地域連携教育における段階的リフレクションの検討
COC 事業:ふくし・マイスター養成の取り組みから
佐
藤
大
介
日本福祉大学 全学教育センター
Investigation of Stepwise Reflection in Community-Oriented Education
− Center of Community: From Fukushi-Meister Training −
Daisuke SATO
Inter-departmental Education Center, Nihon Fukushi University
Keywords:地域連携教育, リフレクション, フィールドワーク, COC 事業, ふくし・マイスター
Abstract
Regional field works are invaluable opportunities for the students to transform their passive learning attitude toward the active one which is inevitably required for their future.
"Reflection" is very important to unravel the experiences, in the field work and organize them together. In this research, "investigation of stepwise reflection in community-oriented education" is investigated based on the training of "Fukushi-Meister" and "Fukushi Community Program" in Nihon Fukushi University.
Results showed that there were three different levels in designing the reflection, namely (1) reflection method, (2) reflection content, and (3) reflection procedure.
It was also indicated that multi-level stepwise reflections, that is (1) individual program reflection, (2) society creation reflection, and (3) creative reflection are desirable to make the reflection more effective as we proposed in this article.
As for the content of the reflection, different "tools" were required in reflecting one's experience depending on each reflection step, (1) field work note for daily reflection, (2) reflection via Learning Management system for annual reflection, and (3) integrated reflection and feedback from the faculty in order to wrap-up the total knowledge that the students accumulated during from annual experiences in the field work.
1. 問題の所在
研究の背景 我が国の急速な少子高齢化の進行, 地域コミュニティ の衰退, 地方の人口減少や流出が深刻な問題となる中, 大学が地域で果たす役割の重要性が高まっている. 2006 (平成 18) 年の教育基本法第 7 条改正, 2007 (平成 19) 年の学校教育法第 83 条改正により, 大学の新たな役割 として教育, 研究に加えて社会貢献が大学の使命である ことが明確に定められた. また, 地方創生が全国的に推 進される中で, 地域づくりの主体として大学に期待が寄 せられている. これらの現状を受け, 文部科学省は 2013 (平成 25) 年より 「地 (知) の拠点整備事業−Center of Commu-nity−」 (以下, COC 事業) を開始した. COC 事業は, 地域社会と連携し, 全学的に地域を志向した教育・研究・ 社会貢献を進める 「地域のための大学」 を目指すもので ある. 大学内で全学的な教育カリキュラム・教育組織の 改革を行いながら, 地域の課題と大学の資源の効果的な マッチングによる地域の課題解決, さらには地域社会と 大学が共同して課題を共有し, それを踏まえた地域振興 策の立案・実施まで視野に入れた取り組みを進めるもの である. 2013 (平成 25) 年度は全国の大学から 319 校 事業申請があり 52 校を採択, 2014 (平成 26) 年度は 237 校申請の内, 25 校を事業採択した. COC 事業は総 計 77 校の採択であり, いずれも事業期間は 5 年間であ る. 日本福祉大学 (以下, 本学) は 2014 (平成 26) 年度 の COC 事業に申請し, 「持続可能な ふくし社会 を 担う ふくし・マイスター の養成」 のテーマ採択を受 けた. 本学の COC 事業の目的のひとつは 「ふくし1」 の 視点を持って地域課題の解決に取り組むことができる人 財2 「ふくし・マイスター」 を養成することである. ふ くし・マイスターは, 地域志向科目に指定された学部科 目と全学共通科目による体系的な地域連携教育で養成さ れる. 2015 (平成 27) 年度入学生から全学部の 1 年次 ゼミ科目において, ふくしコミュニティプログラムを実 施し, これにより地域への関心を高め, その後, 所属学 部と全学教育センターの地域志向科目を受講し, さらに 実践的に, 地域の理解, 地域への働きかけ, 多職種・多 分野連携の学びを地域連携教育にて, 学びを深めること ができる仕組みである. 地域連携教育とフィールドワーク これら COC 事業のスタートに合わせ, 本学の全学教 育センターでは地域連携教育部門において, ふくし・マ イスター養成に係る 「地域連携教育」 を推進している. 