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近隣観光の可能性と課題 : 農業・農村観の変化と「外来者(よそもの)」

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Academic year: 2021

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(1)近隣観光の可能性と課題(土居). 3 5. 近隣観光の可能性と課題 よ そ も の. !! 農業・農村観の変化と「外来者」!!. 土. 居. 洋. 平. 1.は じ め に. 1 9 9 0年代半ば頃から、農業や農村を巡る新しい動きが盛んになっている。「グリーン ツーリズム」に代表される都市農村交流や、中高年の「定年帰農」などの農村移住、特産 物や独自の文化等の地域固有の資源を活かした「地域づくり」活動など、農業や農村を外 から体験する動きや、それに対応して外に発信する動きが盛んになっている。また、これ に並行して、各種メディアにおいても「田舎暮らし」や「農業体験」が、好意的に取り上 げられる機会が増大している。 これらの新しい動きに共通しているのは、農業や農村を単に「農産物の生産」と「その ための場所」という意味としてのみ捉えるのではなくて、それを観光に代表されるような 「娯楽のための」場所と捉えていたり、あるいは、「新たなライフスタイルを実現するた めの」 「自己実現をするための」営みであり場所であるといった、多様な、そして多くの 場合、好意的な意味で捉えているところであろう。 こうした好意的な意味での農業と農村の捉え方、いわば農業・農村観が一般的に幅広く 浸透したのは、それほど古いことではない。以前は、農業や農村は、どちらかというと「古 くて」 「遅れた」産業であり場所であるという、あまり好意的ではない印象で捉えられる ことが多かった。農村が憧憬の対象として語られることは、ないわけではなかったが、そ.

(2) 3 6. 山 形 短 期 大 学 紀 要. 第4 1集. れが一般的に広く浸透しているとはいえなかった。 それが、現在では、農業や農村に対する好意的な理解が幅広く浸透しつつある。そして、 そうした見方に基づいた動きが多数生じている1。そこで本稿においては、こうした農業・ 農村観の変化とその背景を述べたうえで、変化に基づいた動きのひとつとして「地域づく り」活動を取り上げ、その中における「外来者」の位置づけについて議論しながら、農業・ 農村の商品化という事象について考察する。. 2.農業・農村の捉え方の変化. 農業・農村を賞賛する考え方自体は古くから存在している。例えば「竹林の七賢」や「桃 源郷」等の思想は、都市的な生活に対して、「自然と親しみ」 「自給的な生活」を営む農村 での生活を理想とする考え方といえよう。しかしながら、近代においては、一般的には人 の移動は農村から都市への移動が主流であり、農村を理想とする言説は、都市的生活を志 向とする一般的な価値観に対するアンチテーゼ以上の広がりをもつことはなかった。近代 においては、農業と農村は、都市部に食料を供給するための産業であり場所であるという 意味において積極的な意味づけをされたのであり、それ以外の側面で、好意的に捉えられ るということは少なかったのである。それは政策上でも同じで、戦後農政の根幹である (旧)農業基本法においても、農業(や農村)に「農産物を生産する」以上の意味を付与 されることはなかった。 こうした農業・農村観のもと、農村振興は農業生産力の向上によって達成されるものと 想定された。ゆえに、そこで実施された政策も、農地の整備、機械化、選択的拡大等の農 業生産の効率化と生産力の向上など、農業生産力の向上が主眼に置かれたものであり、そ のことが農村の振興につながると想定されていたのである。 しかし、実際には、生産力の向上が農村の振興へと結びついたのはごく限られた期間で あった。高度経済成長期になると、農業者の所得は、他の産業従事者の所得水準の向上に 比べると、極めて緩やかな上昇しか達成することができなかった。こうしたなかで、農業 は長らく離農者の増加と新規就農者の減少に悩むことになる。現在では、農村地域におい ても農業従事者が多数を占めてはいないし、農業従事者・農村居住者の高齢化は深刻化し.

