椙山女学園大学における食環境整備−第5報:学生
食堂における学生の昼食選択支援対策の改善に関す
る検討−
著者
中島 正夫, 大島 千穂, 續 順子, 三田 有紀子
雑誌名
椙山女学園大学研究論集 自然科学篇
号
48
ページ
79-88
発行年
2017-03-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1454/00002358/
* 教育学部 子ども発達学科 ** 生活科学部 管理栄養学科 *** 椙山女学園食育推進センター 椙山女学園大学研究論集 第48号(自然科学篇)2017
椙山女学園大学における食環境整備
──第5報:学生食堂における学生の昼食選択支援対策の改善に関する検討──中島正夫*
,***・大島千穂**・續 順子**
,***・三田有紀子**
Preparation of Food Environment at Sugiyama Jogakuen University
—The Fifth Report: Improvement of Measures to Support for Lunch Selection of Students at Canteens in the University—
Masao N
AKASHIMA, Chiho O
SHIMA, Junko T
SUDZUKIand Yukiko M
ITAⅠ はじめに 平成20年度に実施した「椙山女学園『食』に関する実態調査」の結果,大学2年生に おいて,自分の食生活を適切と考える者は22.3%,食堂などを利用するとき食べ物を適切 に選択できていると回答した者は31.0%であった1)。そこで,椙山女学園食育推進セン ター(以下「センター」という。)では,平成20年7月に策定した「椙山女学園食育推進 基本指針」を踏まえ,大学における食育の一環として大学と協働し食環境整備に取り組む こととした。具体的には,平成21年度から1年生を対象とした全学共通科目「人間論」 の1回分を「食育」にあて「食と健康」などに関する知識を一定教授するとともに,平成 22年度には学生を対象として学生食堂における食選択の理由などについて調査し,食環 境整備に関する取り組みの方向性について検討した2, 3)。その後,平成23年4月にセン ター,学生食堂業者およびセンター員である管理栄養学科教員等で構成するプロジェクト チームを設置し,同年後期から提供メニューの改善や「ヘルシーメニュー(主食・主菜・ 副菜がそろっていて一日に必要なエネルギー・栄養素・野菜の1/3程度が摂取できる食 事)」の開発・提供,POP など啓発資料の作成・掲示,提供メニューの写真・エネルギー・ 栄養素・塩分・野菜量・食事バランスガイドのコマ・一口メモを掲載した「メニューカー ド」の作成・掲示などについて,学生の意識などを踏まえた改善を図りつつ推し進め4), 平成24年10月までに一定の形を固めるに至った(メニューカードの例を図1に示す)。 平成25年度,取り組みの効果について評価するため実施した調査の結果,「食事バラン スガイド」の認知度の高まりなど一定の効果は得られているものの,学生食堂での昼食の 選択理由は多い順に「気分」,「好み」,「値段」であり,「栄養バランス」は10%程度にと
図1 メニューカードの例 どまるなど,食環境整備に取り組む前と比べ変化が乏しかった3‒5)。そこで,食環境のさ らなる改善を検討するための資料を得ることを目的として,取り組みに関する学生の意識 などを再度調査することとした。 Ⅱ 研究対象および方法 研究は当大学看護学部倫理審査委員会の承認を得て行った。 1.質的調査 教育学部4年生8名及び2年生10名,合計2グループ18名を対象として平成26年6・ 7月にフォーカス・グループ・インタビュー(以下「FGI」という。)を実施した。イン タビューの内容は,「昼食を選択する際「栄養バランス」が「好み」「気分」「値段」より 低くなる理由」,「メニューカードを参考にするか」,「ヘルシーメニューを利用している か」などとした。インタビューは参加者の許可を得て録音し逐語録を作成,研究者の合議 により食環境の改善に結びつくと考えられる事項を抽出した。 2.量的調査 質的調査の結果を踏まえ作成した調査票を用い,系統的な食教育を受けていない学生であ る教育学部保育・初等教育専修1∼3年生244人,および専門的に食に関して学んでいる生 活科学部管理栄養学科1∼4年生461人を対象として平成26年10月に無記名自記式アンケー ト調査を実施した。それぞれ有効回答数(率)は236人(96.7%),449人(97.4%)であった。
