総合的な説明責任能力と個別課題を深める教職大学院のカリキュラム改善の特徴
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(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 創刊号. 総合的な説明責任能力と個別課題を深める 教職大学院のカリキュラム改善の特徴. 相 野 彰 秀*. はじめに. 2008年4月、教員養成教育の改善と充実を図る専門職大学院、いわゆる「教職大学院」が全国に19 校設置された。北海道教育大学には大学院教育学研究科に高度教職実践専攻(以下、教職大学院と略 す。)が設置された。. 教職大学院では、学校現場に生起する諸課題を学校全体を視野に入れて解決へと導くために、様々 な経験や事例を持ち寄り、理論的な検証を加え、問題解決の力量を学校における教育実践を通して身 につけさせようと意図された教育課程が編成されている。. 本稿は、2010年3月末の教職大学院の完成を契機に、これまでのニカ年間1サイクルの教職大学院 における教育及び教育課程を振り返り、2011年度入学生教育課程編成に際して、大学院生に総合的な 説明責任能力と個別課題を深めさせるためのどのようなカリキュラム改善がなされたかに関する報告 である。. Ⅰ.教職大学院設置の主旨1) (1)教育理念及び目的. 『教職大学院設置計画書』(2007)には、教職大学院の教育理念及び目的は次のように記載されて いる。 「高度教職実践専攻」の目的は、学校現場あるいは地域が、現在教育に関わる中堅教員に求める実. 践的能力、問題解法能力等を身に付けさせようとするものである。学校現場に生起する諸課題を、常 に学校全体を視野に入れて、どうすれば解決へと導くことができるのか。様々な経験や事例を持ち寄 り、理論的な検証を加えて、理論と実践を常に往還しながら学校全体で、学校と地域で力を結集して、. どうすれば解決への道を探ることができるか。そうした問題解決への力量、技量を身に付けるのが「高 度教職実践専攻」であり、個人の課題を深く研究する能力を磨く既存の大学院とは性格を根本的に異 にする。「学校・地域」をキーワードに教師としての使命を自覚し、授業実践力、学級・学校経営力、. 生徒指導力、教育相談力、協働遂行力、地域教育連携力を身につけさせるのが本専攻の目的である。. (2)めざす教員像. 教職大学院では、中堅教員が発揮すべき力量を学級経営・学校経営、. 生徒指導・教育相談、教科指. 導・実践の3つに分類し、その場面において専門的な力量が発揮できる人材をめざす教員像と捉えて *北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)釧路. 33.
(3) 相 野 彰 秀. いる。. 学級経営・学校経営の場面において発揮すべき力量は、『教職大学院設置計画書』には次のように 記載されている。 ・学級経営・学校経営に関して優れた知見と技能を身につけており、校内研修などを組織して学内外 でリーダー的な役割を果たすことができる。. ・学校の仕組みを制度・予算面から理解するとともに、学校間、地域と協働して学校経営に当たる実 践的方策を身につけている。 ・学校経営の組織マネジメントの基礎を理解して、学校経営に積極的に参画できる。 生徒指導・教育相談の場面において発揮すべき力量は次のように記載されている。. ・生徒指導・進路指導上の諸課題を総合的に理解しており、その代表的な指導方法を熟知している。 ・様々な問題行動や不適応行動に対して多くの事例研究を通じて、その深い理解と対処方法を知り、. 同僚を指導しながら、問題解決に当たることができる。 ・将来健全な社会の成員として生活することを常に視野に置き、児童生徒の適切な成長を促すような 生徒指導や教育相談ができる。 教科指導・実践の場面において発揮すべき力量は次のように記載されている。 ・少なくとも1つの教科等の授業研究に優れ、同僚の授業実践力を高めるリーダーとなることができ る。 ・総合的な学習を含む教科等について子どもの学びを拓く授業・教材開発を行い、授業改善につなが る評価ができ、カリキュラム開発、授業研究等に関する校内研修をリードすることができる。. Ⅰ.教育課程の編成 (1)授業科目の構成. 上述した教職大学院設立の理念、目的及びめざす教員像を達成するために、教育課程及び授業科目 の構成に当たっては次の諸点が配慮されている。. 第一に、学校全体や地域を傭撤して、広い視野から学校課題を分析する能力の育成。 第二に、具体的な学校課題(学級経営・学校経営、生徒指導・教育相談、教科指導・実践)の解決. に取り組む実践的な力を持ち、実践の結果に理論的検証を加えることのできるスクールリーダーの育 成。. 一点目の能力を育成するために、「共通科目」及びストレートマスター用の実習科目「学校課題傭 腋実習」、現職教員大学院生用の実習科目「リーダーカ育成基礎実習I」、「リーダーカ育成基礎実習Ⅱ」 が設置された。. 二点目の能力を育成するために、「コース別選択科目」及びストレートマスター用の実習科目「自 己課題解決・検証実習」、現職教員大学院生用の実習科目「学校課題解決・検証実習」が設置された。 これらの科目及び実習を基礎として、既存大学院の修士論文に相当する「マイオリジナルブック」. 作成が課されるよう、教育課程が構成された。. (2)修了要件の考え方. 『教職大学院設置計画書』において、「修了要件(52単位)の考え方」は、次のように記載されて いる。. 34.