例えば地域連携教育に係る活動先や地域から招くゲスト 講師の人選など, 担当教員の求めに応じてコーディネー ト業務を担う. ふくしコミュニティプログラムについて は, 演習科目における地域連携教育の進め方, 活動補助 申請など各学部の求めに応じて対応している. さらに, 各学部においての開講計画の策定にあたっては, 学習目 標の設定, 授業に盛り込んでほしい教育内容, 成績評価 の方法の項目に, ふくしコミュニティプログラムの内容 を組み込むこととしている. さらに, 1 年次の各学部で 取り組まれる, ふくしコミュニティプログラムは, 全学 生が所属キャンパスの自治体課題に取り組むことを基本 としている. なお, 地域連携教育に関する明確な定義づけはされて はいないが, 文部科学省では, 大学全体が地域を志向し た教育・研究・社会貢献が充足している条件を, 「①地 域の課題 (ニーズ) と大学の資源 (シーズ) のマッチン グにより, 地域と大学が必要と考える取組を教育・研究・ 社会貢献にわたって全学的に実施していること, ②その ための学内の体制整備及び対外的な宣言が行われている こと, ③地域の自治体と大学が組織的・実施的に協力し あう関係が構築されていること」 であるとしている. こ れを, 本学における地域連携教育に照らし合わせると, 対象地域のフィールド学習や地域人財の協力を得て, 各 地域の課題にアプローチし, 学生の地域への関心を喚起 することになる. この学び方を, 本学では通常の教科の 学習と区別する意味で 「フィールドワーク」 と位置づけ ている. フィールドワークを主体とした, 地域連携教育 を推進する学習プログラムにおいては, 学生にとって, キャンパス内で理論を学び, 実際に地域社会の中でその 理論を実践・研究し, さらに大学に戻って成果を検証・ 確認する, 実践的な学びのサイクルが深い理解をもたら すことになる. 地域連携教育におけるリフレクション 地域にて地域連携教育やフィールドワークを実施する ことは, 学生にとって大きな体験とはなるが, この体験 を一過性の刺激にとどめるのではなく, 体験を紐解き, 整理し, 次の行動につなげていく作業が必要となる. その作業が 「リフレクション (学びの振り返り)」 である. リフレクションは本来, 内省や熟考という意味があるが, ふくしコミュニティプログラムにおけるリフレクション では, 自らが実施したフィールドワーク等を通して, 自 分自身のこと, 地域のことに関心を寄せ, さらには社会 への問題意識などを育むために実施する意味があるとし ている. フィールドワークは, 単に地域に赴き, 何かし らの学びや活動を実施するだけではない. 学びや活動を 通して丁寧にリフレクションを積み重ねることで自己形 成力を高めていくことができるとされている. このよう な体験の教育的意義を重視し, 学習における 「リフレク ション」 の必要性を指摘したのが, デューイ (Dewey, J.) であり, さらに学習論へ展開させたのがゴルブ (Kolb, J.) である. しかし, 本学で推進する地域連携 教育に関するリフレクションは, デューイらが論ずる自 己の内省や省察に留まらず, 個人の認識変容が市民社会 や共生文化の担い手として主体形成が促される 「創造的 リフレクション3」 (原田 2012:41) を目指している. フィー ルドワークでの学びと, その学びをしっかりと記憶に留 め, 身体に定着させるリフレクションを積み重ねること で, 地域連携教育における, 本学のふくし・マイスター の養成が成り立つであろう. しかし, 一方で, 地域連携教育などの実践活動におけ る適切なリフレクションの実施は困難であるともされる. その理由は, 実際の活動の分析に非常に時間がかかり, かつ複雑 (大島 2011:258) であるという理由や, リフ レ ク シ ョ ン は 未 だ , 日 記 や 活 動 の 説 明 , 感 傷 的 (touchy-feely) な内省といったイメージを教職員や学 生にもたれ, 不必要とみなされることもある (和栗 2015:40) など, 地域連携教育におけるリフレクショ ンの議論は, 変化の過渡期で未だ混迷している状態であ る. 研究の目的 そこで本研究では, 本学における, ふくし・マイスター の養成並びにふくしコミュニティプログラムの取り組み から, 「地域連携教育における段階的リフレクションの 検討」 を試みるものである. なお, 本稿における, 地域 連携教育における段階的リフレクションの設計ポイント を, リフレクションの方法, リフレクションの内容, リフレクションの手順の 3 つとした. この設計ポイントは, 和栗 (2008) が述べる, 地域連 携教育などの体験学習プログラムにおけるリフレクショ ンは, 学習目的を見据えて 「デザイン (構造化)」 され, そのデザインに基づいて実施される必要があるとの見識 から, 本学のふくし・マイスター養成においても, リフ レクションを 「方法・内容・手順」 に基づきリフレクショ ンをデザインする必要があると考えた. このリフレクションの検討作業をすすめることにより, 先行研究の指摘課題となっている, 地域連携教育におけ る 「適切なリフレクションの実施」 の可能性を検討でき るであろう. さらに, COC 事業における地域連携教育 が学生にとって深化された学びになるのか, 地域社会と 連携し全学的に地域連携教育が実践できたのかなど, 学 生の 「実際の活動分析」 の実現性が出てくることを期待 するものである.
2. 方法
まずは, 本学の地域連携教育で養成する 「ふくし・マ イスター」 についての概要をまとめていく. この整理作 業により, 地域連携教育におけるリフレクションの設計 内容を, より具体的に項目化できる材料を検討するため である. ふくし・マイスター養成の枠組み 本学は, 制度中心の従来の 「社会福祉」 の枠を広げて, 多領域が関連・連携しあう広い意味の福祉を 「ふくし」 ととらえて, 様々な分野で 「ふくし」 の視点で活躍でき る人財 「ふくし・マイスター」 を全学部共通の取り組み として養成している. この 「ふくし社会を担う人財=ふ くし・マイスター」 は, 大学の外の地域における他領域 の人財や現場との関わりや活動を通した学び, 地域連携 教育により養成される. 本学の 3 キャンパスが所在する 愛知県美浜町, 半田市, 東海市, そして知多市を中心に, 知多半島の多様な地域資源と学生の学びを結び付ける地 域連携教育を 1 年次から 4 年次まで積み重ね, ふくし社 会を担う力を高めた学生には, 「ふくし・マイスター」 の修了証が授与されることになる. さらに, 地域連携教育では, ふくしコミュニティプロ グラムとして行われる学生たちのフィールドワークを支 援するために, 本学の全学教育センターによる全学部共 通の地域志向科目として, オンデマンド科目が設定され ている. その後は 1, 2 年次に地域に係る基礎的知識, 3 年次に多職種・多領域連携に係る実践的な地域志向科目を全学教育センターが提供するとともに, 各学部でも地 域志向科目を指定して, それぞれの専門性に対応した地 域連携教育を進めている. こうした地域志向科目群の履 修を積み上げ, 10 科目 20 単位以上を取得するとともに, リフレクションができた学生を 「ふくし・マイスター」 としての修了証を授与することとしている (図 1). ふくしコミュニティプログラムの取り組み ふくし・マイスターは地域志向科目に指定された学部 科目と全学共通科目による体系的な地域連携教育で養成 されている. ふくしコミュニティプログラムは, 通学全 7 学部 (社会福祉学部, 子ども発達学部, 健康科学部, 経済学部, 国際福祉開発学部, 看護学部, スポーツ科学 部) の基礎ゼミなど 1 年次全員履修科目または必修科目 の中の, 地域連携学習として取り組まれる. この, ふくしコミュニティプログラムは, 科目の一環 として行われる 5 つのステップ 「①地域を知る, ②調べ る, ③地域と係わる, ④学習を深める, ⑤成果をまとめ る」 を組み合わせた学習プログラムで構成される (表 1). この 5 つの学習ステップは, 学内や学外で地域の方の話 を聞いたり地域について調べたり, 行事やボランティア 活動の体験学習をするなど, 様々な方法で行われる. 