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小売業におけるデジタル化とオムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ

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Academic year: 2021

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(1)組織科学 Vol.54 No. 2 : 26-36(2020). 特集/デジタル・マーケティング研究の動向. 小売業におけるデジタル化とオムニチャネル・ ダイナミック・ケイパビリティ. この論文では,小売業におけるデジタル化とデジタル・トラ ンスフォーメーションの諸相を考察し,それらを成立条件とす るオムニチャネルの本質を規定するとともに,オムニチャネル 化に向けた販売/コミュニケーション・チャネルの発展プロセ スを成功裏に推進するための 3 つのオムニチャネル・ダイナ ミック・ケイパビリティ,すなわち,統合ダイナミック・ケイ. 近藤 公彦(小樽商科大学 大学院商学研究科 教授). パビリティ,調整ダイナミック・ケイパビリティ,および分析 ダイナミック・ケイパビリティを提示する.. キーワード 小売業,デジタル化,デジタル・トランスフォーメーション,オムニチャネル,ダイナミック・ケイパビリティ がデジタル・トランスフォーメーション(digital. Ⅰ .はじめに. transformation)である.経営分野では,デジタ ル・トランスフォーメーションが市場戦略,組織. 外部環境への創造的適応をめざす企業にとっ. 構造,組織文化,業務プロセス,さらにはビジネ. て,技術は最も重要な要素である.あらゆる産業. ス・モデルをどのように変革するかを主要テーマ. においてデジタル化(digitalization)が急速に進. に 研 究 が 進 め ら れ て い る(Warner & Wäger,. む現在,SMACIT とも称される革新的なデジタ. 2019).マーケティング分野においても,デジタ. ル技術はこれまでの事業のあり方を大きく変えよ. ル・マーケティング(Kannan & Li, 2017),デジ. う と し て い る(Sebastian, Ross, Beath, Mocker,. タ ル 環 境 下 の 消 費 者 行 動(Lemon & Verhoef,. Moloney, & Fonstad, 2017) .SMACIT とは,イ ンターネットを通じた不特定多数のコミュニケー ション手段であるソーシャル(social) ,ユーザー. 2016),あるいはオムニチャネル(omnichannel) (Hansen & Sia, 2015)との関連でデジタル・ト ランスフォーメーションが議論されている.. のユビキタス化を可能にするモバイル(mobile) ,. 本論文の目的は,デジタル化とデジタル・トラ. ビッグデータの解析を担うアナリティクス(ana-. ンスフォーメーションをオムニチャネルの成立条. lytics) ,インターネットを介したサービス提供で. 件として捉え,オムニチャネル化プロセスを円滑. あるクラウド(cloud) ,そしてあらゆるモノがイ. に推進し,優れたオムニチャネルを実践するため. ンターネットに接続されるモノのインターネット. のダイナミック・ケイパビリティ(dynamic ca-. (IoT:Internet of Things)を指す.. pabilities),すなわちオムニチャネル・ダイナミ. こうしたデジタル技術の進展のもとで近年,実. ック・ケイパビリティを提示することにある.以. 践と研究の両面で大きな注目を寄せられているの. 下ではまず,小売業におけるデジタル化とその意. 26.

(2) 小売業におけるデジタル化とオムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ 27. 義を明らかにし,そこでのデジタル・トランスフ. ビスの情報だけでなく,消費者の住所,氏名,年. ォーメーションの諸相を検討する.次にオムニチ. 齢等の属性データ,ならびに消費者がいつ,どこ. ャネルの本質を示し,デジタル・トランスフォー. で何を探索し,どのような商品・サービスを購. メーションとの関連を考察するとともに,デジタ. 買・利用したかに関する閲覧データや購買・利用. ル・トランスフォーメーションの動因であるダイ. データがビッグ・データとして収集・蓄積される. ナミック・ケイパビリティに焦点を当て,オムニ. 「場」となった(Hagberg, Sundstrom, & Egels-. チャネル・ダイナミック・ケイパビリティを抽出. Zandén, 2016).. する.最後に,これまでの議論とオムニチャネ ル・ダイナミック・ケイパビリティを踏まえて, 今後の研究課題を示す.. 2.小売業におけるデジタル化 こうしたデジタル化を小売業に注目して考察し よう.小売業で用いられるデジタル技術として. Ⅱ .デジタル化の進展と小売業. は,スマートフォン,タブレットといったモバイ ル機器,モバイル・アプリ,モバイル・ペイメン. 1.デジタル化の進展. ト,電子クーポン,デジタル・フライヤー,ビー. 今日のデジタル化は,1990 年代後半から始ま. コン1),位置情報サービス,拡張現実などが挙げ. るインターネットの急速な普及を直接の契機とし. られる(Hagberg et al., 2016).このようなデジ. ている.消費者はさまざまな商品・サービス情報. タル技術を小売業に導入すること,すなわち小売. をインターネットを通じてきわめて低コストで探. 業のデジタル化により,商品・サービスの取引に. 索・収集することができるようになった.またイ. 関する多様かつ詳細な情報がデータとして入手可. ンターネットを利用した EC 企業が増加するな. 能となり,取引フローの透明性が高まる(Egels-. か,消費者は店舗へ行く買い物コストを負担する ことなく,商品を入手できるようになった. 2010 年代に入ると,冒頭に触れた SMACIT, すなわち,ソーシャル・メディア,モバイル機. Zandén & Hansson, 2015).. Hagberg et al.