• 検索結果がありません。

教職課程において学生に求められる資質・能力の育成を目的とした授業開発

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "教職課程において学生に求められる資質・能力の育成を目的とした授業開発"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 教職課程において学生に求められる資質・能力の育成を目的とした授業 開発. Author(s). 星, 裕. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 71(2): 1-10. Issue Date. 2021-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11707. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第71巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 71, No.2. 令 和 3 年 2 月 February, 2021. 教職課程において学生に求められる資質・能力の育成を目的とした授業開発 星 裕 北海道教育大学釧路校. Lesson Development Aimed at Nurturing the Qualities and Skills Required of Students in Teacher Training HOSHI Yutaka Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究の目的は,教職課程コアカリキュラムに示された「共通に習得すべき資質・能力」を 学生に育成することを目的とした授業を開発し,実践した結果を検討することであった。 本研究の結果,本研究で開発した授業は,学生に求められた資質・能力を育成することにつ ながったことが示された。これには,以下の3点が関わっていたと考えられる。1点目は,逆 向き設計のステップが,どのような資質・能力を学生に育成するのか明確な授業につながった ことである。2点目は,9教授事象に基づき,授業に確認問題・演習問題といった練習の機会 とフィードバックを位置付けたことである。3点目は,学習指導案の作成にあたって,各回の 授業との関連を強く意識したことである。 今後の課題として,関連する科目における学生の学びを適切に把握することで,授業の中で 重点とするべき点を明確にし,学生に求められる資質・能力を育成できるように尽力していき たい。. 1.問題と目的. 果が重視された。その後,中央教育審議会(2012a) は,知識の伝達・注入を中心とした授業から,学. 近年,大学教育において教育の質をいかに保証. 生が主体的に学ぶ能動的学修,いわゆるアクティ. するかという視点がより重要性を増してきた。こ. ブ・ラーニングへの転換の必要性を示した。アク. れは,中央教育審議会(2008)が, 「学士力」と. テ ィ ブ・ ラ ー ニ ン グ に つ い て 中 央 教 育 審 議 会. して学士課程共通の学習成果に関する参考指針を. (2012a)は,「教員による一方向的な講義形式の. 出したことが大きく影響している。この参考指針. 教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加. では,学生に「何を教えるか」よりも学生が「何. を取り入れた教授・学習法の総称」とし,これに. ができるようになるか」に力点が置かれ,学習成. よって,大学教育では「何を学ぶか」に加えて「ど. 1.

