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-第2節 総合学習「BIWAKO TIME」
1.研究主題によせて 「各国においては,学校の教育課程の国際的な 通用性がこれまで以上に強く意識されるようにな っているが,“生きる力”は,その内容のみなら ず,社会において子どもたちに必要となる力をま ず明確にし,そこから教育の在り方を改善すると いう考え方において,この主要能力(キー・コン ピテンシー)という考え方を先取りしていたと言 ってもよい。」(2008 年 1 月 17 日 中央教育審 議会答申) 「新しい学力観」と学力低下論争以後「生きる 力」と「コンピテンシー」と「学力」について議 論が盛んである。キー・コンピテンシーとは, OECD「経済協力開発機構」による PISA「国際学 力比較テスト」での調査対象となる「能力」であ り,日常生活のあらゆる場面で必要なコンピテン シーをすべて列挙するのではなく,コンピテンシ ーの中で,特に,人生の成功や社会の発展にとっ て有益,さまざまな文脈の中でも重要な要求(課 題)に対応するために必要,特定の専門家ではな くすべての個人にとって重要,といった性質を持 つとして選択されたもの,個人の能力開発に十分 な透視を行うことが社会経済の持続可能な発展と 世界的な生活水準の向上にとって唯一の戦略と定 義づけられる。 このキー・コンピテンシーは3つのカテゴリー に分けることができる。 ①社会・文化的,技術的ツールを相互作用的に活 用する能力 ・言語,シンボル,テクストを活用する能力 ・知識や情報を活用する能力 ・テクノロジーを活用する能力 ②多様な集団における人間関係形成能力 ・他人と円滑に人間関係を構築する能力 ・協調する能力 ・利害の対立を御し,解決する能力 ③自立的に行動する能力 ・大局的に行動する能力 ・人生設計や個人の計画を作り実行する能力 ・権利,利害,責任,限界,ニーズを表明する能 力 このキー・コンピテンシーの枠組みの中心にあ るのは,個人が深く考え,行動することの必要性。 深く考えることには,目前の状況に対して特定の 定式や方法を反復継続的に当てはめることができ る力だけではなく,変化に対応する力,経験から 学ぶ力,批判的な立場で考え,行動する力が含ま れる。 その背景には,「変化」,「複雑性」,「相互 依存」に特徴付けられる世界への対応の必要性。 具体的には, ①テクノロジーが急速にかつ継続的に変化してお り,これを使いこなすためには,一回習得すれば 終わりというものではなく,変化への適応力が必 要に。 ②社会は個人間の相互依存を深めつつ,より複雑 化・個別化していることから,自らとは異なる文 化等をもった他者との接触が増大。 ③グルーバリズムは新しい形の相互依存を創出, 人間の行動は,個人の属する国をはるかに超える, 例えば経済競争や環境問題に左右される。 (以上第 10 回全京都美術教育連合研修会 愛知 教育大学 藤江 充教授講演会資料より引用) 3つのキー・コンピテンシーのうち,②は以前 から BIWAKO TIME の一つの学習目標として求 めていたものである。①については,今年度新設 の情報科でクローズアップされてきているリテラ シーである。教科の枠を超え,全教育活動の基礎 基本となるリテラシーである。 新学習指導要領の中で,総合的な学習は縮小化 の方向であるが,教科の総合としての位置づけは 変わっていない。教科でリテラシーを高め,総合 的な学習で総合的な力を伸ばすということは方向 性としては変わっていない。基礎基本のないとこ ろに応用も発展もないという学力観がその背景に ある。学習目標が明確でなく,身につけさせたい 力が見えにくい総合的な学習をリテラシーという 観点でとらえ直し,キー・コンピテンシーを教科 の側から育て,総合的な学習で実のあるものに結 晶化させようというねらいがそこから窺える。 今年度の BIWAKO TIME では,とくにキー・コ ンピテンシー①を高めるために,従来のグループ シンキングに情報科で学ぶシンキングツールなど の方法を取り入れ,情報科との関連を図りながら, 学習を展開していった。