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数学における 記号 的表現 から 図形 的表現 への変換 機能 と能動的誤りの 発見支援 機能 を有する学習 支援 システム

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Academic year: 2021

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数学における記号的表現から図形的表現への

変換機能と能動的誤りの発見支援機能を有する

学習支援システム

Development of a Learning Support System for Active Error-Awareness in

Mathematics with a Conversion Function from Symbolic Expressions to Graphical

Expressions

黒川 魁

1

東本 崇仁

1

Kai KUROKAWA

1

, Takahito TOMOTO

1 1

東京工芸大学工学部コンピュータ応用学科

1

Department of Applied Computer Science,

Faculty of Engineering,

Tokyo Polytechnic University

Abstract: In this paper, we developed a system in mathematics with a conversion function from symbolic expressions to graphical expressions. The system draws the graphic based on learners’ solutions which are described by symbolic expression and facilitate their error awareness. We evaluated the system by experimental use.

1. はじめに

現在,学生の学力低下が進んでいるのに加え,若 者の理科,数学といった科目の理系離れが進んでい ることが問題となっている.特に本稿でとりあげる 数学は,数式としての記号表現とそれが意味する図 形表現や操作表現の間の理解が必要であるが,手続 き的に解法を生成できても,自身の解法の意味を理 解していない学習者は少なくない.数学においては, 自身が取り掛かる問題文がどのような図的な意味を 持っているのか,あるいは自身の解法がその図にど のような操作を加えることを意味しているのかを理 解することが重要である. そこで本稿では,学習者の数学における理解の向 上を目的とし,数学における記号的表現と図形的表 現間の関係性を明らかにした上で,特に解答の筋道 を一からたてる事が苦手な学習者のための記号的表 現から図形的表現への変換を可能とするシステムを 提案する.システム活用により,学習者の記述した 記号的表現をシステムが図形的表現に変換し,その 図を学習者が操作することで学習者自身が誤りに気 づくことが期待される.さらに,学習者の記述した 記号的表現,つまり解法における各行に対応する文 から図にある個々の制約をとらえることができる. そこで,学習者の解法で段階的に制約をもった図と して描画し,さらにその途中段階における不十分な 制約の図においては制約の範囲で操作可能とする. これにより,学習者が自ら図を操作し,現状までの 解法が自身のイメージする図と対応しているかを確 認することができ,能動的な操作を通して誤りに気 づくことが期待できる. この「誤りからの学習」が知識修正や理解に重要 な役割を果たすことはこれまでにも数多く指摘され, 同時に学習者が誤りに自発的に気づくことが重要で あることも指摘されている[1][2][3][4].誤りに対 する「内発的な気づき」を生起させるには,学習者 の答えを肯定した上で,その結果としてどのような 結論が導かれてしまうのかを示し,その矛盾の奇妙 さを学習者自身に気づかせることが有効である.学 習者が記述・選択した記号文を可視化しさらに操作 を加えることで想像通りの動作をするのか意図しな い動作をするかで「内発的な気づき」への支援をす る. さらに本研究では解法全体に対する正誤判断を行 いつつ,解法の各行が意味する図形的表現をとらえ 人工知能学会研究会資料 SIG-ALST-B506-07

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ることとした.これを解答プロセスの部分化と呼ぶ.

2. 数学における表現

数学における数学を表現する方法として,中原忠 男氏が捉えた5 つに分類された現実的表現,操作的 表現,図形的表現,言語的表現,記号的表現がある [2].著者はその 5 つの中でも記号的表現,図形的表 現に着目した.記号的表現では数学における言葉で 表現された問題の読解力や解法構築力を向上させ, さらに図形表現で学習者に記号的表現のフィードバ ックを与えられるような手法を提案する.よって本 稿はこの2つの表現間にある対応関係を議論し,学 習者の理解状況の可視化を行い,理解の促進をねら う.それぞれの表現様式については,以下の通りで ある[3].

2.1 記号的表現

算数・数学で使う記号(数・式等)を中心とした表現 である.一定のきまりに基づいており,思考の過程 や結果等を簡潔にしかも厳密に表現できるという特 徴がある.さらに式を用いることにより具体的な意 味を離れて形式的に処理ができる. 本稿ではこの記号的表現を用いて学習者が見慣れ ているであろう文を用意し,解答の補助を行う.

