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高集中度・高利潤率の持続性とその解釈 : 実証分析(桒田幸三教授退官記念論文集)

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211

高潮申度・高利潤率の持続性と

    その解釈:実証分析*

明 石 芳 彦

1.はじめに

 本稿の第1の目的は,産業組織論における「利潤率一三中度仮説」の検:証方 法をめぐり,ブローゼン(1969,1971a,1971b,1971c)が提起した検証上の問題 点に着目して,彼のいう「i;均衡仮説」に対する1つの検証方法を示し,「仮 説」の意味を検討することである。また,そ.の検証で得られた結果の解釈をめ ぐるシカゴ・グループからの論点を整理し,若干の追加的な実証分析を行うこ       1) とを第2の目的とする。  分析の順序は,初めに,利潤率の通時的安定性,および集中度の通時的安定 性が観察されるかどうかを調べる。次いで,集中度と利潤率との間に通時的に 安定した関係が観察されるかどうかを検証する。そして,集中度と利潤率との 間の通時的な関係を結び付ける要因は,価格の変化と費用の変化のいずれの側 面かを実証的に検討する。 ■.持続性分析のフレームワークとデータ ペイン(1951)の分析方法を批判して「修正結果上を示したステイダラー *小稿は新庄浩二先生の御厚情の賜です。小稿は,筆者の神戸大学への内地研究期間  (86,5∼87.2)中に作成されたが,そこで使用されたデータベースはすべて新庄先 生が作成されたものです。データベースの使用を快諾された新庄先生に深く感謝しま  す。なお,計算は藤川清史氏に委託した。また,新野ゼミ研究会にて土井教之先生よ  り,日本経済政策学会にて植草益先生より有益なコメントを頂きました。それぞれ記  して感謝します。ありうべき過誤はもちろん,すべて筆者に帰すべきものです。 1)利潤率一集中度仮説の検証方法に関する諸問題については,明石(1987a)で論じ  ている。

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(1963)の研究,それをさらに批判したブローゼン(1969,1971a,1971b,1971c) の批判と代替的な検証方法を参考にして,われわれは利潤率に「長期的」な均 衡化メカニズムが存在するかどうかを問うための1つの指標として,「変動係 数」(CoeMcient of variation ; CV・=standard deviation/mean)を用い,不均衡状態       ラ が均衡化へと向かう内発的な傾向が存在するかどうかを検証する。具体的には, ある特定時点く年次)から別の特定時点(年次)までの間に,当初高い利潤率を 獲得していた部門がその期間を通じてもなお高い利潤率をあげ続けているかど うかが,ステイダラー,ブローゼンの関心事であった。だが,検証のレベルに おいて,何年間のラグ(ラグ分布もしくは,点対点のラグ)を設ければ適切に「長 期」を考慮したことになるのか。そのときのラグの長さをアドホックに指定す ることは実際,容易ではない。そこで,われわれは,上述の変動係数を用いて, 10年程度におよび利潤率の変動の程度を「持続性」の指標と見なし,利潤率の 変動係数と集申度の動きに何らかの対応関係があるかどうかを調べる。期首に 相対的に高い利潤率を示す部門の利潤率がその後低下する傾向を示し,期首に 相対的に低い利潤率を示した部門の利潤率が時間の推移とともに相対的に上昇 する傾向をもつとすれば,両者のバランスにより,利潤率格差の縮小化傾向が 観察されるであろう。高利潤率の「持続性」は維持されない。それがブローゼ ンの主張である。  われわれの用いる集中度指標は2つある。1つは,理論的な対応関係(コー リング=ウォーターソン,1976)から,ハーシュマン=ハーフィンダール指標(HI) である。もう1つは,各部門の上位シェアを反映させるための指標として,上 位3社累積集中度(C3)である。累積集中度は,後で述べるが,上位企業の生 産条件が市場全体の生産条件と比較して優れているかどうかを問うためにも, また,ペイン流の臨界シェア水準効果の有無を調べるためにも有用である。 2)変動係数:は,標準偏差を平均値でデフレートしていて,同じ大きさの標準偏差につ  いても,水準(平均値)に応じた「調整」がなされている。つまり,水準(平均値)  が高いほどより大きな標準偏差が随伴しやすい,という点が回避され,異なる水準  (平均値)間でのバラツキ方の比較が可能となる。

