中国雲南のシャーマニズム研究 一エリアーデのシャーマニズム論とその再検討一 その1
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(2) のシャーマニズム」 と短絡的に捉えて誤解 している面 も少なくないからである。よく論文の枕 詞 に「シヤーマニズムは脱魂型 と憑霊型の二つのタイプがある」 と触れているのを目にするこ とがある。果た してそうなのであろうか。その疑間 を解 くために、これまで行なって きた日本 エ リアニデの英語版『シャー 「雲南」と略)の 調査経験から、 拙 い翻訳ではあるが、 と中国雲南 (以 下、 マニズム』 を訳 し、「脱魂のシヤーマニズム」の疑間に挑戦 してみた。 前世期末から今世紀初頭 にかけて世界の状況 は大 きく変化 し、今ではシベ リアの社会構造 と 類似 した雲南地域 のフイール ドワークも、アジア民族文化学会 のメンバー (特 に、工藤隆、真下厚、 「歌垣」「葬送儀礼 の歌」な どと日本の古代史や民 岡部隆志、遠藤耕太郎、手塚恵子、山田直巳な どの各氏 は、. 俗 と比較しながら研究に取り組んでいる)な どを中心 に研究が盛 んに行 なわれるようにな って きて い る。 自らの研究 とメ ンバーの先行研究 を参考 に、エ リアーデの言 う「エ クス タシーのシャー マ ニズム」 とは何 か を考 えてみ たい と思 ったか らである。 シャーマ ニ ズムの研究史. 二十世紀初頭 よ り開始 され、現代 に至 るロシアや欧米 のシヤーマ. ニズム研究史 を簡単 にた どつてお きたい。 シヤーマ ニズム研究 の初 めは、十九世紀 中頃、 ロシ アではシベ リアの各 地 に流刑 を余儀 な くされ た知識人 を中心 に先住民 のシャーマニズム研究 に 始 まる。彼 らの中に、流刑先 で先住民 の人 々 と生活 を共 に しなが ら、先住民 の言語、生活習慣、 と りわけシヤーマ ニズム に関心 を向けて、それ らを記録 した人 々が いた。それ らの人達 に、特 ゛ にバ ンザ ロ フや ミハ イ ロ フスキー (WM.Mikhailowski,1846… 1904)な どが い た. )。. 一方、十 九世紀末か ら二 十世紀初頭 にかけて北極 圏 に関心 を持 ったのは、アメリカの 自然史 博物館 のボアズ (Franz Boas,1858-1942)な どのジ ェサ ッブ北太平洋探検 隊 (1897-1921)で あ つた。 そ の後、 シベ リア先住民 の調査研究 に携 わって い た研 究者 の ヨヘ ル ソンや ボ ゴ ラス (Vladimir Gemanovた h BOgoraz,1865… 1936)も ロシア政府か ら派遣 されて、この探検 に参加 してお り (1900-1902)、. 北極 圏 における先住民、 イヌイ ッ トの人 々な どのシャーマニズム研究 は、 ロシア とアメ リカで ③ は学術 的な交流 を通 じて理論的な研究が行 なわれていた 。 他方、イギ リスにおいてシベ リアの先住民 の人 々の社会 と文化 に関心 を持 っていたのは、オ ッ クス フォー ド大学 のマ レッ ト (Robe■ Ranulph Mttett,1866-1943)で あ つた。 この 頃、開設 されたば 一緒 にポー ラ ン ドか らイギ リス に留学 (1910)し て きたのは、 か りの社会人類学 に関心 を持 って、 ツ ァプ リカ. (Mttia Antojna Czaplicka,1884-1921)と. Malinowsk。 1884-1942)と. 、 友 人 で 同年 の マ リノ ウス キ ー. (BrOnislaw Kasper. で あ つた。 マ レッ トは、 ロ シア語 な どの 語学 に堪 能 な ツ ァプ リカ を指導. して、 シベ リア先住 民 の研 究 を勧 めた。 当時、 シベ リア先住民 の研 究成果 の全 体 を見通す こ と ので きる立場 にあ つて、 同時 にアメ リカ と も交流 の あ ったの は、 先述 の優 れ た ロ シアの民族学 者 ヨヘ ル ソ ンで あ った。 ツ アプ リカは、 ヨヘ ル ソ ンの協 力 を得 て、半世紀 に及 ぶ シ. ベ リアや北. 欧 の 先 住 民 に 関 す る膨 大 な研 究 報 告 を読 み あ さ り、 そ の 研 究 成 果 を人 類 学 的 な視 点 か ら “ Abo五 ginal Sibe五 a",1914.(『 シベ リア先住民』拙抄訳、2016年 、岩田書院)と して ま とめ上 げ、 欧米 の研 究者 に情報 を もた らせ た。 50.
(3) また、 この 頃 ロシア人の シ ロコゴロ フ. (sergei Mikhailovich Shirokogorov,1887…. の ソルボ ンヌ大学 に留学 (1906-1910)し て民族誌学. (こ. 1939)は 、 フランス. の頃、レビブリュールやディルケムが教授とし. て活躍)を 学 び、 帰国後 ツ ングース の人 々の調査研究 に携 わった。そ して、その後 ウラジオス トッ クの極東大学で教授職 (1918-1922)に あ ったが 、 ソビエ ッ ト連邦 の成立 (1922)に よ り中国に亡 命 し、中国北京 で先行す るツァプリカの報告書 を意識 しなが ら、その研究成果 を民族誌学 の視 Thc Psychomental Complex of the Tungus",1935。 点か ら “. (『. ツングースの人々の精神的複合』拙抄訳、. 2016年 、岩田書院)と して ま とめ上 げ、 マ レッ トを介 して、 当時 ロ ン ドンの 大手学術 出版社. Kegan Paul,Trench,Trubner&Co。 か ら発 売 した。. ツァブリカとシロコゴロ フの研究成果 はマ レッ トに認め られることで、イギ リス人類学の正 当 な流 れ と して、 後 の フ ァー ス (SL Raymond Wimaln Rrth,1901-2002)や ル イ ス. (IOan Myrddin Lewis,. 1930-2014)の 「憑霊 トラ ンス の シャーマニズ ム 」研究へ とそ の理論が受 け継がれて現代 に至 っ. てい る。 ツァプリカとシロコゴロフの果 た した役割 は、二十世紀初頭 にお けるシャーマニズ ム の本格的な学術的研究の幕開け として、極 めて大 きな研究成果であった と言 えよ う。 そ の後、二 人の研究成 果、そ こに掲載 された資料 を基 に、民俗学 の視点か らハ ル ヴァ (unO Harva,1882-1949)は. Ⅵ lke",1938。. ア ル タ イ地 域 の 旅 行 体 験 に よ り “ Die. religiё sen Vorstellungen der altaischen. (直 訳『アルタイ民俗の宗教表現』 、 邦訳『シャマニズムーアルタイ系諸民族の世界』田中克彦訳、. 三省堂、1989年 )を まとめ上 げた。 また、 このハ ル ヴァや シロコゴロ フの研究 に関′ ヽ を持 ったの 亡 はエ リアーデであった。 エ リアーデは、 先行す るイギ リスやアメリカの人類 学的研究 に加 えて、 「宗教 の歴 史学. (ネ. 申話学)」 やイ ン ドの先住民 の民俗研究や ヨーガ体験、キ リス ト教神秘主義 の. 視点か ら、世 界 に広が る古代 の人 々の神話や伝説 に注 目して、「 エ クス タシーの古代技術」 を 分析す るなかで、先行す る「憑霊 トラ ンスの シャーマニズ ム」論、特 にツァプリカやシロコゴ ロ フのシャーマニズム研究 に否定的に対抗 して、新たな「エ クス タシーのシャーマニズ ム」論 を展開 したに )。. 日本 のシャーマニズム研究 は、百二 十年前 にアメリカ人の ローエ ル が木曽御嶽 に登 り (1891年 、明治 24年 )、 山頂 で三人の若者 儀礼 を観察 して、それを “ occult Japan"1895。. al Lowen,1855-1916) (PeК 市. )が 執 り行 なう憑霊. (御 嶽行者. (御 座). ・ジャパン』2013年 、岩田書院)と し (拙 訳『オカルト. て まとめたのが最初である。ローエ ルは、当時 のアメ リカ心理学 を代 表す る先輩 の ウイリアム ・ ジェームス. (winiam James、. 1842-1910)│こ 指導 を受 け、宗教. (憑 霊)ト. ラ ンス. (reli」 ous― trance)に. 関 ヽ ′ を持 って 日本 にや って来てお り (10年 間に通算 3年 間日本に滞在)、 この報告 は紛 れ もな く、 日 亡 本 の「憑霊 トラ ンスの シャーマニズム研究」 で あ った 岩田書院、2016年 。pp433-441)。. (拙 抄訳・解説『シャーマニズムとはなにか』. しか し、 ローエ ルの研究 は、 日本ではその後百二十年以上 にわた. り民俗学、人類学 などの研究分野か らさえ も無視 された ままである。 無視 され続 け られてい る理 由の一つ に、日本では この六十年 (特 に、 堀訳から37年 )以 上 にわたっ て、エ リアーデの「エ クス タシーのシャーマニズム」論や柳 田国男以来の国内の巫俗研究が主 中国雲南のシャーマニズ ム研究 ― エ リアーデのシャーマニズム論 とその再検討一 その 1 51.
