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クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト

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Academic year: 2021

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(1)クチコミ発信者の信憑性を規定する         要因としての企業サイト 西 原 彰 宏 1 . はじめに 2 . クチコミ 2−1 インターネット上のクチコミ 2−2 クチコミの発生要因 3 . 送り手の信憑性( source credibility ) 4 . 仮説導出 5 . 調査方法 5−1 調査方法 5−2 質問票の構成 5−3 調査方法と被験者について 6 . 調査結果 6−1 分析結果 7 . まとめと結論 8 . 限界. 1 .はじめに  インターネットが社会のインフラとして定着した(森田 2005、上田 2007)とさ れる現在、消費者はインターネットを利用することで様々な情報を容易に取得でき るようになった。インターネットは齊木(2002)が述べるように誰もが24時間ア クセスできかつ空間的・物理的距離 1)を克服でき、さらに企業側だけでなく消費者 が情報発信の主体となってきた(守口 2006)ことからインターネットがなければ出 1)Wind and Mahajan(2002)においては、物理的・地理的制約と指摘している。. 69.

(2) クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト 会えなかった他者からの情報取得が可能となってきたと考えられる。  そのインターネットより得られるブランド、製品、サービス、企業に関する情 報の中でも消費者の購買意思決定に影響するのは企業から発せられる情報よりも 他の消費者が発する情報、つまりクチコミであると言われる。このように消費者 が商品の購買やサービスを入手する際に利用する情報は、商品の売り手が意図的 に提供する広告などの情報だけではなく、消費者同士で行われる人的コミュニ ケーションによって情報が伝達されることも多い(杉本 1997)。このような人的 コミュニケーションは一般にクチコミ 2)( Word-of-mouth communication )と呼 。 ばれる(杉本 1997)  このような製品・サービスに関する莫大なクチコミがインターネット上に蓄積 され誰もがアクセスできるようになった現在、新規顧客を開拓し継続的な再購買 をもたらす消費者間のクチコミ情報(金 2006)は、企業のマーケティング活動に おいて重要なプロモーションの一部であるといえる。  けれども、消費者間の関係はこれまで企業の観点からは統制不可能といわれ、 企業のマーケティング戦略の手段として軽視あるいは等閑視されてきた(金 2006)。このように消費者間のクチコミに関して、例えば二瓶(2000)が指摘す るようにクチコミは伝達する一人一人がメディアとなっているため原理的に企業 によるコントロールは不可能という論者が多く、クチコミを企業のマーケティン グ活動におけるチャネルとしてコントロールすることは難しいと指摘されてき た。  しかしながら企業は、自らの情報の発信源、さらには企業が初めて手にした自 社媒体(山本 2006)3)としての企業サイト 4)に、掲示板等の顧客間インタラク ション機能を設置することで消費者のクチコミを集積し活用することも考えられ る。  その中で、山本(2006)では一部の消費者による誹謗中傷といったマイナスの 影響を受ける可能性があるために企業サイトに顧客間インタラクション機能を設 置する企業は少ないと指摘する。そうした指摘に答えるかのように、企業サイト 2)杉本(1997)ではクチコミを口コミと表記しているが、本研究ではクチコミと表記し、他の先行 研究において表記が異なる場合においても同様に表記をクチコミと統一している。 3)このような研究において、ウェブサイトにコンテンツとして顧客間インタラクション機能を保有 するかどうかでウェブサイトの閲覧からの離脱を減少させることを実証した研究に山本(2006) の研究がある。 4)本研究における企業サイトとは、主にメーカーおよびサービス業が運営しているウェブサイトの ことを指す。. 70.

(3)  西 原 彰 宏 内に消費者がクチコミを書き込むことが可能な掲示板等の顧客間インタラクショ ン機能を備えた上でそこに書き込まれるクチコミを企業側が取捨選定することで 掲載するクチコミを管理するといった企業側の動きがみられる。  そこで本研究ではこのようなインターネット上のクチコミに関して、企業によ る顧客管理や広告としてのインターネットの活用 5)ではなく、企業サイトを通し た消費者のクチコミの集積およびクチコミの管理に関する問題を取り扱う。その ために、ウェブサイトを閲覧する消費者に焦点を当て、インターネット上のクチ コミにおいてウェブサイト形態の差異によるクチコミ発信者への信憑性および当 該企業製品のブランドに対する態度への影響を明らかにする。. 2 .クチコミ  2−1 インターネット上のクチコミ  クチコミは、Arndt(1967a )によれば「商業的でないと知覚される話し手と受 け手との間で交わされる、口頭による、対面での、売り物として提供されるブラ ンド、製品、サービスに関するコミュニケーションである」とされる。このクチ コミは家族や友人、知人などとの間の交友関係を前提としたパーソナル・コミュ ニケーションのチャネルによって伝達されるものであり、それが Word-of-mouth. communication と呼ばれているように人の口から口へと情報が流れることが前提 にあると考えられる。  ここで、クチコミが効く理由として濱岡・片平(1997)では「社会的な関係に 規定された相手が情報源である」とし、同じように二瓶(2000)においても「クチ コミが、信頼関係のある人からの個人的な情報であるという点である」と指摘さ れてきた。  クチコミは、基本的にそのコミュニケーションの相手が社会的関係をもつ中の 誰であるかが特定されれば良いわけであるから、その対面である必要性は必ずし 5)これまで企業によるインターネットの活用が盛んに行われる理由として、Hoffman and Novak (1996a )ではインターネットを通じてマーケティング活動を行うことにより従来の一方的な一 企業対多顧客ではない「個を対象として、相互作用を伴った複企業対複顧客」のマーケティングが 可能になる点を挙げ、他にもインターネット活用による広告費のコスト削減やデータベースに基 づく顧客関係管理の重要性は多くの研究においても言及されている(井田 2001)。また、One-toone マーケティングの重要性をあげている Peppers and Rogers(1993)においてもインターネッ トの効用を①個別対応、②双方向、③低コスト等とあげているなど、企業側がいかにインターネッ トを活用するべきかに関する研究があげられる。. 71.