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      高集中度・高利潤率の持続性とその解釈:実証分析  213  他方,利潤率指標も2つの定義に基づいて使用する。一つは,(出荷額一賃 金一二材料費)/出荷額=PMである。もう1つは,(付加価値一賃金)/出荷 額=PCMである。両者の違いは,分子に付加価値額を用いる際,内国消費税 額と減価償却額を含むかどうかであるが,この種の利潤率指標は正確には,利       お  潤マージン(または,価格一費用マージン)率指標である。データの出所はともに 通産省『工業統計表』(産業編)であり,サンプル数は変数の組み合わせにより 異なるが,最大151である。  分析期間は1967年から1980年までの14年間である。この14年間を67年から73 年と74年から80年までの2つの期間に区分して,前半,後半の7年ごとの分析 も併せて実施する。以下では,添字0,1,2により,それぞれ67∼80年,67 ∼73年,74∼80年の対象期間を表す。また,添字67,74,80はそれぞれの単年 次の変数であることを表す。 皿.利潤率の高位持続性  (1)利潤マージン率相互間の関係  利潤マージン率(PM, PCM)相互間では,統計的にも強く安定的に,正の相 関が確認できる。表1は67∼80,67∼73,74∼80年のそれぞれの期間における 表1 利潤マージン率相互間の関係(平均利潤マージン率) PM, PM, PM,4 PMso PM, PMエ .920a .857a .587a PM,, PM,, ,463a .523a .547a PCM, PCM2 li

 PCM,, PCM,,

PCMo

PCM, .868a .841a .461a PCM,, PCM,, .411a .338a .790a a・=1%,b=5%, c=10%の棄却率を表す。また,棄却率11%一19%に限り, 参考のため併記した。以下,同様。 3)付加価値tw ・生産額一製造品出荷額に含まれる内国消費税二一原材料使用素謡一減  価償却額,ただし,生産額=製造品出荷二等+[(製造晶年末在庫額一製造品年初在庫  額)+(半製品及び仕掛品年末額一半製品及び仕掛品年初額)][]内は30人以上の事

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平均利潤マージン酒間の相関係数,ならびに67,74,80年という3つの時点に おける利潤マージン率との間の相関係数である。それらはいずれも,ある時点 に高い利潤マージン率を示した部門が,それ以後の一定期間もしくはそれ以前 の一定期間の利潤マージン率について,また,一定期間を経た別の時点の利潤 マージン率についても,相互に正の相関関係を持っていて,利潤マージン率の 持続性があることを示唆する。期間平均利潤率の相関係数はPMの方が少し 高い値を示している。だが,いずれも高い相関係数である。ただし,期間1 (67∼73年)と期聞2(74∼80年)の利潤率の相関係数が相対的に低い。 、また,表1の変数を構成している各年の利潤マージン率の相関関係を調べて みたものが表2である。表2では,67年から80年という14年間の利潤マージン 率相互間の関係を示している(明示していないが,すべて1%水準で有意)。同表か ら分かることは,67年の利潤マージン率が68年から73年までの利潤マージン率 と相対的に高い相関係数を示しているのに対し,74年以降の利潤マージン率と は相対的に低い相関係数を示すに留まる点である。73年と74年との間に「構造 変化」があったことが推測できる(PMの場合,74∼76年の利潤マージン率相互間 で,より高い相関関係を示している)。だが,相対的に低い相関係数を’含んではい ても,すべて1%水準での正の相関関係を示しているのである。この点で, ステイダラー(1963)の分析結果よりも強い持樹生が観察されていると言えよ う。 (2)利潤マージン率とその変動係数の関係  次に,表3より利潤マージン率とその変動係数(PMとCVPM, PCMとCV− PCM)のうち, PCMとCVPCMは,67∼80年について負の相関がみられ, それは74∼80年の関係を反映していることが分かる。よって,PCMデータか 業所についての調査に限る。新庄(1975)の「粗マージン率」と比較して,ここでの PCMは,分子から減価償却額を控除し,分母から内国消費税額を控除しない点で異 なる。また,PMも,分母,分子から内国消費税額を控除しない点で異なる。そし て,植草(1982i P.323)の分類に従えば,ここでのPCMは,「プライス・コスト 純マージン率」に近いが,マージジの中に販売促進費を含む点が異なる。また,PM は,「プライス転コスト粗マージン率」に等しい。

