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電子社会を推進する暗号技術:1.21世紀初頭の暗号技術8.評価体制と標準化の内外動向

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Academic year: 2021

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(1)                      1. 21 世紀初頭の暗号技術 8. 評価体制と標準化の内外動向. 1.. 21. 世紀初頭の暗号技術. 評価体制と 標準化の内外動向. 8.. 米国政府標準暗号   米 国 商 務 省 標 準 技 術 局 NIST(National Institute of Standards and Technology)には,コンピュータセキュリ ティ法(1987 年)や情報技術管理改革法(1996 年)など によって,連邦政府内の情報セキュリティ推進に関する 強力な権限が法的に与えられている.  これに基づいて,NIST は暗号技術やセキュリティ製 品の評価方法,運用マネジメントガイドラインなど,広 範囲にわたって標準規格を策定し,多数の FIPS(Federal Information Processing Standards)規 格や SP(Special Publications)文書として登録・発行している.暗号技 術に関連したところでは,FIPS 197 AES のほか,FIPS 180-2 Secure Hash Standard(暗号学的ハッシュ関数) , SP 800-38C CCM モード(認証機能付暗号処理)などが 新たに発行されている.  連邦政府システムにおいて,FIPS 規格は,適用除外 の承認を得たものを除き,該当する規格を遵守する強制 規定であるのに対し,SP 文書は参考情報として公開さ れる.FIPS 規格に登録された暗号技術. が米国政府標. 1). 準暗号と呼ばれるのはこのためである.  FIPS 規格に登録された暗号技術に対しては 5 年ごとの. 神田 雅透. NTT 情報流通プラットフォーム研究所 [email protected]. 松本  勉. 横浜国立大学 大学院 環境情報研究院 [email protected]. 再審査規定があり,今後 5 年間の解読技術の進展動向や 計算機性能の向上などを考慮して FIPS 規格として継続 することがふさわしいかどうかを NIST が判断する.ふ さわしくない,あるいは新しい暗号の追加が必要と判断 すると,新たな暗号の策定が NIST のミッションとして 加わる.たとえば,FIPS 197 を策定した AES プロジェ. 金子 敏信. クトは,1993 年の FIPS 46-1 DES 再審査で次期標準暗. [email protected].  また,NIST は安全性に問題が生じ始めた暗号技術に. 今井 秀樹. ついてどのように対処すべきかなどの方針も打ち出す.. [email protected]. の移行を求めており,2004 年の FIPS 46-3 DES/Triple. 東京理科大学 理工学部 電気工学科. 東京大学 生産技術研究所  AES(Advanced Encryption Standard)プロジェクトが契 機となり,世界中の多数の暗号研究者らによる多様な攻撃を 受けても脆弱性が発見されなかった暗号を学術的に安全な暗 号として広く利用していこうという流れが,最近世界的に強 まっている.米日欧で行われた 3 つのプロジェクト(AES ,. CRYP-TREC, NESSIE)もこの流れに沿ったものである.また,. 号の必要性が明記されたことの延長線上で実施された.. DES の場合,2002 年に Triple DES か AES への 2 年以内 DES 再 審 査で FIPS 規 格から DES を 削 除することが 決 まっている.. 電子政府推奨暗号  日本では,ミレニアム・プロジェクトや e-Japan 戦略. ISO/IEC でも,これらの成果を受けて,ISO/IEC 国際標準暗号. で 2003 年度までに電子政府の基盤構築を行うことが目. の策定を精力的に進めている.. 標に掲げられた.その具体的施策となる e-Japan 重点計.  本稿では,各プロジェクトが,どのような経緯や体制のも とで客観的な評価に基づいて安全な標準・推奨暗号を策定し たのか,その成果がどのように利用されていくのかについ て,その概要を解説する.さらに,ISO/IEC における最近の 標準化動向について述べる.. 画「6. 高度情報通信ネットワークの安全性および信頼性 の確保」の実施施策の 1 つとして,総務省および経済産 業省が主管となった「暗号技術の標準化の推進」が明記 された.具体的には,電子政府での利用に資するかを判 断するための暗号技術評価および電子政府推奨暗号リス IPSJ Magazine Vol.45 No.11 Nov. 2004. 1137.

