• 検索結果がありません。

ラグジュアリー製品 : ブランド卓越性の役割

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ラグジュアリー製品 : ブランド卓越性の役割"

Copied!
15
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ラグジュアリー製品 : ブランド卓越性の役割

著者

内田 成

雑誌名

埼玉学園大学紀要. 経済経営学部篇

20

ページ

75-88

発行年

2020-12-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1354/00001308/

(2)

2.ラグジュアリーの4P  歴史的にみると、中世においては奢侈禁止 令によってそれぞれの社会階級は着ることが 許されるものと禁止されるものとを事細かに 指定されていた。その根本的な理由は、社会 ヒエラルキー内部で区別し、秩序を維持のた めに特定の織物や装飾品をある社会階級のた めに取っておくためである。18世紀までに、 あらゆる奢侈禁止令の終焉にもかかわらず、 社会的地位の目印としての個人的資産の利用 は存続している。  現在ではだれもが財布、時計あるいは靴を 所有しているが、特定のブランドの財布、時 計あるいは靴は消費者の特定の階級の区別の 目安となる特徴をもっている。たとえば、グッ チの「ニューブリット」のホーボーバッグ(695 ドル)を持っている女性とコーチの「アリシ グニチャー」のホーボーバッグ(265ドル) を持っている女性は社会的地位に関して非常 に異なる重要なものを伝えている。しかし、 ボッテガ・ヴェネタのホーボーバッグ(2450 ドル)に関しては状況が異なる。というのも、 1.はじめに  ラグジュアリー製品が社会的地位を示すも のであることは、よく知られているが、本稿 では、Hanらの「ラグジュアリー製品による 地位の伝達:ブランドの目立ち度」1)を採り 挙 げ、 検 討 す る こ と と し た。 と い う の も、 Hanらは、ブランドのマークやロゴの目立ち 具合を反映した「ブランド・プロミネンス」 と消費者を富裕度や地位欲に応じて4つのグ ループに分類する分類法、すなわちラグジュ アリーの4Pを提案し、それぞれのグループ が、目立ったブランド品や目立たない高級品 を好むかどうかが、自分や他のグループの人 との付き合いや解離の欲求にどのように対応 しているかを実証しているからである。また、 偽造品と関連にも言及している点も興味ぶか い。かつてヴェブレンは次のように述べてい る。「いかなる高度に組織された産業社会に おいても財の評判は究極的に依存している基 礎は金銭的な強さである。そして金銭的な強 さを示す手段や名声を獲得し維持する手段は 閑暇と財の衒示的消費である」2)

─ ブランド卓越性の役割 ─

Signaling Status with Luxury Goods

The Role of Brand Prominence

 

内 田   成

UCHIDA, Minoru

キーワード : 面子消費、衒示的消費、ブランド卓越性、偽造品

(3)

プに分類している。一般的に個人の所得が高 くなるにつれて、ラグジュアリー製品購入に 対するその人の意向は大きくなる。それゆえ に、ラグジュアリー製品のメーカーは、より 多くの所得を持っている人々の間で選好がど のように変化するのかに最大の関心がある。  第二にラグジュアリー製品は、これまで機 能的効用とは別に所有者に名声をもたらす特 定のブランド名のついた製品の使用あるいは 誇示をするような特徴をもった商品であると されてきた。Hanらは、地位に関連した商品 における個人的差異を説明し、それらが所有 者に与える社会的地位あるいは社会的尊敬価 値のための財やサービスを購入する傾向、と 定義する。それゆえに、どの程度まで消費者 がラグジュアリー製品を消費することで名声 を得ようとしているかによって消費者を分類 する。つまり、冨と地位消費がどの程度まで その行動を動機づける力となっているかに よって、消費者を4つのグループに分けてい る。  この分類から生まれる極めて重要なインサ イトは、この4つのグループが相互にどのよ うに異なっているかを明らかにすることであ る。つまり、誰と関わることを求め、また、 関わらないことを求めているのか、衒示的に あるいは非衒示的にブランドラグジュアリー 製品を選好し、対応するのか明らかにするこ とである。消費者は典型的なブランドユー ザーと結びついた、あるいは類似した欲望の 結果として、しばしばブランドを選択する。 さらに自己プレゼンテーションとしての関心 が消費者を分離的レファレンスグループと結 びついた商品の選択を避けるように導く。結 合動機と分離動機とは必ずしもコインの両面 であるということではない。つまり、ある集 ボッテガ・ヴェネタはバッグの内側にブラン ドのバッジがつけるという明白な「ロゴなし」 戦略とっているからであり、そのハンドバッ グ(purse)は「知っている」人だけが識別 できるからである3)  ブランドが製品に異なったマークをつけ、 多かれ少なかれ目立つように製品を設計する ことは珍しいことではない。ブランドの卓越 性とは、観察者がどの程度までそのブランド を確実に認識することに役立つ人目につく マークをもっているかということである。 メーカーはさまざまな消費者のタイプに対し て「派手な(loud)」すなわち衒示的なブラ ンディングを製造したり、静かな(quiet) すなわち目立たないブランディングの製品を 製造したりすることもできる。Hanらの研究 は、静かな製品を好む消費者と派手な製品を 好む消費者のタイプを識別し、これらの違い の明らかにしている。シンボルやスローガン をはじめとし、ブランドの体系の特徴まであ るブランドを構成する決定的に重要な要素に ついて非常に多くの研究があるが、少数の例 外を除いては、その殆どにおいて製品に対す るブランドアイデンティティマークの卓越性 を検討していない。ブランド卓説性の構築は、 ブランドマークあるいはロゴの相対的衒示性 が、どのように、その所有者のさまざまな伝 達意図を反映しているかを明確にすることで あるが、消費者なかには派手なブランディン グよりも静かなブランディングを好むものも いる。というのも、彼らは異なった消費者集 団と自分自身を結合させたり、分離させたり したい、と思っているからである4)  そこでHanらは、第一に富と社会的地位へ のニーズという二つの明確に認識でき、測定 可能な特性に基づいて消費者を4つのグルー