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215 高集中度・高利潤率の持続性とその解釈:実証分析 ①◎Q①. oり 掾掾 ○. ◎o. oo. っO揩p. ①卜. oo. 。o◎o. O寸. σっ. Oσっ. ︾oっ. oo チ。 チ. 09. ◎o. qり◎o. o回揩p. お. Qc 曹盾 . っ. oっ. oっ. っ◎っ, っ. ◎っ. . . ○. o卜. σっ. . 畑. O寸D っ. . o. . o. o◎. う. 專. O可D . . . . o◎o. o卜. っ. . D寸, . ①oチ. 寸寸D . ◎Q. 憲. . 論. . . . . . . 層. 畔. 無. . . ○. ◎o. 8. うαっ. ◎◎. ◎o. , αっ. αD. 路. Q. Φ. ○. o. ○. . . . LΩ . 、薯82薯O自。、薯O幽卜蕩鼠。卜芝O角ぬ喜O店鳶暑O目塞薯O隅q。暑O片目芝O山。至極①。芝O餌・、。薯鼠 。o. o. 〇D. . . . . . oO q. お. . の. 錦. ○◎o. 9. ①めD . ○慧う. oゆ. . ゆ. . ゆ. . ①ゆD ♂. ⑩. 8. . . り. . . . . 。っ n. . . m. . . お. ⑩りD . 協. . 蕊. ◎o 掾宦 D ◎o. 0. 等. . 等. 薯. ト寸D . O可D Q◎っ. 昏. . 專. . . . . 等. q噂. 丼. . 響. っ①. . oっ @. . ①◎潤B ○◎o. ゆOD . 蕊. 嵩. . . 。 . 一①D . . . ・ )o . 幽 隅 卜薯

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         表3 利潤マージン率とその変動係数

PMo

PM, PM,

PM6T PM74, PMso

CVPMo

CVPM, cvPM, .386a .342a .347a .362a .582a 一.068 一.222a 一.042 一.404a 一.076 一.465a 一.316a .012 一.085 .122*’ 一.032 .395a 一.271a PCM, PCM, PCM, PCM,, PCM,, PCM,, cvPCM, CVPCM, CVPCM, 一.167b 一.089 一一.201b 一.033 一.069 一.137**  .005 .066 一.064 .090 一.054 一.105 一.319a 一.181b 一.385a 一.153c 一.197b 一.346a   *=140/e, **=:110/o らは,67∼73年の期間を除き,利潤マージン率が高いほどその変動係数は小さ くなる。つまり,高水準の利潤マージン率ほど安定的な性格を持つといえる。 この限りにおいて,ブローゼンのいう均等化のメカニズムは,日本において観     4) 察されない。

 他方,PMについては, CVPMとPMとの符号がPCMのケースとは一

部,異なる。つまり,.PMoとCVPMoとは部分的に正の符号を示すケースが 観られるのである。だが,PM67とCVPM。, PM67とCVPM、が有意さに関 して整合性がないなど,PMについては解釈上の困難が残る。そうした結果 の違いは,減価償却を考慮するかどうかに依存しているかもしれないが,予断 を許さない。 W.利潤マージン率と集中度の関係 利潤マージン率と集中度の関係について表4より,PMの場合, HIとPM との相関はすべて有意である。また,C3のケースでも, PCMのケースより も強い相関を示している。 他方,PCMを用いたケースでは,67∼80年について正の相関が観察される。 4)新庄(1975)でも,1961∼71年の平均粗マージン率(m)とその変動係数(CVm)  の相関係数を,一.39巳と計測している。

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      高集中度・高利潤率の持続性とその解釈:実証分析  217 表4 利潤マージン率と集中度=1967∼80年(すべて,N・=129) C30 C3エ C3, Hlo 宜11 HI,    む  ユ  ヨ

輪M蛎㎝㎝㎝

PPPPPP

.180b .107 .202b .155c . 093 .142## .187b .164b .300a .120* ,097 .218b .200b .185b .272a .156c .154c .181b .099 .100 .125** .140## .136c .128*# .290a .283a .216b .206b .257a .260a .187b .167b .132# .119 .132#* .115 *=180/o, ** =160/o, #==14a/o, ##=110/o, *#=150/o, #*==130/o だが,分析期間を前半,後半と区分けして       表5 相関係数の要約