(3) 星 裕. のように学ぶか」が問われることとなった。. いない授業とされ,活動自体が目的となったこと. この流れを受けて,アクティブ・ラーニングに. を問題として指摘した。また,日本においても森. 関する大学教育における研究も数多く見られるよ. (2015)が「思考と活動に乖離がある」ことをア. うになった。CiNii(NII学術情報ナビゲータ)を. クティブ・ラーニングの課題として指摘した。こ. 用いて, 「アクティブ・ラーニング」と「大学」. れらは,活動自体が目的となっている授業や活動. をキーワードとし, 「本文あり」で検索するとそ. と思考がずれている授業,つまりねらいと学習活. の結果は,以下の通りであった。. 動がずれている授業がみられたことを問題視した. 2012年  18件. といえる。このことに関して,稲垣ら(2011)は,. 2013年  62件. あくまで授業設計はゴールに向かう手立てである. 2014年 108件. とし,メイジャー(1970)は,目標,評価,方法. 2015年 211件. の3つの整合性がとれている必要性を示した。. 2016年 481件. このような目標に沿った方法の選択を重視する. 2017年 636件. 学習設計の理論にインストラクショナルデザイン. 2018年 423件. の理論がある。インストラクションについてライ. 2019年 520件(2020年7月8日検索). ゲルースら(2016)は,「目的をもって学習を促. この結果からも,2012年に中央教育審議会によ. 進させるために行うこと全て」とし,目的をもっ. る答申が出されて以降,アクティブ・ラーニング. てという部分を重視した。さらに,ガニェら(2007). に関する研究が増加した傾向を確認できる。また,. は,インストラクショナルデザインについて, 「学. これまでにアクティブ・ラーニングに関しては,. 習を支援する目的的な活動を構成する事象の集合. 数多くの教育方法が開発されており,その実践が. 体」と定義した。これは,学習活動は目的に基づ. 行われてきた。例えば,協同学習理論を基盤とし. いて選択することに加え,それらの目的に即して. た 方 法 と し てLTD話 し 合 い 学 習 法( 藤 田,. 学習過程を決定していくことを示したといえる。. 2007) や グ ル ー プ・ プ ロ ジ ェ ク ト 法( 牧 野,. つまり,これらの指摘から,数多くの教育方法が. 2011) ,その他にPBL(中西,2012)やケースメ. 開発された一方で,方法が最優先されるのではな. ソッドを用いた授業(川野,2016)などが認めら. く,あくまで目標に即した方法が選択されるべき. れた。他にも,教員養成課程で教員による学生に. であることが示されたといえる。. 向けた模擬授業を取り入れた事例(大前,2015; 大前,2016)などもみられた。. ところで,中央教育審議会(2012b)は,これ からの教員に求められる資質・能力を示し,教員. これらの多様なアクティブ・ラーニングに関す. として備える必要性がある資質・能力を明らかに. る教育方法を栗田ら(2017)は, 「知識定着型」. した。さらに,養成段階は「教員となる際に必要. と「課題解決型」に整理した。これは,アクティ. な最低限の基礎的・基盤的な学修」を行う段階で. ブ・ラーニングの技法のねらいに沿った分類で. ある(中央教育審議会,2015)とされ,教員養成. あった。また, 中井ら(2015)は, 「ディスカッショ. 課程において,学生に身に付けるべき資質・能力. ンを導く技法」 ,「書かせて思考を促す技法」等の. を明確にすることが求められた。. ように学習活動に沿った分類を行った。これらに. これらの背景には,学士課程全体の流れに加え,. よって,アクティブ・ラーニングの技法が整理さ. 現在の教育現場では,採用になった直後からある. れ,活用しやすい状況が整ってきたといえる。. 程度学校現場での教育活動に対応できる力量をも. 一方で,ウィギンズら(2012)は授業における. つ教員,つまり,即戦力となる教員が求められる. 過ちの1つとして「活動に焦点を合わせた指導」. ことも関係している。かつてみられたように採用. を挙げた。これは,手を使っていても頭は使って. されてから段階的に教職に関する能力を向上させ. 2.

(4) 学生に求められる資質・能力の育成を目的とした授業開発. ていくという考え方は,現在の教育現場では受け. 2019年10月から2020年1月までの期間であった。. 入れられにくくなっており,養成段階において基 礎的・基盤的な学修を行い,最低限の資質・能力. 2-2.実践内容. を身につけることが必要とされている。. 2-2-1.授業計画. この基礎的・基盤的な学習に関わって,教員養. 本研究では,授業計画を構想するにあたり, 「逆. 成コアカリキュラム(教職課程コアカリキュラム. 向き設計」の3段階(ウィギンズら,2012)に基. の在り方に関する検討会,2017)が作成された。. づいて授業計画をデザインした。 「逆向き設計」は,. これは,教育職員免許法及び同施行規則に基づき. ①求められている結果を明確にする,②承認でき. 全国すべての大学の教職課程で共通的に習得すべ. る証拠を決定する,③学習経験と指導を計画する,. き資質・能力を示したものであり,教職課程の質. という3つのステップで構成された授業デザイン. 的水準の確保を目的とした。つまり,教員となる. である。この段階を踏むことで,授業の目標,評. 際に必要な最低限の基礎的・基盤的な学修をより. 価,方法の整合性がとれた授業を設計することが. 具体化したものといえる。. 可能であると考えた。. そこで,本研究では,教職課程コアカリキュラ. まず,①の求められている結果にあたる授業の. ムに示された「共通に習得すべき資質・能力」を. 目標を設定した。授業の目標は,教職課程コアカ. 学生に育成することを目的とした授業を開発し,. リキュラムに示された目標に基づくことにした。. 実践した結果を検討した。. 具体的には,対象科目である「教育課程と教育方 法」と関連している「教育課程の意義及び編成の 方法」と「教育の方法及び技術」の一般目標と到. 2.方 法. 達目標であった。教職課程コアカリキュラムに定. 2-1.対象学生・科目・時期 対象とした学生は,教育学部3年生21名,4年 生2名の計23名であった。 対象科目の 「教育課程と教育方法(初等 副免)」 は,H大学の科目区分では専門科目【実践教育科. められている内容は,教職課程全体の質保証を目 指す上で共通に習得すべき資質・能力を示したも のとされていた(教職課程コアカリキュラムの在 り方に関する検討会,2017)。設定した到達目標 は,表2の通りであった。. 目】に位置付けられていた。専門科目【実践教育. 次に,②の承認できる証拠,つまり評価をどの. 科目】は,「学校教育に関わる基礎的な知識や理. ように行うか決めた。科目全体を評価する方法と. 論を習得するとともに,多様な教育課題を捉え,. しては,最終回に実施するテストと終了後に提出. 適切に対応できる力の素地を培うこと」を目的と. する学習指導案を位置付けた。この2つによって,. しており(北海道教育大学釧路校,2018) ,知識. ①の求められている結果が身についたかどうかを. や理論の習得に加え,対応力の育成を目的とした。. 最終的に判断することにした。また,それとは別. また,履修した学生全員が,必修の免許状対象校. に毎時間,確認問題と小テストを実施した。確認. 種における教育実習1を履修済みであった(表. 問題は,授業の途中に学習内容を振り返る問題を. 1) 。なお,本研究の実施時期は2019年度後期の. 実施し,知識の定着を目的とした。小テストは,. 表1 関連する科目と実施時期 実施時期. 関連する科目. 3年生前期. 教育実習1. 3年生後期. 教育課程と教育方法(初等 副免). 4年生. 教育実習2. 授業の最後に実施し,個人への定着状況を把握す ることに活用した。これによって,授業ごとに形 成的な評価を行い,不十分な点については,個人 に関する内容についてはワークシートにコメント を添えて返却し,全体に関わる内容については次 の授業の冒頭で振り返りや確認を行うことで. 3.

