支援に困難を感じる外国人の相談援助事例からみた生活課題調査
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(2) 2 支援に困難を感じる外国人の相談援助事例からみた生活課題調査. 1 .はじめに . かった。そこで、本研究では日本の広い地域で外国人 の支援者へのインタビュー調査を実施し、支援に困難の. 日本で暮らす外国人はここ 10 年ほど安定して 200 万. 生じている多様な事例に焦点を当てて事例を収集、分. 人を超えるようになった。法務省の統計によると中国や韓. 類した。この事例分析を通じて日本で暮らす外国人の生. 国、フィリピン、ブラジルのほか世界の 200 の国々から来. 活における、より緊急性の高い課題の抽出と実態把握を. 日していることが示されており、日本でも多様な文化や生. 試みた。これを今後の日本のグローバル化において求め. 活習慣を持つ外国人が暮らすようになっていることがわか. られることや日本に暮らす外国人の支援の在り方を考える. る1)。. 一助としたい。. 現在、日本に暮らす外国人の日常的な支援を行ってい るのは、ボランティア団体であることが多い。ボランティア 団体の支援者が、地域で暮らす外国人の生活における 困りごとの相談にのり、外国人と共に課題解決に取り組. 2 .研究の目的 本研究の目的は、外国人支援を行う団体の支援者が. んでいる。行政組織はこれらの団体の活動に対し、活. 困難に感じた事例から、 日本で暮らす外国人へのソーシャ. 動場所を提供したり、業務委託を行う形で資金を援助し. ルワーク的な支援を要する生活課題を明らかにすることで. たりするなどの後方支援を行っている2)。. ある。また、今後どのような支援体制を整えるべきかにつ. さまざまな文化や個人背景を持つ外国人が日本での生. いても検討する。. 活においてどのようなことに困難を感じているのかについ ては、広く統計的手法により調査を実施された調査結果 がある。2003 年から 2009 年の7年間のある外国人の支 援団体で行った生活相談データからは、子どもの教育や. 3 .研究方法 日本の各地(近畿地方2団体、中部地方1団体、関. 学校対応に関する相談、銀行口座の開設方法を知りた. 東地方3団体)において外国人の相談支援を行っている. いなどの簡単な情報提供で対応可能な生活相談、就労・. ボランティア団体、NPO 団体に対してインタビュー調査を. 出入国管理に関する相談が多く見られていた3)。また木. 行った。調査対象の団体はスノーボールサンプリング法を. 村による外国人支援団体への調査では、医療問題(医. 用いて選定した。はじめに研究者がよく活動状況を把握. 療機関へのアクセスや病気など) 、 生活問題(人間関係、. しており対外的にも活動が評価を受けているボランティア. 住居、言語など) 、家庭問題(家庭内暴力、家庭不和、. 団体にて調査を行い、その後その団体の支援者に彼ら. 虐待、介護など)の相談が多く挙げられていた 。なお. の信頼しているボランティア団体の紹介を受けた。また、. これらの研究で見られた外国人の子どもにおける低い教. 外国人支援を研究テーマとする研究者からも、活動実績. 育水準とそれに付随した低所得はイタリアやアメリカでも. を評価している団体の紹介を受けた。それらの団体のう. 指摘されており、世界の多くの国に共通の課題である5, 6)。. ち、調査対象は政治的思想や宗教を支援の背景として. 加えて近年、日本においては日系ブラジル人の定住. いない団体とし、特定の国から来た外国人のみを支援し. 化も進んでいる。定住化はエスニック・コミュニティや母. ている団体についても調査対象から除いた。インタビュー. 国政府によるブラジル人学校の認可等の政策展開によっ. 調査期間は 2011 年から 2015 年である。. て、母国ブラジルとのつながりを維持・強化する形で進. インタビューでは、実際に相談援助に携わる支援者か. んでいる。その結果、日本人とブラジル人の希薄な社会. ら、日本で外国人支援を行う上で困難を感じた事例を挙. 関係を維持することとなり、地域におけるトラブルの一因と. げてもらった。調査対象者の属性は表1に示す。調査で. なっている現状も指摘されている 。. はそしてなぜ困難であると感じたのかその原因について. 4). 7). 外国人の生活課題に関する先行研究の多くは、外国. も可能な限り話をきいた。インタビュー調査は、30 分から. 人支援団体へアンケート調査を行ったり4)、すでに外国. 2時間程度の半構造化面接を調査対象者と研究者の1. 人支援団体が作成していた相談記録の内容を用いて統. 対1で実施した。また分析の際に確認できるように、調査. 計的手法によって分類したものであり3)、ここから外国人. 対象者の承諾を得た上でインタビューの内容はすべて録. の生活上の課題の傾向を俯瞰することができた。しかし、. 音した。. ドメスティックバイオレンス被害者調査. のように特定の. 収集したデータは質的帰納的に分析した。質的な分. 課題を掘り下げた調査はあるが外国人の生活上の課題. 析の妥当性を高めるために、10 年以上の業務経験を持. を広く調査し支援の課題を検討した質的研究は見られな. つ相談援助職1名と研究者の2名で分析を行った。第一. 8).
