建 設 マ ネ ジ メ ン ト研 究 論 文集Vol.152008
都市高速 道路 の舗装修 繕 における
同時施 工の有効 性検証
阪 神 高 速 道 路 株 式 会 社 坂 井 康 人*1 中 央 復 建 コ ン サ ル タ ン ツ(株)井 上 裕 司*2 京 都 大 学 経 営 管 理 大 学 院 小 林 潔 司*3By Yasuhito SAKAI, Yuji INOUE
and Kiyoshi KOBAYASHI
舗 装 を合 理 的 に修 繕 す る た め の 課 題 の1つ に 適 切 な 修 繕 範 囲 の設 定 が あ る.舗 装 は 箇 所 毎 に 劣 化 速 度 が 異 な る た め,修 繕 費 用 の み に 着 目す る と劣 化 箇 所 を最 適 な タ イ ミン グ で そ の 都 度 修 繕 す る個 別 施 工 が 有 利 とな る.し か し実 際 は,交 通 規 制 を 伴 う渋 滞 損 失 等 を抑 え るた め に あ る範 囲 を 同 時 に修 繕す る 同 時 施 工 が 行 わ れ る.今 回,阪 神 高 速 道 路 を 対 象 に,個 別 施 工 と同 時 施 工 を 実 施 した と き に 発 生 す る トー タ ル 費 用 を 比 較 し,同 時 施 工 の 有 効 性 を検 証 した.そ の 結 果,ト ー タル 費 用 に 占 め る割 合 は 渋 滞 損 失 費 用 が 圧 倒 的 に 多 く,渋 滞 が 発 生 す る箇 所 で は 同 時 施 工,発 生 しな い 箇 所 で は 個 別 施 工 が 有 利 とな る こ とが 判 明 した.ま た,こ の 結 果 を踏 ま え て,阪 神 高 速 道 路 全 線 を 同 時 施 工 区 間 と個 別 施 工 区 間 に 分 け,同 時 施 工 に よ る コス ト縮 減 効 果 を調 べ た と こ ろ,同 時 施 工 に よ る コ ス ト縮 減 効 果 は年 間375億 円 に 達 す る結 果 と な っ た. 【キ ー ワ ー ド】都 市 高 速 道 路,舗 装 修 繕,同 時 施 工,コ ス ト縮 減,LCC 1.は じ め に 阪 神 高 速 道 路 は1964年(昭 和39年)の 供 用 開 始 以 来,大 阪 ・神 戸 を 中 心 に 整 備 が 進 め られ,2007年(平 成19年)現 在,供 用 延 長 は233.8km,通 行 台 数 は 約 90万 台/日 に 達 し,地 域 経 済 に 大 き く貢 献 して い る. しか し,供 用 開 始 以 来 す で に40年 以 上 が 経 過 し,既 存 施 設 の 高 齢 化 に 加 え て,供 用 延 長 の 約80%が 橋 梁 構 造 で あ る こ とや 大 型 車 混 入 率 が 約20%に 達 す る 等 の 都 市 高 速 道 路 特 有 の 厳 しい 条 件 を 有 し て お り,今 後,維 持 修 繕 費 の 増 大 や サ ー ビ ス 水 準 の 低 下 が 懸 念 さ れ て い る. 一 方 ,維 持 修 繕 費 は,平 成5年 度 を ピ ー ク に 減 少 に 転 じて お り,さ らに 平 成15年12月 の 政 府 ・与 党 の 申 し合 わ せ を 踏 ま え て 維 持 修 繕 費 の 大 幅 な 削 減 に 取 り込 ん で い る.こ の よ うな 背 景 か ら,従 来 と同 様 の サ ー ビ ス を継 続 的 に 提 供 す る た め に は,よ り一 層 の 効 率 化 ・合 理 化 が 不 可 欠 とな っ て い る. 阪 神 高 速 で は,修 繕 費 の 中 で 舗 装 の 占 め る 割 合 が 高 い.ま た,舗 装 は 車 両 の 走 行 性 や 安 全 性,周 辺 へ の 騒 音 や 振 動 等 に 直 接 影 響 す る こ とか ら,舗 装 修 繕 の 効 率 化 は 維 持 管 理 の 合 理 化 を 図 る 上 で 最 も重 要 な 課 題 の 一 つ で あ る. 合 理 的 な 舗 装 修 繕 の課 題 の 一 つ に 「修 繕 範 囲 」 の 問 題 が あ る.舗 装 は 使 用 環 境 等 の違 い に よ っ て 箇 所 毎 に 劣 化 速 度 が 異 な る 。 そ の た め,打 ち 換 え 費 用 の み に 着 目す れ ば,傷 ん だ 箇 所 の み を そ の 都 度 修 繕 す る 「個 別 施 工 」 が 効 率 的 とな る.し か し,実 際 に は こ の よ うな 手 法 は 採 用 され ず,劣 化 が 進 行 して い な い 箇 所 も含 め て あ る 程 度 の 範 囲 を 同 時 に 修 繕 す る 「同 時 施 工 」 が 行 わ れ る.こ れ は,舗 装 修 繕 で は 交 通 規 制 が 必 要 と な り,打 ち 換 え 費 用 の 他 に 渋 滞 損 失 費 用 等 の 外 部 コ ス ト(社 会 的 損 失)や 規 制 費 用 が 発 生 す る た め で あ る.特 に,都 市 高 速 で は 渋 滞 等 の 社 会 損 失 が 大 き い こ と か ら,こ れ ら を 抑 え る た め に 阪 *1保 全 交 通 部Tel.06-4963-5588 *2計 測 診 断 系 グ ル ー プTe1.06-6160-2132 *3経 営 管 理 講 座 教 授Tel.075-383-3224
神 高 速 で は ロ ン グ 規 制 や 通 行 止 め に よ る 大 規 模 な 同 時 施 工 を 実 施 して い る.同 時 施 工 の 有 効 性 は,劣 化 が 進 行 して い な い 箇 所 を 早 期 に 修 繕 す る こ とに よ る デ メ リ ッ ト(過 剰 投 資)と 外 部 コ ス トを 抑 制 で き る メ リ ッ ト(コ ス ト縮 減)と の 大 小 関 係 に よ っ て 決 定 され る と 考 え られ る. 今 回,阪 神 高 速 を 対 象 に 個 別 施 工 を 行 っ た 場 合 と 同 時 施 工 を 行 っ た 場 合 の トー タ ル 費 用 を 算 出 し,そ れ らの 比 較 を 通 じて 同 時 施 工 の 有 効 性 を 検 証 した. ま た,検 証 結 果 を 踏 ま え て,阪 神 高 速 の 全 路 線 の 中 で 同 時 施 工 が 有 利 とな る 区 間 を 選 定 す る と共 に,同 時 施 工 に よ る コ ス ト縮 減 効 果 を 算 出 した.本 稿 で は, これ らの 検 討 の 内 容 と そ の 結 果 に つ い て 報 告 す る.