表1 基本的な質問項目 質問項目と選択肢(有効回答総数) 回答数 割合 次のことを知っていますか?(n=236) 三色食品群の内容 120 50.8% 食事と生活習慣病との関係 94 39.8% 一日に必要なカロリー 94 39.8% 栄養バランスの基本的な知識 74 31.4% 一日に必要な野菜量 56 23.7% 栄養素の種類と働き 43 18.2% 六つの食品群別摂取の目安 40 16.9% 一日の塩分摂取の目標量 32 13.6% 食事バランスガイドの使い方 28 11.9% 「日本人の食事摂取基準」の内容 13 5.5% 普段,食事をする際に栄養バランスについて考えていますか?(n=235) 考えている 72 30.6% 考えていない 77 32.8% どちらともいえない 86 36.6% (考えていない・どちらでもない者)その理由は何ですか?(n=163) 家族が栄養バランスを考えて 食事を作ってくれている 64 39.3% 栄養バランスを考えることは面倒 48 29.4% 食や栄養についてよく知らない 48 29.4% 栄養バランスに関心がない 25 15.3% 今は元気 20 12.3% その他(好きなものを食べたい 考えてはいるけど実行できていない など) 15 9.2% 昼食時,学生食堂を利用することがありますか?(n=236) よく利用する ( 週3回以上 ) 33 14.0% ときどき利用する ( 週2回程度 ) 27 11.4% たまに利用する ( 週1回以下 ) 148 62.7% 利用しない 28 11.9% 通学で当てはまるものは?(n=235) 自宅通い 227 96.6% 一人暮らし 8 3.4% 椙山女学園大学における食環境整備 Ⅲ 結 果 1.質的調査 FGI の結果抽出された主な事項は次のとおりであった。⑴食や栄養に関する知識や関心 が乏しい(小学校から高等学校までに習った知識は定着していない,栄養バランスに関心 がない,将来の健康を気にしていない)。⑵普段の食事の際栄養バランスを考えない。⑶ 学生食堂で栄養バランスに関する媒体などは活用していない(メニューカードで見るのは 写真・値段・エネルギー,メニューカードの見方が分からない,ヘルシーメニューは選ば ない(高い,知らない))。⑷昼食時に学生食堂で栄養バランスを考えない(好み・気分・ 値段で選ぶ。たまにしか利用しないので外食気分になる,家での食事は栄養バランスが良 い,すべてのメニューが栄養バランスが良いと思っている)。 2.量的調査 本稿では,大学で系統的な食教育を受けていない学生の昼食選択支援対策の改善を検討 する観点から,教育学部保育・初等教育専修1∼3年生を対象とした調査結果の一部につ いて述べる。 基本的な質問項目に関する回答結果を表1に示す。知識などについて,高等学校までに
表2 学生食堂でのメニューの選択理由など 質問項目と選択肢(有効回答総数) 回答数 割合 メニューの選択理由は何ですか? (当てはまるものすべて選択。利用しない者を除く。)(n=208) 好み 186 89.4% 気分 146 70.2% 値段 105 50.5% 量の多いもの 33 15.9% 栄養バランス 27 13.0% 体調 26 12.5% カロリーの少ないもの 22 10.6% 地域・季節限定メニュー 10 4.8% 気温 10 4.8% 量の少ないもの 4 1.9% 美容にいいと思うもの 3 1.4% カロリーの多いもの 0 0.0% その他 0 0.0% (「栄養バランス」を選択しなかった者について)選択しなかったのはどの ような理由ですか?(n=181) 学生食堂では好きなものを食べたい 98 54.1% 栄養バランスを考えることは面倒 37 20.4% 学生食堂にあるメニューは,全て栄養バランスが 良いものであると思う 37 20.4% 栄養バランスに関心がない 35 19.3% 食や栄養についてよく知らない 35 19.3% 朝晩の家での食事は栄養バランスが整っている 16 8.8% 朝晩の食事で栄養バランスを自分で整える 4 2.2% その他(値段の方が大切 など) 6 3.3% より適切にメニューを選択するために,どのような情報があったら参考に しますか? 