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2018年3月9日 全5頁
新指標、消費動向指数(
CTI
)に注目
他の消費関連統計や統計的手法で家計調査を補完
経済調査部
研究員 廣野 洋太
[
要約
]
2018 年1 月分から、代表的な消費統計である家計調査が一部変更されると同時に、消
費動向指数(CTI)と呼ばれる新しい指標が作成される。CTI は、代表的な消費統計で
ある家計調査とその他の消費関連統計・調査を合成し、時系列分析などの統計的な手法
を用いることで、家計調査では対処しきれなかった課題に応える指標である。本稿では、
CTIの概要を説明し、どのような課題に対応しているのか論点整理を行う。
CTIには二種類あり、世帯消費動向指数(CTIミクロ)と総消費動向指数(CTIマクロ)
の二つの指数が作成される。CTI ミクロは、世帯ベースの消費動向を見る指標である。
家計調査の結果を家計消費単身モニター調査と家計消費状況調査の結果などで補正・補
強する形で作成される。家計調査と同様に世帯属性別、費目別で消費の動向を見ること
ができる。
CTIマクロは、GDPの家計最終消費支出の動きを月次で推測する指標である。家計調査
の他に、商業動態統計調査や第3次産業活動指数など供給側の統計データを説明変数と
する時系列回帰モデルを利用することで、GDP統計の月次動向を推測する指標となって
いる。
CTI ミクロでは、調査対象に単身世帯が含まれており、経済全体の実態が掴みやすい、
標本規模の拡大や記入方法の変更で「誤差」が軽減される等の利点が期待される。さら
にCTIマクロでは、四半期ベースでしか見ることのできないGDP統計の家計最終消費支
消費の新指標として消費動向指数(
CTI
)が追加
2018年1月分から、代表的な消費統計である家計調査が一部変更されると同時に、消費動向
指数(CTI)と呼ばれる新しい指標が加わる。CTI は、代表的な消費統計である家計調査とその
他の消費関連統計・調査を合成し、時系列分析などの統計的な手法を用いることで、家計調査
では対処しきれなかった課題に応えるような指標である。本稿では、CTI の概要を説明した後、
家計調査の変更とCTIでどのような課題に対応しているのか論点整理を行う。
CTI
の概要:他の統計で家計調査を補完
CTIには二種類あり、世帯消費動向指数(CTIミクロ)と総消費動向指数(CTIマクロ)の二
つの指数が作成される。同じCTIという枠組みの中にあるものの、CTIミクロとCTIマクロでは
作成方法が根本的に異なる点には注意したい。
まず CTI ミクロは、世帯ベースの消費動向を見る指標である。家計調査の結果を家計消費単
身モニター調査と家計消費状況調査の結果などで補完する形で作成される。家計調査と同様に
世帯属性別、費目別で消費の動向を見ることができる。ただし、2018年1月分公表時点では、
10 大費目の指数値までしか見ることができず、より詳細な内訳や金額については後日公開され
る参考詳細表を待たねばならない 1
。なお、家計の消費は、世帯人員や世帯主の年齢構成によっ
て変化する。そこで、これらの世帯属性がある特定の時点から変化していないと仮定した調整
系列も作成される。
そしてCTIマクロは、GDPの家計最終消費支出の動きを月次で推測する指標である。家計調査
の他に、商業動態統計調査や第 3 次産業活動指数など供給側の統計データを説明変数とする時
系列回帰モデルを利用することで、GDP統計の家計最終消費支出の月次動向を推測する指標とな
っている。ただし、回帰モデルを利用しているため、費目の内訳等を見ることはできない。
家計調査の変更と
CTI
で期待される
3
つの改善点
①調査対象を拡充し、経済全体の実態を掴みやすく
変更前の家計調査においては、月次でデータを確認できるのは二人以上の世帯のみで、単身
世帯と単身世帯を含む総世帯ベースでの消費データは四半期ごとでしか公表されていなかった。
少子高齢化が進んだ現在、単身世帯の比率は上昇している一方、家計調査では、月次でその動
向を追うことはできなかったのである。そこで、家計調査では新たに単身世帯の月次調査が始
まることになった。さらに CTI ミクロでは、家計調査の単身世帯調査に加え、オンライン調査
である家計消費単身モニター調査の結果も利用することで単身世帯をカバーしている。
また、経済全体の実態を掴むという点では、ビッグデータの活用も見逃せない。CTIでは、当
1
初は既存統計を利用することになっているが、分析・検証が十分なされた段階でビッグデータ
の活用が予定されている。
②標本規模の拡大、記入方法の変更で「誤差」を軽減
家計調査は標本規模が比較的小さい(二人以上の世帯で約8,000)ことから、その精度に疑問
が呈されてきた。特に自動車などの高額・低頻度の消費については、標本規模の小ささが統計
のぶれにつながると考えられており、月次指標を扱う現場担当者にとっては悩みの種であった。
CTIミクロでは、上述の家計消費単身モニター調査(標本規模:2,400)に加えて家計消費状況調
査(標本規模:約30,000)の結果を統計的な手法を用いて標本規模を拡大させている
2
。また、
家計調査の調査方法についても変更がある。レシート読み取り機能を備えたオンライン家計簿
が順次導入されることで、記入漏れの改善が期待される 3
。
③GDP統計の家計最終消費支出を月次で推測
日本の家計全体をマクロで見た消費動向を確認する際には GDP 統計の家計最終消費支出を利
用することが一般的である。だが、GDP統計は四半期ベースの統計であり、月次の動きを追うこ
とはできない。また、GDP統計には供給側の情報が含まれているため、家計調査だけで月次の動
きを追うのには限界がある。もちろん、家計調査や商業動態統計などを用いて、GDP統計と同様
の手法で家計最終消費支出を推計することができれば問題はない。しかし、それには莫大な手