(4)

ついたブルデューが「文化資本」として言及 したものである。成金にとってルイ・ヴィト ンのはっきりと認識できる「ルイ・ヴィトン」 のモノグラムあるいはポピュラーなダミエ キャンバス(市松模様)のパターンはラグジュ アリーと同義である。というのも、これらの 商品は、彼らよりも社会的地位の低い人々に は手の届かないものである、ということを伝 えるものだからである。しかしながら、彼ら はエルメスのバッグあるいはヴァシュロンコ ンスタンタンの時計の詳細を認識しているあ るいは個々の価格を知っているとは考えられ ない。もちろん成金は富裕である。彼らが目 立たない商品を買わないのは、彼らが社会的 地位を熱望しているためである。彼らは何よ りもまず、持たざる者から自分自身を区分あ るいは分離する一方で貴族やその他の成金と いう持てる者と結びつくことに関心をもって いる。  第三のカテゴリーは「気取り屋」である。 成金と同様に彼らは社会的地位のために消費 することに非常に動機づけられている。しか し、気取り屋は実際に本物のラグジュアリー 製品を購入するために十分な富をもっていな い。にもかかわらず、富をもっていると見ら れ、認識され、貴族と結びつけられることを 望み、さほど豊かではない人々と切り離して 考えられることを望んでいる。それゆえに、 彼らはとりわけ偽造ラグジュアリー製品を購 入しがちである。気取り屋の場合には、ブラ ンドの社会的地位が重要であるから、入手で きない場合にはオリジナルの代わりに安価な 偽造品を購入する。したがって偽造品のハン ドバッグは、そのブランドを見せびらかす際 の衒示性あるいは派手さをもったラグジュア リーハンドバッグのコピーであるべきである 団と結びついた欲望は、正反対の集団からの 分離に対する欲求を暗示しているわけではな い。たとえば、ハーレーダビッドソンのライ ダークラブのメンバーはスズキあるいはカワ サキのオートバイ忌み嫌っているわけではな いし、その所有者から離れていたいと思うわ けでもない。Hanらは、この分類法によって 作り出された4つの消費者のグループのそれ ぞれにラベルを貼り、それぞれのグループ同 士の結合あるいは分離欲求に基づいて示され る動機を明らかにしている。  Hanらは、消費者を4つのグループに分け、 それを「ラグジュアリーの4P」と名づけた。 す な わ ち、「 貴 族(patricians)」、「 成 金 (parvenus)」、「気取り屋(poseurs)」と「プ ロレタリア(proletarians)」である。  第一のカテゴリーは「貴族」である。「貴族」 はかなりの富を所有しており、その他の貴族 に対する水平的シグナルとして役立つ目立た ないブランド製品にプレミアムを支払う。そ の他の階級の消費者から自らを分離するより も、むしろ、同じ階級にいるその他の貴族と 結びつくことの方に関心を持っている。彼ら は微妙なシグナルを使う。というのも、その 他の貴族だけが彼らを解釈することができる からである。これにより貴族たちは大衆から 自分自身を差異化するためにラグジュアリー ブランドを使っているという誤解を回避して いる。つまり、貴族は多くの富を持っている が、名声目的の消費することをあまり必要と せず、その他の貴族と結びつきに関心をもっ ている、といえる。  第二のカテゴリーは「成金」である。「成金」 はかなりの富を所有しているが、微妙なシグ ナルを解釈するための鑑定眼はもっていない。 その要素は典型的に彼らの社会的地位と結び

(5)

ものである。そして、時間の経過とともに変 化が生じてくる。人間の価値がしばしば巨大 な富を獲得した業績によって評価され始める ように変化した。信頼できる関係が功績と世 俗的な成功の間に築かれた。給料の高い仕事 は主に知性と能力によって手に入れることが できた。富者は単により多くの富を所有して いるだけでなく、それらは成功の証としての 機能をもっている。つまり豊かさは次第に社 会的地位の標識となった。富と社会的地位は それ以来、密接不可分となった6)  この点についてヴェブレンは『有閑階級の 理論』において、富の蓄積は実際に社会的地 位を与えるものではない。むしろ社会的地位 を与えるのは富の証拠である。それはその浪 費的表現を必要とする―『衒示的消費』とし て描かれる行動である、と主張した。ヴェブ レンは、有閑階級は銀食器類、手塗の陶磁器 や食事の際の高価なテーブルリネンなどを使 う。この階級のメンバーが素晴らしい銀食器 類を購入するのは、それを使って口に食物を 運ぶためではなく、そのようなものを購入で きるということを見せびらかすためである。 ヴェブレンは、所有者に名声を与える事例と して、手入れの行き届いた芝生、最新のファッ ションや珍しいドッグフードなどを挙げてい る。それはこのようなアイテムが非常に高価 であることを証拠立てるものだからである。  現代のマーケティングの研究のおいても消 費者の生活における所有物の象徴的役割は認 識されている。人々が自分の所有物に基づい て他人について推論する、ということは広く 認められている。さらに、それらの推論はそ の人が所有しているものによって測られる他 人の成功を反映している。成功を象徴する対 象物は、その製品カテゴリーにおけるアイテ が、安価であるということも気取り屋に訴え る点でもある。  第四のカテゴリーは「プロレタリア」であ る。「プロレタリア」には地位意識があまり なく、さほど豊かではない消費者を識別する ための狭い意味で使っている。プロレタリア は単に地位のための消費によって動かされる わけではなく、地位財を使用することによる シグナルにも関心持つこともないし、その意 思もない。彼らは貴族階級(upper crust)と 交際するわけではないし、類似した質素な手 段を持つ他人から分離していないし、派手な 贅沢も好まないし、軽蔑したりもしない5) 下図はこれらの関係全体のフレームワークを 図示したものである。(図表-1) 3.地位、シグナリングとブランディング  地位は古代社会に起源がある。人は社会階 層にそれぞれの「場所」をもっていた。この 場所は、たとえば、カースト制度のように出 生あるいはたとえば王によって騎士の爵位を 授けられるかのいずれかによって獲得された 図表-1