2.舗
装 の維持 管理 の概 要
本 章 で は,ま ず,阪 神 高 速 に お け る舗 装 の維 持 管 理 の 現 状 と して,点 検,修 繕 マ ネ ジ メ ン トシ ス テ ム の 内 容 を概 説 す る. (1)点 検 阪 神 高 速 で は,土 木 構 造 物 を 対 象 に 点 検 要 領1)を 策 定 して お り,本 要 領 に 準 じ て 定 期 的 に 舗 装(路 面) 状 態 を 点 検 して い る.近 年 で は 路 面 点 検 車 両 に よ っ て2∼3年 毎 に わ だ ち 掘 れ 量,ひ び 割 れ 率,縦 断 凸 凹 量 を 計 測 して い る.ま た,計 測 され た 点 検 記 録 は 舗 装 の 管 理 単 位 で あ る径 間 毎,車 線 毎 に デ ー タ ベ ー ス シ ス テ ム で あ る保 全 情 報 管 理 シ ス テ ム2)に 蓄 積 して い る. (2)修 繕 点 検 と同 様,補 修 も標 準 的 な 手 法 を 定 め た 補 修 要 領3)を 策 定 して お り,舗 装 の わ だ ち 掘 れ と ひ び 割 れ (応 急 補 修 を 除 く)に 対 して は 打 ち換 え 補 修 を標 準 と して い る. ま た,舗 装 修 繕 は 交 通 規 制 を 伴 うた め,阪 神 高 速 で は 警 察 協 議 に よ っ て 修 繕 に 伴 う規 制 延 長 は 最 大 2kmと 定 め られ て い る.さ ら に,大 阪 管 理 部 内 で は 規 制 に 伴 う渋 滞 損 失 が 非 常 に 大 き い こ と を 踏 ま え て 全 線 通 行 止 め に よ る集 中 工 事 を 行 っ て お り,舗 装 修 繕(打 ち換 え)は 基 本 的 に こ の 時 に 合 わ せ て 集 中 的 に 実 施 して い る. (3)橋 梁 マ ネ ジ メ ン トシ ス テ ム(H-B-S) 阪 神 高 速 で は 構 造 物 の 維 持 管 理 の 効 率 化 を 図 る た め に,様 々 な 取 り組 み を 行 っ て い る 。 こ れ ら の-表-1検 証 ケ ー ス つ と し て 阪 神 高 速 道 路 橋 梁 マ ネ ジ メ ン トシ ス テ ム (H-BMS: Hanshin expressway Bridge Management System)の 開 発 を 進 め て お り,す で に舗 装,塗 装, 伸 縮 継 手,床 版,鋼 構 造 物,コ ン ク リー ト構 造 物, 支 承 の7工 種 の 計 算 機 能 を 有 す るH-BMSveL2.0を 構 築 し,一 部 で 運 用 を 開 始 して い る4)∼6). H-BMSは,ラ イ フ サ イ クル コ ス ト(LCC)が 最 小 と な る 最 適 管 理 水 準 の 算 出 や 将 来 に お け る 費 用 と状 態(機 能 水 準)の 推 移 を シ ミ ュ レー シ ョ ン で き る 機 能 を 有 して お り,必 要 予 算 の 把 握 や 優 先 順 位 の 判 断, 説 明 資 料 の 作 成 等 に活 用 して い る.な お,H-BMSで は,阪 神 高 速 が 直 接 支 出 す る 修 繕 費 用 や 維 持 費 用 だ け で な く渋 滞 損 失 費 用 と車 両 走 行 費 用 の 外 部 コ ス ト を 含 め たLCCを 最 小 化 す る こ と で,阪 神 高 速 か ら の 支 出 だ け で な く利 用 者 へ の 不 便 益(サ ー ビ ス の 低 下) を 最 小 限 に 留 め る 修 繕 時 期 を 計 算 す る こ とが で き る.3.同
時施工 の有効性 検証
3.1検 証 方 法 同 時 施 工 の 有 効 性 の 検 証 手 順 を 以 下 に 述 べ る.ま ず,阪 神 高 速 の 実 態 に 即 した モ デ ル 路 線 を設 定 す る. 次 に,モ デ ル 路 線 に 対 して 個 別 施 工 と 同 時 施 工 を 行 っ た 場 合 に 発 生 す る 費 用 をH-BMSに よ っ て シ ミ ュ レー シ ョ ンす る.最 後 に,そ れ ぞ れ の ケ ー ス に お い て 発 生 す る今 後100年 間 の 費 用 総 額(ト ー タ ル 費 用) を 比 較 し,同 時 施 工 の 有 効 性 を 検 証 す る. (1)検 証 ケ ー ス 表 一1に 検 証 ケ ー ス を 示 す.検 証 ケ ー ス は,現 状 で は 舗 装 の 管 理 を1径 間 ・1車線 単 位 で 行 っ て い る こ と,1回 の 規 制 長 が 最 大2kmで あ る こ と,大 阪 管 理 部 で は 毎 年 全 線 通 行 止 め に よ る 集 中 工 事 を 実 施 し て い る こ と を 考 慮 し,1車 線 を1径 問 毎 に 規 制 す る1径 間 規 制(ケ ー ス1),2km毎 に 規 制 す る2km規 制(ケ ー ス2), 全 線 に わ た っ て 規 制 す る全 線1車 線 規 制(ケ ー ス3) の3ケ ー ス と した.な お,阪 神 高 速 道 路 の 平 均 径 間 長 は 約40mで あ る.ま た,ケ ー ス3は 全 線 通 行 止 め と異図-1劣