髪型踊㍊総諺雌鵬  1・3・HI・

      .lsob .300a        PMo 意性は得られないが,C3については,67∼  PCM。  .155c  .181b 80年,74∼80年という期間において正の有意 な相関が見いだされる。利潤マージン率の指標に何をとるかが,この種の結果 に微妙な差異をもたらすことに留意しなければなるまい。  以上の結果を要約すると表5の通りになるが,「利潤率一集中度仮説」の検

証における相関係数はC3よりもHIの方が良い。また, PCMよりもPM

の方が良い。そして,HIとPMの組合せによる相関係数は.300である。ま た,HIとPMの組合せにより,回帰分析した結果を示すと,    PM, ==,280×10−4HI,十〇. 207 R2=:. 083       (3. 549) となる。さらに,利潤マージン率の均等化分析のために,資本係数を加えた重 回帰分析を行うと,    PM, ==,275×10−4Hl,十, 492×10−iKS,十〇. 196 R2 =. 080       (3. 463) (O. 713) を得る(KSは資本一出荷額比率, O内はt値。また,表4の相関係数から予想され る通り,67∼80年の関係が,67∼73年や74∼80年に関する回帰係数のt値よりも大きく, また,回帰式の説明力も高かった)。こうして,われわれのサンプルを用いる限り,

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期間を長くとるほど,集中度(HI)と利潤マージン率(PM)との関係は相対的 に強くなっていることが示唆される。また,前節では利潤率,集中度自体に持 続性が観察され,本節では利潤率と集中度の14年間平均値での正の相関関係が 認められた。よって,両者間の「長期」の関係は持続的であると言づても間違       5) いではないと思われる。 V.高利潤一高集中の持続性の解釈  前節において,分析の期闇を長くとるほど,集中度(HI)と利潤マージン率 (PM)との相関関係,回帰係数は相対的に強くなることが示された。また,皿 節では,利潤率および集中度にはそれぞれ,持続性があることも確認されてい6︶ 1る。本節では,そうした利潤率と集中度の持続性をいかに解釈すべきかについ 1て考える。分析は,初めにブ廻心ゼン,デムゼッッらのいう「効率構造」仮説 の主張を実証的に検討し,彼らのいう持続性の解釈を吟味する。   (1)費用効果の分析  まず,ペルツマン(1977)が用いた方法を示す。利潤マージン率の定義式  5)植草(1970)では,1961∼65年について,集中度(例えば,上位3社)と利潤率の   変動係数が一.341(5%水準で有意)であった。けれども,われわれの分析では,集   中門と利潤率の変動係数との相関係数は正符号を計測した。    付表 集中度と利潤マージン率の変動係数

C30 C3, C3, Hlo HI, HI,

CVPMo

CVPM, CVPM, cvPCM, CVPCM, CVPCM, , 026 .127* .180b .184b .045 .176b .053 .107 .195b .176b .066 .169b 一.002  .166b  .148c  .197b  .019  .176b .057 .156c .176b .181b .125* .128# .075 .147c .188b .187b .132** .132## .036 .176b .151c .174b .056 .187b   “=160/e, ““=140/o, #==150/o, ##==130/o (N=129一一一・148) 6)集中度の通時的な安定性に関して,われわれの試算では,1967∼80年において,  HIとその変動係数(CVHI)との相関係数は,一.130(14%水準で有意), C3とそ  の変動係数(CVC3)との相関係数は,一.355(1%水準で有意)であった。これら  の結果は,新庄(1975)の結果(1961∼71年の平均集中度(C3)とその嚢動係数  (CVC3).との相関係数一.56“)と整合的である。詳細は,明石(1987b)参照。 7) 「効率構造」仮説は,ブローゼン(1969),デムゼッッ(1974)などで論じられて  いる。この点については,明石(1987a)参照。

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       二二申度・高利潤率の持続性とそ.の解釈:実証分析  219 PM=(P−C)/Pの両辺を集中度Hで微分すれば,   』、  ’.

