岡山県立大学保健福祉学部紀要 第27巻1号2020年 105 〜 114頁 http://doi.org/10.15009/00002369 Ⅰ.問題の所在 現在、核家族化・少子化によるひとり遊び児童の 増加、共働き家庭やひとり親家庭の増加による留守 番家庭児童の増加、地域のつながりの希薄化などか ら地域の子ども同士が触れ合う機会が減少し、さら に、安心して遊べる環境が減少するなど子どもを取 り巻く社会環境は悪化の傾向にある。子どもが大人 になっていく「育ち」は、日々の家庭や学校、地域 での生活体験や経験の中で少しずつ積み重ねられる ものである。そして、「育ち」の積み重ねには、子 ども同士のかかわりだけでなく、子どもにかかわる 大人の存在が必要となってくる。しかしながら、近 年、学校を終えた放課後は習い事や学習塾に通う子 どもの増加や遊び場所の減少から、子どもが遊びを 通して学ぶ人間関係、規範体験の不足、大人のかか わりを通して学ぶ体験や経験が不足している状況が ある。子どもの育ちの支援を考えたとき、子どもの 放課後の体験や経験を豊かにしていく場所の確保だ けでなく、体験や経験にかかわっていく大人が必要 となってくる。 児童福祉法第 6 条の 3 第 2 項では、『放課後児童 健全育成事業とは、小学校に就学している児童で あって、その保護者が労働等により昼間家庭にいな いものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を 利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健 全な育成を図る事業をいう。』としている。すなわ ち、放課後に子どもの健全育成を図ることを目的と する事業である。放課後に子どもの健全育成を目的 とする取り組みは、遡ること第 2 次世界大戦前から 行われている。放課後の子どもを対象とした事業 は、社会の情勢の変化や子育てニーズに合わせ、 1960 年代には、文科省(現文部科学省)が「留守家 庭児童会補助事業」を実施した。1980 年代後半に入 ると厚生省(現厚生労働省)が「都市児童健全育成 事業」として児童館を中心に事業を展開し、1991 年 に「放課後児童対策事業」を、1998 年には「放課後 児童健全育成事業」として児童福祉法に位置づけら れ、国の責務で行う事業として発展した。さらに、 2015 年には「子ども子育て支援制度」として、対象 を保護者の就労以外にも疾病や介護にまで広げて、 小学校全学年とした。以上のように放課後の子ども を対象とした事業の変遷をみても、社会や子育て環 境の変化に伴う放課後における子どもの育成ニーズ の高まり、育成支援の重要性は明らかである。 放課後児童クラブは保育園利用の増加と同様に、 共働き家庭やひとり親家庭の増加に伴い利用児童数 * 岡山県立大学保健福祉学部保健福祉学科准教授 (mail:[email protected]) ** 中国学園大学子ども学部子ども学科准教授 (mail:[email protected])
放課後児童クラブにおける支援効果と課題
周防美智子
*中典子
** 要旨:本研究は、放課後児童クラブの支援効果と課題を検討するために、放課後児童クラブの子ども支援の実 態を明らかにした。調査は、岡山県内の放課後児童クラブ 7 カ所に所属する支援員 13 人を対象として、子ど も支援や子育て支援の状況について半構造的インタビューを行った。分析は、M-GTA(Modified grounded theory approach)を用いた。インタビュー調査の分析から 25 概念、7サブカテゴリーを見いだし、そこか ら、『支援に必要なこと』、『社会資源との連携・協働』、『支援内容の向上』の 3 カテゴリーを作成することが できた。サブカテゴリーには、「自立への働きかけ」、「支援計画の作成」、「放課後児童クラブの役割提案」、 「専門性の向上」など、放課後児童クラブの支援目標や支援内容がキーワードとして存在している。『社会資源 との連携・協働』は支援の向上、支援効果に影響していることが明らかとなった。 キーワード:子ども支援、専門性の向上、小学校、保護者、連携・協働が増加傾向にある。2019 年 5 月現在、公営 8,592 か 所、民営 17,289 か所の 25,881 か所の事業所が運営 をしている。登録児童数は 1,299,307 人であり、前 年に比べ 64,941 人増加している。2019 年度の全国 の児童数は約 637 万人であり、約 5 人に 1 人が放課 後児童クラブを利用していることになる。また、放 課後児童支援員の数は98,905人で、前年に比べ8,136 人増加している。放課後児童支援員の主な資格の状 況は、保育士、教育職員免許状を有する者がそれぞ れ約 25%で指導員全体の半数を占めるほか、2 年以 上児童福祉事業に従事した者が 32.5% を占めてい る。また、認定資格研修の受講者は全体の約 7 割強 であり、支援員の専門性に向けた意識の高まりが見 受けられる注1)。 