(4) 総合的な説明責任能力と個別課題を深める教職大学院のカリキュラム改善の特徴. 高度教職実践専攻では、教員として求められる広範囲に及ぶ力量をつけさせることをメインに据え たことから、設置基準上め必置5領域に特別支援教育に関する領域を加えて6領域を共通科目とし、 それらを全て必修として1年次に履修させる(各領域2科目ずつ、計24単位)。これにより、学校や 教員の役割を理解した上で、学校課題に広い視野を持って取り組むための基礎的素養が育成される。 大学院レベルの専門的な力量を保証するのに必要な単位数を8単位と設定した。そこで、3つのコー. スにそれぞれ5科目10単位を用意し、その中から、いずれか1つのコースの科目を最低8単位、残り 2コースを含む選択科目の中から、自分の課題意識により自由に選択させて、合計16単位を履修させ ることとした。本専攻の共通科目には、コース別選択科目と同じ領域の授業が4単位分用意されてい ることから、大学院生は特定の領域について合わせて12単位履修することになり、当該分野で十分な 専門的力量を身につけることができる。. 学校における実習は10単位とした。1年次は学校全体の機能を広く傭腋しながら、それらを相互に 関連づけてとらえられるような実習とし、2年次はストレートマスターに関しては1年次に見つけた 自己課題、現職教員大学院生の場合には勤務校の学校課題を実際に解決するための実践と検証を行わ せる。. 以上のカリキュラムにより、具体的な学校課題について得意分野を持ちながらも広く学校全体を見 据えながら課題解決にあたり、理論的検証を加える力量を持ったスクールリーダーが育つ。 これらの集大成として、MOBを作成させ(30時間)、発表会を経て2単位を与える。以上の結果 として52単位が修了要件となる。. (3)2008年度入学生教育課程 ①共通科目. 上述した教職大学院の教育課程編成方針が反映されて編成された教職大学院設立当初(2008年度入. 学生)の教育課程が表1に示されている。 表1中の共通科目は、必履修科目である。必履修科目は設置基準上の必置5領域に加え、教職大学 院が北海道教育委員会との協議の上、独自に付け加えた「特別支援教育に関する領域」に属する2科 目等を加え、6領域13科目開設された。 「教員の在り方に関する領域」に属する科目は「学校教育の課題と教員」及び「これからの時代の 学校教育のあり方」である。「教育課程の編成・実施に関する領域」に属する科目は「総合学習のた めのカリキュラム開発」、「教育課程を創る」である。「教科等の実践的な指導方法に関する領域」に. 属する科目は「教科教育の実践と課題」、「教科等の実践的指導力の形成」である。「生徒指導・教育 相談に関する領域」に属する科目は「生徒指導の意義と今日的課題」、「児童生徒理解とその指導方法」 である。「学級経営・学校経営に関する領域」に属する科目は「「生きる力」を育む学級・学年経営の 実際と課題」、「特色ある学校作りと組織の活性化を図る学校経営の実際と課題」である。教職大学院 が独自に付け加えた「特別支援教育に関する領域」に含まれる科目は「特別支援教育コーディネーター. の役割と課題I」、「特別支援教育コーディネーターの役割と課題Ⅱ」である。その他、これらの諸領 域を相互にリンクさせるための性格を持つ科目「共通5領域における実践力の育成」(1単位)も設 置された。. これらの共通科目は、それぞれが独立に理解されるものではなく、6領域の内容がそれぞれ関連を. 持っていること、並びに高度な専門職としての教職を担う職業人としていずれの領域も欠くことがで きないものであることを理解させるために体系性に留意しながら各科目が配置されている。. 35.
(5) 相 野 彰 秀 表1 2008年度入学生教育課程 区分 番号. 2. 4. 共 通. 6. 7. 科. 8. 目 10. 田 12 13 14. 学級経 営・学 校経営 コース. 18 19. 生徒指. 導・教 育相談. 21. コース. 23 24 授業. 開発 コース. セメ スタ ー 学校教育の課題と教員 ロ 火 6,7 2 教科教育の実践と課題 口 土 6,7 同 同 火 6,7 同 教科等の実践的指導力の形成 生徒指導の意義と今日的課題 同 土 6,7 同 「生きる力」を育む学級・学年経営の実際と課題 夏期集中 夏期集中 特別支援教育コーディネーターの役割と課題Ⅰ 共通5領域における実践力の育成 夏期集中 ロ 3 火 6,7 2 児童生徒理解とその指導方法 総合学習のためのカリキュラム開発 口 田 土 6,7 同 特別支援教育コーディネーターの役割と課題Ⅱ 口 4 火 6,7 同 特色ある学校作りと組織の活性化を図る学校経営の実際と課題 口 4 土 6,7 同 教育課程を創る 冬期集中 これからの時代の学校教育のあり方 春期集中 2 ロ 水 6,7 2 学級の主体性を育む教育実践活動 学校と家庭・地域との連携における成果と課題 同 同 水 6,7 同 信頼性や客観性を高める学校経営の評価と課題 夏期集中 同 田 水 6,7 同 教師に求められるリーダーシップと同僚性の今日的課題 へき地・小規模校の経営と課題 同 4 水 6,7 同 学校経営と生徒指導の計画及び組織・運営 生徒指導の実際 現代社会と生徒指導 生徒指導・教育相談の基礎としての生涯発達心理学 冬期集中 非行臨床心理学 授業実践と学級づくり 同 口 土 3,4 同 子どもの学びを拓く授業づくり 2 2 土 3,4 2 夏期集中 道徳教育の開発 2 3 土 3,4 2 教材の開発 授業と学習の評価 2 4 土 3,4 2 科. 目. 配当 年次 ロ 口 口 口. 数. 2. 2. 24単位. 以上. 2. 2. 自分の属す るコースか. ら8単位以 上、合計16. 単位以上修 得. 2. 28 29. 通年 通年. 学校課題僻撤実習. 実習. 自己課題解決・検証実習. 共通. リーダーカ育成基礎実習Ⅰ リーダーカ育成基礎実習Ⅱ. 演習. 名. 33. 学校課題解決・検証実習. 34. マイオリジナルブック作成. 口 1,2セメスター. 5 ストレート. マスター 4. 現職教員 2. 2. 通年 冬期集中. 4. 2. 52単位以上. まず、「学校教育の課題と教員」により教師に求められる責務の自覚を促して、共通科目設定の意 義について理解させ、その後、教科等の指導法、生徒指導、学級経営及び特別支援教育に関する領域 の授業を配置して、授業づくりや子ども理解という、学級における学校課題の把握を中心として、そ の知識と各領域において必要とされるスキルを獲得させるよう意図されている。 それに続く教育課程の編成・実施、教育相談、学校経営に関する授業により、視点を学級から学校 へ広げて、広い視野に立っての学校経営力を身につけさせることになっており、最後に、共通科目履. 修の締めくくりとして「これからの時代の学校教育の在り方」を履修させて、共通科目で学んできた ことを総括的に振り返らせるという授業配置になっている。. ②コース別選択科目. 共通科目を土台とした上で、大学院生が得意とする分野を形成させるために、中堅教員が発揮すべ. 36.
