数の研究テーマ. の契約において大まかなルールは締結していたも. を継続する志向があるために,ある研究テーマを. のの,個々の案件についてどうするかまでは決ま. 継続するか否かに関してコンフリクトが生じてい. っていなかったため,知識の公開に関するコンフ. た. さらに,継続しないことが決定した研究テーマ. リクトが大学と企業間で発生していた. 次に,有効性と安全性をめぐる差異も,研究テ. に関しても,大学と企業の対応の差異がコンフリ. ーマの継続に関してコンフリクトを引き起こして. クトの源泉となっていた.すなわち端的には,大. いた.企業側としては,ある研究テーマの安全性. 学は研究の継続を志向する一方で,大学に研究を. 表 3 制度ロジック多元性が生み出すコンフリクト 大学における志向 研究成果の公開. 企業における志向. メカニズムに関する論 創薬を見据えた特許 文の公表 の取得. 表 1 の関連項目 個人の関心事. 研究テーマの選択に 有効性あるいは研究上 安全性 おける基準(選択基準) の興味関心. 個人の関心事. ・少数の研究テーマを ・多数の研究テーマ 研究テーマの選択におけ 継続していく を絞り込んでいく る基準(研究の継続性) ・自律的に個人が決定 ・組織の階層に従っ する て決定する. ・活動の性質 ・タスクの選択基準. 継続させることが(科 継続させないことが 学界における)公益に 企業の私益にとって とって望ましい 合理的である. ・経済システム ・アウトプットされ た知識の活用. プロジェクト内で打ち 切られた研究への対応 出所:筆者作成. 生じるコンフリクト 知識の公開に関するコンフリクト: 論文と特許のどちらを優先するか. 研究テーマの選択に関するコンフリ クト:(プロジェクト内外において) どの研究テーマを継続するか,継続 させないか.

(9) 56 組織科学 Vol. 54 No. 2. 継続させないことが企業にとっての競争優位に繋. ことでプロジェクトにおける論文発表と特許取得. がり得るともいえるため,私企業の利益を追求す. の両立が図られていた.その結果としては,下記. る事業ロジックに従う行動をとることで,研究を. のように,大学としても企業としても各々の制度. 死蔵させず公開するという科学ロジックが阻害さ. ロジックに沿った成果を得ることができた.. れるというように,研究の継続性をめぐる差異が コンフリクトを生じさせていたのである.以上の. 「幸いなことに,それ(ルールの策定)で今. ように,前項で挙げられた差異は,大別すると二. までペーパーを遅らせるということはなかっ. つのコンフリクト,すなわち知識の公開に関する. た.」(A1). コンフリクトと,研究テーマの選択に関するコン フリクトを生じさせていた.. 「これ(A 社が特許として取得した研究テー マの数)も比較的公のプロジェクトに比べたら かなり歩留まりいいです.」(C1). 3. コンフリクトの軽減と制度ロジックの両立 既述したように,本プロジェクトでは,制度ロ. 但し, 「2 年ルール」は大学と企業双方におけ. ジック多元性が大学と企業の志向性や行動パター. る合理性を最大化させたというより,双方にとっ. ンにおいて差異を生じさせ,特にプロジェクトの. て譲歩を含むものでもあった.まず,2 年という. 初期においてコンフリクトを顕在化させていた.. 期間も,下記のように大学と企業の事情を勘案し. しかし,そうしたコンフリクトは両組織の対応に. たうえで妥協点を探った結果設定されたものであ. よって次第に解消されていった.本項では,両組. った.. 織が,いかに両組織の制度ロジックを維持したう えで,コンフリクトを解消しプロジェクトを前進 させたかについて記述する. まず,知識の公開に関するコンフリクトについ て, 「2 年ルール」と呼称された制度の設計によ. 「1 年ではやっぱり(企業が特許出願を検討 する期間として)無理なんですよ.3 年くらい は欲しい.でも 3 年も(大学側として知識の公 開を)待てないよなと.」(A1). って,コンフリクトの解消が図られた. そこで,大学側にとって学会発表が制限される 「2 年というのは実際に,正しいと思って検. 「2 年ルール」という妥協点が設定された.. 証していこうとすると,だいたい 2 年かかるん ですよ.論文書こうとすると.発見した時から. 「ひとつの落としどころとしては,(中略)学. 企業は使ってくださいと. (中略)その間に,. 会発表はしない.学会発表っていうレベルでで. 必要な特許はとります.その代わり,データは. きるところのデータっていうのは,けっこう簡. 共有します.できたらすぐお伝えします.その. 単にできてしまうんですね.なので,論文ファ. 間に,メカニズム研究はこちらでしますけど. ーストで,お願いしているんですね.」(B1). も,事業的に使えるか使えないかは,2 年間で 社内で検討してくれと.