一日に必要なカロリー(n=226) 184 81.4% 一日に必要な野菜量(n=222) 159 71.6% 栄養バランスの基本的な知識(n=221) 140 63.3% 一日の塩分摂取の目標量(n=219) 129 58.9% 栄養素の種類と働き(n=219) 122 55.7% 食事と生活習慣病との関係(n=217) 113 52.1% 食事バランスガイドの使い方(n=217) 110 50.7% その他(残りの食事で摂ると良い目安量 など) 2 0.8% 学習している事項を質問したところ,知っていると答えた者が最も多かったのは「三色食 品群の内容」で50.8%であった。「食事と生活習慣病の関係」および「一日に必要なカロ リー」は39.8%,「栄養バランスの基本的な知識」は31.4%,「一日に必要な野菜量」は 23.7%,「栄養素の種類と働き」は18.2%,「一日の塩分摂取の目標量」は13.6%の者が 知っていると答えるにとどまった。普段食事をする際に栄養バランスについて考えていな い・どちらともいえない者は69.4%で,その理由は,「家族が栄養バランスを考えて食事 を作ってくれている」39.3%,「栄養バランスを考えることは面倒」「食や栄養についてよ く知らない」29.4%,「栄養バランスに関心がない」15.3%などであった。昼食時学生食堂 を利用する者は88.1%であったが,62.7%は週1回以下の利用であった。なお,96.6%の 学生が自宅通いであった。 メニューの選択理由などに関する回答結果について表2に示す。選択理由(当てはまる ものすべて選択)は「好み」89.4%,「気分」70.2%,「値段」50.5%であり,「栄養バラン ス」は13.0%であった。栄養バランスを選択しなかった理由は「学生食堂では好きなもの を食べたい」54.1%,「栄養バランスを考えることは面倒」「学生食堂にあるメニューは全
表3 ヘルシーメニュー・メニューカードに関する質問 質問項目と選択肢(有効回答総数) 回答数 割合 ヘルシーメニューを利用したことがありますか? (食堂を利用しない者を除く)(n=208) よく利用している 3 1.4% 利用したことがある 67 32.2% 利用したことがない 138 66.3% (利用したことがある者について)選択理由は何ですか? (当てはまるものすべて選択。)(n=70) おいしそうだったから 55 78.6% そのときの気分だったから 36 51.4% 栄養バランスがよいから 33 47.1% 好みに合っているから 29 41.4% 野菜の量が多いから 18 25.7% 限定メニューだから 11 15.7% 美容によさそうだから 5 7.1% 値段が手頃だから 3 4.3% 量が少ないから 0 0.0% その他 0 0.0% (利用したことがない者について)利用したことがない理由は何ですか? (当てはまるものすべて選択。)(n=138) ヘルシーメニュー自体を知らなかったから 50 36.2% 好みに合っていないから 46 33.3% 値段が高いから 22 15.9% おいしくなさそうだから 9 6.5% 量が少ないと感じるから 8 5.8% 野菜の量が多いから 2 1.4% その他(他に食べたいものがある,食べるメニュー が決まっている,興味がわかない,売り切れなど) 21 15.2% 学生食堂内でメニューカードを見たことはありますか? (食堂を利用しない者を除く)(n=207) 見たことがある 201 97.1% 見たことがない 6 2.9% (見たことがある者について)内容に興味をもちましたか?(n=201) はい 155 77.1% いいえ 46 22.9% (見たことがある者について)内容は理解できましたか?(n=200) はい 179 89.5% いいえ 21 10.5% (理解できた者について)どの内容が理解できましたか? (当てはまるものすべて選択。)