(3) 近隣観光の可能性と課題(土居). 3 7. ている。食料自給率もこの1 0年間、4 0%前後を推移し、仮に農業に(そして農村に)農産 物の生産のみの意義しか見出せないとすると、その存続の必要性に大きな疑問が付されか ねない状況である。 農業と農村のこうした状況を背景に、9 0年代から、農業の持つ農業生産以外の機能に注 目が集まるようになった。転換点としては、1 9 9 3年末に妥結した GATT ウルグアイ・ラ ウンドを挙げることができる。この交渉の過程において、「日本は農業のもつ多面的機能 を強調したが、農業が生産という単一の機能だけに限定されないことを社会的にも再認識 2 させる重要な転換点になった」 のである。. この時期から、農村振興は生産振興だけではなく、様々な側面から行おうという方向性 が強まる。農村の景観に対して注目した施策や、農業と農村のもつ農産物生産を超えた機 能に注目した施策が多数行われるようになるのである。例えば、1 9 9 2年には、その後の新 農基法(食料・農業・農村基本法)につながる「食料・農業・農村政策の方向」のなかで、 グリーンツーリズムが政策として推進されることが打ち出されている。また、農業政策以 外でも、1 9 8 7年からの四全総や1 9 9 8年からの五全総においては、地域間交流の振興が打ち 出されるなど、農村を都市住民が心身のリフレッシュのために訪れる空間という農業生産 を超えた意味を持ったものとして規定されるようになる。 一方で、農村での居住経験や農作業の経験をもたない人々も増えつつある。高度経済成 長期には一時は年6 0万人以上であった三大都市圏への人口の純流入数は、1 9 7 0年代半ばに は急激に減り、一時は純流入がマイナスになることもあった3(図1) 。その一方で、三大 都市圏の人口は増大しつづけており(図2) 、都市部出身の都市在住者が増大しているこ とが推測できる。こうした人々にとって、農村での生活や農作業は、観光の対象となる非 日常的な体験として捉えられる。様々なメディアにおいて農村や農業が「自然豊かな」 「癒 しのある」空間として提示されたことも手伝い、彼らの中で農業や農村に対して好意的な 考えを持つ人々が登場してくるのである。 彼らは、農村に対して多様な好意的な意味づけをしている。例えば、(社) 農村生活総合 研究センターが2 0 0 0年に行った「田舎暮らし」に関心のある若年者を対象にしたシンポジ ウムの参加者を対象にした調査4においては、「農村に移住したい理由」として「自然と触 れ合う暮らし」 「時間にゆとりのある暮らし」 「好きなことをして暮らす」等の理由が上位.

(4) 3 8. 山 形 短 期 大 学 紀 要. 第4 1集. を占めている。また、農村移住において想定されている職業も農業が希望として最も多い ものの、「伝統的な産業」 「インストラクター等」も多く、農村に農業生産以外の意味づけ をしていることを伺いとることができる。. 単位:千人 700 600 500 400 300 200 100 0 −100 −200 1960. 1965. 1970. 1975. 1980. 1985. 1990. 1995. 2000. 平成1 4年度『通商白書』をもとに作成. 図1 三大都市圏への純流入数の推移. 単位:千人 62,000 58,000 54,000 50,000 46,000 42,000 38,000 34,000. 1960. 1965. 1970. 1975. 1980. 1985. 1990. 1995. 2000. 国勢調査をもとに、筆者が作成。 三大都市圏とは、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県) 、大阪圏(京都府、大 阪府、兵庫県) 、名古屋圏(岐阜県、愛知県および三重県)のことを指す. 図2 三大都市圏の人口の推移.