(6)

 成金と気取り屋との間の関係はヴェブレン の古典的な議論を反映している。それは上流 階級のメンバーは自分自身を下層階級から分 離するために、すなわち差別的比較をするた めに衒示的商品を消費する。一方、下層階級 のメンバーは上層階級のメンバーと自らを関 連付けるためにまた、そのメンバーとして認 識されるように衒示的に消費する、すなわち 金銭的見栄をおこなう。気取り屋は成金を真 似るための派手なシグナルを好む。彼らは、 派手な製品を購入するためにやりくりする。 しかし、財力おいて劣っているために、気取 り屋とは対象的に偽造ラグジュアリー製品を 購入する傾向がある。また、他の階級の人々 との分離にあまり関心がない消費者の集団が 存在する。それは、他の貴族だけが認識でき る微妙にブランド化された製品のためにプレ ミアムを支払う貴族である。 4.ブランドの卓越性と価格との関連  Hanらはデザイナーハンドバッグ、ラグ ジュアリー自動車とメンズシューズというラ グジュアリー製品の3つのカテゴリーに関し て価格とブランドの卓越性の間の関係を調査 している。ハンドバッグを選んだのは、それ 今日のラグジュアリーブランドを動かすエン ジンと考えたからである。さらにハンドバッ グに加えてメンズ靴(ルイ・ヴィトン)と自 動車(メルセデスベンツ)も併せて分析して いる。Hanらの考えでは、より高価な製品に おいては目立たない、より微妙なブランドア イデンティティが、そして、さほど高価では ない製品においては、衒示的なブランドアイ デンティティが存在することを明らかにする ことであった。つまり価格とブランドの卓越 性との間に負の相関があるのではないか、と ムの平均的な価格に比べて高価になりがちで ある。地位財は非常に人目につきやすいカテ ゴリーにおいて表れる。それは一般に高所得 と関連している。たとえ自動車ではベント レー、たとえば、ファッションではディオー ルや宝石ではティファニーといったような商 品の購入が当てはまる7)  消費者は地位が富の物質的な見せびらかし によってもたらされるために機能的には同等 でもより価格の高い商品を購入する。また、 より高い価格それ自体が消費者に、その商品 を購入することができる少数のものの一人と しての優れているという優越感を与える。あ る製品あるいはブランドのポテンシャルはラ グジュアリー製品の使用によって社会的地位 を示すことである。また、それは、そのシグ ナルを正しく判読することができる観察者の 能力に依存している。それは、ある商品の相 対価格をある程度の正確さで判断することと 等しい。購入される商品の価格は地位を暗示 しているが、価格それ自体が地位ブランドの 望ましさを決定するわけではない。ブランド 選択がそのブランドを使っている人のタイプ についての意味のある社会的シグナルをその 他の消費者に送っている。消費者が特定のブ ランドから引き出すその象徴的意味は、しば しば、ブランドとそのユーザーあるいはその ブランドを購入している消費者のタイプとの 関係に基づいている。消費者は、彼ら自身が 属しているグループによっても影響を受ける。 このグループには結合と分離という二つの種 類がある。このことは、誰がブランドを使う のかということがブランドイメージに統合さ れ、なぜ消費者が特定のブランドに惹きつけ られるのか、また、なぜ他のブランドを避け るのか説明するのに役立つ8)

(7)