(2) 特集 電子社会を推進する暗号技術                                 . 総務省 経済産業省. 暗号技術検討会. 総務省. 暗号技術検討会. 経済産業省. 暗号技術監視委員会. 暗号技術評価委員会 TAO I PA. 共通鍵暗号評価小委員会. TAO / NI CT I PA. 暗号技術調査 WG. 公開鍵暗号評価小委員会. 暗号モジュール委員会. 図 -1 2001/2002 年度の CRYPTREC 体制. 図 -2 2003/2004 年度の CRYPTREC 体制. トを作成する方針が挙げられた.. と判断された暗号技術 31 個を電子政府推奨暗号リスト.  この活動を実質的に執り行う機関として,通商産業. に掲載することとし,2003 年 2 月に最終確定した .. 省と 情 報 処 理 振 興 事 業 協 会(IPA)は, 今 井 秀 樹 東 京.  この電子政府推奨暗号リストは,「電子政府の情報セ. 大学生産技術研究所教授を委員長,辻井重男元中央大. キュリティ確保のためのアクションプラン」 (2001 年. 学教授を顧問とする暗号技術評価委員会 CRYPTREC. 10 月情報セキュリティ対策推進会議決定)および「各府. (Cryptography Research & Evaluation Committees)を. 省の情報システム調達における暗号の利用方針」 (2003. 2000 年 5 月に発足させた.この委員会は,大学や暗号. 年 2 月行政情報システム関係課長連絡会議了承)に基づ. 開発ベンダに所属する日本有数の暗号研究者ら有識者に. き,電子政府システム調達における暗号技術選択の際に. よる委員と 7 省庁からのオブザーバで構成された.さら. 利用されている.. に,下部小委員会として,共通鍵暗号評価小委員会(委.  2003 年度からは,電子政府推奨暗号リストに載った. 員長:金子敏信東京理科大学教授)と公開鍵暗号評価小. 暗号技術に安全性上の問題が生じていないかどうかを監. 委員会(委員長:松本勉横浜国立大学教授)が設置された.. 視するための暗号技術監視委員会(今井秀樹委員長)お.  2001 年度からは,総務省と経済産業省との共管に変. よび暗号技術調査ワーキンググループ,ならびに安全な. わるとともに,政策的な課題を含めて暗号技術の評価・. 暗号モジュールを実現・評価するための調査検討を行う. 検討を行う場として暗号技術検討会が新設された.また,. 暗号モジュール委員会(松本勉委員長)に改組され,現. 暗号技術評価委員会の事務局も通信・放送機構(TAO). 在も活動は継続している(図 -2).なお,TAO は 2004 年. と IPA の共同事務局となった(図 -1) .. 度に情報通信研究機構(NICT)に変わった..  実際の評価では,電子政府システムで必要とされる.  CRYPTREC による安全性や実装性能に対する評価結. 暗号技術を公募した後,公開鍵暗号技術を公開鍵暗号評. 果は,毎年度末に発行される暗号技術評価報告書などに. 価小委員会が,共通鍵暗号技術・ハッシュ関数・擬似乱. 掲載されている .. 数生成系を共通鍵暗号評価小委員会がそれぞれ担当して, 国内外の主要な暗号研究者に依頼した安全性評価報告と 国内外での学会発表論文などをベースに第一次判定を. 2). 3). 欧州推薦暗号技術. 行った.その後,暗号技術評価委員会が両小委員会の報.   欧 州 連 合では, その 傘 下の 欧 州 委 員 会が 策 定した. 告を参考に審議を行い,技術的観点からの第二次判定 (技. 第 5 次 情 報 社 会 技 術 研 究 開 発 プ ロ グ ラ ムの 一 環とし. 術的最終評価)を行った後,暗号技術検討会が政策面な. て,NESSIE(New European Schemes for Signature,. ど非技術的要素も加味した上で最終判定を下すという構. Integrity, and Encryption)プロジェクトを 2000 年にス. 造であった.. タートさせた.その目的は,暗号技術での欧州企業の国.  2 回の公募を通じて応募された暗号技術 52 個のほか,. 際競争力強化・研究開発力維持に役立つ暗号技術推薦リ. CRYPTREC が必要と判断した暗号技術 14 個を含む,総. スト(NESSIE Portfolio)を作成し,さまざまな標準化. 計 66 個の暗号技術,ならびに SSL/TLS についての安全. 団体などで使用してもらうことによって標準化への合意. 性評価を実施した.その結果,電子政府システムでの利. 形成を図ることであった.. 用に資するかどうかの観点から安全性に特に問題がない.  体制として,運営資金のみを欧州連合が拠出し,実際. 1138. 45 巻 11 号 情報処理 2004 年 11 月.