そんな感じで論文は書 いています. 」 (A1). 上記のように,有効性が見出された場合すぐに でも学会発表に繋げることが大学としては合理的 であるものの,学会発表を行わないことで情報を. 上記のように,ある研究テーマにおいて有効性. 秘匿しながら企業は特許出願を行い,かつ大学側. が実証できると期待された場合,実際に論文とし. では論文作成の準備をする,という体制をとって. て出版するまでには 2 年程度の公開準備期間がか. いた.このように,2 年ルールは両組織にとって. かる.その期間を利用して,企業は特許出願につ. 最も合理的な手段をとるというよりも,両者の均. いて検討するというふうに,準備期間を活用する. 衡を図りながら両組織のミッションを達成,つま.

(10) 制度ロジック多元性下において科学と事業を両立させる組織の対応 57. り両組織の制度ロジックを「両立」するために策. 両組織の制度的合理性を最大化させたというよ. 定されたルールであったといえる.. り,両組織が均衡を図りながら適度に制度ロジッ. また,研究テーマの選択に関するコンフリクト についても,企業が研究テーマの打ち切りを判断. クの要求を満たすことのできるルールが策定さ れ,コンフリクトの軽減に寄与していた.. できると同時に,大学としては打ち切られた研究. そこで次に,ルール策定における交渉過程に注. を他企業と継続できるルールの策定がなされた.. 目し,このようなルールの策定が導かれた論理が どのようなものであったかについて分析する.ル. 「A 社が契約を中止しますと言ったものは,. ールの策定は両組織の代表者らが対話しながら進. 大学も自由に研究活動していいし,大学の先生. められ,意思決定においてはいくつかの「論理」. も自由に売り込みいっていいというふうにして. が決定的な材料として作用していた.まず,本プ. います. 」 (C1). ロジェクトの資金のうち国から提供される資金が 半分程度あったことが,ルールを策定するうえで. 本プロジェクト内で打ち切られた研究は他企業. 説得材料として用いられた.. との協働であっても研究を継続できるようサポー トする体制がつくられ,ルールとしても確立して. 「これ(本プロジェクト)の場合は,国のお. いた.これによって,企業は事業化を選択基準に. 金が半分入ってたんですよ.だから税金半分入. しながらプロジェクト内でのスクリーニングを行. ってるじゃないのと,かなり強く言えたんです. うことができ,A 社がプロジェクト内で継続を. よ.」(A1). 選択しない研究テーマに関しては他企業をパート ナーとして研究の継続を模索することが可能にな. 上記のように,本プロジェクトでは「企業が全. り,研究テーマの継続に関するコンフリクトが軽. ての資金を提供しておらず,国から提供されてい. 減されたのである.. る資金がある(から公益を重視すべきである)」. このように,ルールの策定によってコンフリク. という論理がおもに大学側から主張され,よって. トを解消しようとする試みが見られ,両組織とも. 一企業だけを利するルールを策定することはでき. に,それぞれの制度ロジックに基づいた合理性を. ない,として事業ロジックの圧力を緩和する材料. 追求することができていた.しかし同時に,こう. となっていた.また,この論理は企業側にとって. した対応の結果として互いに譲歩や妥協をした点. は事業ロジックを阻害する可能性があるものの,. も見受けられた.たとえば知識の公開において. 国からの提供資金が獲得できるという事業ロジッ. 各々の利益を最大化するためには,むろん大学に. ク上のメリットもあったため,A 社にも受容さ. とっては特許出願を気にせず研究を継続する方が. れた.このように,「国から提供されている資金. 望ましく,企業にとっては論文化による公開の懸. がある」という論理がルール策定の交渉において. 念なく特許出願および事業化を推進すべきであ. 事業ロジックの要求すなわち知識の私的専有を緩. る.しかし,両立のために両組織は「2 年」とい. 和する材料として用いられ,結果として A 社が. う制約を設定せざるを得なかった.また,研究テ. 2 年ルールを容認することに繋がった.. ーマの選択においても,企業は事業ロジックに基. また,特に「打ち切られた研究を他企業と継続. づいてプロジェクトで扱う研究テーマを取捨選択. できるルール」の策定においては,「新薬の創製」. することは可能になったものの,競争優位のため. というプロジェクト全体のミッションステートメ. に研究を死蔵させることは科学ロジックの要求に. ントに起因した「創薬を通じて患者や社会に貢献. よって抑制された.つまり,本事例では両組織が. する」という論理が影響していた.. それぞれの制度ロジックの要求を満たし,プロジ ェクト全体で制度ロジックが両立されたものの,. 「(プロジェクトにおいては,)患者さんとい.

