I.緒
言 母親 に とって子 ど もを育 て る ことは,人
間性 を 豊 か に し,生
きる実感 が湧 くとい う自己実現 を達 成 す る過程 と して意義深 い行為 で あ る。育児支援 の研究 は,育
児 ス トレスの対処研究 は多 くな され て い るが,育
児 の楽 しみや喜 びな どの育児幸福感 とい う視点 か らの研究 は少 な い。育児 を とりま く 状況 が厳 し くな りつつ あ る現 在,育
児 ス トレスを 回避 す るよ うな支援 とと もに,育
児 によ って もた らされ る幸福感 に対す る支援 が重要な課題である。 Argyl♂)は,幸
福 につ いて「 情緒 的側面 と,認
知 的・ 熟慮 的側面 に大別 で きる」 と して い る。 育 児 ス トレスの研究妙で は Lazarusの ス トレス理論3 ∼。を用 い,ス トレスを幅広 い否定 的な情動 として と らえ,母 親の否定的な情動 に焦点を当てた。Laz― arus° は,情
動 には肯定 的 な内容 の情動 と否定 的 な内容 の情動があると している。 本研 究で は育児 中に感 じる肯定 的な情動 を「 育 児幸 福感 」 と して と らえ,母
親 の育 児幸 福感 と, それ を感 じる際の育児事情 を明 らかにす ることを 目的 と した。 Ⅱ.研
究方 法1.調
査対象 3歳以下 の乳幼 児を育児 して い る母親2.調
査方法(1)調
査施設 A tt B保健福祉 セ ンター母 親 の 育 児 幸 福 感 と 育 児 事 情 の 実 態
長野県看護大学
清水
嘉 子
静岡県看護大学
伊 勢 カ ンナ
抄 録 本研 究 は育児 して い る母親 の肯定 的な情動 を「育 児幸 福感Jと
し,育
児幸福感 を感 じる際の事 情か ら,育
児幸福感 と育 児事情 の実態 を明 らか に した。 3歳以下 の子 ど もを育 児 して い る母 親 にア ンケー ト用紙 を配布 し,Lazarusの
理論 による7項 目の情動 で ある安心,希
望,愛
情,喜
び,感
謝,同
情,誇
りを育 児 中に感 じる頻度 を5段 階評価 と した。 さ らに,そ
れぞれの情動 を感 じる育 児事情 につ いて 自由記述 を求 めた。調査用紙 は188 名 に配布 し101名 か ら回収 された。 結 果 と して母親 が育児 中に感 じる肯定 的情動 の中心 は,愛
情,喜
び,感
謝 で あ り,安
心,誇
り, 希望 と続 き,同
情 は少 なか った。育児幸福感 を感 じる際 の事情 は 14項 目に分類 で きた。育児幸福 感 を感 じる際の事情 は,主
と して「 子 どもの成長・ 発達・ 健康」 および「 子 どもの しぐさ」 など の子 ども中心 の構成であ り,そ
の他 と して「 周囲の援助・ 声かけ 。つなが り」 な どであった。本 研 究 の結 果 は,育
児支援 と して は,①
育児す る中で喜 びや愛情 を感 じた時 の子 ど もの様子 につ い て語れる場を提供すること,②
母親が他者 と良好な関係であるという認知を促すこと,③
子 ども の成長に関する肯定的なフィー ドバ ックによ り母親の努力や能力が認め られること,④
母親が育 児協力を周囲に求め られるように援助すること,⑤
カウンセ リング技術による母親の肯定的な自 己認識を促す といった働 きかけの重要性を明 らかに した。 キー ワー ド:母 親,育
児幸福感,情
動,実
態,育
児事情平成 18年 7月 (2006)〕
(2)調
査期 間 平成 16年 7∼ 8月(3)調
査方法 保健 セ ンター長 に研究 目的・ 研 究 方法 な どを説 明 し,事前 に調査実施 の承諾 を得 た。 調査 は,「3歳児健診」「 1歳6ヵ月児健診」「9ヵ月 育児相談」 で実施 した。調査用紙 の配布 にあた っ て は,来
所 した母親 に研究 目的・ 方法 。研究 の意 義・ 守秘義務・ 研究への協力 お よび協力拒否 が可 能 であ ることにつ いて文書 を用 いて説 明 した。 口 頭 で同意 の得 られた母親 に,ア
ンケー ト用紙 を配 布 した。ア ンケー ト用紙 の回収 は郵送法 で行 った。3.調
査 内容1)対
象者 の属性 母親 の年齢,子
ど もの年齢,子
どもの数,職
業 の有無,就
業形態 (フル タイム・ パ ー ト・ 内職・ 自営),家
族形態 (核家族,複