以下,現在の「BIWAKO TIME」の概要について 説明するとともに,今年度の「BIWAKO TIME」の 実践と研究成果について述べることとする。 2.総合学習「BIWAKO TIME」の概要 「BIWAKO TIME」の学習は,20 年以上に及ぶ長 い歴史を持ち,本校が全校体制で臨む学習である。 環境・郷土を題材とした「学び方」を学ぶ調査研究 型の総合学習であり,必修教科等の学習で得た知 識や体験を新たに認識し,より高度な知識体系へ と再編化することを目的としている。 以下,具体的に「BIWAKO TIME」の学習につい て紹介する。 (1)異学年合同 1年生から3年生までが入りまじった研究グル ープを構成させる。そして,学年ごとの目標を設 定し,グループ内でも目標に合うように役割分担 をさせる。 この学習形態により,下級生が上級生から自然 と「学び方」を学べるように配慮している。 (2)領域別の学習 生徒は「自然」,「人と自然」,「人」,「人と社会」, 「社会」の5つの領域に分かれ,担当教師とともに 研究を進める。教師 1 名あたり約 30 名の生徒を担 当する。 (3)サテライト コンピュータ・図書・電話等,生徒の学習をサ ポートする教室(サテライトルーム)を設け, 「BIWAKO TIME」の時間中は自由に利用すること ができるようにする。 各サテライトルームの役割は,表 1 の通りであ る。 (4)中間発表会 学習の折り返し地点である夏休み前の時間に, 生徒がお互いに現在の調査研究活動のすすみ具合 を確認し合い,今後の課題とその解決方法につい て助言し合う。発表会はポスターセッションの形 式で行う。 図 2 サテライトルーム 図書(情報図書室) 調べたい内容について書籍を調べたり,先輩の残した学習成果(「グループファイル」)を閲覧し たりできる。 「グループファイル」とは,収集したパンフレットや資料を研究過程に沿って綴じ込んでいった一 種のポートフォリオである。これを配架(3年保管)し,数に限りのある郷土資料を補ったり,前年 度までの成果や課題を調べさせて,研究がより深まるようにさせたりして活用している。 利用者には「なんとなく調べにくる」グループが多いので,申請書に具体的に何を調べたいのかを 書かせたり,カウンターから積極的に声をかけたりしている。また,BT開始前の4月に効果的な情 報の検索方法について一斉学習(初歩的なレファレンス演習)を行うなど,利用指導も行っている。 コンピュータ(コンピュータ室) インターネットを活用して情報を収集したり,調査活動を通して集めたデータを加工したり,発表 のためのプレゼンテーション資料を作成することができる。 家庭で調べられる内容は,事前に調べておくよう指導し,グループで協力して調べなければならな いことを中心に利用させるようにしている。 インターネットから得た情報をそのまま移し替えるような研究にならないように,BT開始前の4 月に効果的な情報の検索方法について一斉学習を行っている。また,目的意識を持って活動させるた めに,申請書を詳しく記入させたり,一台あたりの利用人数を制限するなどの事前指導を行っている 。さらに,活動の様子を1グループずつ評価して,その都度,各分科会担当者に返している。 ものづくり(家庭科室) 調理実習や被服製作,模型作りを行うことができる。 おもに「D人と社会」「E社会」領域のグループが利用することが多く,本年度は,滋賀の伝統料理を 作ったり,滋賀のおみやげとしてお菓子を作るなど,調理実習を行うグループや,ろうそくを作るた めに利用したグループがあった。 実習が安易なものにならないように,分科会の担当者と連携を取りながら,準備物や実習の方法に ついて指導した上で,利用させるようにしている。特に,滋賀の伝統料理を作る場合,必要な食材( 湖魚など)を買い付けに行くところから生徒にさせて,食材そのものの入手が簡単ではないことも体 験させるようにしている。 実験(理科室) 理科室は本年度より開設したサテライトルームである。