(4) クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト もなく社会的関係を有した相手との手紙や電話など対面ではないコミュニケー ション・ツールを介した情報のやりとりもクチコミの範疇になる。この考えを裏 付けるように Buttle(1998)では対面を排除しインターネット上のコミュニケー ションもクチコミに含めている。  一方、濱岡(2007b )ではインターネット上のクチコミを e クチコミ 6)として 捉え、これまでの社会的な関係を通じた対人的なコミュニケーションのみならず より広い範囲での情報伝達が可能として従来のクチコミと対比させている。  本研究においても、インターネット上のクチコミを e クチコミとして便宜的に 捉え、従来のクチコミと区別する。そこでの従来のクチコミは対面・非対面は問 わない社会的関係を有した相手とのコミュニケーション 7)である。そして、e ク チコミは社会的関係を持たず、基本的に不特定・匿名の消費者とのインターネッ トを通した非対面で行われるコミュニケーションであるとする。その e クチコミ はインターネット上に蓄積された言語中心の情報のやり取り 8)である。  近年さまざまなクチコミ・サイトや企業サイト内の掲示板等においてクチコミ 発信者の個人属性に関するプロフィール情報を充実しようという動きがみられる が、それらはいずれもこのような e クチコミ発信者の匿名性を補うためである考 えられる。けれども、どの個人属性を明示すれば有効なのかはまだ明らかにされ ておらず、また、発信者が特定 9)されても社会的関係を有していない場合従来の クチコミと同じように消費者の態度に影響を与えるかどうかはまだ明らかにされ ていない。. 6)加えて、インターネット上のクチコミを扱っている澁谷(2007a、2007b )では、e クチコミと 表記してはいないが既存の社会的関係を越えた形でのコミュニケーションの可能性をあげ、イン ターネット上のクチコミの特徴としてネット上に蓄積され網羅性や検索性を備えたことにより社 会的文脈依存性を克服した(渋谷2007a、2007b )と指摘している。 7)なお、すでに交友関係もしくはもともと繋がりのある人とのインターネットを使ったコミュニ ケーションにおけるクチコミは従来のクチコミの延長線上と考えられそのクチコミを媒介する チャネルがインターネットであったということができる。本研究では、こういったすでに社会的 関係を持つ人同士におけるインターネットを通したコミュニケーションではなく、インターネッ ト上において社会的関係を持たないもしくは社会的関係を持つ以前の状態での消費者間でのコ ミュニケーションを取り扱う。 8)インターネットは言語形態だけでなく画像や動画など多彩な情報伝達手段を保有していると考え られるが、消費者間のコミュニケーションさらにはクチコミに焦点をあてた場合まだまだ言語中 心のものが考えられ、本研究では言語中心のものとして捉えることとする。 9)また、大谷(2007)ではインターネットにおける匿名性について言及している。その中で一般的 な「匿名」に対する反対語である「実名」というのは氏名だけを指すのか、実名に限らない身元情 報の総体を指すのかが不明確である場合があると指摘している。. 72.

(5)  西 原 彰 宏  2−2 クチコミの発生要因 (1995)  クチコミが発生する条件や状況をまとめた Engel, Blackwell& Miniard の論文において、クチコミが最も起こりそうな条件および状況は下記の条件およ び状況の内の1つ以上が満たされる必要があるとしている。それは①消費者が満 足して製品選択をするための十分な情報が不足している時、②製品の客観的な基 準による評価が複雑で困難な時ゆえに他人の経験が“代理の使用( vicarious. trial )”として使える時、③製品またはサービスを評価する能力を欠いている時、 ④他の情報源で信頼性が低いと知覚される時、⑤影響力のある人が他の情報源よ り利用しやすく、時間と努力の節約になる時、⑥伝達者と受け手との間に強い社 会的関係がある時、⑦個人が社会的承認に対する強い欲求を持つ時等である。  ま た、ク チ コ ミ で 取 り 上 げ ら れ る 製 品 と い う 視 点 か ら、Wells & Prensky (1996)では、製品タイプとクチコミの特徴 10)との関係を示している(図表2− 1参照) 。ここで、Wells & Prensky(1996)ではクチコミが発生する条件とな る製品のタイプとして①消費者自身にとって新しい製品、②技術的に複雑な製 品、③リスクを伴う製品、④目に見える環境で使われている製品をあげている。. 図表2−1 製品タイプとクチコミの特徴との関係 製品の種類. はじめて購入す る製品. 技術的に複雑な 製品. リスクを伴う製 品. 視覚的に意識す る製品. 製品の例. 購入経験がない 製品. コンピュータ・ハ イテク製品. 薬、化粧品、学校、 衣服、ファッショ 求職、金融関連 ン性の強い製品. 最も重要な コミュニケー ション内容. 経験・製品の情報. 製品の情報・アド バイス. アドバイス・経験. 経験. 受け手の目的. 認知的努力の削 減. 認知的努力の削 減と不確かさの 解消. 不確かさの解消. 不確かさの解消. 相手の特徴. 仲のよい仲間の 内で、その製品に 詳しい人. 個人的に知って いる人の中で、そ の製品に非常に 精通している人. 仲間の内で仲の よい人か、憧れを 抱く人. 仲間の内で仲の よい人か、憧れを 抱く人. ( Wells & Prensky, 1996、杉本1997より)加筆して引用. 10)Arndt(1967a )によればクチコミは製品・サービスに対してポジティブなクチコミとネガティブ なクチコミに大別することができる。また、それ以外にも製品属性に関する情報、使用情報、体 験情報などいくつかの次元で捉えることができると考えられる。. 73.