(5) 近隣観光の可能性と課題(土居). 3 9. ただし、実際に、こうした都市在住者が農村や農業を体験・移住するためには、物理的 な環境が整っていることも必要である。都市と農村を結ぶ交通手段や、来訪者が快適に過 ごせる環境が農村に整っていることが必要になってくるのである。具体的には、道路や鉄 道網といった交通網の整備と、上下水道や冷暖房などの生活環境の改善が必要であるが、 こうした各種の条件は、1 9 7 0年代以降に整備が進み、現在の農村では都市部とほとんど差 のない生活が可能になっているといえよう。 以上のように、政策的な転換、人口構成の変化、様々な物理的条件の整備が進展するこ とで、新しい農業・農村観に基づいた様々な動きが生じているのである。. 3.農村「地域づくり」活動と「外来者」. 新しい農業・農村観に基づいた動きとしては、冒頭に挙げたとおり、農業や農村を心身 のリフレッシュの場として捉えた農村への観光であるグリーンツーリズムや、新しいライ フスタイルの実現の場として捉えた農村移住等の動きがある。また、地域固有の資源を活 かして近隣観光の促進を行おうとする地域づくり活動も、この新しい農業・農村観に基づ いた活動であると捉えられる。そこで、本稿においては、こうした活動について、「外来 者」と「地付者」という視点から考えたい。 これに関連して、筆者は、農山村の商品化という観点から、グリーンツーリズムや近隣 観光促進のための地域づくりにおける「外来者」と「地付者」の特徴について把握するた めの調査を2 0 0 2年から2 0 0 3年に行った。ここでの「農山村の商品化」とは、農村や山村が 生産以外の意味づけを持つようになるとともに、それを農村観光のように、外部から「消 費」する動きが生じている点を、農山村空間が商品化していると捉えることである。つま り、それは、本稿における新しい農業・農村観と換言できるものである。また、調査にお いては、全国の様々な地域資源を活かした「地域づくり」活動の担い手に対して、ヒアリ ングと記述式のアンケートを行い、そこから「外来者」と「地付者」の特性を、商品化と の関係で読み解いた。 ここでは、その調査結果を踏まえ、農村地域における「新しい農業・農村観に基づく」 動きとしての近隣観光促進のための地域づくりについて、「外来者」と「地付者」の特性.

(6) 4 0. 山 形 短 期 大 学 紀 要. 第4 1集. を踏まえた上で考察する5。. 3. 1.近隣観光/地域づくりにおける「外来者」の特性 近隣観光促進のための地域づくりの担い手として活動している「外来者」の特性として は、次の4点があると考える。第一には「視点の相対化」ということである。そして第二 には「地域の慣例・習慣からの自由」 、第三には「代替可能性」 、第四には「リスク行動の 可能性」ということである。 第一の「視点の相対化」に関しては、次の指摘が興味深い。. 今すんでいる地域の地域づくりに関しては、参加するというより客観的に見ているよ うな気がしており、その地域づくりが自分の出身地の地域でいかせないかと思ってし まいます。外から出身地を見たとき、改めてその地域の良さ、悪さがわかるような気 がします(4 0代の外来者) 。. 自分はこの土地に来て1 0年程ですが、やはり地元の考えが偏りがちのように感じます。 冷静な判断は外来者の方ができると思います。どうしてもひいきめに見てしまって問 題点を見逃してしまったり、あたりまえになりすぎて、いい部分に気づかなかったり、 (中略)悲観的な考えが多いように感じます(3 0代の外来者) 。. このように、外来者は当該地域の様々な資源に対して、別の地域の資源との比較ができ るので、地域資源を相対的に捉えることが可能であるということである。 実際には、外来者が当該地域の全ての資源について正確に価値を捉えているとは限らな いし、また、外来者であっても当該地域の資源に過度あるいは過小に思い入れを抱くケー スも多々あるだろう6。しかし、地域づくりの担い手は「外来者は相対的な視点をもつ」 という意識を強くもっているようである。それゆえ、それがどの程度正確な判断かは別に して、近隣観光を念頭に置いた活動においては、観光の対象ともなる外の視点というもの が重要であることから、外来者の視点による地域資源の「発見」が、地付者の判断より重 要視されることとなるのであろう。.