(6) 総合的な説明責任能力と個別課題を深める教職大学院のカリキュラム改善の特徴. き3つの力量の場面に応じた3つのコースが用意された。「学級経営・学校経営コース」、「生徒指導・ 教育相談コース」、「授業開発コース」である。. 大学院生が、各コースのいずれかの分野で課題解決のための力量をさらに伸ばしたいと考えたり、 あるいは、さらに課題を絞り込んで修得したいと考えるコースの科目について、主として大学院2年 目に履修させるいずれのコースでも、教育現場の「今日的課題」に応えられる力量を形成させるため に、理論に基づいた実践とその検証を行わせる内容が基本とされている。 3つのコースは相互に関連を持つ。たとえば、授業と学級経営、生徒指導と学級経営などには緊密 な関係があるのである。そこで、主専攻コースの最低履修単位を8単位とし、その上で他のコースを 含む関連のある授業科目を履修させ、合計16単位とされた。. ③学校における実習. 学校における実習は、ストレートマスター、現職教員大学院生とも10単位とされた。ストレートマ スターには、第1学年次に「学校課題傭轍自習」(5単位)、第2学年次に「自己課題解決・検証実習」 (5単位)が課されている。現職教員大学院生には、第1学年次に「リーダーカ育成基礎実習I」(4 単位)及び「リーダーカ育成基礎実習Ⅱ」(2単位)、第2学年次に「学校課題解決・検証実習」(4 単位)が課されている。実習科目の詳細は、別稿、実習委員長の報告を参照されたい。 ④マイオリジナルブック作成. 教職大学院では、教授陣の協働による教育と大学院生が自ら教育現場における課題を明確にしなが ら相互に討論し解決策を探るという、「協働の学び」から獲得した成果を、「パー. ソナルポートフォリ. オ」として蓄積していく。つまり、このパーソナルポートフォリオの中には、授業記録(討論の記録、 課題解決のためのアイディア、自分に向けられたコメント)、文献、実践記録、実習ノート、新たに. 身に付けた手法や技術、他の大学院生の実践記録などが授業や実践・実習を行う度に付け加わる。 このように蓄積されたものは、そのままでは雑然とした記録にしか過ぎない。そこで、改めて自分. が大学院入学時に提出した課題、あるいは現実に抱えている課題に照らして、その解決に有効と考え る情報を拾い出し、それをまとめ上げることが重要である。そのまとめ上げたものを「マイオリジナ ルブック(MOB)」と呼ぶ。これは大学院生にとっての教職大学院における学びの集大成となる。2 年次の冬期集中講義(30時間)においてMOBの作成が課された。 (4)教育課程の特徴. ①双方向遠隔授業システムによる協働授業 教職大学院では、札幌、旭川、釧路の3キャンパスを同時に双方向遠隔授業システムにより結んで 授業が行われている。この授業を札幌、旭川、釧路キャンパスにおいて少なくとも一人以上の教員が 担当する。すなわち、双方向遠隔授業システムを介してではあるが、一つの授業を少なくとも3人の. 教員が担当するのである。この教員の中には、必ず研究者教員及び実務家教員が少なくとも一人づつ 含まれる。. これにより、授業対象となる学校現場に生じた課題が、学問領域とどのように関連を持っているか が講義できる研究者教員、どのような視点に立って解決策を考えるべきなのかが示唆できる実務家教 員が共に大学院生の教育に当たる協働授業体制と教育体制が可能となる。. 37.