各学部で実施される, ふくしコミュニティプログラム の共通する学び方として, 5 つの学習ステップを踏ま えること, 本学キャンパスが位置する自治体である, 愛知県美浜町・半田市・東海市, そして知多市並びに愛 知県知多半島内をフィールドワーク場所とすること, 1 年次の必修科目や全員履修で所属学部生の全員が取り 組むこと, の 3 つを実施基本としている. また, 2017 (平成 29) 年度のふくしコミュニティプログラムでは, 各学部で表 2 のように取り組まれ, 通学全 7 学部 1,535 名が何かしらの形で地域と関わるフィールドワークを実 施したことになる. また, 本学のキャンパスが位置する愛知県の知多半島 は, 愛知県西部, 名古屋市や豊明市, 刈谷市の南に突き 出した半島であり, 5 市 5 町の自治体があり, 人口が約 62 万人である. この知多半島には, 多くの NPO 法人等 の非営利組織や住民組織があり, 日本でも地域福祉活動 が盛んなところと言われている. 本学が目指す 「ふくし」 を学ぶために, さらに地域連携教育とふくしコミュニティ プログラムを実施する上で, 知多半島は最適なフィール ドといえる場所である. 図 1. ふくし・マイスター養成の枠組み 注) ふくし・マイスター HANDBOOK2018 より 学習ステップ 内 容 ①地域を知る 地域をアセスメントする. ○○になって町や場所を感じる. 子どもになって……等 ②地域を調べる フィールド―ワークへの意識を 「動因」 から 「誘因」 へ結びつける ③地域と係わる 地域・現場・実際を捉える. 「みる・きく・知る」 ④学習を深める 他者の意見を聞きながら, 自分の変容, 深まりを持たせる. さらに地域を考える ⑤成果をまとめる 5 つのステップで学んだことのリフレクション (振り返り, 反省, 熟考) を行う 表 1. ふくしコミュニティプログラムにおける 5 つの学習ステップ 注) 5 つの学習のステップに著者が内容を解説
学 部 主な地域連携科目 内 容 ①社会福祉学部 ・総合演習 総合演習で, ふくしコミュニティプログラムを展開. 合宿型の研修プログラム 「春季 セミナー」 の中で, 地域へのフィールドワークや宿泊体験などの共有体験を通じて, 人とのコミュニケーションの大切さや方法を学ぶ. さまざまな地域の方の声に耳を傾 け, 感じ取ったことをまとめ, 仲間と共有するプロセスを通して, 大学で学ぶ力を身 につける. ②子ども発達学部 ・総合演習Ⅰ 総合演習Ⅰでは, キャンパスが位置する知多半島でケアラーズカフェを運営し, 地域 の魅力を発信している方の話を聞く. 地域を知り, 関わり, 相手の立場に立って考え, 行動をしてきた経験談に皆熱心に聞き入っていた. 子ども発達学部では, 現場のニー ズに気づき, 的確に応える力を持った専門家の養成をめざしている. ③健康科学部 ・環境共生入門 ・建築デザイン入門 ・情報処理演習 情報処理演習の講義を活用して, 地域福祉に携わる NPO の代表や地域連携コーディ ネータをゲストに招き, ふくしコミュニティプログラムを展開した. その後, グルー プに分かれて私たちができる 「地域活動」 を考えた. また, 福祉工学科では, 建築デ ザイン入門, 環境共生入門, の授業の一環で, 愛知県豊田市にある, とよた Ecoful Town に施設見学で訪れ, 環境と福祉住環境の視点で施設の見学を行った. ④経済学部 ・地域社会と共生 ・基礎演習Ⅰ 基礎演習Ⅰでは, まちづくりに関連する文献等の事前学習を行い, 知多半島でまちづ くり活動に携わっている方をゲスト講師に迎え, 現場の話を聞き, 学習を行った. 最 終講義では合同発表会を実施し, 発表方法を修得した. 上級学年でも, 東海市を含む 近隣自治体, 経済団体や企業, 教育機関と交流しながらリアルな経済学を学んだ. ⑤国際福祉開発学部 ・基礎演習Ⅰ 基礎演習Ⅰでは, 自分の考えをまとめて, 相手にわかりやすく伝えるプレゼンテーショ ンの技術を身につけるために, 身近な地域課題を取り上げて, グループ学習を実施. その成果を思い思いの表現方法でまとめてプレゼンテーションを実施. 学生は, ただ 情報を集めるだけでなく, 集めた情報をもとに意味づけを行い, 自分の意見として伝 える難しさを経験した. ⑥看護学部 ・基礎ゼミナールⅡ 基礎ゼミナールⅡでは, コミュニケーションスキルや論理的思考力などを養うととも に, 東海キャンパスが立地する地域への関心を高めることを目標にフィールドワーク を実施. 学生が設定したテーマ別に, 東海市の 6 つの事業所に 「東海市の健康を考え る」 というテーマで調べ学習を行い, 統計データや関係者へのインタビュー調査の情 報をまとめた. 成果報告会では, 課題解決にむけた方策をまとめ, 地域の健康づくり に貢献する. ⑦スポーツ科学部 ・導入ゼミ 導入ゼミでは, 美浜キャンパスが位置する美浜町をフィールドに, 地域の暮らしや魅 力について自分たちの目で理解すること, グループ活動を通じてコミュニケーション を深めることを目的とし, ウォークラリーとゼミ企画等を行った. また, 大学祭で は, 地域の人と 「ボッチャ」 や 「車いすバドミントン」 といった本学らしいスポーツ を一緒に楽しむ企画を通して, スポーツに関わる運営・指導能力を養った. 表 2. 通学全 7 学部におけるふくしコミュニティプログラムの実施状況:2017 年度 種 類 内 容 ① 「調査研究型」 フィールドワーク ゼミなどで取りあげた何らかのテーマについて, 実際の状況や課題が生じている原因を確認するため に行うフィールドワークである. 調査研究型として最も取り組みやすいのは, 調査研究したいテーマ について詳しい人物を探して, 大学に来てもらう, またはその人を訪ねて話を聞くフィールドワーク である. 広い意味の 「ふくし」 の視点で, 学内や地域を見て回り課題を見つけたり, 出会う学生や地 域の方々に意識を聞いたりする調査も, 比較的取り組みやすいフィールドワークである. 