(7) 近隣観光の可能性と課題(土居). 4 1. 第二の「地域の慣例・習慣からの自由」というのは、簡単にいえば「地域のしがらみ」か らの自由ということである。これに関しては、特に地域的な慣例からなかなか自分の意見 を言いにくい状況にある、より若手の地付者からそのことが述べられていた点が興味深い。. 外からきた方々と私(地付者)が同じ事を言っても、外来者の方々の意見を素直に受 け入れます。どうしても地付者にはいろいろなしがらみがあります(2 0代の地付者) 。. 田舎であればあるほど、個人同士の仲間意識やしがらみはとても強いものです。自分 のネットワーク以外の人と交流するのは難しいともいえますし、ネットワーク以外の 人々がどんなに素晴らしい活動をしていたり、能力を持っていても、知らないことが 多いのでは(2 0代の地付者) 。. このように、未だ意見を言う「順番」に至っていない若い地付者から、外来者がそうし た「順番」をこえて自由に意見をいうことができることが指摘されているのである。後述 するように、これに対してある程度の年齢を経た地付者からは、地付者のもつ地域ネット ワークの優位性について指摘をされている。これについては、ある程度地域で自分の意思 で活動を行い、意見を表明もしやすい「順番」に至ったことも関係していると類推できる。 また、次のような興味深い指摘もあった。. 都会から来た地域づくりにおけるエライ人の話はすぐ聞くのに、地元の外来者の意見 はなかなか聞かれない(2 0代の外来者) 。. 周りの目を気にしなくてもすむ外来者の方は、肩書きや信用で動きやすい方も多い (4 0代の地付者) 。. このように、一般の外来者の側には、意見は言えるがなかなかそれが取り入れられない という意識もあるようである。これに関連して、第三の「代替可能性」について述べたい。 これは、つまりは地付者にとっては、当該地域は他に地域と代替不可能な「かけがえのな.

(8) 4 2. 山 形 短 期 大 学 紀 要. 第4 1集. い」地域であるのに対して、外来者にとっては代替可能性があるのではないかという意識 である。このことが、「外来者の発言は責任感がなく、発言を信頼することができない」 ということにつながり、その意見が取り入れられなくなることへとつながるのである。. 私の場合、(中略) 「出身地による課題」のほうが、実は大きな問題です。つまり、外 来者は地域活動に入りにくいという事です。(中略)外来者が意見を言っても、はっ きり言って、「外来者はよく分かってないだろう」 「無責任なことを言っている」と相 手にされない(2 0代の外来者) 。. ただし、代替可能性があるがゆえにリスクを伴う行動ができるという点もある。これが、 第四に指摘したい「リスク行動の可能性」という点である。 ここで指摘したい「リスク行動の可能性」とは、外来者が地域の慣例・習慣をそもそも 知らず、また、当地別の場所を選択するという事も可能という代替可能性を持つことに よって、ある程度リスクを伴う発言や行動ができるということもある。地付者の場合には、 こうした地域の慣例・習慣を破り、代替不可能な地域内において当該地域社会からの反発 を買うようなリスクを伴う行為は非常に難しい。その結果、なかなか新しい意見を表明し たり、意見を言う順番を乱すことができず、新しい試みなどを行うことができないわけで ある。. 町が狭いということもあり、とても住民の皆さんが密接していらっしゃるということ を感じます。そんな中で外来者の方が活動しやすいように思います。どこそこのだれ だれという様なことを言われにくい(3 0代の地付者) 。. 以上のように、外来者の特性としては、地域資源を相対的に判断できるとともに、地域 のしがらみに捉われることなく自由にリスクを伴う行為を行うことができるということが あると考えられているのである。 地付者にはしたくてもできないリスクを伴う意見表明を、外来者がリスクを負って行う ことが歓迎される事もあるし、また、それが地付者にとって魅力のないものであれば歓迎.

