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多国籍企業と多国間投資協定

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Academic year: 2021

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(1)生駒経済論叢. 第7巻 第2・3号2010年3月. 多国籍企業 と多国間投 資協定 有 概 要MNEと. 圭我. 孝. 澤. 投 資 受 入 国 と の相 互 対 応 関係 は3つ の段 階 に分 類 で き る。 最 初 に,こ の3段. 階 の 特 徴 を述 べ る。 そ して受 入 国 がFDI/MNEに. 対 して と る国 内的 措 置 の分 類 と内 容 を 説. 明 す る。 今 で もそ の 措 置 は受 入 国 にお い て 基 本 的 な 政 策 で あ る けれ ど も,1国. 的 対 応 には 限. 界 が あ る。 そ こで 各 国 は 集 団 行 動 を と る必 要 に迫 られ て くる。 た とえ ば,2国. 間投資協定や. 租 税 条 約,EUやNAFTAな. ど地 域 協 定,お よび 多 国 間FDI/MNE協. 定 を 指 摘 で き る。 次. に,こ の集 団 的 行 動 を と らな けれ ば な らな い理 由 や そ の形 態 を明 らか に して,最 後 に,MAI の 失 敗 例 か ら多 国 間FDI/MNE管. キ ー ワ ー ドFDI/MNE,国. 理 体 制 の 成 立 条 件 を 考 察 す る。. 内 規 制,国. 際 協 定,MAI. 原 稿 受 理 日2009年11月6日. Abstract. The recent. FDI/MNE. and host countries. characteristics of national measurements. history. of the. economic. is classified into three phases.. of the three phases respectively, measurements. and social. that. interactions Firstly,. limits. so, It is necessary there are the bilateral. are imposed on FDI/MNE.. for each country. investment. ments such as EU and NAFTA,. and tax treaties,. and multilateral. agreements.. reasons. and forms that have to take a concerted action.. ditions. of a formation. of a multilateral. FDI/MN. and contents. Though. Lastly,. the national. actions have its. to take a concerted action.. agreements. I explain the. and the classifications. have been a basic policy all this time, the unirateral. For example,. the regional. FDI/MNE,. national. control,. International. agree-. Then, I clarify. regime in terms of the failure. agreement,. the. I consider the con-. MAI.. Key words. between. MAI. of.

(2) 第7巻. は. 第2・3号. じ. め. に. 今 日の グ ロー バ ル 化 時 代 の大 きな 特 徴 は,国 境 を 超 え る直 接 投 資(以 下FDIと. 略 記). の フ ロ ーで あ る。 あ る国 の 企 業 が 他 国 に子 会 社 を新 設 した り,他 国 の 既 存 企 業 の 全 て あ る い は一 部 を 所 有 す る よ う な 投 資 で あ る。 要 す る に,FDIの. フ ロー は商 品 とサ ー ビス の フ. ロ ー よ り も高 い比 率 で 拡 大 して き た。1990年 か ら2006年 まで,世 界 のFDI流 とサ ー ビスの 全 輸 出額 の7.7%,さ. らに全 体 的成 長 率 の5%に. 入 額 は,商 品. 対 して,年 平 均12.4%で 増 加. した(1>。 世 界 的 不 況 の 影 響 に よ り減 少 もあ った けれ ど も,2003年 か ら以 来,世 界 のFDIフ ロ ー は年 率30パ ーセ ン トの 比 率 で 増 加 して きて い る。20007年 の世 界 のFDI流 8,330億 ドル(前 年 比30%増)で. 入 額 は1兆. あ り,こ れ まで 最 高 額 で あ っ た2000年 の 記 録 を 上 回 る もの. と予 想 さ れ て い る(2)。グ ロー バ ル 化 時 代 を一 般 的 に 説 明 した もの に は,そ の顕 著 な特 色 と してFDIの. 増 大 と多 国籍 企 業(以 下MNEと. 略 記)に. よ る国 境 を超 え た生 産 ネ ッ トワー. クの 創 設 を指 摘 す る。 貿 易 の 自 由化 よ りも は るか に投 資 の 自 由化 は,開 発 途 上 国 や 先 進 国 の 経 済 を強 化 し,世 界 的 な 経 済 成 長 を 最 も強 力 に推 進 す る。 過 去20年 間 にわ た って 長 ら く 続 い た外 国 投 資 規 制 を多 数 の 国 が 取 り止 め る決 定 は,そ れ が 経 済 発 展 に相 当 貢 献 して きて い る こ との 証 左 で あ ろ う。 け れ ど も,MNEと. 投 資 受 入 国 と の 関 係 は決 して 平 坦 な 道 を た ど って き た わ け で は な. い。 投 資 受 入 国 は 自 らの 経 済 ・社 会 目標 を立 て,自 入 す る。 受 け 入 れ た結 果MNEが の 成 果 を踏 まえ て 次 にMNEに そ してMNEは MNEと. 導. 受 入 国 に ど の よ うな 影 響 を 及 ぼ した の か 。 受 入 国 は そ 対 す る規 制 や投 資 奨 励 策 な ど で ど の よ う に対 応 した の か。. そ の よ うな 受 入 国 の 対 応 策 に ど う対 応 した の か。 小 稿 で は,こ の よ うな. 受 入 国 間 の経 済 ・社 会 的 作 用 と い う視 点 か らまず 歴 史 的 な 変 遷 をみ て み る。. MNEと MNEの. らの 目標 に貢献 させ るべ くMNEを. 受 入 国 との 間 で 対 立 ・摩 擦 な ど が生 じた場 合,受 入 国 は 自国 管 轄 権 内 に あ る 子 会 社 に対 して 自国主 権 を行 使 して 自国 の法 律 な い し規 則 で コ ン トロー ル す る こ. と が で き る。 そ れ が う ま くい って い る な ら国 内 法 に よ りMNE問 あ るが,そ. う は い って い な い。 した が って,受 入 国 はFDIお. 国 的 対 応 以 外 の 方 法,つ. (1) UNCTAD, (2) UNCTAD, New York:. ま り投 資 条 約,租 税 協 定,あ. World Investment Report: World Investment Report: UN, 2008.. 題 は解 決 で き る は ず で よ びMNE問. 題 に 対 して1. る い は投 資 条 項 を 含 む 自 由貿 易 協 定. Promoting Linkages, New York: UN, 2007. Transnational Corporations and Infrastructure. Challenge,.

(3) 多国籍企業 と多国間投資協定(有 澤) や 経 済 協 力 協 定 よ うな2国 間 国 際 協 定,地 域 間 協 定,お み を 行 っ て き て い る が(3),次 に,そ. の1国. よ び多 国 間 協 定 な ど様 々な 取 り組. 的対 応 が どの よ うな 内 容 で あ った の か を検 討 す. る 。. 今 日で も増 加 傾 向 に あ る2国 間 国 際 協 定 を 無 視 す るわ けで はな いが,小 稿 で は,こ う し た取 り組 み の 中で 特 に多 国 間 に よ る対 応 に焦 点 を 当て,そ れ が な ぜ 必 要 な の か,ま た 経 済 協 力 開 発 機 構(以 下OECDと. 略 記)の 多 国 間 投 資 協 定(以 下MAI:MultilateralAgree一. mentonInvestmentと. 略 記)失. 敗 の 事 例 か らMNEに. 関 す る多 国 間 協 定 の成 立 が 困 難. な 理 由 を 明 らか に し,結 論 に代 え て 最 後 に多 国 間FDI/MNE管. 理 体 制 成 立 の条 件 を 探 っ. て み る。. 1.MNEと. MNEと. 受入 国 間 の相 互 作 用 の変 遷. 受 入 国 との関 係 につ い て はバ ー ノ ンの著 書 名(4)だけ で大 まか に はそ れ を 推 察 で. き る けれ ど も,相 互 作 用 と い う視 点 か らその 関 係 を取 り上 げ た ダニ ン グ と ラ ン ダ ンの 見 解 を 見 て み よ う(5)。彼 ら に よ る と,過. 去40年. を3段. 階 に 分 けて い る。 それ ぞ れ正 確 な 時 期 は. 企 業 と国 の 間 で 多 少 ず れ が 存 在 す る けれ ど も,一 般 に,第1段. 階 が1950年 代 初 期 か ら1960. 年 代 中 期 ま で,第2段. して 第3段. 階 が1960年. 代 中 期 か ら1970年 代 後 期,そ. (3)ド ナ ル ド ソ ン は こ れ ら の 取 り 組 み を 企 業 間,政 リー に 分 類 す る 。 「企 業 間 」 と は,業 界,企 業,お て い るNGO・NPOは. 階 が1970年. 代後. 府 間,協 調 的,お よ び 世 界 組 織 の4つ の カテ ゴ よ び 消 費 者 団 体(今 日無 視 で きな い 存 在 とな っ. こ の カ テ ゴ リー に 入 る で あ ろ う)に. よ る もの で 国 際 ビ ジネ スに 対 す る様 々. な 私 的 団 体 の 行 動 憲 章 ・規 約 を 言 う 。 例 と し て 南 ア フ リ カ に お け る 企 業 内 部 の ア パ ル トヘ イ トを な くす 目 的 を も っ た 倫 理 基 準 で あ る サ リバ ン 原 則,医 お よ び 世 界 知 的 財 産 権 機 関(WIPO)に る 。 「政 府 間 」 の 取 り 組 み と は,多 GATT(現. 在 はWTO),IMFお. 薬 品 と た ば こ に 関 す る 世 界 保 健 機 関 憲 章,. よ る 工 業 特 許 と商 標 保 護 に 関 す る パ リ 協 定 の 修 正 を 挙 げ 数 国 間 あ る い は2国. 間 で の 特 定 目 的 を も っ た も の で,例. よ び 世 界 銀 行 を 指 摘 す る 。 「協 調 的 」 と は,国. と して. 際 通 商(貿. 易)を. 規 制 す る 双 務 協 定 で の 政 府 と 業 界 と の 協 調 を 言 い,当 時 のECや ア ンデ ス共 同 市 場 を 例 に 挙 げ る 。 最 後 に,「 世 界 組 織 」 に よ る 取 り組 み と は,い わ ゆ る グ ロ ー バ ル 組 織 に よ る も の で あ っ て, 国 際 司 法 裁 判 所,国 際 労 働 機 関(ILO),OECD,お よ び 様 々 な 国 連 機 関 を 示 す 。ThomasDonaldson,τ 加E'痂c∫(ガ1η ∫6rη α∫'oη01B麗∫'η8∬,N.Y.OxfordUniversityPress,1989,p。36。 (4)RaymondVernon,50v6r'η8'yα'Bαy'伽 ル1膨1"η α"oηα15ρrθα4(ゾ α&Eη 卿 卯565,Basic Book,1971.(雷 見 芳 浩 訳 『多 国 籍 企 業 の 新 展 開 追 い つ め ら れ る 国 家 主 権 」,ダ イ ヤ モ ン ド社, 1973年),3∫o〃. ηov6r'加1臨Z"η. α'∫oη αZ3"加R6α1∫. ∬ 配 ∫,HarvardUniversityPress,1977.(古. 川 公 成 「多 国 籍 企 業 を 襲 う 嵐 政 治 ・経 済 的 緊 張 の 原 因 は な に か 』 ダ イ ア モ ン ド社,1978年), お よ び1η 焼6H曜r∫c侃 ∼∫Ey6"〃67ro酌Z64Pro∫P6c∫ ∫(ザル1配〃∫ηα∫∫oη α1Eη ∫6η フr'∫ θ∫,HarvardUniversityPress,1998.(未 ン グ らの し 新 婦)で. 邦 訳)で. あ る。 最 初 の サ ブ タ イ トル 「追 い つ め ら れ る 国 家 主 権 」 は ダ ニ. 「ハ ネ ム ー ン 段 階 」 に 合 致 し な い と 思 わ れ る か も し れ な い が,MNEが. 強 い 新 郎(な. い. ど ち らか が 我 慢 しな が ら将 来 の 対 立 の 芽 が 育 まれ つ つ あ る段 階 と も考 え られ よ う。 最. 後 の 著 書 名 は 「台 風 の 目. 多 国 籍 企 業 に と っ て 厄 介 な 見 通 し」 と で も訳 せ よ う か,MNEと. 受. 入 国 の 関 係 は 台 風 の 目 の 中 に あ り,今 の と こ ろ は 穏 や か な 関 係 に あ る 。 現 状 は こ の よ う な 関 係 に あ る が,時 が 過 ぎて い った ん 目か ら外 れ る と厳 しい 関 係 にな るで あ ろ う とい う主 旨で あ る。 (5)JohnH。DunningandSarisnnaM.Lundun,協 伽 o配y(2ed.),UKandNorthampton,M.A.USA:EdwardElger,2008,pp.674-681.. 一41(889)一. α'lo副E鷹. ηπ∫ ∫θ∫侃4伽. αoわ α1Ecoη..