合家族)の
回答 を求 めた。2)育
児 中に感 じる肯定的な情動の頻度 と育児幸福 感 を感 じる際の事情 育児幸福感 は育児 中に感 じる肯定 的な情動 の頻 度 よ りと らえた。育児 中に感 じる肯定 的な情軸 の 頻度 は①安 心,②
希望,③
愛情,④
喜 び,⑤
感 謝,⑥
同情,⑦
誇 りの7項目について,い
つ もあ る 。ある程度ある 。わか らない 。たまにある・ 全 くないの5件法 によって測定 し,育
児幸福感を感 じる際の事情は自由記述か らとらえた。 Ⅲ。分析方法 情動の強 さは,「全 くないJを
1点 ,「 たまにあ る」を2点,「ある程度ある」を3点,「 いつ もあ る」を4点,「 わか らない」および無回答・重複回 答などの無効回答を 0点 とした。 自由記述 の内容の分析 は,1つ
の質問に対 して 複数の内容が記載 されている場合は,そ
れぞれ別 の内容 として 1件 とし,その頻度を単純集計 した。 内容の分析 は研究者 2名 がすべての項 目について 協議 し,結
果が一致 した ものを項 目別 に整理・ 分 類・ 命名 した。 Ⅳ.結
果1.調
査用紙の回収率 188名 に配布 し,回
収 は 101名,有
効回答 は101 名,回
収率 は53,7%であった。ただ し,対
象の属 性である年齢 については9名 が無回答であった。2.対
象の属性 345 対象者 の年齢 の平均値 は 311±42歳
(min21,max47)で
あ った。子 どもの数 の平均値 は1.7±1.6 人(minl,max4)で
あ った。 職業 の有無 は,有
職22人(222%),無
職 77人(778%)で
あ り,有
職 者 の就 業形 態 は,有
職 者 22人中常勤8人(364%),パ
ー ト9人(409%),
内職1人(45%),
自営4人
(18.2%)で
あ り, パ ー トが最 も多か った。 家族形態 で は,核
家族76人(77.6%),複
合家 族 22人(22.4%)で
あ った。3.育
児幸福感1)育
児 中に感 じる肯定情動 の頻度 ①安心,②
希望,③
愛情,④
喜 び,⑤
感謝,⑥
同情,⑦
誇 りの7項目の情動 別頻度 は,各
平均値 が 安 心 は2.1±1.1,希望 は 23±12,愛
情 は 35±07,喜
びは3.3±05,感
謝 は3.1±1.6,同 情 は1,1±11,誇
りは1.7±1.2で,最
高値 は愛情 の 3.5で「 あ る程度 あ るJ∼
「 いつ もある」,最
少値 は同情 の1,1の「 全 くないJで
あ った。全項 目の 平均値 は24±08で
「 たまにあ る」 ∼「 あ る程度 あ るJで
あ った。2)育
児幸 福感 を感 じる際の情動別事情数 と内容 ①情動別事情数 それぞれの情動 を感 じる際の事情 と して 自由記 述 にあが った内容 は,喜
びが207件(26.0%),愛
情 が 184件(23.1%),感
謝 が 160件(20.1%),安
心 が75件(9,3%),誇
りが66件(8.3%),希
望 が63件(78%),同
情 が43件(5,4%),母
親 の 感 じる情動別事情数 は計 798件 で あ った (表1)。 ②事 情別 内容 とその頻度 自由記述 の内容 を分析 した結 果,育
児幸福感 を 感 じる際の事情 を 14項 目に分類 で きた。 育児幸福感 を感 じる際の事情別 内容 は表 2よ り, 1。「 子 ど もの成長・ 発達・ 健康」 と して,体
・ 心 の成長,精
神 の健康,で
き ることが増 え る,昨
日 で きなか った ことが今 日で き る,言
葉 が 出 るな ど の事情 が あ り,172件
(216%)と
もっと も多 く の事情 を含 んでいた。次 いで,2.「
子 どもの しぐ さ」 と して,笑
顔,寝
顔, しぐさ,喜
ぶ姿,表
情, 頑張 って い る,挨
拶 で きる, ごはんをおい しそ う に食べ る,子
どもどう し遊 んで い る,無
心 に遊 ん で い るな どの事情 が98件(12,3%)で
あ った。表
1
育児幸福感を感 じる際の情動別事情数 件 数 14 13 11 10 No 合計件数(%)