(6) クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト  さらに、クチコミの誘発動機やクチコミ効果の規定要因、クチコミ効果に関し て体系的に示した Bristor(1990)は、そのモデルにおいてクチコミが起こる動機 を主に個人的要因、製品的要因、状況的要因の3つに分けてクチコミの誘発要因 を研究し、情報源と受信者の間で行われる社会的関係とコミュニケーション関係 の特性によってクチコミ効果の規定要因が決定されると述べている。社会的関係 においてクチコミに影響を与える要因は、紐帯の強度、同質性、情報源の信頼性 が重要であるとし、コミュニケーション次元でのクチコミに影響を与える要因は クチコミの方向性とクチコミの主体という2つの要因が重要であると述べた。  以上のような従来のクチコミの発生要因において、e クチコミにおいて考察す ると商品の金額および製品カテゴリー、消費者の専門知識や購買経験に囚われず 自由にインターネット上に書き込みをすることができる。消費者が比較的簡単に 辿り着ける e クチコミでは、従来コミ研究が想定していた製品カテゴリー以外の 多種多様な製品カテゴリーや特徴を有することが想定される。  しかしながら本研究では、今後 e クチコミで取り上げられる多種多様な製品カ テゴリーを考察する上でクチコミの情報としての特徴を取り上げることが有益で あると考えるため、そうした製品カテゴリーよりも主にクチコミの情報としての 特徴に焦点をあてることとする。そこでは今後、社会的関係を有した相手に伝え られるクチコミと匿名性が保たれた状態でのクチコミとの間における差異および 従来のクチコミの対象とされてきた製品カテゴリーの拡張に関して考察する必要 がある。  以下では、説得コミュニケーションの見地からその態度変容に与える要因とし て考えられてきた送り手の信憑性を取り上げる。. 3 .送り手の信憑性(source  credibility)  コミュニケーションの有効性は、一般的にそれを誰が伝えるかにかなりの程度 依存しているとされ( Hovland, Janis & Kelly 1953)、彼らはコミュニケーショ ンにおける伝え手の信憑性が聞き手の態度変容に与える影響について論じてい る。その Hovland, Janis & Kelly(1953)では、この送り手の信憑性( credibility ) は専門性( expertness )と信頼性( reliability or trustworthiness )から成るとし、そ れぞれ専門性を伝え手が正しい主張の源泉であると知覚される程度であり、信頼 74.

(7)  西 原 彰 宏 性が最も正しいと考えている主張を伝達しようとする伝え手の意図に対する信頼 の程度であるとされる。  この専門性は、コミュニケーションの内容または説得を試みようとしている テーマと関係が深く、同一の送り手の専門性の程度はテーマによって異なってい ると考えられる。どのような要因がこの専門性を増すかについては Hovland,. Janis & Kelly(1953)において、伝え手の年齢、リーダーシップ、および社会 的背景の類似性はある程度の専門性の指標とみなされることが述べられている。 また、Horai, et al.(1974)によれば専門性とは送り手の資格、たとえば教育、 経験、能力などによっているとされる。  次に、信頼性に関して言及している Wheeless & Grotz(1977)や McGinnies. & Ward(1980)などの研究によれば、送り手の真面目さや、説得意図のなさ、 説得の結果に対して利益をもたないことなどに由来しているとされる。Walster,. et al.(1966)の研究では、送り手が自分の利益になるようなことを述べた時よ り自己の利益に反することを述べた時のほうが受け手には信頼性が高いと受け取 られるとされる。  このように、信憑性が高いとは榊(2002)に従うと「信憑性が高い人物とはそ の問題についての専門の知識・技術をもった、信頼できる人物である」として、 それはつまり対象とする問題領域における専門的知識や技術を保有し、かつ、信 頼のおける人物であるということである。  送り手の信憑性と態度変容に関して、深田(2002)によれば源泉の信憑性認知 と説得効果は源泉の専門性( expertise )手がかりとともに増加するとされる。こ の点に関して、中谷内(1997)では、送り手の専門性が高ければ送り手の話す内 容が専門過ぎて充分に理解できなくても商品に対する評価が高くなるであろうと いう見解が示されている。  送り手の信憑性に関する実証研究は、Hovland & Weiss(1951)11)や Kelman. & Hovland(1953)によって行われている。そこでは信憑性が高いと仮定された 11)しかしながら、Hovland & Weiss(1951)の研究では、信憑性の高い送り手による説得効果も 1ヶ月後にはその効果が減少し、信憑性の低い送り手によって説得された場合とほとんど差がな くなっていることが示され、信憑性の低い送り手の説得効果は逆に増大していた。この時間経過 にともなう説得効果の上昇をスリーパー効果( sleeper effect:仮眠効果)と名付けた。さらに、 Kelman & Hovland(1953)では手がかり分離仮説を提唱した。この手がかり分離仮説によれば、 説得コミュニケーションの受け手はコミュニケーションの送り手とコミュニケーション内容の結 びつきを次第に忘れ、コミュニケーション内容自体の説得効果が出てくるというものである。. 75.

