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小学校体育科におけるソフトバレーボールの教材化への一試案

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美作大学・美作大学短期大学部紀要(通巻第

49号抜刷)

松 坂  仁 美

小学校体育科におけるソフトバレーボールの

教材化への一試案

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1 はじめに 本研究では、学習指導要領の改訂に伴い、新しく教 育内容となったソフトバレーボールを取り上げ、児童 にとって未経験であるバレーボールという運動文化を 教材化するための1試案を提出することを目的とした。 ソフトバレーボールの教材化については多くの実践 報告がある(徳永1995、坂井1995、河野1995、川治 1995、吉田1995、吉川1995、長井1997、宮内2001)。 これらの研究成果より、ソフト球の扱い易さという用 具としての価値よりも、チームゲームとして、連係プ レーや攻防プレーが必要となることから、集団性を育 てる上での教材としての有効性が指摘されている。し かし、攻防分離型スポーツとしての特性に基づくチー ムの連係プレーが重視され、転がしバレーボールやワ ンバウンドバレーボールなどが教材例としてあげられ ている場合がある。このことは、バレーボールという 運動文化財としての特性である空中でボールを落とさ ずにつなぎあうという「ボーレー操作」が二義的に扱 われていることを示している。ボールを空中でつなぐ ことから生まれる集団としての連係プレーや仲間との 協力は転がったボールやバウンドしたボールをつなぐ 動きとは必然的に異なった動きが要求されると考えら れる。 そこで本研究では教材化にあたり、空中でボールを つなぐための味方同士の連係プレーと攻撃に主眼をお いた。授業の中核に味方同士の連係プレーをおき、バ レーボールスキルとしてオーバーハンドパス、スパイ クを中心として学習し、ゲーム事態で3段攻撃とカ バーが出現することを目的として、教材化を試みた。 さらに小学生にとって学習内容に無理がないかどう かを検討する視点として、自己効力感からのアプロー チを試みた。児童が自信を持てない、つまりできると 思えない学習課題や内容であれば、授業は楽しくなく、 また教材化に問題があるのではないかと考えられる。 さらに、スポーツの特性と授業の楽しさが関連すると したら、スポーツスキルの自己評価、すなわち自己の 技能水準の知覚は児童が楽しいと感じることと関連が あるのではないかという仮説を設定した。 この場合、学習過程において、児童が自己の習熟性 を認知することと楽しさの関係について検討した。そ こで自己の習熟性の認知をとらえるため、スキルにつ いての自己効力感の測定を行った。 Bandura(1977,1986)は、自己効力感とは「人があ る行動を起こす前に個人が感じる自己遂行可能感」の ことであり、「自己効力感は個人の持つ習熟性を考え るのではなく、習熟できるかどうかについての個人の 判断である」としている。すなわち、他者が客観的に みてどれだけできているかではなく、自分自身がどれ だけできるかを予測し判断することである。自分の学 習課題や学習内容を認知し、さらに自己の運動スキル をどのように認知し、評価し、どのくらいの自信を 持って授業に望むことができるかが授業に対する自 己効力感であると考えられる。 以上、ソフトバレーボールの教材化を検討するにあ たり、バレーボールの特性として、空中でボールをつ なぐ連係プレーとして、3段攻撃を中心とした教材化

松 坂 仁 美

小学校体育科におけるソフトバレーボールの教材化への一試案

One tentative plan on the teaching of soft-volleyball in elementary school physical education