心身の余裕 子 ども 。自分 。家族の将来 自分の生き方・ 成長 自然に感 じる 家庭 円満 。日常生活 子 どもに必要 とされ る 物事への共感 妊娠 。出産 。育児の経験 子 どもとの コ ミュニケー シ ョン 子 どもの優 しさ 。愛情 子 どもの存在 周囲の声かけ 。援助・ つなが り 子 どもの しぐさ 子 どもの成長・ 発達・ 健康 事情 207(260) 19 21 15 36 91 喜 び 184(231) 33 29 22 16 47 愛情 160(201) 25 11 36 55 20 感 謝 75(9.3) 13 22 安 心 66 (83) 37 誇 り 63(78) 23 28 希 望 43(54) 43 同情 情動項 目 次 に,3。「 周 囲の援助・ 声か け 。つ なが り」 と して,夫
の協力,子
ど もの協力,周
囲の協力,実
父母 の協力,周
囲が子 どもを可愛 が る,子
ど もが ほめ られ る,子
どもを通 した人 とのつ なが りな ど の事情 で77件(9,6%)で
あ った。 次 に,4.「
子 ど もの存在」 と して,生
まれて きて くれ た こ と, 自分 の子 ど もで あ る,子
どもを授 か った こ と,血
のつ なが りな どの事情が 70件(88%)で
あ った。 さ らに,5.「
子 どもの優 しさ・ 愛情Jと
して,優
しさ,素
直 さ,「ママ (一番)好
き」 とい う,よ
い 子 に育 って いる,心
配 して くれ るな どの事情 で55 件(6.9%)で
あ った。6。「 子 ど もとの コ ミュニ ケー シ ョン」 と して,一
緒 にい る とき,話
がで き る,子
ど もが抱 きつ いて くる,抱
き しめた ときな どの事情 で50件(6.3%)で
あ った。 7.「 妊娠・ 出産・ 育児 の経験」 と して, 自分 の育児,授
乳 の 時,2児
・3児の母であ ること,子
育 て で生 きる実 感 がわ くな どの事情 で45件(5,6%)で
あ った。 8。「 物事 へ の共感」 と して,虐
待 のニ ュー ス,子
ど もにかか わ る悲 しいニ ュース,ママ仲 間の悩 み, 夫 の叱 りす ぎ,子
どもが比べ られて い る様子,産
後 うつ状 態 の人,戦
争・ 難民 キ ャ ンプの子 ど も, 流産 した人,子
ど もが ほ しいの にいない人 な どの 事 情 で43件(5,4%)で
あ った。9。「 子 ど もに必 要 とされ る」 と して,他
の誰 よ り必要 とされ る, 頼 られ る,泣
いて母 を求 め る,甘
え られ る,「 マ マJと い う,後
を追 われ るな どの事情で40件 (5,0%)で
あ った。 数 と しては少 なか ったが,lo。「 家庭 円満 。日常 生 活」 と して,姉
妹 で助 け合 う,夫
・ 祖父母 と子 ど もが楽 しそ う, 日々の生活,家
族 の絆 な どの事 情 で39件(49%)あ
った。 11.「 自然 に感 じる」 と して,い
つ もある,何
もか も,見
て い るだけで, お金 で買 え な い宝物 な どの事情 で38件(48%)
で あ った。12.「自分 の生 き方・成長」 と して,実
父母 が育 てて くれた こと, 自分 の成長,義
両親が 夫 を育 てて ぐれた こと,実母 が産 んで くれた こと, 自分 の人生 を考 え られた, 自分 の心 の変化,人
を 思 いやれ るよ うにな ったな どの事情 で34件 (4.3%)で
あ った。 13.「 子 ども 。自分・ 家族 の将来」 と して,子
どもの将来・ 未来, 自分 の将来・ 未来, 将来・ 未来 に対 して,家
族 の将来 な どの事情 で23平成 18年 7月 (2006)〕 347 表
2
育児幸福感を感 じる際の事情別内容 とその頻度 No 11 14 13 子 どもの優 しさ・ 愛情 子 どもの存在 周囲の援助・ 声かけ 。つ なが り 子 どもの しぐさ 子 どもの成長・発達・健康 事 情 子 どもに必要 とされ る 物事への共感 妊娠 。出産・ 育児の経験 子 ど もとの コ ミュニ ケ ー シ ョン 子 ども,自分・家族の将来 自分の生 き方・ 成長 自然 に感 じる 家庭円満・ 日常生活 心身の余裕 (体・ 心の)成長,(精神 の)健康,できることが増え る,昨日できなか った こ とが今 日できる,言葉が出る,元気 に生 まれた,何かや り遂 げた,周りよ り優 れている,その時 しか見れない成長が見れた 内容 (頻度順) 一緒にいるとき,話がで きる,子どもが抱 きついて くる,抱き しめた とき,一 緒 に遊んでい るとき,コ ミュニケー シ ョンが取れ る,気持 ちを分か ち合 う, 子 どもと接す るとき,「OOで