(2016) は, 表 1 に 示 す よ う に,小売業におけるデジタル化の要素とそれぞれ の要素における変化の内容を整理している.. 器,アナリティクス,クラウド,IoT といったデ. 第 1 は,交換のデジタル化である.小売企業と. ジタル技術の発達が本格化する.iPhone に代表. 消費者との間の直接のコミュニケーションのみな. されるスマートフォンの登場により,いつでも,. 表 1 デジタル化の要素と変化. どこでも商品・サービスの情報を収集し,購買・ 利用するというモバイル・ショッピング(mobile. デジタル化の要素. shopping)が可能となった(Fuentes, Bäckström,. 交換. ・取引量の増大. & Svingstedt, 2017) .また,消費者はツイッター (Twitter)やフェイスブック(Facebook)等のソ ーシャル・メディア上で商品・サービスを比較・. ・新しい流通形態 行為者. た(de Oliveira, Indulska, Steen, & Verreynne,. ・新しい行為者,役割,関係 小売環境. zon)や楽天など商品・サービスの提供者と消費 者を結びつける EC プラットフォームが確立され る.EC プラットフォームは扱われる商品・サー. ・伝統的環境の変化 ・新しい環境. 2020) . 一方,売り手側においては,アマゾン(Ama-. ・ヒトとデジタルの融合 ・境界の曖昧化. 評価するようになり,これまでの情報のたんなる 受け手から広く社会への発信者へと変貌していっ. 変 化 ・コミュニケーション・チャネルの変化. ・環境の融合 提供物. ・商品・サービスの変化 ・提供物の拡大 ・新しい価格設定の形態. 出所:Hagberg, Sundstrom, & Egels-Zandén (2016). p. 699..

(3) 28 組織科学 Vol. 54 No. 2. らず,ソーシャル・メディアやサード・パーティ. とモノの垣根がなくなることを指している.. ーを通じたコミュニケーションのデジタル化によ. そして第 4 の要素は,提供物のデジタル化であ. って,コミュニケーション・チャネルが変化して. る.商品・サービスについては,モバイル機器の. いる.また,実店舗と EC という販売チャネルの. ようにモノとサービスが「提供物」として一体化. 多様化や注文・決済のデジタル化等により,取引. されたり,スクリーン上で試着できるデジタル・. が拡大する.さらに,音楽のストリーミング配. フィッティング(digital fitting)など実物と仮想. 信,QR コードによるデジタル情報,クリック &. が融合されるようになる.提供物の拡大では,空. コレクト(click & collect) など,デジタル化に. 間という物理的な制約がない EC で取扱い商品・. よる新しい流通形態が生じている.. サービスの品揃えを拡大したり,実店舗と EC で. 2). 第 2 は,行為者のデジタル化である.その 1 つ. 品揃えを変えたりして,収益を向上させることが. は,ヒトとデジタル技術の融合であり,それは,. 指摘される.新しい形態の価格設定では,デジタ. スマートフォンやデジタル化されたメガネ,スマ. ル化によるサブスクリプション(subscription). ート化された腕時計やカレンダーなど,ヒト,デ. やダイナミック・プライシング(dynamic pric-. ータ,モノの新しい組み合わせを意味する.ま. ing)などが挙げられる.. た,取引相手が互いに価値を創造しあう価値共創. こうしてデジタル化はマーケティング,小売分. 者(co-creator of value)といったキーワードに. 野においても従来の戦略,組織,業務オペレーシ. 示されるように(Vargo & Lusch, 2008) ,売り手. ョンを変革するきわめて大きな影響を及ぼす.そ. と買い手の役割とその境界がデジタル化によって. こで次に,デジタル化による企業変革,すなわち. 曖昧になる.さらに,新しい行為者,役割,関係. デジタル・トランスフォーメーションに考察を移. については,デジタル技術を基盤に新しいサービ. すことにしよう.. スを提供するプラットフォーマーのような行為者 が出現したり,デジタル技術,インターネット,. 3.デジタル・トランスフォーメーション. あるいはソーシャル・メディアなどによって売り. 従来の ICT の領域を超えたデジタル技術の発. 手と買い手間の情報の非対称性が低下し,相対的. 展は,企業そのものの変革を促すデジタル・トラ. に消費者のパワーが増大する,といった変化が指. ンスフォーメーションとして近年,その速度と影. 摘される.. 響の範囲を著しく増している.アカデミアにおい. 第 3 の要素は,小売環境のデジタル化である.. ても,このような産業界での大きな動きを受け. 伝統的な環境の変化については,スマートフォン. て,デジタル・トランスフォーメーションは情報. やタブレットなどのモバイル機器の登場により,. システム,経営,マーケティングといったさまざ. 自宅と実店舗との間の物理的距離が克服された. まな分野において多くの研究が蓄積されてきた.. り,あるいはデジタル・サイネージ(digital sig-. Fitzgerald, Kruschwitz, Bonnet, & Welch. nage)や RFID3)といったデジタル技術が実店舗. (2014)はデジタル・トランスフォーメーション. に導入されるという状況を挙げることができる.. を「新しいデジタル技術(ソーシャル・メディ. また新しい小売環境のもとでは,モバイル機器の. ア,モバイル,アナリティクス,組み込み型デバ. 普及により買い物する場所が実店舗に限定されな. イス)を利用して,顧客経験,業務オペレーショ. くなり,あらゆる場所で情報収集,注文,支払い. ンの合理化,新しいビジネス・モデルの創出とい. が可能となる.小売環境の融合とは,伝統的な小. った大きな事業改善を行うこと」(p. 2)と定義. 売環境のデジタル化と新しい小売環境の広がりに. しており,事業改善を目的としたデジタル技術の. ともなって,位置情報ベースのモバイル・アプリ. 適用を強調している.Hess, Matt, Benlian, & Wi-. やオンラインのオークションやゲームといった. esböck(2016)では,デジタル・トランスフォ. 「デジタル仮想消費」が生まれるなど,デジタル. ーメーションは「デジタル技術が企業のビジネ.

