父親の子育て参加と通信メディアによる趣味ネットワークの構築
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(2) における支援ネットワークの形質との関係性について 分析した.そして,都市度や地区内の子どもの密度, こどもの数や年齢,地域の子育て施設の利用などとネ ットワークの規模・密度が関連性を実証している. (2) 通信メディアと社会的ネットワーク 上で述べたように,国内の研究においては子育て における社会的ネットワークの分析については,充分 な研究が蓄積されつつあると言える. 一方で,問題だと考えられるのが,これらの支援 ネットワーク形成と、携帯電話などの新たな通信機器 との関連性がいまだ十分に議論されていない点である. 携帯電話の普及・受容研究の中で,人間関係に焦 点を合わせた代表的なものに,松田美佐(2000)や辻 (2003)の研究がある.また宮田(2006)は,質問紙を用 いた計量的研究により,インターネットの利用とパー ソナル・ネットワーク全体の相互関係を議論した.し かし,通信メディアの利用と「子育て(支援)」に特化 した議論は未だ数尐ない.また,日本の携帯電話の普 及や利用は、諸外国と比べて特殊な状況にあるため、 諸外国の議論も単純に援用できない現状だ.この点へ の問題意識が,本研究の源泉となっている. (3) 父親の子育て参加 更に言えば,子育てと社会的ネットワークを扱う先 行研究においてもう1つ抜け落ちている目線がある. それは父親が築く社会的ネットワークに対する視点で ある.先述の松田茂樹の研究では,母親の目線から, 彼女たちの育児の負担を最も和らげるのは、父親の子 育て参加の増加であると述べている.さらに松田は, 父親の子育て参加を阻害する要因として、労働時間の 長さを指摘しており,一般的に考えてもこの指摘には 一定の合理性があると考えられる.しかし、裏を返せ ば,父親の子育て参加の阻害要因は,本当に労働時間 の長さだけと言えるのであろうか.社会的ネットワー ク分析の原点に立ち返れば,父親が持つ社会的ネット ワークも父親の育児参加と相互関係にあるはずである. 以上の問題意識から、天笠(2011)は,父親の子育て参 加時間と社会的ネットワーク及び通信メディアの利用 について調査を行った.その結果,通信/ソーシャル メディアによる積極的な情報発信が,社会的ネットワ ークのジェンダー的多様性を高め,それが結果的に父 親の子育て参加を促している可能性を指摘している. (4) リサーチクエスチョン 以上の様に通信メディアの利用は,社会的ネットワ ークを豊かにし,父親の子育て参加を促す可能性があ る.しかし、父親の子育て参加を促すのは,ネットワ ークや通信メディアの利用のみなのだろうか.本論で は,この点に関して通信メディア利用や社会的ネット ワークとも関連が深いと考えられる父親の趣味的活動 に注目をする事にした.より具体的には,父親が行う 趣味的な活動と,通信メディアの利用・社会的ネット ワークの形態・子育てへの参加度との関連性について, 実証的なアプローチを用いて明らかにする.. 3.調査概要 以上のリサーチクエスチョンに答えるため、本論で は,(株)ネットマイルが提供するリサーチパネルを対 象としたインターネットリサーチ(質問紙調査)を実 施した.調査は未就学児と同居する父親を対象とする ために予備調査・本調査の2段階で行っている。調査 概要は、下表 3-1 の通りである。なお,アンケートに おける質問項目としては,本調査で,1)世帯年収, 2)子ども人数・末子年齢,3)回答者職業,4)各メ ディア利用頻度,5)各人々への日常生活・子育て依 存度,以上の 5 項目を,本調査で 1)学歴,2)住居 形態,3)パートナーの就業,4)子育て関連施設・サ ービス利用状況,5)生活時間,6)趣味,7)各友人 の数,8)各満足度,9)子育ての価値観,10)好きな コンテンツ,以上の 10 項目を聞いている.. 調査 母体 調査対象. 有効回答 回答者 基本属性. 表 3-1. 調査の概要 (株)ネットマイルが提供する インターネットリサーチシステム パネルから東京都・神奈川・埼玉・千葉 県在住 20-44 歳既婚男性 10,000 サンプル を 1 次調査で抽出. 更に 1 次調査の回答者 から未就学児と同居する回答者を抽出. 997 回答者年齢:平均 37.40 歳 (SD3.88) 居住地: 東京都(397, 40%)・埼玉(184, 18%)・千葉(157, 16%)・神奈川県 (259, 26%) 世帯年収:平均 680.0 万円 (SD260.4) 子ども人数:平均 1.66 人 (SD0.70) 末子年齢:平均 2.30 (SD1.64) 配偶者就業状況:パート(110, 11%)・フ ルタイム(280, 28%)・無職 (564, 57%)・休業 (43, 4%) 保育施設利用状況:幼保併用 (12, 1%)・ 保育所 (254, 25%)・幼稚園 (393, 39%)・利用なし(338, 34%). 4.調査結果 (1) 調査分析の基本的枠組 本調査の結果をまとめるにあたり,趣味に関する事 柄の中でも,その社会的ネットワークからみた消費形 態に注目することにした.すなわち、趣味の有無に加 えて,その趣味を「一人で楽しむのか」もしくは「誰 かと共有し一緒に楽しむのか(趣味を共有するコミュ ニティを持っているか)」以上の分類を軸に,それぞ れの趣味の消費形態をとる人々の平均的特徴について, 結果をまとめ,分析を行うものとする. (2) 社会的ネットワークと子育て参加 趣味に関する分析を本格的に行う前に,本調査にお ける父親の社会的ネットワークと,子育て参加度に関 する知見をまとめておきたい.下表 4-1 は,父親の女 性友人数と子育ての参加時間との相関関係を,子ども の利用施設別にまとめたものである.これを見ると,.