きた(した)」と報告 された とき,チュー した と き,心のつなが り,ありのままの付 き合 い 優 しさ,素直さ,「ママ(一番)好き」という,よい子に育っている,愛情,心配 し てくれる,進んで手伝う,感謝される,「おかえりJという,命を大切にしている 生まれてきて くれたこと,自分の子 どもである,子どもを授か ったこと,血 のつなが り,子どもが もた らした幸せ,子どもがいるか ら頑張れる,家族が いる,おなかの中で育ち痛みに耐えて産んだ子 ども,自分や夫 と似ている, 嫌なことがあっても子 どもに癒される,元気を くれる 夫の協力,子どもの協力,周囲の協力,実父母の協力,家族の協力,義父母の 協力,周囲が子 どもを可愛がる,周囲の人に子 どもがほめられる,子どもを 通 した人 とのつなが り,ママ友達ができる,ママ友達に悩みを励まされる, 他人に声をかけられる,友達に大切にされる 笑顔,寝顔,じぐさ,喜ぶ姿,表情,頑張 っている,挨拶できる,ごはんをおい しそうに食べる,子どもどうし遊んでいる,無心に遊んでいる,笑う,挑戦 と 失敗,楽しそう,一生懸命,賢い行動,母親の絵を描 く 虐待のニュース,育児ス トレスのニュース,子どもにかかわる悲 しいニュー ス,ママ仲間の悩み,育児の悩み,子どもの成長の悩み,子どもの嫌な体験, 子どもの失敗,子どもの したいことが思い通 りにいかない様子,夫の叱 りす ぎ,子どもが比べ られている様子,産後 うつの人,育児疲れで子 どもに当たっ て しまう人,子どもを愛せない人,双子のママ,障害児 とその家族,怪我・病 気の子 どもとその家族,ぐずっている子 どもとその母親,上の子を十分にか まってあげられない,兄弟喧嘩 しているとき,戦争・難民キャンプの子 ども, 一人 っ子,流産 した人,子どもがほしいのにいない人 自分の育児,(母乳)授乳時,(2児・3児 の)母であること,子育てで生きる実 感がわ く,親である,1男1女 を産めた,自然分娩,母乳育児,楽しんで育児 し ている,頑張 って育児 している,夫婦協力 して育児 している,思った通 りに 行かない育児を達成 したとき いつ もある,何もか も,愛がなければ育児はできない,わが子を守 りたい,叱 るときも愛がある,今までにない愛,母性愛,見ているだけで,お金で買えな い宝物,育児に懸命な自分を振 り返 って,疲れた リイライラしていて も子 ど もを嫌 った り憎んだ りできない 姉妹で助け合 う,夫・ 祖父母 と子どもが楽 しそう,日々の生活,家族の絆,夫 の子どもへの愛,些細なこと,賑やかな時間,日ま ぐるしい日々,家族一緒に いられる,子どもに囲まれている,家族の喜ぶ姿,家族の笑顔,家族か らの信 頼,喧嘩 してもうまくやれる,夫の自分への愛,夫と接するとき,四季を感 じる (他の誰 よ り)必要 とされ る,頼られ る,泣いて母を求め る,甘え られ る,「マ マ」とい う,後 を追 われ る,慕 われ る,遠くか らで も「 ママ」と見つ ける,愛を ほ しが る,上 の子へのやき もち,保育 園に迎 えに行 くと嬉 しそ う 心に余裕があるとき,仕事を終えて家に帰 って子 どもの顔を見たとき,子ど も 。家族が寝静まっているとき,自分がイライラしているときはうるさく 思 う 子どもの将来・ 未来,自分の将来・ 未来,将来・ 未来に対 して,家族の将来 実父母が育てて くれたこと,自分の成長,義両親が夫を育てて くれたこと, 実母が産んで くれたこと,自分の人生を考え られた,自分の心の変化,人を 思いやれるようになった,自分への親か らの愛情,自分 自身,自分の生き方, 仕事 に対する思い,頑張 ってるねといわれる 50( 6.3) 55(6.9) 70( 8.8) 77( 9.6) 98(123) 172(21.6) 合計件数 (%) 43( 54) 45( 56) 38( 4,8) 39(49) 40( 50) 14(1.8) 23(29) 34( 4.3) 事情別合計数 798件
(29%)で
あ った。14.隅い身 の余裕」 と して, 心 に余裕が あ るとき,仕
事 を終えて家 に帰 って子 ど もの顔 を見 た とき,子
ど も・ 家族 が寝静 まって い るときな どの事情で 14件(1.8%)で
あ った。3)育