ように、価格が相対的に低い製品により目立 つ、衒示的なものが使われていることが分 かった。  このことからラグジュアリーブランドであ るグッチやルイ・ヴィトンは目立たない、つ まり、そのブランドを余り人目につくように は誇示していないハンドバッグや靴のブラン ドにより注力している、ということがわかっ た。メルセデスは低価格の車により大きなエ ンブレムを付けているが、それは、より高価 格のクラスの自動車を購入している人々はブ ランド卓越性について異なる評価基準を持っ ている、という証拠である、といえる。これ らの結果は、ブランド名をあまり衒示的に示 さないラグジュアリー製品にプレミアムを支 払いたい、という考え方を持っている貴族の ような人々が存在するという考え方を支持す る。そのブランド名をより目立たせる低価格 戦略はジェンダーに関係なく、ファッション 性の高い靴あるいは自動車のような耐久性消 費財といったカテゴリーに対しても適用でき るように思われる9)  次の節では、Hanらがブランド卓越性と偽 造ラグジュアリー製品の市場との関係をどの ように捉えているのかをみてゆくことにする。 5.ブランド卓越性と偽造品  偽造品10)はラグジュアリー製品を所有する ことを熱望するが純正品を購入できないある いは払いたくない顧客を満足させる。ラグ ジュアリーの4Pでいえば、プロレタリアよ りもむしろ気取り屋は一流ブランドと結びつ いている社会的地位を渇望する。さらに気取 り屋は成金からヒントを得ている。成金は、 たとえ意図していいなかったにせよ容易に解 読できるシグナルを使う。このことは偽造品 考えている。  Hanらは、それぞれのハンドバッグを材質 やサイズなどによってコード化した。これら の主要な材料のカテゴリーは(1)生地(た とえば、デニム、キャンバス)、(2)なめし 革(leather)、そして(3)珍しい皮革(た とえば、駝鳥)などである。ブランド卓越性 (目立ち度)については、どの程度まで、さ まざまなSKUが観察者にブランドロゴあるい はマークの認知を衒示的的に見せびらかすか、 によって変化するか把握することである。そ れは、次の二つの基準による。1. このバッグ のトレードマークはどの程度目立つのか。2. どの程度まで、このバッグはグッチあるはル イ・ヴィトンの製品として認識されうるのか。  調査の結果から得られた最も重要な発見は 「卓越性(目立ち度)」という変数と卓越性と ブランドの間の相互作用に関するものであり、 Hanらの予想通りの結果となった。次に同じ 手法でスポーツカーのメルセデスのエンブレ ムの大きさを検討している。ブランド卓越性 (目立ち度)の判断はわかりやすい自動車の グリルの上にディスプレイされていうトリス ター(スリーポインテッドスター)のメルセ デスのロゴのサイズを使った。エンブレムの サ イ ズ は7.6セ ン チ か ら18.5セ ン チ ま で で あった。結果は、さほど高価格ではないメル セデスの自動車はより大きなエンブレムを誇 りがちである、ということがわかった。  さらに、この結果を一般化するためには、 もっぱら男性のために提供されているカテゴ リーであるルイ・ヴィトンの2009年の男性用 靴でも調査をおこなった。ブランド卓越性と レザーの品質(なめし革、エナメル、ニシキ ヘビ)との関係を調べた結果、レザーの品質 がもつ重要な効果を示した。先の結果とどう

(8)

を検討している。その結果は、価格はどのス タイルをコピーするかを決定する場合に、偽 造品メーカーにとって意思決定の変数ではな い、ということがわかった。価格が認識でき ない場合、偽造品メーカーはより人目につき やすいハンドバッグを製造し、販売するよう になると思われる。この分析が示しているよ うに、オリジナルのハンドバッグが人目につ きやすいほど、偽造品メーカーによってノッ クオフされやすい、ということである12)  それでは、どのようにして偽造品メーカー は価格を設定するのか調べた結果、偽造品 メーカーがどのハンドバッグのスタイルをコ ピーするか決めた場合、彼らはオリジナル製 品のメーカーによって課せられたか価格を基 準に提供物の価格を決定する、ということが わかった。換言すれば、偽造製品の価格はそ のバッグがいかに人目につくかどうかにかか わらず、オリジナル製品のメーカーによって 高い価格で販売されているバッグ関しては、 より高い価格を模造品に対して付ける。偽造 品メーカーは相対的に人目につくバッグを販 売することに限定しているが、その後、オリ ジナルのメーカーの製品ラインにしたがって 価格を設定している。以上からわかるように、 ハンドバッグの偽造品メーカーが模造するた めに選んだのが人目につくハンドバッグであ り、これらは成金が好むバッグである。偽造 品を最も購入する傾向がある気取り屋は成金 が見せびらかすもの、すなわち、人目につく ハンドバッグを求めるように思われる。それ は成金たちと自分自身を人目につくようにし たいという欲求と結びつく13) 6.微妙なブランドの手がかりの認識  貴族はラグジュアリー製品購入のもってい 市場が成金のもっている派手なハンドバッグ から主としてなりたっているということを暗 示している。偽造品のメーカーの作る偽造品 が低価格で派手なラグジュアリー品のコピー でありがちなのは、それらが気取り屋の求め るものだからであると考えられる11)  この仮説を検証するためにHanらはコピー ではないオリジナル、オリジナルのコピー、 fake-fakes(グッチあるいはルイ・ヴィトン のように見えるように偽造品製造業によって 作り出されたオリジナルのデザイン)という 3つのデータを使い分析をおこなった。バッ グのタイプとブランドのもつ重要な効果との 関係についてはわかったが、それらの間に相 関関係はない。偽造品メーカーはかなり目立 つバッグをコピーすることを選択している。 さらに、偽造品メーカーは独自のさまざまな タイプのルイ・ヴィトンあるいはグッチの バッグを作っている(たとえば、fake-fakes) 場合、それらの作っているものはかなり目立 つものである。平均的にみて、ちょうどコピー 製品と同様に人目につく。これらの結果は、 偽造品のハンドバッグはラグジュアリーブラ ンドの製品ポートフォリオの中で低価格で目 立つアイテムをコピーしがちである、という 仮説を支持するものである。  すでに見たようにブランド卓越性(目立ち 度)は価格と負の相関関係にある。それゆえ に、偽造品製造業はブランド卓越性ではなく 価格を基礎に偽造する製品を選んでいる、と 言えるかもしれない。ブランド卓越性がどの スタイルをコピーするのかについての偽造品 製造業の意思決定を促進する要因であったか どうかを検証するために、Hanらはオリジナ ルのハンドバッグが価格、ブランドおよびブ ランド卓越性の関数としてコピーされる確率

(9)