これまで,各分科会の担当者で指導してい た実験指導や理科的な研究に関わるアドバイスを一括して行う目的で開設した。 「A自然」「B人と自然」領域のグループが利用することが多く,研究そのものの方向性についても相 談することが多かった。 例年,琵琶湖の水を採取して,パックテストを行ったり,顕微鏡でプランクトンを観察したりする グループが多数ある。本年度は,鍾乳石を作ったり,ブルーギルの胃の内容物を調べたり,ヨシを使 った浄水,地元のマンガン鉱山のマンガンで電池作りをするグループなど多様な実験が繰り広げられ ている。そのため,次の準備物を揃えさせたり,事故のないように十分配慮して指導を行っている。 渉外(職員室) 職員室では,校外学習に向けて電話やメールでアポントメントをとったり,サテライトルームの利 用や物品の利用に関わる申請書を書いたりするグループの指導を中心に行っている。 電話をかける場合は,ワークブックに聞きたいことや話す内容をあらかじめ記入させ,その内容に ついて事前に指導している。 校外学習が集中する時期には,対外的な連絡をとるグループが多く,その支援に追われることが多 い。 人と出会ったり,新しい体験をしたりすることで研究を深めようとするグループの活動を支援する ためにも,校外学習の目的を確認し,明確にさせるようにしている。 表 1 サテライトルームの役割 図 1 領域
111 -(5)領域別発表・全体発表 領域ごとの発表を経て,各領域代表による全体 発表を行う。 領域別発表は保護者も参観し,これまでの成果 を評価してもらう。 また,昨年度からの継続した研究で,環境に関 わった特に優秀なグループについては,夏休みの, 全国 PTA 大会に附属中学校代表として参加する こととなった。大津市 PTA 大会においてもその発 表を披露した。 (6)学習日程 夏休みをはさんだ約 40 時間の学習であり,長い 時間を使って1つの課題にじっくりと取り組むこ とができる。 校外学習の機会が持てるよう,午後2時間連続 で学習することが多い。表2は,今年度の学習日 程である。 (7)「BIWAKO TIME」の成果保存・活用方法 学習において,個人で学習を記録するワークブ ック以外に,写真4のように,グループごとに収 集した資料等を整理するためのファイルをつくっ 写真 1 中間発表会 写真 2 領域別発表会 写真 3 校外での学習 1・2 4月 26日(木) BTとは (1年生) BTのねらいや学習の進め方についての説明を 聞きます。 3・4 5月 1日(火) 全体ガイダンス 全員でガイダンスを聞き,希望する領域を決定 します。 5・6 5月 16日(水) 領域オリエンテーション 領域ごとに分かれ,基礎学習を行います。 7・8 5月 23日(水) 研究テーマ決定 研究テーマを決定します。 9・10 6月 1日(金) グループ決定,企 画書作成 グループを決定し,具体的な研究計画を立てま す。 11・12 6月 4日(月) 調査研究活動1 13・14 6月 6日(水) 調査研究活動2 校外での活動がやりやすい日です。 15・16 6月 11日(月) 調査研究活動3 校外での活動がやりやすい日です。 17・18 6月 19日(火) 調査研究活動4 校外での活動がやりやすい日です。 19・20 6月 27日(水) 調査研究活動5 校外での活動がやりやすい日です。 21・22 7月 3日(火) 調査研究活動6 発表準備 23・24 7月 6日(金) 調査研究活動7 発表のリハーサルをしておこう。 25・26 7月 11日(水) 中間発表会 これまでの調査研究活動の成果を発表すると共 に,足りない点を確認します。 27・28 7月 13日(金) 中間発表会の反 省,夏休みの計画 発表会の反省をもとに,夏休みの活動の計画を 立てます。 夏休み 領域担当の先生と相談し,夏休みを利用した調査・研究活動を行います。 29・30 8月 31日(金) 夏休みの活動の まとめと,今後の 計画 プレゼンテーション基礎 夏休みの活動の成果をまとめ,今後の学習の計 画を立てます。 