II.CT分 類
重 症破裂脳動脈瘤 急性 期手術 の限界
―CT所 見 に よ る検 討 ― 国立仙台病院 脳神経外科 新 海 準 二 小 川 彰 桜 井 芳 明 嘉 山 孝 正 東北大学 脳研究所 脳神経外科 鶴 見 勇 治 鈴 木 二 郎Dynamic Changes of Surgical Indications of Seriously Ruptured Aneurysms in Acute Stages
―F
indings of CT Scan•\
Junji Shingai, Akira Ogawa, Yoshiharu Sakurai, Takamasa Kayama, Yuji Tsurumi,* and Jiro Suzuki*
Department of Neurosurgery, National Sendai Hospital, and
*Division of Neurosurgery, Institute of Brain Diseases, Tohoku University, Sendai, Japan
Summary
Our surgical indication against cerebral aneurysms in acute stages is cases better than comatous stage. Cases showing coma or downhill course are out of indication of immediate operation. At first, these severe cases are treated by the administration of mannitol and recently additional corticosteroid hormone and vitamine E, if necessary, continuous ventricular drainage or aspiration of ventricular hematoma especially in the cases of acute hydrocephalus or ventricular hematoma.
The total number of aneurysm cases admitted to our hospital within 24 hours after hemorrhage was 354 from April, 1978 to December, 1983. The number of grade IV, V cases on admission is 95. Among 91 cases except 4 cases suffered from systemic complications, by these managements 53 cases improved within 48 hours after onset, while 38 cases took a downhill course. Both groups were examined retrospectively in relation to findings of CT scan, sex, age, gradings on admission and sites of ruptured aneurysm. They were devided to 34 cases mainly showing subarachnoid hemorrhage
(subarachnoid hemorrhage group) and 57 cases mainly showing intracerebral intraventricular or subdural hematoma (intracranial hematoma group) .
In the group of subarachnoid hemorrhage, all of 8 cases with deformity of brain stem died, while 7 of 11 cases without deformity of brain stem and without hydrocephalus recovered within 48 hours after hemorrhage. Moreover, 13 of 14 cases with acute hydrocephalus recovered to grade III or more. The prognosis of cases without deformity of brain stem with or without acute hydrocephalus was
significantly better than that with deformity of brain stem.
Cases of grade IV on admission were expected better prognosis than that of grade V, also. However, we could not find relationship between prognosis and age, sex or sites of ruptured aneurysm. は じ め に 破 裂 脳 動 脈 瘤 の 手 術 適 応 は,主 に 神 経 学 的 gradeに 基 づ い て行 わ れ て い る.わ れ わ れ は,急 性 期 の 手 術 適 応 を,意 識 とそ の 推 移 よ り決 定 し,「呼 名 に反 応 あ り」す な わ ち,意 識 レベ ル30ま で と し, 意 識 レベ ル100以 下,ま た はdown hill courseに あ
