アカウンタビリティが内部監査人の判断・意思決定に与える影響に関する実証研究
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(2) 30. 横浜国際社会科学研究 第 20 巻第 1・2 号(2015 年 8 月). (30). る相手の意見に内部監査人の JDM も近づいて. 次のように説明されている.. いく,つまり,実際に相手の意見が正しければ,. 「内部監査とは,組織体の経営目標の効果的. その正しい意見に近づいていくため JDM にプラ. な達成に役立つことを目的として,合法性と合. スの影響を,間違っていればその間違った意見. 理性の観点から公正かつ独立の立場で,ガバナ. に近づいていくため JDM にマイナスの影響を与. ンス・プロセス,リスク・マネジメントおよび. えることを示唆する結果となった.経営者の意. コントロールに関連する経営諸活動の遂行状況. 見が正しければ,その正しい意見に近づくため. を,内部監査人としての規律遵守の態度をもっ. 良い影響を,間違っていればその間違った意見. て評価し,これに基づいて客観的意見を述べ,. に近づくため悪い影響を内部監査人の JDM に与. 助言・勧告を行うアシュアランス業務,および. えるのである.これは,経営者が,たとえ間違っ. 特定の経営諸活動の支援を行うアドバイザリー. ていたとしても自分の経営判断の正当性を主張. 業務である.」. するために内部監査を利用する可能性があるこ. また,内部監査の国際機関である内部監査人. とを示唆しており,その場合,内部監査の目的. 協会(The Institute of Internal Auditors)が発行. である「経営目標の達成への貢献」を,経営者. する内部監査の国際的な監査基準(International. に対するアカウンタビリティが阻害してしまう. Standards for the Professional Practice of. ことを意味する.そのようなリスクに対応する. Internal Auditing)に お い て も,日本 の 基準 と. ための課題として,監査役や外部監査人など経. ほぼ同じ内容の説明がなされている3).つまり,. 営者以外へのアカウンタビリティの影響も今後. わが国の基準においても,国際的な基準におい. は研究対象として検討する必要があるだろう.. ても,内部監査は,組織体の目標達成に貢献し. 本稿のこの後の構成は,まず,研究の意義に. なければならないのである.. ついて論じ,次に,アカウンタビリティの概念. では,内部監査が組織体の目標達成に貢献す. を明らかにした後に先行研究のレビューをとお. るためにどのような役割を担い,また,どのよ. し て 仮説 を 展開 す る.次 に,実験 の 計画,手. うな課題を抱えているかを米国トレッドウェイ. 法ならびにその結果・分析について述べ,最. 委員会組織委員会(通称 COSO)によって公表. 後に,結論および将来の課題について論じる.. さ れ た COSO 内部統制-統合的 フ レーム ワー. 2.研究の意義. 4) ク(以下,COSO フ レーム ワーク と す る) を. もとに述べることにする.. ここでは,研究の意義を述べる前提として, まず,内部監査の定義を明らかにする.次に,. 2―2 内部監査の役割と課題. 内部統制のフレームワークの中での内部監査の. 2―2―1 内部統制. 役割と課題について論じた後に,実験研究の意. COSO フ レーム ワーク に お け る 内部監査 に. 義について述べる.. ついて述べる前に,その上位概念である内部統 制がどのように説明されているかを述べること. 2―1 内部監査とは. にする.. 日本 で の 内部監査 の 定義 は,2014 年 6 月 に. COSO フレームワークでは,内部統制を次の. 改訂された一般社団法人日本内部監査協会の内 部監査基準2)によると,内部監査の本質として, . 2)一般社団法人日本内部監査協会[2014].. ように定義している. 「内部統制 と は,事業体 の 取締役会,経営者 お . 3)IIA[2013]24 頁. 4)COSO[2013] ..