発表の技術アップを図ります。 31・32 9月 7日(金) 調査研究活動8 夏休みまでの調査研究活動で足りない点を補う と共に,発表の準備をします。 33・34 9月 13日(木) 調査研究活動9 校外での活動がやりやすい日です。 35・36 9月 14日(金) 調査研究活動10 37・38 9月 18日(火) 調査研究活動11 39・40 9月 20日(木) 調査研究活動12 発表のリハーサルをしておこう。 41・42 9月 25日(火) 領域別発表会 43 9月 26日(水) 領域別反省会 発表会の反省をし,領域代表を決定します。 44・45 10月 2日(火) 全体発表会 46 10月 3日(水) 反省とまとめ 今年の研究をしっかりまとめ,今後の学習につ ながるようにしましょう。 47・48 10月 9日(火) 3年間のまとめ (3年生のみ) 自分の3年間の「BT」を振り返り,まとめま す。 49・50 10月 11日(木) 3年間のまとめ 51・52 10月 12日(金) 3年間のまとめ 表 2 本年度の学習日程
No テーマ No テーマ
A11 浄化能力をもった生物 B35 ボランティア in 滋賀
A12 水から学ぶこと B36 THE・森人
A13 50 年後の滋賀を大予想 C1 Those who cherish tradition(s)!
~伝統を重んじる人々~ A14 水質予想洗隊BIWAKOレンジャー(未
来水質予想図)
C2 Shiga ☆ chara!!
A15 地震が来るのはいつ? C3 We communicate the goodness of shiga
~滋賀県人会から学ぶ滋賀の愛し方~
A21 森林が周りに与える影響 C4 若者とお年寄りの未来を変えろ!!
~世代を越えたつながり・・・その先 にあるものは?~
A22 周りが森林に与える影響 C5 HUMAN NETWORK
~和菓子を求めて~ A23 琵琶湖の移動経路と現在の琵琶湖 の湖底に共通する鉱物はあるのか C6 Shiga Sweets ~込められた人々の思い~ A24 Let's BQR!! D11 穴太衆
A25 Drink with Biwa D12 彦根の歴史
A26 未来につながる水質汚染の予防策 D13 安土から信長の野望を探ろう A31 プランクトンの生態 D14 信楽焼 A32 琵琶湖に及ぼす外来魚の影響 D15 滋賀にまつわる怖い話 A33 未来の水はどうなるの? D21 現代から見た近江商人 A34 水質とプランクトンの関係 D21 現代から見た近江商人 A35 固有種を守ろう! D22 近江が産んだ商人たち A36 川や湖のプランクトンと水質 D23 置き薬~人と社会を結ぶもの~ B11 Spring Water D24 シムシティ in 長浜 B12 余呉湖 VS 琵琶湖 D25 OTSU MATSURAERS B13 永源寺ダムについて D26 大津祭と長浜祭の違いを探ろう! B14 THE VEGETABLE D31 ヘル滋ー賀 ~滋賀の健康を求めて~ B15 地震に影響を受ける生き物と自然 D32 食から見る滋賀の健康
B16 Electrolysis in Lake Biwa D33 A baton of the food
B21 ダムと災害の関係 D34 Fresh Water Clam
B22 地震と対策~その時地面が動いた ~
D35 Brighten in the Future 移動屋台 B23 地震と自然との関係,地震への対
策,地震と森
D36 Nice Move Stand And We