る もの は,直 ち に は手 術 適 応 外 と して い る1)2)3)4)5)6). しか し,発 症 後 ご く早 期 に は深 昏 睡 で あ っ て も, 種 々 の 治 療 に よ り意 識 が 回 復 し,意 識 レベ ル30以 上 の 状 態 とな り,手 術 適 応 とな る症 例 も少 な くな い.わ れ わ れ は,入 院 時 の意 識 レベ ル が100以 下 の 破 裂 脳 動 脈 瘤 重 症 例 を対 象 に,急 性 期 のCT像 を retrospectiveに 検 討 し,ど の よ うな 症 例 に意 識 の 改 善 が 認 め られ,手 術 適 応 とな っ て くるか に つ い て検 討 した. 対 象 お よび 方 法 1978年4月 よ り1983年12月 ま で の 期 間 に,最 終 破 裂 発 作 後24時 間 以 内 に,当 施 設 に入 院 したWil-Iis輪 前 半 部 脳 動 脈 瘤 は354例 で あ り,そ れ ら の う ち,Hunt and Kosnikの 分 類 に て,Grade IVあ る い はVの 重 症 例 は,そ れ ぞ れ57例,38例,計95例 で あ った.こ れ らの うち,他 疾 患 の合 併 に よ り全 身状 態 が 悪 化 した と思 わ れ た4例 を 除 く,91例 を 対 象 に検 討 を行 った.こ れ らの 重 症 例 に対 して, 当施 設 で は,す ぐに は根 治 手 術 を施 行 せ ず,入 院 時 よ り,20%マ ニ トー ル な どの 脳 圧 降 下 剤,最 近 で は い わ ゆ るSendai Cocktail 2)など の 脳 保 護 物 質 の 投 与 を 開 始 す る と と も に,CT上 脳 室 拡 大 や 側 脳 室 内 出 血 が 認 め られ る場 合,脳 室 内 血 腫 の 吸 引 と と も に,脳 室 持 続 ド レナ ー ジ を施 行 し,意 識 の改 善 を計 っ て い る.こ れ らの 治 療 に よ り,急 性 期 手 術 のgolden timeで あ る,発 作 後48時 間 以 内 に意 識 レベ ル が30以 上 に 回復 し,手 術 適 応 とな っ た改 善 群 と,意 識 の 改 善 を認 め ず,手 術 適 応 とな らな か っ た非 改 善 群 に わ け,検 討 した. 改 善 群,非 改 善 群 は そ れ ぞれ53例,38例 で あ り, そ の破 裂 脳 動 脈 瘤 の 部 位 は,改 善 群 で は 内 頸 動 脈 16例(後 交 通 動 脈 分 岐 部13例,前 脈 絡 叢 動 脈 分 岐 部 1例,内 頸 動 脈 分 岐 部2例),前 交 通 動 脈17例,前 大 脳 動 脈2例,中 大 脳 動 脈18例 で あ っ た.そ れ に 対 して非 改 善 群 で は,内 頸 動 脈8例(後 交 通 動 脈 分 岐 部7例,眼 動 脈 分 岐 部1例)前 交 通 動 脈13例,前 大 脳 動 脈5例,中 大 脳 動 脈12例 で あ り,破 裂 脳 動 脈 瘤 の部 位 に よ り,差 は認 め な か った. 対 象 と した91例 に対 して,CT所 見 よ り,意 識 障 害 の 主 な原 因 が,ク モ膜 下 出 血 で あ る と考 え られ る も の と,そ の 他 の頭 蓋 内 血 腫 で あ る と考 え られ る も の に 分類 し,そ れ ぞ れ ク モ膜 下 出 血 群,頭 蓋 内 血 腫 群 と した.ク モ膜 下 出 血 群 で は,脳 幹 部 変 形 の 有 無,お よ び水 頭 症 の 有 無 に つ い て,ま た 頭 蓋 内 血 腫 群 で は,脳 内血 腫,脳 室 内 血 腫 お よび 硬 膜 下 血 腫 の 有 無 に つ い て検 討 し,こ れ らのCT所 見 と臨 床 経 過 の 相 関 を検 討 した. 結 果 対 象 と した91例 は,大 き くク モ膜 下 出血 群34例, 頭 蓋 内血 腫 群57例 に わ け られ た. これ らのCT所 見 を,意 識 改 善 群53例 と非 改 善 群38例 に わ けて 比 較 す る と,ク モ膜 下 出血 群34例 の うち,thickな ク モ 膜 下 出 血 に よ る脳 幹 部 の 変 形 を認 め た もの(Fig.1A)は,非 改 善 群 で8例 で あ っ た が,改 善 群 で は 認 め な か った.そ れ に 対 し て,脳 幹 変 形 を認 め な い クモ 膜 下 出 血 の もの(Fig. 1B),は 改 善 群 で7例 で あ った が,非 改 善 群 で4例 と,改 善 群 に多 か っ た.さ らに脳 幹 変 形 を認 めず, 急 性 水 頭 症 を呈 した もの(Fig.1C)は 改 善 群 で14 例 で あ る の に対 して,非 改 善 群 で は1例 の み で あ った.こ のCT所 見 は2群 間 に お い て 推 計 学 的 有 意 差 を認 め て お り(P<0.001),入 院 時CT所 見 が,脳 幹 部 変 形 を認 め な い,ま た 急 性 水 頭 症 を呈 し た もの ほ ど,48時 間 以 内 に 回復 しや す い傾 向 に あ る こ と を認 め た(Table 1).