児幸福感 を感 じる際の事情 と情動 お よび事 情 間の関連 すべての情動反応 を伴 う育児幸福感 を感 じる事 情 はなか った。「 子 ど もの成長」「 子 ど もの存在」 「 子 ど もの優 しさ・ 愛情」 は,安
心 。希望・ 愛情・ 喜 び・感謝 。誇 りの6情動 を伴 っていた。次 に「 子 ど もの し ぐさ」 で,安
心・ 肴望・ 愛情・ 喜 び・ 誇 りの5情動 を伴 って お り,「周 囲の援助・ 声 か け 。 つ なが り」「 子 どもとの コ ミュニケー シ ョン」「 家 庭 円満 。日常生 活」 日b身の余裕」 も安心 。愛情・ 喜 び 。感謝・ 誇 りの5情動 を伴 って いた。希望・ 愛情・ 感謝・ 誇 りの4情動 を伴 って いた「 自分 の 生 き方・ 成長」 であ った (表1)。 育 児幸 福感件 数798件中の事情 間 の関連 で は, 「 子 ど もの成長・ 発達・ 健 康」 と「 子 ど もとの コ ミュニケー シ ョン」「 妊娠・ 出産 。育児 の経験」 と 「 自分 の生 き方・ 成長 」 で12件,「 子 どもの し ぐ 自然 に感 じる 家庭円満・ 日常生活 さ」と 日ふ身の余裕」で 10件 が 自由記述 の同一文 章 内 に関連 を もった記述 と して表記 されて いた。 また,「子 どもの成長・発達・健康」 は,件
数 が圧 倒的 に多 く育児幸福感 の主 た る事情 と考 え られ る ため図中には二重線で示 している (図1)。 「 物事へ の共感」につ いて は,同情以外 の情動 を 伴 わない とともに,他の事情 との関連 はなか った。V.考
察1,育
児幸福感 を感 じる際の情動反応 育児幸福感 を情動 的側面 か らと らえた場合,育
児 してい る母親 が育児 中に感 じる肯定的な情動の 中心 とな ったの は,「 愛情」「 喜 び」「 感謝Jで
あ り,つ
いで「 安心」「 誇 り」「 希 望」 が あ げ られ, 「 同情」は弱か った。愛情,喜
び,感
謝 は育児幸福 感 の主 た る情動 で あ り,希
望,安
心,誇
りにつ い て も見逃せ ない情動 といえ る。育児幸福感 を感 じ る際 の主 た る事情が子 どもを中心 に構成 されてお り,育
児 中の母親 は子 ど もを中心 にさ らに周囲の 声か け・ 援助・ つ なが りな どの関係か ら情動反応 が起 こって いる。これ らの情動 は心 の余裕や妊娠・ 出産 。育児 の経験, 自分 の生 き方・ 成長 な どの事 周囲の援助・ 声 かけ 。つなが り 子 ども の存在 子 どもの優 しさ・愛情 子 ども 。自分・ 家族の将来 物事への共感 自分の生 き方・成長 妊娠・ 出 産・ 育児 の 経験 子 どもに必 要 とされ る 事 情 頻 度 心身 の余裕 子 どもの しぐさ 子 ど もとの コ ミュ_ケー シ ョン 子 どもの成長・ 発達 。健康 図1
育 児幸 福感 を感 じる事情 とその間違 ←―→ 事情間に関連の記述あり平成 18年 7月 (2006)〕 情 と関連 しさ らに情動 が喚起 されて い ることも明 らか にな った。 同情 は他 の情動項 目とは異 な り,「 物事 へ の共 感」 の事情 との間でのみ関連 が認 め られていた こ とか ら, どち らか とい うと幸福感 の中で も特異 な 情動 といえ る。 これは「 同情」とい う言葉 が,「共 感」「 共 鳴」「賛成」 とい った肯定 的な意 味の他 に 「 哀 れみ」や「 情 け」な どの否定 的な意 味 を もつ こ とが影響 している と考 え られ る。 また
,情
動 を感 じる頻度 は愛情,喜
び,感
謝, 安心,誇
り,希
望,同
情 の順で高 く,情
動 を感 じ る頻度 と育児事情 の件数 も安心,誇
り,希
望 で多 く,両
者 の頻度 と順位 はほぼ比例 して いた。情動 を感 じる頻度 と育児事情 の件数 の順位 の違 いは具 体 的な項 目と抽象 的な項 目に関す る例 のあげやす さやあげに くさが関係 して いた と考 え られた。 さ らに大脳新皮質 による情動 の調節 は,左
半球 は肯定的 な感情 の傾 向が強 く,右
半球 は否定 的な 感情 の傾 向が強 い。 さらに情動 の調整 は右半球 の ほ うが優位 で あ る'∼の。 この ことは,人
間 の情動 は通常否定 的な調整 を受 けやす く,育
児 な どス ト レスを感 じやす い状況 で は肯定 的な情動 を感 じに くく,幸