化曲線
な る が,全 線 通 行 止 め の 条 件 で は渋 滞 損 失 費 用 の 算 出 に 用 い る 交 通 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム (HEROINE)7)の 計 算 精 度 が 低 下 し,実 態 との 乖 離 が 大 き く な る こ と か ら 上 記 の よ う に 設 定 し た. HEROINEは,任 意 の 場 所 を規 制 した 時 の 交 通 流 予 測 機 能 を備 え て お り,一 般 道 へ の 迂 回 も モ デ ル 化 さ れ て い る.し か し,一 般 道 は 静 的 モ デ ル で 迂 回 量 に 応 じ て 変 動 しな い た め,全 線 通 行 止 め の よ う に 一 般 道 の 交 通 容 量 を 超 え る 迂 回 量 が 発 生 す る条 件 で は,計 算 結 果 が 実 態 と乖 離 す る こ と が 判 明 して い る. (2)モ デ ル 路 線 の 股 定 モ デ ル 路 線 は,阪 神 高 速 の 実 態 を反 映 す る た め に , 実 際 の 路 線 の 中 か ら代 表 路 線 を 選 定 し,そ れ を基 に 設 定 した.代 表 路 線 は,中 心 部 と末 端 部 の 交 通 量 の 差 が 大 き く 交 通 量 や 渋 滞 損 失 の 変 化 に 伴 う傾 向 が 把 握 し易 い こ と,現 時 点 で のMCI(MaintenanceControl Index)の バ ラ ツ キ が 全 線 と ほ ぼ 同 じ傾 向 を 示 す こ と, 前 年 度 に 点検 が 行 わ れ て お り点 検 デ ー タ が 充 実 して い る こ と等 の 理 由 か ら池 田空 港 線(環 状 分 岐 ∼ 池 田 , 蛍 池 線 含 む)を 選 定 し た.こ こ で,MCIは 旧建 設 省 が 提 案 し た 舗 装 の 劣 化 指 標 で あ る8).ま た,傾 向 を 分 析 し易 くす る た め に,代 表 路 線 に 対 して,車 線 は 全 て2車 線,床 版 は 全 て コ ン ク リー ト床 版,本 線 ・車 道 以 外 の 非 常 駐 車 帯 等 は 除 外 す る と の 補 正 を施 し, モ デ ル 路 線 を 単 純 化 し た.設 定 した モ デ ル 路 線 の 区 間 数 を表-1に 示 す. (3)劣 化 曲 線 の 設 定 同 時 施 工 で は,施 工 範 囲 内 に複 数 の 区 間(径 間 ・ 車 線)が 含 ま れ る た め,修 繕 タ イ ミ ン グ は 同 時 施 工 範 囲 内 に 含 ま れ る あ る 区 間 が 最 適 管 理 水 準 に 達 した 段 階 で 実 行 され る.そ の た め,同 時 施 工 を 考 慮 す る表-2規
制1回 当た りの渋滞損失費用
(a)上 り (b)下 り ケ ー ス2と ケ ー ス3で は,同 時 施 工 範 囲 の 中 で 最 も低 い 機 能 水 準 を 当 該 施 工 範 囲 の 機 能 水 準 と した. H-BMSに 採 用 して い る 劣 化 曲 線 は,津 田 等 の 提 案 す る 多 段 階 劣 化 指 数 ハ ザ ー ドモ デ ル(付 録 参 照)に よ る 推 計 結 果 を基 に 設 定 して い る9).そ の た め,本 検 証 で も保 全 情 報 管 理 シ ス テ ム に 蓄 積 され て い る モ デ ル 路 線(池 田 空 港 線)に お け るRC床 版 の 点 検 結 果 か ら上 記 の 手 法 で 推 計 し た 劣 化 曲線 を 採 用 した. ま た,今 回 の 検 証 で は,舗 装 は 設 定 した 劣 化 曲 線 に 従 っ て 劣 化 す る も の と仮 定 す る 。 しか し,実 際 の 劣 化 に は 不 確 実 性 が あ り,区 間 に よ っ て 劣 化 速 度 が 異 な る.そ の た め,施 工 範 囲 内 に あ る1区 間 が 修 繕 タ イ ミ ン グ に 達 した 時 点 で 当 該 施 工 範 囲 の 全 区 間 を 修 繕 す る 同 時 施 工 で は,路 線 の 平 均 修 繕 周 期 が 個 別 施 工 に 比 べ て 早 くな る.こ の 影 響 をみ か け の 劣 化 曲線 と して 表 現 す る た め に,昨 年 度 に お け る池 田 空 港 線 の 実 測 デ ー タ を 用 い て,同 時 施 工 範 囲 が 表-1の3ケ ー ス の 場 合 に 路 線 全 体 の 平 均 修 繕 周 期 が ど の 程 度 異 な る の か を 調 べ た.そ の 結 果,ケ ー ス2と ケ ー ス3の 平 均 修 繕 周 期 は ケ ー ス1に 対 し て そ れ ぞ れ1/1.56, 1/1.80と な っ た.よ っ て,ケ ー ス2と ケ ー ス3で は ケー ス1の 劣 化 曲 線 を 上 記 の 比 率 で 補 正 し た 曲 線 を 用 い る こ と に した. 図-1に,ケ ー ス1∼3に 対 して 設 定 し た 劣 化 曲 線 を 示 す.