見せられた。そのうち6つは重要なバッグ だった。これらの6つのバッグはグジュア リーブランドであるシャネル(最も高価)、 ルイ・ヴィトンおよびコーチ(最も安価)の 3つのペアが含まれていた。それぞれのブラ ンドに関して、われわれは卓越性のスケール でハイエンドの評価であることをプリテスト したものと、ローエンドのものであったバッ グを選んだ。残りの3つバッグは高価でない フィラーである。一つはラルフローレン、一 つはキプリング、そしてもうひとつはロン シャン。ルイ・ヴィトンとコーチ双方にとっ て、目立たないバッグは人目につくバッグよ りも高価であった。シャネルにとって、人目 につくバッグはより高価であり、この組み合 わせのなかでは最も高価であった。ラグジュ アリーブランドとしてのコーチの位置づけは 激しく議論されるけれども、それまで合衆国 におけるハンドバッグおよびレザーアクセサ リーのマーケットリーダーであったし、消費 者が最も親しみやすい26のブランドラグジュ アリーを分析したラグジュアリー研究所の 「ハンドバッグブランド2008」で一位にラン クされているために、このブランドを取り入 れられている。  第一の条件のもとでは、これら9つのハン ドバッグの写真は個々のブランドネームがそ れぞれのイメージの下にプリントされ提示さ れた。第二の条件のもとでは、ブランドネー ムは取り除かれ、バッグはいかなる追加情報 もなく提示された。回答者は9つのバッグを 最も高価なものからもっとも安価ものまでラ ンクづけすることを要求された。  貴族はブランドネームがないものに対して さえ、目立たない名声のあるバッグを認識で きる。しかしながら、ブランドは非貴族にとっ る際立った特徴と一致している。貴族は人目 につくようなブランドの誇示に対するニーズ を持っていないが、製品や価格は知っている。 それとは対照的に、貴族ではない成金、気取 り屋やプロレタリアはラグジュアリー製品の もつ微妙な手がかりがわからないが、ブラン ドや社会的地位の含意を認識するための人目 につくようなシグナルを必要とする。貴族は 相互に微妙な手がかりを使うのに対して、成 金は気取り屋やプロレタリアと分離するため に人目につく手がかりを使わねばならない。  そこでHanらは、貴族と非貴族との間のブ ランド認知と価格知識の関連におけるシグナ ル認知に関するブランドのインパクトとブラ ンド卓越性の検証に着手している。貴族はそ の他のグループのメンバーに比べて微妙なブ ランドの手がかりを認識しやすいと思われる。 それゆえに、ラグジュアリーハンドバッグの 相対価格を推論させる人目につくブランドに 依存しない。非貴族は微妙であるがゆえに認 識されないブランドの手がかりを持つ類似し たバッグよりもより高価な人目につくブラン ディングの評判の名声のあるバッグを考慮す ると考えられる。それとは反対に貴族は類似 しているが微妙なマークのついたバッグを正 しく認識し、したがってそれらの相対的な価 格を適切に評価する、と考えられる。  Hanらの調査の参加者は120人で、60人ず つの二つのグループから構成されている。最 初のグループはメンバーが貴族として適して いる可能性に基づいて選ばれた。第二のグ ループは第一のグループの貴族のような資格 のない可能性、つまり成金、気取り屋および プロレタリアであることを基準としてメン バーに選ばれた。  回答者は9つのデザイナーハンドバッグを

(10)

シャネルのバッグを人目につくバッグよりも 高価であると誤ったランクづけをしている。 これに対して貴族は人目につくバッグを、こ の場合にはより高価なものとして正しく評価 している。  また、ブランド名が明示された時のランク 付けについては、貴族の間では、いかなる変 化も見いだせなかった。彼らのランクづけは、 そのブランドが提示された時と提示されない 時でも変化しなかった。それに対して、非貴 族の場合には、ブランドが提示された時には かなりの変化が生じた。このことは、貴族は バッグの相対的な価格を知るためにブランド 名を知らされる必要がないが、これに対して 非貴族はブランドネームが明らかになったと きにはブランドの順番をかなり変化させてい る、ということが確認できた。  この研究結果から、貴族はバッグの価値を 判断するのに目立つブランドマークを必要と しない、ということが明らかになった。彼ら は、それぞれのメーカーの目立たない微妙な デザインの特徴からバッグを見分け、それら の相対的な価格を正確に判断できる。貴族は われわれにこれらのルイ・ヴィトンの取っ手 の基部、革で強化された角やシャネルのター ンロック同様に取り外しできるキーベル、イ ンターレースチェーンやキルトステッチなど 含む微妙な手がかりを知っている。これらの ディテールは非貴族には通じない。彼らは バッグが高価なラグジュアリーブランドとし て認知されるためにはブランド目立つように 誇示することが必要なのである。すでに触れ たボッテガヴェネタブランドはロゴをその バッグの内部に控えめにつけることで大衆に 容易に認識できることを阻止している。つま り、このブランドは貴族の要求を満たすもの て価格に関する手がかりとして役立つ。ブラ ンドネームが提示された場合にだけ、非貴族 は目立たないラグジュアリーバッグを適切に ランクづけると考えられる。ブランド名の有 無はシグナルとして過剰なブランディングに 依存している非貴族にとってのみ価格のラン キングに影響を与えると考えられた。貴族は 高い財力と社会的地位(に対する低いニーズ によって特徴づけられる。操作的なチェック によって、われわれは貴族が非貴族よりも社 会的地位に対する低いニーズを持っていると 考えられている。というのも、貴族は社会的 地位の低いグループから垂直的に彼ら自身を 差別化することに関心を持っていないからで ある14) 7.調査結果  調査結果は、貴族はテストしたバッグの真 の価値を認識していることがわかった。明白 なブランド名の有無にもかかわらず、彼らは 正しく最も高価なものから最も安価なものへ ランクづけすることができた。彼らはブラン ドネームの卓越性によって欺かれない。  それとは反対に、非貴族はいかなるブラン ドネームも提示されない場合には、すべての 人目につくバッグを目立たないバッグよりも 高くランクづけした。ブランドネームが提示 された場合には、目立たないルイ・ヴィトン やシャネルのバッグは評価が高まった。そし て人目につくルイ・ヴィトンやコーチのバッ グはランクづけが下落した。貴族よりも社会 的地位に対する高いニーズをもっているこの グループは成金と見做される。彼らのハンド バッグのランク付けは、その他の非貴族と同 じである。これは貴族のランク付けとは異 なっている。明らかに非貴族は目立たない