学内の教職 員に, 自分たちがテーマとして取りあげた社会課題などについての関わりや意識を聞くという調査も, 学びを深めるためによいフィールドワークである. ② 「体験学習型」 フィールドワーク 体験を通して知識や技能を身につけるフィールドワークである. たとえば, 毎年秋に本学キャンパス で行われる 「安全の日」 では地域の方々にも参加していただく防災訓練が行われるが, 防災, 救護, 地域自治, まちづくりなど, 様々なテーマの体験学習型フィールドワークができる. また, 地域に目 を向ければ, 職場体験 (インターンシップ) プログラムなど, 様々な体験学習型フィールドワークが できる行事や研修もある. ③ 「ボランティア活動型」 フィールドワーク 地域で行うボランティア活動は, 学生が社会の多様な側面を学んだり, コミュニケーション力など社 会性を高めたりする良いフィールドワークの機会になる. 本学には, 地域と関わりが深い多様なボラ ンティア系の学生サークルがあるから, サークルに入って行う活動やサークルが催す行事などを利用 した体験学習型フィールドワークもできるはずである. 他者や社会に役立とうという意欲を強く持つ ことが前提であるが, 地域のボランティアセンターを通してボランティア活動に参加し, 活動を通し た学びを大学で振り返りまとめて報告することで, 活動をフィールドワークとして位置づけることも 可能である. 表 3. 本学における地域連携教育フィールドワークの種類 注) ふくし・マイスター HANDBOOK2018 より
ふくしコミュニティプログラムにおけるフィールド ワークの種類 前述の通り, 本学では, ふくしコミュニティプログラ ムを実践する様々な方法を, 通常の教科の学習と区別す る意味で 「フィールドワーク」 と位置づけている. 本来, フィールドワークと一口に言っても, 高度な研究の一環 として行われるものもあれば, 大学教員以外に話を聞い て学ぶというような, もっと簡単にできるものもあり様々 である. そもそも, フィールドワークの始まりは, 人類 学者が民族史を書くにために開発した手法であると言わ れているが, 現在は, 心理学・社会学・教育学・認知科 学・看護学・経営学などの分野でも重要な研究方法とさ れている (箕浦 2003:2). これら, 本来あるべきフィールドワークのエッセンス を大切にしながらも, 本学の地域連携教育では, 学生た ちには学習の効果を高める方法の基礎を学ぶことを主眼 としている. いきなり高度なものに無理してチャレンジ するのではなく, まずは取り組みやすい本学が示した 「地域連携教育フィールドワーク (表 3)」 の方法から地 域学習を始めることを推奨している. 本学の地域連携教 育では, フィールドワークこそ, 学びの効果を高める方 法として重要視している. ふくし・マイスターに求められる 4 つの力 ふくし・マイスターには, 表 4 に示した 「市民力」 「発見力」 「率先力」 「解決力」 という 4 つの力が求めら れる. これらの 4 つの力は, 福祉の専門職だけに限らず, 地域に暮らす一人の市民として, さらにはあらゆる職業 に携わる人々にとっても, 広い意味の 「ふくし」 の実現 に貢献するために必要とされる力である. これから卒業して様々な職業に就く学生たちには, 大 量生産型社会で求められた仕事を指示や規格どおりに進 める力に加えて, 自ら仕事を見つけだし積極的に役割を 担い, 複雑な問題を解決する力がより強く求められてい る. 地域に暮らす一市民としても, 少子高齢化が進む中 で地域社会を持続可能にするためには, 暮らしや社会の 課題を人任せにせず自ら参加して解決する力が必要とさ れる. さらに格差や孤立の問題が深刻化している今, 暮らし の課題は一部の人の課題ではなく, あらゆる人に関わっ ている. 複雑で見えにくい課題と当事者意識を持って向 き合うには 「ふくし・マイスター」 の, この 4 つの力が 役立つはずである. 地域連携教育は, 「ふくしの総合大 学」 である本学で学ぶ全ての学生たちが, 「ふくし・マ イスター」 を目ざすことにより, 未来を切り拓く力を高 めることを目標としている. 以上, 本学の地域連携教育で養成する 「ふくし・マイ スター」 についての概要をまとめた. このふくし・マイ スター養成の特徴は, 全学部が 1 年生の時から地域に出 て, 様々な体験を通して, 地域から学ぶことに主眼を置 いていることである. 学びの中でも, 地域のことを知る だけではなく, 能動的に地域に働きかけていくこと, さ らに学生たちが抱いている地域へのイメージ, 地域課題 の認識の仕方の変化を地域連携教育により育むこととし ている. では, この地域連携教育における学生の学びは, どの ように深化することができるだろうか. それは, 言うま でもなく 「リフレクション (学びの振り返り)」 である. さらに, 地域連携教育にとっての, 適切なリフレクショ ンの実施は, どのように検証できるであろうか. 次項よ り, ふくし・マイスターの養成並びにふくしコミュニティ プログラムの取り組みから, 「地域連携教育におけるリ フレクションの設計」 を試みていくことにする.
3. 結果と考察
本学の地域連携教育による, ふくし・マイスター養成 のためのリフレクション設計ポイントを, リフレクショ ンの方法, リフレクションの内容, リフレクション の手順の 3 つとした. それぞれのポイントごとに, どの ように設計・試作をしたかの考察を含めて検証する. 市 民 力 地域を理解するとともに, 生涯を通して地域と関わりながら暮らしていく市民としての基礎力 発 見 力 「ふくし」 の視点で, 地域課題を見据える力 率 先 力 ボランティア精神とリーダーシップを発揮する力 解 決 力 地域課題の解決に 「身をもって当たる」 ことができる力 表 4. ふくし・マイスターに求められる 4 つの力 注) ふくし・マイスター HANDBOOK2018 よりリフレクションの方法 ここでいう, リフレクションの 「方法」 とは, 様々な 地域連携教育で地域活動等を体験した学生が, どのよう にリフレクション (学びの振り返り) を実施するか, と いうことである. リフレクションは学生が体験したこと をしっかりと記憶に留め, 身体に定着させるよう, 間を 置かずに実施することが求められる. さらに, 思考を深 めるリフレクションそのものは, 学生一人で行っても良 いが, 事前にグループでリフレクションを実施すると効 果的であるともされる. しかし, 本学のふくしコミュニティプログラムでは 1 学年通学全 7 学部 1,500 名以上の学生を対象に, さらに 地域連携教育の対象となる学生全体となると, 5,000 人 近い学生に対しリフレクションを実施することになる. これでは, 地域連携教育を推進する全学教育センター教 職員だけでは, 十分な対応をすることが不可能である. そこで, 学びの効果と便宜を考え, 本学の地域連携教育 におけるリフレクションの方法を 「段階的リフレクショ ン」 として検討することにした. この段階的リフレクションでは, 原田 (2012:45) が 提唱している 「創造的リフレクション」 の 3 つの構造特 徴を参考にした. この創造的リフレクションの概念は, 地域連携教育における学びが, 学生個人の内省や省察に 留まらず, 個人の認識変容が市民社会や共生文化の創造 まで包摂した内容になっており, 地域連携教育における リフレクションをより深化させることができると考える. この段階的リフレクションでは, ①個別プログラムに関 