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帝国書院 | 高校の先生のページ 高等学校 世界史のしおり 2004年 4月号

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Academic year: 2018

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 現代人は様々な科学と技術の成果に取り囲まれ て生活している。若者はすさまじい適応力でイン ターネットを使って情報を検索し、メールのやり とりで意志を伝える。いわゆる快適な生活は、目 ざましい科学と技術の成果に支えられているはず だが、便利さのみに目が向けられがちである。変 化のスピードが速い時代に生きている生徒には、 科学技術が実生活に活用されている側面だけに目 を向けるのではなく、その現実を冷静にとらえる ことと同時に、そこにつながる諸要素を意識し、 今後を見通す力を身につけてほしいと願う。今こ そ科学技術に関して、教育現場で様々なアプロー チがなされなければならないのである。

 「世界史」という科目は、世界の歴史の大きな 枠組みや流れを把握することをねらう。諸地域世 界の地域性や相互の結びつきに着目するため、政 治・経済・社会・文化・生活の各領域が取り扱わ れる。とくに「世界史への扉」では身近なものや 日常生活にかかわる事柄から世界史を考える視点 が指摘されており、こうした発想は単に世界史学 習の導入としての意味だけではなく、科目「世界 史」全体を通じて意識されるべきである。自分た ちの生活と関連づけさせやすい科学技術は、取り 上げ方によっては格好の教材となる可能性を持つ。  科学技術に関する内容は、従来の世界史では文 化史の中で断片的に取り上げられ、知識を覚え込 ませる典型的な場面となっていた。しかし、その 時々の科学と技術は、政治・経済・社会・文化と も密接に関連し、科学の成果が新たな要求を引き 出して技術の改良を促し、技術の改良を導くため に、さらに科学の知見が広がっていくものである。 断片的に個別の成果を取り上げることにとどめる

のではなく、歴史を総合的にとらえていく場面と して設定したい。

また、科学的成果を取り上げることを通じて、 我々を取り巻いている自然・社会を対象に、先人 がいかなる考察を展開したのかを学ぶことは、科 学的に物事を見つめる姿勢の重要性を認識するこ とにもつながる可能性も持つであろう。

 科学とは、自然や社会の法則を秩序だてた知識 そのもの、そしてそれを追究することであるとさ れる。とくに自然を対象とした知的好奇心を出発 点とする考察、いわゆる自然科学が科学の典型と される。こうした自然に対する考察は、古くから なされており、古代オリエントでは数学・暦学・天 文学など実用の学問が発達した。各地の神官たち は季節の変わり目を予言し、天文学に基づいた暦 を作成した。しかし、これらの知識は一部の神官 に独占され、呪術的・宗教的な域を出ず、彼らの 権威を裏づけるものにとどまったのであった。ま た、エジプト・メソポタミアに代表されるオリエ ントの文化的遺産は、一体誰がその設計者であっ

古代ギリシア・ヘレニズムの自然科学

京都教育大学附属高等学校 高 田 法 彦

1.科学技術に取り囲まれた現代

2.世界史における科学

アテネの学堂(ラファエロ)

「新編高等世界史B」より

ソクラテス

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たのか、いわば作者がわからぬという特徴も持つ。

●古代ギリシア

 古代ギリシアでは、オリエントのように自然現 象を神の所為と説明するのではなく、物質の結合 と分離とで説明しようとした。こうした姿勢は、 アゴラを舞台に自由な議論がなされ、論理的な思 考が養成されたことも背景とされ、またギリシア 人が完成したアルファベットにも注目される。そ の使用によってオリエントで見られたような、一 部の人々による知識の独占から、一般の民衆にも 知識が普及し、その気になれば自由に読み書きす ることができるようになったのである。

 古代ギリシアの自然哲学者は、「なぜ」・「なに が」・「どんなしくみで」などと問いかけ、合理的 な答えを求めて、飽くことなく思索した。そして 彼らは、自分たちの周囲にある様々な物質の根源 は何かという関心にも目を向けていった。タレー ス(前624頃∼前546頃)は、万物の根源を水と考 え、ヘラクレイトス(前500年頃活躍)は、万物 は流転するとして、自然は変化するものとし、そ の根源を最も変化しやすい火とした。またデモク リトス(前460頃∼前370頃)は、万物の根源は目 に見えぬ不可分の物質(原子=アトム)であると 考えた。

こうした自然に対する考察者の代表に、万学の 祖ともいわれるアリストテレス(前384 ∼前322) も挙げられる。彼は、ソクラテス(前469頃∼前 399頃)・プラトン(前429頃∼前347)につながる ギリシア哲学の大成者とも位置づけられ、また少 年アレクサンドロスの学問の師としても、さらに は国家のあるべき姿を考えたとされる著作『政治 学』でも知られる。しかし彼は道徳的な哲学者と してより、むしろ論理学者・科学者としての活動 が重要だともされる。とくに実地に種々の生物を 観察して多くの発見をなし、動物の分類を行った。 アリストテレスと生物とのつながりは、タレース 以来の「自然への問い」の展開に位置づけられる ものであり、アリストテレスが「自然は変化する が、結果は不定ではなく、目的をめざす」と規定

したことから、こうした自然観を説明するために、 実際の動物の観察に情熱を注いだという。彼の観 察の一つに、鶏の孵化についての克明なものも知 られている。「3日3晩経つと…心臓も白身の中 で血液の小点位になっている。…」など、6日目、 10日目、20日目と、日を追って記録される。こう した自然科学者としてのアリストテレスを意識さ せれば、先行する自然哲学者に対する認識が深ま るとともに、自然を見つめ続けた一人の人間に思 いが及ぶのではなかろうか。