2.2 図形的表現

絵・図・グラフ等による表現である.表し方や表 す内容に大きな幅がある.小学校低学年に見られる 具体的レベルの絵から,操作的内容とほぼ同様な内 容を図で表現した半具体レベルの図(テープ図,数直 線等),関数グラフのような抽象的な図まで様々なも のが存在する.グラフ等で数学的な構造を明確化し たり,イメージ化・視覚化したりして伝える. 本稿ではこの図形的表現を用いて学習者の数学思 考を図形へ可視化して理解向上をねらう.

2.3 現実的表現

実世界の状況,実物を用いて現実に即した操作や 実験を行う表現である.問題の意味理解に効果があ る.

2.4 操作的表現

具体的な操作的活動による表現,人為的加工・モ デル化が行われている具体物・教具(おはじき,ブロ ック等)に動的操作を施すことによる表現である.

2.5 言語的表現

各国の日常言語を用いた表現,またはその省略的 表現である.内言語としての思考の様子を表出する 役割がある.頭の中で行う「自己との対話としての 思考」の内容を言語によって明確化し,整理し,伝 達する役割をもつ. また,これらの表現は,図1のように図示される. 図 1 表現様式 本システムでは,記号的表現と図形的表現につい て対象とする.数学問題を理解しようとする上では 数学的な言葉を把握することは必須であり,その言 葉が意味する図形や図形との関係を明確にすること が必要である.

3. 問題解答プロセスの部分化

数学問題の解法とは,単に答えだけを指すのでは なく,解き方のプロセスを指す.しかしながら,数 学を苦手とする学習者は解法の書き方が統一されて おらず,主に公式暗記だけで数学を学習している場 合がある.このような学習者は,どの公式を用いれ ばよいか明白な問題は解決可能であるが,応用問題 を解くことは難しく,また仮に問題が解けたとして も手続き的に解けただけであり,自身の解法の意味 を理解できない. 以上の問題点の解決策として問題解答プロセスの 部分化を提案する.学校のテスト等でも途中まであ るいは一部が正解している場合部分点が獲得できる. このように数学の解法においては途中または一部が 意味を持つ.本研究では,このように解法における 途中あるいは一部を取り出すことを,問題解答プロ セスの部分化と呼び,部分により評価することが有 図形的表現 言語的表現 記号的表現 操作的表現 操作的表現

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用であると考える.このように問題解答プロセスを 部分化し,正誤の判断やシステムで学習者の考えを 可視化することで,学習者の個々の内容についての 理解を促進できる. 本稿では問題解答プロセスの部分化を利用し,部 分的な解法に対応する図形を描画し,学習者に操作 させる.また,逆に図形を個々のプロセスとして可 視化する.

4. 表現の変換

文章題の苦手な学習者がつまずく要因の1 つとし て,文章に含まれる数量関係の把握ができないこと があげられる.その解決方法として学習者が様々な 表現方法を用いて問題や解法をとらえることの重要 性が主張されている[4].学習者が記号的表現で解法 を記述できても,その解法の状況が表す図を示せな いのは,このような表現方法間の関係性を理解でき ていないからだと考えられる.本稿では,その解決 方法として,記号的表現と図形的表現の関係性を理 解させる学習方法を提案する. 本章では 2 章で述べた記号的表現と図形的表現の 両表現の関係性を明確にするための記号表現から図 形表現への変換とその誤りの可視化について説明す る.その後にこの変換における有効性について説明 する.

4.1 記号的表現から図形的表現の変換

記号的表現から図形的表現に変換する際は,自然 言語(生活の中で使用しているような言葉)で入力さ れた内容をシステムで診断し,図形的表現に変換す ることは極めて難しいため,本研究では記号的表現 の文で用意された短文のテンプレートを複数選択形 式で用いた解答をする(図 2).この際に,短文テンプ レート(短文内における概念・数量関係を表現する もの)に対して,対応する図形的表現をデータベー ス形式であらかじめ入力しておき,それに対応する 形で図を描画する. また,この際の図は解答途中までの文から規定さ れる制約の範囲で操作可能とする.たとえば,学習 者が「点P をとる」と入力しただけでは点 P は XY 平面上を操作可能とする.これに対して,「AP=BP な ので」などの文を追加した後は,点P は A と B から 等距離な区間のみを操作可能となる.他には「X 軸 上にある…」等の前提条件がある場合は,点 P は X 軸上でしか操作できないことが大前提となる. 上記のように図を操作可能とすることで,自分の 想定する図と自分の解答の間の差を操作しながら自 発的にその制約を体験・確認することが可能となる. 図 2 記号的表現による解答文の選択例