(5) 星 裕. 表2 授業計画 回. 学習内容及び学習活動. 1. ◎ 講義の概要を理解し,自己課題を明確にすることがで 【説明】講義の概要 きる。 【演習】課題の設定. 2. 【説明】学習指導要領の性格及び位置づけと改訂の変 ◎ 学習指導要領の性格及び位置付けを理解している。 遷 ◎ 学習指導要領の改訂の変遷及び主な改訂内容並びにそ 【説明】学習指導要領の改訂内容並びに社会的背景 の社会的背景を理解している。 「社会に開かれた学校」に向けた取組 ◎ 教育課程が社会において果たしている役割や機能を理 【演習】 解している。. 3 第一ユニット 教育課程 第二ユニット 教育方法 4. 到達目標. ◎ 教育課程編成の目的を理解している。. 【説明】教育課程の意義 【説明】教育課程に関する法制 【演習】 「学校の教育目標」の具現化に向けた取組. ◎ 教育課程編成の基本原理を理解している。. 【説明】教育課程編成の原則 【説明】生きる力を育む各学校の特色ある教育活動の 展開 【演習】現代的な諸課題に対応して求められる資質・ 能力を育む教育活動の構想. 4. 5. ◎ 学習指導要領に規定するカリキュラム・マネジメント 【説明】育成を目指す資質・能力 【説明】カリキュラム・マネジメントの充実 の意義や重要性を理解している。 ◎ カリキュラム評価の基礎的な考え方を理解している。 【演習】カリキュラム・マネジメントの一部実施. 6. ◎ 教科・領域を横断して教育内容を選択・配列する方法 【説明】各学校の教育目標と教育課程の編成 を例示することができる。 【説明】教科等横断的な視点に立った資質・能力 【演習】全ての学習の基盤となる資質・能力を育む教 育活動の構想. 7. ◎ 単元・学期・学年をまたいだ長期的な視野から,また 【説明】教育課程の編成における共通的事項 児童や学校・地域の実態を踏まえて教育課程や指導計画 【説明】学校段階間の接続 【演習】学校段階等間の接続を意図した取組 を検討することの重要性を理解している。. 8. ◎ これからの社会を担う子供たちに求められる資質・能 【説明】主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授 業改善 力を育成するための教育方法の在り方(主体的・対話的 【説明】言語環境の整備と言語活動の充実 で深い学びの実現など)を理解している。 【演習】主体的・対話的で深い学びの実践交流. 9. ◎ 子供たちの情報活用能力(情報モラル)を育成するた 【説明】プログラミング教育 めの指導法を理解している。 【説明】情報モラル教育 【演習】プログラミング教育の実践. 10. 11. ◎ 各教科等の指導における配慮事項を理解している。. 【説明】指導における配慮事項 【演習】配慮事項を意図した授業構想. ◎ 学習評価の基礎的な考え方を理解している。. 【説明】指導の評価と改善 【説明】学習評価に関する工夫 【演習】作品評価の実践. 12. 【説明】学習指導過程 ◎ 教育方法の基礎的理論と実践を理解している。 ◎ 学級・児童・教員・教室・教材など授業を構成する基 【説明】動機づけモデル 【演習】単元案・本時案の構想 礎的な要件を理解している。. 13. ◎ 話法・板書など,授業を行う上での基礎的な技術を身 【説明】基礎的な技術 【説明】情報機器の活用 に付けている。 ◎ 子供たちの興味・関心を高めたり課題を明確につかま 【演習】学習指導案の作成 せたり学習内容を的確にまとめさせたりするために,情 報機器を活用して効果的に教材等を作成・提示すること ができる。. 14. ◎ 基礎的な学習指導理論を踏まえて,目標・内容, 教材・ 【演習】学習指導案の作成 教具,授業展開,学習形態,評価規準等の視点を含めた 学習指導案を作成することができる。. 15. ◎ 講義全体を振り返り,「自己課題」を中心に,今後に 【演習】振り返り 向けて「学び」や「課題」をまとめることができる。.