(11)

そしてプロレタリアはいかなる結合/分離傾 向も示すことない。  貴族として分類される人々は最も高い所得 を持っており、成金、気取り屋やプロレタリ アがそれに続いている。これまで社会的地位 に対するニーズといった点から二つの集団を 観察してきた。つまり、社会的地位に対する 低いニーズをもっている貴族とプロレタリア である。成金と気取り屋は社会的に対する高 いニーズを持っている。それぞれのグループ の自分自身のグループとその他の三つのグ ループとの交際および分離に対する欲求とい う観点から、貴族がその他の貴族との交際を 望むが、その他のグループとの分離は望んで いるわけではない、ということが明らかに なった。成金は貴族と成金双方(持てる者) との交際を望むが、気取り屋とプロレタリア (持たざる者)との分離に強い欲求を示して いる。成金と似て気取り屋は持てるものとの 交際を求めるが、持たざる者との分離には強 い(重要な)欲求を示してはいない。結局、 プロレタリアはいかなる重要な差異もなく、 すべてのグループと交際することが幸福なよ うに思われる。  人目につくラグジュアリーと目立たないラ グジュアリーとの間の選好について触れてみ よう。Hanらの研究の目的は目立たないバッ グよりも人目につくバッグを購入する可能性 がグループによって変わるのかどうかを明ら かにすることである。貴族は目立たないバッ グを好むのに対して、成金や気取り屋は人目 につくバッグを好む。プロレタリアについて はなんら予測をしなかった。そして、分析の 結果、次のことが明らかになった。人目につ くバッグ購入する可能性が最も少ないグルー プは貴族である。プロレタリアは人目につく である。  このシグナルを認知する特異な能力は貴族 とその他の階級の消費者の間の行動の違いを 説明するために極めて重要である。貴族は本 質的なシグナルを読むことができ、目立たな い製品を使い、水平的にシグナルをおくるこ とができる。それとは反対に成金、気取り屋 やプロレタリアは粗悪なシグナルを必要とす る。つまり、成金は目立つ製品を使い、彼ら とは異なるより下のグループにシグナルを送 る。彼らは持たざる者に対して自分たちがエ リートであり、そのグループの一部である持 てるものであることを示したいと思っている。 多くの成金は自分たちが現実において持たざ るものではないと世間に対していっていると 信じている一方で、彼らは自分たちがその一 部ではなく、結びつきたいと思っているグ ループである貴族にシグナルを送っている15) 8.結合/分離動機とブランド卓越性  Hanらの研究は次のことを明らかにしてい る。第一に、貴族は相対的に目立たないバッ グを好むが、成金や気取り屋は相対的に目立 つバッグを好む。第二に、この選好はある部 分は彼らが知らせたい人による。それは異な る結合/分離動機を反映しているといえる。 貴族はその他の貴族と結合することを望むが、 その他の3つのグループとは分離される特別 な動機を持っているわけではない。それとは 反対に、成金は気取り屋や持たざるものであ るプロレタリアと無関係であることを見せび らかす一方で、成金や持てるものである貴族 とは結びつきたいと願っている。成金と同じ ように、気取り屋は持てる者との交際を求め るが、成金のように持たざるものを分離する ような同じ欲求を占めるとは予期できない。

(12)