美作大学・美作大学短期大学部紀要 2004,Vol. 49,69∼74

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を図った。さらに教材化の妥当性を検討するにあたり、 楽しさと自己効力感、及びスキルの自己評価を視点と して設定し、研究を進めた。 2 研究方法 対 象:岡山県S小学校 第6学年(男子10名女子12名 計22名) 指導者:男子担任教諭(教育歴15年以上) 単元計画と方法:11時間(1時間は45分)の授業計画。 指導過程は表1のとおりである。 内容はレシーブ−トス−スパイクの3段攻撃及びカ バーリングの技術の習得を目的とした。そしてバレー ボールの特性としてあげられる「はじく」動きについ ては2次的にとらえた。なぜなら、ソフト球でのはじ く動きは公認球になった際、うまく転移しないのでは ないかと考え、ホールディングパスを導入し、空中で ボールをつなぐことに最も重点をおいた。ボールはソ フト球(ミカサMSV-MINI高学年用、円周64cm、重量 180g)をはじめに使用し、中学校とのつながりから5 時間目より軽量4号球(ミカサVR-4ゴム球、円周64cm 重量210g)を徐々に取り入れ、その際にはじくことも 指導に含めた。コートはバドミントンコート、ネット の高さは180cmとした。授業は、児童の学習過程を検 討するためVTRに収録した。 自己効力感について次のように検討した。自己効力 感の調査内容は、運動課題の遂行やスポーツパフォー マンスに関する研究を参考に作成した(Weiss et al,. 1989 ; McAuley et all, 1983 ; 1981 ; Ryckman et al., 1982 ; Gayton et al., 1986 ; Lee, 1982 ; Berling and Abel, 1983,. 坂野&東條 1986,. 高橋&猪俣 1989)。作成した内容は、 前時に学習したスキル及び本時の新しい学習内容につ いて遂行可能かどうかを質問するものであった。各授 業時ごとに課題を遂行する前に質問し、自己効力感を 調査した。さらに授業終了直後に同じ内容について遂 行できたかどうかを自己評価させた。この場合、児童 は[1できない、2あまりできない、3どちらともい えない、4ややできる、5できる]の5段階で回答し た。以下、前者を自己効力感、後者を自己評価と記述 する。さらに「授業の楽しさ」及び「バレーボール ゲームの楽しさ」について授業終了後に調査し、回 答は、自己効力感と同様に5段階で行った。さらに単 元終了後に授業についての感想を自由記述で児童に答 第1時 チーム(5人×2,6人×2) 試しのゲーム(3回で相手コートに返す.1人が2回続けてボールに触れないこと) オーバーハンドパス(ホールディングパス)の指導と練習 5分間ゲーム 第2時 チームは第1時と同じ 全日本チームの試合のビデオを見る。 オーバーハンドパス(ホールディングパス)の指導と練習 スパイクの練習 5分間ゲーム(アンダーハンドパスを使わないようにする。) 第3時 チームすべてが平均的な力になるように編成(4人×3,5人×2) 以後チームは単元終了迄、変更無し。 オーバーハンドパス(ホールディングパス)の指導と練習 スパイクの練習 5分間ゲーム(アンダーハンドパスを使わないようにする。) 第4時 第3時に同じ 第5時 オーバーハンドパス(ホールディングパス)の練習 トス−スパイクの練習(軽量4号球も使用し比較させる。) 5分間ゲーム(ミニソフト球使用。) 第6時 オーバーハンドパス(ホールドの時間を短くするように指示)の練習 トス−スパイクの練習(軽量4号球も使用し比較させる。) アンダーハンドパスの練習 5分間ゲーム(ミニソフト球使用。) 第7時 オーバーハンドパス(ホールドの時間を短くするように指示)の練習 サーブとサーブレシーブの練習 5分間ゲーム(ミニソフト球使用。) 第8時 オーバーハンドパスとアンダーハンドパスの練習 サーブとサーブレシーブの練習 チームの作戦を考える。 5分間ゲーム(ミニソフト球使用。) 第9時 この授業以後、ボールはを軽量4号球を使用 オーバーハンドパスとアンダーハンドパスの練習 サーブとサーブレシーブの練習 オーバーハンドパスではじくことの指導 チームの作戦を考える。 5分間ゲーム 第10時 オーバーハンドパスとアンダーハンドパスの練習 オーバーハンドパスではじくことの指導 チームの作戦を考える。 5分間ゲーム 第11時 チームで考えた練習 5分間ゲーム 表1 指導過程