(n=179) 食事バランスガイド 107 59.8% エネルギー 100 55.9% 一口メモ 65 36.3% 野菜量 30 16.8% 脂質 22 12.3% たんぱく質 19 10.6% 炭水化物 18 10.1% 食塩量 17 9.5% (見たことがある者について)食事を選択する際の参考にしましたか? (n=198) はい 109 55.1% いいえ 89 44.9% (「はい」と回答した者について)どの情報を参考にしましたか? エネルギー(n=102) 86 84.3% 一口メモ(n=101) 59 58.4% 食事バランスガイド(n=100) 54 54.0% 野菜量(n=98) 44 44.9% 炭水化物(n=98) 40 40.8% 脂質(n=98) 38 38.8% 食塩量(n=98) 24 24.5% たんぱく質(n=97) 23 23.7% 椙山女学園大学における食環境整備
て栄養バランスが良いものであると思う」20.4%,「栄養バランスに関心がない」「食や栄 養についてよく知らない」19.3%であった。より適切にメニューを選択するために,どの ような情報があったら参考にするか尋ねたところ,「一日に必要なカロリー」は81.4%, 「一日に必要な野菜量」は71.6%,「栄養バランスの基本的な知識」は63.3%,「一日の塩 分摂取の目標量」は58.9%,「栄養素の種類と働き」は55.7%,「食事と生活習慣病との関 係」「食事バランスガイドの使い方」は50.7%であった。 ヘルシーメニュー・メニューカードに関する質問項目に対する回答結果を表3に示す。 ヘルシーメニューを利用したことがない者は66.3%,その理由は,「知らなかった」 36.2%,「好みに合っていない」33.3%,「値段が高い」15.9%などであった。その他留意 すべき回答として「食べるメニューが決まっている」などがあった。メニューカードを見 たことがある者は学生食堂利用者のうち97.1%,うち興味をもった者は77.1%であった。 食事を選択する際の参考にした者は55.1%,その情報は「エネルギー」84.3%,「一口メ モ」58.4%,「食事バランスガイド」54.0%,「野菜量」44.9%,「食塩量」24.5%などで あった。 Ⅳ 考 察 食堂でのエネルギーなどの栄養表示の食行動への効果について,アメリカ心臓協会は 2012年には未確立と報告している6)。わが国の大学学生食堂などでの食環境整備に関する 先行研究においては,その効果は一定していない7‒10)。当大学学生食堂などにおいて平成 21年度から取り組みを始めた食環境整備の効果について平成25年度に評価したところ, 取り組む前と比べ変化が乏しかった3‒5)。そこで,今回,食環境のさらなる改善を検討す るための資料を得ることを目的として,取り組みに関する学生の意識などを再度調査し た。 1.今回の結果について 今回の質的調査の結果抽出された事項について KJ法11, 12)を利用したまとめを図2に示 す。学生たちは食や栄養に関する知識や関心が乏しく,普段の食事の際栄養バランスを考 えない。そのような状況の中で学生食堂において栄養バランスに関する媒体などを活用し ていないこともあり,昼食時に学生食堂で栄養バランスを考えた食選択を行わない,と解 釈できた。 FGI を利用して得られる結果についてはインタビューを行った特定の対象者の意識に依 存する恐れがある13)。このため,質的調査の結果を基に作成した調査票を用いた量的調査 を実施したところ,その結果は質的調査の解釈を確認するものであったと考えられた。 今回の質的・量的調査の結果は,取り組み開始時に想定していた以上に学生たちは食や 栄養に関する知識や関心が乏しく,普段の食事の際栄養バランスを考えない中,95%程度 は自宅通いで学生食堂の利用は週1回程度の者が多いこともあり,これまでの環境整備で は栄養バランスを考えた食選択を行う者が増加しないことを示唆していると考えられた。