(3) 保健医療福祉科学 2020:10:1—9 3. 表1 調査対象者の属性. 所属する支援団体の主な活動内容. 支援団体での調査対象者の役割. ドメスティックバイオレンスを受けた 外国人女性の保護 外国人の生活相談 日本語の学習支援. 生活相談およびドメスティックバイオレンス 被害者の保護を 3 年以上担当(3 名) 生活相談担当兼団体代表(1 名). 日本語を母語としない子どもたちへの 学習支援と進学支援. 学習支援・進学相談担当兼団体代表(1 名). 非正規滞在外国人の在留支援. 相談担当兼団体代表(1 名) 相談を 3 年以上担当(1 名). 外国人の住居の賃貸契約支援 外国人へ賃貸住宅を提供する大家支援. 相談担当兼団体代表(1 名). 外国人の医療受診支援. 相談担当兼団体代表(1 名). 外国人の生活相談 日本語の学習支援. 相談担当兼団体代表(1 名). ※今回調査した団体はすべて一般市民によるボランタリーな組織で調査時の団体代表が設立した. の手順として、インタビューの内容を逐語録に起こした。. 影響しない詳細情報はできるだけ収集しないよう配慮し. 次に収集した事例の内容を要約し、その生活課題に関. た。また外国人支援団体の数は多くはないことから調査. する部分を抽出し類似した内容を集めてカテゴリ化した。. 対象者の個人情報保護のため、調査を行ったボランティ. その際に、早期介入を要する深刻な内容を含む生活課. ア団体やインタビューに応じた支援者についても明らかに. 題と緊急性の低い生活課題とに分類した。なお、早期. しないこととした。なお本研究における利益相反は存在. 介入を要する深刻な内容であるかどうかは、インタビュー. しない。. 対象者より事例を聴きとった際に得た情報を根拠とした。 生命・身体の危機等の緊急性のほか、調査時に課題 が解決できていなかった、または解決に多くの時間や労. 5 .結果. 力を要したと調査対象者が考えているかを基準とした。. 外国人支援を行っている6団体から支援に困難を感じ. 事例の要約を行った時点において複数の課題の見ら. た 108 事例、117 課題を収集した。事例の支援対象者. れた場合には、1事例であっても複数の生活課題を抽出. の国籍は、フィリピンが 29 事例で最も多く、次いで中国. している。ある事例では、日本語のできない子どもが来日. の 12 事例が多かった。またプライバシー保護などの理由. したものの、日本語学習の機会が少なく、日本語で教育. による国籍の未提示が 26 事例ある。 この調査において. の行われる公立学校に馴染めず、非行に走るようになっ. 把握できた支援対象者の年齢はおよそ 0 歳から 40 歳代. た。この場合には1事例に対し、日本語学習機会がない、. までが多く、高齢者はほとんど見られなかった。性別に. 子どもの非行行為という2つの課題があると判断した。. ついては、未提示の事例が多かったが提示のあった分. 4 .倫理的配慮. では女性が多かった。しかし、家族単位での支援を行っ ている事例が多く、支援対象者の性別を選定しにくい事 例も多かった。. 本研究は、埼玉県立大学の倫理審査を経て実施して いる(受付番号 22023)。本研究に協力しなくとも不利 益は生じない旨を調査対象団体へ口頭と書面にて説明 し承諾を得た場合のみ調査対象とした。相談者の国籍 や年齢、滞在期間から個人を特定されることを防止する ため、彼らの個人を特定する可能性のある生活課題に. 1)緊急性が高いと考えられる生活課題カテゴリと事 例 表2には、より深刻で緊急性の高い事例の含まれてい る生活課題のカテゴリを集めた。 「子どもの養育・教育の困難」というカテゴリでは、子ど.