(4) 第7巻. 第2・3号. 期 か ら現 在 ま で と さ れ て い る 。 各 段 階 の 特 徴 か ら そ れ ぞ れ を 「ハ ネ ム ー ン」,「対 立 」,お よ び 「和 解 」 段 階 と 呼 ぶ 。. 1.1ハ. ネ ム ー ン段 階. どの よ うな パ ー トナー シ ップ も,特 に新 婚 の 場 合,相 手 が 何 を 与 え て くれ るの か と い う 大 きな 期 待 を も って パ ー トナ ー 同士 が ス タ ー トを 切 る。 確 か にそ こ に はお 互 いの 長 所 を 過 大 視 し,短 所 を 見逃 す 傾 向 が あ る。 ま さ し くこの 点 は 第2次 大 戦 後初 期 のMNEと. それが. 事 業 活 動 す る国 の 政 府 との 相 互 作 用 で あ っ た。 新 興 開 発 途 上 国 や 戦 争 で 荒 廃 した 西 欧 諸 国 の 観 点 か らす る と,外 国 企 業(特. に米 国 企 業)の 資 本,技 術,組 織 能 力,経 営 スキ ル お よ. び企 業 家 精 神 は切 望 され て い た。 それ ら資 産 や 能 力 は 自国 市 場 の 未 成 熟 や 荒 廃 の た め直 接 投 資 の 流 入 に よ る しか 獲 得 で きな か っ た。 数 年 後,米 国 の 経 済 ・技 術 的 ヘ ゲ モニ ー は絶 頂 期 を迎 え,ち. ょう ど英 国 企 業 が1世 紀 半 にわ た って 世 界 貿 易 の 大 半 を 支 配 した よ う に,米. 国 企 業 は国 際 生 産 を 支 配 した。 当時,多. くの 資 産 や 市 場 を 保 持 して い た の はMNEだ. けで あ っ たの で,受 入 国 に は選 択. 権 が なか っ た けれ ど も,一 見 した と こ ろで は,米 系 外 国 投 資 家 と受 入 国 と は完 壁 な パ ー ト ナ ー シ ップ を保 って い る よ う に思 え た。 しか しこの こ とが パ ー トナー シ ップ に対 す る最 初 の 不 満 の 徴 候 が 資 産 と市 場 の コ ン トロ ール と い う形 で 現 れ て きた 。 そ れ に もか か わ らず, 1950年 代 か ら1960年 代 初 期 は全 て が 甘 美 で 幸 福 感 に あふ れ た時 代 で あ った 。 こ の 段 階 の 他 の 特 徴 と して 指 摘 しな け れ ば な ら な い の は,今 MNEの. 日 と比 べ て そ の 当 時 の. ほ とん どが 比 較 的小 規 模 で あ り,外 国 へ の 関与 も少 な か った こ とで あ る。 大 多 数. の 製 造 関 連 子 会 社 も互 い に独 立 して 行 動 し,輸 出入 の 代 替 事 業 と して 設 立 され て お り,親 会 社 の ミニーレプ リカ で あ った 。 資 源 関 連 産 業 部 門 に お い て の み,外 国 企 業 が 世 界 製 品 や 販 売 命 令 の よ うな もの を展 開 し,企 業 内貿 易 に携 わ った 。 この 段 階 に お け るFDIの. 影響. 力 は,そ れ が 受 入 国 に提 供 した資 源 ・能 力 に あ っ た。. 1.2対. 立段 階. 新 婚 が ハ ネ ム ー ン 段 階 を 終 え,生. 活 が 確 実 に 安 定 す る に つ れ,こ. れ ま で以 上 にパ ー ト. ナ ー は 互 い が 相 手 の 望 み や 向 上 心 を 実 際 に ど れ ほ ど 満 足 さ せ て くれ て い る か を 評 価 で き る よ う に な る 。 つ ま り,パ. ー トナ ー 同 士 が 相 手 の 長 所 と 短 所,お. よ び パ ー トナ ー 関 係 の ベ ネ. フ ィ ッ トと コ ス トに 気 付 い て く る 。 1960年 代 か ら1970年 代 初 期 に か け て 国 際 経 済 環 境 に お い て 最 も 広 い 範 囲 で 起 こ っ た 変 化 一42(890)一.

(5) 多国籍企業 と多国間投資協定(有 澤) は,政 治 的 独 立 を果 た した開 発 途 上 国 の 増 大,経 済 目標 の 適 切 な 認 定,お. よ び制 度 機 構 や. 組 織 技 術 を完 備 して い る と い う政 府 の 強 い 自信 か ら生 まれ て い る。 受 入 国 の この 新 しい 自 己認 識 や 自 己信 念 はMNEが. 多 くの 国 で 基 礎 を 固 め た とき に現. れ て き た。 基 本 的 ニ ー ズの 充 足,自 立 の 促 進,国 際 収 支 の 改 善,お. よ び技 術 水 準 の 向 上 な. ど開 発 目標 に重 点 が 移 され 始 め,投 資 の 受 け入 れ に は これ らの 開 発 目標 に貢 献 す る条 件 で 評 価 され る よ う にな っ た。 驚 くべ き こ とで はな いが,ど の 方 向 か ら見 て も 目標 を 達 成 して い る とは 思 え な か っ た。 政 府 が 徐 々 に 認 識 して き た の は,経 済 開発 の た め に 実 行 さ れ た MNEの. 貢 献 が 常 に政 府 の期 待 した,あ. るい は最 高 に必 要 と した 貢献 で はな い と い う こ と. で あ る。 確 か に,外 国 企 業 は技 術 や マネ ジ メ ン ト能 力 を 提 供 す る けれ ど も,そ れ ら は常 に 適 正 な もの で あ っ たの か,あ. る い は公 正 価 格 で あ っ たの か ど うか 疑 問 が 残 る。. こ の 時 代 に は,巨 大 企 業 の マ ネ ジ メ ン ト ・ス タ イ ル や 組 織 戦 略 に変 化 が 生 じて い た 。 MNEの. 事 業 活 動 が 地 理 的 に広 が る に つ れ,そ れ ら企 業 は よ り集 権 的 で,多 面 的 な コ ン ト. ロ ール 構 造 を用 い る傾 向 が 強 くな っ た。 同時 に,資 本 投 資,製 品 範 囲,原 材 料 の 調 達,お よ び販 売 市 場 に関 す る決 定 は,地 域 や グ ロー バ ル な 観 点 か ら行 わ れ る よ う にな った 。 また 製品の国際標準化や生産工程 ・ 市 場 の特 化 へ と進 む傾 向 に よ って,品 質 管 理,生 産 の継 続, 財 産 権 の保 護,お. よ び規 模 と範 囲 の経 済 性 を利 用 す る 関心 が 高 あ られ た。 これ らがMNE. の 事 業 活 動 の 統 合 化 され た ガバ ナ ン スを 促 進 したの で あ る。 1960年 代 に は国 際 経 済 は順 調 に発 展 して い た けれ ど も,1970年 が2つ 生 じた。 ドル の 切 り下 げ とOPECに. 代 にな る と大 きな 出来 事. よ る原 油 価 格 の 高 騰 で あ る。 これ らの 出 来 事. は開 発 途 上 国 と先 進 国 との 所 得 格 差 を 是 正 す る 目的 を も っ た既 存 経 済 秩 序 の 無 力 とや る気 の 無 さ に対 す る途 上 国 の 挫 折 感 の 高 ま りと と も に,南 北 間 が 対 立 す る厳 しい時 代 の 引 き金 とな り,国 際 ビジネ ス に と って 快 適 な 環 境 で はな か っ た。 1970年 代 前 半,MNEは. 監 視 と攻 撃 に さ ら され た。MNEは,経. 済 開発 に受 け入 れ られ. な い行 動 や 公 正 で な い貢 献 と い う理 由だ けで な く,そ れ ら企 業 が も はや 受 け入 れ る こ との で きな い国 際 経 済 体 制 の 産 物 と して 見 な され た た め に広 く非 難 され た 。 1970年 代 は多 数 の 受 入 国 とMNEと. の 「真 昼 」の 対 決 で あ った 。 前 者 が 後 者 の 行 動 を 左. 右 す る手 段 は よ く知 られ て お り,す で に 歴 史 の 一 部 と な っ て い る。 これ ら の 手 段 は, MNE資. 産 の完 全 収 用 か ら,新 規 投 資 の基 準 や方 法 な どの制 約,そ. す る全 般 的 業 績 要 求 の 規 定,さ. して 外 資 系 子 会 社 に対. らに受 入 国 企 業 が 世 界 市 場 で 効 率 的 に競 争 す るた めの 支 援. まで 広 範 囲 に ま たが って い る。 数 年 間,FDIの. 流 入 が 提 起 した新 た な 難 題 と チ ャ ン ス と い. う観 点 か ら受 入 国 政 府 の 大 多 数 は経 済 戦 略 ・政 策 を 修 正 す る必 要 性 を 認 めな か った の で あ 一43(891)一.