図2 FGI のまとめ ࠕ ࣊ ࣝ ࢩ ࣮ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࡣ 㔞 ࡀ ᑡ ࡞ ࠸ ឤ ࡌ ࡿ ࠖ 䞉䝦 䝹 䝅 䞊䝯䝙䝳䞊䜢㣗 䜉 䜛䛸䚸 䛒 䛸䛷㛫 㣗 䛜 㻌 ᚲせ 䛻 䛺 䜛 㻌 䞉䝦 䝹䝅 䞊 䛸 䛔 䛖䛸㔞 䛜ᑡ 䛺 䛔 䜲䝯 䞊䝆 䛜䛒 䜚 䚸 㻌 ‶ ⭡ 䛻 䛺 䜚䛯䛔 䛯 䜑䝦䝹䝅䞊䝯䝙䝳䞊䛿㻌 㑅䜀 䛺 䛔 㻌 䞉ぢ 䛯┠ 䛿ከ 䛔䛾䛻䝦䝹䝅䞊䛺 䝯䝙䝳䞊䛜 㻌 Ⰻ䛔 㻌 䞉䝦 䝹 䝅 䞊䝯䝙䝳䞊䛾ぢ 䛯 ┠ 䛿 䝪 䝸 䝳䞊䝮䛜 㻌 䛒䛳䛶䜋 䛧䛔㻌 ࠕ ᐙ ࡛ ࡢ 㣗 ࡣ ᰤ 㣴 ࣂ ࣛ ࣥ ࢫ ࡀ Ⰻ ࠸ ࡓ ࡵ ࠊ Ꮫ ⏕ 㣗 ᇽ ࡛ ࡣ ᰤ 㣴 ࣂ ࣛ ࣥ ࢫ ࢆ ⪃ ࠼ ࡚ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࢆ 㑅 ࡤ ࡞ ࠸ ࠖ 䞉ẕぶ 䛜 ᰤ㣴䝞 䝷 䞁 䝇 䜢 ⪃䛘 䛶 ኤ㣗 䜢 స 䛳 䛶 䛟 䜜 䜛 䛯 䜑 䚸 㣗䛷 ᰤ㣴 䝞 䝷 䞁 䝇 䜢 㻌 ⪃䛘 䛺 䛔 㻌 䞉ᐙ 䛷 䛾 㣗䛷 ᰤ㣴 䛜 䝞 䝷 䞁 䝇 䜘 䛟 䛸 䜜 䛶 䛔 䜛 䛯 䜑 䚸 Ꮫ㣗䛷 䛾 㣗䛿 ዲ䛝 䛺 䜒 䛾 㻌 䜢㣗 䜉䛯 䛔㻌 䞉ᐙ 䛷 䛾 㣗䛷 㔝⳯ 䜢 䛸 䜛 䜘 䛖 䛻 䛧 䛶 䛔 䜛 䛯 䜑 䚸 Ꮫ㣗 䛷 ᰤ㣴䝞 䝷 䞁 䝇 䜢 Ẽ 䛻 䛧 䛶 㻌 䝯䝙䝳䞊䜢ぢ 䛯䜚 ㈙ 䛳 䛯 䜚 䛧䛺䛔 㻌 䞉 䛾 㻝 㣗 䛠 䜙 䛔 䛺 䜙 ᰤ 㣴 䝞䝷 䞁䝇 䜢Ẽ 䛻 䛧 䛺䛟䛶 䛔䛔䛸ᛮ 䛖 㻌 䞉ᰤ 㣴䝞 䝷 䞁 䝇 䛻 㓄 ៖ 䛧 䛶 㣗 䛾 䝯 䝙 䝳 䞊 䜢 㑅 䜣 䛷 䛔 䛺 䛔 㻌 䞉㣗 䜢 㑅 䜆 㝿 䛻 ᰤ 㣴 䝞 䝷 䞁 䝇 䜢 ⪃ 䛘 䛶䛔䛺䛔㻌 ࠕ 㣗 ࡸ ᰤ 㣴 ࡘ ࠸ ࡚ ࡢ ▱ ㆑ ࡀ ஈ ஈ ࡋ ࠸ ࠖ 䞉ᰤ 㣴 䝞 䝷䞁 䝇䛻 䛴 䛔 䛶䛒 䜎 䜚 ▱ 䜙 䛺 䛔 䛯 䜑 ⪃ 䛘䛺 䛔 㻌 䞉ఱ 䛜 ㊊ 䜚 䛺 䛟䛶䛹 䛖 ᅔ 䜛䛾䛛䜟䛛䜙 䛺 䛔 䛯䜑 ᰤ 㣴 䝞䝷䞁 䝇䜢 Ẽ 䛻 䛧 䛺 䛔㻌 䞉㻝 ᪥ 䛷 䛹䜜䛰 䛡 㣗 䜢 䛸䜛 䛸 Ⰻ 䛔 䛛䜟䛛䜙 䛺䛔㻌 䞉ᐙ 䛷 䛾 㣗 䛜 ఱ 䜻䝻 䜹䝻䝸䞊䛛䜟䛛䜙䛺 䛔 㻌 䞉㻝 ᪥ 䛻 ᚲせ䛺 㔝⳯㔞䜢 ▱ 䜙 䛺 䛔 㻌 䞉㔝⳯ 䜢 䛸 䜛 䛣 䛸 䛾 㔜せᛶ 䛜 䜟 䛛 䜙 䛺 䛔 㻌 䞉 ⳯䜔 ⳯ 䛜 ㊊䜚 䛺 䛔 䜒 䛾 䛻 ᑠ 㖊䜢 䛴 䛡 䜛 䛾 䛿 㞴䛧 䛔 㻌 䞉ᰤ㣴⣲ 䛻 㛵 䛩 䜛 ▱㆑ 䛜 䛺 䛔 䛯 䜑 䚸 䛭 䜜 䛻 㛵䛧 䛶 䜟 䛛 䜚 䜔 䛩 䛟 ሗᥦ౪䛧 䛶 䜋 䛧 䛔 㻌 䞉ᰤ㣴 䝞 䝷 䞁 䝇 䛻 㛵ᚰ䛜 䛺 䛔 㻌 䞉䠍 ᪥ 䛷 ᰤ 㣴 䝞䝷 䞁䝇 䜢⪃ 䛘 䜛 䛾䛜㠃 ಽ 㻌 䞉ẕ ぶ䛜 ᰤ 㣴 䝞 䝷 䞁 䝇 䜢 ⪃ 䛘 䛶 㣗 䜢 స䛳 䛶 䛟 䜜 䜛 㻌 䞉 䛿 ඖẼ䛰 䛛 䜙 ᰤ㣴䝞 䝷 䞁 䝇 䜢 ⪃䛘 䛺 䛔 㻌 䞉ᖺ 䜢ྲྀ 䛳䛯䛸䛝 䛾 䛣 䛸䜢⪃ 䛘䛶 䝯 䝙䝳 䞊䜢㑅 䜀 䛺䛔㻌 䞉 䛾 㣗䛜 ᖺ 䜢 ྲྀ 䛳 䛯 䛸 䛝 䛻 ᙳ㡪 䛩 䜛 䛸 䛿 ᛮ䛘 䛺 䛔 㻌 䞉ᰤ㣴 䝞 䝷 䞁 䝇 䛜 ᝏ䛔 㣗 䜢 ⥆䛡 䛯 䜙 䚸 ᑗ᮶䛹 䛖 䛺 䜛 䛛 䜲 䝯 䞊 䝆 㻌 䛷 䛝 䜜䜀ᰤ 㣴 䝞 䝷 䞁 䝇䜢 ⪃ 䛘 䜛㻌 ࠕ ᑠ Ꮫ ᰯ ࡞ ࡛ ⩦ ࡗ ࡓ ▱ ㆑ ࡣ ᐃ ╔ ࡋ ࡚ ࠸ ࡞ ࠸ ࠖ 䞉ᰤ㣴 䛻 㛵 䛩 䜛 ሗ䛿 䚸 ⩦ 䛳 䛶 䛿 䛔 䜛 䛜 ᐃ╔䛧 䛶 䛔 䛺 䛔 㻌 䞉䝔 䝇 䝖 䛜 ⤊䜟 䜛 䛸 䚸 ぬ䛘 䛯 ▱㆑䛿 グ᠈ 䛻 ṧ 䜙 䛺 䛔 㻌 䞉㞟ᅋ䛷 䛾 ᩍ⫱䛷 䛿 ⌮ゎ 䛜 㐍䜎 䛺 䛔 㻌 䞉ᑠᏛᰯ䛷 䛿 㣗 䜔 ᰤ㣴 䛻 䛴 䛔 䛶 Ꮫ䜆 䛜 䚸 ୰Ꮫ 䞉㧗ᰯ 䛻 䛴 䜜 䛶 Ꮫ 䜀 䛺 䛟 䛺 䜛 㻌 䞉㣗 䜔 ᰤ㣴 䛻 䛴 䛔 䛶 ᑠ Ꮫᰯ䞉 ୰Ꮫᰯ䞉 㧗ᰯ䛸 ⥅⥆䛧 䛶 ᩍ䛘 䜛 䛸 䚸 ᰤ㣴 䝞 䝷 䞁 䝇 䜢 㻌 Ẽ䛻 䛩 䜛 䛸 ᛮ䛖 㻌 䞉⧞ 䜚 ㏉ 䛧 Ꮫ⩦䛩 䜛 ᶵ䛜 䛺 䛔 䛸 ▱㆑䛿 ㌟ 䛻 䛴 䛛 䛺 䛔 㻌 ࠕ ᰤ 㣴 ࣂ ࣛ ࣥ ࢫ ࡼ ࡾ ዲ ࡳ ࣭ Ẽ ศ ࣭ ್ ẁ ࡛ 㑅 ࡪ ࠖ 䞉ዲ 䜏䛷㑅 䜆 㻌 䞉⮬ ศ 䛻 ఱ 䛜 ㊊ 䜚 䛺 䛔 䛾䛛䜟䛛䜙 䛺䛔 䛯䜑 ዲ 䛝 䛺䜒 䛾䜢 㑅 䜆 㻌 䞉Ẽศ䛷 㑅 䜆 㻌 䞉㔝 ⳯ 䛜 ከ 䛔 䝯䝙䝳䞊䛸ᑡ 䛺䛔䝯䝙䝳䞊䛜䜟䛛 䛳䛶䜒䚸 㻌 䛭 䛾 ᪥䛾 Ẽ ศ 䛷 㑅䜣 䛷 䛧 䜎 䛖 㻌 䞉್ẁ䛷 㑅 䜆 㻌 ࠕ Ꮫ ⏕ 㣗 ᇽ ࡣ ࡓ ࡲ ࡋ ⏝ ࡋ ࡞ ࠸ ࡢ ࡛ እ 㣗 Ẽ ศ ࡞ ࡿ ࠖ 䞉Ꮫ㣗䛷 䛾 㣗 䛿 እ㣗 Ẽศ 䛻 䛺 䜛 㻌 䞉Ꮫ 㣗䜢 䛯 䜎 䛻 ⏝䛩 䜛 䛸 䛝 䛿 ᰤ 㣴䝞 䝷 䞁 