Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
塩酸デクスメデトミジンの持続投与が口腔組織血液量に
及ぼす影響
Author(s)
佐塚, 祥一郎
Journal
歯科学報, 115(3): 271-271
URL
http://hdl.handle.net/10130/3686
Right
口腔外科手術領域は血管が豊富であり,口腔という狭い範囲で行われるため出血のコントロールが重要であ る。本講座では長年に渡り全身麻酔中の口腔組織血流量を制御するための研究を行ってきた。本研究で使用し た塩酸デクスメデトミジン(DEX)はα2受容体作動性の鎮静薬であり,主に集中治療室での鎮静を目的と して使用されている。α2受容体のサブユニットは α2A,α2B,α2C に分類され,α2A は鎮静,鎮痛,α 2B は血管収縮,α2C は抗不安作用を示すといわれている。また DEX が頭頸部組織血流に与える影響を研 究した報告では,DEX は脳血流量を低下させ,頭頸部手術における出血量が減少した。以上のことから DEX は頭頸部組織血流に影響をあたえることは明らかである。我々は DEX が口腔組織血流量を減少させると想定 し,DEX が全身麻酔中に口腔組織血流量に与える影響とメカニズムについて検討を行った。 日本白色家兎を麻酔導入し気管挿管を行った後,セボフルラン群(S群),プロポフォール群(P群)に分 けて麻酔維持を行った。測定項目は一般的なバイタルサインに加えて舌,下顎骨,上下顎歯槽粘膜,咬筋の血 流を測定した。循環が安定したことを確認した後に DEX を6.0μg/kg/h で10分間の初期負荷投与を行い 0.2,0.4,0.6μg/kg/h で1時間毎測定値を観察した。 結果はS群,P群共に口腔組織血流量を有意に減少させ,DEX の交感神経の活動抑制,末梢血管収縮作用 と心拍出量の減少によるものと推測することができた。また循環に与える影響は口腔組織血流に与える影響と 比較して軽度であった。 本研究結果より DEX は循環動態に大きな影響を与えることなく,有意に口腔組織血流量を減少することが 可能であり,口腔外科手術における出血を抑制する可能性が示唆された。 現在 DEX の適応は拡大し,局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静に使用することが可能と なった。DEX には鎮静のみではなく鎮痛,唾液分泌抑制作用があり,手術を含めた歯科治療時に有用な効果 と考えられ今後の研究,使用法により有効に使用できる可能性がある。本研究により頭頸部手術における麻酔 管理において DEX が有用である可能性が示唆された。 <受賞論文>
Dexmedetomidine dose-dependently decreases oral tissue blood flow during sevoflurane and propofol anesthesia in rabbits.
Shoichiro Sazuka, Nobuyuki Matsuura, Tatsuya Ichinohe
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery.2012;70⑻:1808−1814.
≪プロフィール≫ <略 歴> 平成19年3月 東京歯科大学歯学部卒業 平成20年4月 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科麻 酔学専攻)入学 平成24年3月 同 修了 平成24年4月 東京歯科大学市川総合病院麻酔科臨床専 修医 平成26年4月 東京歯科大学歯科麻酔学講座助教 現在に至る <研究テーマ> 塩酸デクスメデトミジンが口腔組織血流量に与える影響