(9) 近隣観光の可能性と課題(土居). 4 3. されないこともある。歓迎される場合には、外来者による地域づくりの方がうまくいくと 感じるし、そうでない場合には外来者による地域づくりはしにくいと感じるということな のだろう。 また、新しい農業・農村観との関係でいえば、ここでの外来者の行う評価とは、農産物 の生産それ自体に関わるものであることは非常に少ない。そうした技術については、元来 の生産者のほうが蓄積も多く、外来者の視点による影響は少ないであろう。この場合は、 当該地域の慣習や農産物、工芸品、祭りなどのハードとソフトの両方の資源が、地域の外 側から見た場合に、いわば「消費するに足る」かどうかという視点、つまり観光等の対象 にし得るかどうかという視点なのである。そして、地付者であると「見逃してしまう」地 域内の観光資源、すなわち「好意的に評価でき、消費に値する」事象について、外来者は 気付きやすいということなのである。. 3. 2.近隣観光/地域づくりにおける「地付者」の特性 これに対して、地付者には外来者と正反対の特性があると考えられているようである。 すなわち、外来者の特性を裏返して言えば、「視点の固定」 、「地域の慣習・習慣に沿った 行動」 、「代替不可能性」 、「リスク行動の不可能性」ということになる。. 第一の「視点の固定」に関連しては、次の指摘に注目したい。. 地域に関してはありますね。「はえぬき」という言葉がありますが、長く地元に住ん でいる方は、なんでも自分の方がこの地域を知っていると思っている方が多いので、 「みんなが同じ答え」をもっていると思っていますね(4 0代) 。. 地元にいると地元の特徴・特産品・名物などなどぬるま湯状態でつかみにくい(4 0代) 。. すなわち、地域資源の存在については熟知しているが、それがどのような価値をもつか については、別の地域資源についてはあまり知らないために、評価をすることができない というわけである。このことは、外来者特性のところでも引用した3 0代の外来者が、地付.

(10) 4 4. 山 形 短 期 大 学 紀 要. 第4 1集. 者が地域資源をひいきめに見る点と、地域資源の存在が常態化しているために、その希少 性に気付かないという点を指摘していたことにも示されているだろう。つまり、地付者に は地域資源を判断する外部基準がないという認識なのである。. 第二の「地域の慣習・習慣に沿った行動」とは、. 私は外来者なので「しがらみ」が少ない。地元の方は失敗をとても恐れるのが見える (3 0代の外来者) 。. といった指摘や、先述の「外来者の特性」において引用した地付者の指摘にもあったよう に、地付者には「地域のしがらみ」があるということである。多くの地域においては、個 人は地域内の自己の置かれた位置に従って発言をすること(しないこと)を期待されてい るのであり、そうした「順番」に従わない意見表明を行うことは、地域内での当該人物の 立場を危うくすると考えられているのである。 ただし、「地域のしがらみ」を利用することで地域づくりをしやすいという側面もある。. 現在は、地元の中で活動しているのでその土地のことを外の地域の方よりもよく知っ ているという点では活動しやすい。地域づくりとしてではないけれど、他地域のサー クル等に参加するとやはり土地感がないので不安があるし、どのような事に力を入れ ていけばよいのか分からなくなるときはある(2 0代の地付者) 。. 地付者として感じることは「ネットワークがつくりやすい」ということ。活動を行お う!というときに、ある程度の人数を集める事はできるとおもいます(2 0代の地付者) 。. 地付者は、どこそこの誰という事がわかっていてなじみが早いと思います。会合のと きなど話が弾んで楽しいです(4 0代の地付者) 。. 私は地元の人間なので、いろいろな知り合いがいてとても得をしています(4 0代の地.