(6) 第7巻. 第2・3号. る。 MNEの. 対 応 は予 測 可 能 で あ った。MNEの. 海 外 子 会 社 が す で に現 地 経 済 に 完 全 に組 み. 込 ま れ て お り(た とえ ば,古 い 時代 の 輸 入 代 替 事 業),依. 然 と して 経 済 利 益 を獲 得 して い. る場 合 に は,こ れ ら海 外 子 会 社 は受 入 国 の 干 渉 に よ る損 害 に う ま く対 応 した 。 しか し新 投 資 に つ い て は 慎 重 に 決 定 して い た よ う で あ る。 そ の他 の 場 合 で は,MNEが. もつ 選 択 肢. は,技 術 や 能 力 移 転 の 制 限 か ら移 転 価 格 操 作 に よ る所 得 流 出 に対 す る規 制 の 回 避,ま た 他 国 へ の 生 産 拠 点 の 移 転(あ. る い は移 転 の 脅 し)か ら現 地 政 府 の 厚 遇 を 得 る 目的 の 経 済 的 ・. 政 治 的 影 響 力 の 行 使 まで 多 岐 にわ た る。 受 入 国 を さ らに激 怒 させ る この 種 の 対 応 に お いて,特 に同一 事 業 内 のMNEを. 獲 得 しよ. う と競 争 す る た め,受 入 国 は無 理 矢 理 高 い費 用 を 払 わ され た。 この よ うな 理 由か ら,国 家 は地 域 的 に一 致 した行 動 を と るか,あ. る い は どの よ う にす れ ば 自国 の 経 済 開 発 や 再 構築 プ. ロ セ スで 流 入 資 本 を最 善 利 用 で き るの か ど うか と い う問 題 に関 し国 連 多 国 籍 企 業 セ ン ター (UNCTC),国. 連 貿 易 開 発 会 議(以 下UNCTADと. 略記),国. 連 工 業 開 発 機 関(UNIDO). お よ び世 界 銀 行 な ど国 際 機 関 の 助 言 と指 導 を得 る こ とで 交 渉 力 の 強 化 に努 めた 。. 1.3和. 解段 階. 1970年 代 後 半 お よ び1980年 代 前 半 に お いて,各 国 政 府 は過 去10年 間 の 経 験 か ら学 習 し, 外 国 資 本 の 貢 献 を う ま く利 用 す る よ う政 策 を 洗 練 化,修 正 お よ び拡 張 した 。 国 際 レベ ル で,関 心 はMNEに. 対 す る行 動 規 約 や ガ イ ドラ イ ンお よ びMNE活. ロ ー の改 善 に 集 中 した。1960年 代 と1970年 代 初 期 がFDIの. 動 に関す る情報 フ. 純 ベ ネ フ ィ ッ トに幻 滅 を 感 じ. させ た年 代 で あ っ たな ら,そ れ に続 く20年 間 は現 地 政 府 の 組 織 戦 略,制 度 機 構 お よ び経 済 政 策 が 確 か にFDIに. 不 満 を も た ら した年 代 で あ った と も いえ る。. 学 習 の 成 果 は,経 済 成 長 に必 要 な 資 源 と能 力 の 獲 得,お よびMNEの. 行 動 を 考 慮 した 適. 正 な制 度 と建 設 的 マ ク ロ経 済 ・組 織 政 策 の 導 入 と い う選 択 方 法 を堅 実 に評 価 す る こ とで あ っ た。MNEは,事. 業 活 動 を行 う個 々 の 国 あ るい は あ らゆ る国 に と って最 大 の 社 会 ・文. 化 的 ベ ネ フ ィ ッ トに グ ロ ーバ ル 経 営 戦 略 が 寄 与 して いな い事 実 を 理 解 す る よ う にな った 。 感 受 性 が強 く良 質 の 訓 練 を受 け た 経 営 者 や公 務 員 が 現 れ,交 渉 の 重 点 はFDIか. ら短 期 的. な経 済 的 利 益 を 獲 得 す る こ とで はな く,当 事 者 間 相 互 の 利 益 の 獲 得 お よ び長 期 的 関 係 の 維 持 と い う道 に移 って き た。 国 とMNEと 系MNEに. の 関係 に は4つ の変 化 が見 られ る。 第1に,1960年. 代 で は米 系 並 び に欧 州. 主 に 独 占 さ れ て い た 多 くの 資 産 や 専 門 能 力 の 源 泉 が 拡 散 した こ とで あ る。 -44(892)一.

(7) 多国籍企業 と多国間投資協定(有 澤) 様 々な 技 術,経 営 ス キ ル,お よ び資 本 な どの市 場 は次 第 に不 完 全 度 が低 くな って き て い る。 した が って,そ れ らを 内部 化 す る誘 因 が減 少 す る。 第2に,過. 去30年 に わ た って,MNE. が 提 供 す る はず の ベ ネ フ ィ ッ トに対 して 各 国 間 で か な りの 競 争 が あ った こ とで あ る。 第3 に,小 規模 先進 国 や 開発 途 上 国 のFDIが. 次 第 に増 加 して き た こ と で あ る。 そ の結 果,見 え. ざ る資 産(6)の取 引 は,こ れ ら資 産 を 具 現 化 した 商 品 の 取 引 の よ う にな って きた 。 最 後 に, 国 際 的 な戦 略 提 携 や 出資 を伴 わ な い事 業 の激 増 に もか か わ らず,MNEの. 大多数が国境を. 超 え る事 業 活 動 に対 して 地 域 的 な い しグ ロー バ ル に統 合 した戦 略 を 採 用 して い る こ とで あ る。 過 去20年 か ら30年 の 間 に生 じた 出来 事 に は政 治 的 側 面 が 関 わ って い る。 例 外 は あ る もの の,1980年. 代 と1990年 代 に は,国 内政 治 が 著 し く右 傾 化 して,市 場 志 向 的 制 度 や 政 策 が 選. 好 され る よ う にな っ た。 同時 に,社 会 的 優 先 順 位 も変 化 した。 た とえ ば,今 や 安 全 性 問 題 や 環 境 保 護 は多 くの 国 で 政 治 政 策 の 上 位 を 占 め る よ う にな って い る。 こ こ20年 あ ま りで 急 速 に成 長 した国 は直 接 投 資 の 受 け入 れ に最 も好 意 的 で あ り,何 れ の 国 も経 済 的 な 相 互 ベ ネ フ ィ ッ トに価 値 を置 く国 で あ っ た。 要 す る に,多. くの 国 が 自前 のMNEを. 持 ち始 め る と,. 投 資 流 入 も経 済 政 策 全 体 の 一 部 と して 考 え る よ う にな っ たの で あ る。 どの 国 も一 方 が 他 方 の 幸 福 に対 して 貢 献 した り,あ る い は しな か った りす る条 件 を 知 っ て い る。 ま た どの 国 も相 互 献 身,信 頼 お よ び寛 容 が あ らゆ る協 調 の 成 功 に大 きな 役 割 を 演 じる こ と を も認 めて い る。 各 国 は開 発 プ ロセ スの 一 部 と して 制 度 向 上 の 重 要 性 を 受 け入 れ て きて い る。 それ に もか か わ らず,経 済 ・社 会 目標 お よ び 目標 達 成 能 力 が2つ の 当 事 者 間 で 異 な って い るの で,利 害 の 認 識 ・不 一 致 で 若 干 の 相 違 が 残 る の は避 け られ な い。 さ ら に,あ る国 の 卓 越 した競 争 優 位 が 永 遠 に続 くこ と はな い。 歴 史 は国 民 国 家 の 経 済 パ ワー 浮 沈 の 事 例 で 満 た され て い る。 同様 に,MNEの. 1.421世. 競 争 優 位 に して も然 りで あ る。. 紀 の投 資環 境. 21世 紀 の 始 ま り も和 解 段 階 の 基 本 方 向 を変 え る もの で は な い。1990年 代 は 富 の 創 造 で MNEの. 役 割 に 重 き を置 い て い た 。 多 くの 開発 途 上 国 でFDIは. 経 済 の 再 構 築 ・成 長 を 促. 進,活 性 化 す る望 ま しい 手 段 と評 価 され た 。 先 進 国 で は,高 付 加価 値 活動 へ のMNEの 中が 地 域 開発 手 段 と してFDI利 (6)ダ. 用 の新 しい 取 り組 み に結 び つ い て きて い る。 あ る産 業 や. ニ ン グ と ラ ン ダ ン は 見 え ざ る 資 産 と し て 以 下 を 指 摘 す る 。 企 業 の 経 営 資 源(資. 品 イ ノ ベ ー シ ョ ン,生 知 識,マ. 産 管 理,組. ー ケ テ ィ ン グ,財. 務,そ. 集. 織 と マ ー ケ テ ィ ン グ 構 造,革 の 他 の 蓄 積 さ れ た 経 験,お. 削 減 す る 能 力 。JohnH.DunningandSarisnnaM.Lundun,oρ.cな,p.101. -45(893)一. 新 能 力,体. 産)構. 造,製. 系 的 に ま とめ られ な い. よ び 企 業 内 ・企 業 間 の 取 引 コ ス トを.