(4)渋 滞損失費用の設定
本 検 証 で は,渋 滞 損 失 費 用,修 繕 費 用,維 持 費 用, 車 両 走 行 費 用 の4つ の 費 用 を 考 慮 す る. 阪 神 高 速 で は 任 意 の 場 所 を 規 制 し た と き に 発 生 す る 渋 滞 を 予 測 で き る 交 通 流 シ ミ ュ レー シ ョ ン シ ス テ ム(HEROINE)を 開 発 して い る7).渋 滞 損 失 費 用 は 本 シ ス テ ム に よ っ て 算 出 され た 損 失 時 間 に 時 間 評 価 値(原 単 位)を 乗 じ る こ と に よ っ て 算 出 した. 表-2に,設 定 した 規 制1回 当 た りの 渋 滞 損 失 費 用 を 示 す.ケ ー ス1∼3の 規 制 日数 は,こ れ ま で の 実 績 を 踏 ま え て そ れ ぞ れ1日,2日,4日 と した.ま た,阪 神 高 速 の 大 半 で は 騒 音 が 発 生 す る 修 繕 を 夜 間 に 実 施 で き な い こ と か ら,修 繕 は 基 本 的 に 休 日 の 昼 間 に行 う条 件 と した.こ れ ら の 条 件 よ り,通 常 時(規 制 な し)と 規 制 時(規 制 あ り)の 場 合 の 路 線 総 旅 行 時 間 (台 ・時 間)をHEROINEで 計 算 し,こ の 差 分 を 規 制 に伴 う損 失 時 間 と し た.ま た,HEROINEで は 最 大 予 測 期 間 が24時 間 で あ る た め,ケ ー ス1で は8:00∼ 16:00,ケ ー ス2と ケ ー ス3で は8:00∼24:00ま で を 規 制 時 間 と し,算 出 され た 休 日1日 当 た りの 損 失 時 間 に 規 制 日数 を か け る こ と で 損 失 時 間 を 算 出 した.次 に, 渋 滞 損 失 費 用 を 算 出 す る た め の 原 単 位 は,平 成15年 度 の 経 済 統 計 よ り国 民 総 所 得 を 就 業 者 数 で 割 っ た1 人 当 た りの 所 得 を 年 間 労 働 時 間 で 割 っ た 時 間 評 価 値 に,阪 神 高 速 の 平 均 乗 車 率1.4人 を 掛 け た76.7円/台 ・ 分 と した. HEROINEに よ る シ ミ ュ レー シ ョ ン の 結 果,交 通 量 の 多 い 環 状 線 付 近 で は 渋 滞 損 失 時 間 が 大 き く末 端 部 に 向 か っ て 減 少 す る こ と,下 り線 で は他 路 線 ま で 渋 滞 が 影 響 す る た め 上 り線 よ り渋 滞 損 失 が 大 き く な る こ と等,実 態 に 近 い 現 象 が 再 現 で き た.(5)修 繕費用の設定
修 繕 費 用 は,過 去 に お け る舗 装 の 打 ち換 え 実 績 を か ら平 均 的 な 修 繕 費 用 を 設 定 した.表-3に,設 定 した 修 繕 費 用 を 示 す. H-BMSで は,舗 装 の 修 繕 シ ナ リオ をMCIが4.2未 満 な ら表 基 層 打 ち 換 え,4.2以 上8.5未 満 な ら表 層 打 ち 換 え,8.5以 上 な ら修 繕 な し と設 定 し て い る.ま た,表-3修
繕費用
表-4維
持費用
表-5車
両走行費用
表 基 層 打 換 え の 費 用 は 舗 装 下 の 条 件 に よ っ て 異 な る こ とか ら,表 基 層 打 換 え はRC床 版,鋼 床 版,土 工 毎 に 費 用 を設 定 し た.(6)維 持費用,車 両走行費用の設 定
表-4に,本 検 証 に 用 い た 維 持 費 用 を 示 す.突 発 的 な ポ ッ トホ ー ル や ひ び 割 れ 等 の 対 策 の た め に 日常 的 に 費 や さ れ る維 持 費 用 は,旧 建 設 省 が 一 般 国 道 を 対 象 に 行 っ た 調 査 結 果10)に基 づ い て 設 定 した.こ の 調 査 で 設 定 さ れ た 維 持 費 用 は 昭 和62年 の 値 で あ る た め,本 検 証 で は 国 土 交 通 省 発 表 の 建 設 工 事 費 デ フ レ ー タ を 用 い て 補 正 し た .な お,昭 和62年 に対 す る現 在 の デ フ レー タ は1.14で あ っ た.ま た,こ れ は 一 般 国 道 に 対 す る 値 で あ り,都 市 高 速 道 路 と異 な る と考 え られ る が,他 に維 持 費 用 を 算 出 し た 事 例 が 無 い こ と と,過 去 の 発 注 実 績 か ら維 持 費 用 分 を抽 出 す る こ とは 不 可 能 で あ る こ と が 判 明 した こ とか ら,本 検 証 で は こ の 値 を 用 い た.表-5に,本 検 証 に 用 い た 車 両 走 行 費 用 を 示 す. 車 両 走 行 費 用 は,旧 建 設 省 が 平 成 元 年 に 国 道 に お い て 走 行 試 験 を 実 施 し,MCIと 車 両 走 行 費 用 の 関 係 を 定 量 的 に 調 査 し た 事 例11)を参 考 に 設 定 した.な お, 車 両 走 行 費 用 は 維 持 費 用 の よ うな デ フ レー タ補 正 を 行 っ て い な い.こ こ で,車 両 走 行 費 用 に 含 ま れ る費 用 は,燃 費,車 両 の 維 持 修 繕 費,減 価 償 却 費 の3つ で あ る.