(8) クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト 情報源の方が信憑性が低いと仮定された情報源と比べ、有意に意見変容がみられ た。同じように情報源の信憑性に関する実証研究を行った研究として Kelman &. Hovland(1953)があげられ、同様に送り手の信憑性が高いほうが態度変容に効 果があったことがわかっている。  ただし、こういった送り手の信憑性の差異が伝え手の態度変容に与える影響に 関する実証研究において、所与として与えられる送り手の信憑性がその信憑性を 構成する信頼性、専門性に関してどちらをどのくらいコントロールされているか は明示的にはわからないという問題があげられる。その点に関して榊(2002)が 指摘しているのは、 「実際の研究においては、必ずしもこれら 12)の概念に従って 信憑性が研究されているわけではなく、一括して信憑性として研究されている ケースが多い 13)」ということである。  ここで、本研究における e クチコミの送り手の特徴と態度変容の効果を考える にあたり、送り手の信憑性だけでなくその他の要素も考慮する必要がある。この 送り手の信憑性以外の要素に関して、対人魅力( interpersonal attraction )があげ られる。この対人魅力を規定する要因として、榊(2002)は、空間的近接と単純 接触、身体的・外見的魅力、類似性、相補性、他者への好意、自己開示、身体言 語、表情、視線、性格、ユーモア等をあげている。  けれども、インターネットのメディア特性を踏まえた発信者についてみると、 インターネット上のコミュニケーション行動を扱うほとんどのモデルには匿名性 という要因が何らかの形で組み込まれており( Joinson 2003) 、その匿名性につ いては、社会的文脈(地理的要因、組織的要因、状況的要因)の欠如ないし不足 ( Sproull and Kiesler 1986)、社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 欠 如( Spears and. Groot 2001)、視覚的匿名性( Spears and Lea 1992)などが指摘されている。  以上のことが指し示すのは、インターネット上に自身の商品に対する評価情報 などのクチコミを書き込んでいる消費者に関する付随的な以上の情報が欠如また 12)榊(2002)においては、Hovland らの専門性・信頼性、Barlow らの安全性・視覚性、力動性を指 しているが、同一概念としてみている。 13)信憑性の高低のコントロールにおいては信憑性の高い送り手に関しては信頼性および専門性がど ちらも高い送り手であるのか、信頼性は高いけれども専門性は低い、または信頼性は低いけれど も専門性は高いといった送り手であるのかが示されていないということになる。榊(2002)はさ らに「信憑性の構成因子に関する研究や、それぞれの因子の説得に及ぼす効果、また、各因子と 説得効果に影響を及ぼすと考えられる他の多くの要因との相互作用の効果に関する研究は、今後 に残されている」ことを指摘している。. 76.

(9)  西 原 彰 宏 は不足している可能性が多くあるということである。  情報伝搬におけるチャネルとしてのパーソナル・コミュニケーションとイン ターネットを比較した場合、同じ発信者であったとしてもインターネットの特性 を考えてみれば、その発信者の信頼性または発信者との類似性だけを考慮するだ けでは不足していると考えられ、従来のクチコミが口から口へと特定された人的 情報源からの情報だったのに対し、インターネットではその人的情報源が不特定 もしくは少しほどの消費者属性が明示されている状態にしか過ぎないと考えられ る。. 4 .仮説導出  本研究におけるような e クチコミでは、その発信者が匿名であることが想定さ れることで、その発信者がクチコミを載せているチャネルとしてのウェブサイト 形態をその発信者の信憑性を規定する要因として考慮する必要があると考えられ る。本研究ではウェブサイト形態として、マーケティング情報の掲載の場として の企業サイトに対し、消費者相互の情報の場として基本的に無料で開設すること ができ比較的扱いやすく消費者自らが実質的に運営を行うことができるブログを とりあげる。. 仮説1:企業サイトよりもブログ上のクチコミ発信者の方が信憑性は高くなる 仮説1−1:企業サイトよりもブログ上のクチコミ発信者の方が信頼性は高くな る 仮説1−2:企業サイトよりもブログ上のクチコミ発信者の方が専門性は高くな る. 仮説2:それぞれのサイト上のクチコミは、売り込もうとする意図が低いほうが クチコミ発信者の信憑性が高くなる 仮説2−1:それぞれのサイト上のクチコミは、売り込もうとする意図が低いほ うがクチコミ発信者の信頼性が高くなる 仮説2−2:それぞれのサイト上のクチコミは、売り込もうとする意図が低いほ うがクチコミ発信者の専門性が高くなる. 77.