(4) 4 支援に困難を感じる外国人の相談援助事例からみた生活課題調査. 表2 深刻で緊急性の高い内容を含む生活課題. カ テ ゴ リー. 事 例 か ら抽 出 した 生 活課 題. 子どもの養育・教育. 子どもが法定の予防接種を受けていない 児童相談所による子どもの保護が認められない 子どもの日本語学習機会が十分でない 障害を持つ子どもへの対応に困難が生じている 子どもに非行行為がある 子どもが学校になじめず不登校となっている 子どもの学習支援が必要(日本語以外) 子どもの進路を決めることが困難(就業・進学) 親の子どもの教育に対する関心が低い 子どもの学習意欲が低い. 日 本 の 制度 の 知 識 ・ 情報 不 足. 日本の学校制度の知識・情報不足で必要な対応ができていない 日本の福祉制度の知識・情報不足で援助を受けられない 金銭給付を受けるための手続きが困難となっている 生活保護の受給・受給後の手続きが困難となっている 病院の受診が困難となっている 障害者制度の知識・情報不足で援助を受けられない 納税方法や制度の知識・情報不足で未納となっている 前夫の子を現夫の子として養子縁組することを希望している 外国人の遺骨の持ち出しを希望している 保育所や幼稚園入所の知識・情報不足で申し込みができない 子どもの認知を希望しているが対応がわからない 離婚手続きを希望しているが対応がわからない 外国籍の子どもの養子縁組を希望している. 犯罪被害. 人身売買の被害者となった 売春被害にあっている. 触法. 偽装結婚を行っている 内縁の配偶者が薬物依存となっている 不法に入国している 違法就労を行っている. 家庭内暴力・虐待の被害. 家族から子どもへの性的虐待が行われている 配偶者からの DV 被害を受けている. 入国管理に関する対応. 不法滞在となっている(オーバーステイ) 難民申請が困難 ビザ申請・取得に関する手続きが煩雑 日本への再入国が困難 不法滞在中に生まれた子どもの国籍の取得が困難. ※下線の生活課題を含む事例は緊急対応を要していた.
(5) 保健医療福祉科学 2020:10:1—9 5. もの日本語や日本語以外の科目の学習の支援の必要な. 外国人妻への激しい暴力の末、保護を行った事例など. 事例が多く見られた。そして学習意欲の低い子どもの. が挙げられた。しかし、婚姻期間が短かったり、夫との. 存在が指摘され、非行行為や不登校などの状態に困難. 間に子どもがいなかったりした場合には、離婚により配偶. を感じていることが示された。親の教育に対する関心が. 者ビザが下りず日本で暮らすことができなくなると考え、相. 低い事例もあり、それを次に示す。. 談に来なくなるなど問題解決に消極的な事例もあった。ま. 事例1:東南アジア出身の男児が学習支援を受けて、. た、日本の婦人保護制度をうまく利用し、支援を得て無. 高校入試に合格した。仕事につながる資格の取得も可. 料で出産をすませ、 逃げてきたはずの夫の元へ帰っていっ. 能な高校へ入学したのだが、親の都合で在学中に母国. た例などもありインタビューに回答した支援者からは常に. へ帰った。男児は日本に戻り長期に生活したいという意. 適切な制度の運用を行うことに困難を感じるという話も出. 向がある。日本では高校を卒業しないと就職が非常に難. ていた。. しくなるので、彼の支援者は彼の学習の継続が可能で. また「入国管理」カテゴリにまとめた生活上の課題や. あるかを気にしている。彼は小学校の時から親の都合で. 困難には、再入国許可の手続きを行わなかったため母. 母国と日本を行ったり来たりしており、学校もあまり通って. 国に帰った妻の再入国が認められないといった相談のほ. いない。