(8) 第7巻 国 で はFDI誘. 第2・3号. 致 競 争 が 起 こ り,地 域 で は あ か ら さ ま な税 金 と補 助 金 の 組 み合 わ せ お よ び. 好 意 的 待 遇 を公 然 と確 約 して 互 い に張 り合 って い た。 ほ と ん どがM&Aを. 通 じて行 わ れ る資 産 拡 大 型FDIの. 増 加 は 現 地 政 府 に新 た な 問 題 を. 提 起 した。 この よ うな 投 資 は現 地 雇 用 の 安 定 化 お よ び技 術 移 転 の 促 進 に役 立 つ けれ ど も, 外 国 側 へ の 所 有 移 転 は長 期 的 に は不 安 定 性 を生 む で あ ろ う。 その 上,投 資 がMNEに. よっ. て 実 行 され る事 業 活 動 の う ち1部 分 だ けを 担 って い る事 実 が 物 語 るの は,現 地 政 府 も また 現 地 土 着 企 業 をMNEネ. ッ トワ ー ク に うま く組 み入 れ る 目的 で,い か に して 現 地 資 源 と能. 力 を 向上 させ れ ば よ いの か を 検 討 す る必 要 性 が 次 第 に高 ま って きて い る こ とで あ る。 この 組 み 入 れ は投 資 だ けで な く,長 期 契 約 関 係 の 締 結 で も可 能 で あ る。 こ の 時 代 の 受 入 国 の ジ レ ンマ はMNEが. も た らす 多 くの資 源 と能 力 を最 も必 要 とす る. 国 や 地 域 が 投 資 企 業 に と って 最 も魅 力 的 で な い こ とで あ る。 所 得 を 生 み 出す 資 産 ・制 度 を 構 築 す る必 要 が あ る国 で は,FDIは. 成 長 と開 発 の 前 提 条 件 で あ る。 同 時 に,経 済 成 長 と経. 済 開 発 は互 い に影 響 し合 い,両 者 はFDI誘. 致 の 前 提 条 件 で あ る と指 摘 され る。. 十 分 に役 割 を果 た して い る司 法 な い し法 の 支 配 と い う形 式 の 下 で の 優 れ た 統 治,財 産 権 の 保 護 お よ び競 争 促 進 はFDIが. 流 入 す る た め の環 境 作 りで最 も重 要 に な って い る。 他 方,. 賄 賂 の 横 行 と外 国 投 資 を妨 げ る よ う に作 用 す る制 度 の 悪 質 さ と外 資 流 入 の 低 迷 との 関 係 も 一 致 す る こ とが 明 らか に され て い る。 こ う した展 開 は,外 国 資 本 お よ び 「ネ ッ トワー ク に統 合 化 され て い る子 会 社 」 を 誘 致 し た い地 方,地 域,お. よ び現 地 政 府 に2つ の 性 格 が 異 な る挑 戦 を 突 きつ け る。1つ. は限 界 化. の 問 題,あ るい は グ ロー バ ル 化 の本 流 か ら閉 め 出 され,投 資 企 業 に無 視 さ れ る 問題 で あ る。 2つ め は,ネ. ッ トワ ー ク に完 全 に統 合 され て いな い海 外 子 会 社 が 撤 退 候 補 にな るか も しれ. な い。 つ ま り,低 コ ス ト ・独 立 自営 生 産 の 永 続 化 と い う理 由か ら発 生 す る流 入 資 本 の 質 の 問 題 で あ る。 さ らに,MNE活. 動 か ら期 待 され る地 方 や地 域 へ の 波及 効 果 は,受 入 国 が 外. 国 投 資 家 か ら現 地 土 着 企 業 へ 技 術 や 経 営 能 力 を 移 転 で き る よ う に人 的 資 源,物 的 イ ン フ ラ お よ び制 度 を整 備 して い る国 だ けで 生 じて い る。 端 的 に言 う と,グ ロ ーバ ル 化 の ベ ネ フ ィ ッ トを 感 じたハ ネ ムー ン期 間 以 後 に,新 た な 現 実 が 次 に述 べ る要 因 に よ り生 まれ て い る こ とが 確 認 で き る。 第1に,グ. ロー バ ル 化 の プ ロ. セ ス が 必 ず し も広 範 囲 に広 が ら な い と い う事 実 に対 す る不 満 で あ る。 た だ こ れ はMNE の 行 為 と い う よ りも,受 入 国 の 欠 陥 が あ る政 策 ・制 度 や 開 発 水 準 ・経 済 構造 を 原 因 とす る もの が 多 い。 第2に,文. 化 ・社 会 分 野 の 範 疇 で あ り,価 値 シ ス テ ムの 相 違 を 反 映 す る現 地. 化 問 題(7)は統 合 の ベ ネ フ ィ ッ トと 同様 に位 置 づ けな けれ ばな らな い。 第3に,イ 一46(894)一. ン ドや 中.

(9) 多国籍企業 と多国間投資協定(有 澤) 国 の よ うなFDIの. 流 出 ・流 入 に関 す る制 度 や 政 策 に現 れ る そ の 国 特 有 の 国 家 特 殊 的 特 性. を も っ た 新 プ レー ヤ ー の 出 現 は 投 資 競 争 を 激 化 し て い る。 第4に,FDIの MNEシ. み な らず. ス テ ム に対 して も受 入 国 の魅 力 を評 価 す る必 要 性 が 高 ま った こ とで あ る。 魅 力 を. 高 め る に は国 内環 境 の 整 備 ・向 上 が 必 要 で あ る けれ ど も,実 際 に投 資 を 引 き寄 せ られ るか ど うか は不 明 で あ る。 第5に,特. にサ ー ビス産 業 で,取 引 コ ス トの 削 減 や 特 定 活 動 分 野 の. 域 外 調 達 の 増 加 は本 国 と受 入 国 に 脅 威 と機 会 を生 み 続 け て い る。 第6に,各. 国政府 が グ. ロ ーバ ル 化 か ら利 益 を 得 る 目的 で あ るな らば,政 府 は ゲー ムの ル ー ル を 遵 守 して,自. らが. 努 力 し独 自の 比 較 優 位 を 確 立 し,こ の 目的 達 成 の た め制 度 や 政 策 を 調 整 す べ きで あ る と い う認 識 が 政 府 に広 ま って き た こ とで あ る。. 2.受. UNCTADが. 実 施 したMNEの. 入 国 の 対FDI政. 策. 参 入 や 事 業 活 動 を左 右 す る 国 内 法 お よ び 規 制 改 正 の 調. 査 に よれ ば,各 国 の 政 策 立 案 者 が 投 資 環 境 の 魅 力 向 上 に依 然 と して 取 り組 ん で い る と して い る。 表1に 示 す よ う に,2007年. で は,ほ ぼ100件 近 くのFDI関. お り,こ の うち 受 入 国 の 経 営 環 境 をFDIに あ っ た。 しか しFDIに. 連の政策変更が行われて. と って 好 ま し くさせ る 目的 を も った の が74件. 好 意 的 で な い規 制 に 改 定 す る割 合 も こ こ数 年 間 に わ た って増 加 し. て い るの も事 実 で あ る(8)。 これ まで 受 入 国 はMNEに らがFDIの. 対 して様 々 な硬 軟 両 方 の対 応 策 を駆 使 して き て い る が,そ れ. 流 入 に か な り影 響 を及 ぼ す の は確 か で あ る。 ダ ニ ン グ と ラ ンダ ンは そ れ ら対. 応 策 を4つ の 政 策 分 野 に分 類 す る。 第1は,外 で あ る。 第2は,外. 国 企 業 の 参 入 な い し操 業 条 件 に関 す る分 野. 国 企 業 に要 望 な い し期 待 され る活 動 を 要 求 す る分 野 で あ る。 第3は,. 外 国 投 資 家 の 撤 退 に関 す る分 野 で あ り,そ して 最 後 の 政 策 分 野 は前 期 の3分 野 に も関 連 し て い るが,こ れ ら分 野 と違 って,直 接 投 資 を 誘 致 す る た め最 も効 率 の 良 い方 法 に焦 点 を 当 て る もの で あ る(9)。. (7)MNEが 携 わ る 国際 経 営 で は現 地 化 は経 営 を い か に して現 地 に適 応 させ て い くの か とい う重 要 課 題 の1つ で あ る。 統 合 化 が 親 会 社 の 集 権 的 管 理 とす れ ば,現 地 化 は本 国 と は異 な る現 地 の 社 会 ・文 化 さ ら に は政 治 ・経 済 な どを 含 め た 現 地 環 境 条 件(分 散 化 要 因 と もい う)に 経 営 を 適 応 さ せ,海 外 子 会 社 に権 限 を 委 譲 した 分 権 的 管 理 とい え る。 国 際 経 営 で は そ の バ ラ ン スを と るの が 重 要 だ とす る。 (8)UNCTAD,W∂rJ41ηv63吻8η. ∫R8ρor,2008。. (9)JohnH.DunningandSarisnnaM。Lundun,oρ.d'.,pp.683-688..

(10) 第7巻 表11992年. 第2・3号. か ら2007年 まで の 国 内 規 制 策 の 改 定. 項目 改定国数 規制改定数 好意的改定 非好意的改定 出 所:UNCTAD,W択,2008,p.8.. 2.1参. 入 条件. 外 国 投 資 家 の 参 入 な い し操 業 条 件 は普 通5つ の 主 要 基 準 に基 づ いて い る。 第1に,認. 可. され る外 国 側 出資 比 率 で あ る。 完 全 な い し過 半 数 外 国 所 有 が 認 め られ るの か 。 あ る い は外 国 企 業 は 現 地 土 着 企 業 に少 数 参 加 しか で きな い の か。 第2基. 準 はMNEが. 関 与 す る付 加. 価 値 活 動 の 種 類 に関 連 す る。 過 去 に お いて,国 家 当局 の 中 に は外 国 投 資 家 に開 放 され る事 業 だ けで な く,市 場 供 給 を許 され た事 業 の 産 出比 率 まで 厳 し く制 限 す る と こ ろ も あ った 。 最 も りベ ラル だ と見 な され た国 で す ら戦 略 的 ・文 化 的 に微 妙 な 部 門 に は多 くの 外 国 人 参 加 を認 め た が らな い。 ま た,外 国 投 資 家 は 政 府 の望 ま な い,あ. る い は 重 要 視 しな い商 品 や. サ ー ビス を生 産 す る部 門 で も歓 迎 され て は いな い。 第3基 準 は流 入 資 本 の 調 達 に関 連 す る。 外 資 に乏 しい国 は初 期 資 本 投 資 の 全 て が 外 国 資 本 家 に よ って 国 際 資 本 市 場 か ら調 達 す べ きで あ る と強 く要 求 す るで あ ろ う。 第4基 準 は受 入 国 の 国 内投 資 先 に関 連 す る。 積 極 的 に地 域 政 策 を 遂 行 す る国 は外 国 企 業 に対 して 後 進 地 域 あ る い は失 業 率 の 高 い地 域 で 事 業 を す る よ う に要 求 す るか,強 最 後 の基 準 はFDI参. い圧 力 を か けて くる。. 入 の 必 要 条 件 に 関 す る も の で あ り,広 い意 味 で の 投 資 優 遇 策 に入. る。 投 資 優 遇 策 に は付 録Aで 示 す よ う に様 々な 種 類 が あ る。 これ ら は免 税 期 間 や 課 税 率 の 軽 減 な ど財 政 的 優 遇 策,融 資 助 成 や 融 資 保 証 な ど他 の 財 務 的 優 遇 策,お. よ び イ ン フ ラ助 成. や 公 共 サ ー ビス な ど の優 遇 策 とい うふ うに広 範 囲 に ま た が って い る。MNEが. 完 全 に これ. ら優 遇 策 を手 に入 れ られ るか ど うか は その 子 会 社 の 実 績 次 第 で あ る けれ ど も,ほ とん どの 新 規 事 業 の 開 設 で は優 遇 策 の 恩 恵 を受 けて い る。 ま た,外 国 投 資 家 に提 供 され る金 融 的 優 遇 策 の 一 部 と して 財 政 的 優 遇 策 は,外 資 誘 致 の た めの 「招 致 競 争 」 の 高 ま りか ら近 年 とみ に注 目 を浴 びて きて い る。. 2.2業. 績要求. 業 績 に関 連 す る対 応 策 は あ らゆ る事 業 活 動 を 左 右 す るで あ ろ う。 そ れ ら に は資 本 財,原 材 料,中 間 財 お よ びサ ー ビスの 現 地 調 達,管 理 職 や 専 門 職 レベ ル の 募 集,雇 用 お よ び教 育 一48(896)一.