放課後児童クラブは、単なる親が仕事を終えるま での受け皿としての子育て支援の場だけではなく、 子どもの『健全育成』を目標とした子ども支援の場 である。運営の基盤となるところに「児童福祉法」 があり、そして支援員の子どもへの支援は『子ども の権利(子どもの最善の利益)』の視点に立ったも のでなければならない。近年、揺らぎが見える子ど もの育ちに対し、放課後児童クラブは『健全育成』 を保障していく場であり、子どもが育つ環境を提供 する重要な場でなければならない。そして、放課後 児童クラブは、家庭教育と学校教育をつなぎ、家庭 教育と学校教育を補完する地域教育の第一義的な役 割を担っていくことが求められていると考える。 そこで、本研究では、子育て家庭からのニーズが 高まる放課後児童クラブの支援効果と課題を検討す るために、放課後児童クラブの子ども支援の実態を 明らかにする。 Ⅱ.研究方法 1.調査方法 2018 年 9 月〜 2018 年 11 月までの間に、岡山県 下における放課後児童クラブ 7 か所(公立公営 5 か 所、民立民営 2 か所)に所属する支援員 13 人(表 1)に対して、子ども支援や子育て支援(親支援) の状況、学校との関係などについて半構造化インタ ビューを行った。 また、支援員の経験年数による支援内容を把握す るために、1 か所の放課後児童クラブにおいては経 験年数の違う 7 名を対象としてインタビュー調査を 2.分析方法
分析は、M-GTA(Modified grounded theory approach) を用いた。分析に M-GTA を用いた理由は、データ の切片化をせず文脈でとらえることで意味のまとま りを抽出する分析であり半構造化インタビューに有 効だからである。そこで、インタビューから抽出し た概念と概念間の関係を示すことで、人間と人間が 社会的相互に作用することに関わる行動の説明と予 測ができ、本研究の目的となる放課後児童クラブの 支援効果と課題を検討しやすいと考えた。 Ⅲ.分析結果 1.放課後児童クラブの支援状況 インタビュー内容にもとづいて概念化すると、25 《概念》ができた。それらにもとづいて類似例と対 極例を検討して、7[サブカテゴリー]を作成する ことができた。[サブカテゴリー]をもとに【カテ ゴリー】を作成すると、3【カテゴリー】を作成す ることができた。 表2に放課後児童クラブにおける分析結果から支 援状況について示した。 いては経験年数の違う 7 名を対象としてインタビュー調査を実施した。 表 表 11 調調査査対対象象者者のの属属性性 放課後児 童クラブ 支援員経験 年数 登録児童数 設置・運営 A 17 年目 約 250 人 公立公営 B 7 年目 約 160 人 公立公営 C 4 年目 48 人 民立民営(NPO) D 21 年目 108 人 公立公営 5 年目 9 年目 3 年目 1 年目 10 か月 8 か月 E 40 年目 135 人 公立公営 F 4 年目 約 160 名 公立公営 G 20 年目 約 130 名 民立民営 2 2..分分析析方方法法
分析は、 M-GTA(Modified grounded theory approach)を用いた。分析に M-GTA を用い た理由は、データの切片化をせず文脈でとらえることで意味のまとまりを抽出する分析で あり半構造化インタビューに有効だからである。そこで、インタビューから抽出した概念と 概念間の関係を示すことで、人間と人間が社会的相互に作用することに関わる行動の説明 と予測ができ、本研究の目的となる放課後児童クラブの支援効果と課題を検討しやすいと 考えた。 Ⅲ..分分析析結結果果 1 1..放放課課後後児児童童ククララブブのの支支援援状状況況 インタビュー内容にもとづいて概念化すると、25《概念》ができた。それらにもとづいて 類似例と対極例を検討して、7[サブカテゴリー]を作成することができた。[サブカテゴ リー]をもとに【カテゴリー】を作成すると、3【カテゴリー】を作成することができた。 表2に放課後児童クラブにおける分析結果から支援状況について示した。 表 1 調査対象者の属性
放課後児童クラブにおける支援効果と課題 周防美智子 表2 放課後児童クラブの支援状況 カ カテテゴゴリリーー ササブブカカテテゴゴリリ-- 概概念念 定定義義 イインンタタビビュューーかからら具具体体例例 《子どもが過ごしやすい 環境の構築》 〈子どもの状況に合わせて落ち着く空間をつくる ようにしている〉 「子ども中心は、ずれていない」「学童で生活するうちに子ども が学童を続けたいと思えるように支援したい」 《自立への働きかけ》 〈基本的な生活習慣を身につけることができるように支援する〉 「1年生でも家に帰ってただいまと言って,手を洗う習慣ができ ればと思う」「学童で手洗いなど生活する中で必要なことをでき るようにする」 《子ども同士のつながり づくり》 〈子ども同士がお互いのことを思いあうことのでき