非小細胞肺癌III期症例における手術併用の有無
による放射線治療効果の比較
山梨医科大学 放射線科 中島寛人 大西洋
山口元司 荒木力
はじめに 原発性肺癌lll期症例の治療法は未だ確立されていない。今回われわれは当院において放 射線治療を施行した非小細胞肺癌lll期45例の手術併用群と非手術併用群の治療成績、予 後について比較検討したので報告する。 対象 1984年から1995年までに放射線治療を施行した非小細胞肺癌lll期45例(手術併用10 例、非手術併用35例)を対象とした。内訳は性別:男性38例、女性7例、年齢:46∼85 歳(平均68.9歳)、T因子:T13例、 T212例、 T316例、 T414例、 N因子:No 7例、 Nl 3例、 N223例、 N311例、不明1例、病期:stageiHa24例、stagelllb21例、組織型1 扁平上皮癌26例、腺癌18例、その他1例である。これらのうち、手術併用群と非併用 群の年齢とPSの平均値はそれぞれ66.1歳、83.3%、69.7歳、75.096であり、また、手術 併用群と非併用群のT因子の平均はそれぞれ2.8、3.0で、N因子の平均はそれぞれ1.6、 1.9でありともに非手術併用群の方が大きい傾向にある。 照射方法 手術併用群では、原発巣のみへの照射4例、原発巣と縦隔リンパ節への照射5例、原発 巣と縦隔、鎖骨上窩リンパ節への照射1例で、1回2Gyでtotal 50Gyを基本として、腫瘍 残存のある場合は10Gy追加照射施行した。非手術群では、原発巣のみへの照射11例、原 発巣と肺門リンパ節への照射5例、原発巣と縦隔リンパ節への照射7例、原発巣と鎖骨上 窩リンパ節への照射1例、原発巣と縦隔、鎖骨上窩リンパ節への照射9例で、1回2Gyで tptal 60Gyを基本として、腫瘍残存のある場合は、10Gy追加照射施行した。照射総線 量の平均は、手術併用群では55.6Gy、非手術群では52.4Gyであった。 結果 生存率の比較は危険率5%で検定した。治療効果は手術併用群でCR 8例、 PR 2例、1年 生存率77.8%、2年生存率44.4%、非手術併用群でCR 7例、 PR 18例、 NC 7例、1年生存 率40.6%、2年生存率15.6%であり、手術併用群の方が治療成績が良好であった(図1)。 また、予後良好な因子として、低年齢、PS高値が挙げられ、性別、 stagelllaとIllbでは 予後に有意差なく、組織型別では、腺癌が最も予後が不良であった。手術併用群において T因子別の生存率はT1,T2とT3,T4を比較して有意差なかったが(図2)、非手術群にお いてのそれはT1,T2の方が良好という傾向があった(図3)。症例に限局すると手術併用群の方が予後が良好であった(図5)。また、T3,T4症例に 限局すると手術併用群の方が良好であったが(図6)、Tl,T2症例に限局すると手術群 と非手術群で有意差は無くなった(図7)。ここで、年齢70歳未満、PSSO%以上かつN2, N3症例の完遂例のみ抽出すると、手術併用群と非手術併用群の有意差は無くなった(図 8)。多変量解析では、性別、PS、T因子、 N因子では有意差無く、手術併用において のみ有意差が認められた。 全体の手術の有無による生存率 1 .8 1:: 。2 0 0 ■■■1原積生存皐《婿前・婿後) ■一■ エ積生存串(非手楕) 1000 2000 3000 4000 時日
(図1)
(日) 手術併用群の丁因子別の生存串 1 .8 1:: .2 0 ■■■ロ原積生存皐σ1,2) ■一’ エ積生存串ff314) ”r’.”r”’,’”v”’,”’v””,’”i−.’t−”,’r−.一・i・−i・・r−・ 0 1000 2000 3000 4000 時聞 (図2) (日)非手術併用群のT因子別の生存率 1 .8
事
馨.4 .2 0 0 ■■■累積生存串σ1,2》 一 累積生存率 (T3.4) P■0.08 500 1000 1500 2000 時間(図3)
(日) NO,Nl症例の手術の有無による生存率 1 .8事
護・4 .2 0 ■■■原積生存寧(術前・術後) 一一■ ン積生存寧(非手術) Pロ0・143 0 100 200 300 400 500 600 時筒(図4)
(日) N2, N3症例の手術の有無による生存率 1 .8事
塁.4 .2 0 0 1000 ■■■累積生存率(術前・術後) 一■− a積生存寧(弊手術) 2000 3000 時間(図5)
4000 (日)T3, T4症例の手術の有無による生存率 .9
事
馨 .4 .20
■一累積生存皐(術前・術後) 一一一 ン積生存率《非手術) P■0.0075(図6)
0 500 100015002000250030003500 (日) 時間 .k l:: ’i Tl,T2症例の手術の有無による生存率 ■■■累積生存皐(術前・術後) ■■一■累積生存率(非手術) P■0.73 e”秩f”e””1 0 1000 2000 3000 4000 時簡(図7)
(日) .9 1:: ’i 年齢70歳未満、PS80X以上, N2, N3の照射完遂例に限定 ■■■累積生存皐(術前・術後) 鳳積生存寧(非手術》 P t=O.33 0 500 1000150020002500300035004000 時薗(図8)
(日)考察 非小細胞肺癌lll期症例の治療法において、手術を施行すべきか否かは、未だ確立された ものがない。一般的な教科書では、lll a期は手術可能、 lll b期は手術不能とされている。1) しかし、カナダの肺癌専門医に自分がllla期の肺癌患者自身だとしたら希望する治療法 は何かを尋ねたところ、61%の人が放射線治療単独と答え、手術単独と答えた人は3%の みであり、実際に川a期は手術施行しないことが多いらしい。2)3) 今回我々は非小細胞肺癌患者の手術併用群と非手術併用群の予後を比較したが、全症例 の生存率は手術併用群の方が良好であった。だが、T1,T2症例に限局すると手術群と非手 術群の予後は有意差無くなり、また、年齢70歳未満かつPS80%以上かつN2,N3症例の照 射完遂例に限局すると同様に予後に有意差は無くなった。全症例の生存率が手術群の方が 高い原因として・手術群では、年齢が若く、PS良好の症例が多いことが挙げられるが、 今回の我々の検討では・状態の良い症例であれば、放射線治療でも手術群と同様の生存率 が得られる可能性があることがわかった。実際、1991年のDurciらの報告でも、非小細 胞肺癌Ill期症例において手術群と非手術群では予後に有意差は認めないとしている。4) 以上より・非小細胞肺癌lll期症例において、特にTl,T2、 N2,N3症例は手術適応になら ないものもあると考えられ・ill期例の手術適応については今後検討が必要と考えられた。 結語 非小細胞肺癌lll期症例の手術適応については検討が必要であり、特にT1,T2、 N2,N3症 例は手術適応にならないものもあると考えられた。 文献 1)Martin H・Huber et al:N。n−small−cell lung cancer;Medical・nc・1・gy:129−