(6) 学生に求められる資質・能力の育成を目的とした授業開発. フィードバックした。 最後に,③学習経験と指導を計画した。授業の 目標として設定した資質・能力が学生に身に付く. 取り組み,その後,ペアやグループ,全体での交 流を通して,自分の考えと他者の考えを比較する ことで,理解を広げ,深めることを意識した。. 上で必要な「学習経験」を設定した。構想した各. 最後に,まとめでは,ワークシートへの振り返. 授業の内容は,表2の通りである。第1ユニット. りと小テストを実施した。ワークシートの学生の. は教育課程に関わる内容とし,第2ユニットは教. 意見にはコメントを添えて翌週に返却し,小テス. 育方法に関わる内容とした。第1回にはオリエン. トは教員による説明を必要に応じて行った。これ. テーション,第15回にはまとめを位置付けた。. によって学生の学習内容の定着状況の把握に努め. 以上のステップによって「逆向き設計」の3段 階に基づいた授業計画をデザインした。. た。 第2回から第13回までの授業に関しては,学習 内容や時間配分等に違いはあるものの,基本的に. 2-2-2.授 業. この学習過程に基づいて授業を行った。. 次に, 「逆向き設計」の③の「指導」,つまり1 時間の授業の進め方について構想した。1時間の 授業を進めるにあたっては,ガニェら(2007)の. 表3 学習過程と9教授事象との関連 段 階. 示した「9教授事象」を視点とした。具体的な学 習過程は,表3の通りである。 まず,導入ではテーマに関わる発問を行った。. 導 入. 説明と確認問題. 部分に気付かせることを意図した。学生の理解の ずれや不足している部分に気付かせることで,学 習への注意を喚起し,学習への興味をもたせた。 次に,展開は「説明と確認問題」,「演習」の2. がら,本時の学習内容に関する説明を行った。説. 展 開. 問題」では,必要に応じて前提条件を振り返りな 明後には,学生の理解を確かなものにするため, 題への取り組みを練習の機会とすることで,学生. 演 習. 学習内容を確認問題として出題した。この確認問. 士での交流や机間指導で気が付いた部分を教員が 説明することで即時的にフィードバックした。. 事象2 授業の目標を知 らせる. 事象3 前提条件を思い 新しい情報の提 出させる 示 事象4 新しい事項を提 示する. 確認問題. 事象6 練習の機会をつ くる 事象7 フィードバック を与える. 演習問題の提示. 事象5 学習の指針を与 える. 個人思考. は授業の中で取り扱ったキーワードの意味や概念 等についての確認を行った。実施後には,学生同. 9教授事象との関連. テーマに関する 事象1 学習者の注意を 発問 喚起する 学習目標の提示. これによって,学生の理解のずれや不足している. つのパートで構成することとした。 「説明と確認. 内 容. 事象6 練習の機会をつ くる 事象9 保持と転移を高 める. ディスカッショ 事象7 フィードバック ン を与える まとめ まとめ. 「演習」では,表2に示した内容を実施した。. 事象8 学習の成果を評 価する. これは,知識として学習した内容を活用する場面 として位置付けた。ここでは,演習課題に取り組 むことで,学校現場では学習した知識等がどのよ うに活用されているのかを経験することで,学習. 2-3.分析対象データ・分析手続き 分析対象のデータは,小テストと学習指導案の 結果の2つである。. 内容の保持や転移につなげることを意識した。最. まず,毎時間実施した小テストの結果を研究の. 初に,演習問題を提示した後,個人で学習問題に. 対象とした。小テストは,毎回の授業で5問を出. 5.