䝇 䜢 Ẽ䛻 䛧 䛺 䛔 㻌 䞉ẖ᪥Ꮫ㣗 䜢 㣗䜉 䜛 ே䛿 ᰤ㣴䝞 䝷 䞁 䝇 䜢 Ẽ䛻 䛩 䜛 䛸 ᛮ 䛖 㻌 䞉ẖ᪥Ꮫ㣗䛾 䝯 䝙 䝳 䞊 䛾 ୰䛛 䜙 㑅 䜆 䛾 䛷 䛒 䜜 䜀 ᰤ㣴 䝞 䝷 䞁 䝇 䜢 Ẽ䛻 䛩 䜛 㻌 ࠕ Ꮫ ⏕ 㣗 ᇽ ࠶ ࡿ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࡣ ᰤ 㣴 ࣂ ࣛ ࣥ ࢫ ࡀ Ⰻ ࠸ ᛮ ࡗ ࡚ ࠸ ࡿ ࠖ 䞉Ꮫ㣗䛷 ᥦ౪䛥 䜜 䛶 䛔 䜛 䝯 䝙 䝳 䞊 䛿 ᰤ㣴䝞 䝷 䞁 䝇 䛜 ⪃䛘 䜙 䜜 䛶 䛔 䜛 䛸 ᡭ 䛻 ᛮ 䛳 䛶 䛔 䜛 㻌 䞉Ꮫ 㣗 䛻 䛒 䜛 䝯䝙 䝳䞊 䛿 ᰤ 㣴 䝞 䝷䞁 䝇䛜 Ⰻ 䛔䜒 䛾 䛷䛒 䜛 䛸 ᛮ 䛳 䛶䛧䜎 䛖 㻌 㣗 Ꮫ ⏕ 㣗 ᇽ ࡛ ᰤ 㣴 ࣂ ࣛ ࣥ ࢫ ࢆ ⪃ ࠼ ࡞ ࠸ ᰤ 㣴 ࣂ ࣛ ࣥ ࢫ 㛵 ᚰ ࡀ ࡞ ࠸ ᑗ ᮶ ࡢ ᗣ ࢆ Ẽ ࡋ ࡚ ࠸ ࡞ ࠸ 㣗 ࡸ ᰤ 㣴 ࡘ ࠸ ࡚ ࡢ ▱ ㆑ ࡀ ஈ ࡋ ࠸ ᬑ ẁ ࡢ 㣗 ࡢ 㝿 ᰤ 㣴 ࣂ ࣛ ࣥ ࢫ ࢆ ⪃ ࠼ ࡞ ࠸ 㣗 ࡸ ᰤ 㣴 ࡘ ࠸ ࡚ ࡢ ▱ ㆑ ࡸ 㛵 ᚰ ࡀ ஈ ࡋ ࠸ ࠕ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࢝ ࣮ ࢻ ࢆ ぢ ࡚ ࠸ ࡞ ࠸ ࠖ 䞉䛯䛟 䛥 䜣 ே 䛜 䛔 䜛䛯 䜑 䚸 䝯䝙 䝳䞊 䜹 䞊 䝗䜢 ぢ 䜛 㻌 㛫䛜 䛺 䛔 㻌 䞉୪ 䜣䛷䛔 䜛 䛻 䚸 䝯 䝙 䝳 䞊䜹䞊䝗 䜢䛔 䛴 䜎 䛷䜒 㻌 ぢ䛶 䛔 䜙 䜜 䛺 䛔 㻌 䞉Ꮫ 㣗 䛿 ΰ 㞧 䛩 䜛 䛯䜑䚸 䝯 䝙䝳䞊䜹䞊䝗 䜢⣽ 䛛 䛔 㻌 䛸 䛣 䜝 䜎 䛷ぢ 䜛䛣 䛸 䛜 䛷䛝 䛺䛔㻌 䞉䝯 䝙 䝳 䞊 䜹 䞊 䝗 䛾 ୍ཱྀ䝯 䝰 䜢 ぢ䜛 㛫 䛜 䛺 䛔 㻌 䞉ྠ 䛨䜒 䛾䜀䛛䜚 㣗 䜉 䛶䛔䜛 䛯 䜑 䚸 䝯䝙䝳䞊䜹䞊䝗㻌 䜢ぢ 䛺䛔㻌 䞉䛹 䜣 䛺 䝯䝙 䝳䞊 䛜䛒 䜛 䛛 ぬ 䛘 䛶䛔 䛶 ఱ 䜢 㣗 䜉 䜛 㻌 䛛Ỵ 䜑 䛶 䛔䜛 䛛䜙䝯䝙 䝳䞊䜹䞊䝗䜢ぢ 䛺 䛔㻌 䞉䝯 䝙䝳䞊䜹䞊䝗 䛾 ୍ ぴ 䜢 䝏䝷 䝅䜔 㻿䠆㼙㼍㼜 䛷 㻌 㻌♧ 䛩 䛸 䜘 䛔 㻌 ࠕ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࢝ ࣮ ࢻ ࡢ ぢ ᪉ ࡀ ࢃ ࡽ ࡞ ࠸ ࠖ 䞉䝯䝙䝳䞊䜹䞊䝗䛾 ぢ ᪉ 䛜䜟䛛䜙䛺 䛔 㻌 䞉 ሗ 䜢 䛹 䛾 䜘䛖 䛻ぢ 䜛䛛 䜟 䛛 䜙 䛺 䛔㻌 䞉ᰤ㣴ᡂศ⾲䜢 ศ 䛛 䜚 䜔 䛩 䛟 ᥦ♧䛧 䛶 䜋 䛧 䛔 㻌 䞉ᰤ㣴ᡂศ⾲♧䛾 ᇶ‽ 䛜䜟䛛䜙䛺 䛔 㻌 䞉ᰤ㣴ᡂศ⾲䜢 ぢ 䛶 䜒 䚸 ከ䛔 䛾 䛛 ᑡ䛺 䛔 䛾 䛛 㻌 䜟䛛䜙䛺 䛔 㻌 ࠕ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࢝ ࣮ ࢻ ࡢ ୰ ࡛ ぢ ࡞ ࠸ ሗ ࠖ 䞉㣗 䝞 䝷 䞁 䝇 䜺 䜲䝗 䛿ぢ 䛺 䛔㻌 䞉ᰤ㣴ሗ䛿 ぢ 䛶 䛔 䛺 䛔 㻌 䞉㔝⳯㔞 䛿 ぢ䛺 䛔 㻌 䞉⬡ ㉁ 䛿 ぢ 䛺䛔㻌 䞉䛯䜣 䜁 䛟 ㉁ 䛿 ぢ 䛺 䛔 㻌 䞉୍ ཱྀ 䝯 䝰䛿ぢ 䛺䛔㻌 䞉ሷ ศ 䛿 ぢ 䛺䛔㻌 ࠕ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࢝ ࣮ ࢻ ࡢ ୰ ࡛ ぢ ࡿ ሗ ࠖ 䞉 ┿䜢 ぢ䜛 㻌 䞉 ┿䛾 ᙬ䜚 䛜 Ⰻ 䛔 䛸 㣗䜉 䛯 䛔 䛸 ᛮ 䛖 㻌 䞉䜶 䝛䝹䜼䞊 䛿 ぢ 䜛 㻌 䞉ぢ 䛯┠ 䛷 ㏞ 䛳 䛯 䛻 䜶䝛䝹䜼䞊䜢 ぢ䜛 㻌 䞉್ ẁ䜢 ぢ䜛 㻌 䞉ྡ๓䛸 ್ẁ 䛸 ┿䛧 䛛 ぢ䛺 䛔 㻌 ࠕ ࣊ ࣝ ࢩ ࣮ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࡣ ್ ẁ ࡀ 㧗 ࠸ ឤ ࡌ ࡿ ࠖ 䞉䝦 䝹 䝅 䞊䝯䝙䝳䞊䛿㧗 䛔 㻌 䞉䝦 䝹䝅 䞊 䛺 䜒 䛾䛿㧗 䛔 䜲 䝯 䞊 䝆 䛜 䛒 䜛㻌 ࠕ ࣊ ࣝ ࢩ ࣮ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࡢ せ ᮃ ࠖ 䞉䝽 䞁䝥 䝺䞊 䝖 䛾 䝦 䝹 䝅 䞊 䝯䝙 䝳䞊 䛜Ⰻ 䛔 㻌 䞉䝦 䝹 䝅 䞊 䝯 䝙 䝳 䞊 䛾 ✀㢮䛜 ቑ 䛘 䜛 䛸 Ⰻ䛔 㻌 䞉㣗 䝞 䝷䞁 䝇䜺䜲䝗䛾 