(4) 小売業におけるデジタル化とオムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ 29. ス・モデルにもたらす変化に関わり,製品,組織. の理解となっている.. 構造の変更やプロセスの自動化を生み出すもので. そこで,こうしたデジタル化とデジタル・トラ. ある」(p. 124)と捉えられており,ビジネス・. ンスフォーメーションを成立条件とするオムニチ. モ デ ル の 変 革 に 焦 点 が 当 て ら れ て い る. ま た. ャネルに注目し,その本質とケイパビリティを検. Morakanyane, Grace, & O’Reilly(2017)は,先. 討することにしよう.. 行研究のレビューを踏まえて,デジタル・トラン スフォーメーションの定義が,戦略,プロセス,. Ⅲ .オムニチャネルとケイパビリティ. ビジネス・モデル,およびパラダイム・シフトの 4 つのタイプに分けられることを指摘している.. 1.オムニチャネルとは何か. すなわち,新たな顧客価値を提供する戦略,組織. 図 1 は,オムニチャネルに至る発展プロセスを. の構造や業務オペレーションのプロセス,それら. 示したものである.オムニチャネルは店舗を唯一. を包含するビジネス・モデル,そしてビジネス・. のタッチポイント(touch point)とするシングル・. モデルを革新するパラダイム・シフト,である.. チャネル(single channel)を起点とし,従来の. このように,デジタル・トランスフォーメーシ. カタログやテレビに加え,EC やソーシャル・メ. ョンがたんなるデジタル技術の導入にとどまら. ディアなどチャネルを多様化させたマルチチャネ. ず,戦略,組織,情報技術,サプライ・チェー. ル(multichannel),そしてチャネル間の連動を. ン,マーケティング,そしてそれらを包摂するビ. 重視するクロスチャネル(cross-channel)の進化. ジネス・モデルの革新に繋がることは,デジタ. 型として位置づけられる.オムニチャネルは,近. ル・トランスフォーメーション研究において共通. 年の ICT の進化,とくにスマートフォンの普及. 図 1 オムニチャネルへの発展プロセス シングル・チャネル. マルチチャネル. ・顧客は単一のタッ チポイントを経験 ・小売業者は単一の タッチポイントを 保有. ・顧客は,それぞれ 独立して運営され る複数のタッチポ イントを経験 ・小売業者のチャネ ル知識とそのオペ レーションは,技 術的・機能的なサ イロのなかに存在. レガシー. 実際. クロスチャネル. オムニチャネル. ・顧客は,複数の ・顧客は,ブランド タッチポイント のなかのチャネル を同じブランド ではなく,ブラン の一部分として ドを経験 経験 ・小売業者は調整さ ・小売業者は顧客 れた戦略的方法で のシングル・ビ 顧客のシングル・ ューを有するが, ビューを活用 チャネルは機能 的なサイロのな かで運営 願望. 楽園. 出所:National Retailing Federation (2011). p. 2(近藤公彦・中見真也編,2019,p. 44)..