(7) 相 野 彰 秀. ②4セメスター制かつ集中的な授業構成. 教職大学院では、学校現場に生じた課題をどのように解決するのか、この点を授業において学んだ 理論を基に考え、実習において解決策の実践とその有効性に検討を加える。そのため、授業方法が講. 義、討論、大学院生の報告、模擬授業、ロールプレーイングを組み合わせた形式となる。そのため、 2コマ連続した授業が必須となるため、4セメスター削が採用されている。1セメスターは8週間で 終了する。これにより、大学院生が短期間に集中して一つの課題に取り組み、成果を上げることが可. 能となり、かつ1年の間に段階的なステップアップが図りやすい。. Ⅱ.2008年度入学生教育課程の実施と明らかになった大学院生の実態 (1)過密な業務をこなす現職教員大学院生. 現職教員大学院生の場合、第1学年次では毎週火曜日と土曜日の6、7講目(午後6時∼午後9時 10分)に向けて大学に通学するスケジュールとなる。「毎週同じ曜日に勤務する学校を空けて講義開. 始の午後6時に間に合うよう大学に通学するのは極めて難しい。」これがまず最初に私たち大学教員 が耳にした現職教員大学院生の声であった。. 放課後に、職務専念義務免除願いを学校長に提出して通学できる建前はあるが、今の学校現場の教 員は授業だけでなく、校務分掌の業務も多い。校務分掌業務を中断して大学に通学するための管理職 の了解は得られるが、教員文化の中での納得と合意は極めて難しい。仮に午後5時定刻に退勤すると. して、簡単な夕食を食べ、午後6時の授業開始に間に合うためには、自家用車で大学から約30分程度 の距離にある学校に勤務していなければならない。積雪路や凍結路になる冬期間は、通学に余計に時 間を要する。旭川枚と釧路枚は市l軸こキャンパスがあるが、札幌枚は枚外にキャンパスがあるため、 この点の克服が難しい。また釧路校では、2008年度現職教員大学院生入学者のうち半数が旧釧路市以. 外からの通学となり、札幌校と同様の課題が明らかになった。旭川校も同様であった。 「土曜日か日曜日の休日にまとめて授業が受けられないか。」この点が、現職教員大学院生から聞 く声であった。. (2)夏休み、冬休みがなくなる現職教員大学院生 教職大学院の設置構想段階では、小中学校の学校暦に合わせた年間授業期間が設定された。2008年 度の授業期間が表2に示されている。. 表2より、1セメスター8週間の4セメスター削が 採用され、かつ第2セメスター及び第4セメスターの 授業を一時中断して夏期及び冬期集中講義が設けられ ていることが分かる。. 表2 2008年度の授業期間 セメスター 集中講義. 授業期間. 「夏休みと冬休みがない。」これが私たち大学教員. 4月15日∼6月17日. が耳にした現職教員大学院生の声である。北海道の公. 6月18日∼8月26日. 立学校の夏休みは短い。例年7月20日頃から夏休みが. 8月4口∼8月13口. 始まり、盆明けには第2学期が始まる。この期間の8. 9月30日∼11月22日. 月4日から13日の間は、毎日4コマの集中講義が2科. 11月25日∼2月7日. 目連続して設定されている。そのため、2008年度の場. 1月6日∼1月17日. 合、現職教員大学院生のまとまった夏休みは、実質8. 3月26日∼3月30日. 38.
(8) 総合的な説明責任能力と個別課題を深める教職大学院のカリキュラム改善の特徴. 月14日から18日の間の5日間に過ぎなかった。 「まとまった夏休みがほしい。」、「2科目連続での夏期集中講義は気力体力の限界を超える。」これ らが、現職教員大学院生からの声であった。. (3)第2、3学期の始業準備が落ち着いてできない現職教員大学院生 次に聞いた現職教員大学院生の声は「第2学期と第3学期の始業のための諸準備が難しい。」であっ. た。2セメスターの講義最終日が8月26日であるため、小中学校では第2学期が始まってから、教職 大学院の夏期休業が始まる日程となっている。また、第3学期当初は、1月6日から17日まで2科目 連続した毎日4コマの集中講義が設定されているため、集中講義を聴きながら、夜自宅や勤務校へ出 向いての第3学期の始業準備をこなす日程となっている。 「第2学期と第3学期の始業の準備を落ち着いて行いたい。」、「2科目連続での冬期集中講義は気. 力体力の限界を超える。」この点が、現職教員大学院生から聞く声であった。 (4)人事異動内示後も授業を受ける現職教員大学院生. 「異動の内示があってからも授業を受けているのですよ。」現職教員大学院生の声である。公立学 校現場は、人事異動の内示後から年度末までは、一時機能不全状態となる。この期間、特に異動の内. 示があり、気力体力的に緊張の糸が切れた状態の現職教員大学院生に授業を受講させることは、教育 効果の観点からも疑問が残る。. (5)指導教員との討論を希望する大学院生. 「先生、教職大学院にはゼミがないのですか?」大学院生からのこの言葉を聞いた時、私たち大学 教員が教育課程の改訂を決断したといってよい。. 教職大学院では、大学院生に討論する機会を意図的に多く与え、理論に照らしながら自分の実践を 省察的に振り返らせている。具体的には、授業においては、課題について大学院生同士が活発に討論 する時間を設け、問題意識の共有を図り、解決法を共に探っている。大学教員や大学院生の討論の中 において、教育理論に基づく解説を加えたり、理論や研究結果に基づいて、大学院生の実践に裏付け を与えている。このことは、現職教員大学院生対象の実習に加え、ストレートマスター対象の実習に おけるセミナーにおいても同様である。 しかしながら、前述したような大学院生の声が3キャンパス同時発生的に起こった。大学院生は、. 各指導教員と1対1での落ち着いた雰囲気の中での、自らの実践研究の方向性を討論する機会、すな わちゼミナールを渇望しているのである。このようなゼミナールの積み重ねが、質の高いマイオリジ ナルブックの作成につながる。. Ⅳ.2010年度入学生教育課程の編成 教職大学院初年度の授業が始まり、計画された教育課程が適用され始めると様々な成果と課題が明 らかになった。2008年度入学生教育課程を運用し始めると、先のⅢで述べた5つの大学院生の実態が 浮き彫りになった。この5つの実態を克服するためには、教育課程の全面的改善が必要である。しか し、教育課程の全面的改善のためには「北海道教育大学大学院教育学研究科履修規則」の一部改正を. 行わなければならない。これを教職大学院独自で行うの難しい。加えて、2010年3月末の教職大学院. 39.