(11) 多国籍企業 と多国間投資協定(有 澤) 訓 練,産. 出高 に 占 め る輸 出比 率,外 国 子 会 社 が 行 う付 加 価 値 活 動 の タ イ プ,企 業 内価 格 操. 作 に従 って 提 供 され る情 報,移 転 技 術 の 使 用 に関 してMNEが. 付 け る条 件,そ. して 生 産 方. 法 に関 す る行 動 指 針 や 要 求 が 含 まれ る。 これ ら要 求 は追 加 的 輸 入 許 可 の 提 供 や 外 国 企 業 と の 競 争 保 護 な ど政 府 のMNE特 付 録Bに GATTウ. 別 待 遇 を め ぐる取 引 に もな る で あ ろ う。. 示 す よ う に,こ れ ら受 入 国 の 業 績 要 求 は各 国 間 の 国 際 投 資 協 定(IIA)や ル グ ア イ ・ラ ウ ン ドの貿 易 関 連 投 資 措 置(以 下TRIMと. て い る もの もあ るが,イ. 略 記)に. よ り禁 止 され. ン ドや ブ ラ ジル の よ う な一 部 の 有 力 開 発 途 上 国 はFDIが. 開 発 の イ ンパ ク トを 高 め る た め に,TRIM協. 及 ぼす. 定 の緩 和 を主 張 し,政 策 の 伸 縮 性 を 認 めて も. らお う と して い る。. 2.3撤. 退 条件. ほ とん どの 政 府 は新 規 企 業 参 入 時 に撤 退 条 件 を課 して は いな い。 けれ ど も,1960年. 代か. ら1970年 代 の 開 発 途 上 国 で は,政 府 が 流 入 資 本 を 現 地 土 着 企 業 の チ ュー ター の 役 割 を 負 う もの だ と見 な し,早 晩 チ ュー ター の 義 務 は成 功 裏 に達 成 され,チ. ュー ター は潔 く引 き揚 げ. るべ き だ と考 え るの が 一 般 的 で あ っ た。 この 条 件 は競 争 優 位 が 受 入 国 経 済 に最 も移 転 ・吸 収 され や す い標 準 化 技 術 に依 存 す る市 場 志 向 的MNEの. ケ ー ス で う ま くい くよ う で あ る。. ま た,こ の条 件 は豊 富 な資 源 に よ り受 入 国 が強 い交 渉 力 を持 つ資 源 一志 向FDIに 適 合 す る。 しか し,こ の よ うな条 件 は,MNE親. お いて も. 会 社 が排 他 的統 制 の維 持 を必 要 とす る グ. ロ ーバ ル あ る い は地 域 的 事 業 活 動 の ネ ッ トワ ー クの 一一 部 を 占 め る外 国 子 会 社 に課 す の は容 易 な こ とで はな いで あ ろ う⑩。. 2.4コ. ス ト効 率 の 良 いFDIの. 獲得. 政 策 措 置 の 第4グ ル ー プ は上 記3分. 野 に 関係 す るが,と. りわ けFDIの. 誘 致 に最 も効 率. の 良 い制 度 ・政策 の企 画 ・実 行 に 関連 す る もの で あ る。 実 際 に,こ の分 野 は優 遇 策,規 制, お よ び 業 績 要 求 と密 接 な 関 係 を もつ 。 政 府 とは,あ. る産 業 部 門 で は 外 国 企 業 を 制 限 しつ. つ,他 部 門 へ 投 資 誘 致 を 進 め る た め に租 税 上 の 優 遇 を 与 え た り,あ る い は ロー カル ・コ ン テ ンツの 要 求 と と も に輸 出補 助 金 を供 与 した りす る もの で あ る。 財 政 的 優 遇 策 は様 々な 形. ⑩. 撤 退 条 件 は1948年 の イ ン ドネ シア 外 資 法 や1950年 の イ ン ド外 資法 に み られ た が,そ れ が 注 目 さ れ た の は,1970年 に ア ンデ ス 諸 国 が 対 外 共 通 外 資 規 制 に フ ェー ド ・ア ウ ト条 項 と して盛 り込 ま れ た と きで あ っ た。 こ の時 代 に お い て す で に 撤 退 条 件 の 功 罪 につ い て議 論 さ れ て い る。次 を 参 照 。 拙 稿 「海 外 直 接 投 資 に お け る フ ェー ドア ウ ト規 制 の 問 題 点 」,「世 界 経 済 評 論 」,1978年3月,6472頁 。 -49(897)一.

(12) 第7巻 態 が あ るが,最. 第2・3号. も共 通 して い るの は免 税 期 間,投 資 助 成 金,加 速 減 価 償 却 の 認 可,雇 用 奨. 励 金,特 別 融 資 お よ び地 域 助 成 金 で あ る。 MNEに. 特 定 した 優 遇 策 はFDI立. い。 立 地 の 選 定 で はMNEそ. 地 に重 要 で は あ るが,そ れ らは最 大 の 決 定 因 で は な. れ 自体 の事 業 分 野 と これ に関 連 す る優 遇 策 が 重 視 され る。. これ ら優 遇 策 は,外 国 企 業 が 経 済 的 利 益 を見 込 め る多 数 の 立 地 場 所 か ら まだ 投 資 先 を 決 め て いな い と きや,外 国 企 業 が 業 績 要 求 に よ って 嫌 が らせ を 受 け る と き に効 力 を もつ で あ ろ う。 重 要 な の は,財 政 的 優 遇 策 そ の他 がFDIの. 増 加 を もた らす条 件 で あ るか ど うか を確 認. す る こ と,お よ び優 遇 策 か ら生 まれ るベ ネ フ ィ ッ トと機 会 費 用 を 評 価 す る こ とで あ る。 前 者 につ いて は,も. しも国 が 経 済 的 基 礎 的 条 件,つ. ま り要 素 費 用,効 率 的 制 度,お. よ び拡 充. した社 会 ・経 済 的 イ ン フ ラ に基 づ い た競 争 を 歪 め な い よ う に 関与 す る な らば,国. はFDI. 誘 致 の た め に追 加 的 あ る い は特 定 的 に優 遇 策 を提 供 す る必 要 はな い と,条 件 付 きな が ら優 遇 策 不 要 論 も あ る。 後 者 に つ い て は,現 金 補 助 や財 政 的 優 遇 策 な ど多 くのFDI誘. 引 策 は国 家 財 政 に 大 きな. 負 担 を 負 わ せ る こ とで あ る。 イ ン フ ラ投 資 や 優 遇 契 約 な どの 誘 引策 もMNE誘. 致 を 目的. と した公 的 援 助 を注 入 す る手 段 で あ る。 受 入 国 の 公 共 政 策 の 視 点 か らす れ ば,問 題 は この よ う な誘 引策 が 最 終 的 に清 算 さ れ る か ど うか とい う点 で あ る。 換 言 す れ ば,MNE誘. 致に. 払 った 金 額 が あ る 特 定 立 地 場 所 の 雇 用 拡 大 や 経 済 活 動 の 活 性 化 に よ って 生 ま れ た ベ ネ フ ィ ッ トで 返 済 され るか ど うか と い う こ とで あ る。. 3.多. 国 間 対 応. 受 入 国 政 府 は基 本 的 に受 入 国 自体 でMNEの. 事 業 活 動 に対 応 して き て い る。 しか し,1. 国 的 行 為 それ 自体 が 必 ず しも効 果 的 で な く,そ れ が 本 国 や 受 入 国 に最 適 な 結 果 を 生 む と は 限 らな い と い う見 解 が 高 ま っ て き た。 問 題 は構 造 的 的 な あ る い は1地 域 特 有 の 市 場 の 失 敗,ま. た はMNE活. 動 か ら生 み 出 さ れ る不 快 な社 会 ・経 済 的 影 響 と闘 うた めの 行 政 能 力 の. 欠 如 に関 係 す る。 こ う した無 能 さ を克 服 す る た め に は国 家 に よ る集 団 行 為 が 必 要 にな るで あ ろ う。 国 がMNEと. の取 引 で超 国家 的支 援 を必 要 とす る理 由 が3つ あ る。 第1は,MNEが. 造 した 付 加 価 値 額 の 一一 定 割 合 を 手 に入 れ る 能 力 あ る い はMNEの に左 右 す る能 力 の 欠 如 に示 され る よ う に,受 入 国 政 府 がMNEに 一50(898)一. 創. 行 動 パ タ ー ンを効 果 的 対 して弱 い交 渉 ・協 議 上.

(13) 多国籍企業 と多国間投資協定(有 澤) の 地 位 に あ る と認 識 して い る こ とで あ る。 交 渉 バ ラ ンス を 取 り戻 す 方 法 はMNEに. 対 し. て 一 致 した政 策 を遂 行 す る た め の 国家 の集 団化 に あ る。 ま た他 の方 法 と して は,MNEと その 関 連 会 社 の 目的,戦 略,お. よ び行 動 を監 視 ・影 響 す る制 度 的 枠 組 み に関 す る協 定 を 結. ぶ 取 り組 み が あ る。 第2の 理 由 は,必 要 とす るFDIを. 引 き つ け る の に十 分 な魅 力 が投 資 受 入 国 に な い こ と,. あ る い は 本 国 の制 度 や 政 策 が 対 外 投 資 を 妨 げ る こ とで あ る。 こ こで はMNE活. 動 に対す. 妨 害 を阻 止 す る た め政 府 間 の 取 り組 み が 正 当化 され るで あ ろ う。 第3に,あ. る国 の 政 策 が 他 国 の 政 策 の 妨 害 に よ って 台 無 しに され るか も しれ な い こ とで. あ る。 これ は受 入 国(ま た は本 国)の 対MNE戦. 略 が 本 国(ま た は受 入 国)の 最 大 の 利 益. と対 立 す る場 合 で あ る。 た とえ ば,受 入 国 が 課 した配 当金 送 金 制 限 は投 資 国 の 国 際 収 支 上 の 利 益 と対 立 す る。 悪 影 響 を こ うむ る国 は他 国 の 行 為 を しば しば無 力 にす る。 この よ うな 理 由か ら国 が 採 用 で き る超 国 家 的 行 為 は主 と して 以 下 の4形 態 を 指 摘 で き る で あ ろ う⑪。. 3.1集. 団 行為. 国 が 利 用 す る最 初 の手 段 はMNEに. 対 して優 位 な 状 況 に 立 つ た あ と,対MNE活. 統 一 政 策 の 立 案 の た め に集 団 行 動 を とる こ とで あ る。 この 構 想 はMNEが 争 させ る可 能 性 を少 な くす る だ け で な く,MNEが. 動に. 政 府 同士 を 競. あ る国 で独 占的地 位 を 利 用 しよ う とす. るな らば,こ の 行 為 が 他 国 で の 業 績 に悪 影 響 を 及 ぼす こ とを 理 解 させ る こ とで あ る。 た とえ ば,こ の 形 態 を と る国 々 と して,EU,NAFTA,お 地 域 な ど を指 摘 で き るが,こ. よ び ラ テ ン ア メ リカ 自 由貿 易. う した共 同行 為 が どの 程 度 成 功 す るか は,統 一 政 策 が 「単 独. 行 為 」に比 べ て今 ま で以 上 に利 益 の あ る結 果 が参 加 者 に生 ま れ る か ど うか に か か って い る。. 3.2政 MNEに. 府 へ の 支援 対 す る制 度 的対 応 と政 策 に お い て 国家 を支 援 す る第2の 手 段 は,経 済 運 営 や 管. 理 だ けで な く,特 定 的 にはMNE活. 動 に対 して 利 用 す る適 切 な マ ク ロ経 済 政 策 の 政 策 立 案. 者 の 教 育 ・訓 練 で あ る。 こ こ30年 間 に,MNE関. 連 問題 に 関す る助 言 と指 針 は主 に2つ の 方 法 で 国 連 諸 機 関. 国 連 多 国 籍 企 業 セ ン ター(UNCTC)⑰,UNCTAD,UNIDO,国. (11) John H. Dunning ⑫1974年,UNCTCは. and Sarisnna. M. Lundun,. op. cit., pp. 707-712.. 国 連 経 済 社 会 理 事 会 の下 で 設 立 され,MNEの -51(899)一. 連 労 働 機 関(ILO),お. 行動憲章を策定. 1_. _. 1. ・. ,.