親は子どもの教育には関心のない対応であるの. かビザの申請の困難や不法滞在という課題が多く挙げら. で彼の教育の機会を奪ってしまう可能性が高い。. れた。このカテゴリの事例を1つ示す。. 加えてこのカテゴリでは、複数の事例において日本の. 事例 3:日本人男性と結婚した外国人女性が夫からの. 学校における外国籍児童受け入れ態勢の不備という指. 暴力を受け、自宅から逃げて水商売の仕事に入った。こ. 摘が見られた。外国から来た子どもたちの指導の多くを. の仕事で知り合った別の日本人男性と一緒に暮らすように. 現場の教員に任せているため、それぞれの教員の指導. なったが、はじめの婚姻の離婚が成立しておらず、暴力. に一貫性がない。また外国から来た子どもの能力を判断. を受けた夫の下にパスポートなどを置いたままで戻ることも. する適切な制度がなく、義務教育後の高校への進学が. できず、必要な書類を整えられないままビザが切れて不. しにくい状況となっていた。加えて高校に進学しない外. 法滞在となってしまった。. 国籍の子どもの非行、犯罪行為を支援者が複数把握し ている。そして外国籍の児童であると児童相談所も積極 的に支援や保護を行わないことが多かった。 「日本の制度の知識・情報不足」という生活課題では、 病院受診等生命にかかわることや就学前の教育機関へ の申込み、納税、生活保護の受給など生活の広い範囲 で困難を生じており、支援を受けにくい環境にある外国 人の状況が示された。 また「犯罪被害」は、日本に良い仕事があるとだまさ れて来日し、見ず知らずの男性と書類上の夫婦となり、 売春をさせられそうになったところで逃げてきた事例などが 含まれる。支援を必要としている外国人が犯罪に関与し ている「触法」カテゴリでは、収入を得るための偽装結 婚の事例を示す。 事例2:難民認定により日本に永住可能となった外国人 女性が自分と結婚すると日本での永住資格が得られるこ とを利用して母国へ帰国中に知り合った男性に偽装結婚 を持ちかけた。男性は難民の女性へ謝礼を支払い、2人 は偽装結婚した。4年間日本で暮らしたところで定住者ビ ザを取得することのできた男性が行方不明となってしまい 困っている。 「家庭内暴力・虐待」カテゴリでは、母国から連れて きた前夫の子に対する現夫による性的虐待や、夫による. 2)支援の緊急性は高くないと考えられた生活課題カ テゴリと事例 調査対象事例の中では緊急性の高い事例は見られな かった生活課題カテゴリと事例の詳細を表 3 に示す。 カテゴリが多いので多くの事例に関わるカテゴリを中心 に概要をみる。まず、 「日本語でのコミュニケーション困難」 により、日常生活の買い物、書類作成・教育・医療など への困難など情報や支援を受けにくい状況にあるという 事例が多く見られた。これは「日本での生活ルールの知 識・情報不足」カテゴリへともつながっている。例えば地 域での生活のルールを守ることができず、近隣の住民と のトラブルが生じている。日本のゴミ出しのルールに従って ゴミを出さない、集合住宅の共有部分に私物を置くことに よる近隣とのトラブルなどである。日本では原則禁止され ている賃貸住宅のまた貸しが行われたり、賃貸住宅の退 去時の修繕費の範囲の見解の相違などでも、もめ事が おこっていたりした。「生活文化の相違によるトラブル」と いうカテゴリでは、生活ルールとしての取り決めはないが、 集合住宅の自室に大勢の人を泊めたり夜中に音楽をか け踊ったりしている外国人が近隣の日本人からうるさいと 苦情を受けトラブルとなっている事例があった。生活文化の 違いが人間関係のトラブルに発展していることが示された。.