(11) 近隣観光の可能性と課題(土居). 4 5. 付者) 。. 地域のルールに従ってそのネットワークの範囲内で活動するにあたっては、地付者のも つ「地域のしがらみ」は有効に利用されているようである。. 第三の「代替不可能性」に関しては、次の点に注目したい。. 地付者として、ひとりで外にいるときに見る赤城山にアイデンティティと元気をも らっている気がします。赤城山を愛しています(4 0代の地付者) 。. 私は松本出身ですが、飲むと外からいらした方の方が松本をもっと良くしたいといつ も議論になります。ありがたいとおもう(4 0代の地付者) 。. このように、景観等の地域資源が地付者のアイデンティティ形成の一角となっており、 それを代替不可能なものと感じさせているということがあるということである。そうした こだわりが、地域づくりへと昇華していくケースも数多くある。しかし、外来者からは次 のような指摘もある。. その土地の人がもつ「地域への愛・情熱・こだわり」は大切。でも、その郷土愛(地 域愛)が外来者を疎外していることもあるのです。外来者の多くはその土地になじみ たい、快適にくらしたい、と、思っているはず。外来者からみた「こんなまちならい いのに」 「こんな雰囲気ならいいな…」 「こんな○○なら便利…」という意見を地域づ くりに関わる人はもっときいてほしいと思うのです。 外来者には地の者のような「郷土愛、地域へのこだわり」はないかもしれません。 でも意外とそこに、街づくり/地域が抱える問題のポイントがあるように思うことも あるのです。 外来者も地域の一員。外来者の冷静な視点や地の者とはちがった「地域愛」も大切 にしたいと考えています(2 0代の外来者) 。.

(12) 4 6. 山 形 短 期 大 学 紀 要. 第4 1集. すなわち、地付者のもつ地域への代替不可能な思い入れは、時に冷静な視点を失わせ、 地域の抱える問題を覆い隠す事になるというわけである。また、地域内部ではこの思い入 れが共有されていると考えられている場合には、その思い入れに問題を投げかけるような 「リスク行動」は不可能となる。これが第四の「リスク行動の不可能性」という認識であ る。. 3. 3.外来者・地付き認識と近隣観光/地域づくり 以上のような、外来者・地付者の特性と考えられていることを簡単にまとめると、次の ようになるだろう。すなわち、地付者は、地域資源の評価にあたっては、当該地域資源を 所与のもの・代替不可能なものとして絶対的な価値を付与する。そして、それが地域社会 において共有されている場合には、それに疑問を提示することは、地域内の社会関係を破 壊するという大変なリスクを伴うこととなり、そのような行動は厳に慎まれることになる。 これに対して外来者は、地域資源を相対的に評価する事ができる。また、外来者にとって は、当該地域はある程度代替可能なものであって、リスクを伴う場合でも、地域資源に対 する評価も表明することができると認識されているというわけである。 新しい農業・農村観との関係からいえば、こうした外来者の視点による地域資源が評価 される背景には、前述のように、地域づくりが外来者の評価、外の需要に対応したものと なる必要が生じてきたことがある点を指摘しておく必要がある。すなわち、新しい農業・ 農村観に基づく最近の動き、例えば近隣観光、体験交流型観光、グリーンツーリズムや農 村移住においては、それに対応することのできる農村が求められており、その実現のため には外からの視点が必要になってきたのである。 既に示したように、外来者は、地付者以上に人的資源等ソフトな資源を含めた地域資源 を外部の資源と比較し、相対化してその価値を判断することができる潜在的な力がある。 特に都市部からの移住者の場合には、そうした資源がどれだけ都市の要望に即したものに なりうるのかについて、自らの経験を元に判断をすることが可能である。ゆえに、都市農 村交流事業や農村体験事業を行うに際して、外部、それも都市部に住む人々の需要に即し た形で農村地域の商品化を進めることに貢献することができるのだ。.