(11) 58 組織科学 Vol. 54 No. 2. うものを意識した.どういう患者さんやという. わち,科学ロジックと事業ロジックに起因するコ. ことを意識したことを考えていくと, (中略). ンフリクトが存在するなかで,二つのロジックと. 一般に言うギャップとかね,とかいうのは埋ま. は異なるロジックが用いられ,結果的にコンフリ. っていく. 」 (C1). クトの解決に寄与していたのである.これらの道 具的活用は,二つの制度ロジックをハイブリッド. 上記のように,「新薬の創製」というミッショ. したわけでもなく,またどちらかの制度ロジック. ンは,論文の公表や特許取得といった個々の組織. に一元化するわけでもないという点で,制度ロジ. のみに寄与するミッションを超越して, 「患者に. ック多元性に対する組織の対応として新規性があ. 貢献する」という論理を導くように解釈され,説. る.. 得材料として用いられていた.両組織が新薬の創. 以上の分析は新規性がある一方で,ある一つの. 製をめざすことは,むろん大学にとっての科学知. 戦略のパターンを提示したにとどまることも事実. 識の創造や企業にとっての市場創造に繋がっては. である.そこで,なぜこういった「第 3 のロジッ. いるものの,同時に患者に貢献するためのもので. クの道具的活用」が行われたのかについても考察. ある,という論理がルールの策定において強調さ. する.理由として,産学連携プロジェクトは直接. れていたのである.またこの論理に従うと,打ち. 的に国家が関与しているケースも含め,多くの場. 切られた研究を他企業と継続できるルールを策定. 合根本的に高い公共性が求められることが挙げら. した方が患者に貢献する創薬に繋がるという結論. れる.特に国からの資金提供がある場合は,単一. が導かれ,結果として打ち切られた研究を他企業. 企業だけを利することは強く忌避される傾向にあ. と継続できるルールの策定に強く影響していた.. る.産学連携に従事する企業に利得があることは 否定されないまでも, 「公器」たる大学と連携. Ⅴ .事例の解釈と示唆. し,まして公費を投入するのであれば,社会貢献 を行うべきであるという国家のロジックが,大学. 本プロジェクトでは,科学ロジックと事業ロジ. と企業双方に未然に強く影響している可能性が高. ックが構成する制度ロジック多元性が両組織の行. い.それゆえに,本事例における第 3 のロジック. 動パターンや志向性に差異を生じさせ,またその. は両組織にとって影響度の高いものであり,道具. 差異がコンフリクトの源泉となっていた.生じた. 的活用が行われたことや,第 3 のロジックに依拠. コンフリクトへの組織的対応として,コンフリク. する形で両組織の均衡が図られたことは,蓋然性. トを軽減しながらも両組織の合理性を満たしつつ. の高い現象であると推察できる.. プロジェクトを進めるためにルールの策定がなさ. また,道具的活用の頻度や影響度について,本. れ,その交渉過程においては「国から提供されて. プロジェクトではインタビュー内で「患者(さん) 」. いる資金がある」「創薬を通じて患者や社会に貢. という語彙がかなり頻繁に用いられ,また「創薬. 献する」といった論理が用いられ,ルールの決定. を通じて患者や社会に貢献する」という論理がコ. に大きな影響を及ぼしていた.. ンフリクトの解消に寄与していた.製薬業界では,. これらの論理は,科学ロジックにも事業ロジッ. 新薬の創製に際して患者の協力による臨床試験. クにも由来しない, 「第 3 のロジック」といえる. (治験)を実施する必要があり,また医薬品のエン. 制度ロジックから生じた論理である.これは既存. ドユーザーは患者であるため,患者の存在感がき. 理論における概念を用いると,コンフリクトを解. わめて大きい.よって,国家のロジックや「ケア. 決するために「国家のロジック(state logic) 」. のロジック(care logic) 」 (Dunn & Jones, 2010). 6). (Pahnke, Katila, & Eisenhardt, 2015)という制度. といった事業ロジックとは異なるロジックがドミ. 7). ロジックの道具的活用 (McPherson & Sauder,. ナンスを持ちやすいのだと考えられる.大学にお. 2013)が行われていたのだと解釈できる.すな. いても,特に臨床現場に携わる研究者は患者と接.