(6) 6 支援に困難を感じる外国人の相談援助事例からみた生活課題調査. 表3 緊急性の低い内容の生活課題. カテゴリー. 事例から抽出した生活課題. 日本語の コミュニケーション困難. 日本語を話す、読む、書くことができない. 妊娠・出産の対応. 自力で中絶をすることが困難 未婚で出産し、その結果生活困難となる (日本はシングルマザーが暮らしにくい) 妊娠後の手続きや生活の知識がない. 日本での生活ルールの 知識・情報不足. ゴミ出しのルールを守らない 住宅の共有部分に物を置いてトラブルとなる 賃貸住宅退出時の修繕費に関するトラブル 住宅のまた貸しをする. 生活文化の相違によるトラブル. 夜に部屋でパーティをして騒ぎ近隣とトラブル 部屋に大勢の人を泊め騒音でトラブルとなる. 合意のない結婚・離婚. 十分な納得なく離婚となる 国際結婚における結婚後にわかる虚偽 価値観や宗教観の相違による離婚. 貧困. 貧困状態に陥っている. 就労にまつわるトラブル. 就労先が決まらない 未払い給与の請求をしたい. 住宅の確保が困難. 転居先を探している 外国人に賃貸してくれる部屋が見つからない. モラルの低さ. 納税意識が低く、税金を滞納している 行政機関に収入を低く申告する. 相談者個人に由来する 理解の困難. 相談者の理解力が低い. ※外国人であることではなく. お金の管理ができない. 個人の障がい等に起因. 学校における外国籍児童 受け入れ態勢の不備. (説明を理解できない 自分の状況を説明できない) 生活全般に支援を要する状況になっている 英語圏以外から来日した児童の高校進学の難しい制度設定 外国から来た子どもの能力を評価しにくい高校進学制度 外国から来た子どもへの中学校側の指導に一貫性がない 学校の先生が外国から来た子の教育に非協力的. 人的な支援を得にくい環境. 転居の手伝いがいない 家族や夫婦間のもめごとを調整できる人がいない 住宅賃貸のための保証人がいない. 一方で合意のない結婚や離婚をされた外国人の事例. いう事例が挙げられた。これはイスラム圏の外国人夫と日. もあり「合意のない結婚・離婚」カテゴリとした。結婚. 本人妻の組み合わせに多く見られた。加えて夫の合意. については、即時の離婚を希望するほどではないが結. の無いまま離婚が成立しても、婚姻期間が短い場合に. 婚前に聞いていた結婚相手の年齢よりも40 歳以上も年. は夫は配偶者ビザを得られず母国へ戻ることとなる。もし. 上であり騙されたという相談があった。ほかに、日本人妻. 2人の間に子どもがいる場合には、多くは日本人妻が親. が外国人の夫の宗教に基づいた男性優位の考え方につ. 権を持つので夫は子どもに会う機会がかなり制限される。. いてゆくことができず離婚を申し出るが、夫は認めないと. そこで子どもに面会する権利を求めて裁判となった事例.
(7) 保健医療福祉科学 2020:10:1—9 7. もある。. 教育を受けていない子どもたちは正規雇用の仕事を得に. 相談に来る外国人の個別のモラルの低さや理解力の. くく、貧困へと向かってしまう。日本人の家庭において. 低さが日常生活上の困難を生じていると推測される事例. も、貧困世帯の子どもは教育を受ける期間が短く就業で. も見られた。「モラルの低さ」や「相談者個人に由来す. きる仕事が限定されることが多く、その結果、非正規雇. る理解の困難」カテゴリとしてまとめた。これらは、外国. 用の仕事に就き、貧困へとつながりやすくなっている 12)。. 人であることに由来するというよりも、援助を必要とする個. また若者層の多次元貧困の要因を分析すると、学歴が. 人の能力や考え方に由来する課題と考えられた。具体. 中卒・高卒の場合に貧困リスクが上がること、女性にお. 的には、転居時に新しく住む市の役所へ実際の収入より. いては学歴が低いと社会的関係の構築の割合が有意に. 低い収入を届け出た事例があった。こうすることにより支. 低下し 13)、支援を受けにくい状況あることが予測されて. 払う税金を安く抑えたいという意図があったようだが、役. いる。外国人の家庭でも同じような傾向が見られたことか. 