(13) 近隣観光の可能性と課題(土居). 4 7. 4.お わ り に. 以上、本稿においては、農産物の生産を超えた意味を持ち出した新しい農業・農村観へ の変遷の過程を述べた上で、それに基づいた動きの一つとして近隣観光を目指した地域づ くり活動を事例にとり、そこにおける「外来者」の特性についての考察を行った。 現在、「地域づくり」や「地域活性化」は、全国的に幅広く行われており、とりわけ農 村地域においては、それは何らかの地域固有の資源に基づき、地域性を内外に発信する形 (つまり近隣観光や体験型観光、グリーンツーリズム)で行われることが多い。一方で、 新しい農業・農村観が浸透し、大規模な観光資源(全国的に有名な史跡やリゾート、温泉 等)を用いたものではなく、各地の「あまり知られていない」事象を消費しようとする「市 場」が形成されつつある。この中で、地域における「外来者」は、「地付者」に比べると、 この「市場」における地域資源の商品性を、より相対的に判断できる潜在的な力を有して いると考えられる。 農業の生産振興のみでは農村振興には結びつきにくい現状においては、新しい農業・農 村観に基づいた地域の商品性を高め、観光を促進する動きは、今後も増大すると考えられ る。これは、地域資源を商品化して供給し、それを消費する市場的な側面を持っている動 きであるから、当然、成功する事例もあれば、そうでない事例も出てくる。近隣観光を目 指した地域づくりが、政策的にも奨励されながら、地域間の競争へと展開しているのであ る。. 1. 例えば、田舎暮らし関連の書籍が数多く出版されるようになったのは、ここ2 0年程の間 である。TVドラマ「夏子の酒」 (1 9 9 4年)や映画「となりのトトロ」 (1 9 8 8年) 、ある いはTVバラエティ「鉄腕DASH」の中のDASH村企画(2 0 0 0年∼)などのように、 農業・農村が様々なメディアで好意的に取り上げられるようになったのも、概ね1 9 9 0年 代以降である。立川雅司、2 0 0 6、「ポスト生産主義への移行と農村に対する「まなざし」 の変容」日本村落研究学会編『【年報】村落社会研究四―消費される農村―ポスト生産.

(14) 4 8. 山 形 短 期 大 学 紀 要. 第4 1集. 主義下の「新たな農村問題」 』農山漁村文化協会、1 8―2 4頁、参照。 2. 立川、前掲書、2 3―2 4頁、参照。. 3. 三大都市圏とは、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県)、大阪圏(京都府、 大阪府、兵庫県) 、名古屋圏(岐阜県、愛知県および三重県)のことを指す。この地域 への人口の純流入数(流入数―流出数)は、1 9 7 0年代に急速に減り、1 9 7 6年、1 9 7 7年は マイナスとなった。その後一旦増加に転じるが、1 9 9 0年代に入るとまた減少に転じ、こ こ1 0年程は、±5万人前後で推移している(平成1 4年度『通商白書』参照) 。. 4. 平成1 2年度「男女共同参画社会を目指す中山間地域魅力創造事業」の一貫として平成1 2 年1 2月9日に行われたシンポジウム「私が見つけた魅力的な田舎暮らし∼新しいライフ スタイル展開の舞台としての農村∼」におけるアンケート調査のこと。(社)農村生活 総合研究センター、2 0 0 1、『Iターン女性とともに創る魅力的な田舎暮らし』 、9―3 8頁、 参照。. 5. 平成1 4年度矢口光子記念奨励会助成研究「農山村の商品化の過程と女性の役割:交流と 移住の場としての新しい農山村空間」 (研究代表者 土居洋平)のこと。. 6. これについては、必ずしもこれまでに論証されてきたわけではない。しかし、一般的な 農村移住に際しては、「自然」 「農」 「環境」といった価値をもともと高く評価していた 人々が移住を試みるケースが多く、当該地域にあるそうしたものを非常に高く評価する ことにつながる可能性があることを指摘する事ができる。これについては、今後の研究 課題としたい。.

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