(3) 特に片働きが多い幼稚園の利用者において,豊富な女 性ネットワークを持つ父親の方が,子育てに積極的で あることが分かる.仕事に専念し易く職場において男 性の均質的なネットワークになりやすい片働きの家庭 における父親は,ジェンダー面で多様なネットワーク の構築が,育児参加に結び付きやすいだ.つまり趣味 の活動がこうした多様なネットワークの構築に寄与し ていれば,趣味的活動も父親の子育て参加を考え上で, 意義のある行動であると考えられる. 表 4-1.父親女性友人数と育児参加時間の相関一覧 家事 子どもと 子どもの 従事時間 遊ぶ時間 世話時間 1:保育所のみ 女性の 2:幼稚園のみ 友人数 3:幼保の利用無. 0.017. 0.090. 0.188. **. 0.139. 0.105. #. 0.076. 0.043 * **. 0.081 0.108. 図 4-1. ソーシャルメディアの日常的利用(書込)と趣味消費. (3) 趣味と収入 続いて,本論の主要なテーマである趣味活動の形態 について,詳細を見ていきたい.下表 4-2 は,先に述 べた社会的ネットワークからの趣味消費の 3 形態毎の 平均世帯年収をまとめたものである.これを見ると, 趣味がない父親の家庭の平均世帯年収は低いが,趣味 がある家庭の中では、その趣味が一人で楽しむものか, 社会的ネットワークの中で楽しむものかによって,大 きな世帯年収の違いは見られない.このデータは,経 済的レベル等,一般的な意味での社会的階級が,趣味 の消費方法に影響を与えていないことを示唆している. 表 4-2. 父親の 趣味形態と平均世帯年収 平均(万円). SD. 1:趣味はない(N=97). 628.35. 249.26. 2:趣味は一人で(N=433). 696.88. 239.20. 3:趣味のコミュニティが(N=356). 701.12. 254.48. 水準. 分散分析(平均値の差の検定). 図 4-2. ソーシャルメディアの日常的利用(書込)と趣味消費. *. (2) 趣味とメディア 次に趣味の消費形態とメディアの利用についてであ る.下記図 4-1,2 は,ソーシャルメディアの日常的利 用の有無と趣味消費の類型との関係を示したものであ る.これを見ると,趣味を持たない人々は,趣味を持 つ人々よりも,ソーシャルメディアの利用には消極的 になっていることが分かる.図 4-3 は,携帯電話メー ルの利用頻度と,趣味消費の類型との関係を示したも のである.ここからは,趣味がある人々と比べて趣味 のない人々は,携帯電話メールの利用量が尐ない人が 尐数派で,ある程度メールの活用が進んでいることが 分かる.以上の結果からは,趣味のある人々の方が, ソーシャルメディア等を通して知り合いうる,知らな い他者への志向性が高いことが推察される.一方で, 趣味のない人々は,携帯電話のメールを用いた知り合 いとのコミュニケーションがより強い基盤となってい ると考えられる. 図 4-3.携帯メールの利用形態と趣味消費.