   響一(・一PM5(響一三)   』tt

を得る。ペルツマンはs、この式をdlnP/dHについて書き換え・

   響一響躍+響・ ㍉ ………・・…・…(・}

とする。彼は,この式の右辺にコリンズ=プレストン(1968)による実証分析 の結果を当てはめて,第2項dlnC/dHの負の効果が第1項の正の効果を上回 ることから,(価格引き上げ効果ではなく)、集中度上昇に伴う費用削減効果を結論 づけている。  われわれも,ペルツマンの用いたこの式の右辺に対応するわれわれの回帰分 析の計算結果を当てはめてみよう。ただし,ここで問題となるのは,(1)式右辺 の第1項・Q(1−PM),の中に、、PとCの効果が含まれている点である。この点 を回避するためには,費用と価格を集中度によって直接に回帰して,そのパラ メータの大小を比較する方法がある。つまり,ペルツマンの方式をとるにせよ, 別の方法をとるにせよ,いずれも資料入手上,価格・費用のデータに何を用い       お      ヒ るかが問題となるのである。われわれは,(原材料費+賃金)/出荷額≒[(原材 料費+賃金)/産出量]/価格=平均費用/価格=C/P≡C’から    dlnC  dlnC’  dlnP

    dH=dH+dH       、

という定式化により,dlnC/dH:を間接的に推定した。ただし,デー〒タの出所 は『工業統計表』産業編である。  計測結果は,1967∼80年について,    lnC’=一一.0466×10−4Ho−0.228        R2=.103   .        (3.965)       ・        N=129  e;  tt 8)利潤マ「ジと率の定義式において,理論上は限界費用(一平均費用)であったり,  データ上は可変費用であったり,それに固定費用の一部を含んだりする。明石  (1987a)参照。      ’

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   lnl)=一.0166×10一‘Ho十4.917         R2 :.006       (1.357)       、  、     N==133       i       1 である。よって,dlnC’/dHの値は一〇.466と得られる。けれども, dlnP/dH の値は価格(lnP)に関する集中度(H)の回帰式のHのパラメータが統計 上ゼロから有意に離れていないため,dlnP/dH±Oとなり,結局, dlnC/dH= 一〇.466と見なさざるをえない。  さて,われわれの計算により,集中度に関する価格・費用の反応の大きさ dlnP/dH, dlnC/dHのパラメータの大小を直接比較した結果と,ペルツマン の方法に従い(1)式右辺の計算式からdlnP/dHの値を求めた結果を示そう。前 者の場合,集中度の価格に対する効果はゼロから有意に分離できない。単に, 集中度が費用を下げる効果を見い出すのみであり,その限りで集中度の高度化 に伴う費用削減効果を指摘できる。他方,後者の場合,われわれのデータに よる単純回帰係数は,dPMo/dHo=0.280×10曽4, dlnCo/dHo(=dlnC6/dHo)= 一〇.466×10−4であり,また,その計算に用いたサンプルによるPMoの平均 値は.252であるから,    dlnPo/dHo==(0.374−0.466)×10−4=一〇.092×10曽4<0 となる。よって,ペルッマンの用いた方法と同じ式からも,費用引き下げ効果        ラ が強いことが示唆される。 (2)市場の拡大と価格・費用の動向  さて,市場規模の拡大に伴う「規模の経済性」の利益を誰が受け取り,それ が価格・費用条件等にどのような影響を与えているのか。ここでは,市場規模 の拡張分が価格,費用比率の変化にどのような説明力をもつかを調べてみる。  いま,P,,, CAにより,それぞれs年とr年の価格比率←ln(P」/Pi)),費 用比率(=ln(C;/Cl))を示す。また, DX(t)により,t期(s’年からr年に対応 9)①dPCM。/dH。と1−PCM。, dlnC。/dH。のケース,②dPM。/dC3。と1−PMo,  dlnCo/dC30のケース,③dPCMo/dC30と1−PCMo, dlnCo/dC30のケーース,にっ  いてもすべてdlnPQ/dH。, dlnP。/dC3。は負となる。