福感 を感 じることが困難 な状態 にあ る。 石井め によると,肯
定 的 と否定的感情 の双方 の測 定 が,幸
福感 の実態 を と らえ るうえで必要 であ る と述べてお り,本
研究 では愛情や喜 び・ 感謝 。安 心・ 希望 とい った情動 につ いて高 い頻度 で認 め ら れて いるが,ス
トレスや否定的感情 との関係 につ いては明 らか に されていない。今後,肯
定 的 と否 定的感情 の双方 の解 明を進 め ることが課題で ある。 肯定的な情動 を強化す ることが ズ トレスや否定 的 情動 の軽減 につ なが るか につ いて は今後 の課題 で あ るが,肯
定 的 な情動 の中枢 であ る視床下 部 が動 機 づ け行動 の起 こ りやす い部位 で あ る ことか ら, 肯定 的な情動 を強化す ることで育児 に対す る積極 性 を促 す ことがで き ると考 え られ る。2.育
児幸福感 を感 じる際 の育児事情 と育児支援 育児が 自己の成長 に影響 してお り,そ
の成長を 支えるのは 日々の育児行動の 1つ ひとつである。 母親は育児中に肯定的な情動を頻繁に感 じてお り, それ らの情動すなわち育児幸福感は,発
達課題の 達成 という点で も重要である。本研究の結果,育
349 児幸福感 を感 じる際の事情 は,母
親 自身 の成長 を 実感 し,子
どもとの愛着 関係 を とお して多 くの情 動 と して育 児幸福感 を感 じて いた。 Argylelつ は,幸福感 を増進 す る方法 と して,「短 期 的増大,最
も実効 の あ る快 活動 の頻度 を増 す, 他 者 との 良 好 な 関 係,申
し分 の な い仕 事 と レ ジャー,人 々が物事 を もっと好意 的角度 か ら眺め・ もっと好意 的 自己評価 を し・ もっと実現可能 な 自 己 目標 を設定 して不幸 を助長 して い る誤 った信念 を放棄 させ るよ うに企 図 され た各 種 の治療 形態」 な どをあげてい る。 た とえば,楽
しい最近 の出来 事 を考 え る,喜
劇 映画 やテ レビを視聴す る,楽
し い音楽 を聴 く, 自分 の よい ところ 。好 ま しい とこ ろを見つ け出す な どを意 味 して お り,「楽 しい」雰 囲気 の 中に 自分 をお き,自
分 の気分 を「 楽 しい」 方 向へ と自然 な形で導 くことで あ る。育児幸福感 を感 じる事情 の 中心 が「 子 ど もの成長・ 発達・ 健 康」お よび「 子 どもの しぐさ」で あ った ことか ら, 育児す る中で喜 びや愛情 を感 じた子 どもの様子 に つ いて,語
れ る場 を提供 す ることは有効 と考 え ら れ る。育児相談 やその他 の育児 してい る母親 が集 まる場 において,母親 の相談 を受 けたあ と,「最近 育 児 を していて嬉 しか った ことはあ ります か」 と 投 げか け,母
親 同士 で話 し合 って もらうな ど,育
児 の辛 い部分 だ けでな く,嬉
しい 。楽 しい 。幸 せ な部分 に も意識 的 に感 じられ るよ うに援助す る。 また,育
児 をす る母親 は振 り返 りの 日誌 をつ け ることが有効 で あ り,ち
ょっと した時間の確保 が 課題 とな る。「 子 どもの成長・ 発達・ 健康」 および 「 子 ど もの しぐさ」「 周 囲の援助・ 声か け 。つなが りJお
よび「 子 どもの優 しさ。愛情」「 子 どもに必 要 とされ る」,そ
して「 家庭 円満 。日常生活」 に着 目 し,1日 の終 りに夫 か ら「 今 日子 どもとどうだ っ た ?」 とい うよ うな問いか けを して もらい,「子 ど もが生活 の中でで きることが増 えた様子 や,母
親 や友人 と楽 しく過 ご して い る様子,子
ど もが甘 えて くる可 愛 ら しい様子 」 につ いて思 い起 こ し, 楽 しか ったかか わ りあ いや遊 び につ いて確認 し, 子 どもが ぐず って い るのをあやす の に有効 だ った 方法 を話 しなが ら確認す ることで夫が育児 を一緒 に行 って くれて い るとい う一体感 な どを感 じられ る。 夫 に「 1日 の終 りにその 日の子 どもとの出来事 を聞 くだ けで も精神 的援助 と して有効 で あ る」 とい う意識づ け し