(4) 流 を占めていた。エ リアーデの. Fシ. Techniques archaiiques de l'extase"が. La Chamanisme ct les ャーマニズム』 は、フラ ンス語版 “. 1951年 に出版され、 トラスク. Shamanism:Archaic Techniques of Ecstasy"の よる翻訳英語版 “. (Willttd Ro Trask、. 1900-1980)に. 初版が 1974年 に、堀一郎氏 によ. る翻訳 日本語版 『シヤーマニズム』 が 1981年 に出版 されてい る。特に、堀氏による翻訳版が 出版 されて以来、日本のシャーマニズム研究者のシャーマニズム論 は、翻訳本をベースに して 展開 してきた傾向が少なからずあったと思われる。なかでも堀氏や佐 々木宏幹氏 はエ リアーデ のシャーマニズム研究 こそが、欧米のそれまでのシャーマニズム研究の総まとめ編であるとみ て、短絡的に「脱魂 のシャーマニズム」 として捉えてきた。 この曲解 されたエ リアーデ論に依 両氏のシヤー 翻訳以後三十七年以上にわたつて日本のシャーマニズム研究をリー ドし、 拠 して、 マニズム論 に刺激を受けた少なからぬ研究者達 まで もが、自らが原書 に直接当たることな く、 両氏の論を絶対視 し、追従 してシヤーマニズム論 を展開してきた。 しか し、果たしてエ リアー デの研究はそれまでのシャーマニズム研究の総まとめであったのであろうか。神秘主義に基づ く新 たな「エ クスタシーのシャーマニズム」論の提示ではあったが、先述のように、他方には Ecstatic religion:a ツ ァプ リカや シ ロコゴロフ以来、 ルイス (Ioan Myrddin Lewis,1930-2014)の “ study of shamanism and spirit possession"1971。. に至る研究があったにも関わらず、そ してルイス. はこの書でエ リアーデのシヤーマニズム論を 1971年 の段階で痛烈 に批判 し、すでに四十七年 以上を経過 しているにもかかわらず、 これらの研究 に十分な日配 りをす ることなく、まるでエ リアーデの研究が全てであるかのように受け止められてきた。結果 として、 日本のシャーマニ ズム研究 は、 欧米の「憑霊 トランスのシャーマニズム」研究の理論を十分 に検討 しない ままに、 エ リアーデー辺任1の 奇妙な折哀案 による「脱魂」論が主流を占め、 日本のシャーマニズム研究 を迷走させ、停滞せてきたと言 っても過言ではないと思 う。エ リアーデはツァプリカやシロコ ゴロフの研究 を十分に踏まえつつ も、ハルヴアの民俗研究、特 にシロコゴロフのツングースの 話的世界)に 基づいた独 自 「古代人のエ クスタシー体験」 (ネ申 シャーマニズム研究 を批判 しつつ、 のシヤーマニズム論 を展開 しているからである。特に、エ リアーデの思想はギリシャ哲学、キ リス ト教神学な どヨーロッパ思想の潮流を背景 にシヤーマニズム論が展開されている点は注意 ④ すべ きであると思われる 。 そ こで、エ リアーデのい う「エ クスタシーのシャーマニズム」 とは何か、誤解 されている部 “ 分 も少な くない と思われ、時間をかけて英語版 (1974)の Shamanism"を 丁寧に訳 し、その 後 に先行する堀 一郎訳 『シヤーマニズム』 (冬 樹社 1981年 、文庫本2004年 )と 拙訳 とを対比 しな が ら読み込んで、その原因を調べ、エ リアーデのい う「エ クスタシーのシヤーマニズム」 とは 筆者 は日本の御嶽 については三十年以上 (拙 著『木 拙訳 に基づいて考察 してみた。なお、 何かを、 曽御嶽信仰の研究』岩田書院、2002年 )、 雲南のシヤーマニズムに関 しては断続的に二十年以上実態 調査 に携わ り (拙 著『アジア山地社会の民俗信仰と仏教』岩田書院、2010年 )、 ツアプリカ以来のイギ リスの「憑霊 トラ ンスのシヤーマニズム」研究 52. (拙 編訳『シヤーマニズムとはなにか』岩田書院、.
(5) エ リアーデは雲南の ロロ 瞬 )や モソ 2016)の 理論に依拠する者 ではあるが、 の人々の神話を事例 として取 り上 げて. (英 語版で追加して)、. (摩 俊)、. ナシ. (納 西). エ クスタシーの論拠 としていること. から、雲南に関心を持つ者 としてエ リアーデのシャーマニズム論を取 り上 げて考察 してみるこ とにした。特に、わが国では、堀一郎の翻訳以来、シベ リアなど北方にこそ真正のシャーマニ ズムが存在 し、 日本など南方には擬似 の「憑霊」のシャーマニズ ム しか存在 しない とい う説、 さらに堀氏はエ クス タシー を「脱魂」 と訳 して「脱魂」 と「憑霊」の三分論を提示 し、それら が一部 には定説化 して、未だ乗 り越えられていないからである。今 は、二十一世紀である。近 年. (1990年 代以降)で はシベ リアと類似 した社会や文化構造をもった雲南社会の調査研究が上記. のように盛んに行なわれてきてい る。これまで長 く、「脱魂」なる奇妙な説に振 り回されてき たが、そろそろ新たなシャーマニズム研究に向けて、再検討する時期にきているのではないか と思われるからである⑤。 二 、『シ ヤー マ ニ ズム』の構成内容 とその概要 著者のエ リアーデは、宗教学 ・宗教史学者、民俗学者、神話学者、また小説家 としても知 ら れてい る。1907年 に、ルーマニ アのブカレス トに生 まれ、ブカレス ト大学 でルネサ ンス哲学 を学び、二十一歳のときにカルカッタ大学教授 のダスグプタ. (surendranath Dasgupta。. 1885-1952)の. 『イ ン ド哲学史』 を読み、イ ン ド哲学の研究を志 して、イ ン ドに留学 (1928-1931)し た。そこで イ ン ド哲学を学 び、 ヨーガ体験に基づ く二元論. (精 神と肉体)や 宗教的 シンボ リズムの重要性な. どを学 んだ。また、民俗学の視点からイ ン ド文化の形成にも関心を持ち、イ ン ド先住民の中に 「新石器人」の文化が根づいてお り、それがアー リア・ ドラヴイタ文化 よ りも、更に古 い農業 を基礎 とす る新石器文明であることを見出した。 この文明が新石器時代に根 を持つ、農耕の神 秘を基礎 とす る民俗的文化であることから、ルーマニアとバルカンなど古代 ヨーロッパ に広が る民俗文化 の重要性 につい て も再認識 するに至 った。イ ン ド留学か らルーマニ アに帰国後 (1931)、. ブカレス ト大学 (1933-39)で 比較宗教史、東洋哲学史を講 じ、著作活動 を行 うが、そ. の後 ロン ドンや リスボンなどで文化担当の大使館職員 として勤務 (1940-44)し た。戦後 はフラ ンス に移住 (1946)し て、ソルボンヌ大学で講師を勤めるなど自由な研究環境 の中で執筆活動 を行なった。その中で、例えば学位論文 『ヨーガ』、『宗教学概論』、『永遠回帰の神話 :祖 型 と 反復』 を書 き上 げている。さらに、 これらの著書で提示 した諸概念を前提にして、宗教史学の 立場か ら『シャーマニズム』 を四十四歳のときに書 いてい る。また、この. Fシ ャーマニズ ム』 ーマ には多岐 にわたる重要なテ が含まれてお り、 この書を基に、その後 も『イメージとシンボ. 『鍛治師と錬金術師』な どを書 き上 げている。その後、シカゴ大学の教授に赴任 (1957)し 、 ル』、 宗教学者のヨアヒム・ヮッハ (Joachim Wach 1897-1955)の ポス トを継いで活躍 し、 『生 と再生』、 『悪 魔 と両性具有』、『ネ 申話 と現実』、『聖と俗』などを書 き上げ、1986年. (79歳 )に 亡 くなった0。. 日本語版の 『シャーマニズム』 を訳出 したのは堀 一郎氏 (1910-74)で あった。堀氏は宗教民 中国雲南のシャーマニズ ム研究 ― エ リアーデのシャーマニズ ム論 とその再検討― その 1 53.