(5) 30 組織科学 Vol. 54 No. 2. による消費者行動のユビキタス化,そして販売/. が,いつ,どのような商品・サービスを,どのよ. コミュニケーション・チャネルのデジタル化を背. うなチャネルを通じて検索し,購買・利用し,ど. 景に登場した革新的な戦略である.ここでは,オ. のように評価したかが個人単位で明らかになる.. ムニチャネルを「実店舗,EC,ソーシャル・メ. それゆえ,オムニチャネルの焦点は商品・サービ. ディア等,あらゆる販売/コミュニケーション・. スという提供される客体だけでなく,その販売対. チャネルを統合的に管理し,顧客にシームレス. 象である識別された個客を明示的に含むものとな. (seamless)な買い物経験を提供する顧客戦略」 と定義しておこう(cf. 近藤,2018,p. 79) .. る. このオムニチャネルが,デジタル化を条件とす. この定義が示唆するオムニチャネルの革新性. ることは明らかであろう.デジタル化によっては. は,次の 3 つの点に集約される(近藤・中見,. じめて顧客は識別され,顕名化された「個客」と. 2019).第 1 に,すべての販売/コミュニケーシ. して市場に現れ,その購買・利用データやウェブ. ョン・チャネルを統合することである(Cao &. の閲覧データが収集・分析される.商品の仕入. Li, 2015).オムニチャネルにおける「チャネル」. れ,在庫,配送といった垂直的なサプライ・チェ. は,小売企業から消費者へ所有権が移転される販. ーンはデジタル・ネットワークのなかで効率的に. 売チャネルに加えて,情報の伝達経路であるコミ. 運用され,クレジットカードや電子マネーによっ. ュニケーション・チャネルを含む.そのチャネル. てデジタル化された決済が行われる.小売企業に. は,実店舗,販売員,電話,テレビ,カタログ,. おいても,こうした顧客データ(属性,購買・利. ダイレクトメール,コールセンターといった伝統. 用データ,閲覧データ),仕入れ・販売データ,. 的な要素に加えて,EC,電子メール,スマート. サプライ・チェーン・データが組織内で共有さ. フォン,ソーシャル・メディアといったデジタ. れ,一元的に管理される.. ル・チャネルから構成される. 第 2 に,消費者にシームレスな買い物経験を提 供することである.シームレスな買い物経験と. 2.ケイパビリティとダイナミック・ケイパビ リティ. は,消費者があらゆる販売/コミュニケーショ. 以上のようなオムニチャネルの革新は,たんな. ン・チャネルにわたって統一された情報を得ら. る販売/コミュニケーション・チャネルの統合的. れ,異なったチャネルを容易に移ることができる状. 管理にとどまらず,戦略,組織,情報システム,. 態 を 指 す(Brynjolfsson, Hu, & Rahman, 2013) .. サプライ・チェーンを含む事業全体の変革に及ぶ. さまざまなチャネルを駆使して情報を収集し,商. ことは明らかであろう.そこでオムニチャネル化. 品・サービスを購買・利用する消費者をオムニチ. プロセスを円滑に推進し,それを効果的に実践す. ャ ネ ル・ カ ス タ マ ー(omnichannel customer). るために必要な能力として,変革に関する基本概. と呼ぶが,彼らがシームレスなオムニチャネル行. 念であるダイナミック・ケイパビリティに焦点を. 動を取るには,チャネル間で顧客 ID,購買履歴,. 当てて検討する.. あるいは買い物ポイントなどが統合されており,. オムニチャネルのダイナミック・ケイパビリテ. どのチャネルを利用しても何ら不都合が生じない. ィを検討するに先立って,まず,その前提となる. ことが条件となる.. ケイパビリティの概念を整理しておこう.よく知. 第 3 は,顧客戦略という視点である.タッチポ. られているように,ケイパビリティは資源ベース. イントのデジタル化により,消費者の認知,関. 理論(resource-based view)の中心的な概念あり. 心,情報収集,購入,共有といったカスタマー・. (Collins & Montgomery, 1998) , 「企業内部の個別. ジャーニー(customer journey)は,識別された. 資源間・活動間の補完性を高めるような企業独自. 「個客」レベルでデータとして捕捉することが可. の技術的・社会的システム,プロセス,ルーティ. 能となる(Barwitz & Maas, 2018) .つまり,誰. ンの集合」 (永野,2015,p. 82)と定義される..

(6) 小売業におけるデジタル化とオムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ 31. Day(1994)は,ケイパビリティの 3 つの類型. 代表的な研究者である Teece によれば,ダイナ. を指摘している.すなわち,技術の開発や導入と. ミック・ケイパビリティは,「急激な事業環境の. いった組織の課題について企業内部で用いられる. 変化に対処するために,組織内部のコンピタンス. 能力であるインサイドアウト・ケイパビリティ. を統合・構築・再配置する企業の能力」を指す. (inside-out capabilities) ,組織外のステークホル. (Teece et al., 1997;Teece, 2007). ダ イ ナ ミ ッ. ダーとの関係管理や市場反応に関して外部を注視. ク・ケイパビリティの視角は,資源の創造と展開. する能力であるアウトサイドイン・ケイパビリテ. による環境変化への能動的適応にあり,さらにそ. ィ(outside-in capabilities) ,そしてこれらのケ. うした能動的な適応のために,上述の組織のルー. イパビリティを統合する能力であるスパニング・. ティンを効率化する通常ケイパビリティそれ自体. ケイパビリティ(spanning capabilities)である.. を変革するメタ・ケイパビリティ(meta-capabili-. Hosseini, Röglinger, & Schmied(2017) は こ の 3 類型に基づき,オムニチャネルにおける情報. ties)であり,通常ケイパビリティの変化率を支. 配する能力と理解される(Winter, 2003).. システムのケイパビリティを提示している.アウ トサイドイン・ケイパビリティは,基本的な顧客 知識の獲得,顧客の社会統合 に関する知識の獲 4). Ⅳ .オムニチャネル・ダイナミック・ケイパ ビリティ. 得,そして顧客の状況的コンテクスト5)の感知に 関わる能力である.インサイドアウト・ケイパビ. 