実験室から太陽系・銀河系をのぞく

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実験室から太陽系・銀河系をのぞく

大学院理学研究院・大学院理学院 講師

たちばな

省吾

し ょ う ご

(理学部地球惑星科学科)

専門分野 : 宇宙化学,宇宙鉱物学,惑星科学

研究のキーワード : 惑星,太陽系,隕石,鉱物,はやぶさ2

HP アドレス : http://shogotachibana.webnode.jp/

研究のゴールは何ですか?

幼い頃、惑星探査機ボイジャーが真っ暗闇の宇宙空間にポカンと浮かぶ美しい球体達の 姿を、それ自身も美しい球体の一つである地球に届けてくれた時、太陽系の惑星達の色と りどりの姿に魅せられてしまいました。たくさんの色鉛筆を使って、惑星の絵を描きなが ら、「どうして惑星達はそれぞれ色が違うのだろう?」という疑問が心に浮かびました。 惑星の異なる色、これは表面を覆う大気や地表に存在する物質の違いが原因です。うわ べの色だけではなく、惑星は中身も異なっています。水星、金星、地球、火星は岩石惑星、 木星、土星はガス惑星、天王星、海王星は氷惑星です。岩石惑星でも、水星は金属の核が 大きく、火星は岩石中に酸化鉄が多 いなどの違いがあります。惑星をつ くる物質やその化学組成は多様で、 そのために惑星は個性的なのです。 「どうして惑星達はそれぞれ色が 違うのだろう?」という疑問は、「ど うして惑星の化学組成は様々なのだ ろう?」という疑問となって、今も 残っています。惑星の多様性は、その材料がそもそも多様であったことが原因と考えられ るので、惑星が誕生する以前の初期太陽系で惑星の材料がどのように進化したのかを解明 しようとしています。特に実験装置の中に初期太陽系の環境をつくりだし、惑星の材料(鉱 物)がどのようにできるのかを室内実験で調べています。さらに、太陽系ができる以前、 銀河系の中で、太陽系の材料がどのようにできたのかも解明したいと考えています。

誕生直後の太陽系や銀河の歴史をどうやって調べるのですか?

太陽系の歴史を調べるために、私たちは太陽系の古文書(隕石)を紐解きます。隕石は 初期太陽系でできた小惑星のかけらです。小惑星には、初期太陽系の物質がそのまま保存 されていることがあります。そのような小惑星からの隕石から、初期太陽系の歴史を読む (隕石を分析する)のです。隕石の分析で得られた情報から、初期太陽系の姿を描き出す 際に、私たちの室内実験が役に立ちます。私たちは初期太陽系の温度や圧力、化学組成に 近い空間を実験装置につくりだし、その中で鉱物がどのように成長するかなどを調べてい ます。実験で調べた鉱物の形成条件と隕石の情報(鉱物の種類、大きさ、含まれる元素の

出身高校:石川県立金沢泉丘高校 最終学歴:大阪大学大学院理学研究科

天体

太陽系の岩石惑星。左から水星、金星、地球、火星。

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種類や分布、同位体)を組み合わせることで、惑星の材料の進化が見えてきます。

また、赤外線望遠鏡を使って、銀河系に存在する鉱物の塵(これらはやがて次の恒星や 惑星の材料となります)の種類やサイズ、形の情報が調べられていますが、室内実験の結 果とあわせて考えることで塵ができた条件を調べることができるようになってきました。 かつて、中谷宇吉郎博士(北大低温研)は雪の結晶を実験室で作成し、結晶の形と温度・ 湿度の関係を調べ、「空から降る雪の結晶の形を観察すれば、上空の気象条件がわかる」と して、「雪は天から送られた手紙」という言葉を残しました。私たちも「塵は星から送られ た手紙」であると考え、実験室から銀河系の塵の起源を調べることに取り組んでいます。

これからの研究の展開を教えて下さい

惑星の材料、太陽系の材料がどのようにしてできたかを室内実験で明らかにして、惑星 の多様性を理解するという目標は変わりませんが、自然を理解するためには多面的に物事 を捉えることが重要なので、研究対象や研究手法の幅を広げていこうと考えています。そ のひとつが「はやぶさ2」計画です。最近の地

球外物質研究から、小惑星内で「水が反応を促 し、鉱物が反応の場を提供し、有機物が多様化 する」ということがわかってきています。「はや ぶさ2」計画では、かつて水が存在した可能性 の高い小惑星(C型小惑星)を「生命材料物質 が地球にもたらされる前の最終進化の場」と捉 え、その表面サンプルを地球での汚染がないよ

うに持ち帰る予定です。私は「はやぶさ2」探査機の試料採取機構(サンプラー)の主任 研究員を務めており、2020年に小惑星表面の試料を持ち帰り、最先端の分析から、初期太 陽系での生命材料(有機物)の進化について多くのことを明らかにしたいと考えています。

参考書

(1) 宮本英昭・橘省吾・横山広美,『鉄学 137億年の宇宙誌』,岩波科学ライブラリー(2009) (2) 宮本英昭・橘省吾・平田成・杉田精司,『惑星地質学』,東京大学出版会(2008)

(左) 地球外有機物を含むマーチソン隕石の電子顕微鏡写真(大きさ1mm)。(中) 初期太陽系を再現する真空実験装置。

(右) 真空実験装置の中の初期太陽系条件でできたかんらん石組成の惑星材料(個々の粒子の大きさは約10万分の1mm)。

小惑星サンプルリターン計画「はやぶさ2」(想像図)。

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参照

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