る関係づくりに努める〉 「いるだけで仲間みたいな感じ,学童にいるだけで毎日遊ぶ仲 間ができるといい」「同学年だけでなく,上級生が下級生をサ ポートするようにする」 《親子の関係づくり》 〈一緒に子育てをする気持ちで親子関係を調整する〉 「楽しかったので経験しようという思いが持てるようになり,親 に楽しんでもらっている」「親が楽しんでいる姿を子どもが見 る,クラブの中で親子のコミュニケーションのきっかけとなる」 《年間指導計画にもとづ く支援の実施》 〈年間指導計画のもとで支援をしている〉 「指導案は年間計画である」「運営指針ができてから計画を 作ってきた」 《支援計画の作成》 〈放課後児童クラブでの支援充実のために支援計画を作成する必要がある〉 「支援計画をちゃんとしなくては連携がとれない」 《個別の支援計画の作 成》 〈診断が下りている子どもを対象に個別の支援計 画を立てる〉 「長期的なものを記録に書いて支援計画を立てる」「診断が下 りている子どもの支援計画を書いている」 《活動記録の作成》 〈小学校や他の関係機関と連携するためには活動記録を作成する必要がある〉 「連携をするには記録がないといけない」「記録と支援計画をちゃんとしなくては連携がとれない」 《相談支援》 〈保護者の思いを理解して情報提供するようにしている〉 「(保護者と)一緒に子どもの問題の解決を目指す」「学童でケアをしてくれることを知らない保護者もいっぱいいる」 《信頼関係を築く》 〈放課後児童クラブで子どもが過ごすことが楽し いと思えば通わせる価値を見出せるように保護 者に働きかける〉 「放課後児童支援員と親とのつながりを大切にする」「保護者 の人々が社会的なことをレクチャーしてくれた」 《保護者同士をつなぐ》 〈保護者同士をつなげることを意図的に行っている〉 「困っている時は助ける,助けてという関係をつくっていきたい」「意図して親睦会をして定期的につながり,仲良くなる」 《放課後児童クラブと小 学校の支援目標は同じ》 〈放課後児童クラブも学校も子ども支援で目指すところは同じである〉 「放課後児童クラブにも(小学校にも)自主性,社会性,主体性,創造性が運営指針にある」 《学校教育の理解》 〈小学校での自主性は決められたことを自分たちですることであるが,放課後児童クラブでは活動 を自分たちで作り上げることを意味する〉 「宿題は大事であるがそんなにしないといけないのかと思って しまうこともある」 《連携の工夫》 〈小学校が話をできる放課後は放課後児童クラブが忙しく、連携が難しいので工夫が必要である〉 「小学校が話をできる放課後は学童が忙しい」「担任に伝えているが帰ってこないので情報共有が難しいことがある」「情報を教えてもらお うとしても学校は学校なのでと言われてしまうので工夫が必要」 《放課後児童クラブの役 割提示》 〈小学校に対して放課後児童クラブについての認 知度を高める必要がある〉 「ちゃんとした組織と思われていないのかもしれない」 《小学校との情報共有》 〈小学校と懇談会を開催したり,文書を交わしたりして情報共有する〉 「先生も学童を見に来るので往来はある」「放課後児童クラブ が学校へ子どもの様子を見に行くこともある」「放課後児童クラ ブと学校の間で子どもについての情報共有はできている」 《小学校・保護者・放課後 児童クラブ間の情報共 有》 〈学校と放課後児童クラブとが情報共有をすれば 保護者としては安心である〉 「学校と放課後児童クラブとのすり合わせをすれば保護者とし ては安心である」 《地域・他機関との協働》 〈放課後児童クラブは地域の人々や地域の機関・施設との協働のもとで成り立っている〉 「連合町内会長,主任児童委員(民生委員),地域,PTA,校長,教頭,議員さんも学童の運営委員に入っている」 《専門性の向上》 〈放課後児童クラブの放課後児童支援員が専門職として認められてきている〉 「子どもを視点において見てくると変わってくると思う」「民間(のクラブ)も研修を受けられるようになった」 《支援員間の情報共有》 〈集まる機会を利用して支援員間で情報共有する〉 「打ち合わせは主任6人が一緒に食事をして会議をし,各施設のすり合わせをする」「施設がわかれているが共有した方がいいと思うので ミーティングで日々気になる子どもについて話し合う」 《先輩支援員から学ぶ》 〈先輩支援員は積極的に後輩を率いていく力によ り,みんなが一緒にやりたい,やろうと思うように なる〉 「先輩から案をもらいながらクラブをよくしていきたいと思う」 《他専門職から学ぶ》 〈障害・発達などについて他専門職から学ぶ必要がある〉 「障害のあるなしに関わらず,抱えているものやその子の成長があるので,話ができるといいと思う」 《記録の定着》 〈記録のとり方を検討し、記録することを継続していく必要がある〉 「どのやり方がいいのかはこれからである」 《就労システムの検討》 〈放課後児童クラブ支援員のための就労システムづくりが必要である〉 「他のクラブと協力して給与面を一緒にしていこう,保障していこうという動きがある」 《残業時間の削減》 〈勤務時間内に記録、ミーティングを行う〉 「勤務時間内に書いてもらえればと思う」「その日のことについては各施設がミーティングをして記録する」 【1 支援に 必要なこ と】 【2 社会資 源との連 携・ 協働】 【3 支援内 容の向上】 [7 就労システ ムの構築] [6 放課後児童 支援員の資質 向上] [3 保護者との かかわり] [1 支援目標] [2 支援計画] [5 関係機関と の連携・協働] [4 小学校との 関係づくり]