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       高集中度・高利潤率の持続性とその解釈:実証分析  221        10) する)における市場規模の拡張分(実質生産額にデフレートしている)を示す。推 定される関係は,    Prs= f(DX(t) )    cん=∫(エ)x(t)) であり,これらの式を用いて計算した結果は    P.,.=:一. 207×10−6DX,十〇. 729 R2=. 168        (5. 389)    C&,.=O. 852×10−8DX,十〇. 0453 R2= 一. 005       (O. 578) である。よって,市場規模の拡張分が増大するほど,価格は低下する。けれど も,費用比率は,市場の拡張分が増大しても影響を受けない。 (3)「規模の経済性」の効果の分析  ペルツマンの示した方法に関連して,日本のデータを使用した(1)の研究結果 は,アメリカのデータを用いた結果と部分的には異なった性格を示す。すなわ ち,市場集中度の上昇は費用を押し下げるが,価格には影響しないのである。  他方,②の結果より,市場規模の拡張は価格を引き下げるが,それが「規模 の経済性」を経る形で費用を押し下げるとは認められない。これらのことから, 市場集中に基づき「規模の経済性」を媒介とした費用引き下げ効果が作用して いるとは未だ確認できていない。したがって,われわれの次の問題は,仮に集 中度の上昇が費用の低下傾向につながるとして,その費用の低下傾向を規定す る要因が何かを探ることである。そこで,「集中度上昇→費用比率低下=利潤 マージン上昇」という文脈において,「集中度の上昇が,実は『規模の経済性』 を享受していることに等しく,その結果,費用の低下につながる」という「効 率構造」仮説に関連して,集中度上昇に伴い「規模の経済性」が働いていると 10) 価格動向のデータは,経済企画庁経済研究所『産業組織分析データee fi』1976年6  月,をベースに新庄先生が作成されたものを使用した。原データは指数形式だが,変  化率を観る上では十分な利用価値があり,われわれが入手しうる数少ない資料であろ  う。また,費用比率のデータは上述の通り。

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立証できるかどうかを検討する。ここで,「規模の経済性」を示す代理変数と して,資本一事業丁数比率を用いる。具体的には『工業統計表』(産業編)より, t期の資本一事業所数比率(KE)を, t期末の資本ストックをt期の事業所数 でデフレートした大きさとする。  デムゼッツ,ブローゼンらのいう「効率構造」仮説は,各市場での上位企業 が「規模の経済性」を享受していて,とりわけ上位企業の費用が低水準になる というものである。よって,資本一事業所数比率に対しては,上位累積集中度 の方がより強い正の相関を示すことが予想される。  実証分析の結果は,1967∼80年の期間(および,その前半,「後半の期間)につい

て,HIとKEおよびC3とKEの間に有意な相関関係はない。だが,資

本財に限定して上と同じ計測を行った結果,67∼80年について,HIとKE (N= 50)が.233(11%水準で有意),C3とKE(N==57)が.267(10%水準で有意) の相関係数を示した。よって,資本財に限れば,KEで測定した「規模の経済        性」の存在が認められる。 VI.分析の要約と残された問題  小稿で明らかになったことは,まず,利潤マージン率には,通時的に高い相 関関係が観られる。また,集中度についても同じく,通時的に強い相関関係が ある。そして,集中度と利潤率の間にも,(特に集中度がHIで,利潤マージン率 がPMの場合)通時的な相関関係が認められる.,という結果である。  次いで,集中度と利潤率との間に正の相関があるのだが,その両者を結ぶメ カニズムを探るため,ペルッマンの示した検証方法に従い日本のデータを用い て試みた実証結果によると,集中度の上昇は,費用の低下を通じて利潤マージ ン率の上昇に結びついているかもしれないことが示唆された。その限りで,ア メリカの分析結果と一致する。 11) ちなみに,C3と資本一出荷額比率(KS)との相関関係は,全サンプル(N==140)  の場合,最も強い関係を示した67∼73年について,.139(棄却率12%)というレベル  である。そして,資本財(N=65)に限れば,.242(10%水準で有意)である。

(13)