間と時間がかかるため月次の動きをタイムリーに見るには難易度が高いと考えられる。そこで
CTIでは、家計調査、商業動態統計調査などの月次の統計データを説明変数とする時系列回帰モ
デルを利用することで、GDP統計の月次動向を推測している。
CTI
の実際の推移
実際にCTIミクロの動きと家計調査の動きを比較してみよう(図表1)。まず、消費支出全体
を見ると、2017 年半ばで家計調査は上昇傾向となっているのに対し、CTI ミクロは低下傾向と
なっており、方向感が大きく異なる。単身世帯を含むことで、実質消費の方向性が変わる可能
性が指摘でき、総世帯ベースで消費を見る重要性が改めて確認できよう。
また CTI ミクロでは、耐久財など低頻度・高額の消費のぶれの抑制が期待されている。耐久
財が含まれる項目を見ると、「住居」ではぶれが大きく抑制されており、「教養娯楽」も多少ぶ
れが抑えられているように見える。ただし、「交通・通信」は家計調査と同等のぶれが見られ、
より高額の自動車購入などの支出のぶれを抑えるのはやはり難しいようである。
2
家計消費単身モニター調査の結果は、家計調査の単身世帯調査と年齢や性別などの属性が対応するように、統 計的な手法を用いて補正された上で合成される。また、家計消費状況調査では、購入頻度の少ない高額商品サ ービスについて、家計調査の結果と合成される。
3
図表1:CTIミクロ(実質、総世帯)と家計調査(実質、二人以上の世帯)の比較 94 95 96 97 98 99 100
17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11 18/01 CTIミクロ 家計調査
消費支出
(2015=100)
(年/月)
(出所)総務省統計より大和総研作成
94 95 96 97 98 99 100
17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11 18/01 CTIミクロ 家計調査
食料消費支出)
(2015=100)
(年/月)
(出所)総務省統計より大和総研作成
70 75 80 85 90 95 100 105
17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11 18/01 CTIミクロ 家計調査
住居)
(2015=100)
(年/月)
(出所)総務省統計より大和総研作成
90 92 94 96 98 100 102 104 106
17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11 18/01 CTIミクロ 家計調査
光熱・水道
(2015=100)
(年/月)
(出所)総務省統計より大和総研作成
80 85 90 95 100 105 110 115 120
17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11 18/01
CTIミクロ 家計調査
家具・家事用品
(2015=100)
(年/月)
(出所)総務省統計より大和総研作成
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98
17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11 18/01
CTIミクロ 家計調査
被服及び履物
(2015=100)
(年/月)
(出所)総務省統計より大和総研作成
85 90 95 100 105 110 115
17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11 18/01 CTIミクロ 家計調査
保険医療
(2015=100)
(年/月)
(出所)総務省統計より大和総研作成
88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110
17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11 18/01 CTIミクロ 家計調査
交通・通信
(2015=100)
(年/月)
(出所)総務省統計より大和総研作成
80 85 90 95 100 105 110 115
17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11 18/01
CTIミクロ 家計調査
教育
(2015=100)
(年/月)
(出所)総務省統計より大和総研作成
88 90 92 94 96 98 100 102 104
17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11 18/01
CTIミクロ 家計調査
教養娯楽
(2015=100)
(年/月)
次にCTIマクロの動きを見てみよう(図表2)。CTIマクロで見た実質消費は、前月比+0.4%
と2ヶ月ぶりに増加した。CTIマクロは、GDPにおける実質家計最終消費支出と比較すると足下
では若干弱さが見られるが、概ね同様の動きとなっている。2018年1月の商業動態統計は同▲
1.8%と、供給側統計に弱さが見られたことから、CTI ミクロと比較すると小幅な増加にとどま
った。しかし前月比プラスは維持されており、総合的に見て底堅い結果であったとみられる。
図表2:CTIマクロ(実質)とGDPにおける実質家計最終消費支出の推移
277 282 287 292 297 302
92 94 96 98 100 102 104 106 108 110
13/01 13/07 14/01 14/07 15/01 15/07 16/01 16/07 17/01 17/07 18/01
CTIマクロ 家計最終消費支出(右軸)
(2015=100)
(年/月)
(注)家計最終消費支出は四半期ベース。 (出所)内閣府、総務省統計より大和総研作成