(4) (3) 趣味と子育て参加 下表 4-3 は,趣味の消費形態毎の各種子育てへの参 加時間の平均値をまとめたものである.これを見ると, 趣味の消費形態によって,家事にかける時間や労働時 間の平均値に際は見られないが,子どもと遊ぶ時間や. 子どもの世話はする時間は,趣味がない<趣味は一人 で<趣味のコミュニティがあるの順番で有意に多くな っていることが分かる.この結果からは,趣味の社会 的ネットワークを持つ者の方が,仕事の忙しさに関係 なく子育てへの参加に積極的であることが推察される.. 表 4-3. 子育てへの参加時間(平日)の平均値と趣味の消費形態 水準 1:趣味はない(N=97) 2:趣味は一人で(N=433) 3:趣味のコミュニティがある(N=356) 分散分析(平均値の差の検定). 家事時間 Mean SD 28.26 53.54 24.85 41.46 27.38 39.96. (4) 趣味と社会的ネットワーク 更に,趣味の消費形態と父親が持つ社会的ネットワ ークの形質との関係について見てみたい.下表 4-4 は, 趣味の消費形態毎の友人数の平均(男女別)をまとめた ものである.これを見ると,男女ともに趣味を持ち, 更に趣味の社会的ネットワークを持つ人の方が,友人 数が多くなっている.特に女性の友人数については, 趣味のネットワークを持つ人の人数が,他の趣味の消 費形態を持つ人々よりもかなり多くなっており,父親, 男性たちにとって,女性との繋がりを持つためには, 趣味のつながりが,かなり重要なウェートを占めてい ることがこのデータからは推察される.. 子との遊び時間 Mean SD 36.15 39.97 37.90 41.56 47.28 45.92 **. 子ども世話時間 Mean SD 28.05 34.51 31.52 35.21 39.46 42.16 **. 労働時間 Mean SD 595.6 261.6 598.2 200.8 602.5 210.7. 表 4-4. 趣味の消費形態毎の友人数(男女別)平均値 男性友人数 女性友人数 水準 平均 SD 平均 SD 1:趣味はない(N=97) 5.01 6.60 1.67 3.38 2:趣味は一人で(N=433) 8.19 10.03 2.41 5.35 3:趣味コミュニティあり(N=356) 11.38 11.83 4.04 6.41 分散分析 ** **. (6) 趣味と生活への満足度 最後に,下表 4-5 は趣味の消費形態毎の各種生活満 足度の平均値をまとめたものである.この結果からは, 趣味を持ち,更に,それを社会的ネットワークの中で. 表 4-5. 趣味の消費形態毎の各種生活満足度の平均値 水準 1:趣味はない(N=97) 2:趣味は一人で(N=433) 3:趣味のコミュニティがある(N=356) 分散分析(平均値の差の検定). 仕事の満足度 平均(点) SD 3.27 1.29 3.58 1.40 3.69 1.40 *. 楽しんでいる人の方が,有意に仕事に対しても子育て に対しても,夫婦の生活に対しても満足度が高い事が わかる.特に夫婦生活に関しては,趣味を他者と共有 することが肝要であると考えられる.. 5.考察 以上の調査結果からは,趣味の活動,特に他者と共 有された形で行われる趣味の活動が,父親の子育て参 加を促すとされるジェンダー面で多様なネットワーク の構築に,重要な役割を果たしてる事が推察される. こうした社会的ネットワークの中での趣味の実践は, 経済的レベルによらず行われているようであり,ソー シャルメディアの利用と親和性が高いと考えられる. また,趣味を他者と共有することは,父親の子育て参 加の程度に加えて,生活満足度の向上にも繋がってお り,父親の子育てを考える上で鍵となる概念である.. 6.おわりに 今回の調査結果からは,父親の子育てへの参加形態 が,労働環境の様な純粋に外部的要因だけではなく, 趣味のような文化的に学習される要因と強い相互関係 にある事が示唆された.これは男性の子育て参加への 支援施策を考える上では非常に価値のある発見だと考 えられる.但し今回の分析は,試論的要素も強く,今. 子育ての満足度 平均(点) SD 4.30 1.22 4.51 1.31 4.78 1.27 **. 夫婦での生活満足度 平均(点) SD 4.24 1.41 4.27 1.43 4.73 1.35 **. 後は更に詳細な議論の検討も必要となってくるだろう. (注) 一連の検定結果は,*5%, **1%水準での有意を示す.. 参考文献 1) Bott, E., (1955): Urban Families: Conjugal Roles and Social Networks, Human Relations, Vol.8, 345-384. 2) 天笠邦一 (2010): 子育て期のサポートネットワーク形成における通 信メディアの役割,『社会情報学研究』Vol.14(1) 1-16. 3) 落合 恵美子 (1989)『近代家族とフェミニズム』勁草書房. 4) 久保桂子 (2001): 働く母親の個人ネットワークからの子育 て支援, 『日本家政学会誌』 Vol.52(2) 135-145. 5) 関井智子ら (1991): 働く女性の性別役割分業観と育児援助 ネットワーク, 『家族社会学研究』 Vol.3, 72-84. 6) 辻泉 (2003): 携帯電話を元にした拡大パーソナル・ネット ワーク調査の試み, 『社会情報学研究』Vol.7. 97-111 7) 野沢慎司 (2006) 『リーディングス・ネットワーク論』勁草書房. 8) 松田茂樹 (2008)『何が育児を支えているか』勁草書房. 9) 松田美佐 (2000): 若者の友人関係と携帯電話利用, 『社会 情報学研究』 Vol.4 111-123. 10) 宮田加久子ら, (2006): モバイル化する日本人, 松田美佐 ら編『ケータイのある風景』99-120, 北大路書房. 11) 目黒依子 (1987)『個人化する家族』勁草書房.. 以上.
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