5. 提案システム概要

本研究では,3 章で述べた問題解答のプロセス部 分化を用いてさらに4 章で述べた学習者が能動的に 選択した記号的表現を図形的表現に変換行し,学習 者に正誤の描画図形を観察させることで,数学の理 解向上を支援する手法を用いて,Visual Basic2010 を 用いて実際にシステムを設計・開発した. 開発したシステム画面の一部が図3,図 4,図 5 で ある.である.最初に図3 のように学習者に取り組 みたい問題を選択させ,問題解答画面へ移行する. 学習者は,システムが提示した問題を読解後,解法 1 行毎に解答を選択させる.システムは学習者の選 択した文に基づいて図形描画枠に解答文に含まれた 数量や概念を表示する.これを解法が1文入力され るごとに対応した図を描画する.学習者はその図を 確認,操作することで自らの解法が自らのイメージ する図と一致しているか否かを観察する.解答中に 誤りや次の工程がわかり辛い時には解説や解答状況 が表示される. 以上を問題毎に用意されている解答プロセスの数 だけ繰り返し,学習者自身の解答と考えを可視化し ていき,理解しづらい図形や誤答に含まれる誤概念 を観察・修正をしていく.以降では本システムで学 習者へのインターフェースと学習者の解答の診断の 方法について述べる. 図 3 問題選択画面 不等式2x-3y+6 > 0 の表す領域を図示せよ. 解答) 与えられた不等式は, ・y <2/3x + 2 と変形できる ・y> 2/3x - 2 と変形できる 図示(描画)へ

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5.1 インターフェース

数学問題文や解法文における記号的表現は,特に 解法文においては,学習者が数ある記号表現の中か らいくつかを選定し,題意に合うように文を変え, 解法を論理的に構築することや,学習者が図示して 理解しようとしてもその意味を捉えられず,解答に 障害ができてしまう場合がある. 本システムでは,解答テンプレートを用意し限ら れた解答の中から自身の考えに基づく記号的表現文 を学習者が選ぶ(図 4). 図 4 解答テンプレート選択例 対応する行のプロセスボタンを押すことで,その文 に含まれる意味を持った図を描画枠に生成する.生 成された図は選択した文に含まれる数量的制約を基 に,その制約の範囲で図を操作することも可能であ る(図 5). 図 5 制約下での図の操作例 描画できるものとして,定値数量計算や学習者が構 築した解答が論理的に誤っていない限りは,どのよ うな誤解答に対しても肯定的に誤りを可視化してフ ィードバックすることができる.図5 は,赤点を (x,0)と置いた時の操作例である.システムが描画フ ィードバックを与えられない例としては,プロセス 1(1 行目)で点 A,点 B しか定めていないにも関わら ず,プロセス2(2 行目)で AP=BP と提示しても,点 P はそれまでのプロセスには現れていないので,こ の場合メッセージボックスで描画ができないと表示 する.学習者の考えた解答をシステムが図示するこ とや,その描画図を学習者が操作することを通し て,学習者は自身が想像していた解答との差異確認 が行え,誤っていた場合には解答を再構築すること ができる.さらに解答中には自身の解答状況につい てシステム画面左下で説明をする. システム上では上段の解答(プロセス 1,2 等)が 完了しないとそれ以降の解答ができない.

5.2 解答診断方法

記号的表現文による解答の一覧は,予めデータベ ースに格納していた値を呼び出したものである.デ ータベース内のテーブル別に記号的表現文を点, 線,式等に分け,そのテーブル内でもさらに一文毎 にどの問題の解答で使われ,どのような属性をもつ のかを振り分けている.このデータベース内の情報 を基に,正誤診断を行っている.プロセス 1 からプ ロセス 3 の正解答をそれぞれ仮に a1,b1,c1 とし たとき,このシステムでは問題全体の解答診断をプ ロセス 3 で c1 が選ばれたとき正答とするようにし ている.この場合だと a2,b3,c1 と誤ルートでも 正答になってしまうが,このシステムは,c1 にた どり着くまでのプロセスでもそれぞれ次プロセスに 進むための解答診断を行っているため上記のような 誤ルートでも正当になるような場合はない.診断結 果,論理的に間違いのない記号文構成になっていれ ばシステムはその分を図示し,論理的に意味が通ら なければ描画はせず,学習者にその旨をメッセージ や解答状況欄で説明する.