(10) クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト 仮説3:企業サイトよりもブログ上のクチコミの方が、クチコミの信頼性が高く なる 仮説4:企業サイトとブログにおいて、それぞれのサイト上のクチコミは売り込 もうとする意図が低いほうがクチコミの信頼性が高くなる 仮説5:企業サイトよりもブログ上のクチコミの方が態度への影響が高まる 仮説6:企業サイトとブログにおいて、それぞれのサイト上のクチコミは売り込 もうとする意図が低いほうがクチコミによる態度への影響が高まる  以上を受けて、仮説を検証するための調査実験について詳述する。. 5 .調査方法  5−1 調査方法  本研究では、調査実験において企業サイトとブログを設定し、さらに商品を売 り込もうとする意図の高低を操作するため、企業サイトの意図の高低に関しては 制約の有無、ブログの意図の高低にはアフィリエイトの有無を設定した。以上の ウェブサイトの差異および意図の高低における計4形態を操作し、以下では「企 業サイト×高意図」 、「企業サイト×低意図」、「ブログ×低意図」、 「ブログ×高意 図」と便宜的に明記する。  企業サイトに関しては、自社製品のみに関するクチコミかつポジティブなクチ コミのみ掲載するという設定の企業サイトと、そうした掲載に関してコントロー ルのない2形態をもちいた。ここでは池尾(2003)によるオープン度 14)を参考に して、企業が掲示板を自社製品のみを扱い自社に不利になると思われるクチコミ を制限しポジティブなクチコミのみを掲載するということから高意図とした。ま た、そのような制限なく、他社製品の掲載可および当該企業にとってネガティブ な情報に関しても自由に書き込めるという設定のもと、低意図とした。  一方、ブログにおける商品を売り込もうとする意図の高低は、アフィリエイト 14)オープン度とは、当該ネット・コミュニティ内の話題が特定メーカーの特定製品に限定されてい る程度で決まるものであり、クローズドが自社製品のみを扱うのに対して、オープンが他社製品 を含むものとする。なお、本研究における掲示板はネット・コミュニティに内包される概念であ るとする。. 78.

(11)  西 原 彰 宏 広告 15)の有無による2形態によって操作した。ブログにアフィリエイト広告があ るものはクチコミ発信者にとって利益に結びつくことから高意図とし、無いもの は低意図とした。  また、実験調査対象の商品カテゴリーとしてミニノート PC を用いた。これは、 上述した Wells & Prensky(1996)でクチコミの発生要因に挙げられているもの から新製品およびハイテク製品 16)という要因を考慮したためである。その際、 メーカー名および商品のブランド名に関しては架空の名前を設定した。  提示するクチコミに関しては、クチコミの特徴に沿うように配慮して作成し た。そのクチコミの内容に関しては、 「企業サイト×高意図」において自社製品か つ自社にとってポジティブなクチコミのみを掲載するという設定のため、クチコ ミを統一する観点から全てのクチコミをポジティブな内容に統一した 17)。  従来の説得コミュニケーション研究では、説得メッセージを見せる前もしくは 見せた後で送り手の情報を提示していたが、本研究では送り手の情報は明示せ ず、送り手のウェブサイト上に書き込まれたクチコミからそのクチコミの信頼性 および送り手の信憑性および専門性を測定した。これはインターネットのメディ ア特性によりクチコミ発信者が匿名もしくは不特定であることを想定したためで ある。  また、態度の測定についてであるが、クチコミの発生条件を想定し比較的新し い製品カテゴリーかつ新製品を設定したため認知が低く事前に態度が形成されて いない場合が想定されるため事後測定計画とした。  最後に、本調査に用いられたのはインターネット上に設置されたウェブ質問票 であり、URL は「 http://kwansei.main.jp/test01」と学生に不安を与えないよう極 力配慮しながら設定し、下一桁を変えることで4種類それぞれに独自のウェブ質 問票の URL を設定した。  本調査に先立って、関西学院大学の学部生89人に対してプリテストを実施し、 15)アフィリエイト広告とは、自分のブログやホームページなどに広告を掲載して広告主から報酬を 得るものである。 16)ミニノート PC は、ASUS(アスース)が2008年1月に発売した「 Eee PC 4 G-X 」によって市場 が活性化した新市場と言われる製品カテゴリーであり、新製品かつハイテク製品という要素を満 たしていると考えたからである。 17)説得コミュニケーション研究にあるメッセージ内容に関しての研究においては、説得者の唱導方 向だけの情報を提示する一面呈示( one-sided communication )と説得者の唱導方向と同時にその 唱導方向とは反対の情報を含む両面呈示( two-sided communication )という情報の提示方法があ る。クチコミにおいては、ポジティブなクチコミまたはネガティブなクチコミが想定される。. 79.

(12) クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト 調査に使用するウェブサイトのプログラムの改良や被験者の回答が蓄積されるプ ログラムの実行のチェックおよびサーバーの負荷のチェック、調査に用いるウェ ブサイトの画像として企業サイト1種類、ブログ2種類の計3種類が被験者にど のように認知されるのかのチェックや質問項目の見直しなどを行った。.  5−2 質問票の構成  ウェブ質問票における質問項目の構成について詳述する。まず、クチコミの 発信者の信憑性の下位概念である発信者の信頼性と専門性を測定するために. Ohanian(1990)を用いた。Ohanian(1990)では信憑性を測定する尺度に関し てレビューしており、そこで使われている尺度のうち魅力に関わるものを除いた 信頼性、専門性を測定するための項目を利用した。  加えて、態度について測定するために、「嫌い/好き」、「悪い/良い」、「低品 質/高品質」 、 「価値のない/価値のある」の計4項目を7点尺度による SD 法を用 いた。これは、飽戸(1987)、佐々木(1978)および新倉(2005)を参考にしなが ら、Bruner, at el(2001)をもとに設定した。態度の三要素モデルにおける認知 的成分、感情的成分、行動的成分のうち、認知的成分と感情的成分を含むと考え、 行動的成分を購買意図の方に振り分け、購買意図については Kim, et al.(1997) を用いたが本分析においては使用していない。  ウェブ質問票に添付したマニピュレーションチェックとして、「画像内のウェ ブサイトはどのようなサイトだと思いますか」と、名義尺度で企業サイト、ブロ グ、コミュニティ・サイトとどのように被験者が認知していたかを質問項目に設 定した。また、最後に被験者属性(性別・年齢・職業)に関する質問を質問票の最 後に設定した。以上をまとめたものを図表7−1で示す。. 80.