するリフレクション, ②社会創出にむけたリフレクショ ン, ③創造的リフレクションの 3 段階で実施できるよう 方法を検討した. ① 個別プログラムに関するリフレクション 日々の個別プログラムに関する活動と, 地域連携科目 ごとにリフレクションが実施できるよう, 全学生に 「ふ くし・マイスター HANDBOOK (以下, ハンドブック)」 (図 2) を作成・配布している. このハンドブックには, ふくし・マイスター養成の枠組み, フィールドワークを 支援する学内の仕組み, フィールドワークの記録方法, フィールドに出るための作法としての身だしなみ・挨拶・ 電話対応や, フィールドワーク上のマナー等を掲載して いる. さらに, ふくしコミュニティプログラムや地域連 携科目で体験した地域活動のリフレクションを日々, 学 生のみでも実施できるよう, フィールドワークノートを 準備している. なお, 通学全 7 学部におけるふくしコミュニティプロ グラムでは, このハンドブックを活用し, 地域連携教育 が展開される. 入学式直後に新入生を対象に実施される, 新入生オリエンテーションにおいては, ふくし・マイス ター養成に係る事項, ハンドブックの活用方法, 並びに ふくしコミュニティプログラムの実施概要の説明を受け る. その際に, ハンドブックの概要説明とフィールドワー クノートの使用方法と, 個別プログラムに関するリフレ クション実施について説明を行う. 実際, 社会福祉学部のふくしコミュニティプログラム である 「総合演習」 では, 春季セミナーの実施に合わせ, フィールドワークノートの活用しながら, ふくしコミュ ニティプログラムのリフレクションを実施していること になる. 個別プログラムに関するリフレクションは, 個別プロ グラムにおける丁寧なリフレクションの連続が, 新しい 社会創出にむけた主体的な関与を促す力を形成する. (原田 2012:45) 図 2. ふくし・マイスター HANDBOOK の掲載内容
② 社会創出にむけたリフレクション 本学は, 在籍する全学生の学習・学生生活を支援する インターネットシステム 「nfu.jp」 を提供している. こ れは, 日常の学事的・履修科目のお知らせから, 履修登 録, 学習・添削課題, 科目修了試験や各種申請まで, イ ンターネット環境の整ったパソコンやスマートフォンさ えあれば学習に関する手続きはオンラインで使用できる ものである. 年間のリフレクションは, このシステムを 活用し, 各学年末に本システムで案内される成績評価の 閲覧タイミングに合わせて, 年間の地域連携教育のリフ レクションを回答するシステムとした. これにより, 学 年ごとにリフレクションができる項目を設定し, 1 年生 は 「リフレクションⅠ」 を, 2 年生は 「リフレクション Ⅱ」 を, 3 年生は 「リフレクションⅢ」 を実施すること になる. さらに, 4 年生に関しては, 在学中の 4 年間全 体の地域連携教育に関する 「リフレクションⅣ」 を実施 することになる. これにより, 本学に在籍する通学全 7 学部, 1 年生か ら 4 年生までの全学生を網羅したリフレクションの実施 が可能となる. さらにこのリフレクションは自分自身が 既に行った, 過去のリフレクションを参照することがで きるよう, システムが組み込まれている. 学生は 1 年生 から 3 年生までの, その学年末で実施した地域連携教育 に関する, 自分自身のリフレクションを遡って確認がで き, 卒業時には自分自身が 「大学生」 として経験した活 動全体を客観的に確認できる. この社会創出にむけたリ フレクションを積み重ねることにより, 地域社会と連携 した地域連携教育が実践できたのかなど, 学生自身の 「活動分析」 ができることになる. 社会創出にむけたリフレクションは, 本人の学習によ る生活世界の拡張と本人の意思や成長によって, 自らの 学びの場を創り出すように展開する. (原田 2012:45) ③ 創造的リフレクション 1 年生に実施するふくしコミュ二ティプログラムや地 域連携教育後に実施する 「個別プログラムに関するリフ レクション」, さらに 1 年生から 3 年生までの, 講義, ゼミ活動, 学部ごとの国家資格に関連する実習, 講義内 でのフィールドワーク, さらにはサークルやボランティ ア活動等の多岐にわたる経験から実施する 「リフレクショ ンⅠ・Ⅱ・Ⅲ」 の 「社会創出にむけたリフレクション」, 4 年生に関しては, 在学中の 4 年間全体の地域連携教育 に関する 「創造的リフレクション」 を実施することにな る. これは大学における 4 年間という在学期間の中で, 自分自身がどのような経験をし, その経験がどのように “今”に活かされているかを客観的に評価するリフレク ションとなる. しかし, 学生自身だけのリフレクション に留まらず, 地域連携教育が学生にとって深化された学 びになるよう, この 「創造的リフレクション」 では, 各 学部の所属ゼミ教員によるフィードバックを実施するも のである. ここでは, 学生個人のリフレクションだけを 概観するのではなく, 学部の傾向, 全学の傾向, さらに は学生個人の自己形成力を高めていくことができるよう, ゼミ教員から総括のコメントを受けることになる. なお, このゼミ担当教員からのコメントについては, 2016 (平成 28) 年度の文部科学省事業である, 大学教 育再生加速プログラム (AP) 「高大接続改革推進事業」 (テーマ V:卒業時における質保証の取り組みの強化) の採択を本学は受け, ポートフォリオシステムとして社 会福祉学部, 子ども発達学部の実施から, ふくし・マイ スターのリフレクションを包摂して実施している. 以上のように, 地域連携教育におけるリフレクション 図 3. 地域連携教育における段階的リフレクション
の方法として, 「段階的リフレクション」 (図 3) を実施 することにより, 学生にとって深化されたリフレクショ ンが可能となるのである. 創造的リフレクションは社会にある問題を自分自身の 問題として認識し, その解決にむけてアクションを創り 出す. (原田 2012:45) リフレクションの内容 前項では, 地域連携教育における段階的リフレクショ ンを検証した. 本項では, リフレクションの方法を踏ま えた, 「内容」 を検証する. リフレクションの内容とし ては, どのようなリフレクション項目を設定し, どのよ うに学生にリフレクションを実施させるのかを検討する ことになる. いずれにせよ, 体験を主とする地域連携教 育においては, リフレクションは, したこと・起こった こと, そしてそれに対する自身や他者の反応とそれらが 与える影響等をふりかえること (和栗 2008:50) が大 切とされているように, 学生自身の内省だけではなく, リフレクションを深化させるために, 他者からのフィー ドバック項目も合わせて設定する必要があろう. ここでは, ①個別プログラムに関するリフレクション を実施するための 「フィールドワークノート」, ②社会 創出にむけたリフレクションを実施するための 「リフレ クションⅠ・Ⅱ・Ⅲ」, ③創造的リフレクションを実施 する 「リフレクションⅣ」 を検討する. ① 個別プログラムに関するリフレクションを実施する ための 「フィールドワークノート」 フィールドワークに限らず, 自らの体験や経験を 「記 録に残すこと」 は大切なことである. 