(9) 相 野 彰 秀. 完成までは、設置審の関与が強く、この面からも教育課程の改善は難しい。そのため教育課程そのも. のの改善は、教職大学院完成年度以降早急に取り組むのがよいと判断した。 そこで教職大学院では、指導教員との討論を大学院生に保証するための改善が喫緊の課題であると の認識に立ち、この点の検討を行った。その結果、大学院生と教員がゼミナールを行うための各コー スごとの選択必修科目を教育課程に新たに位置づけた。「学校経営・学級経営事例研究I」、「学校 経営・学級経営事例研究Ⅱ」、「生徒指導・教育相談事例研究I」、「生徒指導・教育相談事例研究Ⅱ」、 「授業開発事例研究I」、「授業開発事例研究Ⅱ」である。それぞれ2単位である。「事例研究I」は、 第1学年時における不定期授業、「事例研究Ⅱ」は、第2学年時における不定期授業とした。. その結果、充分な時間とはいえないがゼミナールの時間が確保され、教育課程の改善が一歩進んだ。 表3には、2010年度入学生教育課程が示されている。. 表3における太字が2008年度入学生教育課程に追加された科目名である。また、太字斜体は、事例 研究2科目がコーズごとの選択必修科目として位置づけられたことによる変更である。. Ⅴ.20‖年度入学生教育課程の編成 (1)共通科目の検討. 2008年度入学生教育課程において、共通科目は第1学年次に配当され、共通6領域それぞれに2科 目が課され、24単位以上の単位修得が修了要件となっている。すなわち、第1学年次に12科目の履修 が求められているのである。第1学年に配当された授業曜日及び時間帯は火曜日6、7講目、土曜日 6、7講目である。週時程に定められた第1学年次の授業時間だけでは、一年間で2科目×4セメス ター=8科目しか履修できない。したがって、残る4科目は集中講義での履修となる。 この教育課程の設計方針がⅢ−(2)、(3)、(4)の現職教員大学院生の実態を招いていると考えられる。. そこで、教職大学院が独自に付け加えた「特別支援教育に関する領域」に含まれる科目に検討を加え た。 「特別支援コーディネーターの役割と課題I」及び「特別支援コーディネーターの役割と課題Ⅱ」 は、非常に狭い領域に関する内容の授業となる。共通科目として大学院生全員に課す科目は、特別支 援教育全体が傭轍できる内容構成の科目が望ましい。そこで新科目「特別支援教育の理解と対応」(2 単位)を共通科目に設置した。 従来の「特別支援コーディネーターの役割と課題I」及び「特別支援コーディネーターの役割と課. 題Ⅱ」に関しては、これら2科目を1科目に精選して新たに生徒指導・教育相談コースの選択科目と して位置づけた。精選された科目名は「特別支援コーディネーターの役割と課題」である。この結果、 2単位の共通科目は12科目から11科目に精選された。 次は共通科目の時間割に検討を加えた。ここで考慮されたのは、Ⅲ−(1)の現職教員大学院生の実態. と希望であった。そこで、共通科目の授業日を土曜日3、4時間目にも行う時間割を構想した。これ により、第1学年次には、毎週火曜日の6、7講目と第1∼3セメスターの土曜日の3、4、6、7 講目に、第4セメスターの土曜日は6、7講目に授業を受講する時間割を組んだ。これにより、Ⅲ− (2)、(3)、(4)の現職教員大学院生の実態が緩和できる。 しかし、この共通科目の時間割により、現職教員大学院生の実態は幾らか緩和できるが、幾つか時. 間割作成上工夫しなければならない点も生じた。共通科目の授業を土曜日の3、4講目に行うと、授 業開発コースのコース選択科目の授業と同時展開となるのである。共通科目の授業と授業開発コース の授業が同時展開されることによって生じる課題は次の通りである。第一に、双方向遠隔授業システ. 40.