(7) 星 裕. 題し,3問以上の正答で基準に到達したと判断し. すく漏れのないように配置することで設定され. た。これによって,毎時間の学習内容の定着状況. る。本研究では,授業で取り上げた内容との関係. を捉えることができると考えた。分析手続きは,. から,評価の観点は,「導入」,「展開」,「終末」,. まず,小テストの結果を3問以上正答した基準到. 「評価」,「板書」とした。. 達と2問以下であった基準未到達に整理した。. 次に評価尺度を決定した。評価尺度は,与えら. 次に, その結果から基準に到達した学生の数と,. れた課題がどれだけ達成されたかを表すものであ. 基準に未到達の学生の数を比較し,各回の授業の. り,本研究では,A(優),B(良),C(要改善). 定着状況を検討した。. の3段階とした。これは,段階が細かいルーブリッ. 次に,学生が作成した学習指導案を分析の対象. クよりも,最も高い水準の行動と最も低い水準の. とした。授業の到達目標の1つとして学習指導案. 行動,そして中間レベルの内容の3つに整理する. の作成に関する内容が含まれており,ルーブリッ. ことで,学生がそれぞれで求められている内容の. クに基づいて評価した結果を分析することで,学. 違いについて理解しやすいと考えたためである。. 生の学習指導案作成に関する学習状況を捉えるこ. 最後に,評価基準を作成した。評価基準は,学. とができると考えた。. 生に達成することを期待する評価の基準である。. ル ー ブ リ ッ ク の 作 成 は, ス テ ィ ー ブ ン ス ら. 評価基準の内容は,本研究で取り上げた内容に基. (2014)が示した「3-5段階ルーブリック」の. づき設定した。作成にあたっては,最初に最も高. 作成方法に基づいて行った。 「3-5段階ルーブ. い行動としたA(優)を設定し,次に最も低い行. リック」は,3~5つの尺度で構成され,理想的. 動としたC(要改善),最後に中間レベルとした. なレベルとそれ以下のレベルで構成されている。. B(良)の順に設定した。作成したルーブリック. そのため,評価基準として記された文章を比較す. は,表4の通りである。. ることで,何に焦点を当てるとよいのか捉えやす いという特徴をもつ。. 分析手続きは,まず,ルーブリックに基づいて 学生の学習指導案を評価した。その際,B以上を. ルーブリック作成の手順は,以下の通りであっ. 基準到達とし,Cの場合を基準未到達として判断. た。まず, 評価の観点を設定した。評価の観点は,. した。次に,その結果から基準に到達した学生の. 課題をいくつかの評価の観点に分けて,わかりや. 数と,基準に未到達の学生の数を比較し,学習指. 表4 ルーブリック A(優). 6. B(良). C(要改善). 導 入. 本時の課題が示されており,学習に動 本時の課題がわかりやす 記述に不備がある,もしくは,本 機づけるための工夫などがみられる。 く示されている。 時の課題が示されていない。. 展 開. 本時の目標を意図した展開がされてお 本時の目標を意図した展 記述に不備がある,もしくは,本 り,目標の達成に向けた工夫などがみ 開がされている。 時の目標を意図した展開がされて られる。 いない。. 終 末. 課題に正対したまとめや学習内容の定 課題に正対したまとめや 記述に不備がある,もしくは,課 着が図られており,学習内容の活用を 学習内容の定着が図られ 題に正対したまとめや学習内容の 促すための工夫などがみられる。 ている。 定着が図られていない。. 評 価. 目標と評価規準,評価場 記述に不備がある,もしくは,目 面,評価方法などに妥当 標と評価規準,評価場面,評価方 性がある。 法などに妥当性がない。. 板 書. 授業の流れがわかり,子供の意見・発 導入・展開・終末の過程 板書計画がない,もしくは,板書 表を生かす,掲示物や小ボード,ICT により授業の流れがわか 計画があるが,導入・展開・終末 などを併用する等の工夫がみられる。 るように構成されている。 の授業の流れがわかりにくい。.

