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第7 回 脂質代謝( 1 )
日紫喜 光良
基礎生化学講義 2010.06.01
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概要
• 脂質と は
• 脂質の消化・ 吸収
• 脂肪酸と ト リ アシルグリ セロール( T A G ) の生
成
• 脂肪酸と T A G の分解
「イラストレーテッド生化学」第15、16章に相当
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脂質
• 脂溶性
• ト リ アシルグリ セロール
• 脂肪酸
• リ ン脂質
• 糖脂質
• ステロイ ド
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ト リ アシルグリ セロール
• 定義: 1 分子のグリ セロール( グリ セリ ン) に 3 分子の
脂肪酸がエステル結合し たも の
– エステル結合: R-OH + R’-COOH → R-O-CO-R’
• 別名: ト リ グリ セリ ド 、 油脂、 油、 中性脂肪
グリ セロール
CH2OH-CHOH-CH2OH
ステアリ ン酸
CH3-(CH2)16-COOHオレイン酸
(飽和脂肪酸の例として)
(不飽和脂肪酸の例として)
( cis 型)
(Z)-CH3-(CH2)7-CH=CH(CH2)7-COOH (C18)
(C18)
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典型的なト リ アシルグリ セロール
日清オイリオHPより
実際は、 ト リ アシルグリ セロールを
構成する脂肪酸の多く は長さ ( 炭素
数) が 16 または 18 ( 長鎖脂肪酸) 。
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油脂のほと んどはト リ アシルグリ セロール
日清オイリオHPより
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石鹸: 脂肪酸の塩
例: ステアリ ン酸ナト リ ウム
Na
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油脂の種類と 脂肪酸の構成
• 動物性油脂
– 飽和脂肪酸が多い→固体
– ラ ード :
– 牛脂:
• 植物油
– 不飽和脂肪酸が多い→液体
– 菜種油:
– オリ ーブ油:
– ゴマ油:
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油脂によっ て脂肪酸構成が異なる
ニッスイHPより http://www.nissui.co.jp/academy/oil/index.html
文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会「五訂増補日本食品標 準成分表脂肪酸成分表編」より作成
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飽和脂肪酸と 不飽和脂肪酸
(全Z)-CH3(CH2)4(CH=CHCH2)4CH2CH2COOH -49.5
20 アラキドン酸
(全Z)-CH3CH2(CH=CHCH2)3(CH2)6COOH -11
18 リノレン酸
(Z,Z)-CH3(CH2)4(CH=CHCH2)2(CH2)6COOH -12
18 リノール酸
(Z)-CH3(CH2)5CH=CH(CH2)7COOH 13.4
18 オレイン酸
(Z)-CH3(CH2)5CH=CH(CH2)7COOH -0.1
16 パルミトレイン酸
(不飽和脂肪酸)
CH3(CH2)18COOH 76.5
20 アラキジン酸
CH3(CH2)16COOH 68.8
18 ステアリン酸
CH3(CH2)14COOH 63.1
16 パルミチン酸
CH3(CH2)12COOH 53.9
14 ミリスチン酸
CH3(CH2)10COOH 43.2
12 ラウリン酸
(飽和脂肪酸)
構造 融点
(℃) 炭素数
名前
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ト ラ ンス脂肪酸
• 天然の油脂には微量し か含まれない
• 不飽和脂肪酸( 液体) に水素を添加し て飽和化( 固
体) すると き( マーガリ ン等の製造のため) に生じ る
エライジン酸
オレイ ン酸
(Z)-CH3-(CH2)7-CH=CH(CH2)7-COOH
(E)-CH3-(CH2)7-CH=CH(CH2)7-COOH
( cis 型)
(ともにC18)
( trans 型)
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リ ン脂質
• 複合脂質( グリ セリ ン+脂肪酸+それ以外の成分)
の一種。
– リ ン脂質: リ ン酸と その他のアルコ ールが結合するも の
– その他のアルコ ールと は?
