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Title
Sodium-calcium exchangers in rat trigeminal
ganglion neurons
Author(s)
黒田, 英孝
Journal
歯科学報, 113(4): 472-473
URL
http://hdl.handle.net/10130/3196
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 侵害刺激や神経障害は様々な受容体やイオンチャネルを介し,細胞内 Ca2+ 濃度([Ca2+ ]i)を増加させる。 [Ca2+ ]iの増加は神経を興奮させるが,過負荷になると細胞毒性や,細胞死を引き起こす。そのため,細胞膜 上には Ca2+排出機構が備わっており,[Ca2+] iを微細に調節している。そのうちの一つが,Na+-Ca2+交換体 (NCX)である。三叉神経節ニューロンにおいては Ca2+ -ATPase が主な Ca2+ 排出を担っているとされている が,三叉神経節ニューロンにおける NCX の役割は明らかにされていない。そこで本研究では,ラット三叉神 経節ニューロンにおける NCX の発現や局在,神経病理学的役割について検討した。 2.研 究 方 法 Wistar ラット(4−7日齢)から三叉神経節細胞を単離し,初代培養を行った。培養細胞を用いて,NCX の 発現と機能検索のために Real-time RT-PCR 法,免疫組織化学染色,Fura-2を用いた[Ca2+ ]iの蛍光測定, パッチクランプ法を行った。 3.研究成績および考察 ラット三叉神経節ニューロンには NCX のアイソフォーム(NCX1,NCX2,NCX3)すべてが発現してお り,大脳と同様の発現傾向であった。また NCX1,NCX2,NCX3は Pan neuronal marker
陽性細胞,NF-H 陽性細胞,IB4陽性細胞,CGRP 陽性細胞と共局在した。逆向性輸送時における NCX の[Ca2+
]iの増加は
濃度依存性(K=1.95mM)であり,その[Ca2+
]iの増加は NCX 阻害薬である KB-R7943(IC50=3.08μM),SEA
0400(IC50=0.03μM),SN-6(IC50=0.51μM)によって濃度依存性に減少した。さらに,1.0μM Tetrodotoxin に
よって抑制される電位依存性 Na+ チャネルの不活性化反応速度は,NCX 阻害薬の投与で電位依存性に延長し た。軸索,樹状突起,細胞体に発現する NCX は A 線維,非ペプチド性 C 線維,ペプチド性 C 線維に発現し ており,なかでも NCX1が主な機能を有していることが示唆された。さらに,それら NCX は電位依存性 Na+ チャネル(β サブユニット)とカップリングし,逆向性輸送では[Ca2+ ]iの増加,順行性輸送では細胞内 Na+濃 度の低下を引き起こし,侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛の調節機構の一部を担っていることが示唆された。 氏 名(本 籍) くろ だ ひで たか
黒
田
英
孝
(群馬県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1980 号(甲第1221号) 学 位 授 与 の 日 付 平成25年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Sodium-calcium exchangers in rat trigeminal ganglion neurons
掲 載 雑 誌 名 Molecular Paindoi :10.1186/17448069922. 2013年4月 論 文 審 査 委 員 (主査) 川口 充教授 (副査) 一戸 達也教授 柴原 孝彦教授 田 雅和教授 山本 仁教授 歯科学報 Vol.113,No.4(2013) 472 ―124―
4.結 論 三叉神経節ニューロンにおける機能的な NCX の発現は,電位依存性 Na+ チャネルと共役し,顎顔面領域に おける疼痛の調節に関係する可能性が示唆された。 論 文 審 査 の 要 旨 細胞内 Ca2+は様々なシグナル伝達に関わる重要な因子の一つであり,その濃度は細胞膜上に存在する Ca2+ -ATPase(PMCA)や Na+ -Ca2+ 交換体(NCX)などの Ca2+ 排出機構で正確に調節されている。三叉神経節ニュー ロンにおける主な Ca2+ 排出は PMCA が担っているとされており,NCX に関する報告は限られている。本研 究は,分子生物学的手法,電気生理学的手法を用いて,ラット三叉神経節ニューロン初代培養細胞における NCX の発現や機能の検討を行った。三叉神経節ニューロンには NCX の isoform である NCX1,NCX2, NCX3すべてが発現しており,それらは大脳と同様の発現傾向を示した。三叉神経節ニューロンに発現する NCX isoforms は樹状突起や軸索,細胞体といった神経組織全体に分布しており,また感覚神経全体に局在 した。reverse mode NCX を介した細胞内 Ca2+ 濃度([Ca2+ ]i)の増加は細胞外 Ca2+濃度依存性であり,その [Ca2+ ]iの増加は NCX 阻害薬によって濃度依存性に減少した。さらに,電位依存性 Na+チャネル(VDNC)の不 活性化反応速度は,NCX 阻害薬の投与で電位依存性に延長した。三叉神経節ニューロンにおける NCX は, VDNC と共役することで,顎顔面領域における侵害受容性疼痛や神経因性疼痛の調節に関係する可能性が示 唆された。 本審査委員会では本研究の妥当性,論文の解釈などを中心に以下のような質疑が行われた。1.今回の研究 の臨床的意義,2.real-time PCR の Primer の選択理由,3.real-time PCR の結果についての考察,4.免 疫組織化学染色にマーカーとして使用した抗体の選択性について,5.痛みの受容のメカニズムと本研究との 関連について,6.本研究に用いた電位依存性 Na+チャネル阻害薬として,臨床上一般的なリドカインではな く,なぜテトロドトキシンを使用したのか,などの質問があった。これらの質問に対する回答として,1.今 回の検討はあくまで生理学的条件での結果であり,実際に疼痛調節機序にどの程度関与しているのかは, knockout モデルや疼痛モデル等を使用し,さらなる検討が必要である。2.過去の報告で使用されているた め参考文献として追記する。3.過去の NCXmRNA の発現に関する報告と比較して考察に追記する。4. NF-H や IB4は特異的なマーカーである。CGRP は様々な細胞に存在するが,特に peptidergic C neuron に多 く存在する。5.侵害刺激や神経障害によって放出された神経伝達物質は,細胞膜上の受容体やイオンチャネ ルを介して Ca2+ の流入を引き起こし,脱分極を生じさせるので,本研究で明らかにしたメカニズムがその一 部に関与しているものと思われる。6.実験の性質上細胞外からのアプローチになるので,細胞内に結合して 薬理作用を発現するリドカインではなく,細胞外に作用部位を持つテトロドトキシンを使用した。などと説明 された。また,論文の文章構成や英語表現などについての指摘があり,修正が行われた。 以上より,本研究論文は今後のペインコントロール技術の発展のための基盤をなすものと評価された。 本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与するものであり,学位授与に値するものと判定さ れた。 歯科学報 Vol.113,No.4(2013) 473 ―125―