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私の願う図書館像:仏法と人間探求の宝蔵

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Academic year: 2021

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大谷大学図書館・博物館報(第26号) ( 5 )  私はこれまでに国内外のそんなに多くの図 書館を見学したり利用してきたわけではない が、今停年退職を前にして、とりわけ「大学 図書館」についての感想や願うところを少し 記してみたい。  元来、大学図書館というものはその大学の 心臓部とも頭脳ともいうべきもので、図書館 を見ればその大学がどんな大学であるか大略 見当することができると言われてきた。つま り、大学図書館は大学の建学の精神、教育・ 研究の理念と目的、創立以来の歩みなどその 大学の根本性格や全体像を反映するものであ るということであろう。それゆえ、欧米の大 学などではとくに図書館の充実ということに 力が注がれてきた。そしてとくに学生の場合 には、勉学するのは「図書館で」という意識 や習慣がすっかり定着しているように思われ る。また、日本においても伝統のある大学は 欧米のそうした基本理念に学び、大学図書館 の充実に努力を傾注してきた。とりわけ、人 文系の学部・学科をもつ大学はその方向で大 学における教育と学問の発展を図ってきたと 言ってよいであろう。  ところが、日本においては 戦後、と くに 1970年代以降の高度成長期以来今日に至るま で、理工系並びに実学系の四年制大学や短期 大学が急増するに伴って、新設のそうした大 学・学部は従来の大学とは その理念を異に し、そこにいわば「大学の産業化」ともいう べき現象が生起した。その結果、図書館は必 ずしも大学の心臓部でもなければ、個性や全 体像を映すものでもなくなり、したがって大 学と図書館の関係も従来とは相異し、また大 学全体における図書館そのものの地位や役 割・機能なども以前のそれとは必然的に変化 せざるをえなくなったとも言えよう。それに 加えて、近年の IT化の進展は図書館の電子 化を一層促進させ、図書館本来の理念やあり 方そのものを一変させるほどの大きな変革を もたらしている。こうした趨勢の中で図書館 はますます多様化することが予想されるが、 大学の図書館が今後どのように変化していく にしても、大学図書館には少なくとも二つの 大きな役割・機能と意義が求めれれるであろ うし、また私はそのことを大学図書館のある べき像として願いたい。  一つは、大学図書館はその大学が設置する 学部・学科の教育と研究に必要な情報を入手 しうるだけの蔵書・諸資料を所有しているこ とが望まれる。とはいっても、「必要な情報」 とは何か、またそれを如何ほど所蔵すればよ いかなど の問題は絶えず存在するのであっ て、それらは個々の大学の規模や財政的制約 によって実際には決定されている。し かる に、この種の問題は基本的には「情報の量」 に関することであり、さらにはそれと連動し た図書館の規模や施設・設備に関わる事柄で

私の願う図書館像:仏法と人間探求の宝蔵

教授

 築 山 修 道

(比較思想・国際文化学)

(2)

( 6 ) 大谷大学図書館・博物館報(第26号) ある。そして一般論から言えば、こうした問 題については、現代の大学の事情を考慮する ならば、各大学において可能な限り時代的・ 社会的動向に対応した蔵書数の充実、種々の 環境整備、サービ スの向上・改善などが図ら れるべきであろう。こうした観点から、私が 今までに経験した最も印象深い図書館は英国 ケンブ リッジ 大学の大学図書館(University Library)である。私は1994年4月から一年間 当大学図書館の使用を許可されたのである が、その広大さと蔵書の充実、サービ スの質 の高さなどに度肝を抜かれたことを鮮明に記 憶している。しかし、そうしたケンブリッジ 大学の図書館といえども、必要な文献・資料 が必ずしも十分に所蔵されているわけではな いであろう。また私にとっては、広大すぎた がために、利用し易かったとも言い難いので ある。  大学図書館に要求される他のもう一つの肝 要なことは、総じて情報の量に関わる規模の 大小、設備・サービ スなどの充足度とは別次 元の、いわば図書館自体の質に関わる要件で あろう。私の経験では、ケンブリッジ大学の King’sCollege Libraryが そ うし た 図 書 館 で あったように思われる。それは、図書館が大 学の心臓部であり、建学の精神と教育・研究 の理念・目的を反映すべきであるという類の 事柄であって、その大学独自の個性がそこに 具現され象徴化されうる処であるという問題 である。具体的に言えば、たとえば、大谷大 学図書館とは何か、如何にあるべきであるか という問題意識に関わることである。大谷大 学は仏教精神、とりわけ真宗の教法に基づく 大学であり、かかる観点から広く深く人間探 求を遂行する学場であるとするならば、大谷 大学図書館は実際にそのことを具現すべき図 書館でなければならないであろう。つまり、 幾世代にも亙って先人たちが心血を注いで究 明せんとしてきた仏教の真理と、東洋西洋の 両世界において遂行されてきた人間探求の果 実がそこに蔵されている処である。それゆえ にそれは、単に種 々の情報提供の場ではな く、仏教との出遇いや人間の真実、さらには 真の自己への覚醒を可能にする場処とならな ければならないであろう。象徴的にいえば、 大谷大学図書館は「仏法と人間探求の宝蔵」 となるべき処であろう。  私は大谷大学図書館がそうあって欲しいと 願うものである。

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