カテゴリーは、【1 支援に必要なこと】、【2 社会 資源との連携・協働】、【3 支援内容の向上】の3つ が抽出された。それぞれの【カテゴリー】における 〔サブカテゴリー〕、《概念》、〈定義〉、インタビュー の具体例について以下に説明する。 (1)【1 支援に必要なこと】について サブカテゴリーとして、[1 支援目標]、[2 支援計 画]があり、[1 支援目標]には、《子どもが過ごし やすい環境の構築》、《自立への働きかけ》、《子ども 同士のつながりづくり》、《親子の関係づくり》の概 念が、〔2 支援計画〕では、《年間指導計画にもとづ く支援の実施》、《支援計画の作成》、《個別の支援計 画の作成》、《活動記録の作成》が明らかとなった。 [1 支援目標]の概念における、《子どもが過ごし やすい環境の構築》は、〈子ども一人一人の状況に 合わせて落ち着く空間をつくる〉ことであり、イン タビューの具体例には「学童で生活するうちに子ど もが学童を続けたいと思えるように支援したい」と いう支援員の目標が語られた。《自立への働きかけ》 は、〈基本的な生活習慣を身につけることができる ように支援する〉ことで、具体例には「学童で手洗 いなど生活する中で必要なことをできるようにす る」など、放課後児童クラブの目標があった。《子 ども同士のつながりづくり》は、〈子ども同士がお 互いのことを思い合うことのできる関係づくりに努 める〉ことで、具体例には「同学年だけでなく、上 級生が下級生をサポートするようにする」という放 課後児童クラブにおける子どもの体験、活動によ る健全育成という目標が見られた。また、《親子の 関係づくり》は、〈一緒に子育てをする気持ちで親 子関係を調整する〉ことで、「親が楽しんでいる姿 を子どもが見る、クラブの中で親子のコミュニケー ションのきっかけとなる。」という子育て支援の目 標があがった。 【2 支援計画】では《年間指導計画にもとづく支 援の実施》があり、〈年間指導計画のもとで支援を している〉で、具体例では「指導案は年間計画であ る」という放課後児童クラブの実践があがった。 《支援計画の作成》は、〈放課後児童クラブでの支援 充実のために支援計画を作成する必要がある〉とい うもので「支援計画をちゃんとしなくては連携がと れない」の具体例があった。また、《個別の支援計 個別の支援計画を立てる〉ことで、語りには「長期 的なものを記録に書いて支援計画を立てる」があ り、支援員としての実践の工夫が見られた。《活動 記録の作成》は、〈小学校や他の関係機関と連携す るためには活動記録を作成する必要がある〉ことで 「連携をするには記録がないといけない」という連 携を意識した語りがあった。 【支援に必要なこと】においては、放課後児童ク ラブの運営指針を踏まえた育成支援の取り組みと支 援達成のための工夫が明らかになった。放課後児童 クラブの運営指針は、放課後児童クラブにおける育 成支援内容に好影響を与えたことが語りの中で示唆 された。 (2)【2 社会資源との連携・協働】について サブカテゴリーとして[3 保護者とのかかわ り]、[4 小学校との関係づくり]、[5 関係機関と の連携・協働]がある。 [3 保護者とのかかわり]には、〈保護者の思いを 理解して情報提供するようにしている〉こととして 《相談支援》があり、「(保護者と)一緒に子どもの 問題の解決を目指す」という具体例があった。そし て、《信頼関係を築く》は、〈放課後児童クラブで子 どもが過ごすことが楽しいと思えば通わせる価値を 見出せるように保護者に働きかける〉ことで、「支 援員と親とのつながりを大切にする」ようにしてい るなどの具体例があがった。さらに、《保護者同士 をつなぐ》は、「困っている時は助ける、助けてと いう関係をつくっていきたい」という具体例があ り、〈保護者同士をつなげることを意図的に行って いる〉というものであった。 [4 小学校との関係づくり]では、《放課後児童ク ラブと小学校の支援目標は同じ》、《学校教育の理 解》の認識が重要であることが明らかとなった。双 方の子ども支援における目的は同じであるが、〈小 学校での自主性は決められたことを自分たちでする ことであるが、放課後児童クラブでは活動を自分た ちで作り上げる〉という支援の違いがあることを感 じているようすが見られた。また、「小学校が話を できる放課後は放課後児童クラブが忙しい」といっ た時間的制約があることから《連携の工夫》が必要 と語る。支援員が「担任に伝えているが返事が帰っ てこないので情報共有が難しいところがある」、「情