B24 過去の地震から生かす未来 E1 滋賀県民の新幹線革命 B25 大地震~明日起こる可能性~ E2 おみやげ∞ B31 人とものづくりと水~きれいな水 って何だろう~ E3 高齢社会~私たちの未来~ B32 琵琶湖環境と人~環境問題の原因 と対策~ E4 滋賀の城と歴史との関わりについて B33 水質悪化,外来魚問題に立ち向かう 人々 E5 古より伝わる滋賀の挿話シガデン B34 自然環境の現状~自然の摂理~ ている。ファイルに は 収 集 し た 資 料 の 他,発表時の原稿や OHPシート,写真, MO,FD ディスク等 を保存させている。 今年度から,デジタ ル デ ー タ に つ い て は,活動のある間は USB フラッ シュメ モリに保存し,学習 が終了した時点で全 データを DVD ディ スクに一括して保存 している。 これまでのファイルは情報図書担当の協力の 下,写真5のように領域ごとに分類し,学校図書 館に保管されている。デジタルデータについては 次年度以降も閲覧したり,次の研究に活用できる ように DVD ディスクを各分科会分作っておき, 閲覧したり,活用できるようにしておく。 さらに,ファイルが保管されている書架のそば には「BIWAKO TIME」で利用する,郷土滋賀に関 する図書もあわせて設置するなど,生徒が研究の 参考となる資料を検索しやすい環境を整えてい る。ファイルは現在約 300 冊保管している。 3.今年度の生徒の研究活動 今年度の研究グループは,全 63 グループであ る。また,各領域・各グループの研究テーマは表 3の通りである。どのグループも上級生のリーダ ーシップのもと,大変興味深い研究成果をあげる ことができた。 表3では,領域名をAからEのアルファベット で示している。 A領域は「自然」,B領域」は「人と自然」,C領 域は「人」,D領域は「人と社会」,E領域は「社会」 をそれぞれ示している。 本年度の傾向としては,A領域「自然」,B 領域 「人と自然」,D領域「人と社会」への希望が多く, 分科会数がそれぞれ3つとなった。 グループによっては,2年生がリーダーとなる ところもあったが,3年生が分科会全体のリーダ ーとして他グループの支援も行っていた。 上記の研究グループの中で,各領域代表として 選出された研究グループとそのテーマ名は次の通 りである。 写真 4 グループ別ファイル 写真 5 分類されたファイル
113 -A領域:A21「森林が周りに与える影響」
B領域:B16「Electrolysis in Lake Biwa」 C領域:C5「HUMAN NETWORK ~和菓子を求めて~」 D領域:D11「穴太衆」 E領域:E5「古より伝わる滋賀の挿話シガデン」 BT7 special select:A12 「水から学ぶこと」 全体発表会での様子は次のようなものである。 A21「森林が周りに与える影響」は,図書室やコ ンピュータ室で調べたことをまとめる活動が中心 だったが,森林の持つ多面的な機能を巧みなプレ ゼンテーションによりわかりやすく説明すること ができた。
B16「Electrolysis in Lake Biwa」は,「琵琶 湖の電気分解」をテーマに琵琶湖の「低酸素化」・ 「富栄養化」に注目し,調査研究活動を行った。 その方面では先端的な技術を誇る県琵琶湖研究所 を訪れ,話を聞き,実際に電気分解装置を作って 実験した。この研究は大変興味深いものであり, これから先の未来についても言及する内容の発表 であり,見ている人の関心を誘うことができた。 C5「HUMAN NETWORK~和菓子を求めて~」 は,'人と人とのつながりについて、和菓子をキー ワードに調査・研究を進めることができた。校外 へ出向き、職人の方へのインタビューをはじめ、 街頭インタビューでの実際の声を反映させた発表 は大変聞き応えのあるものとなった。 D領域:D11「穴太衆」は,昨年度から引き続き ,穴太衆についての調査を意欲的に進めた。提言に は苦心したが,穴太積みと現代人の生き方とを関連 づけ,全校に発信することができた。 E5「古より伝わる滋賀の挿話シガデン」は, 古より伝わる滋賀の挿話シガデンというタイトル で,滋賀に伝わる伝説を中心に調べた。スライド 形式のムービーを織り込み,ロマンチックな展開 をもった発表を行った。 BT7 special select:A12 「水から学ぶこと」は, 水という大きなテーマの中でさまざまな実験や多 くの人との出会いを通して,じっくり研究を進め ることができた。