Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
TDC卒後研修セミナー2006「総合治療 必要な技術とライ
フステージに対応した歯科医療へ」 : 保存治療編「フラ
ップオペレーションの実技」 切開線を考えよう−フラッ
プをデザインする−
Author(s)
高橋, 潤一
Journal
歯科学報, 107(3): 267-271
URL
http://hdl.handle.net/10130/99
Right
要旨:フラップ手術は,中等度以上の歯周治療にお いて大変有効なテクニックである。また,根面の歯 肉縁下カリエスや補綴処置の前処置としても有効で ある。しかし経験の少ない術者にとっては,高い ハードルを感じるかもしれない。そこで,同窓会卒 後研修セミナーでは,フラップ手術のセミナーが開 催された。 フラップ手術は,闇雲に切開,デブライドメン ト,縫合を行っても良い結果は得られない。成功の ためにはいくつかのポイントがある。その中の一つ としてセミナーでは,切開線の設定についての実習 を行った。切開線は,そのフラップ手術のコンセプ トを考慮して設定しなければならない。例えば,前 歯部か臼歯部か?再生療法を行うのか?歯周ポケッ ト除去療法を行うのか?付着歯肉の幅は?歯間部の 歯槽骨の形態は?など,考慮すべきポイントは多数 挙げられる。 実習では,以下に挙げた3症例を提示し受講生が 切開線を実際にデザインし,その後でどのようなコ ンセプトに基づいたら良いのかを解説した。 症例1 この症例では,!7近心に限局した著しく深い歯周 ポケット(8mm)に対してフラップ手術を行った。 深い歯周ポケットに確実にアクセスするためには |_5_6_7歯肉溝への切開のみでは不十分である。そ こで!5の近心隅角に縦切開を加えた。!4には歯周ポ ケットが認められないので,この部位に対する手術 侵襲を避けつつ,明視野を得ることができた。しか し,縦切開の際,切開,フラップの取り扱い,縫合 について特に慎重に行わなければならない。怠ると 傷跡の瘢痕化や,著しい歯肉退縮などの合併症を引 き起こすので注意が必要である。 症例2 症例2は,|_2_3歯間部の垂直性骨欠損に対するフ ラップ手術および再生療法を行った症例である。 この症例では,歯肉退縮を最小限にするためと再 生療法のために歯肉溝内切開を施した。再生療法で は再生を期待する部位は角化歯肉で完全に閉鎖しな ければならない。|_2_3歯間部は特に乳頭部の保存が 大切である。再生療法を行うためには,深い骨縁下
TDC 卒後研修セミナーレポート
TDC 卒後研修セミナー2
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「総合治療 必要な技術とライフステージに対応した歯科医療へ」
保存治療編「フラップオペレーションの実技」
切開線を考えよう
―フラップをデザインする―
高橋潤一
キーワード:フラップ手術,実習,縦切開,再生療法, 歯周ポケット除去療法 (東京都) (2007年2月15日受付) (2007年2月26日受理)Junichi TAKAHASHI: TDC-Post-graduation Study Semi-nar 2006. General Treatment and Techniques Required for Provision of Dental Care for Life. Guide to Conserva-tive Treatment : Flap Operation skills. −Considering the incisional line−designing the flap−(Tokyo)
図1 症例1.!7近心に限局した深い歯周ポケットが存在する
図2 症例1の術中。!5の近心隅角に縦切開を加えて明視野を確保し,手術侵襲を最小限にした。縦切開を用いないと したら,!4まで切開を伸ばさないと十分な視野は得られない
高橋:切開線を考えよう 268
図3 症例2 │_2_3部に垂直性骨欠損が認められる
図4 症例2の術中。!2遠心の骨欠損に対して再生療法を行った。前歯部であることを考慮して縦切開は行わず,!1近 心まで歯肉溝内切開を施した
図5 症例3 厚い歯肉が存在している。補綴処置の前に歯周外科処置を行う時には,暫間補綴物を除去して行う
図6 症例3の術中。歯肉辺縁から2mm 離し,ポンティック部はディスタル・ウエッジの要領で切開した。歯肉弁が 過不足無く縫合されている
高橋:切開線を考えよう 270
欠損に確実にアプローチすることが必要である。そ こで切開を!1近心まで延長した。審美的な要求が高 い部位なので,歯肉退縮や組織の瘢痕化を考えて縦 切開は選択せず,!1近心まで歯肉溝切開を延長し て,深い骨縁下ポケットに対してアクセスを得た。 症例1と比較すると分かりやすい。 症例3 症例3では,補綴処置を行う予定である上顎臼歯 部に,水平性の骨吸収による厚い歯肉と共に5mm 程度の歯周ポケットが残っている。 補綴処置が必要な部位のフラップ手術では,術前 に暫間補綴物を装着し,手術時には除去した状態で 行うことが望ましい。通法に従って,歯肉辺縁から 1mm 離した切開では,厚い歯肉に対応できないこ とが考えられる。そこで,切開を歯肉辺縁から1.5 から2mm 程度離した位置に切開線を設定した。欠 損部ではディスタル・ウエッジの要領で切開線をデ ザインした。この時,術後の付着歯肉の幅が確保さ れるように歯肉歯槽粘膜境(MGJ)の位置に十分注 意しなければならない。 実際には,さらに歯肉内面をそぎ落とすように切 開し,薄いフラップを形成した。歯肉溝内に2次切 開,肉芽組織の付着部に3次切開を加えてデブライ ドメントを行った。デブライドメント終了時には歯 槽骨が明示され,縫合すると緊密に過不足無くフ ラップが閉じられている点に注目されたい。 まとめ 今回示した切開線はその一例である。切開線は, 同じ症例でも術者の習熟度や手術法の選択によって 変化する。しかし大切なのは,十分な診査から歯周 炎の状態を正確に診断し,手術のコンセプトを考慮 して切開線の位置,方法,角度などを計画すること である。“フラップ手術,成功のポイントは切開に ある”と言ったら過言でしょうか? 謝 辞 症例写真提供は,木暮隆司(東京都・開業)先生,浅野裕之 先生(千葉県・開業)のご厚意による。 歯科学報 Vol.107,No.3(2007) 271