放課後児童クラブにおける支援効果と課題 周防美智子 われてしまうので工夫が必要」という課題の具体例 があがった。また、《放課後児童クラブの役割提示》 は、〈小学校に対して放課後児童クラブについての 認知度を高める必要がある〉ことであり、その重要 性を感じていた。《小学校との情報共有》は、〈小学 校と懇談会を開催したり、文書を交わしたりして情 報共有する〉ことであり、「先生も学童を見に来る ので往来はある」、「放課後児童クラブが学校へ子ど もの様子をみに行くこともある」、「放課後児童クラ ブと学校の間で子どもについての情報共有はできて いる」という語りが見られた。 [5 関係機関との連携・協働]では、《小学校・保 護者・放課後児童クラブ間の情報共有》があり、 「学校と放課後児童クラブとのすり合わせをすれば 保護者としては安心である」という具体例があっ た。《地域・他機関との協働》では、「連合町内会 長、主任児童委員(民生委員)、地域、PTA、校長、 教頭、議員さんも学童の運営委員に入っている」と いう具体例があがった。 【2 社会資源との連携・協働】のキーワードとし て小学校、保護者、地域、他機関が示唆されるとと もに、連携、協働の課題と重要性が明らかになった。 (3)【3 支援内容の向上】について サブカテゴリーとして、[6 放課後児童支援員の 資質向上]、[7 就労システムの構築]がある。 [6 放課後児童支援員の資質向上]における《専 門性の向上》は、〈放課後児童クラブの放課後児童 支援員が専門職として認められてきている〉現状が あり、「子どもを視点において見てくると変わって くると思う」支援員の意識が語られた。また、集ま る機会を利用して《支援員間での情報共有》をする ために「打ち合わせは主任が一緒に食事をして会議 をし、各施設のすり合わせをする」、「施設が分かれ ているが共有した方がいいと思うのでミーティング で日々気になる子どもについて話し合う」などの工 夫をしていることが明らかとなった。《先輩支援員 から学ぶ》ことでは、〈先輩支援員は積極的に後輩 を率いていく力により、みんなが一緒にやりたい、 やろうと思うようになる〉ことで、「先輩から案を もらいながらクラブをよくしていきたいと思う」な どの前向きな具体例が経験年数の浅い支援員からあ がった。《他専門職から学ぶ》は、〈障害・発達など について他専門職から学ぶ必要がある〉ことで、 「障害のあるなしに関わらず、抱えているものやそ の子の成長があるので、話ができるといいと思う」 子ども支援に対する学びへの意思が語られた。《記 録の定着》とは、〈記録のとり方を検討し、記録す ることを継続していく必要がある〉ことで、「どの やり方がいいのかはこれからである」という課題が 語られた。 [6 就労システムの構築]において、《就労システ ムの検討》として、「他のクラブと協力して給与面 を一緒にしていこう、保障していこうという動きが ある」。また、《残業時間の削減》に向けて〈勤務時 間内に記録、ミーティングを行う〉。そのために、 「その日のことについては各施設がミーティングを して記録する」、「勤務時間内に書いてもらえればと 思う」などの工夫が見られた。 【支援内容の向上】においては、支援員が支援の 向上を目指し、支援員が専門性の向上を図るための 工夫を行っていること、また就労システムを構築す ることが専門性の向上や支援員の専門性の認知につ ながることなどが明らかとなった。 2.図解化とストーリーライン 概念化したものをもとに図解化すると(図 1)の ようになった。カテゴリーの【1 支援に必要なこ と】、【2 社会資源との連携・協働】、【3 支援内容の 向上】は、それぞれに関連をもち、放課後児童ク ラブの支援の効果、支援の展開に影響していると 考えられる。とくに、【2 社会資源との連携・協働】 は、放課後児童クラブの支援効果や支援内容に影響 を与え、放課後児童クラブの専門性の向上につなが ると考えられる。また、サブカテゴリーにおける概 念の関連を見ると、≪自立への働きかけ≫、≪個別 の支援計画の作成≫、≪放課後児童クラブの役割提 示≫、≪専門性の向上≫などキーワードとなる概念 が存在していることが分かる。サブカテゴリーに存 在する概念は、効果的な支援(活動)につながる効 果的支援要素とも言える。
Ⅳ.考察 研究結果から見えてきた、「放課後児童クラブの 現状と支援効果」、「放課後児童クラブと家庭・学 校・地域の連携・協働」、「放課後児童クラブにおけ る健全育成支援に向けた課題」に着目し考察する。 1.放課後児童クラブの現状と支援効果 放課後児童クラブ運営指針(2015 年 4 月)におい て放課後児童クラブの育成支援の内容に「放課後児 童クラブは、年齢や発達の状況が異なる多様な子ど も達が一緒に過ごす場である。放課後児童支援員等 図1 概念化の図解化 [7 就労システムの構築] [6 放課後児童支援員の資質向上]