(10) 総合的な説明責任能力と個別課題を深める教職大学院のカリキュラム改善の特徴. 表3 2010年入学生教育課程 セメ スタ ー 学校教育の課題と教員 ロ 火 6,7 教科教育の実践と課題 口 土 6,7 同 火 6,7 教科等の実践的指導力の形成 生徒指導の意義と今日的課題 同 土 6,7 「生きる力」を育む学級・学年経営の実際と課題 夏期集中 夏期集中 特別支援教育コーディネーターの役割と課題Ⅰ 共通5領域における実践力の育成 夏期集中 ロ 3 火 6,7 児童生徒理解とその指導方法 総合学習のためのカリキュラム開発 口 田 土 6,7 10 特別支援教育コーディネーターの役割と課題Ⅱ 口 4 火 6,7 田 特色ある学校作りと組織の活性化を図る学校経営の実際と課題 口 4 土 6,7 同 12 教育課程を創る 冬期集中 13 これからの時代の学校教育のあり方 春期集中 14 通年 学榎経営・学級経営事例研究Ⅰ 通年 学榎経営・学級経営事例研究Ⅰ 学級の主体性を育む教育実践活動 同 口 水 6,7. 区分 番号. 科. 目. 名. 4. 共 通. 配当 年次 ロ 口 口 口. 数 2 同 同 同. 5. 2. 6. 2. 24単位. 7. 科 目. 学級経 営・学 校経営 コース. 8. 18 19 20 21 22. 生徒指 導・教 育相談. 24. コース. 25 26 27 28 29. 授業. 開発 コース 33 34 35. 生徒指導・教育相談事例研究Ⅰ 生徒指導・教育相談事例研究Ⅰ 学校経営と生徒指導の計画及び組織・運営 生徒指導の実際 現代社会と生徒指導 生徒指導・教育相談の基礎としての生涯発達心理学 非行臨床心理学 授業開発事例研究Ⅰ 授業開発事例研究Ⅰ 授業実践と学級づくり 子どもの学びを拓く授業づくり 道徳教育の開発 教材の開発 授業と学習の評価. 学校課題僻睦美習 自己課題解決・検証実習. 実習. 共通. 演習. 学校と家庭・地域との連携における成果と課題 信頼性や客観性を高める学校経営の評価と課題 教師に求められるリーダーシップと同僚性の今日的課題 へき地・小規模校の経営と課題. 39 40. リーダーカ育成基礎実習Ⅰ リーダーカ育成基礎実習Ⅱ 学校課題解決・検証実習 マイオリジナルブック作成. 以上. 2 同 同 2. 2. 2. 同 同 同 水 6,7 同 2 2. 夏期集中 3 水 6,7 2 4 水 6,7 2 通年 通年. 自分の属す るコースか ら書館穿 すぎ好彦含. 占●8単位以. 上、合計16 2. 冬期集中. 単位以上修 得. 通年 通年 同 口 土 3,4 同 同 同 土 3,4 同 夏期集中 2 3 ⊥ 3,4 2 2 4 土 3,4 2 通年 通年. 2. 2. 口 1,2セメスター. 5 ストレート. マスター. 4. 現職教員 2. 2. 通年 冬期集中. 4. 2. 52単位以上. ムを同時に2系統利用しかナればならなくなる。この点は、教職大学院が通常使用するCシステムに 加え、学内のDシステムを使用すれば解決される。第二に、同時展開される授業において、同一教員. が担当する授業を配置しない時間割の作成の必要性である。第三に、授業開発コースの選択科目を土 曜日3、4講目に固定すると、道教委派遣現職教員大学院第1学年次生が授業開発コースの授業が履 修できなくなる。この点は従来、学級経営・学校経営コースの選択科目は水曜日の6、7講目、生徒 指導・教育相談コースの選択科目は木曜日の6、7講目、授業開発コースの選択科目は土曜日の3、 4講目に固定されていた時間割を、セメスターごとに曜日を変更させる時間割を組めば解決される。. 41.
(11) 相 野 彰 秀. (2)コース別選択科目の検討 ①事例研究. 2010年度入学生教育課程において、「事例研究Ⅰ、Ⅱ」が位置づけられた。しかし、2科目4単位 では、毎週1度のゼミナールの時間が保証できない。この点を克服するために、新たにそれぞれ2単 位の「学校経営・学級経営事例研究Ⅲ」、「学校経営・学級経営事例研究Ⅳ」、「生徒指導・教育相談事 例研究Ⅲ」、「生徒指導・教育相談事例研究Ⅳ」、「授業開発事例研究Ⅲ」、「授業開発事例研究Ⅳ」を教 育課程に位置づけた。これにより、「事例研究Ⅰ、Ⅱ」を第1学年前後期に、「事例研究Ⅲ、Ⅳ」を第. 2学年前後期に履修すると、毎週1度の指導教員とのゼミナールが可能となる。これによって、Ⅲ− (5)の大学院生の実態が解決できる。. ただし、各コースのいずれかの分野で課題解決のための力量をさらに伸ばす目的で開設される同一 コース内の他科目との関連及び、得意分野を持ちながら、学校教育の広範な問題に対処する力をつけ るために開設される他コース内の科目との関連を考慮し、事例研究4科目の必履修単位数は3課目6 単位とした。. ②その他のコース別選択科目 「事例研究Ⅰ∼Ⅳ」以外のコース別選択科目は従来、5科目10単位開設されていた。その結果、1 科目は集中講義で開講されることになり、Ⅲ−(2)、(3)、(4)の実態が生じた。これを緩和するために、 各コース別選択科目の精選を行った。その結果、学級経営・学校経営コースでは、. 「学級の主体性を. 育む教育実践活動」、「学校と家庭・地域との連携における成果と課題」、「教師に求められるリーダー. シップと同僚性の今日的課題」、「へき地・小規模校の経営と課題」の4科目に精選された。同様に、 生徒指導・教育相談コースでは、「生徒指導の実際」、「現代社会と生徒指導」、「生徒指導・教育相談. の基礎としての生涯発達心理学」、「非行臨床心理学」である。授業開発コースでは、「授業実践と学 級づくり」、「子どもの学びを拓く授業づくり」、「道徳教育の開発」、「教材の開発」である。. コース別選択科目の精選により、それぞれの科目が週時程に位置づけられて授業が行われるように なり、第2学年次におけるⅢ−(2)、(3)、(4)の実態の緩和が可能となった。 共通科目から生徒指導・教育相談コースの選択科目に移行された「特別支援コーディネーターの役. 割と課題」は、冬期集中講義とした。これにより、集中講義は、第1学年次夏期に行われる「共通5 領域における実践力の育成」、および第2学年次冬期に行われる「特別支援コーディネーターの役割 と課題」の2科目となり、この面からもⅢ−(2)、(3)、(4)の実態の緩和が可能となった。 コース別選択科目の履修単位数の改善に関しても、Ⅲ−(2)、(3)、(4)における現職教員大学院生の実 態を考慮した。その結果、コース別選択科目の履修単位数とその内訳は、自分の属するコースから事. 例研究6単位を含む8単位以上、合計12単位以上修得となった。 (3)「マイオリジナルブック作成」に関する検討. マイオリジナルブックは、指導教員とともに話し合いを重ね、時間をかけて作成するという観点か ら、従来、第2学年次冬期集中とされていたのを、第2学年次不定期授業とした。. (4)カリキュラム改善の進展. これまでに述べたような視点で2011年度入学生教育課程を編成した。表4には、2011年度入学生教 育課程が示されている。. 4ワ.