本 検 証 で は,こ こ で 設 定 され たMCIと 車 両 走 行 費 用 と の 関 係 を 線 形 補 完 し,MCI=9.5時 点 に お け る 車 両 走 行 費 用 か らの 差 を 車 両 走 行 費 用 と して 用 い た.こ の よ うにMCI=9.5時 点 か ら の 差 を 車 両 走 行 費 用 と した の は,阪 神 高 速 に お け る竣 工 時 のMCIが 約 9.5で あ り,そ れ か ら の 差 分 がMCI低 下 に 伴 う利 用 者 損 失 と見 な す こ とが で き る た め で あ る.車 両 走 行 費 用 も一 般 国 道 を 対 象 に 設 定 され た 値 で あ る が,こ れ はMCIに 対 す る 値 で あ る こ とか ら,都 市 高 速 に も 準 用 可 能 と考 え られ る. (7)ト ー タ ル 費 用 の 算 出 以 上 の 条 件 か ら,H-BMSに よ っ て ケ ー ス1∼3に 対 す る トー タル 費 用 を 算 出 す る.H-BMSで は,無 限 遠 方 ま で に 発 生 す る費 用 の 割 引 現 在 価 値(社 会 的 割 引 率4%)の 累 計 額 をLCCと 定 義 し,LCCが 最 小 とな る 最 適 管 理 水 準 を 計 算 す る こ と が で き る.本 検 証 で は 舗 装 の 機 能 水 準(MCI)が 最 適 管 理 水 準 に 達 した 時 点 で 直 ち に 修 繕 が 実 行 され る も の と し,今 後100年 間 に発 生 す る 修 繕 費 用,維 持 費 用,渋 滞 損 失 費 用,車 両 走 行 費 用 の 合 計 を トー タ ル 費 用 と して 算 出 す る. な お,H-BMSで はLCCで 考 慮 され て い な い 事 故 や 騒 音 等 を 便 宜 的 に 考 慮 す る た め に 管 理 下 限 値 を 設 定 して い る,H-BMSに お け る シ ミュ レー シ ョ ン で は 舗 装 の 機 能 水 準 が 管 理 下 限 値 に 達 す る と,管 理 下 限 値 を 最 適 管 理 水 準 と して 直 ち に修 繕 が 実 行 さ れ る.管 理 下 限 値 は 点 検 要 領 に お け る 判 定 区 分 に 準 じて,最 大 わ だ ち 掘 れ 量 又 は 平 均 ひ び 割 れ 率 の ど ち ら か がA 判 定 に 達 す る水 準 と してMCI=5.6に 設 定 して い る. 3.2検 証 結 果 (1)モ デ ル 路 線 に お け る トー タ ル 費 用 表-6に,ケ ー ス1∼3に 対 して 算 出 され た 今 後100 年 間 の トー タ ル 費 用(修 繕 費 用+維 持 費 用+車 両 走 行 費 用+渋 滞 損 失 費 用)の 合 計 額 を示 し,各 費 用 が 占 め る 割 合 を 図-2に 示 す.図-2よ り,ト ー タル 費
表-6ト
ー タル費用の年平均
(a)ケ ー ス1 (b)ケ ー ス2 (c)ケ ー ス3図-2各
費用が トータル費用に 占める割合
用 に 占 め る 割 合 は,渋 滞 損 失 費 用 が 圧 倒 的 に 大 き く な っ た.ま た,表-6よ り同 時 施 工 を 行 うケ ー ス2と ケ ー ス3で は 規 制 回 数 の 減 少 に 伴 っ て 渋 滞 損 失 費 用 が 大 幅 に 低 下 した.一 方,修 繕 費 用 は,ケ ー ス1と ケ ー ス2が ほ ぼ 同 じ と な り ,ケ ー ス3は 若 干 増 加 示 した. ケ ー ス3の 修 繕 費 が 増 加 し た 理 由 は 修 繕 の タ イ ミ ン グ が 早 ま る た め と考 え られ る 。 た だ し,修 繕 費 用 の 増 加 量 は 渋 滞 損 失 費 用 の 減 少 量 と比 べ る と非 常 に 小 さか っ た. モ デ ル 路 線 に 対 す る以 上 の 結 果 か ら,同 時 施 工 に よ っ て トー タ ル 費 用 の 大 部 分 を 占 め る 渋 滞 損 失 費 用 が 大 幅 に低 減 す る こ と が 確 認 で き た.(2)同 時施工の有効性判断
モ デ ル 路 線 は,環 状 線 合 流 部 か ら末 端 部 に 向 か っ て 交 通 量 が 減 少 し,渋 滞 損 失 が 低 下 す る 特 徴 を 有 し て い る .そ の た め,ケ ー ス1と ケ ー ス2を 対 象 に2キ ロ ポ ス ト毎 に お け る トー タル 費 用 を 比 較 し,同 時 施 工図-3同
時施工が有利 となる範囲 と個別施工が有利 となる範囲
が 有 効 と な る条 件 に つ い て 考 察 した. 表-7に,両 ケ ー ス に お い て 今 後100年 間 に お け る トー タ ル 費 用 を2キ ロ ポ ス ト毎 に 算 出 した 結 果(年 平 均 費 用)と そ の 差 を 示 す.こ れ よ り,10.0キ ロ ポ ス トを 境 に ケ ー 入1と ケ ー ス2で トー タ ル 費 用 が 逆 転 し た.つ ま り,0.0∼10.0キ ロ ポ ス トで は1径 間 規 制 よ り2km規 制 の 方 が 効 率 的 と な り,10。0∼14.2キ ロポ ス トで は 反 対 に2km規 制 よ り1径 間 規 制 の 方 が 効 率 的 とな っ た.