(8) 学生に求められる資質・能力の育成を目的とした授業開発. 導案作成に関する学生の到達状況を検討した。. ことをB(良)以上として求めた。これは,稲垣 ら(2011)がガニェの9教授事象を導入・展開・ まとめに整理した学習過程に「導入」における教. 3.結果と考察. 師の働きかけの1つとして示されたものであり,. 3-1.小テストの結果. 学生がこのことを意識できていたと考えられる。. 2週から13週までの小テストの結果は,表5の. A(優)では,学習に動機づけるための工夫を求. 通りであった。毎回,5問を出題し,3問以上の. めた。理科では,へこんだピンポン玉を見せ,ど. 正解を基準到達として判断した。. のようにすると直すことができるか質問すること. 本研究の結果,第4,7,10,12回に1~2名. で,児童の探求心を喚起させるように意図した導. が基準に到達しなかったものの,その他はすべて. 入がみられた。また,図画工作科では,鑑賞した. 基準に到達していた。そのため,毎回の授業を通. 作品の価格をクイズにし,高値で取引されている. してある程度の学習内容の定着が図られたといえ. 事実から学習内容に興味をもたせるように工夫し. る。これは, 次の2つの理由によると考えられる。. た導入もみられた。これらは,授業の中で取り上. 1つ目は,逆向き設計に基づく授業デザインによ. げたケラー(2007)のARCSモデルを動機づけモ. り,この授業で何を学ぶのか学生にとって明確で. デルを意識したと捉えることができた。. あったことである。そのため,目的意識をもって. 「展開」も全員が基準に到達することができた。. 学ぶことができたと考えられる。2つ目は,授業. ルーブリックでは, 「本時の目標を意図した展開」. の中に確認問題・演習問題とフィードバックを位. をB(良)以上として求めた。授業の中では,展. 置付けたことである。これによって,練習の機会. 開においても,ガニェの9教授事象を学習過程に. とフィードバックの場面が位置付けられ,学生は. おける教師の働きかけの視点の例として紹介し. 学びを確かなものにすることができたと考えられ. た。A(優)では,目標の達成に向けた工夫を求. る。. めた。家庭科では,衣服のたたみ方について児童 がイメージをもちやすいようにICTの活用を取り. 3-2.学習指導案の評価についての検討. 入れた展開がみられた。また,算数科では発問の. 第14回の授業では,それまでの学習内容を踏ま. 工夫に加え,問い返しを考えておくことで,学習. え,学習指導案を作成した。学習指導案の評価に. が深まるように工夫した展開がみられた。これら. あたっては,ルーブリック(表4)を用いた。評. は,授業の中で取り上げた教育技術と関連する内. 価した結果は,B(良)以上は基準到達,C(要. 容であった。. 改善)は基準未到達とした。結果は表6の通りで あった。. 「終末」も全員が基準に到達することができた。 ルーブリックでは,「課題に正対したまとめや学. 本研究の結果,ほとんどの観点で基準に到達し た学生が多くみられた。. 習内容の定着」をB(良)以上として求めた。特 にA(優)では,学習内容の活用を促すための工. 「導入」では,全員が基準に到達することがで. 夫を求めた。学生が作成した学習指導案には,外. きた。ルーブリックでは,「本時の課題を示す」. 国語活動において最後に全体へのプレゼンテー. 表5 小テストの結果 回. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 基準到達. 19. 16. 19. 21. 15. 14. 20. 21. 20. 21. 21. 18. 基準未到達. 0. 0. 1. 0. 0. 2. 0. 0. 1. 0. 1. 0. 7.