【1 支援に必要なこと】
[5 関係機関との 連携・協働] [4 小学校との関係 づくり] [1 支援目標] 《 子どもが過ごしやすい環境の構築》 《親子の関係づくり》 《 子ども同士のつながりづくり》 《 自立への働きかけ》 《放課後児童クラブの役割提示》 《 連携の工夫》 《 学校教育の 理解》 《 放課後児童クラブと小学校の支援目標は同じ》 《 地域・他機関との協働》 《 小学校・保護者・ 放課後児童クラブ間の 情報共有》 《小学校との情報共有》 《 残業時間の削減》 《 就労システムの検討》 《 記録の定着》 《支援員間での情報共有》 《先輩支援員から学ぶ》 《 他専門職から学ぶ》 《 専門性の向上》【2 社会資源との連携・協働】
【3 支援内容の向上】
《 年間指導計画にもとづく支援の実施》 《 支援計画の作成》 《 個別の支援計画の作成》 《活動記録の作成》 [2 支援計画] [3 保護者とのかかわり] 《 相談支援》 《信頼関係を築く》 《 保護者同士をつなぐ》 [7 就労システムの構築] [6 放課後児童支援員の資質向上]【1 支援に必要なこと】
[5 関係機関との 連携・協働] [4 小学校との関係 づくり] [1 支援目標] 《 子どもが過ごしやすい環境の構築》 《親子の関係づくり》 《 子ども同士のつながりづくり》 《 自立への働きかけ》 《放課後児童クラブの役割提示》 《 連携の工夫》 《 学校教育の 理解》 《 放課後児童クラブと小学校の支援目標は同じ》 《 地域・他機関との協働》 《 小学校・保護者・ 放課後児童クラブ間の 情報共有》 《小学校との情報共有》 《 残業時間の削減》 《 就労システムの検討》 《 記録の定着》 《支援員間での情報共有》 《先輩支援員から学ぶ》 《 他専門職から学ぶ》 《 専門性の向上》【2 社会資源との連携・協働】
【3 支援内容の向上】
《 年間指導計画にもとづく支援の実施》 《 支援計画の作成》 《 個別の支援計画の作成》 《活動記録の作成》 [2 支援計画] [3 保護者とのかかわり] 《 相談支援》 《信頼関係を築く》 《 保護者同士をつなぐ》 * 矢印は関係を示す放課後児童クラブにおける支援効果と課題 周防美智子 の関係を捉えながら適切に関わることで、子どもが 安心して過ごせるようにし、一人ひとりと集団全体 の生活を豊かにすることが求められる。」とある。 調査でも、年間の支援計画や個別の支援計画の作成 や日頃の支援の記録による情報共有などにより、子 どもの過ごしやすい環境づくりの工夫、子ども同士 のかかわりを通して主体性や自立への働きかけ、生 活習慣の獲得が行われていることが明らかとなっ た。放課後児童クラブが平成 10 年に「放課後児童 健全育成事業」として児童福祉法に位置づけられた こと、さらに「放課後児童クラブ運営指針」の策定 によって、放課後児童クラブの役割や具体的な健全 育成の内容が示されたことにより、支援員としての 意識や専門性への取り組みに変化が表れている。ま た、経験豊かな支援員が後輩のスキルアップに積極 的に関わり、子どもの育成支援のために放課後児童 クラブの支援内容の質を高めようとする状況、支援 員の同僚性が明らかとなった。 放課後児童クラブの健全育成支援は、家庭教育で 行われる生活習慣の獲得や地域の子ども集団でのか かわり、地域教育における大人のかかわりを補うこ とに対する支援効果をもつことが示唆された。 2 .放課後児童クラブと家庭・学校・地域の連携・ 協働 放課後児童クラブは、子ども家庭福祉の視点から 子ども支援と同時に家庭支援を行う場である。実際 に支援員は、子どもの課題を保護者と一緒に取り組 んだり、親子のコミュニケーションを促す手助けを したり、相談を受けたりしている。一方で放課後児 童クラブが、子どもの課題の解決をサポートする機 能があることを知らない保護者も多く、放課後児童 クラブを家庭に保護者がいないときの預かり場とす る捉え方が抜けきらないところもある。 子どもにとって大切な学校教育との連携・協働に ついては、放課後児童クラブが学校の敷地内や学校 近くに設置されているにもかかわらず、連携・協働 が困難であることが明らかとなった。伝達や忘れ物 などがあれば、学校と行き来をするというのが多く の回答であった。 学校も福祉の場である放課後児童クラブも、目標 は子どもの権利保障であり、子ども主体に考えた支 援の場であることには違いはないのであるが、互い の役割や機能の理解がなされていないことから、連 携や協働が図りにくいということが見えてきた。学 校と連携・協働をしているという児童クラブにおけ る内容の語りでは、連携が意味する内容には届かな い交流や情報提供と言ったところで止まっている実 態が浮き彫りとなった。また、民立民営の放課後児 童クラブは、守秘義務の壁により学校との信頼関係 が築きにくく連携は困難な状況であった。民立民営 の放課後児童クラブも、公立公営と同じく児童福祉 法を根拠として事業を行っていること、子ども支援 の協力機関であることの啓発が必要である。 