6. 評価実験

本研究で開発したシステムが学習者の数学理解向 上にどれだけ貢献できるかの評価をするため,以下 のような方法で実験を行った.結果と考察について も後述していく.

6.1 目的

本システムが用意した解答文テンプレートとそれ を生成した図的フィードバックの妥当性・有効性を 検証した評価実験について報告する.この実験では 実際に誤りを犯す(誤りが誤りだと判断できない可 能性のある)学習者も対象としている.フィードバ ックの妥当性や有効性を評価するためには,誤りを 理解できることが不可欠ではあるが,実際にそのよ うな判断ができない学習者が本システムを使用した ことによっての数学理解向上度も評価として取り入 れたいため,今回の実験対象は数学Ⅱを履修もしく は学習したことのある人に限る.

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6.2 方法

6.1 節で述べたように,数学Ⅱを一度でも学習し たことのある理系学生 8 人を被験者とした.被験者 には,システムを使用する前に,実験手順を以下の ように説明し,システムのチュートリアルを問題誤 答の場合込みの解答方法と操作について著者ととも にシステムを動かした. 実験の手順としては,実験の流れを説明後に,シ ステムを一度も触れていない状態で事前テスト(10 分)に回答してもらった.その後,前半の学習活動 (30 分)を行ってもらい,事後テスト 1(10 分) に回答してもらった.続いて,後半の学習活動(30 分),事後テスト 2(10 分)に回答してもらった. 実験終了後に 6 件法(6:とても思う,5:思う, 4:やや思う,3:あまり思わない,2:思わな い,1:まったく思わない)でアンケートに答えて もらう. 8 名の被験者は,A 群(前半の学習:フィードバ ックありシステム,後半の学習:フィードバックな しシステム)4 名と, B 群(グループ A とは逆順の 学習)4 名にわけた. 事前テスト,事後テスト 1,事後テスト 2 はいず れも共通の問題で構成した.テストは,2 点間の距 離や軌跡といった学習範囲で,各小問で与えられた 短文を読み取り図示する大問 1(表 1)で小問 4 問, 文と図の矛盾の有無を読み取る大問 2 で小問 5 問, 実際の問題集にあるようなやや長文解法を要する大 問 3 で小問 2 問,全 11 問構成の数学のペーパーテ ストである. 三回のペーパーテストの正答数や解答方法とシス テムの操作記録,アンケートをもとに本システムの 評価を求めていく.

6.3 結果

テスト結果を表 1 に示す.A 群(前半フィードバ ック有,後半フィードバック無)の平均点正答数 は,事前テストが 5.0,事後テスト 1 が 6.5,事後 テスト 2 が 7.5 であった.B 群(前半フィードバッ ク無,後半フィードバック有)は,事前が 5.5,事 後 1 が 6.3,事後 2 が 7.5 であった.点数の向上に 着目すると,フィードバック有システムの利用後 は,A 群:事前→事後 1 では 1.5,B 群:事後 1→事 後 2 では 1.2 であるのに対し,フィードバック無シ ステムでは,A 群:事後 1→事後 2 で 1.0,B 群:事 前→事後 1 で 0.8 となった.フィードバック有の方 が点数が向上していることより,フィードバックの 有効性が示唆された.さらに,大問 1 に着目する と,A 群の事前から事後 1 にかけて 2.0 から 3.8 に 向上しているのに対し,フィードバックなしのシス テム利用後の結果では,A 群,B 群ともに向上して いないことから,特に問題の領域に依存して効果が 得られた可能性がある. 表 1 事前事後テスト平均正答数結果 平均正答数 グループ A グループ B 事前 テスト 大問 1 2.0 2.3 大問 2 3.0 3.3 大問 3 0 0 合計 5.0 5.5 システム 学習 1 フィード バック有 フィード バック無 事後 テスト 1 大問 1 3.8 2.5 大問 2 2.8 3.5 大問 3 0 0.3 合計 6.5 6.3 システム 学習 2 フィード バック無 フィード バック有 事後 テスト 2 大問 1 3.8 3.0 大問 2 3.8 4.0 大問 3 0 0.5 合計 7.5 7.5 また,アンケート結果の一部を表 2 に示す.まず 本提案システムの機能については,表 2 の項目(1) から(5)が該当し,全体的に高評価を得ておりステ ムが数学文を図形に変換してくれるフィードバック 機能について有効だったと示している. 学習手法については,本研究の大きな目標でもあ る文から図への変換やその活動について,高い評価 を得ることができた.また,表 2 より(9)の項目の 評価が高かったことから今回の被験者のほとんどが 文と図の関係の重要さに気付いていたようにも受け とれる.しかし,表 1 の(先)実験用システムの 1 回 目,2 回目の事前事後テストの正答率や,表 2 より (8)の項目で低評価を受けていることから細かい文 に対する図への影響は,そこまで意識していないこ とがわかった. システムが学習に有効であったかの評価につい て,表 2 より,(10)(12)の項目でシステムのフィー ドバック機能について高く評価がされた.全体の評 価も高いことから本システムの学習への有意差が実 証できた結果となった. 表 2 アンケート内容(一部) アンケート内容 評価 (1)出題された問題をシステムが用意した解 答文を用いて解答することは可能でしたか 4.7 (2)提示した解答文の選択肢は見慣れたこと のある文でしたか 3.2