(3) アカウンタビリティが内部監査人の判断・意思決定に与える影響に関する実証研究(池田) (31). 31. 鳥羽[2007]の 60 頁 図 3-1 をもとに作成. 鳥羽[2007]の60頁 図3-1をもとに筆者が作成 図 1 内部統制の構成要素 図1 内部統制の構成要素 よびその他の構成員によって実行され,業務,. 示)によって業務,報告およびコンプライアン. 報告およびコンプライアンスに関連する目的の. スに関する経営目的を達成するためにつくられ. 達成に関して合理的な保証を提供するために整. たあらゆるプロセス(すなわち,内部統制)を. 備された 1 つのプロセスである. 」さらに, 「統. 評価する活動のことである.その中には,「ビ. 制環境」 「リスク評価」 「統制活動」 「情報と伝達」. ジネスプロセスに組み込まれ,状況の変化に対. 「モニタリング活動」の 5 つの統合された構成. 応して即時に実施される定型的業務」と定義さ. 要素から成るとしている.この 5 つの構成要素. れる日常的評価と,「統制を定期的に評価する. は,内部統制の 3 つの目的それぞれに対する有. ように設計されており,事業体の日常業務に組. 効性の評価基準となり,内部監査は,この構成. み込まれていない」 「事業体とそのサブ・ユニッ. 要素のなかのモニタリング活動に属する.. ト全体にわたって原則を実行するために必要な. 2―2―2 モニタリング活動の中の内部監査. 統制が,設計,適用および運用されていること. COSO フ レーム ワーク で は,モ ニ タ リ ン グ. をたしかめるため(以下略)」と説明される独. 活動は, 「内部統制の 5 つの各構成要素および. 立的評価があり,後者の中心的役割を担うのが. 関連する原則が,存在し,機能していることを. 内部監査5)なのである.COSO フレームワーク. 評価する. 」 「組織は,内部統制の構成要素(事. では,内部監査による独立的評価を以下のよう. 業体とそのサブ・ユニット全体において原則を. に説明している.. 実行するための統制を含む)が存在し,機能し. 「通常業務の一部として,または,上級経営. ているかを確かめるために,日常的評価,独立 的評価またはその両者の一定の組合せを利用す る. 」と説明している(図 1 を参照) . つまり, 図 1 における配置からわかるように, モニタリング活動とは,経営者(およびその指. . 5)COSO フ レーム ワーク で は,内部監査機能 を有することは,内部統制に必須ではないとして いる.すなわち,評価される部門内であっても独 立した立場の管理者や従業員などでも独立的評価 は実施可能である..
(4) 32. (32). 横浜国際社会科学研究 第 20 巻第 1・2 号(2015 年 8 月). 者もしくは取締役会の特別な要請を受け実施さ. 題でも,経営目標の達成に役立つなら,経営者. れる. 」. を説得し,改善させることが有効な内部監査に. これは, 内部監査が執行側に属していながら,. つながる.リソース不足の問題では,与えられ. その執行の長である経営者の構築した内部統制. たスタッフと予算の中で,工夫を凝らしながら. を独立的に評価しなければならないことを意味. 効率的に内部監査を行い,経営目標達成に貢献. する.. することが求められるのである.それらの課題. 2―2―3 内部監査の課題. を克服するためのキーとなるものの 1 つがア. 執行側に属する内部監査には,組織的に 2 つ. カウンタビリティである.それは,内部監査人. の課題がある.1 つは,多くの日本企業の内部. と報告先である経営者との間に必ず存在する. 監査部門の場合,経営者直下の組織でありなが. ものであり,これまでの心理学や外部監査人の. ら経営者の構築した内部統制を,独立的に,正. JDM 研究でもその影響が数多く検証されてい. しく評価し,客観的な意見として経営者に述べ. るため,内部監査の活動にも何らかの影響を与. られるかという課題である.たとえば,経営者. えると考えられる.. 自らが責任者となって進められている投資プ ロジェクトの中間レビューを内部監査部門が行. 2―3 実験研究の意義. い,その結果,その投資プロジェクトを中止す. 本研究の目的は,アカウンタビリティが内部. べきと結論づけたとする.そのようなレビュー. 