巻頭⾔:産学連携による反応プロセスの社会実装 徳島⼤学 杉⼭ 茂 新型コロナが猛威を振るう昨今,これまでであれば当た り前であった産業界の⽅とのコンタクトが激減していま す。現場に近い化学⼯学という学問分野を⼤学で教育して いる⽴場からいうと,現状は優れた技術の社会実装の⼤き な妨げになるのではないかと危惧をしています。このよう な中,産学連携に基づく反応器設計の基礎から社会実装ま での本特集号を組むことができましたので,学側の⼀⼈と して,⽇頃産学連携活動から受けた経験や印象を紹介した いと思います。 私は,⼤学⼊学時には化学に馴染むことができていない 化学⼯学科の学⽣としては最も相応しくなかった学⽣で した。しかし,⼊学後は,機械⼯学,情報⼯学,電気⼯学 の勉強もしっかりとやらされ,その後,化学⼯学の本丸の 単位操作,反応⼯学の勉強が進みにつれて,数学や物理関 連の科⽬が好きで化学⼯学に⼊れていただいたことのあ りがたさを当時は感じました。学⽣の当時,印象深かった ことは,化成品を製造するプロセス⼀つ⼀つに基づいた理 論と計算を複雑に組み合わせて設計し,あたかも機械⼯学 や電気⼯学を専攻した学⽣のようにプラント設計に⼊っ ていけることを実感したことでした。特に,当時ご教⽰い ただいた先⽣⽅から,産業界の皆様のご厚意によってさま ざまなエンジニアリングフローシートを勉強する環境を 頂いていることを伺い,学部学⽣ながら⼤学の勉強が実社 会とつながっていることを実感していました。今では,教 える側に回りましたが,学⽣にプラントについては⾒たこ ともないプラントを,すべてを知っているように講義しな ければならないことにジレンマを感じています。このため, 産業界の⽅にプロセス⾒学をさせていただいたときや,卒 業⽣に⼊社後係わっているプロセスやプラントを⾒せて いただいたとき,机上の勉学に基づいて頭に思い描いてい たプラントと実際に動いているプラントを⽐較すること で,もやもやしたものが氷解するのを今でも感じており, 教育分野での産学連携の恩恵に浸っています。 研究分野でも,産学連携の恩恵を⾮常に受けてまいりま した。学位を取得するまでは,理学系の研究室にいたため, 全く産業界との連携を意識したこと,ひいては社会実装な ど考えたことはありませんでした。当時は,製造現場では 決して⾏えない⽅法,また合成しても仕⽅のない化合物を 合成するなど,やりたい放題に研究を進めていました。今 から考えると,技術は⾝につきましたが,⼯学部系化学の 研究者として,現場に全く⽬を向けていなかったことには 反省するしかありません。現在では,企業の⽅と連携を組 み,社会の役に⽴つ製造プロセス,製品開発に携わるよう になり,以前は論⽂執筆⼀辺倒でしたが,最近では特許も 意識して,いかにして産業界に寄与できるかを考えるよう になりました。⼯学部系の化学の研究者は産業界と連携し て社会実装を意識して研究すべきということを⽇々強く 感じながら研究を進めています。私の学⽣指導も年齢とと もに変化し,化学⼯学の醍醐味は技術の社会実装に携わる ことができ,このことは特に企業では明確ですので,特に 博⼠前期課程学⽣にはインターンシップへの参加や本当 に化学⼯学を理解している学⽣であるというお墨付きを 頂ける化学⼯学技⼠(基礎)の受験を推奨し,⼊社後に少 しでも企業の⾜⼿まといにならないようと考えるように なりました。社会実装には,プラントを設置する地域の皆 さんのご理解も必須ですので,産学連携,地域貢献を意識 して学内運営を⾏うようにもなっています。 本特集号は化学⼯学会反応⼯学部会に関係する先⽣⽅ と企業の技術者の先⽣⽅により執筆されています。反応プ ロセスを構築するための基礎的な移動現象論,単位操作, 反応⼯学等は⼤学で教育することができる⼀⽅,その社会 実装のためには,エンジニアリングフローシート,本格的 流動層反応装置,さらにはスケールアップ等については産 業界からの情報提供がなければ達成できません。このよう な背景から,本特集号では,基礎的な部分を⼤学側で,ま た現場での応⽤的な部分を産業界側で解説し,反応プロセ スの社会実装の例を⽰しています。本特集号が反応プロセ スの社会実装の実現の⼀助となることを期待しています。 本著作物は著者稿です(出版社版ではありません)。
産学連携による反応プロセスの社会実装
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