佐藤 (2008:219) によればフィールドワークとは, 体験すること, 見るこ と, 書くこと, という 3 つの作業は, 切っても切り離せ ない密接な関係があるとしている. つまり 「記録」 とし て, 書く (文章化) ことで自分の考えを整理でき, さら には日々のフィールドワークについて教員や活動先から 何かしらのアドバイスを受ける手がかりと材料になるか らである. 1 年生に実施する, ふくしコミュニティプログラムに おいては, 記録を残す目的として, 実践を記録し自分 のフィールドワーク体験をリフレクションすることがで きること,活動先の担当者・ゼミ担当教員に自分のフィー ルドワーク体験を伝えること, を目的にフィールドワー クノートを学習ツールとして準備している (表 5). こ れらは, 学生自身の日々の実践を記録し, 振り返ること によって客観化し, 自分のフィールドワークを深化させ るためのものである. 教員や活動先にとっては, 学生の 日々のフィールドワーク内容を把握し, 的確に指導・ア ドバイスをするための手がかりともなる (図 4). また, 一般的なフィールドワークで使われる記録ノー トは, 白紙か罫線だけのノートが多いが, このフィール ドワークノートはふくしコミュニティプログラムや, 日々 のリフレクションを実施するために, 整理されたもので ある. フィールドワークノートの特徴として, ふくしコ ミュニティプログラムの 5 つの学びのステップである, ①地域を知る, ②地域を調べる, ③地域と関わる, ④学 習を深める, ⑤成果をまとめる, の学習プログラムに沿っ て, 多様な場面の地域連携教育で使用できるよう, 質問 を構造化している. これは, 確実なリフレクションのた めには, 書く際には設問を, ディスカッションの際には 質問を構造化する方法が必要であるとの知見からである (和栗 2010:94). 特にフィールドワークノートの 「⑤成果をまとめる」 については, リフレクションについて整理した項目であ り, 自己評価チェック, 活動のまとめ, 今後の目標, 教 員コメントなどを記入項目としている. フィールドワー クノートを 5 つの学びのステップと合わせて活用するこ 図 4. フィールドワークノートの活用方法
とで, 地域に関する学習をしっかりと自分自身の記憶に 留め, 身体に定着させるリフレクションを繰り返し実施 することが可能となる. もちろん, 活動目的や計画など はフィールドワークノートを活用し, 事前学習を入念に 実施することは, とても重要である. ② 社会創出にむけたリフレクションを実施するための 「リフレクションⅠ・Ⅱ・Ⅲ」 社会創出にむけたリフレクションを実施するための 「リフレクションⅠ・Ⅱ・Ⅲ」 は, 1 年生から 3 年生ま での学年末ごとに計 3 回実施することになる. リフレク ションの方法は前述の 「nfu.jp」 のオンラインでシステ ムを活用し, 1 年間で学生自身が体験した地域連携教育 に関するリフレクションを実施する. 表 7 のとおり, 基本, リフレクションⅠからⅢは同様 の項目を中心に 16 項目を設定している. これは, リフ レクションを実施するたびに, 前年度との自分自身のリ フレクション比較や積み重ねが可能な項目を設けること で, 学生が経験した地域連携教育が, どのように自己形 成力を高めていく影響を与えたのか, さらには, 将来の キャリア目標にどのように作用したかを測ることができ るよう設定した. なお項目 1 から項目 9 は 「学生自身が 経験した地域連携教育における効果」, 項目 10 から項目 13 は 「ふくし・マイスターに求められる 4 つの力を構 成する要素」, 項目 14 は今後の学生生活に役立ったかど うか, 進路選択に役立つか, 将来の仕事に役立つのか, 将来の生活に役立つのか, 専門的な学びに役立のか, さ らには卒業論文・レポート作成に役立つのかを 5 件法で 設定し, 地域連携教育が 「学生自身の生活やキャリア目 標に, どのように影響を与えたのか」 を測ることにした. 項目 15 と項目 16 はふくし・マイスター養成に係る回答 内容とするリフレクション設定とした. なお, 項目 10 から項目 13 の 「ふくし・マイスターに 求められる 4 つの力を構成する要素」 については 「市民 力」 「発見力」 「率先力」 「解決力」 という 4 つの力が求 められているが, それぞれを構成する要素については, 3 項目ごとに設定した (表 6). 以上のように, 科目の学習到達目標とそれに基づく学 習成果を考え, リフレクションを促す学習活動の目的と 内容, そのタイミング (和栗 2010:94) を勘案しなが ら, 「社会創出にむけたリフレクション」 を設計した. この社会創出にむけたリフレクションを段階的に積み重 ねることにより, 地域社会と連携した地域連携教育が実 践できたのかなど, 学生自身の 「活動分析」 ができるリ フレクション内容となる. ③ 創造的リフレクションを実施するための 「リフレク ションⅣ」 リフレクションⅣは, 1 年生から 3 年生までの学年末 ごとに計 3 回実施する 「リフレクションⅠ・Ⅱ・Ⅲ」 を 経て, 4 年生の前期終了時に実施する 「創造的リフレク ション」 である. リフレクションⅣの回答方法は年間の リフレクションと同様に 「nfu.jp」 のオンラインシステ ムを活用している. リフレクションⅣについては 7 つの項目を設定した. 項目 1 は, 4 年間で学んだ地域連携教育が自分自身を成 長させる 「経験」 となったか, 項目 2 はその 「経験」 と なった具体的なエピソードを自由回答で求めた. 項目 3 市 民 力 地域を理解するとともに, 生涯を通して地域と関わりながら暮らしていく市民としての基礎力 1 ) 学生同士で協力しあうこと 2 ) 地域の方と自分の意志を伝えあうこと 3 ) 地域の行事や研修・調査活動などで積極的に話し合うこと 発 見 力 「ふくし」 の視点で, 地域課題を見据える力 1 ) 自分の今後の学習課題を見つけること 2 ) 身近な地域の課題を理解すること 3 ) 視野を広げ, 社会に関心を持つこと 率 先 力 ボランティア精神とリーダーシップを発揮する力 1 ) 指示を待つのではなく, 自分から行動をすること 2 ) 責任を持って行動すること 3 ) 周囲に自ら働きかけ, 地域活動等に巻き込むこと 解 決 力 地域課題の解決に 「身をもって当たる」 ことができる力 1 ) 新たな学習課題に気づき, さらに学びを深めること 2 ) 身近な地域の課題解決の方法を学ぶこと 3 ) 社会における課題解決の方法を学ぶこと 表 6. ふくし・マイスターに求められる 4 つの力を構成する要素
表
7.