(9) 星 裕. ションを入れることで,学習した表現を活用する. 表6 学習指導案評価結果. 場を位置付けたものがみられた。また,算数科で は長方形に変形できる平行四辺形の面積を求めた 後,同じ考え方を生かして正方形に変形できる平. 導入. 展開. 終末. 評価. 板書. 基準到達. 21. 21. 21. 16. 19. 基準未到達. 0. 0. 0. 5. 2. 行四辺形の面積を求める場を位置付けたものがみ られた。これらは,学習内容の活用を終末に位置 付けたものであった。. 4.まとめと今後の課題. 「評価」は,16名が基準に到達し,5名が未到. 本研究の目的は,教職課程コアカリキュラムに. 達であった。 「目標と評価規準,評価場面,評価. 示された「共通に習得すべき資質・能力」を学生. 方法に妥当性があること」をB(良)以上として. に育成することを目的とした授業を開発し,実践. 求めた。評価に関しては,必要な内容を備えてい. した結果を検討することであった。. るかどうかで判断したため,A(優)は設定しな. 本研究の結果,本研究でデザインした授業は,. かった。未到達であった5名は,目標と評価規準. 学生に求められた資質・能力を育成することにつ. に妥当性がみられなかった。例えば,知識・技能. ながったことが示された。小テストの結果,ほと. を目標として設定しているにも関わらず,グルー. んどの学生が基準に到達し,学習指導案の評価で. プ内で協力して取り組めたか,というような評価. も,多くの観点で基準に到達することができた。. 規準を設定していた。第11回の授業で,子供の作. 基準の到達には,以下の3点が影響を与えたと考. 品を評価する演習を行ったことで,実際の経験を. えられる。. 通して,目標と評価規準,評価方法に妥当性が求. 1点目は,逆向き設計のステップが,どのよう. められる必要性について多くの学生は理解でき. な資質・能力を学生に育成するのかが明確な授業. た。一方で,目標と評価基準の関係をうまく捉え. につながったと考えられる。逆向き設計では,ま. ることができなかった学生もみられた。学生は評. ず,授業を通して学生に求める結果を明確にし,. 価するという経験がこれまでに少なく,具体的に. 次にそれを承認する証拠を決定し,最後に学習経. イメージして理解することは難しい観点であった. 験と指導を計画する。これが,どのような資質・. と考えられる。. 能力を学生に育成するのか明確な授業を行うこと. 「板書」は,19名が基準に到達し,2名が未到. につながったと考えられる。また,最初のオリエ. 達であった。授業の流れが分かるように構成する. ンテーションで学生に目標と授業計画を示したこ. ことをB(良)以上として求めた。A(優)では,. とで,学生が何をできるとよいのか理解し,授業. さらに子供の意見・発表を生かす,掲示物や小. に臨むことにつながった。. ボード,ICTなどを併用するなどの工夫を求め. 2点目は,9教授事象に基づき,授業に確認問. た。これに関わっては,算数科で子供に板書させ. 題・演習問題といった練習の機会とフィードバッ. る場を設定し,それを活用したまとめを行うよう. クを位置付けたことである。これによって,学生. 計画した板書や国語科で掲示物を位置付け,それ. が学習内容への理解を確かなものにすることがで. に子供の意見を書き込むことで,内容を捉えやす. きたと考えられる。. くした板書などがみられた。第13回の授業の中で. 3点目は,学習指導案の作成にあたって,各回. 板書の役割や具体例などを紹介し,それらの内容. の授業との関連を強く意識したことである。学習. を取り入れた板書もみられた。基準未到達であっ. 指導案の作成では,それまでの授業で学習した内. た2名は,本時の学習内容を捉えることが難しい. 容が用いられた。ルーブリックにも,それぞれの. 板書計画であった。. 評価の観点と各回の授業とのつながりを明示して おいたことで,学生が振り返りながら学習指導案. 8.