(12) 制度ロジック多元性下において科学と事業を両立させる組織の対応 59. する機会がきわめて多く,科学ロジック以外のロ. 検討したものであり,産学連携において典型的に. ジックが高いドミナンスを持つ傾向にあると考え. 生じ得る問題点を解決するに有用な事例と論理を. られる.つまり,第 3 のロジックの道具的活用に. 提供している.. おいては全く無関係のロジックが道具的に活用さ. 最後に,実務的貢献である.産学連携において. れるのではなく,大学あるいは企業に属する行為. は,大学組織における「私科学化」の推進がより. 主体にとって実務上影響を持つ制度ロジックが活. 進行し,主流になっているという主張もある(e.g.,. 用される可能性が高いのだと推測できる.. Colyvas & Powell, 2006;上山,2010).しかし, 大学は本来的には純度の高い科学ロジックに依拠. Ⅵ .結論と議論. する組織であり,また企業もそれゆえに基礎研究 など企業にとって得難い科学的知見を得るため. 本稿では,産学連携プロジェクトにおける科学. に,産学連携を求める.そこでは必ずしも「大学. と事業の関係に注目しながら,制度ロジック多元. が企業化する」つまり制度ロジックを片方にシフ. 性下において組織がどのように各々の制度ロジッ. トさせるのでなく,イノベーション創造のための. クに基づいて活動すべくコンフリクトに対応する. 補完性を担保するために制度ロジックの多元性を. のか,すなわち制度ロジックが両立されるのかに. 維持することが求められる.ゆえに,両組織のロ. ついて検討し,次のような結論が得られた.産学. ジックを両立する手段として第 3 のロジックの道. 連携プロジェクトにおいては,制度ロジック多元. 具的活用が行われるのである.こうした事例の提. 性が大学および企業に行動パターンや志向性にお. 示は,産学連携プロジェクトに関する実務に対し. ける差異を生じさせ,それゆえにコンフリクトが. ても,一方的な私科学化という試みに疑義を呈. 生じる.このコンフリクトはルールの策定によっ. し,科学と事業の関係を考えるうえでの「両立」. て軽減され得るが,その交渉過程では両組織がい. という重要な論点を提示している.. ずれもドミナントとしない第 3 のロジックが道具. なお本稿の限界として,重要な論点である両立. 的に活用される.また,第 3 のロジックが用いら. の程度が挙げられる.第 3 のロジックを道具的に. れる頻度や影響度は,行為主体の実務の状況によ. 活用することで,結果的には大学においては科学. って左右されると推察される.. ロジックが,企業においては事業ロジックがドミ. 本稿の貢献は以下のものが挙げられる.まず,. ナントであり続けると同時にプロジェクトが推進. 制度ロジック研究に対する貢献である.本稿は科. されることを産学連携における最大の目的である. 学ロジックと事業ロジックという先行研究におい. と考えると,本稿の主張は制度ロジックを両立し. て関心の高い制度ロジックを題材として,制度ロ. たものであると解釈するに妥当である.しかし第. ジック多元性がコンフリクトを生み出すメカニズ. Ⅳ節で詳しく述べたように,本事例では制度ロジ. ムと,それに対してプロジェクト内における制度. ックの両立が図られたものの,両者の制度ロジッ. ロジックの両立を試みる組織の対応を明らかにし. クの要求が最大限に満たされたわけではなく,部. た.特に研究テーマの選択基準に関するコンフリ. 分的には阻害された面もある.このような両立の. クトの指摘と第 3 のロジックを道具的に活用する. 程度に関しては十分な議論がなされておらず,本. 対応に関する分析は新規性が高く,制度ロジック. 稿の限界であるといえる.. 研究に寄与する点である.. 他にも,第 3 のロジックに関する検討,たとえ. 次に,産学連携研究への貢献として,産学連携. ば「国から提供されている資金がある」 「創薬を. における具体的事例を提示したことが挙げられ. 通じて患者や社会に貢献する」といった論理と国. る.産学連携においては理想論が先行し,実際的. 家のロジックあるいはケアのロジックとの関係. な検討が乏しいことが指摘されている(榊原,. や,科学ロジックと国家のロジックの根源的な関. 2000).本稿は具体的な事例を通じて産学連携を. 係などは,十分に議論されていない.こうした課.