ぢ ᪉ 䛜䜟䛛䜙 䛺䛔 㻌 䞉㣗 䜉䛶 䛔䜛ᩱ ⌮ 䛜㣗 䝞 䝷 䞁 䝇 䜺 䜲䝗䛾㻌 ఱ䛴 䠄㻿 㼂 㻕ศ 䛛 䜟 䛛 䜙 䛺 䛔 㻌 㣗 ࣂ ࣛ ࣥ ࢫ ࢞ ࢻ ࡢ ࠸ ᪉ ࡀ ࢃ ࡽ ࡞ ࠸ ࠕ ࣊ ࣝ ࢩ ࣮ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࢆ ▱ ࡽ ࡞ ࠸ ࠖ 䞉䝦 䝹 䝅 䞊䝯䝙䝳䞊䛿▱ 䜙 䛺 䛔 㻌 ࣊ ࣝ ࢩ ࣮ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࡣ 㑅 ࡤ ࡞ ࠸ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࢝ ࣮ ࢻ ࡣ ࡚ ࢆ ぢ ࡿ ࢃ ࡅ ࡛ ࡣ ࡞ ࠸ ࣓ ࢽ ࣗ ࣮ ࢝ ࣮ ࢻ ࡣ ά ⏝ ࡋ ࡚ ࠸ ࡞ ࠸ Ꮫ ⏕ 㣗 ᇽ ࡛ ᰤ 㣴 ࣂ ࣛ ࣥ ࢫ 㛵 ࡍ ࡿ ፹ య ࡞ ࡣ ά ⏝ ࡋ ࡚ ࠸ ࡞ ࠸ 椙山女学園大学における食環境整備
2.今後の食環境整備の方向性について 近年,食に関する選択などの生活習慣の改善に向けて行動経済学の分野から種々の提案 がなされている14, 15)が,その中でナッジの考え方が注目されている16)。Thaler らは,ナッ ジとは命令ではなく「注意や合図のために人の横腹をひじでやさしく押したり,軽く突い たりすること」をいい,ホモ・エコノミクスではない,実在するヒューマンの行動を大き く変えるあらゆる要素を意味するとしている14)。大島はレベル1(選択させない:選択肢 から完全に除去すべく規制する)からレベル8(何もせず現状をモニターする)に渡る 「介入のはしご」を示し,レベル5(デフォルトを変えることにより選択を誘導する(例: サイドディッシュとしてサラダをデフォルトする))とレベル6(選択を可能とする(例: 食品の栄養成分表示やレストランでメニューにカロリーの情報をつける))を狭義のナッ ジとしている16)。当大学学生食堂では業者の協力を得て,健康教育の意味も含めヘルシー メニューの開発提供などを行っているが,大学でレベル5を整備しても,卒業後そのよう な環境は望めない。 一方,わが国では,飲食店での栄養成分表示が「栄養成分表示の店」として従前より保 健所の技術支援のもとに進められている。また,平成27年4月1日に食品表示法が施行 され食品関連事業者に加工食品などへの栄養成分(エネルギー,たんぱく質,脂質,炭水 化物,ナトリウム(食塩相当量))などの表示が義務付けられている(5年間の猶予期間 あり)。さらに,第3次食育推進基本計画(平成27∼32年度)の重点課題「健康寿命の延 伸につながる食育の推進」に関する具体的対策として「栄養表示の普及啓発」があげられ ている17)。これらのことから,今後学生たちが卒業し一般社会で生活する中で,栄養表示 を見る機会が増加することになる。 以上のことから,筆者らは,当面,栄養表示を参考にして適切に食を選択できる学生を 育てるための環境整備を追求したいと考える。具体的には,今回の調査結果(FGI での学 生の改善に関する意見を含む。)や Grunert らの「栄養情報の理解は主に栄養の知識と関 連するが,食品表示の利用は健康な食事に関する興味と関連する」という報告15)を踏まえ つつ,今後,栄養と健康に関する知識と興味・関心を高めるため,メニューカードや POP の内容や掲示方法について工夫するとともに,新たにトレーへの栄養バランスに関 する情報を記載したシートの貼付,各学生食堂のメニュー一覧の作成(名称・写真・値段 に加え食事バランスガイド・エネルギー・塩分量・野菜量を記載。ヘルシーメニューの周 知・メニューカードの見方の解説を含む。),およびすべての1年生を対象とした全学共通 科目「人間論」での「食育」の授業におけるメニュー一覧を活用した情報提供の強化など に取り組むこととしており,これらの改善策について一定の期間後再度評価したい。 Ⅴ ま と め 第3次食育推進基本計画では,重点課題に「若い世代を中心とした食育の推進」を設定 し,「栄養バランスに配慮した食生活を実践する国民を増やす」に関する具体的な目標値 として「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上ほぼ毎日食べている若い世 代の割合」を現状の43.2%から55%以上にすることが示されている17)。学生たちは大学入 学後自ら昼食などの食を選択する機会が多くなるが,学生の多くは高等学校までに学んだ