以上の検討を踏まえ,シングル・チャネル,マ. リティには,分析的・技術的オムニチャネル・ス. ルチチャネル,クロスチャネルを経てオムニチャ. キル,オムニチャネル・データの統合とアナリテ. ネルに円滑に移行し,より高次のメタ・ケイパビ. ィクス,およびオムニチャネル技術と基盤の管理. リティとしてオムニチャネルを効果的に機能させ. が含まれる.そしてこれらのケイパビリティを結. るためのケイパビリティをオムニチャネル・ダイ. びつけるスパニング・ケイパビリティとして,リ. ナミック・ケイパビリティとして捉え,その次元. アルタイム情報へのユビキタスなアクセス,顧客. と要素を提示することにしよう(図 2 参照).. ニ ー ズ に 関 す る 自 動 推 論(automated reasoning) ,マーケティング,販売,フルフィルメン. 1.統合ダイナミック・ケイパビリティ. 6). ト ,サービスのカスタマイズ化などが指摘され. オムニチャネルにおけるチャネル統合は,3 つ. る.. のレベルで捉えることができる.第 1 は,チャネ. こうしたオムニチャネル・ケイパビリティの類. ル・レベルである.マルチチャネル,クロスチャ. 型は,情報システムに限定されてはいるものの,. ネル,そしてオムニチャネルへの発展プロセスに. オムニチャネルという顧客ベースのチャネル統合. おいて,販売/コミュニケーション・チャネルの. を検討するうえで重要である.しかし,このよう. 統合的管理は,最も重要な課題であった.チャネ. なケイパビリティは,特定のタスクを効率的に遂. ル統合とは,実店舗,EC,ソーシャル・メディ. 行するルーティンである通常ケイパビリティ(or-. アなどあらゆる販売/コミュニケーション・チャ. dinary capabilities)としては有効である一方,. ネルを同時かつ整合的に管理することを指す. 外部環境の変化に対しては必ずしも適応的ではな. (Cao & Li, 2015;近藤・中見,2019).オムニチ. い(Teece, 2009).そこで外部環境の変化に能動. ャネルにおけるシームレスな買い物経験は,この. 的に適応し,持続的な競争優位をもたらすケイパ. チャネル統合によってはじめて提供される.逆に. ビリティは何か,という問題意識から生み出され. 言えば,チャネル統合がなされない,あるいは十. た の が ダ イ ナ ミ ッ ク・ ケ イ パ ビ リ テ ィ で あ る. 分ではないマルチチャネルの段階では,個々のチ. (Teece, Pisano, & Shuen, 1997) . ダイナミック・ケイパビリティの提唱者であり. ャネルが部分最適的に遂行されるため,顧客の買 い物経験はチャネルごとに分断されてしまい,シ.

(7) 32 組織科学 Vol. 54 No. 2 図 2 オムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ オムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ. 統合ダイナミック・ケイパビリティ. 調整ダイナミック・ケイパビリティ. 分析ダイナミック・ケイパビリティ. ・チャネル組織統合. ・マーケティング・ミックス調整. ・顧客データ分析(属性データ,購. ・マーケティング・ミックス統合. ・内部組織調整(チャネル,部門). 買・利用データ,閲覧データ). ・業務オペレーション統合. ・外部組織調整. ・販売データ分析(商品データ,場. ・サプライ・チェーン統合 ・データ統合(顧客,販売,サプラ. 所データ,時間データ) ・サプライ・チェーン・データ分析. イ・チェーンに関わるデータ). (物流データ,在庫データ). 出所:筆者作成. ームレスな買い物経験を提供することができない. て顧客データ,販売データ,あるいはサプライ・. のである.. チェーン・データの共有・分析などが対象とな. 第 2 は,活動領域レベルの統合である.ここで. る.. はチャネル統合のレビューを踏まえた近藤・中見. 以上のように,チャネル統合はチャネル,活動. (2019)の類型に基づき,チャネル管理の組織,. 領域,および要素の 3 つのレベルで捉えることが. マーケティング・ミックス,それを支える業務オ. できる.ここでは統合ダイナミック・ケイパビリ. ペレーションとサプライ・チェーン,および顧. ティとして識別すべきレベルを活動領域レベルと. 客,販売,サプライ・チェーンに関わる各種デー. し,チャネル管理の組織,マーケティング・ミッ. タを活動領域レベルの統合の要素とする.チャネ. クス,それを支える業務オペレーションとサプラ. ル管理の組織統合では,多様なチャネルを全体と. イ・チェーン,および顧客,販売,サプライ・チ. して管理するチャネル横断的な上位の組織編成が. ェーンに関わる各種データについて,その統合度. なされる.マーケティング・ミックスでは,チャ. を高める能力として位置づける.なぜなら,実店. ネルごとのマーケティング・ミックスがオムニチ. 舗,EC,ソーシャル・メディアといったチャネ. ャネルとしてより高いレベルで統合される.ま. ル・レベルでは統合の抽象度が高く,そのために. た,チャネル間に共通する業務オペレーションと. 実践的な要素に落とし込むことが難しく,一方,. サプライ・チェーンが統合され,より効率的に運. 活動レベルでは詳細かつ具体的な要素を識別する. 用される.そして顧客,販売,サプライ・チェー. ことができるが,それらはルーティンを効率的に. ンに関わる各種データの統合により,顧客ベース. 遂行するための通常ケイパビリティとして捉えら. のオムニチャネルを展開することが可能となる.. れるからである.. 第 3 は,最も具体的な活動要素レベルの統合で. この統合ダイナミック・ケイパビリティが有効. あり,上記の活動領域それぞれにおける活動要素. に機能することによって,シングル・チャネルか. が統合の対象となる.チャネル管理の組織におい. らマルチチャネル,クロスチャネル,そしてオム. ては,例えばチャネル組織内・組織間のコミュニ. ニチャネルへの移行が円滑に行われ,より高い成. ケーションや成果の評価,マーケティング・ミッ. 果を上げるオムニチャネルが構築される.. クスではそれを構成するそれぞれの活動要素(製 品,価格,プロモーション,フルフィルメント,. 2.調整ダイナミック・ケイパビリティ. 顧客サービス等)の統合的管理が重要となる.ま. オムニチャネルにおける調整とは,「チャネル. た,業務オペレーションにおけるさまざまな手続. にわたる諸活動の相互依存性を管理すること」を. きやコスト管理,サプライ・チェーン管理,そし. 意味する(Plé, 2006, p. 330).ダイナミック・ケ.