監査人の JDM に与える影響について,実験を. 結果を,直属の上司であると同時に監査対象で. とおして検証することである.会計・監査関連. もある経営者に対して,ありのままに説明・報. の研究で用いられるいくつかの研究手法の中で. 告し,さらにそのプロジェクトの中止を提言す. 実験を選んだ理由は以下のとおりである.. ることは,内部監査部門長としては極めて難し. 内部監査はあくまでも経営目標達成のために. い選択となるだろう.. 行われる社内監査のため,公認会計士監査と比. もう 1 つの課題は,独立的評価をしなければ. べて研究に必要なデータの取得が難しく,その. ならないとはいえ,内部監査は社内の一部門で. 内容はブラックボックスである.そのため,内. あるため,スタッフの数や予算の制約などリ. 部監査人の判断プロセスを知るには内部監査人. ソースに関する課題である.これは,営利企業. の心の中にあるものを取り出したうえで,その. においては特に切実な問題であろう.内部監査. パフォーマンスを理解し,因果関係を検証する. 部門は,企業内では直接利益をもたらさない所. 必要がある6).本研究では,検証したい原因・. 謂コストセンターであるため,常に,最小のス. 理由(すなわち,アカウンタビリティ)は明確. タッフによる効率的な監査が求められ,企業全. であり,その因果関係を特定するためには実験. 体の業績が悪くなれば,スタッフの数や出張費. が最も有効な手法と考えた.. などの経費が最初に削減される可能性の高い部. 実験の利点は,被験者を処置群に無作為に割. 署なのである.. りあて(random assignment) ,研究上関心を有. 様々な利害関係者が入りみだれて進行して. している変数を操作し,関心のない変数をコン. ゆくビジネスにおいて,ある断片だけを監査. トロールすることによって,得られた結果に対. し,問題点を発見したからといってそれを指摘 し,監査先に改善を要請したとしても,さら に深い,もっと根本的な問題が存在していたな らば,その改善要請では問題の本質にメスを入 れることはできない.それが経営に直結する問. . 6)このタイプの研究は,判断獲得研究(Policy Capturing Research)と 分類 さ れ,判断戦略 を 明 らかにするための監査人の判断方針の数学的表象 を 発展 さ せ る こ と を 目的 と し て い る(Trotman [1995] , p. 41) ..
(5) アカウンタビリティが内部監査人の判断・意思決定に与える影響に関する実証研究(池田) (33). 33. する代替的な説明(解釈)を排除することがで. 5 にある「説明責任を果たす」という表現が,. きる.すなわち,判断・意思決定とそれへの影. 英 訳 版 で は “fulfill the obligation to disclose. 響要因との間の因果関係を特定することができ. all information to the public” と なって お り,. る の で あ る(福川[2012] ,8─9 頁) .つ ま り,. “accountability” という表現は使われていない. 実験によって高い内的妥当性 のある成果が期. ことをあげている9).Bovens[2007]によれば,. 待できる.ただし,高い内的妥当性を実現する. アングロ = ノルマン語(アングロ = サクソン. ためには,剰余変数8)の影響を統制する必要が. 語ではなく)に起源を発するこのアカウンタビ. あり,具体的には,内部監査人の JDM に与え. リティという言葉は,歴史的にみても元来は自. るアカウンタビリティ以外の影響(たとえば,. 分の行為を説明し,正当化し,公の場(forum). 過去の経歴や経験)をできる限り取り除くこと. で批判を受け,否定的な批判を受けた場合には. が重要である.それらを完全に取り除くことは. 制裁(sanction)が課されるような「自己正当化」. 事実上不可能かもしれないが,様々な経歴を持. と「責任をとる」といった意味合いが強かった.. つ日本 の 内部監査人を対象とした実験研究で. 一方,日本語 の「説明責任」は,「責任」の 前. は,剰余変数の統制には,特に,注意を払った. に「説明」が加わって,「誰かへの説明」といっ. うえで実施されるべきであろう.. た意味が強調された語感になっている.本研究. 7). 