(6) 俗学者 で、東京大学卒業 (1932)後 、東北大学. (1955-66)、. 東京大学. (1964-71)、. 成城大学 な どの. 教授 を務 めた。 この 間に、 アメ リカのシカ ゴ大学 に留学 (1956-58)し 、 エ リアー デに出会 う。 1959年 には、国際宗教学会 を機 に来 日したエ リアー デ を、東北大学 に招 き、 エ リアー デは塩 釜で ミコ. (カ. ミサマ)の 儀礼 を観察 してい る。その後 もシ カ ゴ大学 で講義 (1965)を 行 ない、 こ. の と き 『シヤーマ ニズム』 の翻訳 につい て もエ リアーデ と話 し合 う。堀氏 は 1974年 、出版途 中の三校 の終了後 に、 この書 を見 る ことな く亡 くなった。 日本語版 の「訳者あ とが き」 に、翻 訳 テキス トは英訳版 (1964)と フランス語 第二版 (1968)に 基 づいて翻訳 した と記 してい る。 また、 「訳者覚書」 に、翻訳 は当時東大 の大学院生 だった長野泰彦氏 も加 わ り、長野氏 が第一 章か ら 第七 章 まで と、九章 か ら十二章 を、そ して堀氏が第八章、第十三章、第十 四章、エ ピロー グを 担当 し、全体 の用語 を統 一 したのは堀 で、全責任 は堀 にあると記 してい る。成城大学 に在職 し てい た当時は体調 を崩 して入退院を繰 り返 していた時期 とい われ、全体の七割以上 は長野氏 の 翻訳 で、長野氏 の翻訳 を読み、用語 を統 一 したのは堀氏 であった。 しか し、堀氏 の体調 の悪化 もあ ってか、全体 的には必 ず しも翻訳用語が統 一 されてい ない ことが気 にな り、独 自に訳 して みる ことに した。 Shamanism:Archaic Techniques of Ecstasy",1974.(Willard R.Trask訳 、 さて、 ここでは英語版 の “ 1972初 版、1974再 版)に 基 づい て拙訳 した。翻訳者 の トラス クは 1958年 と 59年 にシカ ゴ大学 で. エ リアーデ と一緒 に共訳作業 を行 ない、 フラ ンス語版 を大幅 に修正 し、新たな資料 を追加 した と前書 きで記 してい る。従 って、1974年 版 の英訳再版 が最終版か と思われる。ただ し、エ リアー 「 日本語版 へ の序」 を加 えてい るが、その原文 デは、堀 一郎氏 の 日本語版へ の翻訳 にあた り、 は英語版 には載 っていない。従 って、堀氏 の訳 の正誤が確認 で きない. 「脱魂」の解説は堀 (特 に、. 氏の考えが付け加えられているのではないかと思われるからである)の で、 ここでは 日本語版 の序文 を Shamanism",1974.(ペ ーパーバツク、寸法 21.5× 13.5cm)は 、表紙、 日次 除外 した。 この英語版 “. 4頁 、序文 13頁 、本文 14章 504頁. (著 者注含む)、. 結 び 4頁 、文献 54頁 、索 引 37頁 、全体 で. 616頁 に及ぶ著書 である。翻訳 は、この内の「 目次」か ら「結 び」 に至 る 525頁. (著 者注は省略). を一行ずつ辞書 に当た りなが ら丁寧 に拙訳 してみた。先 に も触 れたが、翻訳 に当たっては、以 ゛ 下 の点 に注意 して拙訳 した 。 一、訳語 について. エ リアーデは宗教学的に多様 な語彙 を使用 して表現 してい るが、堀氏訳. と拙訳 とを対比す ると、同 じ語彙が章 によって不統 一 に感 じられた。そ こで、拙訳 では語彙 の 訳語 を下記 の ように統一 して訳 してみた。 物理的 には、cosmosは 「宇宙」、それ らを包む planetは 「惑星」、 また、skyは 「空」、air は「空 中」、carthは 「地上 」、subteHaneanは 「地下、地下 の」 と訳 した。 また、宗教 的 ・神話 1、. 的に は、大 きく分 けて天空 は、「天上界」、「地上界」、「地下界」 に三区分 され、比較的 skyが 包括 的な意味 で多用 され、 また階層的 には heaven、 最高神 の存在す る所 は celestial、 死者 の魂 のゆ く場所 は paradiseと か heavenwardと して表 して い る ことが 多 か ったので、 これ らの語彙 54.
(7) の訳語 として、skyは 「天空 =天 上界」、heavenは 「天界」、celestialは 「天上」、paradiseと か heavenwardは 「天国」 と区別 して訳 した。そ して、 carthは 「地上界」 、さらに underworldは 「地. 下界、黄泉」、otherwOrldは 「他界」、infemalは 「地獄」、beyondは 「 あの世」、the. land Of the. deadは 「死者 の国」 、kingdom Of shadesは 「陰の王 国」 と訳 した。堀氏の訳は天空の区分が曖. 味 に訳 されている箇所 も多 々みられた。 2、. 入門儀礼における入信の仕方 として、vOcationは 特定の職業に神から召 され、使命感をもっ. て従事す るとい う意味で「神 のお召 し」、callは 一定 の職業になることを呼びかけられるとい う意味で「召命」、electionは ある特定の使命 を与える意味 で「神 の選 び」 と訳 した。堀訳は vocationを 「召命」 と訳すなど、callと 区別 していない箇所 もあった。 3、. 「力」 と「能力」の区別について、magical powerは 「呪術的力、呪力」 と訳 した。従って、. powerは 「力」、sttengthは 「精神的な力、知力」 、psychic ural forcesは. forceは. 「超能力、精神力」、supemat_. 「超 自然的力」、occult powersは 「ネ 申秘的力」、shamanic powersは 「シャーマニ ッ. クな力 」 な どと訳 した。 また、abilityは 「 能力 」、myStical faculty of magical ttightは. capacitiesは. 「ネ 申秘 的 な能力」、. 「呪術的な飛翔能力」 と訳 した。エ リアーデは pOwerと. capacityと. を. 使 い分けてお り、拙訳では「力」 と「能力」 、堀訳では「能力」 と「力」 と拙訳 と逆に訳 して いることが多かった。 4、. 特 に、堀訳 と拙訳 とで異なった訳語 は、spiritと. spiritualで. あった。spiritを 辞書. (『. ガヽ 学館. ランダムハウス英和大辞典』1979年 版)で 引 くと、人間の生命力 の根源、霊的な部分「心、霊魂、 精神」、超 自然的で実体のない「精霊」など。また、spiritualは 「精ネ 申、精神的な、霊的な」な “ どの訳が載 っている。また、エ リアーデは「精霊 sp静 it"」 は「死者」、 「 自然 の精霊」 、想像的 動物な どの「霊魂」 と等 しい存在 であるとも言 っている. (原 書p6)の. で、拙訳では spi五 tは 「精. 、spiritualは 「精ネ 神、精霊」 申的、精霊的」 と、どちらかと言えば「精神的」に重点を置いて訳 した。 これに対 して堀訳では、spiritは 「霊、精霊」 と spiritualは 「霊的、霊魂」などが多かっ た。たとえば、 10umeying in spi五 t"は 、拙訳では「精神的に旅行する」、堀訳では「魂の状態 で旅する」 とか「霊の形で旅する」 (原 書 p448)な ど、 “ in spi五 t"の 訳に違 いがあった。また、 spiritual ascentは. 、拙訳では「精神的な上昇」 と訳 ヽ堀訳は「霊の飛翔」 (原 書p405)と 訳 し tン. ている。堀氏 は ecstasy=「 脱魂」を前提に、肉体からの魂 の離脱 をイメージして訳 しているが、 しか しイ ン ド (第 十一章、堀訳p176)や 中国. (第 十二章、堀訳p246)で. は、spi五 tualは 「精神的」な. 意味合 いで用い られてお り、堀 もまた「精神的上昇Jと 訳すなど、必ず しも統一 した訳語には なっていなかった。ただ、ェ リアーデは、エ クス タシーは「変換」であるとも言 っているので (原. 書p483)、 シャーマンの霊魂 を「精霊」に変換 して天空に飛翔 させるとも解釈 で きるが、実. 際には「精神的な飛翔」、 「夢 の中での飛翔」であると思われる。そ こで “ spiritual. ascents"は. 「精. 神的上昇」 と、堀が「霊」に重点を置いているのに対 して、拙訳は「精神」に重点を置いて訳 した。エ リアーデも指摘するように、飛翔するのは「魂 の二重性」、つ まリシャーマンの「魂」 中国雲南のシャーマニズ ム研究 ― エ リアーデのシャーマニズム論 とその再検討― その 1 55.