• コ リ ン
• エタ ノ ールアミ ン
• セリ ン ( アミ ノ 酸)
• イ ノ シト ール など
• 細胞膜をつく る
– 親水性部分( その他のアルコ ール)
– 疎水性部分( 脂肪酸)
• 肺の界面活性物質( サーフ ァ ク タ ント ) をつく る
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リ ン脂質の例
• レシチン( グリ セリ ン+脂肪酸x 2 +リ ン酸+コ リ ン)
• ホスフ ァ チジルコ リ ンと も いう
リン酸
コリン パルミチン酸 パルミチン酸
肺の界面活性物質の例。 ジパルミトイルレシチン
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ステロイ ド
コ レステロール
コ レステロールから 生成
17β ーエストラジオール
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脂質の代謝( 糖質の代謝と の比較)
国立循環器病センター
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/Sick/buhin2_04.html 貯蔵性脂肪
貯蔵性脂肪 糖質の代謝 脂質の代謝
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主な脂質
脂肪酸
ト リ アシルグリ セロール (TAG)
リ ン脂質
ステロイ ド
糖脂質
「イラストレーテッド生化学」図15.1 グリセリン+脂肪酸3分子
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脂質消化の概要
A
B C
D
主な消化産物 C-3
C-2
C-1 E
図15.2
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A: 胃での消化
• 酸性リ パーゼ( 舌リ パーゼ、 胃リ パーゼなど)
• 短∼中鎖( 1 2 炭素未満、 例: 牛乳に含まれる
脂肪) 脂肪酸を含む TAG
• 他は消化さ れない
• 膵臓不全をおこ す疾患( 嚢胞性線維症) の脂
質消化に重要
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B: 胆汁酸塩による乳化
• 胆汁: 肝臓でつく ら れ
胆嚢に貯蔵
• 胆管を通っ て十二指
腸に分泌
• 胆汁酸塩の界面活性
剤作用
• 十二指腸の蠕動運動
グリ コ コ ール酸の構造
コ ール酸
( 胆汁酸の一種)グリ シン
胆汁酸塩の例:
図15.3
20
C: 膵から の消化酵素による分解
• C-1. TAG の分解
– 膵リ パーゼ
– 遊離脂肪酸2 分子と 1 分子の 2- モノ アシルグルセロール
• C-2. コ レステロールエステル( コ レステロールと 脂肪
酸と がエステル結合し たも の) の分解
– コ レステロールエステラ ーゼ
– コ レステロール
• C-3. リ ン脂質( グリ セロールに、 脂肪酸2 分子と フ ォ
スフ ァ チジルコ リ ンが結合し たも の) の分解
– 膵リ パーゼ
– 遊離脂肪酸2 分子と グリ セリ ルフ ォ スフ ォ リ ルコ リ ン
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D: 小腸壁から の吸収
• 混合ミ セル: 2 種類以上の界面
活性剤から 構成さ れるミ セル
( 親水基を外に親油基を内に
向けて会合し た構造)
• 遊離脂肪酸、 遊離コ レステロー
ル、 2 ‐ モノ アシルグリ セロール、
脂肪酸塩、 脂肪性ビタ ミ ンは混
合ミ セルを形成
• 短および中鎖脂肪酸はミ セル
形成せずに小腸に吸収。
混合ミ
セル
形成
小腸
粘膜
細胞
図15.5
22
E: TAG と コ レステリ ルエステルの再合成
カイロミクロン コレステロー ルエステル
リ ンパ系へ
アシルCoAシンターゼ
長鎖脂肪酸 2-モノアシルグ リセロール
小腸粘膜細胞 アポB-48 リン脂質
トリアシルグ リセロール
図15.6
23
脂肪酸と ト リ アシルグリ セロールの代謝
TAG の合成と 分解経路
アセチルCoA
マロニルCoA
アシルCoA
図16.1
24
脂肪酸の構造
疎水性の
炭化水素鎖
親水性の
カ ルボキシル基
( pH7 でイ オン化)
図16.2
25
飽和脂肪酸と 不飽和脂肪酸
不飽和結合( cis 配置)
飽和結合
図16.3
26
代表的な脂肪酸
酪酸( 炭素数 4)
カ プリ ン酸( 炭素数 10)
炭素長4∼10の脂肪酸:牛乳に多く含まれる
炭素数:二重結合の数(位置)