3.ア カウンタビリティの概念と先行研究から の仮説展開. では,内部監査人の経営者に対するアカウンタ ビリティを取り上げるため,監査結果の説明・ 報告よりも責任の意味合いの強い「自己正当化」. ここでは,アカウンタビリティが内部監査人. の概念も含んだアカウンタビリティという原語. の JDM に与える影響を検証するために,まず,. を使用することにする.次からは,本研究にお. アカウンタビリティの概念を明らかにし, 次に,. けるアカウンタビリティの定義を明確にし,ア. 関連する先行研究のレビューをとおして検証す. カウンタビリティがどのような種類に分類され. る仮説の展開を行う.. ているかを明示する. 3―1―2 心理学研究にみるアカウンタビリティ. 3―1 アカウンタビリティの概念. の定義. 3―1―1 アカウンタビリティと説明責任. ア カ ウ ン タ ビ リ ティの 研究 は,医学,教育. 日本では, アカウンタビリティは一般的に 「説. 学,政治学,経済学,心理学,経営学や会計学. 明責任」と訳されるが,本研究では原語のアカ. など様々な分野で行われており,アカウンタビ. ウンタビリティを使用する.その理由は,アカ. リティの定義もそれぞれの分野で異なる10).本. ウンタビリティは, 「説明責任」と置き換わる 過程で日本的文脈に変質し,英語圏以外の国と 比較して独自の発展を遂げているからである (山本[2013] ) .その一例として,山本[2013] は,日本原子力学会倫理委員会[2009]の憲章 . 7)内的妥当性とは , 従属変数として測定された 結果が,独立変数だけを原因としている程度(安藤・ 沼崎・村田[2009],105 頁). 8)剰余変数とは , 独立変数以外で従属変数に影 響を及ぼす可能性のある要因(安藤・沼崎・村田 [2009],98 頁).. . 9)日本原子力学会倫理委員会[2009]の 憲章 5 の全文は「会員は,自らの有する情報の正しさを 確認するよう心掛け,公開を旨とし説明責任を果 たし,社会の信頼を得るように努める. 」英語版の 全文は “We shall strive to assure that all information we utilize is accurate and fulfill the obligation to disclose all information to the public in order to obtain the public trust.” 10)一般的 な 意味 で の accountability と は, accountable の名詞形となっており,accountable は “responsible for your actions and expected to explain them.” と説明されている(Oxford English Dictionary[Oxford University Press] ) ..
(6) 34. (34). 横浜国際社会科学研究 第 20 巻第 1・2 号(2015 年 8 月). 研究の目的が内部監査人の JDM に与える影響. よって,意思決定者が,判断前に相手(つまり,. について,実験によって検証することなので,. 評価者)の見解を知らない状況と知っている状. 本研究でのアカウンタビリティの定義を,心理. 況とでは,それぞれの状況下でのアカウンタビ. 学分野においてアカウンタビリティの文献をレ. リティの JDM に対する影響も異なるはずであ. ビューしている Lerner and Tetlock[1999]が. る.. 定義する「自分の信念や感情,行動への正当化. 本研究では,この「判断前に相手の見解を知. を他者に対して求められるかもしれないという. らない場合」と「判断前に相手の見解を知って. 暗黙的または明示的期待」 と同様のものとする.. いる場合」のアカウンタビリティに焦点を当て,. 正当化とは,他者に対する説明責任がある状況. その JDM への影響について検証を行う.. 下で,自分の信念を支持するための説明を提供. 3―1―3 判断前に相手の見解を知らない場合の アカウンタビリティ. するプロセスのことである. Lerner and Tetlock[1999]では,アカウン. 意思決定者が,判断前に見解がわかっていな. タビリティの種類として以下の 4 組をあげてい. い相手に対してアカウンタビリティが課された. る.