(14) 第7巻. よ び世 界 銀 行 やIMFに. 第2・3号. よ って 提 供 され る。 第1の 方 法 は,特 定 のMNE関. 連 問 題(移. 転 価 格 操 作,技 術 移 転,制 限的 商 慣 習,輸 出加 工 区 の経 済 性,投 資 優 遇 策,合 弁 事 業 経 営, 環 境 基 準 な ど)に 関 す る国 際 研 究 会 と い う形 態 を と る。 そ こで 専 門 家 や 関 係 者 が 直 接 投 資 の 流 入(な. い し流 出)の 影 響 お よ び これ に対 す る政 策 に関 す る知 識 と経 験 を 共 有 す るの で. あ る。 第2の 方 法 は個 々の コ ンサ ル タ ン トあ る い は コ ンサ ル タ ン ト ・チー ム に よ る もの で あ り,特 定 国 に訪 問 し,関 係 部 局 が 当該 国 政 府 に と って 重 要 な 事 柄 を 検 出 し,そ れ に対 処 す るの を支 援 す る。 この 例 と して は,外 資 法 や 規 制 の 準 備,技 術 移 転 の た めの 作 業 標 準 の 設 定,MNEを. 念 頭 に置 い た課 税 政 策 の見 直 し,お よ び外 国投 資 家 との 交 渉 にお け る行 政. 手 続 きな どが あ る。 正 しい情 報 と適 切 な 助 言 を提 供 す る こ の 多 国 間 行 為 は 満 足 の い く条 件 で のMNEの 力 ・資 源 の 獲 得,こ れ らの 賢 明 な 利 用,お. 能. よ び マ ク ロ経 済 政 策 の 新 た な 策 定 で,受 入 国 に. 大 きな 助 け とな って い る。. 3.3行. 動 規約 とガ イ ドラ イ ン. 多 国 間 行 為 が1国 的 行 為 を 支 援 す る こ と が で き る第3の. 方 法 は 国 際 的 に 受 け入 れ可 能. な 行 動 規 約 や ガ イ ドラ イ ンの 導 入 で あ る。 こ れ らは 各 国 政 府,地 NAFTA)や. 国 際 機 関(国 連,OECDな. 域(た. ど)に よ り作 成 され る。MNEを. ラ イ ン も商 工 会 議 所,経 営 者 団 体,お よび個 々のMNEに. と え ば,EU, 特 定 した ガ イ ド. よ り生 み 出 され て い る。 どの 規. 約 や ガ イ ドラ イ ン も正 規 の 法 的 拘 束 力 を持 ち合 わ して い な い が,企 業 と政 府 が 自 らの 経 済 ・政 治 的 利 害 に反 した活 動 と見 な す 場 合 を 除 き,そ れ らの 容 認 は規 定 を 遵 守 す る と い う 企 業 と政 府 の 意 思 を 表 して い る。 それ ら規 約 は,所 有,技 術 移 転,情 報 開 示 な ど広 範 囲 に ま たが って い る。 ガ イ ドラ イ ン の 基 礎 とな る原 則 は,受 入 国 が過 敏 にな る問題 をMNEに 事 業 をす る国 の 経 済 的 福 利 に合 致 した方 法 でMNEに. 知 らせ る こ と,お よびMNEが 行 動 す る よ う勧 告 す る こ と で あ る。. 現 在 最 も注 目 され るガ イ ドラ イ ン と して影 響 力 を もつ 行 動 規 約 がOECDと て 導 入 され て い る。 まずOECDで 盟 国 に よ り採 択 され,今. あ る。OECDの. 国連 に よ っ. 多 国 籍 企 業 ガ イ ドラ イ ン は1976年 に加. 日 まで 定 期 的 に更 改 され て きて い る。 経 済 ・社 会 的 進 歩 の た め に. \ 的 で あ った 。 結 局,1992年,行 動 憲 章 は 勧 告 形 式 を 主 張 す る先 進 国 とMNEと 国家を拘束すべ き とす る開 発 途 上 国 との 対 立 が も とで 採 択 され な か った,UNCTCは 現 在UNCTADに 吸収 され て い る。 そ の1部 局 で あ る投 資,技 術 お よ び企 業 開 発 委 員 会(DITE)は 多 くの情 報 の 収 集 ・分 析 作 業 を 続 け,開 発 途 上 国 がMNE行 動 か ら最 大 の ベ ネ フ ィ ッ トを 得 るた め に政 策 の 案 出 お よび 制 度 の 向 上 を 目的 と して そ れ ら途 上 国 を 支 援 して い る。 一52(900)一.

(15) 多国籍企業 と多国間投資協定(有 澤) 推 進 で き るMNEの. 「積極 的 貢献 」 を確 実 にす る た め,ガ イ ドラ イ ンに は人 権,持 続 的 経. 済 発 展,企 業 の 情 報 開 示,児 童 ・強 制 労 働 ・差 別 な ど労 働 お よ び労 使 関 係,環 境 保 護,賄 賂 の 禁 止,消 費 者 利 益 の 尊 重,技 術 や 科 学 知 識 移 転 の 促 進,競 争 政 策(共 謀 の な い競 争 的 経 営 環 境),税. 法 の尊 重 を 重 視 す る一 般 的政 策 が 記 述 さ れ て い る。 これ ら原 則 に従 わ な い. 場 合 の 対 応 は,本 社 所 在 国 政 府 がMNEに. ガ イ ドラ イ ンに合 致 しな い行 動 を改 め る よ う,. あ る い は止 め る よ う勧 告 す る非 公 式 活 動 に限 られ て い る。 次 は国 連 グ ロー バ ル ・コ ンパ ク トで あ る。 コ フ ィー ・ア ナ ン国 連 前 事 務 総 長 が 提 唱 し, 2000年 に発 足 した もの で あ る。 経 済 の グ ロ ーバ ル 化 に伴 って 企 業 の 社 会 的 責 任 を 追 求 す る 目 的 を も ち,国 連 事 務 総 長,企 業 経 営 者,業. 界 団 体,NGO,お. よび労 働組合 を交 えた. フ ォ ー ラ ム を開 催 して 企 業 へ の 提 案 や 助 言 を 行 って い る。 参 加 国 お よ び参 加 企 業 ・団 体 数 は,2004年. で は80力 国 を上 回 る国 か ら2,700で あ った もの が,2009年. に は130力 国以 上 の 国. か ら7,700を 越 え て い る(ち な み に 日本 の 参 加数 は95で あ る)⑱。 参 加 す るた め に は,人 権, 労 働 者 の 権 利 保 護,環 境 保 護,お. よ び賄 賂 や 腐 敗 行 為 の 防 止 と い う4大 原 則 に賛 同 しな か. れ ば な らな い。 しか しこの グ ロ ーバ ル ・コ ンパ ク トもOECDと. 同 じ く勧 告 的 ガ イ ドラ イ. ンで あ って,拘 束 力 を もた な い。 従 っ て 遵 守 しな い 企 業 に 対 して訴 訟 もで き な い の で あ る。 この 種 の 行 動 規 約 や ガ イ ドラ イ ンで は,企 業 に期 待 して い る点 が 明 確 にな るの で 初 心 者 の 外 国 投 資 家 や 中 小MNEへ NGOな. の 有 益 な情 報 が 提 供 され る。 ま た,経 済 界 の代 表,政 府,. ど関係 主 体 が参 加 す る行 動 規 約 に関 す る交 渉 で は,FDIに. 各当事者が何を期待 し. て い るか につ いて 価 値 あ る洞 察 力 を 生 み 出 して い る。 この よ うな 利 点 も あ る けれ ど も,次 の よ うな 欠 点 も存 在 す る。1つ. は,こ れ らガ イ ドラ イ ン は法 的 拘 束 力 が な い こ とで あ り,. 規 約 を 遵 守 す る か ど うか は企 業 の 自主 性 次 第 で あ る。 多 くのMNEお. よびその関連会 社. が 規 約 に 合 致 した 行 動 を と っ て い て も,自 社 の最 大 の利 害 に規 約 条 項 が対 立 す る とす れ ば,企 業 は いつ で も ど こで も それ らを 無 視 す る誘 惑 に駆 られ るで あ ろ う。 最 初 の 欠 点 に関 連 す るが,2つ. め は企 業 の 欺 隔 性 で あ る。 行 動 規 約 あ る い は原 則 の 非 拘 束 お よ び非 強 制 と. い う性 格 で は,そ れ らの 遵 守 を 表 明 す るだ けでMNEは. 加 入 で き,世 間 か ら社 会 的 責 任 を. 果 た して い る優 れ た企 業 と見 な され よ う。 それ は単 な る隠 れ 蓑 にす ぎな いか も しれ な い。 残 念 で あ るが,こ れ らガ イ ドラ イ ンに は企 業 の 欺 哺 行 為 を 防 止 す る影 響 力 が も って いな い よ うで あ る。. ⑱. 朝 日 新 聞,10月12日,朝. 刊。 R{∼rQ∩1、_.