リフレクション項目:
は, ふくし・マイスターに求められる 4 つの力である 「市民力, 発見力, 率先力, 解決力」 が地域連携教育を とおして, どの力が最も高まったのか. 項目 4 は, その 力は具体的にどのように活かすことができるかを回答項 目として設定した. 最後の項目 5 については, 卒業後も, 社会人として地域を意識した活動を継続するか, をリフ レクション内容とした. さらに, リフレクションⅣでは, 学生自身だけのリフ レクションに留まらず, 地域連携教育が学生にとって深 化された学びになるよう, 各学部の所属ゼミ教員による フィードバックの実施を計画している. なお, リフレク ションⅣは学生自身が過去に実施した 「リフレクション Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」 を参照しながら, 大学生活全体における, 地域連携教育のリフレクションを実施することなる. リフレクションの手順 前項まで, リフレクションの方法, リフレクショ ンの内容, を整理した. 本項では, 前項までの整理ポイ ントを主軸に, リフレクションの手順を示しながら, 結果と考察を含めた, 全体検証を行う. 項目 リフレクションⅣ (4 年生) 1 あなたが, 大学で学んだ 「地域に関する学習」 は, 自分自身を成長させる 「経験」 となりましたか? 1. とてもそう思う/2. まあそう思う/3. どちらともいえない/4. あまりそう思わない/5. 全くそう思わない 2 それは, どのような 「経験」 ですか?あなた自身を成長させた, 地域に関する学習の具体的な 「体験談」 をお聞かせくださ い. (50 字以上を目安に丁寧に記述してください) 3 あなたは, 「地域に関する学習」 を通し, 最も身についた 「ふくし・マイスターの力」 (市民力・発見力・率先力・解決力) はどれですか?ひとつ選んでください. 1. 市民力:地域を理解するとともに, 生涯を通して地域と関わりながら暮らしていく市民としての基礎力 2. 発見力:「ふくし」 の視点で, 地域課題を見据える力 3. 率先力:ボランティア精神とリーダーシップを発揮する力 4. 解決力:地域課題の解決に 「身をもって当たる」 ことができる力 4 その力とは, 具体的には 「どのようなことができる力」 のことですか? (50 字以上を目安に丁寧に記述してください) 5 あなたは, 卒業後, 自らが率先して地域に関わっていきたいと思いますか? 1. とてもそう思う/2. まあそう思う/3. どちらともいえない/4. あまりそう思わない/5. 全くそう思わない 6 あなたは, 「地域に関する学習」 での学びを, 卒業後どのように生かしていきたいですか? (50 字以上を目安に丁寧に記述し てください) 7 「ふくし・マイスター」 について意見・感想・後輩へのコメント等があればお聞かせください. (50 字以上を目安に丁寧に記 述してください) 表 8. リフレクション項目:Ⅳ 表 9. ふくし・マイスターの認定と地域連携教育におけるリフレクションの手順 ③創造的リフレクション ①個別プログラムに関するリフレクション ②社会創出にむけたリフレクション (Ⅰ∼Ⅲ)
さて, 地域連携教育におけるリフレクションの方法と して, 日々のリフレクション, 年間のリフレクション, まとめのリフレクションの段階を踏んだ, 「段階的リフ レクション」 を実施することが, 学生にとって深化され たリフレクションが実施可能となることを検証した. こ の段階的リフレクションにおいては, より学びを深化さ せるために, リフレクションのプロセスを意図的に設定 する必要がある (河村 2012:31) ことから, リフレク ション内容を含めたリフレクションの 「手順」 を総合的 に検証し, 本章のまとめとして表 9 に示した. これは, リフレクションの実施には 「方法」 や 「内容」 も重要で はあるが, より学生の内面的な成長を目指すには, リフ レクションがどのような 「手順」 で実施されるかも検討 しなければならないことからである. 原田 (2012:45) は, 創造的リフレクションのなかで, リフレクションを長期で捉える特徴をあげている. ただ し, それは短期のリフレクションの積み上げの上に成り 立っており, 個別プログラムにおける丁寧なリフレクショ ンの連続が, 新しい社会創出に向けた主体的な関与を促 す力を形成するとしている. その形成を指すのが本学に おける 「ふくし・マイスター」 の養成そのものであろう. 次章では, 本稿の研究から示された結論を示すこととす る.