本年度は,水温躍層という新た な内容を盛り込み,水温・プランクトン・水質の 関係を的確にとらえた研究を進め,明確な結果を 導くことができた。 いずれのグループも大変興味深い内容であっ た。発表も大変わかりやすく,視聴する側の興味 関心を高めるために,クイズをはさんだり,対話 形式にしたり,さまざまな工夫を凝らしながらプ レゼンテーションを行っていた。 今回は BT7 special select という本年度のみの 特別発表枠を設け,ユニークで深まりのある研究 を行っているグループを領域代表とは別に全体発 表の代表に選んだ。これは,本年度の重点目標で ある情報リテラシーの読解・分析・批評という観 点で研究を深められているグループを教師が選 び,推薦していこうという教師側の姿勢の表れで ある。領域内で選ぶ際に,ともすると発表が上手 なグループが選ばれがちで,おもしろい研究をし ているが発表が地味なグループがなかなか選ばれ ない。そんなグループにも全体で発表してもらい たいという思いから特別発表枠を設けた。
4.今年度の重点的取り組み 今年度は,これまでの経験を生かした上で,さ らに生徒の学習が深まるように以下の 2 点につい て重点的に指導を行った。 ① 重点目標の意識づけ,情報科とリンク 「情報リテラシー・社会に活きる提言」 ② 情報の効果的発信法復習,AIDMA の確認 「プレゼンテーション基礎」 以下,今年度の重点的取り組みについて具体的 に述べることとする。 (1)重点目標の意識づけ,情報科とリンク 近年,調査研究活動の初めの段階で,生徒がコ ンピュータを利用して,さまざまな検索を行うこ とが多くなった。 しかし,検索した内容を深く吟味することなく その後の調査研究活動のよりどころとすることが 多く,情報を鵜呑みにした結果,研究そのものが 誤ったものになることがあった。また,ステレオ タイプや一面的な見方,近視眼的な思考傾向もみ られ,読解・分析・批評を繰り返しながら物事の 本質に迫ろうとする探求心に欠ける面も多く見受 けられた。複眼思考で多面的に物事をとらえるこ とで,その全体像や本質が見えるようになるとい うことを全体ガイダンスの中で示した。 (2)情報の効果的発信法復習,AIDMA の確認 情報の効果的な発信については,滋賀大学の宮 田仁先生に昨年度の講演で教えていただいた情報 発信に関わるAIDMAの考え方を今年度はプレ ゼンテーション基礎で復習した。そこで学習した ことが全体発表会でも発揮された。 これまでも本校の情報生活科で,情報に関する 様々な学習を行ってきたが,今年度は情報科の中 で情報基礎学習を行い,情報科で身につけたシン キングツールなどのスキルが,「BIWAKO TIME」 調査研究活動の深化に大きく影響したと考えてい る。 図 6 全体ガイダンスプレゼンテーション抜粋
115 -5.総合学習「BIWAKO TIME」の学習効果検証 一昨年度,「BIWAKO TIME」の学習効果検証を 行うために在校生・卒業生を対象としたアンケー トを実施した。今年度も昨年度に引き続き,在校 生を対象にカリキュラム評価アンケートを実施し た。 以下,アンケートの内容と特に昨年度と比較し て顕著な違いが見られた点について述べることと する。 アンケートは,すべての学習を終えた直後に実 施した。 A 学習評価 (1:はい 2:いいえのどちらかで答えてください) 1 あなたは,昨年度までの生徒の調査結果や制 作物を参考にして学習を進めましたか。 2 あなたは,上級生から教えてもらったり,ま た,下級生に教えてあげたりしましたか。 3 あなたは,男女間で学習の協力をしましたか。 4 あなたは,同じベースルームの他のグループ の学習内容を参考にして学習活動をしましたか 。 5 あなたは,同じベースルーム以外の班と情報 交換をしたりして学習の交流を行いましたか。 6 あなたは,昨年度の自分の学習成果(一年生 の場合は小学校で習ったこと)と,今年度の 学習内容を関連させましたか。 7 あなたは,学習の途中でわからなかったこと があったら他のベースルームの先生などに質 問したり,指導をしてもらったりしましたか。 