地域とのつながりにおいては、積極的に地域との 関係を深めるために、町内会長や民生委員、PTA、 議員などを放課後児童クラブの運営委員として参加 してもらい運営の協力を求めている。また、住民が 昔遊びを教えてくれたり、施設の整備を手伝ってく れたりするところもあり、地域の子育て支援の場で ある放課後児童クラブへの住民の協力的なかかわり が見られた。しかし、地域連携の点においても民立 民営は連携の困難さを抱えている。 3 .放課後児童クラブにおける健全育成支援に向け た課題 放課後児童クラブ運営指針の策定によって、放課 後児童クラブの運営、役割・機能が可視化され支援 員が活動しやすくなったことは言うまでもない。し かしながら、運営指針が策定されて時間が経ってい ないことから、すべての放課後児童クラブで同じ質 の育成支援が実践されているとは言い難い現状があ る。 研究結果においても支援目標は、運営指針に基づ き立てられているが、目標達成のための発達に応じ た支援計画や個別支援計画が作成されていない放課 後児童クラブもあった。また支援計画の作成や情報 共有をするための記録が充実していないなどの課題 が見られた。支援計画や記録における課題は、支援 員の専門性につながる課題であり、学校、家庭、関 係機関との連携・協働において不可欠なものであ り、情報共有や支援の役割分担が適切に行えないと いう課題を生んでいた。 保護者支援は放課後児童クラブ運営指針が策定さ れる以前から行われていて、現在も保護者との伝達 や情報共有が行われているものの、保護者に放課後 児童クラブが目的とする放課後児童の健全育成の場 であることの理解が浸透していない点があり、育成
支援を共有した家庭連携を行うことに課題が生じて いる。 さらに、学校との連携・協働ということにおいて は、今後の重要課題である。近年、さまざまな課題 を抱える児童が増加傾向にあり、支援は、学校・地 域・家庭が連携・協働しなければ健全育成は図れな い状況にある。すなわち、子どもの生活に連続性の ある支援が必要ということである。しかし、学校と 放課後児童クラブの連続性のある支援が行われてい ない現状がある。学校と児童クラブの役割や専門性 を互いに理解し、交流や情報提供を超えた情報共有 や支援の役割分担に至る行動連携が必要である。放 課後児童クラブは学校教育や家庭教育とは異なる専 門性を、育成支援を通して関係機関、保護者、地域 に明確にする必要がある。 以上のような課題改善を図るためにも支援員の専 門性を高める学びだけでなく、就労保障も重要な課 題となる。社会ニーズを満たすものは、待機児童を 解消するための受け皿を増やすことだけではない。 放課後の子どもの健全育成に効果的な支援を実践で きる支援員の確保が重要であることは言うまでもな く、早急な就労保障が求められる。 放課後児童クラブへのニーズが高まる状況で、公 立民営、民立民営が運営する放課後児童クラブの増 加が予想される。利用する放課後児童クラブにより 運営状況や育成支援に差が生じないよう、利用する 子どもに不利益が起きないように、国・市町村にお いて質の担保を図る取り組みが必要である。また、 放課後児童クラブがさらなる社会的信頼を獲得し、 地域教育の第一義的役割を発揮できるように、市町 村はアシストしていかなければならない。 Ⅴ.本研究の限界と課題 本研究では、放課後児童クラブにおける支援効果 と課題の検討を、支援の実態と放課後児童クラブの 運営指針、支援者の意識に着目しながら検討を行っ た。しかし、インタビューを実施した放課後児童ク ラブは実践モデルとなる傾向の放課後児童クラブが 多く、支援課題を抱える放課後児童クラブでのイン タビューができなかったところに研究の限界がある。 放課後児童クラブへのニーズの高まり、拡充が図 られる中で、放課後児童クラブの支援効果と課題を 明らかにしなければ、児童福祉法が提唱する「放課 と考えている。支援員のスキルアップ、放課後児童 クラブ間に差のない健全育成内容、設置環境の整 備、学校連携のほか支援員の就労保障が重要であ り、早急に課題に取り組むことが求められる。 今後は、放課後児童クラブを全対象としてアン ケート調査を実施し、放課後における児童の健全育 成への支援効果の向上策を探索したいと考える。 注 注1 )令和元年(2019 年) 放課後児童健全育成事業 (放課後児童クラブ)の実施状況 厚生労働省では、放課後児童 クラブ数や利用 登録している児童の数(登録児童数)などの状 況を把握するための調査を毎年実施している。 放課後児童クラブは、小学校の余裕教室や児童 館などで、共働き家庭等の小学校に就学してい る児童に放課後等の適切な遊びや生活の場を提 供する安全・安心な居場所であり、「新・放課 後子ども総合プラン」平成 30 年(2018 年)9 月 14 日策定に基づき、放課後児童クラブにつ いて、2021 年度末までに約 25 万人分を整備し、 待機児童の解消を目指し、その後、女性就業 率の更なる上昇に対応できるよう整備を行い、 2019 年度から 2023 年度までの 5 年間で約 30 万 人分の整備を図る。 