4. 結論
本稿の目的は, 本学におけるふくし・マイスターの養 成並びにふくしコミュニティプログラムの取り組みから, 「地域連携教育における段階的リフレクションの検討」 を試みることであった. 研究方法として, 地域連携教育 で養成する 「ふくし・マイスター」 についての全体概要 をまとめ, 地域連携教育におけるリフレクションの設計 内容を, より具体的に項目化できる材料を検討した. 結果, リフレクション設計ポイントを, リフレクショ ンの方法, リフレクションの内容, リフレクション の手順の 3 つをデザインすることができた. リフレクショ ンの 「方法」 については, ①個別プログラムに関するリ フレクション, ②社会創出にむけたリフレクション, ③ 創造的リフレクションを段階的リフレクションとして検 討した. その後, 本学における, ふくし・マイスターの 認定と地域連携教育におけるリフレクションの 「内容」 を総合的に検証しながら, 具体的なリフレクションの 「手順」 を組み入れ, 地域連携教育における段階的リフ レクションを検討することができた. この一連の作業により, 地域連携教育におけるリフレ クションのデザインから, 地域連携教育における, 効果 的なリフレクションの実施を検討できる可能性が示唆さ れた. しかし, この地域連携教育におけるリフレクショ ンの実施については, 本学のふくし・マイスター養成に おける実施プロセスにおいて, 実現と計画はしてはいる ものの, 検証するまでの材料 (学生のリフレクションデー タや実施率など) が整っていないのが現状である. その 理由として, 本学が 2014 (平成 26) 年度の COC 事業 の採択を受けてから, 本年度で 5 年が経過するが, ふく し・マイスターの 1 期生が, 本年度末に, 初めて誕生す る予定であることから, 具体的な効果検証に取り組めな いという理由からである. リフレクションについて, 和栗 (2008:50) は, 「何」 をリフレクションするのかは, 体験的な学習プログラム 自体の目的によって左右されることになり, リフレクショ ンの時期や回数もその目的次第であると述べる. そのた め, リフレクションは目的によってデザイン (構造化) されるべきであるという知見が, 本研究のテーマを設定 した理由でもある. いずれにしても, リフレクションを 実施すること自体が目的化してしまわないよう, 学習プ ログラムに沿って, 地域連携教育におけるリフレクショ ンのデザインを, 意識的に組み合わせていくことは必要 であろう. また, 前述の先行研究でも示されているとおり, 地域 連携教育における実際の活動の分析には非常に時間がか かり, かつ複雑になるということは否めない. 教育現場 での取り組みの蓄積から, 地域連携教育の体系化は一定 程度理論的に整理されつつある (宮井他 2015:85) と はいうが, 受け入れ側となる 「地域側」 の取り組みや体 系化に関する理論的整理は十分にされていない. さらに, 地域連携教育における科目目標や, COC 事業がすすめ る地域連携科目から, 大学としてどのような成果を創造 したいのかなど, リフレクションの内容だけにとどまら ず, 地域連携教育を推進する全体のデザインが求められ ている. 一方で, 地域連携教育の実施により, 学生の地 域への関心が増えたという成果 (木村他 2018:8) も現 れているが, 一朝一夕に地域連携教育における効果的な 成果が顕著に表れていることは, ごく稀なケースであろ う. 今後の継続研究として, 本研究で試作した地域連携教育の段階的リフレクションの実施検証をすすめる予定で ある. 特に, 地域連携教育における学びが, 学生個人だ けの内省だけに留まるだけではなく, 学生自身の認識変 容が, 市民社会や共生文化の創造まで含んだ内容になっ ているかを分析する必要がある. この作業により, 大学 における地域連携教育の推進, リフレクションの実施や 積み重ねが, 学生自身の学びを通して地域の課題等の認 識を深め, 解決に向けて主体的に行動できる人財を育成 することにもつながるであろう. それは, 本学 COC 事 業が目指す, ふくし・マイスターとして認定を受けた学 生が, 真に持続可能な 「ふくし社会」 を担う, スペシャ リストとして, さらには, 地域に住む住民のひとりとし て, 地域社会に必要とされる人財となりうる可能性を秘 めているのである. 注 1 制度中心の従来の 「社会福祉」 から, 近年は 「福祉」 の領 域や対象が拡大しており, 多領域が関連・連携しあう広義 の福祉を意味するため, 日本福祉大学では平仮名で 「ふく し」 と表現している. 2 「人財」 とは, 日本福祉大学の養成人材が, 地域・社会・ 時代等の中で各々の力を発揮し, その持続や発展に貢献す る, かけがえのない 「たから」 のような人材であってほし いとの趣旨を込めて, 「材」 を 「財」 に替えて表現してい る. 3 創造的リフレクションとは社会にある問題を自分自身の問 題として認識し, その解決にむけてアクションを創り出し ていくことをいう. 引用文献・参考文献 市川享子 (2015) 「創造的なリフレクションを支援する場の形 成に関する研究」 日本福祉教育・ボランティア学習学会 研究紀要 25(0):92-101. 市川享子 (2016) 「創創造的リフレクションの生成過程に関す る実証的研究」 日本福祉教育・ボランティア学習学会研 究紀要 26(0):27-36. 大島純 (2011) 「リフレクションを促す学習環境のデザイン指 針」 教育システム情報学会誌 28(3):253-261. 河村美穂 (2012) 「教育実践の質を高めるリフレクションの提 案」 日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要 20 (0):31-40. 木村亮介・冨永哲雄 (2018) 「初年次学生における地域志向教 育の効果について」 和歌山大学クロスカル教育機構研究 紀要 1:3-10. 小馬徹 (2016) フィールドワーク事始め 御茶の水書房. 佐藤郁哉 (2002) 実践フィールドワーク入門 有悲閣. 佐藤郁哉 (2004) 方法としてのフィールドワーク 新曜社. 佐藤郁哉 (2008) フィールドワーク 新曜社. 佐藤郁哉 (2016) フィールドワークの技法 新曜社. 佐藤大介・中野正隆 (2017) 地域志向学習における 「ふくし・ マイスター」 養成の実践:ふくしコミュニティプログラム の取り組みから 「日本福祉大学全学教育センター紀要」 (5):135-143. 滋賀県立大学環境フィールドワーク研究会 (2016) フィール ドワーク心得帳 サンライズ出版. 原田正樹 (2012) 「福祉教育・ボランティア学習における創造 的リフレクションの開発」 日本福祉教育・ボランティア 学習学会研究紀要 20(0):41-52. 日本福祉大学 COC 事業推進本部 (2018) ふくし・マイスター HANDBOOK2018 日本福祉大学. 野村一夫 (1994) リフレクション 博文社. 箕浦康子(2003) フィールドワークの技法と実際 ミネルヴァ 書房. 宮井浩志・越智郁乃 (2015) 「地域連携教育の体系化に関する 研究:大学 COC 事業採択校における取り組みの分析から」 四国大学全学共通教育センター年報 (1):80-86. 和栗百恵 (2008) 「ふりかえりとは?」 体験的な学習とサービ ス・ラーニング :50-53. 和栗百恵 (2010) 「ふりかえりと学習−大学教育におけるふり かえり支援のために−」 国立教育政策研究所紀要 139: 85-100. 和栗百恵 (2015) 「サービス・ラーニングとリフレクション: 目的と手段の再検討のために」 ボランティア学研究 15: 37-51.