,行
動 を啓発 してい くことは有 効 と考 え る。 幸福 な結婚生 活・友人・ 家族・親族・ 仕事仲 間・ 近 所 の人 々 と関係 を よ くす るた め に は本 人 の コ ミュニケー シ ョン能力その ものが重視 されている。 「周 囲の援助・声 か け」 は,そ
の他 の幸福感 の中で も中心 的な位置 を示 してお り,特
に感謝 の情動 を 伴 う幸 福感 で あ った。 この ことか ら,園
田12)の 述 べ るよ うなオ プテ ィ ミステ ィックバ イアスを利 用 して他者 の協力 を認識 し,「自分 は色 々な人 に支 え られて育児 してい る」 または「 さまざまな人が 協力 の協 力 が得 られて い る」 と認知 す る ことで, 他者 と自分 との関係 が良好 であ ると認知 し,感
謝 の情動反応 を惹起す ることにつなが り有効である。 さ らに,自
分 の育児 は うま くい ってい る と感 じ ること,育
児 を通 して 自分 があ る役割 を もった人 間で あ ると認識 で き,育
児 してい る者 同士 の間で あ る種 の連帯感 を感 じられ ることは重要である。 「 子 ど もの成 長・ 発達・ 健康 」 や「 子 ど もの優 し さ・ 愛情」「 妊娠・ 出産・ 育児の経験」 と「 自分 自 身 の生 き方・成長」 が関連 しあ って いる ことか ら, 「 子 どもが よ く育 って い る」とい うことを 自分 の育 児方法 や努力 の成果 と して と らえ ることを促 す こ とが有効 で あ る。 この援助 は,周
囲の人 間,特
に 育児相談 な どを受 ける専 門家 が,母
親 に対 してそ の努力 を認 め,子
どもの成長 を肯定 的 に母親 に返 して い くことが具体的な援助 と してあげ られ る。 また,今
回「 同情」 が示 した よ うに,共
感 が あ る 種 の幸福感 であ った ことは,育
児 して い る もの同 士 の連帯感 を育 む,育
児 サー クル や母親 が集 まる 機会 や場 の提供 が母親 に対す る援助 にな ることを 示 唆す る。 一方,母
親 に と り育児 か ら解放 され るわずかな 時間 は大変重要 であ り,子
ど もを任せ られ る相手 や場 が あ ることが大切 で あ る。育児 して い る母親 の休息を確保 し弛緩 を促すため,育
児協力者 が必 要 で あ り,何
で も自分 で頑張 りす ぎず,夫
や家族 または育児支援 セ ンターな どの社会的サポー トに 育児 を任せ て休 む時間を確保す ることも,時
には 重要 で あ ると伝 えてい く。最後 に,カ
ウ ンセ リン グが病 的な場合 だけでな く健常者 に も有効である。 専 門職者 に対 し,カ
ウ ンセ リング技法 について学 習 し技術 を習得す ることも有効 な援助 とな ると考 え る。 Ⅵ.結
語 母親 が育児 中に感 じる肯定 的情動 の中心 は,愛
情,喜
び,感
謝 で あ り,同
情 は少 なか った。育児 幸 福感 の事 情 は主 と して「 子 どもの成長・ 発達・ 健康」 お よび「 子 どもの しぐさ」 な どの子 ども中 心 の構成 であ り,子
ど もとの関係 の中で幸福感 と しての情動 が認 め られて いた。 さ らに,「 妊娠 。出 産・ 育児 の経験」 や「 周 囲の援助・ 声 か け 。つな が り」 や「 自分 の生 き方・ 成長」が幸福感 として の情動 に関係 していた。 さまざまな角度 か ら母親 へ の支援 を検討 してい くことが課題 とな る中で, 本研究 で明 らか に された母親 の育児幸福感 を感 じ る事情 に着 目 し,肯
定 的な情動 を喚起す る働 きか けが重要 にな って くると考 え る。 (謝辞:最後 に本研究 にあた り,ア
ンケー トに ご 協力 いただ きま したお母様方,お よび A tt B保 健 セ ンター スタ ッフの皆様 に深 く感謝 いた します) 文 献1)Argyle,M著
,石
田梅男訳 幸福の心理学,誠
信 書房,1994,1-15
2)清水嘉子 育児 ス トレスの実態研究 ―ス トレス情 動反応 を中心 に して一 母性衛生.2003,44 (4), 372-378 3)R Lazarus他著,本明寛他訳,ス トレスの心理学. 東京,実
務教育 出版,1996,269-277.