文献 1 )厚生労働省(2017) 『平成 29 年 国民生活基 礎調査』 2 )厚生労働省(2015)「 放課後児童クラブ運営指 針(平成 27 年 4 月厚生労働省策定)」 3 )厚生労働省(2017)『放課後児童クラブ運営指針 解説書』 4 )男女共同参画(2019)『共同参画』2019 年 5 月号 5 )厚生労働省(2019)『令和元年(2019 年)放課後児 童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況』 6 )内閣府(2020)「男女共同参画白書 平成 29 年版」 7 )木下康二(2003)『グラウンデッド・セオリー・ アプローチの実践 質的研究への誘い』 弘文堂 8 )諏訪きぬ(2017)『子どもの生活における家庭の 役割と放課後児童クラブ・小学校との連携―運営 間もない放課後児童クラブ(学童保育)の実態分 析を通して―』「保育学研究」第 55 巻第 3 号 46
放課後児童クラブにおける支援効果と課題 周防美智子 9 )三根佳祐(2017 )『我が国における放課後児童 対策』大阪経大論集第 62 巻第 2 号 151 〜 168 【付記】本研究は、岡山県立大学平成 30 年度地域 貢献研究助成費「岡山県放課後児童クラブにおける 支援プログラムの構築」、基盤研究(C)「児童生徒の 問題行動予防プログラムの構築―問題行動と抑うつ の関連に着目して」の成果の一部である。
The Effectiveness and Challenges of Child Support in After
School Clubs for Children
MICHIKO SUWO,NORIKO NAKA
Abstract:In order to discuss the effectiveness of support of children’s after school clubs and the challenges for support, we researched the actual situations of support for children in after school clubs. The subjects for this research were 13 club-supporting members belonging to seven children’s after school clubs in Okayama Prefecture. The participants joined semi-structured interviews about the real states of supports for children and child-raising. The analysis was conducted using M-GTA (Modified grounded theory approach). Twenty-five concepts and seven subcategories were found from the analysis of interviews, from which, the three categories of “what are important for support,” “cooperation and collaboration with social sources,” and “enhancement of support contents” were extracted. The subcategories included the support goals and the support contents of children’s after school clubs as a keyword, such as “approach to independence,” “creation of support planning,” “proposal of role planning of children’s after school clubs,” and “enhancement of expertise.” It was clarified that "cooperation and collaboration with social resources” had the effect of enhancing support and effectiveness of support.
Keywords:child support, enhancement of expertise, primary school, parents,cooperation and collaboration