(13)  西 原 彰 宏 図表7−1 分析に使用した質問項目表 質      問. 尺度の 種類. 出典. SD 法 7点. Ohanian (1990). SD 法 7点. Ohanian (1990). SD 法 7点. Gurhan-Canli and Mahesw aran (2000). SD 法 7点. 本文記載. あなたはミニノート PC を知っていましたか あなたはミニノート PC を持っていますか あてにならない/あてになる クチコミ 発信者 信頼性. 不誠実な/誠実な 頼りにならない/頼りになる 嘘偽りのある/嘘偽りのない 信頼できない/信頼できる 専門的知識のない/専門的知識のある. クチコミ 発信者 専門性. 経験のない/経験豊かな 精通していない/精通している 不適任な/適任な 熟練していない/熟練した 信じられない/信じられる. クチコミ 信頼性. まったくの嘘/すべて事実 受け入れられない/受け入れられる 信用できない/信用できる 嫌い/好き. 態度. 悪い/良い 低品質/高品質 価値のない/価値のある 画像内のウェブサイトは、どのようなサイトだと思いますか 画像内のクチコミには、売るための意図的な情報が含まれる と思いますか あなたはクチコミ発信者(ギガの世界さん)が、○○のウェ ブサイトを運営していると思いますか あなたは、アフェリエイトを知っていますか あなたは、どのくらいインターネットを利用しますか あなはた、1日に何分くらいインターネットを利用しますか あなたの性別を教えて下さい あなたの年齢を教えて下さい あなたのご職業を教えて下さい.  5−3 調査方法と被験者について  2008年12月15日から12月24日までの10日間において、プリテスト1に参 加していない関西学院大学と甲南大学の学部生に対しウェブ上において調査を 行った。まず、ウェブ質問票にアクセスするための URL および調査についての 説明を記載した4種類の紙を均等になるよう配布し、期間内において各自記載さ れた URL にアクセスしてウェブ質問票に回答をしてもらった。 81.

(14) クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト  この URL が記載された紙は計409名に配布された。回収結果は92標本で回 収率は22%であった。回収された92標本(内訳は17:19:32:24)に対してマ ニピュレーションチェックを行った。その結果、コントロール群として設定した 企業サイトまたはブログをそのように認識していなかった標本を外し、合計44 標本(内訳は9:7:17:11)を有効分析対象とした。  以上をもとに分析を行ったのは関西学院大学および甲南大学の学部生44標本 であり、男性21名、女性23名の平均年齢20.11歳( SD = .945)であった。以 下に被験者情報について記載する。  インターネットの利用状況に関して、「どのくらいインターネットを利用しま すか」との質問に対し44名中「毎日」が19名(43.2%)、 「週に5、6回」が10名 、 「週に3、4回」が7名(15.9%)、「週に1、2回」が7名(15.9%)、 (22.7%) 「1日に何分くらいインターネッ 「月に1、2回」が1名(2.3%)であった。また、 トを利用しますか」との質問に対して10分単位で質問したところ、平均=65.91 ( SD =68.652)という結果であった。  加えて、 「ブログ×高意図」における統制群であるアフィリエイトの認知に関し て、「アフィリエイトを知っていますか」との質問を被験者全員にしたところ、 「知っている」が15名(34.1%)なのに対し「知らない」が29名(64.9%)であっ た。ミニノート PC の認知および所有に関して「ミニノート PC を知っていまし たか」との質問に対し、44名中「知っていた」が23名(52.3%) 、「知らなかっ た」が21名(47.7%)と半数以上がミニノート PC について知っていたことにな る。なお、ミニノート PC の所有に関して「ミニノート PC を持っていますか」と 「持っていない」が38名 の質問に対し44名中「持っている」が6名(13.6%)、 (86.4%)であり、被験者の半数がミニノート PC を認知しているがほとんどの 被験者が所有していないという標本をもって以降の分析が進められた。. 6 .調査結果  6−1 分析結果  分析に先立ち、発信者の信頼性および専門性に関するそれぞれ5つの質問、お よびクチコミ信頼性、態度に関する4つの質問の得点を合成変数化した上でこれ 以降の分析を行った。 82.

