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西太平洋地域のデング

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南太平洋海域調査研究報告 No.36 (2002年12月)

OCCASIONAL PAPERS No.36 (December2002)

西太平洋地域のデング

Dengue in the Western Pacific

森田公一

Kouichi MORITA

53

長崎大学熱帯医学研究所病原体解析部門分子構造解析分野

Department of Virology, Institute of Tropical Medicine, Nagasaki University

デングウイルスは蚊で媒介される急性ウイルス感染症であり現在,ほとんどの熱帯地 域の国々において流行を繰り返しており,その対策は熱帯地域における保健衛生上の重 要課題の1つである.世界保健機関(WHO)は世界人口の約半分にあたる25億人の人々 が感染の危険がある地域に居住し毎年2000万人におよぶ感染者が発生していると見積 もっている.デングウイルスの主たる媒介蚊は熱帯シマカ(Aedesaegypti)であり,こ の蚊がヒトの生活の場(都会や集落)で増殖する習性があること,およびヒト蚊-ヒト のサイクルでウイルスが増幅・媒介される事から(図1),デングウイルス感染症は熱 帯地域の人口密集地において猛威をふるっており患者数・流行地域ともに増加・拡大し ている. デングウイルスはヒトに感染した場合,比較的穏やかに経過する発熱・発疹を主症状 とするデング熱と重症で致死的な出血性疾患であるデング出血熱という2つの病型を示 す.デング熱は古くから知られた疾患でありすでに19世紀にはアメリカ,アフリカ,ア ジア,太平洋諸島の熱帯地域の国々での流行が記載されている.一方のデング出血熱は 1953年にフィリピンのマニラで初めて確認され,1954年にはタイ国のバンコクでも流行 が確認された.以来,デング出血熱の流行地域はデング熱とともに継続的に拡大し,現 在ではほとんどの熱帯アジアの国々,太平洋諸島国,中南米,カリブ海諸国で多数の患 者をだしている. (図2)

/ヒトヽ

経卵感染

サルごUき':ゾご卵

図1 デングウイルスの生活環 o o o o o o o     0 0     0     0   人 U A U 0 0 o o o o o o o o o o o o o o 蝣 *   C M O 0 0 C O   -t f C M 図2 9 1  92  93  94  95  96  97 wHOに報告された西太平洋地域のデング患者数 (1991 -1997)

(2)

54 森田公一 南太平洋の島国では近年の航空機によるアジアの国々との交流の拡大により頻繁にデ ングの流行が発生するようになっておりデング1型と2型が交互に流行を繰り返してい る(表1).2000年からはデング1型の流行が発生しておりフランス領ポリネシア(タヒ チ)では人口の10%以上が感染しており,デング出血熱による死者も報告されている (表2 )これらのデータは太平洋の国々が組織するPacific Community(PC)のホームペー ジ上で閲覧することができる(保健衛生情報ページ;http!//www.spc.org.nc/phs/).なお pcの本部はニューカレドニアに設置されている. 表2 2000- 年の西太平洋諸島の国と地域におけるデングの流行状況 表1南太平洋の島国におけるデンクの流行 1971-74  Dengue 2 1974-78  Dengue 1 1988 - 89  Dengue 1996 - 99  Dengue 2000 - 02  Dengue 2 -    . I      

-Country/Area Population Cases(deaths) serotype American Samoa   64,000    74(0) nt French Polynesia  233 ,000  30,400(6) DI New Caledonia   212,000   15 (0) DI Palau        19,000  1 ,120(1) DI Samoa       1 69 ,000   200(0) DI Tokelau        2 ,000    60 (0) nt (nt:not tested) デングウイルスには4つの血清型即ち,デング1型, 2型, 3型, 4型が存在する. 1つの血清型に感染した場合,その血清型のデングウイルスに対する終生免疫が得られ るが,この免疫は他の血清型のデングウイルスには無効である.即ちヒトは4回デング ウイルスに感染する可能性がある.ほとんどの流行地においてはこれらの4つのデング ウイルスが混在して流行を繰り返しておりこれらの地域では住民は2回以上のデングウ イルス感染を経験する.このことがデングの病態を極めて複雑なものにしている.また ほとんどのデング出血熱はデングウイルスの2回目の感染で発症するのであるが,出血 熱の発症機序はいまだ不明のままであり,ワクチンもなく予防方法はコミュニティーレ ベルでは蚊の防除,個人レベルでは蚊に刺されないような衣服や,蚊忌避剤の使用をす ることのみであり,デングの対策は行き詰まりを見せているのが現状である. 以上のように西太平洋の諸島諸国においてもデングは極めて重要な感染症であって, 今後とも感染者と重症者の数は増加することが予測され,デングとその媒介蚊のサーベ イランス体制の改善と媒介蚊防除対策の強化が必要である.

参照

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