(12) 総合的な説明責任能力と個別課題を深める教職大学院のカリキュラム改善の特徴. 表4 2011年度入学生教育課程 区分 番号. 2. ‖二 通 科 8. 科. 目. 名. 配当 年次. 学校教育の課題と教員 教科教育の実践と課題 教科等の実践的指導力の形成 生徒指導の意義と今日的課題 「生きる力」を育む学級・学年経営の実際と課題 児童生徒理解とその指導方法. セメ スタ ー 火 6,7 2 ロ. 土 6,7 2 火 6,7 2 Z f 3,4 Z. 22単位. 火 6,7 2. 総合学習のためのカリキュラム開発 特別支援教育の理解と対応. 3. 目 10. 共通5領域における実践力の育成. 13. 学校経営・学級経営事例研究Ⅰ 学校経営・学級経営事例研究Ⅱ 学榎経営・学級経営事例研究Ⅲ 学榎経営・学級経営事例研究Ⅳ. 14. 学校経 営・学 コース 18 19 20 21 22 23. 生徒指 導・教. 育相談. 25. コース 27 28 29 30 32. 授業. 開発 コース 35. 38 39. 学級の主体性を育む教育実践活動 学校と家庭・地域との連携における成果と課題 教師に求められるリーダーシップと同僚性の今日的課題 へき地・小規模校の経営と課題 生徒指導・教育相談事例研究Ⅰ 生徒指導・教育相談事例研究Ⅱ 生徒指導・教育相談事例研究Ⅲ 生徒指導・教育相談事例研究Ⅳ 生徒指導の実際 現代社会と生徒指導 生徒指導▲教育相談の基礎としての生涯発達心理学 非行臨床心理学 特別支援教育コーディネーターの役割と課題 授業開発事例研究Ⅰ 授業開発事例研究Ⅱ 授業開発事例研究Ⅲ 授業開発事例研究Ⅳ 授業実践と学級づくり 子どもの学びを拓く授業づくり 道徳教育の開発 教材の開発 学校課題僻腋実習 自己課題解決・検証実習. リーダーカ育成基礎実習Ⅰ リーダーカ育成基礎実習Ⅱ. 実習 共通. 演習. 教育課程を創る これからの時代の学校教育のあり方. 12. 42. 学校課題解決・検証実習. 43. マイオリジナルブック作成. 数. 4. ロ ロ 2 2 2. 1,2 3,4 1,2 3,4 ロ. 以上. 土 3,4 2. 土 6,7 火 6,7 土 6,7 夏期集中 不定期 不定期 不定期 不定期 水 6,7. 2 2 2 2. 2. 2. 2. 2. 2. 2 木 6,7 2. 3 土 3,4 2 4 水 6,7 2 ロ 1,2 不定期. 2. ロ 3,4 不定期 2 1,2 不定期 2 3,4 不定期. 自分の属す るコースか ら事例研究 6単位を含 む8単位以 上合計12. 2. 2. ロ ロ 2 2. 2. 2. 3 水 6,7 2 単位以上修 4 木 6,7 2 得 冬期集中 1,2 不定期 3,4 不定期 1,2 不定期 3,4 不定期 ロ 土 3,4 2 2 水 6,7 2 田 木 6,7 2 4 土 3,4 2 通年 田 ストレート 通年 マスター 2. 2. 2. 2. 2. ロ 1,2セメスター. 4. 現職教員 2. 2. 通年 不定期. 4. 2. 46単位以上. 表4より、2011年度入学生教育課程における修了要件は46単位となったことが分かる。表4中の太 字が2010年度入学生教育課程からの改善点である。. 43. 田.