(3)                       1. 21 世紀初頭の暗号技術 8. 評価体制と標準化の内外動向 の運営は,欧州の大学に所属している暗号研究者らによ. て選定していく予定である.. る技術運営チームとセキュリティ関連企業で構成される.  このため,米国をはじめとする政府標準暗号のほか,. インダストリボードが連携して担当した.. 世界中の多数の暗号研究者が評価に関与した NESSIE プ.  NESSIE プロジェクトの最大の特徴は,欧州製セキュ. ロジェクトおよび CRYPTREC プロジェクトの成果が標. リティ関連製品の国際競争力向上に役立てようという. 準化作業に大きな影響を与えており,これらのプロジェ. 「欧州のための」プロジェクトという側面を明確にしてい. クトで共通に選定された暗号技術を中心に現在審議が進. た点である.たとえば,欧州製品の国際競争力がもとも. められている.. と高い IC カードでの実装性能を特に重要視しているこ.  また,ISO/IEC 国 際 標 準 暗 号が 策 定されることを. とを 最 初から 明らかにしており, 高度な暗号機 能 付き. 合わせて, それらの 暗 号の 利 用 方 法となる, 暗 号 利. IC カードを欧州製品の国際競争力強化につなげようと. 用モードやデータカプセル化メカニズム(DEM: Data. する意図の表れとも読み取れる.このような視点を評価. Encapsulation Mechanism)の策定なども進められている.. 基準に加えることで,欧州産業界の意向が反映されてい るといえよう.  このプロジェクトでは,公開鍵暗号や共通鍵暗号, ハッ. 暗号モジュール評価に関する標準化動向. シュ関数など全部で 7 カテゴリ,合計 39 個の応募暗号.  今後の課題として,学術的に安全な暗号を使うことは. 技術を受け付けた.. もちろんのことだが,その暗号を正しく安全に実装する.  技術運営チームが作成した評価報告書や NESSIE 会. ことも重要になってきている.. 議などでの評価報告などを利用して,安全性と実装性.   米 国 政 府は,FIPS 規 格の ア ル ゴ リ ズ ムや ガ イ ド ラ. 能,さらに知的財産権の取り扱いなどを総合的に判断し. イ ンなどが 正しく 安 全に 実 装されているかを 検 査する. た結果,応募暗号技術からは 12 個,その他の標準的な. ため,暗号モジュールに関する認証プログラム CMVP. 暗号技術から 5 個の総計 17 個の暗号技術を最終選抜し,. (Cryptographic Module Validation Program)を 1994 年. 2003 年 2 月に開催された第 4 回 NESSIE 会議の席上で発. から開始した.現在は,FIPS 140-2 として,カナダ政. 表した .. 府機関と共同で運用している..  NESSIE プロジェクト自体は,2003 年 3 月の最終報告.  ISO/IEC JTC 1/SC 27 では,FIPS 140-2 をモデルと. 書の取りまとめをもって終了した.ここでの成果は,欧. した暗号モジュールに関する検査・評価体制についての. 州での暗号技術推薦リストとして,ISO/IEC や IETF な. 検討を開始した. 当面は, 暗号モジュールのセキュリティ. どの標準化団体/標準化活動に提供され,国際標準化へ. 要件だけを取りまとめる ISO/IEC 19790 が先行するか. の推進を図ることになっている.. たちとなる.その際の ISO/IEC 承認アルゴリズムとし. 4). ISO/IEC 国際標準暗号. て,ISO/IEC 9796, 14888, 15946(ディジタル署名) , ISO/IEC 10118(ハッシュ関数),ISO/IEC 18033(暗 号処理)をはじめとする ISO/IEC 国際標準暗号技術が.   現 在,ISO/IEC では, 暗 号 方 式の 登 録 制 度(ISO/. 指定される見込みである.. IEC 9979)は存在するものの,ISO/IEC 国際標準暗号.  日本としても,ISO/IEC 19790 の審議に対応してい. は策定していない.つまり,事実上の世界標準暗号であ. くため,CRYPTREC の暗号モジュール委員会で,暗号. る Triple DES や RSA さえも ISO/IEC 国際標準暗号では. モジュールに関する検査・評価体制の検討を始めている.. ない.  しかし,ISO/IEC JTC 1/SC 27 では,従来方針を変 更し,ISO/IEC 国際標準暗号を初めて策定する作業を 2000 年に開始した.2005 年末を目途に,公開鍵暗号と 共通鍵暗号(ブロック暗号・ストリーム暗号)について, カテゴリごとに,安全性評価が客観的に行われた少数の 暗号アルゴリズムを ISO/IEC 18033 国際標準暗号とし. 参考文献 1)NIST: Cryptographic Toolkit, http://csrc.nist.gov/CryptoToolkit/ 2)総務省 , 経済産業省 : 電子政府推奨暗号リスト , http://www.soumu. go.jp/joho_tsusin/security/cryptrec.html 3)IPA セ キ ュ リ テ ィ セ ン タ : CRYPTREC, http://www.ipa.go.jp/ security/enc/CRYPTREC/index.html 4)NESSIE: NESSIE Portfolio of Recommended Cryptographic Primitives, http://www.cosic.esat.kuleuven.ac.be/nessie/ (平成 16 年 9 月 30 日受付). IPSJ Magazine Vol.45 No.11 Nov. 2004. 1139.

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