こ の よ う に,個 別 施 工 の ケ ー ス1と 同 時 施 工 の ケ ー ス2で 傾 向 が 逆 転 す る 理 由 は,キ ロ ポ ス トの 増 加 に 伴 っ て 交 通 量 の 減 少 し,同 時 施 工 に よ る渋 滞 損 失 費 用 の 抑 制 効 果 が 低 下 す る た め と考 え られ る. 個 別 施 工 と 同 時 施 工 で トー タ ル 費 用 が 逆 転 す る 8.0キ ロ ポ ス トと10.0キ ロ ポ ス トの1径 間 規 制 時 の 渋 滞 損 失 費 用 か ら個 別 施 工 が 有 利 とな る 条 件 を 求 め た. そ の 結 果,1径 問 ・1車線 規 制1回 当 た りに 発 生 す る渋 滞 損 失 費 用 が300万 円 以 下 に な る と 同 時 施 工 よ り個 別 施 工 の 方 が 有 利 と な る 結 果 と な っ た.な お,こ の 渋 滞 損 失 費 用 が 発 生 す る と き の2車 線 当 た りの 断 面 交 通 量 は,概 ね2万 台/日 で あ っ た. 表-7キ ロ ポ ス ト毎 の トー タ ル 費 用 と そ の 差 図-3に,上 記 の 結 果 に し た が っ て 阪 神 高 速 全 路 線 を 同 時 施 工(2km規 制)が 有 利 と な る範 囲 と個 別 施 工(1径 間 規 制)が 有 利 と な る 範 囲 に 分 類 した 結 果 を 示 す.こ れ よ り,同 時 施 工 が 有 利 と な る 範 囲 は 渋 滞 の 発 生 しや す い 大 阪 中 心 部 か らの 放 射 路 線 とな り, 個 別 施 工 が 有 利 と な る 範 囲 は 交 通 量 の 少 な い 放 射 路 線 の 末 端 部 や 北 神 戸 線,車 線 数 の 多 い 湾 岸 線 等 と な っ た.(a)個 別 施 工 (b)同 時 施 工 考 慮 図-4ト ー タ ル 費 用 の 推 移
表-8全
線に対する トー
― タル費用の年平均
4ー-コ ス ト縮減 額の 算 出
阪 神 高 速 の 全 路 線 を径 間 ・車 線 毎 に 個 別 施 工 した 場 合 と,図-3示 した 範 囲 毎 に 同 時 施 工 と個 別 施 工 を 使 い 分 け た 場 合 に お け る今 後100年 間 の トー タ ル 費 用 の 推 移 をH-BMSで 計 算 し,同 時 施 工 を 考 慮 す る こ と に よ る コ ス ト縮 減 効 果 を 算 出 した. 同 時 施 工 を 考 慮 しな い ケ ー ス(個 別 施 工)と 同 時 施 工 を 考 慮 す る ケ ー ス(同 時 施 工 考 慮)に お け る今 後100年 間 に お け る トー タ ル 費 用(年 平 均 費 用)の 推 移 と合 計 額 を そ れ ぞ れ 図-4,表-8に 示 す. 図-4と 表-8よ り,同 時 施 工 を 考 慮 す る こ と に よ っ て1年 当 た り の 渋 滞 損 失 費 用 は392億 円/年 か ら20 (a)個 別 施 工(b)同 時施工考慮
図-5ト
ー タル費用 に占め る各費用の割合
億 円/年 に 大 幅 に 低 下 し た.直 接 費 用 で は,修 繕 タ イ ミ ン グ が 早 ま る た め に 修 繕 費 用 が1.4億 円/年 増 加 した が,早 期 の 修 繕 に よ っ て 路 面 の 状 態 が 良 好 な 水 準 に 保 た れ る こ と か ら維 持 費 用 が0.6億 円/年 減 少 し,こ の2っ を合 わ せ た 支 出 は0.8億 円/年 の 増 加 と な っ た.一 方,外 部 コ ス トは,上 記 の 渋 滞 損 失 費 用 に加 え て,路 面 が 良 好 な 水 準 で 維 持 され る た め に 車 両 走 行 費 用 が3.3億 円/年 縮 減 され,渋 滞 損 失 費 用 と合 わ せ た 外 部 コ ス トの コ ス ト縮 減 額 は 376億 円/年 と な っ た.直 接 費 用 と外 部 コ ス トを 合 計 し た トー タ ル 費 用 で は,個 別 施 工 の412億 円/年 に 対 して,同 時 施 工 を 考 慮 した は37億 円/年 とな り, 2kmの 同 時 施 工 を 考 慮 す る こ と に よ る の コ ス ト縮 減 額 は375億 円/年 に 達 す る結 果 と な っ た. 次 に,各 費 用 の トー タ ル 費 用 に 占 め る割 合 を 図 -5に 示 す.図-5よ り,個 別 施 工 を行 っ た 場 合 で は トー タル 費 用 の95%が 渋 滞 損 失 費 用 で 占 め られ る が,同 時 施 工 を考 慮 した 場 合 で は 渋 滞 損 失 費 用 が 低 下 した 。 一 方,修 繕 費 用 は 増 加 した た め,ト ー タ ル 費 用 に 占 め る割 合 は 渋 滞 損 失 費 用 が53% ,修 繕 費 用 が31%と な り,比 較 的 均 衡 す る 結 果 と な っ た. 図-6に,LCC計 算 の 結 果 例 を 示 す.図-6は,修 繕 時 機 能 水 準 とLCCの 関 係 を 示 して お り,LCCが 最 小 と な る機 能 水 準 が 最 適 管 理 水 準 と な る.こ れ よ り, 個 別 施 工 で は 渋 滞 損 失 費 用 の 割 合 が 大 き い た め 可 能 な 限 り修 繕 を遅 らせ る こ と が 有 利 と な る が,同 時 施 工 で は 渋 滞 損 失 費 用 が 低 下 す る た め,最 適 管 理 水 準 が 高 い 水 準 に 移 行 して い る こ とが 分 か る.こ れ よ り, 同 時 施 工 に よ っ て 渋 滞 損 失 費 用 を軽 減 す る こ と は, 結 果 的 に舗 装 の 水 準 を 高 く維 持 す る こ と が 有 利 と な り,こ の 点 か ら も望 ま しい 結 果 とな っ た.(a)個 別 施 工 (b)同 時 施 工 考 慮