すなわち,「相手の見解を知らない場合と. 場合,一般的には,JDM に対して良い影響を. 知っている場合のアカウンタビリティ」 , 「判断. 与えると考えられている.なぜならば,アカ. 前に課されるアカウンタビリティと判断後に課. ウンタビリティが意思決定者に対して正しい. されるアカウンタビリティ」 , 「結果に対するア. JDM をしようとするモティベーションを誘発. カウンタビリティと結果へのプロセスに対する. し,そのための努力へとつながっていくことが. アカウンタビリティ」 , 「権威を持ったものへの. JDM に良い影響を与える主要因となるからで. アカウンタビリティと権威を持たないものへの. あ る(Bonner[2008],p. 215).判断前 に 見解. アカウンタビリティ」 ,である .. のわかっていない相手に対して自分の JDM と. これらのアカウンタビリティの中でも特に. その理由を説明しなければならないことを知っ. JDM に強い影響を与えると考えられ,多くの. ていれば,人は誰でも間違った答えを人前にさ. 先行研究が行われているのは, 「相手の見解を. らすことは避けたいと思い,フレキシブルに,. 知らない場合と知っている場合のアカウンタビ. 様々な角度から物事を考え,自分の答えの根拠. リティ」である.元来,人は,自分自身のため. を,より正確に相手に伝えようとするかもしれ. に判断を下し,意思を固めて行動にでるものだ. ない12).そして,正確な答えとその根拠を相手. が,その行動は自分以外の誰かから評価を得る. に伝えるためには,匿名で回答する時よりも,. ことによって完結する.たとえば,社内で自分. 深く考えて回答を導き,そのための事実や因果. では完璧なデキだと思って提出した企画書で. 関係,因果関係の基礎となる理論を相手に理解. も,上司の期待したものとは異なり,その上司. させるために,より時間をかけ,慎重に準備を. から評価されなければ,その上の経営層に届く. するかもしれない.. ことはなく,何の価値も生まない.いいかえれ. 一方,意思決定者が,判断前に見解がわかっ. ば,人は自分の行動を他者から評価してもらう. ていない相手に対してアカウンタビリティが課. ために最善の JDM をしようとするのである.. された場合,JDM に対して悪い影響を与える. 11). 可能性もないわけではない.たとえば,正しい . 11)Peecher et al.[2013]は,上記 の 4 組以外 のアカウンタビリティの種類として,「報酬を与え るアカウンタビリティ」と「罰を与えるアカウン タビリティ」を加えている .. . 12)Tetlock et al.[1989]は,1 つ 社会的条件適 合 モ デ ル(social contingency model)の 中 の 先制 的自己批判(preemptive self-criticism)としている ..
(7) アカウンタビリティが内部監査人の判断・意思決定に与える影響に関する実証研究(池田) (35). 35. JDM をしようとするモティベーションが過度. 3―2 先行研究. になり,必要以上に時間とリソースを使ってし. アカウンタビリティの研究は,様々な学問分. まうなど効率性の問題が考えられる.. 野で行われている.それらの研究結果の多くは,. 3―1―4 判断前に相手の見解を知っている場合. 人が意思決定をする際,相手の見解を知らない. のアカウンタビリティ. 場合のアカウンタビリティは,より多くの努力. 判断前にアカウンタビリティのある相手の見. や注意深い行動を誘発し,正確な判断へと導く. 解を知っている状況では,人はその相手の意見. としている.また,相手の見解を知っている場. に合わせようとする傾向がある .Lerner and. 合のアカウンタビリティは,相手の見解に近い. Tetlock[1999]に よ れ ば,そ の 理由 は,ア カ. 意思決定へと導くといった研究が多くみられる. ウンタビリティのある相手の好みを単に受入れ. (アカウンタビリティに関する研究をレビュー. ることによって,認知的な判断が省略できるか. し た 論 文 と し て は Tetlock[1985],Kunda. らとしている.さらに,情報の複雑な規則を. [1990],Kunda[1999],Lerner and Tetlock. 