社が大衆向けに移行したために2千億ドルの グローバルラグジュアリー産業が発達し、ラ グジュアリー製品のメーカーは、この状況を 歓迎している。しかし、近年の大規模なラグ ジュアリーブランドの大衆市場への侵略は ヴェブレンの持てるものと持たざる者という 二層社会をよりラグジュアリー製品を多くの 異なった方法や多くの異なった理由で使う消 費者を複雑な配列に変えてきている。ラグ ジュアリー製品市場をより良く理解するため には、衒示的消費に対する多くの動機を把握 するようにデザインされた多様な分析方法が 必要であると考え、そのためHanらは富や社 会的地位に対するニーズに基づいて消費者を 四つのグループに分類する方法を提唱してい る。  彼らは四つの階級をあたかも消費者がルー ルに厳格に従って行動するかのように述べて いるけれども、実際には、彼らの行動は商品 カテゴリーや使用状況によって変化する。貴 族は船旅をするときにはロレックス(古典的 な成金ブランド)を付ける。というのも、ヨッ トマスターⅡは信頼できるし、不滅の時計だ からである。プロレタリアはセレブがもって いるルイ・ヴィトンのバッグを一度は誇示し たかも知れない。それはラグジュアリーへの 逸脱と呼べるかもしれない。消費者には微妙 な段階的変化が存在するといえる。ブラン ディングとはブランドが製品に明白に人目に つくように表示されることを確実にすること と考えられているが、これまでの議論から明 らかになったようにラグジュアリー製品、特 に製品ラインのハイエンドの製品には当ては まらない。Hanらの研究が明らかにしたのは 微妙な特徴をもつ高価な商品よりも人目につ く製品を好むのはどの消費者階級に適合する バッグや目立たないバッグのいずれにも無関 心である。その他の二つのグループは人目に つくバッグを購入がかなり高いことがわかっ た。また成金と気取り屋は人目につくバッグ について高い購入の可能性を示している。こ れらの結果は、消費者を分類するための分類 法を使うことの有効性を証明し、その考え方 に対する支持を与えるものである。次に、ど のようにして、この分類が社会的動機を表し、 それゆえに、目立たないラグジュアリーバッ グと目立つラグジュアリー製品との間の選好 を表すかの分析に取り掛かった。それによる と、成金と気取り屋の間の差異に焦点を合わ せた。第一に予想したように、成金と気取り 屋は人目につくハンドバッグに対する顕著な 選好を示し、偽造品バッグに関する主要な市 場を形成している。第二に、気取り屋は成金 よりも偽造品バッグに対してかなり大きな購 入意図を示している。さらに彼らは偽造品 バッグを所有しやすい。そして、平均でより 多くの偽造品バッグを所有していると報告し ているHanらは、社会的動機(結合と分離) という社会的動機と人目につく製品と目立た ない製品の間の選好を明らかにするために消 費者を分類する分類法の有効性を証明した。 さらに気取り屋が成金よりも偽造品をかなり 購入しやすいことを証明した。このことは地 位に対する高いニーズと低い財力から生じて いる。また、貴族には偽造品を購入する傾向 はなかった16) 9.Hanらの所説の要約  ヴェブレンの衒示的消費論の考え方では、 社会的地位に対するニーズの普及を仮定して いる。一つには、ディオール、カルティエや シャネルのような伝統的なラグジュアリー会

(13)

たら、それは分離的なシグナルとして役立た ない。さらに大衆に対して広告がされた場合 に、そのメッセージは実用的であるよりも、 強い願望をもたらすものでなければならない。 最後に、ラグジュアリー製品のメーカーに とって、通念では社会的地位に関する「トリッ クルダウン」理論に基づいているが、このよ うなラグジュアリーに対する伝統的なピラ ミッド型アプローチを再検討することが有効 であることをあきらかにしている17) 10.Hanらの所説の検討と今後の課題  以上がHanらの所説の骨子である。その所 説の特徴は、これまで見たようにラグジュア リーの4Pと名づけた階級の分類法、すなわ ち、貴族、成金、気取り屋とプロレタリアー トと分類し、ブランドの製品ラインの中で、 社会階層の違いにより購入する商品の価格と ブランド卓越性(目立ち度)がいかに変化す るかを実証したことである。  しかし、Hanらも認めているように、分析 に用いた偽造品のデータはアジアのメーカー や再販売業者によって提供されたものにもと づいている。今後の研究は偽造ラグジュア リー製品に関する文化的差異を明らかにすべ きである。第二に、Hanらは、ルイ・ヴィトン、 グッチやメルセデスベンツのような企業がそ の製品ラインで提供しているブランドの卓越 性(目立ち度)の調査をおこなっているが、 消費者の意思決定の審美的および情動的構成 要素をさらに深く探求してはいないという限 界がある18)  またHanらの所説にはいくつかの問題点が 指摘できる。まず、一つ目の問題点として、 結合・分離について、貴族は他の階級との分 離をさほど意識していないが、同じ貴族同士 かということを明らかにしたことである。つ まりラグジュアリー製品のメーカーが二つの タイプの消費者に同時にターゲット絞ること ができるかを示していると考えられる。  Hanらの研究から明らかになったことは、 貴族をターゲットしたブランドの場合には、 明白なロゴあるいはブランドネームがない場 合でさえ、独自のものとしてその製品を識別 しうる微妙な手がかりを開発する必要がある。 たとえば、エンブレムを取り除いても、ポル シェはポルシェとして認識され、マセラッ ティやレクサスと混同されることはない。た とえば、時計メーカーのブルガリは顧客に、 「ブルガリスタイルを構成している具体的な 装飾的な詳細」を伝えている。それはブルガ リの筆記体の数字やエンジンターンド(エン ジンが回転している様子を模した)銀のダイ ヤルなどである。  また、ラグジュアリー製品のメーカーは、 そのトレードマークを大衆化するためにその ブランドを活用することに抵抗するかもしれ ない。低価格ラインを確立するあるいは多様 なカテゴリーにブランド拡張を行なうことで 短期的な売上は増大する。しかしながら、あ まりも多くの人々がそのブランドのロゴを誇 示すると、そのマークは分離的な社会的地位 のシグナルとしての価値を失う。それとは反 対にブランドをあまりに狭く制限することは 成金のような下層な階級にとって不適切であ り、必要なシグナルとしての価値を制限する ことになる。バランスをとらねばならない。  さらに、これまで企業は広告をターゲット 市場に焦点を合わせることを行ってきたが、 ラグジュアリー製品メーカーはすべての人に 広告することを考えねばならない。もしも、 そのブランドが一般大衆に知られていなかっ

(14)

に対する行動のみならず意識がHanらの分析 によって明らかにされた方向に進みつつある のか、そのような行動・意識には文化などの 影響はないのか、といった点の解明であろう。 それらの点については今後の研究の課題とし たい。今後の研究にとって必要なことは、衒 示的なブランド製品がより目立たない製品の 導入により、どのようにその社会的地位に影 響を与える、ということをあきらかにするか であろう。

1)Young Jee Han, Joseph C. Nunes, & Xavier Dreze, “Signaling Status with Luxury Goods: The Role of Brand Prominence”, Journal of Marketing, Vol.74, July, pp15-30.