(8) 小売業におけるデジタル化とオムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ 33. イパビリティの観点からは,諸活動の相互依存が. の調整は不可欠となる.. 生じる領域として次の点を挙げることができる.. 第 2 は,商品のサプライヤーやロジスティクス. 第 1 は,マーケティング・ミックスである.す. 企業など,外部の企業との調整である(近藤・中. なわち,実店舗,EC,ソーシャル・メディアと. 見,2019) .店舗チャネルの場合,商品の売買,. いったチャネルにおいて,提供する商品・サービ. 注文や受取りは店舗で行われ,それゆえ商流,物. スあるいは品揃え,価格,ロイヤルティ・プログ. 流は店舗に収束している.これに対してオムニチ. ラムなどのプロモーション,配送や受取りに関わ. ャネルでは,店舗チャネルは他のチャネルと組み. るサプライ・チェーンの諸活動がチャネル間で統. 合わされて,統合的に運営されることになる.. 合的に調整されなければならない.統合的に活動. 商品のサプライ・チェーンの局面では,クリッ. が調整されている状況とは,例えば,顧客がソー. ク&コレクトのように EC で注文した商品の受取. シャル・メディアで商品を調べ,その商品が最寄. り場所は,実店舗,自宅,あるいはコンビニエン. りの店舗に在庫があるかどうかを確認することが. ス・ストアや宅配ロッカーなどさまざまである.. でき,店舗で欲しい商品のサイズがなかった場. こうした受取り場所が多様になるほど,サプラ. 合,その場で発注し,受取りは実店舗か宅配かを. イ・チェーンの調整はより複雑になる.そして,. 選択することができるといった状況である.. リードタイムの短縮や適切な在庫管理など,サプ. オムニチャネルにおける調整はこの活動レベル. ライ・チェーンを効率的に遂行できなければ,オ. にとどまらず,より上位の 2 つのレベルでの調整. ムニチャネルの根幹である消費者へのシームレス. を必要とする.第 1 は部門間の調整である.すな. な買い物経験の提供は大きく阻害されることにな. わち,小売組織における商品部門,店舗部門,. る.このような効率的なサプライ・チェーンの維. EC 部門,サプライ・チェーン部門,顧客サービ. 持において,商品のサプライヤー,ロジスティク. ス部門,あるいは情報システム部門といった複数. ス企業,商品の受取り場所である小売店といった. の部門間の調整を図ることである(近藤・中見,. 外部組織との調整がきわめて重要となる.. 2019) .店舗小売業の場合では,商品部門は仕入. 以上の検討から,調整ダイナミック・ケイパビ. れ,調達,商品開発,店舗部門は品揃え,販売価. リティの対象としてマーケティング・ミックス,. 格の決定,EC 部門はネット販売,サプライ・チ. 内部組織(チャネルと部門) ,および外部組織の. ェーン部門は商品の調達,販売,店舗間移動,返. 3 つの要素を識別し,そこにおける調整能力を調. 品などのロジスティクス,顧客サービス部門では. 整ダイナミック・ケイパビリティとして捉える.. 各種の問い合わせへの対応,そして情報システム 部門は,顧客,販売,サプライ・チェーン情報を. 3.分析ダイナミック・ケイパビリティ. 管理する役割を担っている.. デジタル社会にあってデータは最も重要な資源. 店舗のみをチャネルとするシングル・チャネル. であり,そこではデータは局所的・小規模なデー. 小売業が EC,ソーシャル・メディアへとチャネ. タから膨大な情報量をともなうビッグ・データへ. ルを付加し,マルチチャネル化,オムニチャネル. と劇的に変化する.. 化を進める際,チャネル別組織と部門別組織をマ. 小売業はビッグ・データ産業そのものである. トリクス組織として横断的に調整することが必要. (Dekimpe, 2020).Bradlow, Gangwar, Kopalle,. となるが,その調整はきわめて複雑になる.こう. & Voleti(2017)によれば,小売業におけるビッ. した調整が十分でなければ,チャネル間,部門間. グ・データは 5 つの次元からなる.第 1 は,顧客. でコンフリクトが発生し,オムニチャネルを円滑. である.一連のカスタマー・ジャーニーを通じて. に運営することは困難になる.それゆえ,オムニ. 商品・サービスの閲覧データ,購買・利用デー. チャネル化を推進し,オムニチャネルを効果的に. タ,レビュー・データ等が属性データとともに収. 実践するためには,こうしたチャネル間,部門間. 集・蓄積される.第 2 は,製品である.デジタル.