(15)  西 原 彰 宏  サイト形態(企業サイト、ブログ)による差を検討するために、クチコミ発信者 信頼性およびクチコミ発信者専門性について平均値の差の検定を行った。その結 果、クチコミ発信者信頼性は t(42)=1.88、p < .067と有意水準10%ではあ ( SD = .798)が企業サイト るが有意差が認められた。ブログにおける平均4.61 における平均4.09( SD = .900)より有意に大きいことから、仮説1−1は概ね 支持された。加えて、クチコミ発信者専門性は、t(42)=1.08、n.s. と有意差 は認められなかったため、仮説1−2は棄却された。  その後、クチコミ発信者信頼性およびクチコミ発信者専門性に関して、サイト 形態(企業サイト×ブログ)および意図の高低(高意図×低意図)の2要因に対し て対応のない2元配置分散分析を行った。この結果としてクチコミ発信者信頼性 に関しては、「サイト形態×意図の高低」において F(1,40)=2.56、p < .10で 交互作用が有意となり、 「サイト形態」において F(1,40)=2.79,p < .05と主 効果において有意となった。その結果を図表6−1および図表6−2に示す。加え て、クチコミ発信者専門性においては、有意は得られなかったため仮説2−2は棄 却された。  その後、発信者信頼性に関して交互作用効果が有意水準10%ではあるが有意 であったため、単純主効果の検定を行った。その結果、意図の低い群においてサ イト形態の単純主効果が F(1,40)=7.988、p < .01と有意であった。低意図 におけるブログの平均(4.753)が企業サイトにおける平均(3.71)より大きい ことから、低意図群においては企業サイトよりブログの方が発信者信頼性は有意 に高いといえる。この結果は、支持された仮説1−1の結果を強化するものとして 考えられるが、サイト形態それぞれにおいて売り込もうとする意図が低いほうが クチコミ発信者の信頼性が高くなるとした仮説2−1は棄却された。 図表6−1 発信者信頼性 変動因. 平方和. 自由度. F値. 有意確率. サイト形態. 2.788. 1. 2.788. p < .05. 意図の高低. .239. 1. .239. n.s. p < .10. サイト形態×意図の高低. 2.559. 1. 2.559. 誤差. 26.786. 40. .670. 全体. 32.177. 43. 83.

(16) クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト 図表6−2 発信者信頼性 意図の高低 高意図 低意図. 4.75. 4.50. 4.25. 4.00. 3.75. 企業サイト ブログ サイト形態.  続いて、サイト形態(企業サイト、ブログ)におけるクチコミの信頼性の差を 検討するために、クチコミ信頼性について平均値の差の検定を行った。その結 果、クチコミの信頼性は t(42)=3.03、p < .01と有意に差がみられた。ブロ (SD = .852)が企業サイトにおける平均3.83 (SD = .669) グにおける平均4.58 より有意に大きいことから、仮説3は支持された。  その後、クチコミ信頼性に関して、サイト形態(企業サイト×ブログ)および 意図の高低(高意図×低意図)の2要因に対して対応のない2元配置分散分析 を行った。この結果として、「サイト形態×意図の高低」において F(1,40)= 3.01、p < .05で交互作用が有意となり、 「サイト形態」おいて F(1,40)= 5.171、p < .05と主効果において有意となった。その結果を図表6−3、6−4に 示す。  その後、交互作用が有意であったため単純主効果の検定を行った。その結果、 意図の低い群においてサイト形態の単純主効果が F(1,40)=13.962、p < .001 と有意であった。また、サイト形態のブログにおいて意図の高低の単純主効果が. F(1,40)=3.924、p < .10と有意であった。ブログにおける低意図の平均値 (4.81)が高意図の平均値(4.23)に対し有意に大きいため、仮説4はブログに おいて支持され、企業サイトにおいては棄却された。. 84.

(17)  西 原 彰 宏 図表6−3 クチコミ信頼性 変動因 サイト形態 意図の高低. 平方和. 自由度. F値. 5.171. 1. 5.171. 有意確率 p < .05. .009. 1. .009. n.s.. 3.005. 1. 3.005. p < .05. 誤差. 23.024. 40. .576. 全体. 32.108. 43. サイト形態×意図の高低. 図表6−4 クチコミ信頼性 意図の高低 高意図 低意図. 5.00 4.80 4.60 4.40 4.20 4.00 3.80 3.60 企業サイト ブログ サイト形態.  続いて、サイト形態(企業サイト、ブログ)における態度への影響の差を検討 するために、態度についてそれぞれ平均値の差の検定を行った。その結果、サイ ト形態におけるは t(42)=2.302、p < .05と有意に差がみられた。ブログに おける平均4.83( SD = .754)が企業サイトにおける平均4.34( SD = .499) より有意に大きいことから、仮説5は支持された。  その後、態度に関してサイト形態(企業サイト×ブログ)および意図の高低 (高意図×低意図)の2要因に対して、対応のない2元配置分散分析を行った。こ の結果として、交互作用に関しては有意な値が得られず、サイト形態にのみ F (1,40)=4.706、p < .05と有意な主効果が確認された。分析結果を図表6−5、 図表6−6で示す。仮説6に関しては、棄却された。 85.

(18) クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト 図表6−5 態度 変動因. 平方和. 自由度. F値. 有意確率. サイト形態. 2.235. 1. 4.706. p < .05. 意図の高低. .021. 1. .045. n.s.. サイト形態×意図の高低. .073. 1. .154. n.s.. 誤差. 18.993. 40. 全体. 21.527. 43. 図表6−6 態度 意図の高低 高意図 低意図. 4.90 4.80 4.70 4.60 4.50 4.40 4.30 企業サイト ブログ サイト形態. 7 .まとめと結論  以上の分析結果から、インターネット上のクチコミは企業サイトよりもブログ 上においてクチコミ発信者の信頼性、クチコミ信頼性、態度への影響が有意に高 いことが明らかになった。これは、送り手の信憑性の下位概念である送り手の信 頼性に関してブログの方が企業サイトより売り込もうとする意図が低いと消費者 に認知されるからであると考えられる。このことは、マーケティング情報として の企業サイトに消費者相互の情報としてのクチコミを載せることが消費者にとっ ては広告としてみなされる可能性が示唆される。  また、クチコミの発信者が実質的に運営するブログと企業によって運営されて いる企業サイトのように、クチコミ発信者とサイト運営者が同一の場合もあれば 86.