4)S Folkman著 ,黒
田弘子訳.パ
ー ソナル・ コン ト ロール,ス トレス,コー ビング・ プロセス理 論的分析 看護研究1998,21(3),35-52 5)本明寛.Lazarusのコー ピング (対処
)理
論 看 護研究.1998,21(3),17-22
6)本
明寛 ス トレス と情動 の関係.ス
トレス科学 2000, 15(3), 219-220 7)内村英幸編 情動 と脳一精神疾患の物質的基礎一 金剛出版,1981,186-194,241-256
8)伊
藤正男,梅
本守,山
鳥重他 岩波講座 認知科 学6.岩
波書店, 1994, 25-34, 38-47,61-69
平成 18年 7月 (2006)〕 9)Paul D MacLean著 法橋登編・ 解説 二つの脳 の変化 工作舎
,1994,14-159,213-233
10)石井留 美 主観 的幸 福感研 究 の動 向:コ ミュニ テ ィー心理学研究1 1997,(1),94-107, 11)前掲書1)218-237
351 12)園田明人 随伴性判断の研究:共変動バ イアスと depressive realism, および情動・ 行動 の分 析 静 岡県立大学平成9∼ ■ 年度科学研究 補助金 (基盤研究(C)(2))研
究成果報告 書,2000A study on the reality of child care happiness and child care cvent in mothers
Nagano College of Nursing Yoshiko Shi=nizu
School of Nursing l」 niversity of Shizuoka Kanna lse
Abstract
To exaHine types of support with which inothers can find lnol・ c happiness in childcare, this study focused on the emotional diFnenSion of childcare happiness, follo、 ving theories advocated by Lazarus Defining positive emotions that mothers feel during childrearing as childcare happiness, the research
aimed at revealing the truth about childcare happiness by investigating the circumstances under
which lnothers feel childcare happiness A questionnail・ e、vas distributed to mothers、vho Mrel・e rearing children aged threc or under, asking thena to evaluate, on a five― point scale, the degree to、 vhich they felt peace, hope, 10ve, joy, gratitude, sympathy, and pride during childcare. The questionnail・ e also included open― ended tuestions about the childcare contexts in、 vhich they experienced each of the
emOtional ranges There were 101 responses out of 188 questionnaires distributed to those mothers. It was found that love, ioy and gratitude、 vere the maior poSitive emotions felt by mothers during
childcare, follo、ved by peace and pride, while sympathy、 vas much less experienced. Responses on
the circumstances of、 vhere childcare happiness had been experienced、 vere divided into 14 categories,
with most related to children, such as‖ children's growth, development and healthtt and"childrents gestures and actions‖ Other categories include Wsupport and conHnunication opportunities offered by others"and"relationships with others" These results suggest what type of childcal・ e support can enhance mothersi childcare happiness. They include:
1)Providing situations where lnothers can talk about the appearance and behaviors of their children for、vhich they feelioy and 10ve while caring for them
2)Encouraging inothers to reahze that they lnust keep a good relationship、 vith other people around
them
3)Recognizing lnothers'efforts and capabilities with positive feedback on the gro、 vth and development of their children
4)Helping FnOthers to ask others for childcare assistance
5)Providing counseling to mothers so that they、 vill develop positive perceptions Of themselves