(13) 相 野 彰 秀. Ⅵ.マイオリジナルブック作成方針の明確化 マイオリジナルブックの作成は、教職大学院の学びの集大成といえる。しかし、2008年度に入学し. た第1期生から、「マイオリジナルブックの作成イメージが見えてこない。」. という声をよく聞いた。. 入学時及び、入学後も幾度かマイオリジナルブックの作成方針の説明を大学院生に対して行った。し かし、第1期生には参考となる先行のマイオリジナルブック自体がないため、なかなか作成イメージ が持てないようであった。しかし、大学院生と各指導教員との努力の結果、第1期生のマイオリジナ. ルブックは教職大学院に期待されるレベルのものが作成された。2008年度人学生の第1回マイオリジ ナルブック発表会を経た後、マイオリジナルブック作成イメージにも検討を加えた。 2008年度教職大学院案内パンフレットに掲載されたマイオリジナルブック作成イメージが図1に示. されている2)。 2008年度教職大学院案内パンフレットでは、. 軽. 軋、 霊宝芸㌫㌶−−−\.度夙叫. ,ラ′くスや自. 図1を説明する記載が次のようになされてい る。 授業・実習ごとに「パーソナル・ポートフォ リオ」が蓄積されていきます。これには「個人. 個人的な学びの記録(「私的」記録). 参考資料. 文臥新聞記事、実践記録 実践隠告 実習ノート、 指導案、子ども. 的な学びの記録」から「指導案、事例、教材」 など公開できる記録まで、様々な情報が含まれ. 顔芳. ています。この中から、自分が現に抱えている 課題や勤務校の課題に照らして、その解決に有. 図1 マイオリジナルブック作成イメージ. 効と考える情報を拾い出してまとめ上げること. により、大学院での自分の学び全体を振り返ることができます。それを形にしたものが「マイオリジ ナルブック」となります。 この説明とイメージ図では、何を用いて、どの時期にどの. ようなことを行えば、マイオリジナルブックが作成されるの か。加えて、授業や実習との関連も明確でない。これらの点 を改善するために、2010年度教職大学院案内パンフレットで. 一 疇■ 一げ. イオリジナルブック」は教職大学院での実践に深く根ざした. 学びをいかした、いわば「自分の研究物語」です。「マイオ リジナルブック」は、大学院在学中に次の3段階を経て作成 します。 第1段階. 共通科目とコース別科日詰義を基礎にして、学校における. 実習とそれに基づく事例研究から、勤務校や自分にとっての 課題を抽出する。. 図2 改訂版マイオリジナルブック 作成イメージ. 44. け々な研究刀雄. 幸銭戸. 相中. 川 ●. のとして「マイオリジナルブック」の作成を課しています。「マ. 闇A. 教職大学院では修士論文は課しませんが、それに代わるも. 柚へ. 説明文を添えが)。. 書甲田こ〓〓. は、図2に示された改訂版イメージ図を作成し、次のような.
(14) 総合的な説明責任能力と個別課題を深める教職大学院のカリキュラム改善の特徴. 第2段階 抽出した勤務校や自分にとっての課題を、指導教員とともに研究主題として練り上げる。 第3段階 研究主題に沿って、相応しい解決方法や研究方法を選び、実証的・実践的な研究を行い、実践とそ. の成果をまとめる。. おわりに これまでに述べたような経緯で、2011年度入学生教育課程を編成するとともに、マイオリジナルブッ. クの位置づけを明確にして教職大学院のカリキュラム改善に取り組んだ。その結果、『教職大学院設 置計画書』に記載された「修了要件(52単位)の考え方」は「修了要件(46単位)の考え方」として 次のように改訂される。(太字部分が改訂部分である。). 高度教職実践専攻では、教員として求められる広範囲に及ぶ力量をつけさせることをメインに据え たことから、設置基準上め必置5領域に特別支援教育に関する領域を加えて6領域を共通科目とし、. それらを全て必修として1年次に履修させる(必置5領域2科目ずつ、特別支援教育に関する領域1 科目計22単位)。これにより、学校や教員の役割を理解した上で、学校課題に広い視野を持って取り組 むための基礎的素養が育成される。 大学院レベルの専門的な力量を保証するのに必要な単位数を8単位と設定した。そこで、3つのコー. スにそれぞれ8科目16単位を用意し、その中から、いずれか1つのコースの事例研究6単位を含み最 低8単位、残り2コースを含む選択科目の中から、自分の課題意識により自由に選択させて、合計12 単位を履修させることとした。本専攻の共通科目には、コース別選択科目と同じ領域の授業が4単位 分用意されていることから、大学院生は特定の領域について合わせて12単位履修することになり、当 該分野で十分な専門的力量を身につけることができる。. 学校における実習は10単位とした。1年次は学校全体の機能を広く傭腋しながら、それらを相互に 関連づけてとらえられるような実習とし、2年次はストレートマスターに関しては1年次に見つけた 自己課題、現職教員大学院生の場合には勤務校の学校課題を実際に解決するための実践と検証を行わ せる。. 以上のカリキュラムにより、具体的な学校課題について得意分野を持ちながらも広く学校全体を見 据えながら課題解決にあたり、理論的検証を加える力量を持ったスクールリーダーが育つ。 これらの集大成として、MOBを作成させ、発表会を経て2単位を与える。以上の結果として46単 位が修了要件となる。 2011年度入学生教育課程における「修了要件(46単位)の考え方」から分かるように、事例研究で. 授業と実習、すなわち理論と実践がより結びつけられ、質の高いマイオリジナルブック作成のための 教育課程へ改善されていることが分かる。. 最後に私見であるが、教職大学院の定員未充足の根幹部分は、教育課程の抱える課題であると考え ている。今後も現職教員大学院生の声に身を傾け、立ち止まるところなく現職教員が教職大学院に入 学しやすい、すなわち通学しやすい教育課程へと改善することが教職大学院の定員未充足を根本的に 解決する要因ではないだろうか。. 45.
(15) 相 野 彰 秀. 註 1)第Ⅰ章及び第Ⅲ章における記述は,国立大学法人北海道教育大学:「北海道教育大学大学院教育学研究科高度教職実 践専攻(教職大学院)設置計画書」,2007年6月29日.を引用及び参考にしている。 2)大学院教育学研究科高度教職実践専攻:『人が人を育てる』,p.5,2008. 3)大学院教育学研究科高度教職実践専攻:『人が人を育てる』,p.5,2010.. 46.
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