(8) の もう一つの「分身」である. (原. 書p94)。 その分身は、 トランス状態にあって、また実際には. 柱 な どに刻 んだ七段 か九段 の梯子 の階段 を天界 として、そ こを登 ることを旅行、 つ ま り 「夢」 によって天空へ上 joumeyと 見立てて、儀礼的に演技 として実演 し、さらには歌や踊 り、 彼 にとってはシャー 昇 させるからである。エ リアーデは「瞑想」によるエ クスタシーの獲得 は、 エ リアーデもまたイ ン ドでの瞑想体験 を基に 「本 マニズムを解 き明かす中心的課題でもあった。 「精ネ 申的」 と訳す方が よ り近い 質 は瞑想 による完全な精神的上昇」 (原 書p407)と 言 つてお り、 と思われた。さらに、エ リアーデは、魂のエ クスタテイックな旅行、つ まりecstatic joumeyは 幻想 5、. 夢」 )宙 sionの 中でなされるもとも言 っている。 (原 書p277) magical■ ight"「 呪術的な飛翔」の エ リアーデは、 “ mystical■ ight"「 神秘的な飛翔」 と “. (「. 語彙、mySticalと magicalと を区分 して用 いている。エ リアーデは「神秘的上昇 myStical ascent と呪術 的飛翔 magiCal ttightと の 間 は区別 され、呪術 的飛翔 は幻覚 に過 ぎない magical■ ight, which is only an illusion」. (原 書p409)と. か、さらに「神秘的な飛翔 は至る所で、また ヨーロッパ. 「ネ 申 のソーサ リー、妖術 の主要な呪術 の中心思想 である」 (原 書p387)と も言 っている。また、 秘主義 mySticism」 は「瞑想 によつて 自己の魂が神 と直接 に合一す るとする教義」 (前 掲辞典)、 つ まり「神 と自己 (魂 )の 精神的合一」のことと理解 して、エ リアーデは mysticalな 世界 を捉 えようとしていると解釈 した。mysticalも magicalも 精神的に、あるいは幻想的に精神世界、ヨー ガの瞑想 のように心の内で起 こる もの. (誰. 「脱魂」を具体的な「魂の飛翔」 もが共有)で あ り、. と捉えるのは事実ではないと思 う。堀氏 は mySticalを 「呪的」 と訳すな ど (堀 訳p435)、 magical と区別 して訳 してい ない。ecstasyは 語源か ら言えば「外 に立つ」であ り、エ リアーデは この 点 に関 して神秘主義の立場か ら神話研究 に基づ き一歩踏み込んだとも言えるが、自らも否定 し ているように「魂 の具体的な飛翔」ではない と思 う。 また、エ リアーデはシロコゴロフのい う `extasy'と 自らがい う `ecstasy'と を区別 しないで用いているが、 しか し両者 は意味内容から. して、全 くの別 ものである。 むしろ、エ リアーデは入門儀礼 での「夢」の体験、源郷への回帰 こそをエ クスタシー と捉えている。 この点、科学的な視点から捉えたローエル、ツァプリカや シロコゴロフ、さらにルイスに至る研究者は慎重であった。 “ 6、 訳者 と著 しく異なる訳 も見 られた。例えば spi五 tualizing"は 「精神化する (堀 “ necromancy"は 「死者 との交霊. (堀 :口. fantastic"は 空想的 役 :口 寄せ)」 、 “. (堀. :老 化する)」 、. psyChopomps"は 「死者の霊魂を導 く案内人 (堀 寄せ)」 、“. mutation"は 「変換 訳 :素 晴らしい)、 “. (堀. 訳 :変 異)」 など、. その他 にも訳の違いがみられた。 「シャーマニズム」 と訳 した。エ リアーデは、 、 また、shaman、 shamanismは 「シヤーマン」 シャーマニズムとは「エ クスタシーの古代技術」であると同時に、エ クスタシーに基づ く神 と 7、. 魂 との精神的合一、つ まり神秘主義の ことである と言 つている。かつて人類は天空の神 々と自 由に往来す ることがで きたが、時代が下 り儀礼上の手違いにより、神は天空に撤退 し、人類 は 地上に住む こととなった。だが、神によ り特別 に選ばれた者は、夢 の中や病気 などで死 と再生 56.
(9) の入門儀礼 を体験す ることで、天空に上昇す る「エ クス タシー ecstasy」 の技術 を獲得 して 「シャーマン」 となった。シャーマンとはエ クス タシーの技術 を用 いることので きる人のこと エ リアーデの言 うところの「シャー であ り、その儀礼、 かつての「源郷 (最 高神)へ の回帰」こそが、 マニズム」 とい うことになる。 8、. tranceは 「 トランス、 possessionは 「憑霊 忘我状態」 、. (「. 憑依」ではない)」 と訳 した。 しか し、. エ リアーデは、 「本物 の強硬症を伴 った激 しい硬直状態、忘我状態 となる trance」 、そ して「弱 い tranceと ecstasyを 伴 う ecstatic. tranceと. か ecstasy― possession」 と、 さらに「 トラ ンス よ りも. 霊感状態が小 さく、意識 は正常 な ecstasy」 との三段階に使 い分 け してい る。本来 の激 しい tranceは 、 トランスか ら覚 めた後 も何 も記憶 してい ないのに対 して、ecstatic tranceと ecstasy― possessionと は トラ ンス に入って、あるいは憑霊 して、魂は天空に上昇 して患者の魂 を捜 し、. 治療を行なうな ど、そのときの様子を後になって も記憶 しているとい う。また、正常な ecstasy は瞑想状態で天空や地下界を訪ね、そときの様子を梯子に登る とか、踊 りなが ら歌や語 りに託 して人 々に語るなど、使 い分けをしてい る。エ リアーデは入門儀礼 で体験 した「夢」=ecstasy 「現代 の民族誌 は、憑霊 として混乱 させ、その須廃 comptionし た面 を強調 し、 に重点を置 き、. 「廿anceの 現象 は多 くの変化 と類廃、エ クス タシーの正 ものは何 もない」(d)(原 書p476)と か、 確 な性質に関 して混乱 させ る要因 となって きた」(鋤. (原 書 p507)と. も言 っている。つ ま り、エ リ. アーデは「神話的エ クス タシーの時代」、 「 トラ ンスとエ クスタシーが混合 した ecstatic. ttance. な時代」、そ して「現代 の額廃 した トランスの時代」へ と、各地に残存するさまざまな形態 を 事例 として比較 しなが ら、ッァプリカとシロコゴロフを否定的に 神話研究 に基づ くシャーマニズムの変遷過程 と、その原義. (シ. (と. ファースは言う)意 識 して、. ャーマニズムの本来の姿)を 述べ て. いるだけである。 9、. なお、Manchuは 「満州」 とそのまま訳 したが、現在 は「中国東北部」である。また、そ. れぞれの民族名の表記 は、たとえば「ッングース人 とか人 々」な ど、 「人」や「人 々」 を用 い て表 した。さらに、Eskimoは 「イヌイット」 と訳 した。 以上の九点は、特に気になる訳語を取 り上 げた。 日本のシャーマニズム研究者が、堀訳のみ に依拠 して、エ リアーデのシャーマニズムを理解 しようとするならば、エ リアーデの意図と大 きく差が生 じる恐れがある。よく「訳 し方の違いだ」 とい う言葉を耳にする。 しか し、やは り ここは堀氏のシャーマニズム論ではない。 もし、研究者がエ リアーデのシャーマニズムを論ず るのであれば、 自らの調査に基づ き、自ら原書を直接読んで、エ リアーデのい うシャーマニズ ム論 に一歩でも近づ く最小限の努力 はすべ きだと思 う。 エ リアー 堀 ・佐 々木両氏が言 うような、 デが「脱魂のシャーマニズム」を説いているとは、到底思えないからである。 二、構成内容とその概要. この著書の 目的は、サブタイ トルが示す ようにシャーマニズムに. 中国雲南のシャーマニズ ム研究 一 エ リアーデのシャーマニズム論 とその再検討一 その 1 57.
(10) 関す る「エ クスタシーの古代技術」 を解 き明かす点にある。従って、 このサブタイ トルがエ リ アーデの目的を明確 に示 した重要な点である と思われる。では、エ リアーデは「エ クスタシー の古代技術」 をどのようにして解 き明か したのか、その構成 を目次で見ると、次のような展開 となっている。 それは、序文、第一章「概説」、第二章「病気 と夢 による入門儀礼」、第三章「シャーマンの 、第五章「シャーマンの衣装 と太鼓の象徴性」、 呪力の獲得」、第四章「シャーマンの入門儀礼」 第七章「中央 と北アジアにおけるシャー 第六章「中央 と北アジアにおけるシャーマニズム_I」 、 マニズム_Ⅱ 」、第八章「シャーマニズム と宇宙論」、第九章「北 と南アメリカにお けるシャー マニズム」、 第十一章「イ ン ド・ ヨーロッ 第十章「東南 アジアとオセアニアのシャーマニズム」、 バ の間のシャーマニ ックな思想 と技術」、第十二章「チベ ット、中国、極東におけるシャーマ ニスティックな象徴性 と技術」、第十三章「相似す る神話、象徴 とその儀礼」、第十四章「結論」、 そ して「結 び」からなっている。 エ リアーデが述べ ている各章の要点 を訳者の視点から、具体的な事例を大幅 に割愛 して、そ の根幹 を削 り出してみた。勿論、重要な点は、押 さえ得た と思っている。順次紹介 してみたい。 以下、 ***内 はエ リアーデの 『シヤーマニズム』 を拙訳 し、要点を五分の一程に要約 したも のである (ま た、文中のアンダーライン(a)∼ (f)は 、第二 0三 章で引用した箇所を示す)。 また、各民族の事 例に関 しては、先にも触 れたが、紙幅の都合 で割愛 した。 ******************************************. 『シ ャー マ ニ ズ ム』 序文. 島厳す る方法 として、他 の研究分野 では宗教 の「歴 史の複合化」 した視 宗教学全般 を′. 点 に欠けてい るが、 こ うした欠点 を包括的に補 うのは「宗教 の歴 史家」 だけである。歴史家の 視点 か らは、シヤーマニズム とは「エ クス タシーの古代技術」 の一 つ で あ り、同時 に神秘主義 であ り、呪術 であ り、用語 の最 も広 い感覚 としては「宗教」 である。 ここでは、 シャーマニ ッ クな現象、その観念 の分析、技術 、象徴性、神話学 について論及す る。 第一章. 概説. この章 は七節か らなっている。 ここでは、「1.接 近」、「2.新 人シャーマ ンの. 補充方法」、「3.精 神病理学」 として要約 した。 1。. 接近. 二十世紀初頭 以来、「シヤーマ ン」や 「シャーマニズム」 の語 は、死 後 の世界 に霊. 魂 を導 く人、司祭 、神秘的な人、詩人 として用 い られて きた。厳密 にはシヤーマニズム はシベ リア と中央 アジアにおいて顕著 な宗教現象 であ り、 シヤーマ ンのみが偉大 なエ クス タシーの熟 練者 として、シヤーマニズムの「エ クス タシーの古代技術」が見 られる。 しか し、 こ う した類 「呪術 的な飛翔」 似 した呪術宗教的現象 は他 の地域で も観察 される。 シヤーマ ンは「火 の熟達」、 などの呪術 の専 門家 であ るが、あ らゆる呪術 師が シヤーマ ンではない。故 に、 いかなるエ クス 58.