(10) 学生に求められる資質・能力の育成を目的とした授業開発. の作成に取り組むことができた。例えば,導入で. る。したがって,本研究で開発した授業は,学生. ケラーのARCSモデルを活用した計画を立てた. に教員として最小限必要な資質・能力を身に付け. り,ICTを活用した授業計画を立てたりした学習. させることを求められた教員養成において,有効. 指導案がみられた。各回の授業の関連を図ったこ. な授業デザインの1つと考えられる。. とが,学生が学習内容を活用することにつながっ たと考えられる。. 一方で,今後の課題として,他の科目との関連 をどのように図るかが示された。学習指導案の「評. 一方で, 学習指導案作成の際, 「評価」や「板書」. 価」や「板書」に関わって,対象学生の実態把握. の項目に課題がみられた。これは,授業の中で取. の不足が示唆された。今後,関連する科目におけ. り組んだ演習と学習指導案の作成自体が直接つな. る学生の学びを適切に把握することで,授業の中. がっているものではなかったためであると考えら. で重点とするべき点を明確にし,学生に求められ. れる。. る資質・能力を育成できるよう尽力していきたい。. 「評価」に関わっては,学習指導案に評価規準 を位置付ける演習ではなく,評価規準をもとに実. 引用文献. 際の児童の作品を評価するという演習を行った。 これは,今回の対象学生が,これまでに各教科等. ライゲルース, C. M. &カー =シェルマン, A. A.(鈴木克. の指導法を履修し,5週間の教育実習を経験して. 明,林雄介監訳) 2016 『インストラクショナルデザ. いることを踏まえ,学習指導案への評価規準の記 述は学習済みと考えたためであったが,再度の確 認が必要であり,学生の実態の把握が不足してい た結果といえる。また,「板書」に関わっても, その意図や実践例の紹介は行ったものの「評価」 と同様に既に学習済みであると考え,実際に板書 計画を立てることは行わなかったことが影響した と考えられる。したがって,学生の実態を正確に 把握する必要性と最終的に学生に求める資質・能 力と演習の整合性を検討する必要性が課題として 示唆された。 本研究の結果から,本研究で開発した授業デザ インは,学生に求める資質・能力が明確な目標達. インの理論とモデル共通知識基盤の構築に向けて』北 大路書房,京都 中央教育審議会 2008 『学士課程教育の構築に向けて (答申) 』 中央教育審議会 2012a 『新たな未来を築くための大学 教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考 える力を育成する大学へ~(答申) 』 中央教育審議会 2012b 『教職生活の全体を通じた教員 の資質能力の総合的な向上方策について(答申) 』 中央教育審議会 2015 『これからの学校教育を担う教員 の資質能力の向上について~学び合い,高め合う教員 育成コミュニティの構築に向けて~(答申) 』 スティーブンス, D. D. &レビ, A. J.(佐藤浩章監訳,井上 敏憲,俣野秀典訳) 2014 『大学教員のためのルーブ リック評価入門』玉川大学出版部,東京 藤田文 2007 LTD話し合い学習法におけるグルーピン グの効果, 『協同と教育』⑶,22-32. 成型の授業において有効であると考えられる。本. ウィギンズ, G. &マクタイ, J.(西岡加名恵訳) 2012 『理. 研究の対象科目「教育課程と教育方法」は,教職. 解をもたらすカリキュラム設計―「逆向き設計」の理. 課程コアカリキュラムに示された資質・能力を学. 論と方法』日本標準,東京. 生に育成することを目的としており,目的が明確 な目標達成型の授業であった。このような授業で は,逆向き設計に基づく授業は,目標,評価,方 法にずれがなく,学生に求められる資質・能力を 起点とした一貫した授業となることが期待でき る。また,9教授事象に基づく1時間の指導は, 練習の機会とフィードバックの場面を位置付ける ことにつながり,学生の学びを確かなものとでき. 北海道教育大学教育学部釧路校 2018 『学生便覧―履修 と学生生活の手引き』 稲垣忠・鈴木克明 2011 『授業設計マニュアル』北大路 書房,京都 ケラー , J. M.(鈴木克明監訳) 2010 『学習意欲をデザイ ンする―ARCSモデルによるインストラクショナルデ ザイン―』北大路書房,京都 川野司 2016 大学生の学びを支援するケース討論型授 業, 『協同と教育』⑿,13-24 栗田佳代子・日本教育研究イノベーションセンター . 9.

(11) 星 裕. 2017 『インタラクティブ・ティーチング―アクティ ブ・ラーニングを促す授業づくり―』河合出版,東京 教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会 2017 『教職課程コアカリキュラム』 牧野典子 2011 看護大学の授業における協同学習の効 果に関する研究―グループ・プロジェクト法による救 急看護学の実践―,『協同と教育』⑺,47-56 森朋子 2015 反転授業―知識理解と連動したアクティ ブラーニングのための授業枠組み―,『ディープ・アク ティブラーニング(松下佳代・京都大学高等教育研究 開発推進センター編著)』勁草書房,東京 中井俊樹 2015 『シリーズ 大学の教授法3 アクティ ブラーニング』玉川大学出版部,東京 中西良文 2012 Problem-based learning (PBL) が自己 調整学習方略使用および学習動機づけに及ぼす効果, 『協同と教育』⑻,10-19 大前暁政 2015 教育方法と授業技術を意識化させ,習 得させるための「教育方法論」の実践,『教師学研究』 ⒃,1-11 大前暁政 2016 小学校理科教育に求められる指導力と 専門性を高めるための教職専門科目「理科」講義方法 に関する実践研究,『教師学研究』⒅,35-44 メイジャー , R. M. 1970 『教育目標と最終行動―行動の 変化はどのようにして確認されるか』産業行動研究所, 東京 ガニェ , R. M.,ウェイジャー , W. W.,ゴラス, K. C. &ケ ラー , J. M.(鈴木克明,岩崎信監訳) 2007 『インスト ラクショナルデザインの原理』北大路書房,京都. . 10. (釧路校准教授).

(12)

参照

関連したドキュメント

「職業指導(キャリアガイダンス)」を適切に大学の教育活動に位置づける

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

民有地のみどり保全地を拡大していきます。地域力を育むまちづくり推進事業では、まちづ くり活動支援機能を強化するため、これまで

【目的・ねらい】 市民協働に関する職員の知識を高め、意識を醸成すると共に、市民協働の取組の課題への対応策を学ぶこ