細胞膜を構成する脂質やトリアシルグリセロール を構成する脂肪酸の長さは原則として16(個の 炭素)以上
リノール酸 18:2(9,12)
α -リノレン酸 18:3(9,12,15) アラキドン酸 20:4(5,8,11,14)
必須脂肪酸
プロスタグランジンの前駆体 図16.4
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脂肪酸の新規合成: 概略
• 炭水化物、 タ ンパク 質、 その他余分に摂取し た栄
養素は脂肪酸に変換さ れ、 ト リ アシルグリ セロール
と し て貯蔵さ れる。
• ヒ ト 成人では、 脂肪酸合成は主に肝臓と 授乳期の
乳腺でおこ なわれる。
• より 小規模だが、 脂肪組織でも おこ なわれる。
• 脂肪酸の合成はアセチル CoA の炭素を脂肪酸の
炭素鎖にと り こ んで伸長さ せるこ と によっ ておこ な
う 。
• ATP と NADPH を利用する。
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細胞質アセチル CoA の生成
• 脂肪酸の新規合成は、 ミ ト コ ンド リ ア内
のアセチル CoA を細胞質に移動さ せる
こ と から 始まる
• ミ ト コ ンド リ ア内のアセチル CoA は
– ピルビン酸の酸化によって
– 脂肪酸やケトン体やある種のアミノ酸 の分解 によってできる
• アセチル CoA はオキサロ酢酸 (OAA) と
結合し てク エン酸 (Citrate) と なり 、 ミ ト コ
ンド リ アの膜を越える
キーワード
クエン酸、オキサロ酢酸、アセチルCoA クエン酸シンターゼ
ATP-クエン酸リアーゼ ミトコンドリア
細胞質 クエン酸
図16.6
29
アセチル CoA のカ ルボキシル化と マロニル CoA の生成
• アセチル CoA: CH
3CO-S-
CoA
– 炭素2 つ
• マロニル CoA: OCO-
CH
2CO-S-CoA
– 炭素3 つ
• アセチル CoA カ ルボキシ
ラ ーゼ
– 補酵素: ビオチン
• アロステリ ッ ク な活性化←ク
エン酸
• アロステリ ッ ク な不活性化←
長鎖脂肪アシル CoA
図16.7
30
リ ン酸化によるアセチル CoA カ ルボキシラ ーゼの調節
• イ ンスリ ン
– プロテイ ンフ ォ スフ ァ タ ーゼ
を活性化
– 脱リ ン酸化
– 活性化
• グルカ ゴン、 エピネフ リ ン
– cAMP 依存性プロテイ ンキ
ナーゼ
– AMP 活性化プロテイ ンキ
ナーゼ (AMPK)
– リ ン酸化
– 不活性化
図16.8
31
脂肪酸合成: 脂肪酸シンタ ーゼ
• 複数種類の反応を脂肪酸シンタ ーゼがおこ
なう
• 脂肪酸シンタ ーゼには、 アシルキャ リ アープ
ロテイ ン (ACP) ド メ イ ンがある。
– ACP の末端にはチオール基 (-SH) があり 、
– 伸長途中の脂肪酸はこ こ にスルフ ィ ド 結合 (-S-) さ
れる
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脂肪酸合成のステッ プ
• 1 . アセチル CoA から 酢酸部分が ACP に転移し てアセチル -
ACP になる
• 2. 酢酸部分が ACP から 脂肪酸シンタ ーゼの別の残基に一
時的に移さ れる
• 3 . 空いた ACP にマロニル CoA のマロン酸部分が結合し マロ
ニル -ACP になる
• 4 . マロニル -ACP から HCO
3-が抜ける。 残っ た部分( C2 個)
に2 . の酢酸部分 (C2 個) が結合する。
• 5 . NADPH から 水素をも ら っ て 3 番目の炭素のケト ン基が還
元さ れる
• 6 . 水が抜けて2 番目と 3 番目の炭素の間が2 重結合になる
• 7 . NADPH から 水素をも ら っ て6 . の2 重結合が1 重結合に
なる。 こ のと き、 ACP には炭素4 つの脂肪酸ブチル酸が結合
し ている。
• 2 −7 を繰り 返し ながら 、 炭素2 個ずつ伸長し ていく
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[1] アセチルCoAから アセチル-ACP
[3], [3*]マロニルCoA からマロニル-ACP
[4] CO2抜け、移して おいたアシル基がマ ロニル-ACPに結合
[5] NADPH + H+ [6] H2O抜ける [7] NADPH + H+
パルミチン酸
6回繰り返すと炭素 16個のパルミチン酸
[2],[2*] アシル基をACP から移す
図16.9
34
1 6 より 長い脂肪酸の合成