(11) タシー もがシャーマ ンとみなす ことはで きな くて、シャーマ ンは 廿anceを 得意 とし、 トラ ンス の 間に特別な状態 とな り、彼 の魂 は身体 を離れ、天空へ の上昇や地下界 に下 降す ると信 じられ てい るか らである(a)(原 書 p5)。 類似 した特徴 は「精霊」とシャーマ ンとの関係 につい て も言 え、 彼 らは精霊 に「憑霊 」 されるか、精霊 を支配す るか、 いずれ に して も「精霊」 は死者、 自然 の 精霊、想像的動物 などの霊魂 と等 しい存在 であ り、 シヤーマ ンはこれ らの精霊の手先 になるこ とな しに支配 し、交流 す ることが可能 である。シャーマニズム を理解す るには、北 と中央 アジ アに古代 の完全 な残存形態がみ られ、「精霊」 との特別 な関係、呪術 的飛翔 を可能 にす るエ ク ス タテ イツクな能力、天空へ の上昇、地下界へ の下降、火 の熟達 な ど、 ここには独 特 の思想形 態や具体的なシャーマニズムの古代技術が発見 される。 シャーマ ンは、共同体 の成員 にと り到 達 し難 い神聖 な領域 を出入 りす ることがで きる「選ばれた人」である。 シャーマ ンは職業 の使 各 自の社会 の外 に立 ち、 命 として、 常 にシャーマニズムは神秘主義 を象徴化す るエ クス タティッ クな技術 を残 し、 トラ ンス によ り人 々 を治療 し、「地下界 の領域」 に死 者 と同行 し、人 々 と天 上や地獄 の神 々 との仲介者 として奉仕す る。 シャーマ ンは「魂 」 の守護者、人間の魂 における 偉大 な専 門家 であ り、そ の「形態」 と運命 を知 り、多 くの民族 は全てに強力 な創造者、天上の 偉大 な神 を知 っている。古代 の歴 史以前 の記録 には、人間の呪術宗教的信仰 の一部 が、後 の宗 教的概念や神話 の 中に保存 されてい るが、歴史は至 る所 で文化接触 によ り変化 し、作 り直 され、 内容 を豊富に したが、逆 に宗教 的な発想、神話的創造、儀礼、エ クス タシーの技術 を貧 しい も の、頚廃 しなが らも、人類 の後 の歴 史 の 中に容認 されてい る。従 って、形態的には、「原始 の 時代か らある もの」で もまたない。 2.新 入 シャーマ ンの補充方法. 中央 と北東 アジアの新入の補充方法 は、世襲的伝達、 自然発. 「任命」「 生的な 、選 び」などの神 のお召 しや彼 ら自身の 自由意志、 氏族 の意志 な どによる。 シャー マ ンと して承認 されるには、入 門儀礼 で厳 しい試練や複雑 な教育 を受 け、エ クス タテイックな 夢や トラ ンス などによる教育 とシャーマニ ックな技術、精霊 の名前 と機能、神話 と氏族 の系譜、 秘密 の言葉 な どの伝統的な教 えを受ける必要 がある。 3。. 精神病理学. シベ リアシ ャーマニズ ム と北極 ヒス テ リーや神経障害の問題 は、 シベ リア. シャーマニズムの精神病理学上 の現象 として絶 えず強調 されて きた。 シャーマ ンと癒病. (ネ. 申 経. 疾患)患 者 の違 い は、後者 は故意 に トラ ンス に入 ることがで きず、 シャーマニ ック トラ ンス は 自発的で 自然 な現象 で、本物 の強硬症 の トラ ンスで終 わる。 しか し、神経疾患 は世界 中で発見 され、人はいかなる神経的な病気 も、 どち らも本物 の憑霊であるとはみな してい ない。原初的 な呪術 師、呪医、 シャーマ ンは病人 とい うだけでな く、彼 は治療 され、 自身を治療す ることに 成功 した病人である。シャーマニズ ムの実践 は、治療、制御、均衡が常 に引 き起 こ され、シャー マ ンは自らの力 と威信 によ り神経性発作 を制御す ることがで きる。外面的な ヒス テ リー性発作 現象 とシベ リアシャーマ ンの トラ ンスの 間の多 くの類似性 に注意す るとして も、重要 な ことは トラ ンス をもた らす後者 の能力 にある。 彼 らは世俗的な能力以上 に集中力の度合 い を成 し遂げ、 中国雲南のシャーマニズム研究 ― エ リアーデのシャーマニズム論 とその再検討― その 1 59.
(12) 持続 させ、 エ クス タテ イックな行動 を制御 してい る。一 般 に、サ モ エー ドやオス チ ャー クの シャーマ ンは健康的で、知的で、彼 の境遇以上 にあ り、自己制御力 は明 らかに平均以上である。 本来 のシャーマニ ックな入門儀礼 は、理論的で実際的教育 であ り、神経症患者 には複雑す ぎる。 もし、彼 らが 自分 自身で治療が で き、 また他者の治療が可能であれ ば、彼 らは病気 の仕組 みや 理論 を知 ってお り、通常 は完全 に健康で正常である。 第二章. 病気 と夢 による入門儀ネL この章 は十節か らな っている。 ここでは、「 1.病 気 ・夢. による入門儀礼」、「2。 骨 ・生命 の源泉」、「3.死 と復活」 として要約 してみた。 1。. 病気 0夢 による入門儀礼. 病気、夢、エ クス タシー は、「選 び」以前 の俗 なる個人 を、神. 聖 な ものを扱 う技術者 に一変 させ、シヤーマ ンの状態 に到達す る手段 として、入 門儀礼 の構成 要素 となってい る。特 に、「選 ばれる」者の宗教 的地位 を根本的に変化 させ るのは苦痛 と死 と 復活、つ ま り身体 の切断、内部 の器官や内臓 の更新、天空 に昇 り、神 々や諸精霊 と対話、地下 界へ の下降 と諸精霊や死 んだシャーマ ンとの対話 など伝統的なエ クス タテ イックな経験、宗教 的でシヤーマニ ックな専 門職 の病気治療 に関す る秘密の啓示 を含 んでい る。シャーマニ ックな 神 のお召 しは漸次的な変化 で あ り、候補者 は瞑想 し、一 人で捜 し求め、多量 の睡眠 をとり、 う わの空 にな り、予言者的 な夢 を見、 ときに神経疾患的な発作 となる。 これ らの症状 の全 ては候 補者 の新 しい生活 に対す る前兆で、神秘的な神 のお召 しの最初 の徴候 を暗示 してい る。 また、 短時間 にシヤーマ ンの経歴 を決定す る「病気」、発作、夢、幻覚 もある。重要 な ことは、 これ らの経験が、 シヤーマ ンの神 のお召 し、呪術宗教 的力 として正統 だ と理 由づ け ることにある。 これ らの事例 に、入門儀礼 の 中心的主題 を発見す る。 2。. 骨・ 生命 の源泉. 骸骨へ の分解 は俗的な人間の状態 を超 えた通過 を指 し示す。骸骨 の状態. に自身を変 える ことは、原始 の命 をこの胎 内に戻す ことと同等 の完全 な更新、神秘的な再生 で ある。一方、中央 アジアの瞑想、構造的 に骨の状態へ の分解 は、禁欲的で形而上学的な価値 を 持 ってい る。そ う した瞑想 はキ リス ト教神秘主義 の 中に も生 き続 け、これ ら瞑想体験 の全 ては、 俗性 を超越 し、個別的状況や現世 の考 え方 を超 えて獲得す る意志 を発見す る。 3.死 と復活. 候補者 の死 と復活 の入門儀礼、エ クス タテイックな夢、病気、通常 でない 出来. 事、適切 な儀礼 についての本質 を観察 した。実際に、 これ らの儀礼 は通過儀礼 を意味 し、常 に 一連 の儀礼 を仮定 し、候補者 の夢 や病気 を通 じての死 と再生 として要約 で きる。 これ らの儀礼 では、候補者 が過去 の生 活 を忘れ させ るために、(1)あ の世 の象徴 として隔離 の期 間、死者 の よ うな存在、死 と同化 し、(2)顔 と身体 は亡霊 と同 じに青 白い灰 な どを塗 り、(3)寺 院や家 の呪物 の宿 る場所 で象徴 的に埋葬 され、(4)下 界 へ 象徴 的下降、(5)催 眠用 の飲み物 での意識不 明、(6) 殴打、指 の切断な ど、残虐行為 による困難 な厳 しい試練 を受けさせ るための計画的な もので あ る。候補者 の入門儀礼 の厳 しい試練 は、候補 者 の力 の獲得 のための「探求」 で ある。入 門儀礼 か ら識別 される大 きな相違点 は、内部の基本的な重要性、エ クス タテ イックな経験 にあ り、職 業 としては絶対 に必要である。切断 と料理 による若返 りの神話 は、シベ リア、中央 アジア、ヨー 60.