(19)  西 原 彰 宏 異なる場合も考えられ、クチコミの発信者とサイト運営者が異なる場合において 情報源の信憑性の影響が二重に生じることを検討したうえで研究を行わなければ ならないだろう。  また、今後の課題として、企業サイトにおける掲示板への消費者の書き込みを 企業側がコントロールをするかどうかの問題があげられる。  その中で、本研究では有意な値がみられなかったが、企業サイトにおいて「高 意図」の方が「低意図」よりクチコミ発信者の信頼性の平均値が高いことから、企 業側が自社ウェブサイトの掲示板への消費者の書き込みをチェックしその掲載を 企業側が決定することは匿名性の高い消費者の信頼性を担保する方向に機能する という示唆が得られた。しかしながらこの問題を考察することは、本研究の調査 結果及び調査設計では不十分であり、今後改めて調査する意義があると考えられ る。  また、今回の調査実験においては、説得コミュニケーション研究の説得者の信 憑性の実証研究におけるスリープ効果と言われる効果を踏まえる必要がある。つ まり、説得者の信憑性の態度への影響は、時が経つにつれて説得者の信憑性の影 響が薄れることが示されている。つまり、高(低)信憑性の説得者からの説得メッ セージの効果が薄れ、説得の効果、つまり態度変容の効果が減少(増加)するので ある。スリーパー効果が説得者だけでなく、本研究で取り上げたウェブサイトの 運営者に帰属される信憑性に関しても適用されるのであれば、企業サイトにおい て掲示板または消費者同士のインタラクションを促すような、クチコミの集積機 能をもつ機能およびコンテンツを設置することは意義があるのではないかと考え られる。  最後に、企業が消費者相互の情報であるクチコミをいかに活用するのかとう視 点で考えるならば、企業サイトにクチコミを集積するのではなく、企業サイトを プラットホームとしての役割を担う方向も考えられる。例えば、あらかじめキー ワードを設定しておけば、そのキーワードが書き込まれたブログを自動的に集積 し表示させてくれる機能を提供する企業が存在する。実際にそういった機能を自 社ウェブサイトに取り入れているメーカーもみうけられる。その企業サイトで は、自社のブランド名や商品、サービス、企業名などが書き込まれたブログをそ の機能を使って集積しそのブログへのリンクを貼ることで、自社ウェブサイトに 訪れた消費者をブログに促すよう施されている。 87.

(20) クチコミ発信者の信憑性を規定する要因としての企業サイト  このことは、企業にとってみれば企業サイト内で消費者のクチコミを集積する のか、企業サイト以外で書き込まれたクチコミを企業サイト内に集積または集積 したクチコミが書かれた外部のサイトへ消費者を向かわせるのか、といった意思 決定が必要になってくる。  これまで、インターネットのメディア特性を踏まえながら企業が消費者のクチ コミを活用できるのかという視点で考察してきた。そこでは、クチコミの発信者 とサイト運営者が異なる場合もあるため、二重に情報源としての信憑性が問われ ることも企業は念頭においておかなければならないだろう。企業は今一度、マー ケティング情報として自社がウェブサイト内で発信する情報の特徴、消費者相互 の情報として消費者が発信するクチコミの情報の特徴を踏まえ、消費者にとって 必要なタイミングで必要な情報を自社ウェブサイト上で取得可能な状態にするこ とが今後望まれる。. 8 .限界  本調査実験においては、架空の企業およびブランドを設定したため、クチコミ 発信者の信憑性および態度への影響に制約が生じた可能性がある。つまり、調査 の際に設定したミニノート PC が新商品かつハイテク製品であるため、購買・使 用にあたりリスクが生じる製品には認知度の低い企業より認知度の高い企業の製 品に対する購買・使用の意向の方が高い可能性が考えられる。  また、本調査実験においてウェブ質問票の URL を記載した用紙を配布した 後、各被験者にアクセスしてもらう必要があったため回収率が低くなってしまっ たことで回答した被験者自体にバイアスが生じている可能性がある。  加えて、本調査実験では提示したクチコミをもとにクチコミ発信者の信頼性お よび専門性を問う形となった。しかしながら本実験のようにインターネット上の メディア特性である匿名性が高い状況において、クチコミをもとに発信者の信憑 性を問うことが妥当であるかについての問題が生じると思われる。クチコミが提 示されているがクチコミ発信者に関する情報が不足している場合、消費者はクチ コミの内容についてのみ吟味し信頼できる情報であるかを判断する可能性もあ る。  また、ブログに関してはブログ自体のデザインや本研究におけるアフィリエイ 88.

(21)  西 原 彰 宏 トの有無、クチコミにおける言葉使い、ユニークさ、親近感などが考えられる。 「信頼」概念に従って言うならば、発信者の匿名性が高い特定のブログに関し て、初めはクチコミおよびメッセージ内容についての信頼性を吟味し、それを繰 り返すことで、 「認知的信頼」が発生しその後は比較的にクチコミおよびメッセー ジ内容を信頼するということも考えられる。  以上、その他にも限界は多数存在すると考えられるが、以上をもって本研究の 限界とする。. (筆者は、関西学院大学大学院博士課程後期課程1年). 89.

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参照

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