 アリストテレスの姿勢は、先人の考えを比較し 批判し、それをもとに自分の考えを打ち出すとい うものであった。万物は土・空気・火・水の四元 素から成り立つと考えたエンペドクレス(前495 頃∼前435頃)の説を支持し、それぞれの性質を 適当に入れかえることによって、火は空気に、空 気は水にと変えることができると考えた。彼の考 え方は、やがて金属の場合にも、他の金属の性質 に置きかえられるとみなされ、錬金術の誕生をう ながしたともいわれ、後世への影響が想像できる。 こうした内容を盛り込むことで、古代ギリシアの 自然哲学者とアリストテレスが密接に関連するこ と、やがてアリストテレスの思索がイスラームの 学問にも大きな影響を与え、さらには中世ヨーロ ッパの学問に反映されていったことにも関連が設 定しやすい。

 もちろんアリストテレスの限界にも触れておく べきである。とくに自然をありのまま受け入れた 姿勢は、実験をともなうものではなかったとされ、 ピサの斜塔での実験から落体の運動法則を証明し たガリレイ(1564 ∼ 1642)を代表とする、17世 紀のヨーロッパでの科学革命と対比できる。

●ヘレニズム

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ンドリアに移り、王立研究所(ムセイオン)では、 数学・物理学・天文学・解剖学など様々な研究が なされた。ここには各地から書物が集められ、そ の数は50万から70万巻にも及び、なかにはアリス トテレスが蒐集した膨大な蔵書も含まれていたと いう。ムセイオンには、多くの学者が集ったこと から、ギリシアでの個人の思索から、一種の共同 研究という今日的な学問への取り組みを示唆する こともできる場面である。

 ギリシアの時代とくらべると、世界が拡大した ために開放的(コスモポリタン的)で、理論を実 地に裏づけようとする傾向が見られるようになる。 ムセイオンに関わって、平面幾何学の創始者エ ウクレイデス(前300年頃活躍)や、金の王冠を こわすことなく、どれだけの銀が混じっているか を調べ、浮体の原理を発見したアルキメデス(前 287頃∼前212)などがこの時期の代表的な科学者 である。アルキメデスは、第2次ポエニ戦争でカ ルタゴに味方したシラクサのために様々な武器を 発明してローマ軍を悩ませたが、シラクサ陥落の 際に落命する。ギリシアでの自然考察とヘレニズ ムでの取り組みを連続させることで、より科学的 考察の高まりを意識できるであろう。

 こうした、世界史で取り上げるべき科学の展開 は、文化史の一こまとなりがちであるが、世界史 で取り上げるべき科学史の全体像の中に適切に位 置づけることで、断片的になることなく、様々な 広がりを設定できるのではなかろうか。

 アリストテレスを軸にすると、先行するギリシ アの自然哲学者に対する印象が深まる。そしてヘ レニズムでの科学研究の広がりと深まりに意識が 及ぶ。やがて学ぶアラビア科学との関連や近代の 科学革命などとつながることに触れ、それぞれの 部分で完結はさせない。事項の暗記に陥ることな く、連続性や関連性を意識して授業を構成するこ とはたいへん意味あることと考える。

 科学の内容そのものを、「世界史」としてどれ くらい扱うべきかは検討されなければならない。 個々の事例を詳しく取り上げれば、当然その部分 についての理解は深まる。しかし「世界史」全体 からは浮いてしまう。「最新世界史図説タペスト リー」の巻末特集「西洋自然科学史の流れ完全整 理」などを活用して自然科学史の全体像を把握さ せることも効果的であろう。さらに今日的な課題 としての、科学と技術との関係、科学技術と国家、 科学技術と軍事、科学技術と環境など多くの問題 にも注意が向けられなければならない。

めざましい科学の発達と技術の革新に取り囲ま れている今日だからこそ、それらが絶えざる改良 と時代の要請から生み出され定着したものである ことを十分に認識しなければならない。また新技 術からもたらされる負の部分についても忘れては ならない。

 ギリシア・ヘレニズムは、教科書の配列に従っ て授業を展開すれば、1学期に取り上げられる内 容である。中学時に世界の歴史についてあまり触 れることのなかった生徒たちにとっては、世界史 学習の導入にもあたる。こうした時期だからこそ、 科学に関する興味づけを通じて、一人の科学者が 先人の成果のうえに立つことや後の時代に関わり を持つことを意識することは、断片的な「世界史」 にならないためにも大切なことである。

<参考文献>

「科学と技術の歴史」道家達將・赤木昭夫 放送大学教育振興会 1999

「文科系のための科学・技術入門」志村史夫 ちくま新書 2003 「図説 科学・技術の歴史 上」 平田寛 朝倉書店 1985

古代アレクサンドリア

「最新世界史図説タペストリー」より 城 壁

ムセイオン (王室付属研究所)

劇場 体育館 図書館

兵営

パン神殿 ポセイドン神殿

戦艦専用港

税関

ムセイオン (王室付属研究所)

王室専用港 イシス神殿

突 の 工 人

堤 ファロス島

小港

地     中     海

大 港

月門

競技場

劇場 体育館 図書館

セラピス 神殿

太陽門 兵営

ネクロポリス

(現在は陸地) マレオティス湖

運河 パン神殿

灯台 (ファロスの灯台)

0 1000m

宮 殿 市街地 神 殿

参照

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