(13) ロ ッパ の民俗 におい て も伝承 されてい る。 第三 章. シ ャーマニ ックな力の獲得. この章 は九節 か らなってい る。 ここでは、「 1.精 霊 に. よる力 の獲得」、「2.精 霊 との関係」、「3.秘 密言語」、「4.力 の源泉」 として要約 した。 1。. 精霊 による力 の獲得. 候補者 の夢、エ クス タシー、病気 な どの神 のお召 しは、半ば神的存. 在、先祖、動物 の魂 などと好機 に偶然 に出会 うか、稲妻、事故 な ど異常 な出来事 によ り、突然 引 き起 こ される。そ う した偶然 の 出合 い は、候補者 の生 涯 を決定 し、先祖の魂 は若 い男性 へ の 一種 の「憑霊」 と受け取 られてい る。 この最初 の「憑霊」 を経験 す るな らば、シャーマ ンは死 したシャーマ ンの魂や精霊 な ど、無限に入 る容器 となる。死 んだシャーマ ンの魂 は神 のお召 し で重 要 な役割 を演 じ、天空 に彼 を運 び、意外 な啓示 を準備す る。全 てに必要 なのは夢 の 中か、 日覚 めた と きに精霊 を見 る ことで、それはシ ャーマニ ックな召命 を決定 づ ける兆候 で あ る。 シャーマニ ックな力 を与 える死者の主要 な機能は、彼 を助 ける「精霊」 となることにある。入 門儀礼 で、夢 か 目覚めた と き精霊 を「見 ること」 は、人が若干 の「精神的状態」 で獲得 した一 定 の兆候 であ り、それは人間性の神聖 な もの、俗 なる状態の超越で もある。 2.精 霊 との 関係. シャーマ ンの入 門儀礼 やエ クス タテ ィックな経験 な どで、「精霊」 は「親. しみ」のある関係 となる。 シャーマ ンとは、神や精霊 と直接的、具体的な経験 を持 った人 の こ とで あ り、向かい合 って精霊 を見て、一緒 に話 し、一緒 に祈 り、懇願す る。精霊 は、 これ らの 「親 しさ」 に加 えて、 天空や地下へ のエ クス タティックな旅行 の 間、シャーマ ンを保護す るなど、 支援す る精霊 は、シャーマニ ックな降神儀礼、エ クス タテイックな旅行 の準備 にお いて重 要 な 役割 を演 じる。よ り正確 にはシャーマ ンを支援 す る精霊 の憑霊 を得 たことになる。神話 の時代、 人間 と動物 の 間が未分離であった とき、人間は動物の霊 との不変性 を構築 していた。それはあ る意味 で「二重性」、彼の分 身、 シャーマ ンの「魂」 の一 つ、「生命魂」 である。それ故、守護 や支援 の精霊 な しにはシャーマニ ックな降神儀礼 は不可能 で、 あの世へ のエ クス タティックな 旅行 の象徴 である。 それは、先祖霊の よ うに動物が同 じ役割 を演 じ、 シャーマ ンを天空や地下 界へ 運 び、彼 に神秘的な ことを教 えた。それ らはシャーマ ンの死 と復活 の周期的な繰 り返 しを 意味 し、エ クス タシー は儀礼 的死 の具体的な経験、神聖 さを汚す俗的人間の状態 を超越 す るこ と、「死 」 を達成す ることにある。 3。. 秘密言語. 候補者 は入 門儀礼 の過程や降神儀礼 中で、 自身の努力 によ り精霊や動物 の精霊. と交信す るための秘密言語 を学ぶ。それぞれのシャーマ ンは特定 の歌 を持 ち、精霊 に救 い を求 めて詠唱す る。特 に、鳥 の歌 は同 じ用語 によ り頻繁 に表現 され、それは自然 の秘密 を知 ってい ることに等 しく、故 に予言す ることと同 じである。彼 らの言語 を学 び、声 の模倣 は、 あの世や 天界 と交信す ることがで きるに等 しい。鳥は霊魂 を導 く案内者 であ り、自身で′ 鳥になる ことは、 生 きてい る間に、天空やあの世 へ のエ クス タテ ィックな旅行 を引 き受 け る能力 を示 してい る。 降神儀礼 の間に、 この秘密言語 を用 いた模倣 は、 シャーマ ンが天空、地上、地下界 を安全 に自 由に通 り抜 ける ことがで きる もう一つの象徴 で もある。 動物言語 を理解 して親 しくなる伝統 は、 中国雲南のシャーマニズ ム研究 ― エ リアーデのシャーマニズム論 とその再検討― その 1 61.
(14) 楽園症候群 を意味 し、神話 の時代 には、人間は動物 と平和 に暮 らし、彼 らの話 しを理解 した。 シャーマ ンはエ クス タシー によ り、人間の状態 を廃上 し、始 ま りの状態 に戻す。動物 との親交、 言語認識、動物へ の変身 は、シヤーマ ンは大古 の昔 に失われた「楽園」 の状況 を再確 立す る こ とへ の兆候 で もある。 4。. 力 の源泉. シヤーマニ ックな力の源泉 は、神や先祖 シャーマ ンの魂、神秘的な動物や特定. の物、宇宙 地帯 のいず れかに存在 してい る。初心者の力 の獲得 は 自発的か、 ときには稲妻 の一 撃 の形 で精霊 は降 りて くるか、故意 の探求 な どによ り起 こる。 シャーマ ンは複数 の守護精霊 を 習得 し、常 に複数 の助手 を持 ってい る。死者 の魂 はシャーマニ ックな力の源泉 と同 じに考 え ら れてい る。 シャーマニ ックな力 を授 け る方法 は広範囲で、候補者 は死 んだ父母や先祖 の夢 を見 てシャーマ ンとなる。 ときどき、シヤーマニ ックな力 は、超越的存在や他 の神的存在 か ら夢 に お いて直接 に引 き出され る。それは、純粋 で神聖 な生活 に入 り、直接神や精霊 と関係 し、先祖 の魂が再構築 され、歴史的な時間が廃止 され、神話 の時代が回復す るのは、常 に夢 の 中にお い てである。 シャーマ ニズムはある意味 では世襲性 だが、人は夢 の 中で精霊 を見 る後 までは、そ の力 を受け取 る ことはない。力 を授与す る精霊 は眼 には見 えな くて、シヤーマ ンはそれ らを感 知す るに過 ぎない。 どの ような動物 、宇宙的な物体 もが、力 の源泉か守護 の精霊 となる。 もし、 彼が意志 と集中力 に関す る特定 の努力 をなす用意 さえあれば、誰 もが守護精霊 を獲得す ること がで き、人 々の入門儀礼 は守護精霊 を得 る ことで完結す る。 第四章. シ ヤーマニ ックな入門儀ネL この章 は九節 か らな っている。 ここでは、「. 1。. シヤー. マ ニ ックな入門儀礼」、「2.上 昇儀礼」 として要約 してみた。 1。. シャーマニ ックな入門儀礼. 北 アジアや他 の何処 で も、エ クス タテイックな選定は教育期. 間に従 い、候補者 は指導者 シヤーマ ンか ら手ほ どきを受 け る。 この とき、候補者 は神秘的な技 術 に熟達 し、所属す る民族の神話的な伝統 を学び、指導者か ら公式の承認 を受 け る。 2。. 上昇儀礼. シヤーマ ン候補者 は入門儀礼 の間か、直後 に意識 を失 い、彼 の精霊 は鷲 によ り. 運ばれる舟 で天空 に上昇す る。そ こでは、天上 の精霊 と言葉 を交わ し、治療 につい て尋 ねるな ど、入門儀礼 における上昇 は、未来のシヤーマ ンに飛 ぶための力 を与 える。シャーマニ ックな 神 のお召 しや入門儀礼 は、天空へ の上昇 と直接 に関係 し、 これ ら精霊の大多数は天上 の存在 で あ り、「憑霊」 は トラ ンス状態 に達 した表現 と見 てい る。天空へ の上 昇 はシヤーマ ニ ックな入 門儀礼 における主要 な役割 を演 じてい る。木や柱 を登 る儀礼、上昇や呪術的な飛翔 の神話、空 中浮遊、飛翔、神秘 的な旅行 な どのエ クス タテイックな経験、 これ ら全ての要素 は、シヤーマ ニ ックな神のお召 しや聖化 における確定的な機能 を持 っている。 この観点か ら、シャーマニ ッ クな経験 はその原始 の神話 の時代 の夜明け として、人間の好運 な状態 に個 々人が戻 る、特権 あ る存在 としてのシヤーマ ンの形態へ の復元 で もある。 第五章. シ ヤーマ ンの衣装 と太鼓の象徴性. この章 は十 一 節 か らな ってい る。 ここで は、. 「 1.衣 装」、「2.体 裁」、「3.太 鼓」 として要約 した。 62.