(16) 第7巻 3.4国. 第2・3号. 際管 理 機 構. 多 国 間行 為 の 第4の. 方 法 はMNE活. 動 の 基 本 ル ー ル の設 定 し,そ して 国 内 当局 が この. ル ール に対 応 して い るか ど うか 監 視 す る国 際 管 理 機 構 を形 成 す る こ とで あ る。 これ は1960 年 代 以 来2国 間 ・多 国 間 貿 易 協 定 が 機 能 し続 けて い る事 例 に重 な る。 現 代 の グ ロー バ ル 経 済 に お い て大 き な 影 響 を及 ぼ して い るFDIを れ て い る。 た だ し最 初 のFDIに. 関 す る拘 束 的 多 国 間 ル ー ル が ウル グ ア イ ・ラ ウ ン ドの 終. 了 後 の1990年 代 に生 ま れ て い る。 後 でWTOに 定 で あ る。 この 協 定 はFDIと. 対 象 と した多 国 間 協 定 の 創 設 も必 要 に迫 ら. 組 み 入 れ られ た 前 述 のTRIMに. 関 す る協. 貿 易 との大 き な 関連 性 を初 め て公 式 に認 め た もの で あ った。. 実 際 に は,政 府 権 限 に新 規 の 制 限 を加 え られ る の が 気 に 入 らな い 多 数 の 開 発 途 上 国 の た め,こ の 協 定 の 政 府 行 為 に及 ぼ した影 響 力 は小 さか っ た。 こ れ ま で 国 際 管 理 機 構 の 創 設 を 目指 し た取 り組 み は,国 連 の 多 国 籍 企 業 行 動 規 約 や OECDのMAIが. あ った け れ ど も,前 者 は1992年 に国 連 で 非 採 択,そ. して 後 者 は1998年 に. 中止 と い う よ う に,何 れ も失 敗 に終 わ って い る。. 4.MAIの. MAI協. 議 は,FDIの. にOECDで. 失 敗 の理 由. よ り一一 層 の 拡 大 を 目指 した 自由化 を促 進 す る 目的 で,1995年. 初期. 開 始 さ れ た。 協 議 は1988年 末 に成 果 な く終 わ って しま った。 こ の失 敗 の理 由. と して,協 議 が 非 公 開 で あ っ た こ と,お よ び参 加 国 数 が 少 な か った こ とが 考 え られ る。 当 時 加 盟 国 の29力 国 に加 え,ア ル ゼ ン チ ン,ブ ラ ジル,チ 力国 で協 議 さ れ,多. リな どオ ー プ ン参 加 国8力 国 の37. くの 開 発 途 上 国 は協 議 か ら閉 め 出 さ れ る とい うOECDの. 議論 の進 め. 方 に も問 題 が あ っ た。 次 に,加 盟 国,特. に米 国 や フ ラ ンス の よ う な主 要 国 の政 府 レベ ル でMAIに. 対 す る関 心. が 薄 らいで き た こ とで あ る。 と い うの は,加 盟 国 が その 協 議 が 合 意 に達 す るの が 難 しい こ と に気 付 いて き たか らで あ る。 つ ま り,こ の 原 因 と考 え られ るの は,協 議 に含 まれ る問 題 領 域 が あ ま りに も広 す ぎ る点 で あ り,ま た 当初 の 目 的 が あ ま りに もぼ や け て き た点 で あ る。 ま た,政 府 自体 が 最 初 に示 され た方 法 に 自 らの 権 力 を結 び付 け る準 備 が で きて な く, 見 解 の 相 違 が 生 じた場 合 に妥 協 の た めの 基 準 す ら考 え て こな か った の で あ る。 最 後 に,FDIお NGOと. よ びMNE問. 略記)で あ る。MAIに. れ らはNGOに. 題 で 新 た に主 要 主 体 と して 台 頭 して き た非 政 府 組 織(以 下 対 して社 会 的 な反 発 の波 が 多 くの 国 に押 し寄 せ て た が,こ. よ って 引 き 起 こ さ れ,国 際 的 に巧 み に組 織 化 さ れ た キ ャ ンペ ー ンを イ ン ー54(902)一.

(17) 多 国 籍 企 業 と多 国 間 投 資 協 定(有 澤) タ ー ネ ッ ト上 て 行 い,各. 国 に様 々な 影 響 を及 ぼ した。. 以 上 の よ う な 失 敗 の 理 由 が 考 え られ る が,こ NGOに. の う ち2つ. の 点,つ. ま り問 題 領 域 の 広 さ と. つ い て 若 干 触 れ て み よ うω。. 4.1包. 括 的協 定. 多 国 間協 定 は 様 々な 形 態 で 取 り組 ま れ て きて い る が,MAIの これ まで と は異 な る新 しい要 素,新. 存 在 を正 当化 す るた め に. たな 価 値 を 付 け る必 要 が あ った 。 そ の 結 果,提 議 され. た協 定 の 草 案 は意 義 深 く,し か も広 範 囲 にわ た る文 言 で 表 記 され て いた 。 そ れ は 「包 括 的 か つ 完 全 に拘 束 的 」 協 定 で あ り,こ れ まで の 多 国 間 協 定 よ りも厳 しい基 準 を 含 ん で いた 。 包 括 的 と い って も課 税 問 題 は除 外 され たの で,あ. る程 度 範 囲 は狭 め られ た けれ ど も,多. くの 論 題 が 残 され た ま ま結 局 失 敗 に終 わ っ たの で あ る。 米 国 は投 資 審 査,紛 争 解 決 メ カニ ズ ム,お よび文 化 産 業 や地 域 統 合 に対 す る例 外 条 項 に重 点 を置 き,当 時 のECは に関 心 を もって い た よ う に,加 盟 国 のMAIに. 域外適用. 対 す る期 待 は異 な って お り,各 国 間 の 利 害. を調 整 に も失 敗 した。 協 定 締 結 の 困難 は複 雑 多 岐 に わ た るMAIの. 協 議 項 目を 見 れ ば理 解. で き るで あ ろ う。 以 下 に示 す よ う に,そ れ は最 初15の 主 要 項 目か ら構 成 され て いた 。. ・規 約 と は違 って ,MAIは. 完 全 な 国 際 条 約 で あ り,各 国 の 立 法 府 が 批 准 す べ き もの で. あ る。 ・規 約 と は異 な り,申 請,判 定 お よ び執 行 につ いて は正 式 な 紛 争 解 決 メ カニ ズ ムを 導 入 す べ きで あ る。 これ らは投 資 家 対 国 家 お よ び国 家 対 国 家 に適 用 され る。 ・「投 資 」の 定 義 は包 括 的 か つ 拡 張 可 能 で あ るべ きで あ る。 これ に よ って 直 接 投 資(創 設 , 拡 張,あ. る い は 事 業 参 加)だ. け で な く,証 券 投 資(負 債 や 資 産 に か か わ らず),不. 産,知 的 財 産 権,契 約 上 の 権 利,お ・全 て の 政 府 行 為 が 含 まれ る. 動. よ び 当局 か ら与 え られ た 権 利 や 許 可 を 含 む 。. 立 法 ,司 法,行 政. ・投 資 過 程 の 全 て が カバ ー され るの で ,内 国 民 待 遇 や 最 恵 国 待 遇 義 務 が 問 題 と して 取 り 上 げ られ る。 これ らの 義 務 は投 資 申請 お よ び既 存 企 業 の 事 業 活 動 に も拡 張 され るべ き で あ る。 保 留 な い し例 外 が 合 意 され る とす れ ば,審 査 過 程 が 重 要 にな る。 ・保 留 外条項」. 限 られ た範 囲 の 一般 免 責 で 考 え られ た もの と全 く異 な る 「国 家 に特 定 的 な 例 は,リ ス トに追 加 が で きな い 「ス タ ン ドス テ ィル 」 義 務,時. (14) David. Henderson, tute of International. The MAI Affair — A Story Affairs, 1999, pp . 20-32.. and. Lessons,. Great. Briten:. The. が くれ ば リ. Royal. Insti-.

(18) 第7巻. 第2・3号. ス トを削 減 す る義 務 を もつ 「ロー ル バ ック」 義 務,そ. して い った ん 外 され た ら例 外 を. 復 活 で き な い 「ラ チ ェ ッ ト」 義 務 に従 わ され る。 ・「トッ プ ・ダ ウ ン」 原 則 が採 用 され る。 そ れ ゆ え ,全 て の 一 般 お よ び 特 定 例 外 が リス トされ な けれ ばな らな い し,リ ス トされ な い投 資 行 為 は 自動 的 に懲 罰 に処 せ られ る。 ・新 自 由化 措 置 は協 議 の 過 程 で 政 府 に よ り導 入 され ,最 終 的 に協 定 に組 み 入 れ られ る。 ・民 営 化 措 置 は 内国 民 待 遇 お よ び最 恵 国 待 遇 義 務 を 条 件 とす る。 ・外 国 投 資 が 差 別 され な い こ とを 確 実 にす る た め に,公 的 独 占企 業 や 国 営 企 業 の 行 動 を 制 約 す る規 定 が 設 定 され る。 ・厳 しい投 資 保 護 基 準(一 般 待 遇 ,収 用,紛 争 か らの 保 護,お. よ び 自 由な 資 金 移 転)が. 導 入 され る。 ・業 績 要 求 は,WTOのTRIM協. 定 に見 られ る範 囲 と内容 を越 え た形 で,禁 止 す る か,. あ る い は特 定 の 限 度 を条 件 とす る。 ・規 則 と懲 罰 は投 資 優 遇 策 に結 びつ け られ る。 ・全 投 資 過 程 に関 連 して ,重 要 な 外 国 人 に対 して 通 行 と居 住 権 が 設 定 され る。 ・種 々の 懲 罰 が 政 府 よ り下 位 レベ ル の み な らず ,国 家 権 限 で 適 用 され る措 置 に まで 拡 張 され る。. さ らに リス トに下 記 の 項 目が 付 け加 え られ た。. ・域 外 適 用 問 題 か,で. す な わ ち,国 家 が 自国 領 域 を 超 え て 自国 の 法 律 を 適 用 で き るか ど う. き る とす れ ば どの よ うな 状 況 下 な ら可 能 で あ るの か 。. ・地 域 経 済 統 合 に対 す る特 別 規 定 ,そ れ に加 盟 す る国 は,例 外 を 抑 制 す る懲 罰 か ら免 れ て 互 い に特 恵 待 遇 を提 供 で き る。 ・「文 化 」 産 業 の扱 い. そ して1997年 の 初 め に環 境 基 準 や 労 働 基 準 に関 連 す る規 定 を 協 定 に入 れ る提 案 が 出 され たが,結 局 未 解 決 の ま ま1998年 の 協 議 中断 を迎 え たの で あ っ た。. 4.2NGOの. イ ンパ ク ト. イ ン タ ー ネ ッ トに よ りMAI協 反 発 が 広 が っ た 。 そ れ はOECD加. 議 原 本 が 明 らか に さ れ た と き か ら,目 盟. に 見 え てMAIに. 非 加 盟 に か か わ らず 各 国 に 広 が り,環. ー56(904)一. 境 保全 グ.