椙山女学園大学における食環境整備 食に関する知識は定着しておらず,食の選択の際に栄養バランスについて配慮していない 状況にある。そのような中,大学学生食堂の環境整備を中心とした取り組みにより「健全 な食生活を実践できる若い世代を育てる」ことは容易でないと考えられるが,今回の結果 を踏まえ,環境整備のさらなる改善を進めたい。 謝辞 本研究の推進に協力してくれた管理栄養学科平成26年度生,前田美奈,松本花奈の両名に感 謝します。 本文の要旨は第74回日本公衆衛生学会総会(平成27年11月,長崎)で発表した。 文 献 1) 椙山女学園食育推進センター.平成20年度椙山女学園「食」に関する実態調査結果の概要. 2009. 2) 中島正夫,續順子.椙山女学園大学における食環境整備──第1報:女子大学生の「昼食の 選択」に関する意識などについて(質的調査).椙山女学園大学研究論集第43号.2012; 89‒96. 3) 續順子,中島正夫.椙山女学園大学における食環境整備──第2報:食行動および食育に関 する一般学生と専攻学生の比較.椙山女学園大学研究論集第43号.2012; 97‒109. 4) 續順子,大島千穂,中島正夫.椙山女学園大学における食環境整備──第3報:学生食堂に おける食育支援の試み.椙山女学園大学研究論集第45号.2014; 61‒73. 5) 大島千穂,續順子,中島正夫他.椙山女学園大学における食環境整備──第4報:学生食堂 における食育支援の取り組みとその評価.椙山女学園大学研究論集第48号.2017; 67‒78. 6) Mozaffarian D., Afshin A., Benowitz N. L. et al. Population approaches to improve diet, physical
activity, and smoking habits. Circulation 2012; 126: 1514‒1563.
7) 水津久美子,稲田絵水,遠藤亜希子他.学生食堂メニューにおける栄養成分表示と栄養情報 提供の効果.山口県立大学生活科学部研究報告2002; 28: 17‒25. 8) 田上敬子,池田睦子.大学食堂を活用した学生への食育の実施とその効果.南九州大学研究 報告38A.2008; 113‒121. 9) 塚田信,浦川由美子,小泉裕子他.食育推進のための有効的手法の検討──女子大学学生食 堂での情報媒体による試み.鎌倉女子大学学術研究所報10.2010; 25‒37. 10) 福田小百合,池田順子.学生食堂における1年間の食教育の取り組み──2005年度から 2010年度にかけての取り組みの効果.京都文教短期大学研究紀要50.2011; 33‒41. 11) 川喜多二郎.発想法.東京:中央公論新社,1967. 12) 川喜多二郎.続・発想法.東京:中央公論新社,1970. 13) 中島正夫,谷合真紀,長瀬ゑり奈他.地域保健対策の検討に PRECEDE-PROCEED モデルを 利用した経験を通して得られたいくつかの知見.日本公衆衛生雑誌2004; 51: 190‒196.
14) Thaler R. H., Sunstein C. R. Nudge: Improving decisions about Health, Wealth, and Happiness. 2008. Yale University Press. London. 遠藤真美訳.実践行動経済学.日経 BP 社,東京.2009.
15) Grunert K. G, Wills J. M., Fernandes-Celemin L. Nutrition knowledge, and use and understanding of nutrition information on food labels among consumers in the U.K. Appetite 2010; 55: 177‒186.
16) 大島明.たばこ対策におけるナッジ (Nudge) の採用とその限界.保健の科学2013; 55: 321‒ 325.