所からの指導を受けることになってしまった。また軽度の. ら、今後の学習支援が重要であると考えられる。「児童. 知的障害が疑われ、子育てや就労など日常生活に支援. の権利に関する条約(子どもの権利条約)」を批准して. が必要であると推測されるが、障害の診断を得る機会が. いる日本は、日本に暮らす子どもへの教育を保証する必. ないままに暮らしている外国人の事例のように個人の能. 要があることからも 14)、早急に教員の加配、スクールソー. 力や環境の要因から貧困に陥っている事例も複数見られ. シャルワーカーの活用などにより子ども達の教育環境を整. た。. える必要がある。また、継続して十分な教育を受ける機. このほか、就労や住宅確保の困難、周囲に頼れる人. 会が得られず学校に居づらくなり、不登校から非行行為. 間がおらず、日本人の家族と外国人、また同一の国の. や犯罪に手を染めてしまう事例も複数みられた。そこで長. 出身同士である外国人夫婦や親子間の人間関係の調. 期的な視点で子どもの行く末を考え、学校で学ぶ機会を. 整にも支援が求められていた。なお、緊急性の低い課題. 持てるように外国人の親と子を支援する必要がある。文. としても、子どもの教育の困難が示されており課題の多. 部科学省も2008 年に外国人児童の支援についての具. 様性が認められた。. 体的な施策を取りまとめているが 15)、現場レベルでは有. 6 .考察. 効に機能していない地域の多いことが本研究により明ら かになった。外国人親子が学校への相談のしやすいよう に相談窓口を設け、必要に応じて支援者が外国人の生. 日本で生活する外国人の生活課題について広範な分. 活の場へ出向くアウトリーチも行う体制が必要であろう。. 野の課題が得られたが、すべてを等しく俯瞰するには本. 子どもの教育に限らず、日本語や日本の社会制度や. 稿の文字数制限を超えてしまうため、早急な対応が必要. 生活ルールを知らないために必要な支援が届かなかった. だと考えられる多くの課題の挙がったカテゴリを中心に考. り、周囲の人々とトラブルが生じたりしている事例も複数. 察する。. 見られた。スペイン語、英語、中国語などの多言語によっ. 日本で暮らす外国人には多様な生活課題が見られた. て学校だけでなく市役所、保健所など公的な機関から. が、なかでも子どもの養育や教育に関する課題が多く寄. の情報提供を行うとともに、手続きを行うことができるよう. せられていた。外国人の日本語教育にあたっている支援. 同行訪問などの支援を行うことが必要である。特に医療. 者からも日本語を習得する機会のないまま来日した子ども. や福祉にかかわることは緊急性の高い場合が多いので、. たちが日本の学校生活で困難を感じていることが指摘さ. 優先的に情報提供や支援を行うことが望ましい。社会資. れており、改めて問題が確認できた7, 9, 10, 11)。外国から子. 源へのアクセスを容易にすることにより、多くの課題の解. どもを連れて来る外国人に対して日本の教育制度や子ど. 決が可能になると予想する。また、行政機関や医療機. もの支援制度について情報を提供し、理解を得ていくこ. 関で利用されている言葉が日常生活ではなじみが薄く、. とが必要である。加えて彼らの子どもの通う公立の小学. 理解が困難となっていることも指摘されている3)。通訳を. 校、中学校では外国人や日本語を話すことのできない子. 付けずとも行政や医療の窓口担当者が平易な言葉で説. どもたちを教育するための制度が整っていないことも明ら. 明を行うだけでも外国人の理解を助けるであろう。. かになった。国として日本語を母語としない子どもの教育. このほか、婚姻期間が短い場合などに配偶者ビザの. 体制を整える必要があるだろう。加えて発展途上国から. 取り消しとなることを恐れ、配偶者や配偶者の家族から. 日本へとやってきた外国人の親たちは、子どもの教育を. の暴力被害や子どもへの性的虐待があっても、明らかに. 重視していない例がいくつも見られた。しかし日本では、. せずにいる事例も見られた。日本で暮らす外国人に母国.