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えさせた。 3 結果及び考察 1)バレーボールスキルの習得について 第3時以降のゲームを中心とした活動につい て分析を試みた。図1は授業時のゲームを分析 し、その相手チームへの返球パターンをまとめ た結果である。レシーブ−トス−スパイクを中 心に指導過程を構成した結果、1回での返球は 減少し、レシーブ−トス−スパイクの攻撃パ ターンの出現がもっとも多く認められた。第7 時での減少はサーブを導入したため、サーブレ シーブのミスが影響している。さらに第9時も 軽量4号球にボールを変更したため、レシーブの失敗 が増えたことが原因であろう。しかしながら、第11時 では3段攻撃の出現回数も増え、軽量4号球に適応し つつあると考えられた。 図1 授業時ごとの1ゲームにおける 返球パターンの出現回数について 表2は単元終了後に質問した内容と自由記述の結果 である。3件以上の記述があったものをまとめた。 1.「授業で何が楽しかったか」と2.「うまくできた こと」について、個人技能ではスパイクの課題が上位 に挙がった。さらに1では、チームプレーに関する内 容が多く記述された。またボールをつなぐことやカ バーについての記述が見られ、バレーボールという スポーツの特性が児童らに認識されたのではないかと 推察された。 1.授業では何が楽しかったか    チームで協力したこと    13件    スパイク         8件    5分間ゲーム       8件    ボールをつなぐこと    3件    レシーブ         3件 2.うまくできたことは何か    スパイク         8件    サーブ      8件    アンダーハンドパス    7件    サーブレシーブ      6件    ボールがつながった。   5件    カバーができた      3件 3.うまくできなかったことは何か    サーブが入らない        7件    アンダーハンドでどこにボールが    飛ぶかわからない        6件    スパイクができない       5件    レシーブでつなぐことができない 6件    オーバーハンドパス       5件    アンダーハンドばかり使う    3件 4.どんなことを頑張ったか    サーブを大切に打つ       8件    チームで協力し教え合う     7件    スパイク      6件    カバー       4件    声を出す      4件    アンダーハンド         5件    ボールをつなぐ         3件 表2 単元終了後の感想(自由記述よりまとめた結果) また4.「どんなことを頑張ったか」では、個人技 能としてサーブとスパイクに関する記述が多くなって いる。さらにここでもチームでの協力や教え合い、カ バー、声をだす、ボールをつなぐことといったバレー ボールの特性に基づく活動が上げられている。3. 「うまくできなかったこと」については個人技能が中 心の記述ではあるが、スパイクができない以外はすべ て、ゲームを成り立たせるには欠かすことのできない 内容であった。 表3は授業後の学習内容についての自己評価であ る。3以下の評価を示した内容はトスとカバーについ てである。他は3以上であり、学習内容としたバレー ボールスキルの獲得は児童にとって無理のない内容で あったと推測できる。しかし、Q8「思い切りスパイ クが打てたか」について、第9時から自己評価が下 がった。これと同様の傾向がQ4「思ったところへパ スできたか」、Q11「スパイクが打ちやすい所にトス をあげることができたか」についても見られた。これ は軽量4号球を使用したことが影響したものであると 考えられる。 2)楽しさについて 図2は「授業は楽しくできたか」と、「ゲームは楽 しくできたか」と授業開始前に調査したスキル学習に 対する自己効力感、授業後に調査した自己評価の結果 である。全体を通して、第1時以外はすべて平均値は

