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帝国書院 | 高校の先生のページ 高等学校 現代社会へのとびら

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Academic year: 2018

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現代社会へのとびら❖2017年度3学期号

過去から学ぶ「経済史からみる経済格差の拡大」

 授業の観点で戦後日本経済の変遷を概観すると, 大きく4つの時期※に分けられる。「現代社会」 や「政治・経済」の授業では,それぞれの時期の おもなできごとや経済政策を解説し,教科書や資 料集の実質経済成長率や消費者物価指数のグラフ で裏づけるのが基本だろう。

 だが知識として理解させられても,それが現在 の課題へ結びつきにくい。生徒は未経験の経済状 況を想像しにくく,現況へ関連させるのはさらに 難しい。そこで導入で現在の課題を理解させ,「な ぜそうなったのかな」と問題提起してから展開す ると,生徒の興味関心を喚起できる。

 そのためには,経済格差の拡大を扱うとよい。 これは生徒の生活に直結する問題で,将来にも大 きな影響がある。経済格差を分析するには緻密で 複雑な作業が必要だが,深入りするとマクロの視 点をもちにくくなるため,授業では雇用形態の大 きな変化を統計から把握させるのが適当である。  1枚目のポスターは,非正規雇用労働者の割合 を年ごとに追ったグラフである。1985年に655万 人だった非正規雇用者数は,2016年に2023万人と 3倍以上に増加した。授業の初めにこのポスター を示すと,その急増ぶりが目を引くだろう。  そのうえで「なぜこんなに増えたのかな」と問 題提起し,考えさせてから解説する。これは産業 構造の変化も一因ではあるが,低成長期で人件費 削減に迫られた企業が,正規雇用を非正規雇用に 切りかえていったことが主因である。1996年以降, 労働者派遣法のあいつぐ改定による派遣労働者の 急増も大きく影響している。従来認められなかっ た業種に派遣労働者が急速に拡大したのである。  次に,非正規雇用労働の問題点を考えさせる。 発言する生徒の少ないクラスなら,ワークシート に書かせたり,グループで話し合わせてもよい。 アルバイトの経験がある生徒に,状況を語っても

らう方法もある。生徒からは所得が少ないことや, 雇用が不安定であることが出てくるだろう。  そして,非正規雇用労働者が2種類に大別でき ることも説明する。家庭の事情等でフルタイムを 希望しなかった場合と,正規雇用を希望したのに 非正規雇用しか職がなかった場合である。総務省 統計局によれば,正規雇用の約7割を男性が占め, 非正規雇用の約7割を女性が占めている。いわゆ る「不本意型」非正規雇用労働者ともよばれる『正 規の職員・従業員の仕事がないから非正規雇用の 職に就いた者』は,非正規雇用労働者の約2割で ある。約8割は希望して非正規雇用になったわけ だが,前述のとおり非正規雇用の約7割は女性だ から,育児や介護等の負担が女性に集中しがちな 現代日本において,非正規雇用を希望せざるをえ なかった場合も多いと推測される。いわば「隠れ 不本意型」である。むろん「隠れ」を含む不本意 型のほうが問題が大きいことを確認する。  そして,経済格差について考えさせる。日本で 「格差社会」という言葉が一般化したのは,この 10年ほどのことである。とくに2008年秋のリーマ ン・ショック以来,問題点が顕在化した。それ以 前は,個人間の「貧富の差」はあっても,社会階 層としての格差はめだたなかったのである。  格差拡大により貧困層も増加した。OECDの報 告書によると日本のジニ係数はOECD加盟国の平 均値より大きく,貧困率は主要先進国のなかでア メリカについで高い。

 社会構造の変化により経済格差が拡大し,貧困 層も増加したのが現状であることを理解できれば, 導入は成功である。たとえ実際に貧困家庭で暮ら す生徒がいたとしても,個人の努力不足とは限ら ないのである。続けて戦後日本の経済史を学習さ せる。高度経済成長期の「総中流社会」が格差社 会へ変化していく過程は,実質経済成長率の低迷 と相まって生徒の関心を引くことだろう。