       高集中度・高利潤率の持続性とその解釈:実証分析  223  と・ころで,「効率構造」仮説のいうように,仮に利潤率一集中型め正の関係 が部分的にせよ「規模の経済性」によるものだとして,それは生産条件と深く 関わっているのであるから,景気変動の大きな影響がない限り,「市場支配力 による高位価格の設定」のケースよりも安定的な利潤率一集中度の関係として『 観察できると考えられるだろう。われわれが実証的に分析し二た結果(表5)で は,『pM:とHIのケースを除くと,生産技術的な裏付けを伴っているほど安 定的な関係だとは考えにくい。よって,シェアラー(1979)も言う通り、,通常 の技術革新をこうしたアプローチで分析しても,限られた意味しかもたないの かもしれない。他方,’仮にそうした関係が安定的だとしても,前節で示したよ うに,その規定因を「規模の経済性」に求めることには,いくつかの前提条件 を要する。また,決定係数R2の水準から判断してみても,それ以外の説明変 数め重要性を否定するものでもない。この種の問題べのより正確な判断を下す ためには,利潤率を規定する諸要因を分析すると同時に,集中度を規定する諸        12) 要因を分析することが必要ではあるまいか。  さらに,利潤率相互間になぜそれほどの相関関係が持続するのかという問題, および集中化による費用低下が認あられる一方,そのとき価格は硬直的なまま であり,・この「価格固定化のための市場支配力」をどの1よケに説明すべきかと        13) いう問題,を残している。        .一t        参 考 文 献 明石芳彦「利潤率一集中度仮説の検証方法に関する諸問題」『彦根論叢』243号,1987年3   月  (1987a)     「市場集中度の『構造的』安定性と変動要因」mimeo,1987.4(1987b) 12)『oW中度一高利潤率の文脈において,集中度と費用比率の両変数と有意な関係にあ  り,しかも集中度と費用比率が負の相関関係をもつことから,「集中度一利潤率を結 ・びつける変数」は集中度に対する符号と費用比率に対する符号とが異なるに違いない。  われわれは,市場構造に関連するいくつかの変数をピッ.クァップして調べた結果r広  告一売上高隼率がそれに該当しうる変数であることを這い拙している。 13) ここでの結果は,管理された工業製品価格の低位安定性を示す資料内容(楠田・池   (1979))と整合的である。けれども,ペルッマン流の費用条件を前提}こする意味は  産業の産出物の生産費用条件について,シュタインドル流の「特定失費曲線」とプラ  ィスリーダーの存在を想定することと同じである。

(14)

乗田幸三教授退官記念論文集(第246・247号)       「高集中度・高利潤率の持続性とその解釈」『日本経済政策学会年報』36巻,所    収予定,1988年春 Bain, J. S., “Relation of Profit Rate to lndustry Concentration: American Manufac−    turing, 1936−1940,” Quarterly lournal of Economies, voL 65, no. 3, Aug. 1951 Brozen, Y., “Significance of Profit Data for Antitrust Policy,” Antitrust Bulletin, vol.    14, spring, 1969       , “Concentration and Structual and Market Disequilibria,” Antitrust Bulletin,    vol.16, no. 2, summer, 1971a       , ’‘Bain’s Concentration and Rates of Return Revised,” Journal of Law and    Eeonomics, Oct. 1971b       , “The Persistence of ‘High Rates of Return’ in High−Stable Concentration    Industries,”ノburnal of Law and Economics, vol,14, no.2,0ct.1971c Collins, N. R., and L. E. Preston, Concentration and Price−Cest Margins zn Manufac−    turing lndttstries, University of California Press, 1968 Cowling, K., and M. Waterson, “Price−Cost Margins and Market Structure,” Econo−    miea, Aug. 1976 Dernsetz, H.,“Two Systems of Belief about Monopolゾ”in Industrial Concentration:    The New Leaning, eds. by Goldschmid, H.J., H. M. Mann, and J.一F. Weston,    Little, Brown and Company, 1974 楠田義・池俊広「製造業の価格変動要因分析」『経済分析』(経済企画庁)1979年8月 南部鶴彦『産業組織と公共政策の理論』日本経済新聞社,1982年 Peltzrnan, S., ’‘The Gains and Losses from lndustrial Concentration,” /ournal of Law    and Economics, voL 20, no. 2, Oct. 1977 Scherer, F. M., “The Causes and Consequences of Rising lndustrial Concentration,”    ノburnal ef Law and Economics, vol. 22, no.1, Apr.1979 新庄浩二「市場構造と価格一費用マージン」『国民経済雑誌』132.巻3号,1975年9月       「布場集中の計量的分析一最近の動向一」『国民経済雑誌』144巻1号,1981年7    月 Steindl, J., Maturity an4 Stagnation in American Capitalism, Blackwell,1952宮崎義    一・笹原昭五・鮎沢成男訳『アメリカ資本主義の成熟と停滞』日本評論新社,1953年 Stigler, G. J. CaPital and Rates of Return in Manufacturing lndustries, Princeton    University Press, 1963 (chap. 3: Competition and the Rates of Return)      ,The Organiaation Of lndustry, Richard D. Irwin, Inc.,1968神谷一二・余語    二尊訳『産業組織論』東洋経済新報社,1975年 植草益「利潤率と市場構造諸要因」『三田学会雑誌』1970年7月       『産業組織論』筑摩書房,1982年

参照

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