一 方,頭 蓋 内 血 腫 がmainで あ る 頭 蓋 内 血 腫 群 で は,脳 室 内 血 腫 あ る い は 脳 内 血 腫 の 症 例 は,改 善 群 で32例,非 改 善 群 で23例 と,両 者 と も 約60% を 占 め て お り,頻 度 に 差 を 認 め な か っ た(Table 1).非 改 善 群 で は 改 善 群 に 比 べ,脳 室 内 出 血 例 で は,脳 室 拡 大 を き た す ほ ど のcasting形 成 を 認 め る 傾 向 が あ り(Fig.2A,B),脳 内 血 腫 例 で は,非 改 善 群 に 巨 大 な 血 腫 に よ りherniation signを 呈 し て い る も の が 多 い 傾 向 に あ っ た(Fig.3A).硬 膜 下 血 腫 を 伴 う も の(Fig.3B)は,非 改 善 群 で2例 で あ っ た が,改 善 群 で は 認 め て い な い. 考 察 破 裂 脳 動 脈 瘤 の 急 性 期 手 術 は,わ が 国 にお い て 次 第 に普 及 して い る もの と思 わ れ る が,そ の治 療 成 績 は施 設 に よ って ま ち まち で あ る.急 性 期 手 術 の 治 療 成 績 向上 に は,綿 密 な 治 療 上 の配 慮 が 必 要 で あ る が,ま ず手 術 適 応 の 明確 な 決 定 を欠 く こ と はで きな い. わ れ わ れ の 破 裂 脳 動 脈 瘤 急 性 期 の 手 術 適 応 は, い か な る 処 置 に よ って も意 識 状 態 がcomaの もの, また は意 識 状 態 がdown hill courseを と る症 例 で
Fig.1 A : 69-year-old female. ICPC aneurysm. CT scan revealed thick subarachnoid hemorrhage with deformity of midbrain. She died 28 hours later.
B : 45-year-old male. ICPC aneurysm. CT scan showed no deformity of brain stem . He recovered to grade H and underwent radical operation.
C : 45-year-old male. AcomA aneurysm with acute hydrocephalus. He recovered and operated.
は,直 ち に手 術 適 応 とせ ず,呼 名 に応 ず る(意 識 レ ベ ル30)か,意 識 が 改 善 傾 向 に あ るか を も って 手 術 適 応 と して き た1)2)3)4)5)6). 一 方,最 近,超 急 性 期 の症 例 が 増 加 す る に つ れ, 発 症 時 に はGrade IV,Vで あ っ て も,時 間 経 過 と と もに 意 識 が 改 善 し,手 術 適 応 とな る 症 例 も増 加 し て きた.こ の発 症 直 後 よ りは じ ま る意 識 レベ ル の ダ イ ナ ミ ッ クな 変 化 を超 急 性 期 の 入 院 時CT所 見 よ り予 測 で き る もの な ら ば,急 性 期 の 破 裂 脳 動 脈 瘤 の 治 療 に 際 して,よ り早 い時 期 に治 療 方 針 を 決 定 で き る もの と考 え る. 今 回 の 検 討 で は,重 症 例 の破 裂 脳 動 脈 瘤 に お い て は,破 裂 脳 動 脈 瘤 の 部位 は,そ の 急 性 期 の 意 識 改 善 に大 きな 影 響 を きた し て い な い の に対 し,ク モ膜 下 出血 の 程 度,水 頭 症 の有 無,脳 内血 腫,脳 室 内 血 腫 の程 度 な どのCT所 見 と,急 性 期 の 意 識 状 態 の 推 移 に 明 らか な相 関 を認 め た.す な わ ち, 脳 幹 部 の変 形 を認 め な い ク モ膜 下 出 血,と りわ け 急 性 水 頭 症 の 像 を呈 して い る もの や,比 較 的 軽 度 な 脳 室 内血 腫 あ る い は脳 内 血 腫 の 症 例 に お い て, 脳 室 持 続 ドレ ナ ー ジ,脳 室 内血 腫 吸 引,あ る い は マ ニ トー ル,ス テ ロイ ドな どの脳 圧 降 下 剤,脳 保 護 物 質 な どの 迅 速 な対 応 に よ って,有 意 に急 性 期 の 意 識 改 善 を認 め て お り,こ の よ う なCT所 見 を 呈 す る 重 症 破 裂 脳 動脈 瘤 症 例 で は,時 期 を逸 せ ず, 早 期 か ら よ り積 極 的 治 療 が 必 要 で あ る と考 え られ た. 一 方,入 院 時 の 神 経 学 的gradeか らみ る と,改
Fig.2 A : 52-year-old male. AcomA aneu-rysm. CT scan revealed intraven-tricular hemorrhage with ventricular casting. He died 3 days later.