8 あなたは,発表会で,他の領域の発表内容と 自分の班の学習内容とを比較して関連のある ことを発見しましたか。 9 あなたは,教科で学んだことを「BIWAKO TIME」の時間で生かすことがありましたか。 10 あなたは,「BIWAKO TIME」を通して,「 私は郷土の滋賀県に住んでいるんだ。」とい う実感を持ちましたか。 11 あなたは,「BIWAKO TIME」を通して,「 今まで自分の郷土について知らないことがた くさんあった。」という実感がありましたか。 12 あなたは,「BIWAKO TIME」を終えた今, 来年度の学習で(三年生の場合は,今後の学 習において)調べてみたいことがありますか。 13 あなたは,「BIWAKO TIME」を通して,び わ湖の課題や重要性,生活との結びつきなど についての発見がありましたか。 14 あなたは,自分なりの考えで学習を進めたり まとめたりしましたか。 15 あなたは,「BIWAKO TIME」を通して,「
今まで,なにげなく考えていた郷土について 新しい驚きがあった。」と感じましたか。 16 あなたは,「BIWAKO TIME」で,新しい学 び方や発表の仕方を習得しましたか。 17 教師からの指導は,自分で分からないことが 出てきたときだけの最小限のものでいい。 18 調査・研究の進め方などについて,授業形式 で十分に指導してもらいたい。 19 学習目標のたて方,テーマの選び方,学習の 仕方,まとめ方と発表の仕方などについて常 時細かく指導してほしい。 20 学習の進め方についての詳しい解説をのせた 学習ガイドブックが必要だ。 21 学習活動のよしあしについて教師から意見や 評価を言ってほしい。 はい いいえ Aの学習評価の中で,「はい」の占める割合が高 かったのは,項目 11 の「あなたは,BIWAKO TIME を通して,今まで自分の郷土について知らないこ とがたくさんあった,という実感がありました か。」,項目 13 の「あなたは,BIWAKO TIME を 通して,びわ湖の課題や重要性,生活との結びつ きなどについての発見がありましたか。」,項目 14 の「あなたは,自分なりの考えで学習を進めたり まとめたりしましたか。」,項目 16 の「あなたは, BIWAKO TIME で,新しい学び方や発表の仕方を 習得しましたか。」である。生徒が主体的に郷土学 習に取り組む中で,学び方・発表の仕方が身につい ていることを実感として持っている様子が窺える。 それ以外で高かったのは,項目2の「あなたは, 上級生から教えてもらったり,また,下級生に教 えてあげたりしましたか。」についてである。 逆に「はい」の占める割合が低かったのが,項 目4の「あなたは,同じベースルームの他のグル ープの学習内容を参考にして学習活動をしました か。」,項目5の「あなたは,同じベースルーム 以外の班と情報交換をしたりして学習の交流を行 いましたか。」で,これらは,グループを超えた 大きな交流が少なかったことを示している。また, 項目 18 の「調査・研究の進め方などについて,授 業形式で十分に指導してもらいたい。」,項目 19 の「学習目標のたて方,テーマの選び方,学習の 仕方,まとめ方と発表の仕方などについて常時細 かく指導してほしい。」で,教授型の授業形式よ りも,自らがテーマを発見し,調査研究や発表の 仕方について探究し,学習を進めていく授業形式 の方がよいと考えていることがそこから窺える。 反面,項目 21 の「学習活動のよしあしについて教 師から意見や評価を言ってほしい。」が 6 割にの ぼり,自分たちの研究の方向性について客観的な 評価を求めていると考えられ,今後どのように領 域内での指導方法や評価の場面を設定していくべ きかという課題が浮き彫りになってきた。指導支 援,評価のバランスをどうとっていくか,指導支 援の方法について研究していく必要がある。 これらの分析データから推察すると,OECD が提 唱するキー・コンピテンシーの柱となる「個人が 深く考え,行動する」ということを生徒たちも求 めているということが言えないだろうか。 