• パルミ チン酸を再びミ ト コ ンド リ アまたは小胞
体 (ER) に戻し て作る
35
NADPH の生成
• オキサロ酢酸
• 細胞質 NADH 依存性リ ンゴ
酸デヒ ド ロゲナーゼ
• リ ンゴ酸
• NADP + 依存性リ ンゴ酸デヒ
ド ロゲナーゼ
• ピルビン酸
図16.10 NADPH
NADPHの用途:脂肪酸やステロイドなどの 合成、シトクロームP450系、活性酸素の処 理など(前回講義資料参照)
36
グルコ ース代謝と 脂肪酸合成の関係
図16.11
37
グルコ ース代謝と 脂肪酸合成の関係
• 1 . グルコ ース→( 解糖系)
→ピルビン酸2 分子
– NADH 生成
• 2 . ピルビン酸→( ミ ト コ ンド
リ ア内) →( 糖新生) →オキ
サロ酢酸( O A A )
• 3 . ピルビン酸→( ミ ト コ ンド
リ ア内) →アセチル CoA
– アセチル酢酸+O A A →ク エ
ン酸
• 4 . ク エン酸→ ( 細胞質) →
アセチル CoA + OAA
• 5 . OAA →リ ンゴ酸→ピル
ビン酸+ NADPH
• 6 . アセチル CoA, ATP,
NADPH →脂肪酸合成
図16.11の説明
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ト リ アシルグリ セリ ド (TAG) の貯蔵
• グリ セロールリ ン酸を合成: 肝臓と 脂肪組織
• グリ セロールリ ン酸に脂肪酸が結合 → TAG
• 脂肪組織では、 TAG は貯蔵さ れる
• 肝臓では、 TAG は VLDL と いう リ ポタ ンパク になっ て血中に放出さ れる
– リポタンパク:脂質の運び屋
– コレステロールエステル、コレステロール、リン脂質、アポリポプロテインB-100 などを含む
肝臓 脂肪組織
グリセロールリン酸
グルコース→解糖
ジヒドロキシアセトンリン酸 グルコースの取り込み:インスリンが必要
図16.13
39
解糖系から の接続
脂肪組織
グルコ ース
ジヒ ド ロキシアセト ンリ ン酸
肝
グルコ ース
ジヒ ド ロキシアセト ンリ ン酸
解糖 解糖
NADH NAD+
グリ セロールリ ン酸
デヒ ド ロゲナーゼ
グリ セロールリ ン酸
NADH NAD+
グリ セロールリ ン酸
デヒ ド ロゲナーゼ
グリ セロールリ ン酸
グリ セロール
ATP ADP
グリ セロールキナーゼ
図16.13から
40
貯蔵し た脂肪の利用と 脂肪酸の酸化
• 糖やタ ンパク 質と 比べて、 質量あたり のエネ
ルギーが脂肪はも っ と も 高い
– 糖、 タ ンパク 質: 4 kcal/g
– 脂肪 : 9 kcal/g
T A G から の脂肪酸の遊離
脂肪酸のβ - 酸化
脂肪を利用するためには:
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TAG から の脂肪酸の遊離
• 低イ ンスリ ン
• 高エピネフ リ ン
• cAMP 依存性プロテイ
ンキナーゼを活性化
• ホルモン感受性リ
パーゼのリ ン酸化&
活性化
– TAG の #1 または #2 の
炭素から 脂肪酸を放
出
• DAG から も 脂肪酸が
放出 ( 別の酵素で)
インスリン
エピネフリン
アデニリル シクラーゼ
cAMP + PPi ホルモン感受性
リパーゼ
リン酸
cAMP依存性 プロテインキ ナーゼ
TAG
脂肪酸
ジアシルグリセロール (DAG) 脂肪細胞 レセプター
図16.15
42
グリ セロールのその後
• 脂肪細胞では利用できない
– グリ セロールキナーゼをも たない
• 血液に放出さ れ肝臓に運ばれる
• 肝臓でグリ セロールリ ン酸になり
– TAG をつく る
– ジヒ ド ロキシアセト ンリ ン酸になり エネルギー源に
なる
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脂肪酸のその後
• 血中に放出
– 遊離脂肪酸になる
• アルブミ ンと 結合
• 各組織の細胞に取り 込まれる。 ただし 、 脂肪
酸を
– 脳では利用できない( 血液脳関門を通れない)
– 赤血球では利用できない( 分解酵素をも たない)
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脂肪酸のβ 酸化
• 1 . 長鎖脂肪酸のミ ト コ ンド リ アへの輸送
– カ ルニチンシャ ト ル
– カ ルニチンパルミ ト イ ルト ラ ンスフ ェ ラ ーゼ I/II (CPT I, CPT II)
– アシル化カルニチン
– マロニル CoA による阻害
CPT I CPT II
外膜
内膜 アシルCoA
細胞質