(13) 60 組織科学 Vol. 54 No. 2. 題については,制度ロジックにおける「制度セク ター」に関する議論を深めていくことが重要であ. 4) インタビューの内訳は,インタビュイー 6 名に A ~ F の 番号を割り振り,以下のようになっている.X 大学関係者 2 名に対して 3 件を行い,それぞれ番号を A1(2017 年 8. る(舟津,2019).たとえば,そもそも科学者と. 月 24 日),B1(2018 年 4 月 24 日),B2(2018 年 7 月 5 日). いう専門家集団は歴史的にみても国家から強い影. と付与し,A 社関係者 4 名に対して 2 件を行い,番号を. 響を受けて発展してきたものであり,科学と国家 は不可分の関係にある.こうした制度セクターの 次元から,これらの制度ロジックについて論じる ことが今後の課題として挙げられる. 最後に,本稿における主張が適用される境界条 件について検討する.第 3 のロジックの道具的活 用については,日本の産学連携は行政主導である こ と が 多 い( 川 尻・ 平 野・ 前 田,2016,p. 85) ため,日本においては国家のロジックの影響度が 強い.そのため,日本の産学連携に対しては当て はまる可能性が高く,例外的な事象を扱ったわけ ではないといえる.但し,産学連携が最も活発と いえるアメリカをはじめ,本稿における主張が海 外においても適用できるかについては議論できて おらず,国際差の検討は今後の課題として挙げら れる.. C1(2018 年 5 月 25 日),D1,E1,F1(2018 年 8 月 29 日) とした.なお,5 件のうち 4 件は筆者以外の人物と共同で 行ったインタビューである. 5) 日本製薬工業協会ウェブサイト(http://www.jpma.or.jp/ about/issue/gratis/guide/guide12/12guide_05.html)より 引用した(2019 年 8 月 5 日取得). 6) 本稿では,「行政組織が関与し,公共性を重視する」とい う特徴が本稿の文脈と合致するため,Pahnke et al.(2015) の「国家のロジック」概念を援用した.但し,Pahnke ら は政府系ベンチャーキャピタルが依拠する制度ロジックと して,ベンチャー投資の議論に特化した視点から国家のロ ジックを描出しているため,本稿において意図される国家 のロジックとは焦点がやや異なっている. 7) 制度ロジックの道具的活用(using logics as tools)とは, McPherson & Sauder(2013) が Swidler(1986) を 援 用 して提唱した概念であり,「行為主体が,当面の状況にお ける必要性に応じて,異なるタイミングで異なる制度ロジ ックの活用を選択できる」 (p. 167),すなわち,主体が自 身の目的充足のために時宜に応じて複数の制度ロジックを 道具のように「使い分ける」ことを意味する. 参考文献 Battilana, J., & Dorado, S. (2010). Building sustainable hybrid or-. 謝辞. ganizations: The case of commercial microfinance organi-. 本論文の審査過程において,SE の高尾義明先生と二名 の匿名査読者の方から建設的かつ丁寧なコメントをいただ き,論文の質が格段に向上しました.また,2018 年度組 織学会ドクトラル・コンソーシアムでは高尾先生および島 本実先生,近能善範先生,参加者の皆様に有益な助言を賜 りました.指導教員である椙山泰生先生をはじめ,京都大 学経済学研究科・経営管理大学院の先生方にも貴重なコメ ントをいただきました.ご多忙のなかインタビューにご協 力いただいた関係者の方々にも,多大なるご教示を賜りま した.ここに記して御礼申し上げます.. zations. Academy of Management Journal, 53(6), 1419-1440. Besharov, M. L., & Smith, W. K. (2014). Multiple institutional logics in organizations: Explaining their varied nature and implications. Academy of Management Review, 39(3), 364381. Binder, A. (2007). For love and money: Organizations’ creative responses to multiple environmental logics. Theory and Society, 36(6), 547-571. Busco, C., Giovannoni, E., & Riccaboni, A. (2017). Sustaining multiple logics within hybrid organisations: Accounting, mediation and the search for innovation. Accounting, Auditing and Accountability Journal, 30(1), 191-216. Chesbrough, H. (2003). The logic of open innovation: Managing intellectual property. California Management Review,. 注. 45(3), 33-58.. 1) 「科学と『事業』の関係」における「事業」と類似した表. Colyvas, J. A., & Powell, W. W. (2006). Roads to institutionaliza-. 現として, 「技術」 , 「産業」 , 「企業」らの文言が用いられ. tion: The remaking of boundaries between public and pri-. る場合がある.それらの指す意味は細かくは異なるが,本. vate science. Research in Organizational Behavior, 27,. 稿における用法としては主張を左右しないものとして同義 的に解釈し,統一して「事業」と表現する. 