⃝付録といっしょにご覧ください。

付録 過去から学ぶ・地域から学ぶ

 日本の経済格差 

解説・授業での活用方法

千葉県立市川東高等学校 星野 景一 過去から学ぶ・

地域から学ぶ現代社会

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現代社会へのとびら❖2017年度3学期号

地域から学ぶ「地図からみる地域による経済格差」

 経済格差にもいろいろあり,性別や親の所得等 カテゴリーの違いによる格差もあれば,個人間の 格差もある。それらは別単元で扱うこととして, ここでは地域による経済格差を取りあげる。経済 で身近なのは物価や賃金,求人倍率,景況感等で あるが,生徒は自分が暮らす地域を念頭に判断し がちである。物価はともかく,それ以外は地域差 がかなりあることを認識させ,多面的な理解によ り経済格差を深く考察させたい。

 そこで2枚目のポスター,国内の都道府県別平 均年収の地図を活用する。所得の多寡は生徒にと って理解しやすい指標となり,求人倍率や景況感 とも密接に関連するからである。

 まずポスターを示し,そこから読み取れる事項 を生徒にあげさせる。都道府県により平均年収に 差があること,大都市が多い都道府県の所得が高 い傾向にあることをすぐに答えられるだろう。  むろん所得が低くても支出が少なければ問題な いが,現代の日本では地域により物価に大きな違 いはなく,個人の生活環境や生活様式による差が 大きいためここでは深入りしない。例えば農村地 域はおおむね地価が安く,農産物や水産物が安価 な場合もある。だが多くの場合,商品価格は都会 と同等かむしろ高く,交通が不便で交通費や自家 用車の維持費がかかったりするなど,総合的な支 出が少ないとはいえない。生徒には「今の日本で 物価の地域差は小さいから,所得の問題を考えよ う」と述べるにとどめたい。

 次に平均年収の低い県に注目させる。これはや はり沖縄県の低さがめだつだろう。そこで生徒に 理由を考えさせる。挙手させて発言させるか,授 業時間に余裕があればワークシートに記入させた り,グループで話し合わせて発表させる。「沖縄 県の歴史と地理を考えてみよう」と言い添えてお くとおおむね妥当な回答になる。そのうえで戦時 中から戦後,現代にかけての沖縄県の歴史を概説 し,地理条件とあわせ,構造的要因が生み出した 問題であることを確認させたい。沖縄戦では地上 戦で著しい戦禍を受けてあらゆる産業が根底から

破壊され,1972年までアメリカ軍の統治下にあり, 今も在日米軍基地が集中するという他の都道府県 と大きく異なる歴史を歩んだことを理解させる。 本土からの距離が遠いことや平地の少なさ,離島 が多いといった地理的要因も把握させたい。  続いて他の平均年収が低い県について,理由を 考えさせる。「都会じゃないから」といった意見 が出た場合,なぜ「都会じゃない」と所得が低い 傾向があるのかを考えさせればよい。生徒の意見 を集約すると,人口密度が低く過疎化が進む県, 農林水産業がさかんな県となる。さらに原因を考 えさせると,サービス業は人口密度が低いと利益 を増やすのが困難であることや,農林水産業は生 産品の商品価格が安価だったり,生産量が天候に 左右されがちであることが出てくるだろう。工業 も大規模な都市や港湾が近く,交通の便がよいと ころを好む傾向のあることが出るかもしれない。  人は生まれる場所を選べない。居住移転の自由 はあっても,遠方への転居はたやすいことではな い。したがって,地域による所得の格差は小さい ほうがよい。

 その観点から,改善策を生徒に考えさせたい。 意見が出にくければ,教員が適宜助言する。政府 や地方自治体レベルの経済政策は,いくつか考え られるだろう。例えば,租税による所得の再分配 である。これは地方交付税交付金をはじめ,すで にさまざまな形で実施されている。公共事業の実 施も同様である。

参照

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