(15) 1。. 衣装. 衣装 は宗教的な聖 なる ものの顕現や天空 と地上 を表現す るもの として構成 されてい. る。それは秘密 の存在 を露 に し、宇宙の象徴 的研究 の道筋や シャーマニズムの組織 を明 らかに す る。た とえ衣装がな くとも帽子、ベ ル ト、太鼓 な ど、本来 の衣装 に代 わる呪術 的な物が神聖 な衣装 の一部 を形成す る。本来、衣装 は世俗 とは質的 に異 なった宗教 的小宇宙 の象徴的組織 を 構成 し、その神聖化 はさまざまな精神的な力や と りわけ「精霊」 と一緒 に充満 されてい る。そ れを身に着け、代行す る物体 を巧みに扱 うことで、世俗的空間を超越 し、精霊的世界 と接触 し、 トラ ンス に入 る準備 をす る。通常、衣装 は多 くの予備的な準備 の後 に身 に着 け られ、シャーマ ニ ック トラ ンス にほ とん どな りかけてい る。 2.体裁. シャーマ ンの衣装 は、人間や′ 鳥の骸骨 を模倣 した体裁 で ある。それ は、シャーマニ ッ. クな衣装がそ の着用者 に、人 は死 んで、命 を取 り戻す特 別 な状態 を示 して い るか らであ る。 シャーマ ンは先祖 の精霊 に殺 されて料理 され、骨 を数 え、再び元 に戻 し、鉄 と一緒 に固定 して、 新 たな肉で覆われる。狩猟 をす る人 々は、骨 は人 間 と動物 の両方 にお い て命 の究極 の源泉、意 の ままに再構成 される ことを象徴 してい る とみてい る。「魂 」 は骨 に宿 る とされ、その骨か ら 個人 の復活が予期 される。シャーマ ンの衣装 の骸骨 は入 門儀礼 の死 と復活 の ドラマ として再実 現化 し、人間や動物 の骨格 を象徴 してい る。神話的な先祖 により原初的な問題が保存 され、人 間の骸骨 はシヤーマ ンの原型 を象徴化 した もので、それ以来先祖 のシャーマ ンは骨 を引 き継 ぐ ことで家族 を象徴 してい ると信 じてい る。 3。. 太鼓. 太鼓 は儀礼 にお い て重要 な役割 を果た してい る。その象徴性 は複合的で、呪術 的な. 機能性 は多様 である。太鼓 はシャーマ ンを「世界 の 中心」 に運び、空中を抜 けて飛 ぶ ことを可 能に し、シヤーマニ ックな降神儀礼 を実行す る際 の必需品である。 もし、 シャーマ ンが集中 し て太鼓 を叩けば、精霊世界 と接触 し、旅行す る覚悟 を決める。シャーマ ンの大鼓 の枠組 みは宇 宙樹 の本材 に由来 し、シャーマ ンは大鼓 を叩 くことで、世界 の 中心 に身 を投 げ、天空 に昇 る。 太鼓 は刻み 目を持 つ シャーマニ ックな木 と同化 し、樺 の本 に登 る こと、太鼓 を叩 くこと、それ はシャーマ ンが天空 に象徴 的に昇 ることで もある。 これ らの儀礼 の全ての習慣 と用心 さは、実 際 の本が超越的人間 を露 に変貌 させ ることを示 し、世界樹 を象徴す る。 第六章. 中央 と北アジアのシャーマ ニズムー I.天 上 へ の上昇 と地下界へ の下降. 六節である。 ここでは、「 1。. シャーマ ンの機能. 1。. この章 は. シャーマ ンの機能」、「2.上 昇 と下 降」 として要約 した。. アル タイのシャーマ ンは死、不妊症、困難 な出産な ど、異常 な ことだ. け に関係す る。北では、 シャーマ ンは死去 した人の魂が戻 るの を防 ぐために葬式 に招待 される な ど、その役割 は呪術的な防止 に限 られてい る。他方、精神的 に不安 定 な個人 の魂 は、悪霊や 妖術師 の犠牲 になる傾 向があ るので、シャーマ ンは人間の魂 な どに関係す るいかなる儀礼 にお いて も絶対 に必要 である。 つ ま り、アジアや他 を通 じて も、シャーマ ンは医師や治療者 の機能 を実践 し、診断の結果 を告 げて、患者か ら逃げ出 した魂 を捜 し、それ を捕 らえ、患者の身体 に 戻す。 また、シャーマ ンは、常 に死後 の世界 に魂 を導 く人 として も卓越 してい る。 シャーマ ン 中国雲南のシャーマニズム研究 一 エ リアーデのシャーマニズム論 とその再検討― その 1 63.
(16) がエ クス タシーの技術 を用 い るのは、彼の魂が身体 を安全 に離脱 して広大 な道程 を放浪 し、地 下界や天空 に昇 るためである。 シャーマ ンは人間の魂か、犠牲 の動物 の魂 を制御 し、導 く能力 を持 っている。 シャーマ ンは大気 の変化 を予知 し、透視 し、遠 くの獲物 を見 る ことがで き、加 えて動物 と近 い関係、呪術宗教 的な性質 を持 ち、予言 と透視 はシヤーマ ンの神秘的な技術 の一 つ ま り力 を持 った天上の神 々 と関係す るシャーマ ン、 部 で ある。 アルタイの人 々は三つ の機能、 地下界 の神 々の儀式 に特殊化 してい るシャーマ ン、神 々の両方 の種類 と神秘 的な関係 を持 つ シャーマ ンに区分 してい る。 2.上 昇 と下降. シヤーマニ ックな降神儀礼 では、病気 の原因 とその治療方法 を捜すために馬. を供儀 して天空へ 上昇 し、死者 の魂 に付 き添 って地下へ 下降 し、家 の浄化 な どを行 なう。 第七章. 中央 と北アジアにおけるシ ャーマニズムー Ⅱ.呪 術的な治療. な っている。 ここでは、「 1.癒 しの儀礼」、「2。 降神儀礼」、「. 3。. この章 は九節 か ら. シヤーマニズムの類廃」 として. 要約 した。 1。. 癒 しの儀礼. 中央 と北 アジアでは、 シャーマ ンの原則的な機能 は癒 しである。病気 の原因. の 内で、「魂 の略奪」 は最 も広 く普及 し、魂が離脱 して迷 うか、盗 まれる ことに起 因す る。原 則 として、その扱 い はそれ を見 つ けて捕 まえ、患者 の 身体 の元 の場所 に戻す ことにある。 また、 悪霊が 「憑 病気 の原因は患者の身体 の 中に呪術的な ものが侵入 したか、 アジアの一 部地域では、 霊」 したかで あ り、治療 は有害 な ものを抜 き取 るか、悪霊 を追 い払 うことか らなる。 と きどき、 病気 は二重 の原因をもち、魂 の盗難 は悪霊 により「憑霊」 されて更 に悪化 させ、治療 は魂の探 査 と悪霊の駆逐 を含 んでい る。明 らかに、 この全 ては魂の多様性 によ り複雑 である。シャーマ ンだ けが、この種 の治療 を引 き受 け、精霊 を「見つ け」、それ らをいかに して追 い払 うか を知 っ てい る。彼 だ けはエ クス タシー によ り、魂 が逃げるのを認知 し、それに追 いつ き、身体 に戻す ことがで きる。身体 的健康 の快復 は精神的な強 さの均衡 を取 り戻す 上で密接 に依存 してい る。 例 えば、オスチ ヤー クのシヤーマニ ックは、 もし患者 の魂が死者 に連れ去 られ とす るな らば、 補助霊 の使者 を探査 のために送 る。使者 の精霊 は死 んだ人間の体裁 を装 い、地下 に降 り、患者 の魂 を奪 った泥棒 を見つ けて驚 かせ、精霊 はそれを捕 まえて、地上のシヤーマ ンの所 に連れ戻 す。 この時間の全ての間、シヤーマ ンはギ ター を奏で、彼 の使者 の 冒険 を物語 る。 … シヤーマ ニ ックエ クス タシー は トラ ンス とい うよ りも、 む しろ「霊感 態」 で、シヤーマ ンは精霊 を見 た り、聞い た りす る。彼 は「 自分 自身 を運 び出」 し、遠 い地域 を通 つてエ クス タシーで旅行 を '大. す るが、彼 は意識不 明 で はな い。彼 は空想 家 であ り、霊感 に触発 された人 で あ る。(b)(原 書 p223). ヤクー トの降神儀礼 は、(1)助 手 の精霊 の喚起、(2〉 患者 の魂 を盗むか、患者 の 身 へ 体 の 中に入 った悪霊 など病気 の原因の発見、(3)脅 しや不愉快 な音 での悪霊の駆逐、(4)天 空 の 2。. 降神儀礼. シャーマ ンの上昇 の四つ の段階 を含 む。最 も困難 なのは、病気 の原因を発見す る ことで、儀礼 は守護 の精霊 を天空か ら呼び出 し、精霊 に病気 の原因 を見 つ け るよう呼びかける二つの部分 か 64.