(9) 34 組織科学 Vol. 54 No. 2. 化の進展により,小売業はすべての取扱い商品に. 以上の検討から,分析ダイナミック・ケイパビ. 関する情報を正確に把握し,さらに個々の商品に. リティの対象として,顧客データ(属性データ,. ついて SKU 単位でより緻密に管理することがで. 購買・利用データ,閲覧データ) ,販売データ. きるようになった.第 3 は,時間である.従来の. (商品データ,場所データ,時間データ),サプラ. 月単位,週単位のデータから,日単位,さらには. イ・チェーン・データ(物流データ,在庫デー. 時間単位でデータが収集される.また時系列でデ. タ)の 3 つの領域を設定し,そこでのアナリティ. ータを追跡し,顧客,販売,サプライ・チェーン. クスを向上させる能力として分析ダイナミック・. の状況が継続的に測定される.第 4 は,場所であ. ケイパビリティを位置づける.オムニチャネル化. る.スマートフォンなどのモバイル機器の普及に. に向けてチャネルの統合と調整を推進し,オムニ. より,顧客の動態的な位置情報を捕捉することが. チャネルを競争優位をもたらす顧客戦略として実. 可能となった.この位置情報に基づき,ジオ・タ. 践するためには,分析ダイナミック・ケイパビリ. ーゲティング(geo-targeting)と呼ばれる手法に. ティを洗練し,データ主導型オムニチャネルを構. より,スマートフォンを介して顧客の現在地の周. 築しなければならない.. 辺情報を提供することができる.そして第 5 は, チャネルである.店舗,EC,モバイル機器,ソ. Ⅴ .おわりに. ーシャル・メディア等におけるデータを収集・統 合することにより,チャネル間のカスタマー・ジ. この論文では,小売業におけるデジタル化を問. ャーニーを追跡し,利益への影響を評価し,資源. 題意識として,そこでのデジタル化とデジタル・. や予算のチャネル配分をより効果的に行えるよう. トランスフォーメーションの諸相を考察し,デジ. になった.. タル化をオムニチャネルの成立条件として捉え,. こうしたビッグ・データを効率的に収集・蓄. オムニチャネルの本質を示し,そしてオムニチャ. 積・分析し,そしてオムニチャネル戦略に活用す. ネルの 3 つのダイナミック・ケイパビリティ,す. るには,アナリティクスをケイパビリティとして. なわち統合ダイナミック・ケイパビリティ,調整. 構築することが不可欠である.Wamba, Gunasek-. ダイナミック・ケイパビリティ,および分析ダイ. aran, Akter, Ren, Dubey, & Childe(2017)によ. ナミック・ケイパビリティを明らかにした.. れば,ビッグ・データ・アナリティクスとは「持. このオムニチャネル・ダイナミック・ケイパビ. 続的な価値を提供し,成果を測定し,競争優位を. リティの発想に基づいて,次のような新たな視点. 確立するために,データ関連の次元である 5 つの. からオムニチャネル研究を推進することができ. V,すなわち,量(volume) ,多様さ(variety) ,. る.すなわち,シングル・チャネル,マルチチャ. 速 さ(velocity) , 正 確 さ(veracity) ,そして価. ネル,クロスチャネルからオムニチャネルにいた. 値(value)を管理,処理,分析する全体的アプ. る販売/コミュニケーション・チャネルの発展プ. ローチ」 (p. 356)を意味する.. ロセスをオムニチャネル・ダイナミック・ケイパ. このアナリティクスは,従来のマーケティング. ビリティの視点から詳細に検討することである.. を推測に基づくマーケティングからデータ主導型. オムニチャネル化のプロセスについてはすでに研. のマーケティングへと,その本質に革新をもたら. 究がなされているが,その移行プロセスは一連の. すことになる.すなわち,顧客,商品・サービ. 活動の連鎖として捉えられているにすぎない. ス,サプライ・チェーンに関するビッグ・デー. (Mirsch, Lehrer, & Jung, 2016).そうした活動の. タ・アナリティクスにより,顧客のニーズをより. 動因としてチャネルの統合と調整,そして分析に. 的確に捉え,商品・サービスをより正確に管理. 関わる 3 つのダイナミック・ケイパビリティがど. し,そしてサプライ・チェーンをより効率的に運. のように機能しているかを明らかにすることによ. 用することができる(Bradlow et al., 2017) .. って,オムニチャネル化プロセスに関わるより深.

