一瞬の時を止める。
簡単なようで難しい表現が性に合っている
Michael Hitoshi は芸術家一家に生まれた。
祖父は油絵、父は水墨画の画家、そして姉は地元の高校で美 術を教えているという。そんなアートが身近にある家庭環境で、 自然に Michael 自身も創作活動をスタートさせる。「子供のころ は祖父の作品がそこら中にあって、油絵を破いてよく怒られて ました。僕自身も学校で描いた絵が表彰されたり、賞をいただ いたり、そんなこともありましたね。アートが身近にある家庭 に育った人って、どことなく創作的な匂いがありますよね。そ ういう感じが好きで、自分の家にもすぐ手に取れる場所に、アー ト作品を置いておくようにしています」
学生時代は水彩画を描いていた Michael だったが、高校在学 中のある日、父親が持っていた一眼レフカメラに触れ、その一 瞬を切り取る芸術に魅力を感じた。
じっと腰を落ち着けて何週間も風景を見て描く絵より、一瞬 の時を止める、簡単なようで難しいという表現が性に合ってい るんだと思う」と語る。ただしこの頃はまだ家族のように創作 で身を立てる事も、ましてやフォトグラファーになることなど
考えてはいなかった。 98338575, Michael Hitoshi/ Stone
http://www.michaelhitoshi.com/
01 Michael Hitoshi
ま い け る ひ と し 86083401, Michael Hitoshi/ Stone
開拓者と追随者。アートを生み出すということ
大学卒業後、アメリカのマイアミとニューヨークに渡る。そこで 撮りはじめた写真がその後の人生を大きく変えることになる。 「最初は何にも知らないから、とにかく勉強、勉強の毎日で した。師匠の作品や仕事を見て『なんでこれが撮れるんだ?』『ど うやったらこうなるんだ?』という疑問と格闘していました。 必死で勉強して、どんどん撮って実践してね。それを繰り返し ているうちに、できるようになると面白くて、はまっていきま した。今の若い子たちはスタジオに入ったらなんでも教えても らえると思っていて、自分で勉強しない子が多い。自分のやり たい事なんだから、まずは自分で一生懸命勉強しないと身に付 かないと思いますよ」
アメリカでの経験で本格的に写真にのめり込むことになった Michael。その後一時帰国するも、フォトグラファーとして経験 を積むためにロサンゼルスに再度渡米した。
「LA ベースのカジュアルファッションの広告をたくさん撮ら せてもらいました。ポスター、カタログ、店内ポップなどです。 もちろん最初はコネもなければ知り合いもいません。いろいろ なところにブックを持って行っても自信がないのが向こうにも
伝わり、全然仕事につながりませんでした。たまたま地元の雑 誌編集者にブックを見せたら『お前の撮っているのはファッ ションじゃなくて、ハイファッションだ』と言って気に入って いただいたんです。その雑誌のファッションページを任せても らったり、お店に取材に行った関係でブランドの担当者を紹介 してもらったりして仕事が広がり始めました。自分の写真はハ イファッションなんだ、と気付かされてからは『砂漠にモデル を立たせて、遠くから撮影したらかっこいいはず、ぜひやりま しょう!』などと強気にプレゼンができるようになりました。 実際砂漠に行って撮影したときはあまりの暑さに『どうしてあ んなバカな提案をしてしまったんだろう?』と後悔したことも ありました。今思えば若気の至りのような失敗も多かったです が、自分のアイデアを提案するということを経験した大事な時 期でした。結局、既存のアイデアを真似するだけの追随者だと 他を抜けないし、そこに自分だけの作品世界は見えてこない。 開拓者になることが重要ではないでしょうか。考えるだけでな く、それを形にして、他の人に評価をいただき、あがっていく、
それが作品となって残っていくのだと思います。」 98338569, Michael Hitoshi/ Stone 86083401, Michael Hitoshi/ Stone
フォトグラファーとロイヤリティ
一緒に活動していたフォトグラファーの誘いでストックフォト の撮影を始めた Michael。その理由は意外にも映画業界の友人 の話にあった。