図-6LCC計
算による最適管理水準の算 出結果例
5.ま と め 阪 神 高 速 を 対 象 に,舗 装 を1径 間 ・1車線 毎 に最 適 な タ イ ミ ン グ で 修 繕 す る 「個 別 施 工 」 と複 数 箇 所 を 同 時 に 修 繕 す る 「同 時 施 工 」 を 実 施 し た と き に発 生 す る トー タ ル 費 用 を 比 較 し,舗 装 修 繕 に お け る 同 時 施 工 の 有 効 性 を 検 証 した.そ の 結 果,都 市 高 速 で は 渋 滞 損 失 費 用 が 非 常 に 大 き い た め,同 時 施 工 に よ る 規 制 回 数 の 減 少 に 伴 っ て 大 幅 に 渋 滞 損 失 費 用 が 低 下 す る こ とが 判 明 し た.ま た,モ デ ル 路 線 で の 検 証 結 果 か ら1径 間 ・1車線 規 制1回 当 た りに 発 生 す る 渋 滞 損 失 費 用 が300万 円 以 下 で あ れ ば 同 時 施 工 よ り個 別 施 工 の 方 が 有 利 とな っ た.さ ら に,阪 神 高 速 の 全 線 を 個 別 施 工 と 同 時 施 工 の 範 囲 に 分 類 し,同 時 施 工 を 考 慮 す る こ と に よ る コ ス ト縮 減 効 果 を 調 べ た と こ ろ, 阪 神 高 速 全 線 で の コ ス ト縮 減 額 は 年 間375億 円 に 達 す る結 果 と な っ た.各 費 用 に 着 目す る と,0.8億 円/ 年 の 直 接 費 用 の 増 加 で376億 円/年 も の 外 部 コ ス トを 縮 減 す る 結 果 と な り,同 時 施 工 の 有 効 性 を 確 認 す る こ と が で き た. 阪 神 高 速 で は,交 通 量 の 多 い 大 阪 の 路 線 を 中 心 に 通 行 止 め に よ る 大 規 模 な集 中 工 事 を 実 施 し て い る. 今 回 の 検 証 で は,渋 滞 の 予 測 精 度 の 問 題 か ら集 中 工 事 の 有 効 性 を 直 接 評 価 す る こ とが で き な か っ た が, 大 阪 中 心 部 で は 渋 滞 損 失 が 非 常 に 大 き い こ と か ら, 可 能 な 限 り広 範 囲 で 同 時 施 工 を 行 う こ とが 有 効 と 考 え られ,現 在 行 っ て い る集 中 工 事 の 有 効 性 を 定 性 的 に 裏 付 け る結 果 が 得 られ た.付録
多段階指数劣化ハザー ドモデル
こ こで は,劣 化 曲 線 の 推 計 に 用 い た 多 段 階 指 数 劣 化 ハ ザ ー ドモ デ ル を 簡 単 に 紹 介 す る.詳 細 は 文 献9) を参 照 して い た だ き た い. (1)ハ ザ ー ドモ デ ル 部 材 の 劣 化 過 程 を 図-7に 示 す よ うに モ デ ル 化 す る.い ま,時刻τi(時 点yc)に お い て,健 全 度 がiか らi+1に 推 移 す る と考 え る.部 材 の 健 全 度 が 時 点yiま で 状 態iで 推 移 し,か つ 期 間[yi,yi+Δyi]に水 準i+1に 進 展 す る条 件 付 き確 率 は 次 の(1)式 で 表 され る.(1)
こ こ で,fiは 健 全 度iの 寿 命 の 確 率 密 度 関 数 で あ り, Fi(yi)は健 全 度 がiの ま ま 推 移 す る 確 率 で,時 点iま で に 健 全 度 がiか らi+1変 化 す る 累 積 確 率Fi(yi)を用 い て Fi(yi)=1-Fi(yi)と表 さ れ る.い ま,対 象 とす る 部 材 の 健 全 度 が 時 点yiま で 状 態iで 推 移 し,か つ 時 点yiでi+1 に 推 移 す る 確 率 密 度 関 数 λi(yi)をハ ザ ー ド関 数 と 呼 ぶ 。注)カ レ ン ダ ー 時 刻 τi-1に健 全 度 がi-1か らiに 変 化 し た 場 合,検 査 が 行 わ れ る 時 刻τA,τBは 時 刻 殆 を 基 点 と す る サ ン プ ル 時 点 ぬ,yBと 対 応 す る.図 中 の 劣 化 サ ン プ ル パ ス の 場 合,時 点ycに 健 全 度 が1つ 進 行 す る.定 期 検 査 ス キ ー ム の 場 合,時 刻 術 を 観 測 で き な い た め,サ ン プ ル 時 間 軸 上 の 時 点 み,yB,ycも 観 測 で き な い.し か し,z=yc-yA∈[0,Z)で あ る と い う 情 報 を 用 い る こ と が で き る.
図-7劣
化過程のモデル化
(2)指 数 ハ ザ ー ドモ デ ル 部 材 の 劣 化 過 程 が マ ル コ フ 性 を満 足 し,ハ ザ ー ド 関 数 が サ ン プ ル 時 間 軸 上 の 時 点 に 依 存 せ ず,常 に 一 定 値θi>0を と る と仮 定 す る と,次 の(2)式 に示 す 指 数 ハ ザ ー ド関 数 が 成 立 す る.