(10) 小売業におけるデジタル化とオムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ 35. い理論的知見を得ることができる. この際,2 つの研究方法からこの課題に取り組 むことが重要である.第 1 は,オムニチャネルを 推進する実際の小売企業を対象に詳細な事例研究 を行うことである.よく知られているように,事. 参考文献 Barwitz, N., & Maas, P. (2018). Understanding the omnichannel customer journey: Determinants of interaction choice, Journal of Interactive Marketing, 43, 116-133. Bradlow, E. T., Gangwar, M., Kopalle, P., & Voleti, S. (2017). The role of big data and predictive analytics in retailing, Journal of Retailing, 93(1), 79-95.. 例分析は理論仮説の発見や時系列的な変化を追跡. Brynjolfsson, E., Hu, Y. J., & Rahman, M. S. (2013). Competing. す る の に 適 し た 研 究 ア プ ロ ー チ で あ る(Yin,. in the omnichannel retailing, MIT Sloan Management Re-. 2017).オムニチャネル化プロセスの促進要因や 阻害要因をオムニチャネル・ダイナミック・ケイ パビリティの観点から分析を深めることにより, そのプロセスを動態的に理解することができるだ ろう.第 2 の研究方法は,大量サンプルによる定 量的な実証研究である.上記の理論研究と事例研 究から実証分析のための枠組みを構築し,オムニ チャネルを推進する小売企業を対象にアンケート 調査を実施し,仮説を検証することによって,オ ムニチャネル化プロセスの実際とそこでのダイナ ミック・ケイパビリティの態様,さらにケイパビ リティ間の関係を明確にし,オムニチャネル理論 体系の一般性を高めることが必要である.. view, 54(4), 1-7. Cao, L., & Li, L. (2015). The Impact of cross-channel integration on retailers’ sales growth, Journal of Retailing, 92(2), 198216. Collins, D. J., & Montgomery, C. A. (1998). Corporate strategy: A resource-based approach. McGraw Hill Companies, Inc.(根. 来龍之・蛭田啓・久保亮一訳『資源ベースの経営戦略論』 東洋経済新報社,2004). Day, G. S. (1994). The capabilities of market-driven organization, Journal of Marketing, 58(4), 37-52.. Dekimpe, M. G. (2020). Retailing and retailing research in the age of big data analytics, International Journal of Research in Marketing, 37(1), 3-14. de Oliveira, R. T., Indulska, M., Steen, J., & Verreynne, M. L. (2020). Towards a framework for innovation in retailing through social media, Journal of Retailing and Consumer Services, 54, 1017723. Egels-Zandén, N., & Hansson, N. (2015). Supply chain transpar-. ency as a consumer or corporate tool: The case of Nudie Jeans Co. Journal of Consumer Policy, 39(4), 377-395.. 謝辞 本研究は JSPS 科研費 JP 20K01959 の助成を受けたもの です.. Fitzgerald, M., Kruschwitz, N., Bonnet, D., & Welch, M. (2014). Embracing digital technology: A new strategic imperative, MIT Sloan Management Review, 55(2), 1-11. Fuentes, C., Bäckström, K., & Svingstedt, A. (2017). Smartphones and the reconfiguration of retailscapes: Stores,. 注 1) ビーコン(beacon)とは,ブルートゥースの電波を発信す る小さな端末を指し,これにより電波圏内に入ったユーザ ーに対してコンテンツの配信をしたり,メッセージを通知 したりすることができる. 2) クリック & コレクトとは,EC サイトやモバイル・アプリ からオンラインで商品を注文し,実店舗や宅配ボックス, コンビニエンス・ストアなど自宅以外で受け取る仕組みを いう. 3) RFID(radio frequency identification) と は, 商 品 に 名 称,価格,製造年月日など電子情報を入力したタグを付 け,リーダライタと呼ばれる装置で情報を読み取ったり, 情報を書き換えたりするシステムをいう.IC カード乗車 券の Suica や電子マネーの Edy がその例である. 4) 社会統合とは,家族や友人,同僚などとの社会的関係に組 み込まれている状態を指す. 5) 状況的コンテクストとは,行為者が個人的な知識を獲得し たり,利用したりする状況に関する情報を意味する. 6) フルフィルメントとは,商品の受注から在庫,発送,決済 までの一連のオペレーションをいう.. shopping, and digitalization, Journal of Retailing and Consumer Services, 39, 270-278. Hagberg, J., Sundstrom, M., & Egels-Zandén, N. (2016). The digi-. talization of retailing: An exploratory framework, International Journal of Retail & Distribution Management, 44(7), 694-712.. Hansen, R., & Sia, S. K. (2015). Hummel’s digital transformation toward omnichannel retailing: Key lessons learned, MIS Quarterly Executive, 14(2), 51-66. Hess, T., Matt, C., Benlian, A., & Wiesböck, F. (2016), Options for formulating digital transformation strategy, MIS Quarterly Executive, 15(2), 123-139. Hosseini, S., Röglinger, M., & Schmied, F. (2017). Omni-channel. retail capabilities: An information systems perspective, 38th International Conference on Information Systems (ICIS), Seoul, South Korea, December 2017, 1-19.. Kannan, P. K., & Li, H. A. (2017). Digital marketing: A framework, review and research agenda, International Journal of Research in Marketing, 34(1), 22-45. 近藤公彦(2018).「日本型オムニチャネルの特質と理論的課題」 『流通研究』21(1),77-89..

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参照

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