2)Thorstein Veblen, The Theory of The Leisure Class: An Economic Study of Institutions (New York: Augustus M. Kelly, Bookseller), 1975, p.84. ヴェブレン著、小原敬士訳『有閑階級の理論』岩 波書店、昭和50 年8月20日、第13刷、85頁。 3)Han et al, op, cit, p.p.15.この点について、たと

えば山田登世子は、目立ちすぎず、それでいて卓 越性がすぐそれとわかることが贅沢の近代のスタ イルである、と指摘している(山田登世子著『贅 沢の条件』岩波新書1197、2009年7月22日、第1 刷発行、5頁)。また、カプフェレは「あるブラン ドが新興富裕層に好かれると、昔からのお金持ち であった人々はあまり知られていない他のブラン ドに移るのである。所有者がそれを『理解する』 能力を持ち、『その一部である』ことを示す微かな 認識のシグナルを備えたブランドである」と述べ ている。{ジャン=ノエル・カプフェレ著、監訳 者 長沢伸也『カプフェレ教授のラグジュアリー 論』同文館、2017 年3月31日、第1刷発行、28頁}。 4)Ibid., p.16. 5)Ibid., pp.16-17. 6)たとえば、ダナ・トーマスは、こう述べている の結合、すなわち水平的な結合に興味がある という点である。これは、程度の差であり、 やはり貴族はその他の階級との分離を積極的 に行わないが、結合という点を推進する方向 にはない、といえる。つまり、貴族は自分自 身を他の階級とは異なるということを暗示し ているといえるのではないか、ということで ある。自分よりも下層の階級との積極的関与 を行なわず、同じ階級に人々との関与の優先 すること自体が貴族の優越性を暗示している と思われる。  もうひとつの問題点として挙げられるのは、 貴族と分類されている富裕者のセグメントは、 目立つロゴマークはついていないがラグジュ アリーなブランドの目立たない、微妙な製品 の特長を理解することができるのかについて は、Hanらは、それは貴族のもっている特異 な能力と表現している点である。その能力は どのように形成され、貴族グループの人々に 共有され、他のグループとの差異をもたらし ているのか、という点には、全く触れられて いない。この貴族だけが持っているという能 力があってはじめて本当のラグジュアリー製 品を見分け、購入し、それが他の階級との差 別化をもたらし、彼らに優越性を与えるもの ではないのか、ということである。さらに、 この能力は、たとえば、成金グループもラグ ジュアリー製品の購入を継続しているうちに、 貴族同様、目立たない、微妙な手がかりを認 識できるようになるのか、あるいは長い時間 をかけて形成されるものであり、にわか成金 には、そう簡単には獲得することができず、 やはり、長い伝統と歴史の中から継承される ものであるのか、この点が非常に興味を惹か れる点である。  今後の課題は富裕層のラグジュアリー製品

(15)

「ふだん私たちが身に着けているものは、個性だ けでなく、経済的、政治的、社会的身分を反映し ている。高級ブランド品はいつの時代にも、ピラ ミッド型社会階層の頂点にいる証であり、持てる 者と持たざる者を区別してきた。」(ダナ・トーマ ス著、実川元子訳『堕落する高級ブランド』、講 談社、2009年5月12日、第1刷発行、5頁)。 7)Han et al, op. cit., p.18.

8)Ibid., p.18. 9)Ibid., pp.18-19. 10)ダナ・トーマスは上掲訳書の中で、こう述べて いる。「偽物の製造は、文明の誕生とともにある ほど古い。・・・・偽造は近代の奢侈品において も頭の痛い問題であった。・・・・最も人気があっ て儲かる偽造品は、やはり高級ブランドのロゴの ついたものだ」。(ダナ・トーマス、上掲訳書、 279 ~ 281頁)。 11)この点ついては、たとえば、拙著『見栄と消費』 の第三部「現代における見栄と消費」の特に第2 章「富裕層と衒示的消費」]を参照されたい。(『見 栄と消費』学文社、2011年4月1日発行、175 ~ 194頁)。

12)Han et al, op.cit., pp.19-20. 13)Ibid., p.21. 14)Ibid., pp.22-23. 15)Ibid., pp.23-24. 16)Ibid., pp.25-26. 17)Ibid., p.27. 18)Ibid., p.28.

参照

関連したドキュメント

睡眠を十分とらないと身体にこたえる 社会的な人とのつき合いは大切にしている

する愛情である。父に対しても九首目の一首だけ思いのたけを(詠っているものの、母に対しては三十一首中十三首を占めるほ

に関連する項目として、 「老いも若きも役割があって社会に溶けこめるまち(桶川市)」 「いくつ

海なし県なので海の仕事についてよく知らなかったけど、この体験を通して海で楽しむ人のかげで、海を

それに対して現行民法では︑要素の錯誤が発生した場合には錯誤による無効を承認している︒ここでいう要素の錯

モノづくり,特に機械を設計して製作するためには時

 今日のセミナーは、人生の最終ステージまで芸術の力 でイキイキと生き抜くことができる社会をどのようにつ

【フリーア】 CIPFA の役割の一つは、地方自治体が従うべきガイダンスをつくるというもの になっております。それもあって、我々、