教育・研究における私の 命
吉田 朋美
1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科 はじめに 1999 年 4月に保 学科検査技術科学専攻の助手として 着任し, 保 学科一期生とともに私は教員としての道を歩 みはじめました. その後保 学科には, 修士課程に続き博 士課程が立ち上がり, 保 学研究科へと発展を遂げ現在に 至ります. 私もこのような群馬大学の発展と変遷の時期に, 臨床検査技師の教育に携わらせて頂いており, この 16年 間の経験は, 現在の私の教員としての 命感と責任感の土 台となっています. 私の 命 ①細胞診のスペシャリストを養成するということ 私は,着任と同時に開設された「細胞検査士養成」教育の 立ち上げに携わっています. 種々の学会認定資格中でも難 関として知られる細胞検査士を目指す学生に細胞診断学の 講義, 実習を行い, 多くの学生が 4年生在学中に試験に合 格し, 臨床検査技師とのダブルライセンスを手に社会に羽 ばたいています. 細胞検査士は, 多くの細胞の中から異常 あるいは病的な細胞を見つけ出し, その良・悪の判定を行 う医療専門職であり, 資格試験では専門的知識はもちろん のこと集中力, 忍耐力, 判断力などを 合的に判断されま す. 細胞検査士が陽性と判断した標本は, 専門医とのディ スカッションの後に最終診断が行われるため, 専門医と対 等に意見 換ができる専門的知識とともに, 一方で細胞を 判定するスペシャリストとしての自 の意見を持つ必要も あり, 養成課程を修了した後に, 大学院へ進学し, 研究を続 ける学生もいます. 検査のスペシャリスト, そして細胞診 のスペシャリストとして医療に貢献できる質の高い人材を 育成すること, これが私の 命です. ②臨床検査技師・細胞検査士の目線から研究すること 研究領域では, 細胞診の主要な対象である子宮頚部病変 に着目し,前癌病変 (異形成)あるいは癌とヒト乳頭腫ウイ ルス (Humam Papillomavirus, HPV) との関連性について の研究を行っています. 特に国内でも早くから液状化細胞 診法を取り入れ, 従来の形態学診断に加え, 子生物学的 手法を用いた研究を行っています. 博士学位論文 では, 液 状化細胞材料を用いて, 腫瘍マーカーである p16の免疫染 色と HPV亜型の解析を行い, 癌へ進展するリスクの高い 異形成を的確に検出する方法を開発し, その後も引き続き 液状化細胞検体を用いて, 細胞内の HPVの存在様式およ び量と病変の進展との関連性を解析 して, 病変予測因子 マーカーの意義等, 主として液状化細胞診検体を用い, 子生物学的手法を用いた先駆的な研究を行ってきまし た. 臨床検査のスペシャリストとして, 細胞検査のスペ シャリストとしての目線を忘れず研究に向かう, これが私 の 命です. ―295― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成28年8月17日 修正 平成28年8月29日 採択 平成28年9月1日 論文別刷請求先: 吉田朋美 〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科流 れ
2016;66:295∼296③教育と研究を通して国際貢献すること 子宮癌を早期発見するための検診受診率低迷の原因が若 年層の受診率の低さであることに着目し, 啓発のための新 しい手法である ピア・エデュケーション法 を用い,この 方法の有用性を明らかにしました. さらに発展途上国の子 宮頚癌の早期発見に注目した研究も行っています. また近 年は, 保 医療 野の整備が行われていない発展途上国で の医療格差を軽減し, 癌死亡率の減少に貢献できる検査法 として, 自己採取法」と「液状化細胞法」とを組み合わせ た新しい検査法を実施し, 現地での受容性と有用性を明ら かにする とともに, 現地にて継続可能な検診が実施出来 るよう現地の医療人材の育成にも努めています. また群馬 大学と協定 であるモンゴル国立医科学大学への教育・研 究支援を積極的に行っています. 医療の根幹を支える病理 学検査の 野は, 発展途上国では発展しておらず, その理 由は手作業の多い病理学 野の人材不足が挙げられます. そのため, モンゴルの大学教員を受け入れ, 本学での病理 および細胞診検査技術とその教育方法についての研修を行 い, 本学での研修成果が現地で継続的に活かせるよう, 現 地語の教材作成をはじめ, 現在では共同研究も開始してい ます.大学の教員として,教育・研究を通して国際貢献する こと, これが私の 命です. ④群馬大学の多職種連携教育に寄与すること 保 学科には看護学, 検査技術科学, 理学療法学, 作業療 法学の 4専攻があり, それぞれで独自の医療専門職教育を 行っています. 各職種がそれぞれに責任を持ち医療に携わ ることは基本ですが, 保 学科の特色である, 全人的医療 の観点から, 各職種がチームを組んで医療に取り組むこと を学ぶ「チームワーク実習」を私も担当させて頂いており, 4専攻それぞれの専門知識と目的意識を持つ学生達が議論 を繰り返し, 時には自 の専門性を主張し, 時には相手の 専門性を尊重しながらバランスを保ちつつ, 一つの課題に 取り組むことの重要性を, この実習を通し学んでいます. 現在, 群馬大学の 多職種連携教育研究研修センター」は WHOとの取り決めに基づいた研究・研修を行う専門施設 として活動しています. 私自身も 2014年 10月から 2015 年 3月まで, フィリピンのマニラにある WHO西太平洋地 域事務局にて研修を行い, 先進国, 発展途上国に関わらず, 医療の安全と質を担保するための大前提として「多職種連 携教育」の必要性を学んできました. これからも群馬大学 が誇る多職種連携教育を国内外へ発信し, チーム医療を担 う保 人材を育成すること, これが私の 命です. ⑤成長し続ける人材を目指すこと これからも, 大学の発展とともに自らの発展と開拓を目 標に, 新しい知識や技術を積極的に取り入れ, そして広い 視野を持ち, 俯瞰する目を養うとともに, 国際社会, 国内, 地域そして一番身近な学生に還元・循環できるよう, 大学 人としての 命と責任に真摯に向き合い, なる研鑽を重 ねること, これが私の 命です. 文献
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