B 時間数について(1~4 の中から選んでくださ い) 1.「BIWAKO TIME」は廃止して他の活動の時 間にしてほしい 2. もっと少なくしてほしい 3. もっと増やしてほしい 4. 今のままでよい 1 2 62% 38% 30% 29% 64% 83% 74% 83% 73% 65% 85% 75% 67% 70% 65% 52% 39% 47% 45% 81% 57% 38% 62% 70% 71% 36% 17% 26% 17% 27% 35% 15% 25% 33% 30% 35% 48% 61% 53% 55% 19% 43% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
117 -C 異学年混成の班について(1~4 の中から選んで ください) 1. 混成にはなりたくない 2. テーマが同じであればなってもよい 3. できればなりたい 4. ぜひ異学年の人と学習してみたい 上記Bのカリキュラム評価の中で,昨年度と大 き く 変 わ っ た 項 目 は な か っ た 。 8 割 の 生 徒 が 「BIWAKO TIME」の学習をこのままの時間数で設 定してほしい,さらに増やしてほしいと答えてお り,より充実した研究を行いたいという意志が各 学年ともに見られた。 C の異学年混成の班については,テーマが同じ であればなってもよい,ぜひ,異学年の人と学習 してみたいと答えた割合が8割にのぼった。異学 年合同についてはおおかたの生徒が意義を認めて いることを示している。 「BT」これまでの活動を振り返ってのアンケート では,班でしっかり協力でき,話し合いや役割分担 もしっかりできたという意見が多かった。「BT」の 学習の成果に満足していますかについては,特に 「班の力を合わせて,一つの結論が出せたこと」「先 輩に分からない時,困ったとき,助けてもらって最 後までしっかりできたこと」「異学年の人たちと, 交流ができ,みんなで考え合って完成させたこと」 「好きなことを調べられたこと」「自分たちで研究 を進められたこと」「パワーポイントの作製」「校 外に行って色々なことを聞けたこと」「実験や校外 の学習」「街頭アンケートを全て集計し,考察でき たこと」「全体発表まで行けたこと」「納得のいく 提言ができたこと」などが挙がっていた。 これらは,プログラム型の学習よりプロジェクト 型の学習の方が生徒は意欲的になり,学習成果に満 足できるということを示しているのではないだろ うか。 6.最後に 新学習指導要領の中で,総合的な学習は縮小の 方向にあるが,最初にも述べたとおり,総合的な 学習は教科の枠を超えて“生きる力”を育む学習 であるという位置づけは変わらない。決められた 方向に進められるプログラム型の学習よりも多方 向にダイナミックに展開するプロジェクト型の学 習の方が,「変化」,「複雑性」,「相互依存」 に特徴付けられる世界に対応する“生きる力”を 育むのに最適であると考える。 今 年 度 で 25 年 に な る 総 合 学 習 「 BIWAKO TIME」は,日本におけるプロジェクト型学習の草 分けであり,長年にわたって豊かな学習の土壌を 育み,数多くの成果を上げてきた。 昨今 PISA 型学習という言葉が,世を賑わせて いる。その PISA で求められるコンピテンシー, OECD の提唱する3つのキー・コンピテンシーは, 本校が進めている情報科と総合学習においても求 めているものである。そのコンピテンシーは教科 の枠を超える根本的な力であり,全教育活動の中 心的な目標であると認識している。伝統のある 「BIWAKO TIME」と情報科との関連を図りながら これらキー・コンピテンシーを育てる教育方法に ついて研究を深めていき,日本の教育の方向性に 大きな示唆を与える取り組みを続けていきたい。 (馬淵 哲) 1 2 3 4 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 1