2) Institutional logic(s)の訳語は,文献によって「制度固 有のロジック」 , 「制度ロジックス」など表記ゆれがあり, 本稿では「制度ロジック」で統一する. 3) Gordon Gekko は映画“Wall Street”に登場し,収益至上 主義の人物として描かれる.. 305-353. Corbin, J., & Strauss, A. (2008). Basics of qualitative research: Techniques and procedures for developing grounded theory (3rd ed.). Sage Publications. Dalpiaz, E., Rindova, V., & Ravasi, D. (2016). Combining logics to transform organizational agency: Blending industry and art at Alessi. Administrative Science Quarterly, 61(3), 347-.

(14) 制度ロジック多元性下において科学と事業を両立させる組織の対応 61 392. Dunn, M. B., & Jones, C. (2010). Institutional logics and institu-. Nelson, R. R. (2004). The market economy, and the scientific commons. Research Policy, 33(3), 455-471.. tional pluralism: The contestation of care and science log-. Pache, A. C., & Santos, F. (2013). Inside the hybrid organization:. ics in medical education, 1967-2005. Administrative Science. Selective coupling as a response to competing institutional. Quarterly, 55(1), 114-149.. logics. Academy of Management Journal, 56(4), 972-1001.. Durand, R., Szostak, B., Jourdan, J., & Thornton, P. H. (2013). In-. Pahnke, E. C., Katila, R., & Eisenhardt, K. M. (2015). Who takes. stitutional logics as strategic resources. In M. Lounsbury. you to the dance? How partners’ institutional logics influ-. & E. Boxenbaum (Eds.), Institutional logics in action, part. ence innovation in young firms. Administrative Science. A (pp. 165-201). Emerald Group Publishing. Eisenhardt, K. M. (1989). Building theories from case study research. Academy of Management Review, 14(4), 532-550. Fabrizio, K. (2006). The use of university research in firm innovation. In H. Chesbrough, W. Vanhaverbeke, & J. West (Eds.), Open innovation: Researching a new paradigm (pp. 134-160). Oxford University Press. Friedland, R., & Alford, R. R. (1991). Bringing society back in: Symbols, practices and institutional contradictions. In W.. Quarterly, 60(4), 596-633. Perkmann, M., McKelvey, M., & Phillips, N. (2018). Protecting scientists from Gordon Gekko: How organizations use hybrid spaces to engage with multiple institutional logics. Organization Science, 30(2), 298-318. Perkmann, M., Tartari, V., McKelvey, M., Autio, E., Broström, A., D’Este, P., ... & Krabel, S. (2013). Academic engagement and commercialisation: A review of the literature on university-industry relations. Research Policy, 42(2), 423-442.. W. Powell & P. J. DiMaggio (Eds.), The new institutional-. Pratt, M. G., Rockmann, K. W., & Kaufmann, B. (2006). Con-. ism in organizational analysis (pp. 232-263). University of. structing professional identity: The role of work and iden-. Chicago Press.. tity learning cycles in the customization of identity among. 舟津昌平(2019) . 