B : 48-year-old male. Slight intra-cerebral and intraventricular he-matomas without casting were derived from AcomA aneurysm. He recovered to Grade III and underwent radical operation.
Fig.3 A : 45-year-old male. MCA aneu-rysm. CT scan revealed massive intracerebral hematoma. He died 36 hours later.
B : 46-year-old male. MCA aneu-rysm. He had massive subdural hematoma and intracerebral hematoma, and died 29 hours later.
善 群 で はGrade IVが43例,Vが10例 で あ る の に対 して,非 改 善 群 で は そ れ ぞ れ12例,26例 で あ り, 有 意 な差 が 認 め られ(p<0.001),当 然 なが ら入 院 時gradeの 悪 い ほ ど,意 識 の 改 善 は悪 か った.し か し,視 点 をか え て い え ば,入 院 時 のgradeがV で あ った36例 中10例(28%)が 改 善 群 に属 し て お り, 急性 期 の 重 症 患者 の 治 療 上,無 視 す る こ との で き な い もの と思 わ れ た. ま と め 1)ク モ 膜 下 出血 後24時 間以 内 に来 院 し,入 院 時 のHunt and KosnikのgradeがIV,Vを 示 し たWillis動 脈 輪 前 半 部 脳 動 脈 瘤91例 に つ い て,意 識 改 善 の メ ル ク マ ー ル とな る もの を検 討 した. 2)CTscan上,脳 幹 部 の 変 形 を認 め な い,ま た 急 性 水 頭 症 の 像 を呈 した もの ほ ど,改 善 す る傾 向 が 強 い こ と を有 意 に 認 め た. 3)入 院 時gradeがIVの 方 がVに 比 べ て,意 識 の 回 復 も良好 で あ る こ と を認 め た. 4)破 裂 脳 動 脈 瘤 の部 位 は,意 識 改 善 との 因 果 関 係 を認 め な か っ た. 文 献 1) 桜 井 芳 明,小 川 彰,小 松 伸 郎,ほ か;急 性 期 破 裂 脳 動 脈 瘤 の 治 療 成 績 ―overall mortalityとmobidity の 観 点 か ら―.脳 卒 中5:79-86,1983 2) 鈴 木 二 郎,高 久 晃,吉 本 高 志;破 裂 脳 動 脈 瘤 の 早 期 手 術.脳 神 経23:1281-1286,1971
3)鈴 木 二 郎,吉 本 高 志;Early operation for the rup-tured intracranial aneurysms.日 外 誌3:149-156, 1973
4) 鈴 木 二 郎,吉 本 高 志:破 裂 脳 動 脈 瘤 の 早 期 手 術 一 特 に48時 間 以 内 の 手 術.脳 外4:407-412,1976
5)Suzuki J,Onuma T,Yoshimoto T:Results of early operation on cerebral aneurysms.Surg Neu-rol 11:407-412,1979
6) 鈴 木 二 郎,吉 本 高 志:脳 動 脈 瘤 破 裂 超 早 期 手 術 の 要 点.脳 外10:1139-1149,1982
7 ) Suzuki J, Fujimoto S, Mizoi K, et al : The pro-tective effect of combined administration of
anti-oxidants and perfluorochemicals on cerebral ische-mia. Stroke 15 : 672-679, 1984