(17) らな ってい る。そ して、精霊 は敵 の精霊 と戦 うために現れ、天空へ のなすべ き旅行が続 き、実 際 に患者か ら悪霊 を引 き抜 くために、シャーマ ンは 自身の 身体 の 中に彼 らをとり込み、患者 自 身以上 に戦 い苦 しむ。それはシャーマ ンのエ クス タテイックな経験 によ り促進 され、同時に彼 にとり攻撃 され易 く、 また頻繁 に、悪霊 との一定 の戦 い を通 じて、それ らの力 に倒れて、本当 に「憑霊」 されて しま うことによ り終 わることもある。 3。. シヤーマニ ズムの類廃. 古典的な シャーマニズムの図式 では、魂 の探査 のために上昇や下. 適切 なシャー 降な ど、未 だ伝統的な民間伝承 の 中や治療 の技術 の 中に生 き残 っているとはいえ、 マニ ックな経験 は一種 の心霊主義の「組織化」、 また修行者的な性質 の実践 に落ちぶれてい る。 シャーマ ンの類廃 は人類 の頚廃 に続 くもの として、 コ リャー クにおい ては遠 い昔 に起 こった精 神的悲劇 を信 じ、 ここで も「シャーマ ンの頚廃」 の主題 を発見す る。 第八章. シャーマ ニズムと宇 宙論. この章 は五節 か らなってい る。 ここでは、 「 1.宇 宙 と柱」、. 「2.宇 宙 の山」、「3.宇 宙樹」、「4.神 秘的な数」、「. 5。. オセアニ ア」 として要約 した。. シャーマニ ックな技術 の特徴 は地上か ら天空や地下界 までの通路 を移動す るこ. 1.宇 宙 と柱. とである。シャーマ ンは入 門儀礼 を通 じて、飛翔 にお いて突破す るその神秘 を知 っている。一 般 に、宇宙は天上、地上、地下の三つ の界層 を持 つ もの と想像 され、三 つ の地帯 の 間を中心軸 により連結 して相互交流 す る。それは「歴 史」 を持 ち、 しば しば頚廃 し、やがて他の宇宙論的 象徴 によ り修正 されて きた。 しか し、必須の概要は、多数 の影響 の後 で さえ も、三 つ の大 きな 宇宙地帯 は中心軸 によ り連結 され、一つの「穴」 を抜 けて連続的 に横 断す ることがで き、ず っ と主題 であ り続 けてい ることである。神 々やシャーマ ンの魂が地上 に下 るの も、死者が地下界 に下 るの もこの穴 を抜 けてである。 2◆. 宇宙 の 山. 地上 と天空の 間の連結 を可能にす る「世界 の 中心」 の もう一つの神話的な姿 は. 宇宙 としての山である。 タタールの人 々は「鉄 の山」 と呼 び、それは明 らかにイ ン ドの須弥山 の影響 を示 し、それ を三つ か四つ の階層 で描 いてい る。イ ン ドの宇宙論 にお い て、 須弥山は「世 界 の 中心」 として答 え、その上 に北極星が輝 いてい る。 この「 中心」 の象徴性 は古代文化 と東 の全 ての巨大 文明 の両方 におい て も重要である。それは、宮殿、王都、簡単 な家 さえもが「世 界 の 中心」、宇宙的次元 を突破 す る、天空 との交流が可能 となる「 中心」 に立 っている と信 じ られて きたか らである。 3.宇 宙樹. 宇宙樹 は太鼓 を作 り、儀礼用 の樺 の本 に登 り、効果的に宇宙樹 の頂点 に到達す る. ために、 シャーマ ンにと り必須である。ユ ル トの前 と内部 には、本の模型があ り、 自分 の大鼓 に もそれ を描 いてい る。宇宙論的に、世界樹 は大地 の 中央、大地 の「暦」 の場所 に答え、そ の 枝 は神 の宮殿 に達 してい る。オスチ ャー クは、本は三 つ の宇宙地帯 と繋が り、その枝 は天空 と 触 れ、根元は地下界 に降 りて行 くもの と信 じてい る。宇宙樹 の古代 の伝統、世界 の神聖性、そ の豊か さと永続性の幾 つ かの表現 は、豊饒 な生産力 と入 門儀礼 の観念、永遠 の生命、豊饒 の観 念 と関係 し、世界樹 は同様 に命や不死 の本 とな り、常 に宇 宙樹 はまさし く生命 の宝庫、運命 の 中国雲南のシャーマニズ ム研究 ― エ リアーデのシャーマニズム論 とその再検討― その 1 65.
(18) 支配者 を示 してい る。宇宙論的な図式 の木、つ ま り″ 鳥. (鷲 )や. そ の頂点 にフ 鳥と一緒 の本やそ の. 根元 の蛇 は、 中央 アジアや古代 ドイツの人 々の典型 で あるばか りでな く、同 じ象徴性 はす でに 歴史以前 の記念碑 に も明確 に記 されてい る。 4。. 神秘的な数. 天界 の七 つ の惑星 と七 つ の枝 を持 った宇宙樹 の 同一視 は、メソポタミアか ら. の 由来 である。世界軸 に沿 って天空 に昇 ることは普遍的で古代 の観念 であ り、天界 の七 つ の惑 星 を横 断す る とい う観念 よ りも遥 かに早 い。三 の数 の宗教的価値、三 つ の宇宙地帯 の象徴 は七 の数 の価値 に先行 してい る。九 つ の天界、九 つ の神 々、宇宙樹 の九 つ の枝 な どは、恐 らく三 × 三 について も不思議 な数 として説明で きる。アルタイのシャーマ ンは、七か九つ の天上の階層 を象徴化 した本か柱 に七 つ か、九つ の刻み 目をつ けた階段 を登 る。九 つ の階段 の切れ 目を入れ た木 は、シャーマ ンのユル トの 中に保 たれてい る。それは、天上 を抜 けてエ クス タテイックな 旅行 をするための彼 の能力 の もう一 つ の徴候 である。 5.オ セアニ ア. 東南 アジアやオセアニ アの文化 は、三 つ の宇宙地帯 と世界軸 の古代的象徴、. 原住 の宗教 の下層 に重ね られた七の数 の宇宙原理 な ど、文化的 に二つの イ ン ド的影響 を受 けて 単 一体 をな してい る。マ レー半島の最 も古代的なセマ ング ピグ ミの人 々の 間で、 巨大 な岩の象 徴が見 られる。それは「世界 の 中心」 として答え、その下 に地下界 がある。巨大 な岩の支柱 は 天空 を支 え、その頂点 は天上のアーチ形天丼 を通過 し、天界の上 に出てい る。大地 の 中心 の地 下界 と天空の「入 口」は同 じ軸 に位置 し、過去 には一つの宇宙地帯か ら他の地帯 までの通過が 為 し遂げ られてい た。 また、ジャク ンの人 々は、五 フィー トの高 さの棒 を墓の側 に立てる。一 方 の上 方 には七 つ、他 の下方 には七 つ、十四の切 り目が連 な り、棒 は「魂 の梯子」 と呼 ばれて い る。葬式 の神話 における山の役割 は、常 に上昇の象徴 と死者 のため住 まう天上の信仰 を伴 っ てい る。山、天国の島、生命 の本 な ど、シャーマニズム は葬式 の信仰 と世界軸、宇宙樹 、三 つ の宇宙地帯、七 つ の天界 な どの宇宙論的概念 に関 して、最 も緊密 な依存 を示 してい る。 第九章. 南北 アメ リカのシ ャーマニズム. この章 は十節 か らなってい る。 ここでは、「 1.イ. ヌイ ッ ト」、「2.北 アメリカ」、「3.秘 密結社 と友愛団体」、「4.南 アメリカ」、「4.南 北 アメ リカ」 として要約 した。 1.イ. ヌイ ッ ト 北 アジアの北極 の人 々 と北 アメリカのイヌイ ッ トの人 々の歴史的関係や文化. は、 シャーマニズム を通 じて主要 な役割が連続 して関係 してい る。 イヌイ ッ トの入 門儀礼 は、 神秘的な生活の中に神 のお召 し、 自発的な探求、孤独 に閉 じ籠 る、指導者 との徒弟制度、精霊 か死者 などの馴染みの精霊 の獲得、死 と復活 の象徴 的儀礼、秘密 の言語 な ど普遍的な図式 を示 してい る。 イヌイ ッ トの主要 な特権 は呪術 的な治癒、豊富 な獲物 の保証 のために母 なる海 の獣 へ の海底旅行、 シラに晴天 を祈 り、不妊 の女性 に備 えて援助す ること、エ クス タティックな旅 行 を して、魂 を連れ戻す飛翔 の専 門家 で もある。シャーマ ンの降神儀礼 は、夜 に村人全 員 が出 席 して行 なう。 シヤーマ ンは精霊 を呼び寄せ るために「秘密の言語」で長 い 問歌 う。 トラ ンス 状態 に入 り、即興 の歌 はシャーマ ンの神秘的な経験 の幾 つ かを露 にす る。 シャーマ ンは歌 うこ 66.
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