(2)
(3)マ ル コ フ 推 移 確 率 指 数 ハ ザ ー ドモ デ ル に 基 づ い て 導 出 した マ ル コ フ 推 移 確 率πijは以 下 の よ うに 整 理 で き る.(3a)
(3b)
(3c)
(3d)
式(3a)-(3d)に 示 す よ う に,マ ル コ フ 推 移 確 率 は 検 査 間 隔Zに 依 存 す る.こ こ で,指 数 ハ ザ ー ドモ デ ル を 用 い て 算 出 し た 推 移 確 率 は 時 間 的 整 合 性 条 件 を 満 足 す る こ と が 理 論 的 に 保 証 さ れ て お り,推 移 確 率 (3a)-(3d)に 含 ま れ る 検 査 間 隔Zの 値 を 変 化 させ る こ と に よ り,任 意 の 時 間 間 隔Zに 対 して マ ル コ フ 推 移 確 率 を 求 め る こ と が で き る. (4)ハ ザ ー ドモ デ ル の 推 計 方 法 検 査 サ ン プ ル κ(κ=1,…,J-1)に は,2個 の連 続 す る 定 期 検 査 が 実 施 され た 時 刻τκAとん と,各 検 査 で 計 測 され た 部 材 の 健 全 度h(τκA),h(τκβ)が記 録 され て い る. これ よ り,検 査 間 隔 はZκ=τκβ-τκAで求 め られ る.次 に,劣 化 推 移 パ タ ー ン に基 づ い て,(4)式 の ダ ミー 変 数 δκijを定 義 す る.(4)
さ らに,劣 化 速 度 に 影 響 を 及 ぼ す 構 造 特 性 や 使 用 環 境 を 表 す 特 性 ベ ク トル をXκ=(Xκ1,...,XκM)と表 す. これ よ り,定 期 検 査 で 獲 得 で き る 情 報 は三 κ=(δκij,Zκ, め で あ る.記 号 「-」は 実 測 値 で あ る こ と を 示 す. 確 率 推 移 πijを目視 検 査 に お け る 実 測 デ ー タ(Zκ,X り と未 知 パ ラ メ ー タ β=(β1,…,βJ-l)の 関 数 と し て πij(,Zκ,Xκ: βと表 す.い ま,K個 の 部 材 の 劣 化 現 象 が 互 い に 独 立 で あ る と仮 定 す れ ば,全 検 査 サ ン プ ル の 劣 化 推 移 パ タ ー ン の 同 時 生 起 確 率 密 度 を 表 す 対 数 尤 度 関 数 を 次 の(5)式 と表 され る.(5)
こ こ で,検 査 デ ー タ=δκij,Xκは す べ て 確 定 値 で あ り,対 数 尤 度 関 数 は 未 知 パ ラ メ ー タβの 関 数 で あ る 。 こ こ で,対 数 尤 度 関 数 は 未 知 パ ラ メ ー タβの 関 数 で あ る.こ こ で,(5)式 の 対 数 尤 度 関 数 を 最 大 に す る よ うな パ ラ メ ー タ 値 βの 最 尤 推 定 値 は,次 の(6)式 を 同 時 に 満 足 す る よ うな β=(β1 ,1,□,βJ-1,M)とし て 与 え られ る.(6)
最 適 化 条 件 は(J-1)M次 の 連 立 非 線 形 方 程 式 で あ り, Newton法 を 基 本 とす る 逐 次 反 復 法 を 用 い て 解 く こ と が で き る. 【参 考 文 献 】 1) 阪 神 高 速 道 路 株 式 会 社: 道 路 構 造 物 の 点 検 要 領 共 通 編 土 木 構 造 物 編, 2005.10. 2) 有 馬 ほ か:「 保 全 情 報 管 理 シ ス テ ム 」 の 開 発 と 運 用, 阪 神 高 速 道 路 公 団 技 報 第22-号, pp.141-148, 2005。 3) 阪 神 高 速 道 路: 道 路 構 造 物 の 補 修 要 領 第3部 舗 装 ・伸 縮 継 手 ・塗 装,2005.4. 4) 閑 上, 西 林, 片 山: 阪 神 高 速 道 路 に お け る 橋 梁 マ ネ ジ メ ン トシ ス テ ム の 検 討 に つ い て, 土 木 学 会 第60回 年 次 学 術 講 演 会 概 要 集, 6-196, 2005.9, pp391-392。 5) 片 山, 西 林, 閑 上: 阪 神 高 速 道 路 に お け る 橋 梁 マ ネ ジ メ ン トシ ス テ ム に つ い て, 第26回 日本 道 路 会 議 論 文 集, No.11007, 2005.10 6) 中 林, 西 岡, 小 林: 阪 神 高 速 道 路 の 維 持 管 理 の 現 状 と 課 題, 土 木 学 会 論 文 集F, Vol.63, No.4, pp.494-505, 2007 7) 石 井, 田 名 部: 阪 神 高 速 道 路 に お け る 交 通 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 開 発 と 運 用, 第25回 日本 道 路 会 議 論 文 集, No.12950, 2005.11. 8) 飯 島, 今 井, 猪 俣: MCIに よ る 舗 装 の 供 用 性 評価, 土 木 技 術 資 料, Vol.23, pp.577-582 ,1981 9) 津 田, 貝 戸, 青 木, 小 林: 橋 梁 劣 化 予 測 の た め の マ ル コ フ 推 移 確 率 の 推 計, 土 木 学 会 論 文 集, Vol801/I-73, pp.69-82, 2005 10) 建 設 省 道 路 局, 建 設 省 土 木 研 究 所: 舗 装 の 管 理 水 準 と 維 持 修 繕 工 法 に 関 す る 総 合 的 研 究, 第41 回 建 設 省 技 術 研 究 報 告, PP362-381, 1987. 11) 安 崎, 片 倉, 伊 佐: 舗 装 の 供 用 性 と 車 両 走 行 費 用 に 関 す る 検 討, 第18回 日 本 道 路 会 議 論 文 集, pp710-711, 1989.