(19) 多国籍企業 と多国間投資協定(有 澤) ル ー プ,消 費 者 団 体,貧 困 国 開 発 に関 連 す る団 体,人 権 グル ー プ,地 方 政 府,社 会 正 義 の た めの 運 動,先 住 民 を 代 表 す る組 織 70力 国以 上 の600を 越 え るNGOそ. 聖 職 者 団体,労 働 組合,お よ び専 門家 グ ル ー プ な ど, の他 が一 丸 とな っ た。 国 際 的抗 議 運 動 は次 第 に勢 い を. 得 て,そ れ まで ほ とん ど一 般 市 民 の 注 目を 浴 びな か っ た協 議 が 世 界 的 な 議 論 の 的 とな った の で あ る。 NGOは. 協 議 に直 接,間 接 的 に影 響 を及 ぼ した 。 直 接 的 影 響 と して,特 に社 会 ・環 境 基. 準 の 取 り扱 い に関 してNGOは. 正 式 な 審議 の 内 容 と次 に 続 く協 定草 案 の 方 向 を左 右 した。. この 論 点 は協 議 が 進 む につ れ ク ロ ー ズ ア ップ され て き た。 その 後 の 草 案 の 文 言 で は,① 社 会 ・環 境 基 準 は外 国 投 資 の 誘 致 の た め に引 き下 げ られ るべ きで な い,② 協 定 下 の 義 務 は現 地 政 府 に よ る基 準 の 維 持 お よ び引 き上 げを 妨 げ た り阻 止 した りす る もの で はな い,お よ び ③ 収 用 に関 す る規 定 下 で,外 国 投 資 家 は規 制 権 限 を もつ 政 府 の 非 差 別 的 行 為 か ら生 じた 損 害 の 賠 償 請 求 が で きな い,と い うふ う に変 え られ た。 け れ ど も,そ れ よ り も っ と強 力 で あ った の は む しろ 間 接 的 的 影 響 で あ っ た。NGOの キ ャ ンペ ー ンがMAI問. 題 を 政 治 問 題 化 させ たの で あ る。 全 員 がMAIに. 敵 対 的 と まで は いか な いが,多. くの評 論 家,お. よ びMAIに. 懐疑的 あるいは. 関 して 情 報 と相 談 が 少 な い と. 感 じて い る国 会 議 員 に よ って その 問 題 が 大 き く取 り上 げ られ て きた 。 協 議 の 秘 匿 性 へ の 批 判 は その 時 ま だ公 表 され て いな か っ たが,協 定 に反 対 す る主 な 議 論 が 価 値 が な く,極 めて 異 議 の あ る事 実 に か か わ らず,政 府 お よ びOECDは は政 治 家 を驚 か せ,混 乱 させ,そ. 何 ら反 撃 も しな か った。 これ ら反 発. して 政 府 の 関 与 とMAIの. プ ロ セ ス に疑 問 を 抱 か せ て. い っ たの で あ る。. 5.結. グ ロ ーバ ル にFDIを WTOの. 論 に代 え て. 統 治 す る必 要 性 が あ る に もか か わ らず,FDIに. よ うな 国 際管 理 体 制 が形 成 され て い な い。OECDはMAIの. 関 して は,IMFや 成 立 に取 り組 ん だ が. 結 局 失 敗 した。 その 理 由 は前 述 の 通 りで あ るが,そ れ 以 来 その よ うな 取 り組 み は起 こ って いな い し,こ れ か らも その よ うな 取 り組 み は行 わ れ な いで あ ろ う。 む しろ2国 間,あ. るい. は地 域 間 べ 一 ス の 国 際 協 定 が増 加 す る傾 向 が あ る と され る。 そ れ で は な ぜ 多 国 間FDI管 理 体 制 が 生 まれ な いの か,結 論 に代 え て コー ヘ ンの 所 説 か らその 理 由を 探 って み る⑮。. (15) Stephen D. Cohen, Multinational Corporation and Foreign Direct Investment, sity Press, 2007, pp. 252-259.. Oxford. Univer-.

(20) 第7巻 5.lFDIの 多 国 間FDI管. 第2・3号. 政治学 理 体 制 創 造 の 第1の 障 害 物 はFDIの. の 継 続 は政 府 と市 場 との 適 正 な パ ワ. 政 治 学 だ とす る。 つ ま り,手 詰 ま り. ・バ ラ ン ス(政 府 の 役 割 を重 視 す るか,市 場 を 重 視. す るか と い う問 題)に 関 す る価 値 判 断 に,特 定 的 には政 府 が与 え るMNEの. 自 由度 に起 因. す る。 世 界 中で 受 け入 れ られ る原 則 の 表 明 が 容 易 で な いの は,政 府 と市 場 との 関 係 にお い て 非 常 に困 難 な 基 準 設 定 問 題 に直 面 して い るか らで あ る。 た とえ ば下 記 の よ うな 疑 問 に最 善 の 解 答 は存 在 す るの で あ ろ うか 。 誰 の 行 動 が 多 国 間 ル ール に よ って 制 約 され る必 要 が あ るの か 。 民 間 所 有 企 業 な の か,そ れ と も受 入 国 政 府 な の か 。 換 言 す れ ば,そ れ がFDIの. 場 合,公 共 部 門 の干 渉 で あ る の か,. それ と も民 間 部 門 の 利 己的 利 益 追 求 が 全 体 と して の 社 会 的 利 益 に と って 脅 威 とな るの か 。 巨大 企 業 も し くは強 大 な 政 府 が 悪 魔 で あ るか ど うか 決 め られ な い し,決 めた と して もそ の 理 由 は何 か 。 も しイエ ス ・ノ ーの 問 題 で な けれ ば,FDI管. 理 制 度 にお いて 「公 正 で 安 定 的. な」 社 会 秩 序 の 維 持 と,富 の 創 造,生 活 水 準 の 向 上,お. よ び効 率 の 最 大 化 を 目的 と した 民. 間 部 門 へ の 信 任 との 間 で 適 正 な バ ラ ン ス と は どの よ うな もの で あ るの か 。 優 れ た 行 動 規 約 は公 共 の 福 祉 を守 る責 任 を 負 う官 吏 に適 用 され るべ きか,そ れ と も商 品 とサ ー ビ スを 適 切 な 価 格 で 消 費 者 に提 供 し企 業 の 利 己的 利 益 を追 求 す る責 任 を負 う経 営 者 に適 用 され るべ き なのか。 これ らに解 答 して 初 めて 世 界 各 国 で 受 け入 れ られ る多 国 間 協 定 が 生 み 出 され る。 けれ ど も,あ. らゆ る利 害 関 係 者 が 対 立 した見 解 を 早 晩 過 去 の もの とす る こ と はで きそ う もな い故. に,包 括 的管 理 体 制 が 形 成 さ れ る見 込 み は な い。 国 際経 済 秩 序 はFDI政 間 協 定 もな く存 在 して い る。 実 際 面 で,一 致 した願 望,ニ プ,す な わ ち,① 投 資 受 入 国,② 投 資 本 国,③MNEと ダ ー(一 般 市 民,会 社 従 業 員,環 境,お. 策 に 関 す る多 国. ー ズ,お よ び姿 勢 は主 要 グル ー. 株 主,お. よび. ④ ス テー ク ホー ル. よ び組 織 化 され た一 般 の 利 益 集 団)で 容 易 に は ま. と ま って こ なか っ た。 ① と④ の 主 体 は外 国 企 業 か ら大 きな 純 ベ ネ フ ィ ッ トを 組 織 的 に獲 得 す る こ と を政 府 に望 む 。 これ ら主 体 が 考 え て い る基 本 原 則 は,現 地 法 律,価 値,お. よ び良. き企 業 市 民 概 念 に外 国 企 業 を 順 応 させ る受 入 国 の 権 力 で あ る。 これ ら は公 平 を 主 張 す る。 逆 に,② と③ の 主 体 は政 府 規 制 に ビジネ ス活 動 が 邪 魔 立 て され な い こ とが 大 多 数 の 市 民 に 対 して 最 善 で あ る と考 え る。 本 国 は 自国 の 海 外 子 会 社 の 自 由 と金 銭 的 成 功 を 妨 げ る受 入 国 を非 難 す る。MNEは. 私 的利 益 追 求 と 自由市 場 イ デ オ ロギ ー を結 び つ け,グ ロー バ ル な 厚. 生 と経 済 効 率 を最 大 化 す る独 特 の 能 力 を 主 張 す る。 この 裏 に は,直 接 投 資 の 流 入 の た め好 ま しい経 営 環 境 を 創 造 ・維 持 す る政 府 に は大 きな ベ ネ フ ィ ッ トが 与 え られ る と い う意 図 が 一58(906)一.

(21) 多国籍企業 と多国間投資協定(有 澤) あ る。. 5.2手. 順 ・実施 上 の 障 害. 多 国 間FDI/MNE管 まず 第1に,ど. 理 体 制 の形 成 に は手 順 ・実 施 上 の 障害 が存 在 す る。 の 政 府 も自 らFDI管. 理 体 制 に何 を求 め て い るの か 明 確 で 一 貫 した 立 場. を と って いな い こ とで あ る。 大 多 数 の 政 府 は2つ の 顕 著 に異 な る姿 勢 を 完 全 に1つ にす る こ とす らで きな い。 その2つ. と は,受 入 国 と して,そ. して 本 国 と して 関 連 す る問 題 に対 す. る処 理 で あ る。 各 国 が 国 益 の た め に異 な る姿 勢 を 伴 っ た政 策 を 形 作 る に は ダ ブル ・ス タ ン ダ ー ドが 避 け られ な い。 本 国 と受 入 国 と して の 利 益 を 同時 に一 致 させ る原 理 を 発 見 す るの は容 易 で はな い。 第2に,適. 正 な 規 制 の 度 合 い は 国 に よ り異 な る こ とで あ る。 あ る 国 で は今 な おFDIを. 疑 い と不 信 の 目で 見 て い る一 方,他. 国 で はFDIを. 経 済 成 長 戦 略 に組 み入 れ て い る。 国 際. ビジ ネ ス に対 す る姿 勢 は,歴 史 的 体 験,経 済 開 発 水 準,お. よ び経 済 イデ オ ロギ ー に よ って. 独 自 に刻 まれ た プ リズ ムか ら映 し出 され て い る。 要 す る に,程 度 の差 は あ る もの の,190も の 主 権 国 家 がMNEに. 対 す る干 渉 的経 済 政 策 や非 協 力 的 統 制 を 通 じて市 場 の 見 え ざ る手. の 方 向 を変 え て い るの で あ る。 第3に,管. 理 体 制 に引 き渡 され るで あ ろ う国 民 国 家 の 規 制 権 限 の 程 度 で あ る。 大 多 数 の. 国 が 防 衛,文 化,マ. ス ・メ デ ィ ア,お よ び輸 送 な どの 産 業 に外 国 企 業 の 参 入 を 拒 む 権 限 を. 進 ん で 放 棄 す る こ と はな い。 全 て の 国 が 潜 在 的 外 国 投 資 家 に財 政 的 優 遇 措 置 を 与 え る権 限 も引 き渡 さな いで あ ろ う。 開 発 途 上 国 は外 国 所 有 資 源 関 連 企 業 を 取 り締 ま る権 限 を 放 棄 し たが らな い し,製 造 業 分 野 のMNEの. 参 入 で 先 進 技 術 を 要 求 す る権 利 を 失 いた くな い。 こ. れ は,い わ ゆ る国 家 主 権 の 部 分 的 委 譲 と い う問 題 とな る。 第4に,政. 府 の権 限委 譲 と国 内 に本 社 が所 在 す るMNEの. れ る こ とで あ る。 政 府 が ど の よ うに してMNEを. 経 営 幹 部 との 協 議 が 必 要 と さ. 取 り締 ま る こ とで き る か と い う点 と企. 業 に ど の よ う な権 利 と責 任 が与 え られ る か とい う点 で,MNEは. 新管理体 制の計画や活動. に直 接 影 響 され る。 企 業 の 全 て の 事 業 活 動 が 恐 ら く多 国 間 協 定 に直 接 影 響 され るた め に, ほ とん どの 政 府 はMNEの. 規 制 ・保 護 に よ って 生 じる経 営 へ の 影 響 に関 す る知 識 が 必 要 と. な ろ う。 最 後 に,多 国 間FDI協 で あ るの か,あ. 定 の協 議 にMNEの. 代 表 の 直 接 参 加 を認 め る の が望 ま しい こ と. る い は それ が 合 法 的 で あ るの か ど うか を 決 め る こ とで あ る。 これ につ いて. 相 反 す る見 解 が あ る。1つ. は,自 国 市 民 に責 任 を 負 う唯 一 承 認 され た 国 民 政 府 の 代 表 が 国 一59(907)一.

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