「ハリウッドでは俳優団体とか協会で細かい労働基準が決め られて、権利と義務がきちんと明確化されています。そしてそ の映画作品で得た利益を、決まった形で表方裏方関わらず公平 に分配するという制度が確立しているのです。これこそが芸術 を伸ばし、クリエイターを守る仕組みではないでしょうか。僕 はこれが正しいと思っていて、日本ではそういう仕組みがない から芸術が伸びないのではと考えています。結局、人に認めら れてお金を得ないと創作を続けていくことはできません。その
製作者の権利を守る仕組みの写真版が、フォトエージェンシー なのだと思います。
日本ではまだその考え方を持っている人が少なく、理解もさ れていない気がします。代理店の広告撮影の仕事は写真の最終 的なコピーライツもはっきりしていませんし、契約書すら無い ことが多々あります。ストックフォトではライセンスフィーが きちんと計算されて、システマチックにフォトグラファーにロ イヤリティが還元されます。そのロイヤリティを原資にまた次 の作品を撮影できます。この明快な仕組みはとても大切で、そ れがゲッティ イメージズでは長年にわたって実現しているので 一緒に仕事をしているのです」
98338570, Michael Hitoshi/ Stone 84122094, Michael Hitoshi/ Stone
世界ナンバーワンの
空撮フォトグラファーを目指して
現在都内2カ所のスタジオを経営し、ゲッティ イメージズ ウェブサイトを通じて世界中で多くの写真がライセンスされ ている Michael だが、今後の目標も明確だ。
「Aerial Photographer の一番になりたいです。空撮を撮ら せたら一番だと言われたい。もともと高いところは苦手だし、 空撮なんて考えた事もありませんでしたが、ゲッティ イメー ジズのアートディレクターに騙されて(笑)、ヘリの連絡先 まで渡されて『とにかくやってみよう!』って事で始めまし た。これが意外と奥が深くて難しいんです。床に四角い穴が あるヘリからカメラを出して撮るんですが、止まってほしい ところには全然行けない。しかも夕暮れのマジックアワー(辺 りが青紫色になる 15 分程度の時間)を狙っているので、1 回チャンスを逃すと光が変わってしまいます。1回飛ぶうち、 満足できるものが1、2点しか仕上がりません。でも手間を かけて撮影した写真は独占的な価値を生み出すのでしょう、 非常に高額で売れています。最近、自分が自信を持って撮っ
た作品は、ゲッティ イメージズでも自信を持って売ってもらっ ているな、と感じます」
今までに見た事のない東京、大阪、ロンドンの空撮写真を 続々と私たちに見せてくれる Michael。ロンドンでゲッティ イメージズのクリエイティブ・ディレクターに会った際には
『君がアジアナンバーワンの空撮フォトグラファーだ』と言 われたそう。「アジアナンバーワンという言葉はうれしかっ たですが、裏を返せばヨーロッパにも、アメリカにも上手い フォトグラファーがいるということですので、より上を目指 し、世界一になりたいです」という。
既にさまざまな経験をし、多くの受賞歴もあり成功を収め ているにも関わらず、常に前を向き、ひたむきに写真に取り 組む姿は清々しく、そしてキュートだ。
この Photographer Success Story のインタビュー冒頭に Michael は照れながら「サクセス・ストーリーですか?まだ まだ!」と言った。
98338572, Michael Hitoshi/ Stone
受賞歴
2012 International Photography Awards 3rd place in Cityscapes category
2012 PX3, Prix de la Photographie Paris Fisrt place in Nature category
2011 London International Creative Competiton Shortlist in Fashion-professional category
2011 PX3, Prix de la Photographie Paris Bronze winner
2012
2011
84407702, Michael Hitoshi/ Stone