「制度ロジック多元性下における組織のイノ ベーションマネジメント」『赤門マネジメント・レビュー』 18 (4) ,117-146. Gioia, D. A., Corley, K. G., & Hamilton, A. L. (2013). Seeking qualitative rigor in inductive research: Notes on the Gioia methodology. Organizational Research Methods, 16(1), 1531. 川尻達也・平野正夫・前田裕司(2016) . 『ヘルスケア分野にお ける産学連携ガイドブック』薬事日報社.. medical residents. Academy of Management Journal, 49(2), 235-262. 榊原清則(2000).「日本の産学連携と知識生産システム」『組織 科学』34(1),45-53. 榊原清則・辻本将晴・松本陽一(2011).『イノベーションの相 互浸透モデル:企業は科学といかに関係するか』白桃書房. 佐藤郁哉(2003).「制度固有のロジックから『ポートフォリオ 戦略』へ―学術出版における意思決定過程に関する制度論 的考察」『組織科学』36(3),4-17.. Kline, S. J. (1990). Innovation styles in Japan and the United. Sauermann, H., & Stephan, P. (2013). Conflicting logics? A mul-. States: Cultural bases; Implications for competitiveness.. tidimensional view of industrial and academic science. Or-. Stanford University(鴨原文七訳『イノベーション・スタ イル』アグネ承風社,1992). Kraatz, M. S., & Block, E. S. (2008). Organizational implications of institutional pluralism. In R. Greenwood, C. Oliver, R. Suddaby, & K. Sahlin-Andersson (Eds.), The sage handbook of organizational institutionalism (pp. 243-275). Sage Publi-. cations.. ganization Science, 24(3), 889-909. Souitaris, V., Zerbinati, S., & Liu, G. (2012). Which iron cage? Endo-and exoisomorphism in corporate venture capital. programs. Academy of Management Journal, 55(2), 477505.. Swidler, A. (1986). Culture in action: Symbols and strategies. American Sociological Review, 51(2), 273-286.. Lounsbury, M. (2001). Institutional sources of practice variation:. Thornton, P. H., Ocasio, W., & Lounsbury, M. (2012). The insti-. Staffing college and university recycling programs. Ad-. tutional logics perspective: A new approach to culture,. ministrative Science Quarterly, 46(1), 29-56. Lounsbury, M. (2007). A tale of two cities: Competing logics and practice variation in the professionalizing of mutual funds. Academy of Management Journal, 50(2), 289-307. Marquis, C., & Lounsbury, M. (2007). Vive la resistance: Com-. structure, & process. Oxford University Press. 上山隆大(2010).『アカデミック・キャピタリズムを超えて: アメリカの大学と科学研究の現在』NTT 出版. 山口栄一・水上慎士・藤村修三(2000).「技術創造の社会的条 件」『組織科学』34(1),30-44,. peting logics and the consolidation of U.S. community banking. Academy of Management Journal, 50(4), 799-820. McPherson, C. M., & Sauder, M. (2013). Logics in action: Managing institutional complexity in a drug court. Administrative Science Quarterly, 58(2), 165-196.. 2018 年 12 月 12 日 受稿 2020 年 2 月 9 日 受理 担当シニアエディター 高尾義明.

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表 2 分析概念に対応するインタビューデータの抜粋 集約的分析 コード 二次概念 代表的な引用 データソース 科学ロジック 活動の性質 「医学研究の基礎というのは何かというと,疾病のメカニズム,A が悪くなると B が悪くなっ て結果としてこういう病気になりますと.そういうメカニズムの研究なんですね.」 A1 ミッション 「大学としては,責務として,医者を輩出する.で,もう一つは,知の創造というんですか ね,医学的な知見を出していこうと.もう一個は,医療を作ろうと.この三つがあると思うん ですね.」 C1

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