(8) 8 支援に困難を感じる外国人の相談援助事例からみた生活課題調査. へ帰りたくない事情がある場合には、配偶者からの暴力. えてこれらの事情から、提起された生活課題には日本人. や母国から連れてきた子どもへの性的虐待を家庭の中に. の考え方が影響を与えている可能性もある。また収集で. 隠してしまう可能性が高い。このような事例には家庭内. きた事例が 108 事例と質的研究の規模としては大きく一. 暴力や性的虐待の解決を優先し、国として安心して問. つ一つの事例を詳細に分析することはできなかった。調. 題解決のできるような生活環境を用意することが必要であ. 査対象団体についても外国人支援の内容に特色のある. る。人権擁護の視点からも、今以上に制度を整えて積. 団体が多く、生活課題に偏りの生じている可能性があり、. 極的に問題に介入できるような体制が求められる。同様. 即時の一般化は困難である。. に犯罪の被害者となっている外国人に対しても迅速に介. 今後は外国人自身からのインタビューも含めた支援の. 入していく必要があるだろう。. 困難事例の把握を丁寧に行い、日本に暮らす外国人と. 今回の調査の中では、騙されて来日し警察を通じて. の共生について考察を深める必要がある。. 保護を行った例もあったが、一方で事例として紹介したよ うに永住権を持つ外国人が生活のために日本で生活し たい外国人と金銭契約をして婚姻届を出している事例も. 8 .結論. あった。本調査を行った団体をはじめ、日本において外. 外国人支援を行う団体が支援に困難を感じた事例か. 国人支援を行う団体の多くはボランティア組織である。支. ら、日本で暮らす外国人の生活課題を検討した結果、. 援を求める外国人も自身の違法性を理解しており、公的. 緊急性の高い内容を含む生活課題として、地域の学校. 機関では相談できない内容をこれらの団体へ相談してい. での学習困難等の内容を含む「子どもの養育・教育」、 「日. る場合もある。外国人支援において公的な機関が自身. 本の制度の知識・情報不足」、 「犯罪被害」、 「触法」、 「虐. の責任で相談員を配置すれば、行政機関は多くの外国. 待・家庭内暴力」、不法滞在等の「入国管理に対する. 人の抱える課題を把握し問題に対処することができるだろ. 対応」というカテゴリが挙げられた。今後は、ボランティ. う。しかし行政窓口であるがゆえに、不法滞在をしてい. アだけでなく、公的な外国人の相談窓口の設定や軽犯. る外国人などは国外退去となることを恐れて相談に現れ. 罪者や不法滞在者への対応も視野に入れた支援制度. ない可能性が高い。その意味では自由な立場で支援を. の検討が必要である。. 行うボランティア団体の存在は重要である。不正に入国 している、軽微な犯罪に関係している外国人の支援の. ※本研究は科研費(課題番号 23730525)の助成を受. あり方について、多くの外国人が暮らすようになった日本. けて実施した。. ではそろそろ支援の枠組みなども考えていく時期に差し掛 かっている。 市民レベルでの日常的な外国人支援は今後も積極的 に行われるべきである。国の制度が十分整っていないと きでもインフォーマルなネットワークによる支援が力を発揮で きることが他国の例で示されている 16)。またインフォーマ ルな支援体制の拡大により、市民間の相互理解の促進 も期待できるだろう。さまざまな背景を持つ人々が暮らすこ とを前提とした支援の組織や体制および内容について行 政レベル、民間レベルでそれぞれに検討することが肝要 である。. 7 .研究の限界と今後の課題 本研究のデータはインタビュー言語と調査期間の限定 などの理由により外国人を支援している団体の支援者か ら収集した事例である。支援を必要している外国人本人 からの聞き取りができなかったために、生活課題の詳細 について把握の十分でない事例もあると考えられる。加. 引用文献 1) 法務省「在留外国人統計(旧登録外国人統計)2017 年 12 月末」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1& layout=datalist&toukei=00250012&tstat=000001018 034&cycle=1&year=20170&month=24101212&tcla ss1=000001060399 2018 年 06 月 29 日更新.アクセス 2018 年 11 月7日 2) ソンウォンソク.自治体の外国人施策と公民協働 越境する市 民活動(第2章) .シリーズ多言語・多文化協働実践研究. 2009;8, 45-55. 3) 保科寧子.在日外国人の生活課題の検討 : ある NPO 法人の 相談援助記録から.厚生の指標.2004;61(2) ,15-21. 4) 木村志保,寳田玲子,柿木志津江.滞日外国人が抱える生 活課題とニーズの分析の試み : 滞日外国人支援団体・機関 を対象としたアンケート調査より.総合福祉科学研究.2017;8, 7-15. 5) Eugenio, V. The Influence of Country of Birth and Other Variables on the Earnings of Immigrants. The Case of the United States in 1999. The American Journal of Economics and Sociology.2005;64(2), 579–607. doi:10.1111/j.1536-7150.2005.00380.x 6) Mussino, E., & Strozza, S. The Delayed School Progress of the Children of Immigrants in Lower-Secondary.
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具体的には、2018(平成 30)年 4 月に国から示された相談支援専門員が受け持つ標準件
パターン1 外部環境の「支援的要因(O)」を生 かしたもの パターン2 内部環境の「強み(S)」を生かした もの
(2) 令和元年9月 10 日厚生労働省告示により、相談支援従事者現任研修の受講要件として、 受講 開始日前5年間に2年以上の相談支援
石川県相談支援従事者初任者研修 令和2年9月24日 社会福祉法人南陽園 能勢 三寛