ミトコンド リアのマト リクス
カルニチン
アシル化カルニチン
アシルCoA 図16.16
45
カ ルニチン代謝
• カ ルニチン源: 肉など
– 腎、 肝ではリ シンやメ チオニンから 合成
– 筋には合成酵素がない→血流で運ばれてく るカ
ルニチンに依存
• カ ルニチン欠乏症
– 一次性( 先天性)
– 二次性
• 肝疾患( カ ルニチン合成の低下)
• 低栄養、 ベジタ リ アン
• 必要量増加( 妊娠、 重症感染症、 火傷、 外傷など)
• 透析患者( カ ルニチンは血液から 除去さ れる)
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短∼中鎖脂肪酸の取り 込み
• カ ルニチンシャ ト ルを使わず、 直接ミ ト コ ンド リ
アに入る。
– 中鎖脂肪酸: 母乳に多く 含まれる
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脂肪酸β 酸化のプロセス
• FADH2 産生
• 加水
• NADH 産生
• アセチル CoA 放出( 炭素鎖長が2 短く なる)
• パルミ ト イ ル CoA (C16) から は 8 個のアセチル CoA 、
7 個の NADH 、 7 個の FADH2 ができる。
• こ れら が完全に酸化さ れると 、 131 個の ATP ができ、
パルミ チン酸をパルミ ト イ ル CoA にするための2 個
の ATP を引く と 、 正味 129 個の ATP ができる
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ケト ン体の生成
• 条件: 肝臓での脂肪酸のβ 酸化 >> アセ
チル CoA の処理能力
– 飢餓
• ケト ン体: アセト 酢酸、 3- ヒ ド ロキシ酪酸、 アセ
ト ン
• アセト 酢酸、 3- ヒ ド ロキシ酪酸は肝臓から 血
流で他の組織に運ばれ、 エネルギー源にな
る
– 高濃度になると 脳も ケト ン体を利用する
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ケト ン体の合成経路
アセトアセチル CoA
H M G-CoA
アシルCoA アセチルCoA
アセト酢酸
3-ヒドロキシ酪酸 アセトン
HMG-CoA シンターゼ
N ADH 図16.22
50
末梢組織でのケト ン体分解
• 3- ヒ ド ロキシ酪酸→アセト 酢酸
• アセト 酢酸は TCA 回路のスク シニル CoA から
CoA を受け取り 、 アセト アセチル CoA になる
• アセト アセチル CoA は2 つのアセチル CoA に
なり 、 ATP をつく る
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肝臓のケト ン体生成と 末梢組織での利用
アセト酢酸
3-ヒドロキシ酪酸
筋肉
肝臓
アセトアセ チルCoA 脂肪酸酸化
アミノ酸分解
解糖 2 x アセチルCoA
HMG CoA
図16.13
52
糖尿病でのケト ン体の過剰産生
• イ ンスリ ンが欠乏し 、 脂肪分解が亢進し てい
る状態
• ケト ン血症→ケト ン尿症
• 息がアセト ン臭
• 脱水症状
• 血液が酸性化( アシド ーシス) →と く にケト アシ
ド ーシスと いう
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1 型糖尿病における糖尿病性ケト アシド ーシス
インスリン↓
グルカゴン↑
脂肪分解↑
血漿遊離脂肪酸↑
肝からのケトン体産生↑
ケトアシドーシス
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まと め: TAG の合成 / 分解
• 合成時
– 肝臓の役割: 脂肪酸と TAG の合成
• アセチルCoAにマロニルCoAを順次つないで、長鎖アシルCoAをつくる。
• アシルCoAと、グリセロールリン酸からTAGをつくる。
• TAGをVLDLに包んで血液中に放出する
– 脂肪組織の役割: 脂肪の蓄積
• VLDLからTAGを抜きとって蓄積する
• 分解時
– 肝臓の役割:
• 血液中の遊離脂肪酸を取り込む
• 脂肪酸をβ 酸化してアセチルCoAをつくる
• 分解しきれないアセチルCoAからケトン体をつくる
– 脂肪組織の役割: 脂肪の分解
• TAGから脂肪酸を取り出して血液中に放出(遊離脂肪酸)
– 末梢組織のエネルギー生産
• ケトン体を利用:3-ヒドロキシ酪酸→アセト酢酸→アセトアセチルCoA→ アセチルCoA→ATP産生
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