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(3)システムが描画した図は解答文に対して 妥当でしたか 5.0 (4)システムが描画した図の内容はそれぞれ で理解できたか 4.7 (5)自身の図形描画あるいは図形操作で生成 された図が誤りであると気付けましたか 4.7 (6)文から図形に変換できる能力は数学理解 において重要ですか 5.7 (7)文から図形に変換する”活動”は数学理 解において重要ですか 5.5 (8)自分で作図した図で生成できる文の制約 について意識していますか 2.5 (9)数学問題の解答時,必要に応じて図は描い ていますか 5.0 (10)解答過程においての図の操作や提示は学 習の理解に繋がったと思いましたか 5.7 (11)実験を通して記号的表現と図形的表現の 両表現を見ることは重要と思いましたか 4.5 (12)図の操作は数学理解に有効だと思います か 5.3 (13)システムを用いた学習は数学の理解に有 効だと思いますか 5.3 (14)テスト問題の内容は適切でありましたか 4.3

6.4 考察

フィードバックを有したシステムを使用した後の テストの点数がフィードバック無しのシステムを使 用した時よりも向上したことから,本提案システム の有効性が示唆できる.さらには,大問 1 の本提案 システムを使用した時の点数の上がり方をみても特 定の問題領域で大きく学習理解を向上できるのでは ないかと推測できる.実験事後アンケートからはシ ステムに対する評価は高く,その妥当性,有効性は 示唆された.上記で述べた通り,本提案システムを 使用してシステムのフィードバックの有効性を示唆 できたことに加え,システムのフィードバックにつ いては,アンケートの方でも高評価を得られた.さ らにはその機能を使用した学習についても理解向上 に有効だということが言える.このことから通常の 教育学習や問題集にある内容をより分析し,そのシ ステムが実装できる機能に合わせた問題構成を検討 する必要があるだろう.

7. まとめと今後の課題

本稿は,高等学校教育科目の数学Ⅱ「図形と方程 式」を対象に数学の問題における問題文や解法に該 当する記号的表現と,それが意味する図形的表現の 関係性の理解を促進する手法について提案した.ま た,解法の全体的な関係性を理解することは数学が 苦手な学習者には困難であることや,個々の要素の 対応を理解することの重要性から,問題解答のプロ セスを部分化し,個々の部分に対して記号的表現と 図形的表現の関係性を理解させる方法について述べ た.さらに,記号的表現を単に図に変換するだけで は,その記号的表現の制約を十分に理解できるとは 限らないと考え,図を制約の範囲で操作可能にする 機能を提案した. 今後の課題としては,1)評価実験において低い評 価を得た項目におけるシステムの改善,2)本実験で は被験者の人数が少ない問題点もあったのでさらな る被験者を募りデータをあつめること,3) テスト 問題洗練のため,通常の教育学習や問題集にある内 容をより分析し,システムが実装できる機能に合わ せた問題構成を検討する必要がある.4)改善したシ ステムや実験内容で再び評価実験を行う,5)図形的 表現から記号的表現への変換有効性と手法を思案す る,などが挙げられる

謝辞

本 研 究 の 一 部 は 科 研 費 ・ 基 盤 研 究(C)(15K00492) 基 盤 研 究(B)(K15H02931) 基盤研究 (B)(K26280127) の助成による.

参考文献

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参照

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