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表3 各授業後の学習内容の達成に関する自己評価の平均得点 Q1  授業は楽しくできましたか Q2  ゲームは楽しくできました Q3  オバーハンドパスはうまくできましたか Q4  思ったところにパスできましたか Q5  相手からのボールをオバーハンドで受けましたか Q6  スパイクはうまくできましたか Q7  スパイクの時、ボールが手に当たりましたか Q8  思い切りスパイクを打てましたか Q9  ジャンプのタイミングがつかめましたか  Q10 トスを上げることができましたか Q11 スパイクが打ちやすい所にトスを上げましたか Q12 トスにスパイクのタイミングが合いましたか Q13 思ったところにトスを上げることができましたか Q14 サーブが相手コートに入りましたか Q15 サーブをオバーハンドでレシーブできましたか Q16 サーブをアンダーハンドでレシーブできましたか Q17 サーブレシ−ブのカバーができましたか Q18 自分にあったサーブができましたか Q19 チームで協力してゲームができましたか Q20 チームの人と作戦を考えることができましたか Q21 チームの工夫するところを考えることができましたか Q22 チームで考えた練習をすることができましたか Q23 練習したことを使ってゲームができましたか Q24 オバーハンドではじくことができましたか 平均 3.77 4.14 3.23 2.91 3.41 S.D 1.02 0.89 1.11 1.27 1.18 平均 4.29 4.41 4.09 3.55 3.90 3.10 3.95 3.82 3.41 S.D 0.64 0.80 0.97 1.01 1.09 1.22 0.79 1.10 1.01 平均 3.95 4.61 4.14 3.64 4.19 3.45 4.23 4.05 3.64 S.D 0.92 0.50 0.71 1.09 0.98 1.22 0.97 0.86 0.90 平均 4.27 4.27 4.27 3.66 4.05 3.59 3.71 3.59 3.45 3.64 S.D 0.70 0.94 0.70 0.92 1.05 1.14 1.23 1.22 1.14 1.14 平均 4.50 4.59 4.27 4.05 3.88 3.57 4.09 3.82 3.45 3.55 S.D 0.67 0.59 0.63 0.90 1.02 1.07 1.11 1.26 1.14 1.14 平均 4.50 4.23 4.63 4.05 4.36 4.30 3.93 3.75 4.00 3.59 S.D 0.74 1.02 0.73 0.90 0.73 0.91 0.90 0.95 0.95 1.01 平均 3.93 3.70 4.67 4.40 4.40 3.46 3.87 3.53 3.00 3.53 4.27 4.07 3.31 2.83 S.D 1.03 1.42 0.62 0.83 0.83 1.66 0.92 1.53 1.53 0.92 1.10 1.10 1.65 1.37 平均 4.38 4.19 4.10 3.81 3.70 3.65 3.80 3.10 3.95 3.62 3.67 3.24 3.38 S.D 0.80 0.98 0.89 1.25 1.38 1.35 1.32 1.21 1.32 1.16 1.32 1.37 1.07 平均 3.89 4.12 3.67 3.05 2.88 3.19 4.70 2.79 4.16 3.39 3.80 3.39 S.D 1.17 1.18 1.20 1.73 1.20 1.25 0.45 1.50 1.13 1.27 0.93 1.38 平均 4.33 4.29 3.52 2.57 2.95 2.95 4.45 2.76 4.43 3.50 3.38 S.D 0.91 1.06 1.03 1.78 1.40 1.56 0.74 1.37 0.87 1.50 1.12 平均 3.91 4.05 3.45 3.14 3.00 4.23 2.91 3.60 3.64 3.45 S.D 1.15 1.17 1.30 1.71 1.48 1.19 1.41 1.31 1.14 1.26 第1時 第2時 第3時 第4時 第5時 第6時 第7時 第8時 第9時 第10時 第11時 図2 授業及びゲームの楽しさと効力感 4点付近である。すなわち、授業もゲームも楽しく、 自信を持って授業に参加できたことになる。サーブと サーブレシーブが学習課題に入った第7時は両楽しさ ともに下がったが、ボールが変わった第9時はゲーム の楽しさの評価が下がらなかった。内省報告より、 「ボールを変えたことでサーブや、スパイクがうまく いったこと」があげられていた。さらに授業に対する 楽しさとゲームに対する楽しさは第1時を除いて、す べてに有意な相関(p<.01)が認められた。 3)楽しさと自己効力感及び自己評価との関係について 図2より自己効力感ははじめは低いがバレーボール スキルの習得が進むにつれ、事後の評価とほぼ一致す るようになっている。さらに両者の相関も認められ (p<.01)、前時の学習が次時の効力予期に関連する事 が示唆された。バレーボールでは未経験のスキル学習 についても前時の経験を基に自己の習熟性を予測し、 認知しやすいのではないかと考えられた。 次に、授業及びゲームに対する楽しさと1時間の授 業ごとのスキルに関する自己評価について相関を検討 した(表4)。アンダーハンドパス、オバーハンドパ ス、トス、スパイク、サーブ、サーブレシーブ とバ レーボールに関するスキルがすべて学習過程に取り入

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れられた第7時から相関のある項目が認められた。し かし、第11時までは「授業は楽しい」と「ゲームは楽 しい」において相関のある項目の一致は少ない。第11 時にはそれがすべて一致したのである。このことから 自己のスキルの習熟性を認知する事と楽しさとが結び ついたのではないかと推察される。 4 まとめ 本研究は、小学校においてソフトバレーボールを教 材化するための1つの試みである。 バレーボールの運動文化としての特性である、空中 でボールをつなぐことを教育内容の中核とした。その ためのスキルとしてゲーム事態での3段攻撃とカバー ができることを目的として教材化を図った。 さらに、学習内容が児童にとって適したかどうかを、 児童の自己のスキル対する習熟性の認知と授業の楽し さから検討した。この場合、習熟性の認知は、授業前 に学習内容についての自己効力感を調べ、授業後には 自己評価として調査した。 結果は次の通りであった。 1)1回返球は減り、ゲームの中心としてトス−スパ イクによる攻撃が展開され、3段攻撃が多く用い られた。 このことは空中での連係プレーを目的とした教材 化が児童に認識されたことを示すと考えられた。 2)授業後の自己評価の結果より、3段攻撃を中心と したバレーボールスキルの学習課題は児童にとっ て無理のない内容であることが推測された。 3)自己効力感はスキル習得が進むにつれ、事後の自 己評価とほぼ一致するようになり、両者間に相関 も認められた。このことより前時の学習が次時の 効力予期に影響することが示唆された。バレー ボールでは未経験のスキル学習についても、過 去の経験から自己の習熟性を予測し、認知しやす いことがうかがえた。 4)楽しさとスキルの自己評価について、各授業時ご とに相関を検討した結果、授業が進むにつれ、自 己のスキルの習熟性の認知と楽しさが結びつくこ とが示唆された。 文  献

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参照

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