理解したり,意見が対立した場合にその妥協. [1999], Nelson and Tan [2005], Bonner. 点も見いだしやすくなるからである.ただし,. [2008],前山[2012]などがある). アカウン. JDM に対してプラスかマイナスかといった観. タビリティが内部監査人の JDM に与える影響. 点では,アカウンタビリティのある相手の意見. を,実験によって検証している研究は稀であ. によるとしている.実際に相手の意見が正しけ. るが,公認会計士監査のレビュー・プロセス14). れば,その正しい意見に近づいていくためプラ. を扱った研究は数多く存在する.そのため,ア. スの影響を,間違っていればその間違った意見. カウンタビリティが外部監査人の JDM に与え. に近づいていくため, マイナスの影響を与える.. る影響を検証した先行研究を中心に,①相手の. 前出の企画書の例でいえば,企画書の提出先で. 見解を知らない場合のアカウンタビリティと. ある上司が,財務的には厳しい状況にあるが優. ②相手の見解を知っている場合のアカウンタ. れた技術をもっている A 社を買収すべきだと. ビリティの研究に分けて議論を進める15).ま. 強く思っていることを,あらかじめ知っていれ. た,正当化 に 関 す る 先行論文 も レ ビューの 対. ば,部下 に とって,A 社 の 買収 を 肯定 す る 企. 象とする16).. 画書を書くことはそれ以外の代替案を検討する. 3–2–1 相手の見解を知らない場合のアカウン. 13). 作業を省き,企画書の結論部分での上司との決 定的な意見対立を避けられるだろう.ただし, A 社買収という JDM が正しければ,アカウン タビリティは JDM にプラスに作用するが,A 社買収が間違った JDM であればマイナスの影 響を与えることになる. 次からは,「相手の見解を知らない場合」と 「相手の見解を知っている場合」のアカウンタ ビリティに関連する先行研究をレビューする. . 13)Tetlock et al.[1985]では,1 つ社会的条件 適合モデル(social contingency model)の中の受 容性 ヒューリ ス ティック(acceptability heuristic) としている .. タビリティ 相手の見解を知らない場合のアカウンタビ . 14)ここでは,監査レビュー・プロセスを,監 査チーム内でのチームの下位者が作成した監査調 書をチームの上位者がレビューするプロセス,と 定義する(前山[2012] ,54 頁) . 15)①と②を比較している研究,およびその比 較の一環として①とアカウンタビリティがない場 合を比較している研究は②として記述する. 16)実際に説明するプロセスである正当化と, 正当化 を 要求 さ れ る 期待 で あ る ア カ ウ ン タ ビ リ ティとでは,全く同一のものではない.ただし, 概念的に重複する部分は多く,アカウンタビリティ の JDM への影響に関する仮説を構築するうえで重 要な影響はないと考え,正当化とアカウンタビリ ティを区別して先行論文のレビューは行わない..
(8) 36. (36). 横浜国際社会科学研究 第 20 巻第 1・2 号(2015 年 8 月). リティの JDM への影響を検証した初期の実験. Ismail and Trotman[1995]は,レ ビュー・プ. 研究 と し て は,組織行動論 の 分野 で Klimoski. ロセスにおけるディスカッション効果とランク. [1972]にみられる.この研究では,代理人が. 効果が外部監査人の仮説生成にどのような影響. 交渉を行う際に受けるアカウンタビリティが,. を与えるかを検証した.結果は,ディスカッショ. 合意に至るまでの時間および交渉の結果にどの. ン効果のみが検出された.. ような影響を与えるかを検証し,代理人はアカ. Ashton[1990]で は,企業 の 債権格付 け を. ウンタビリティが課されると,より多くの時間. 予測するタスクにおいて外部監査人は,自分の. を使って交渉を行うことが報告されている.た. 予測の正当化を求められると,判断の正確性が. だし,交渉結果への影響は確認されなかった.. 増加し,バラツキが小さくなることを示して. 心理学の実験研究において,Tetlock[1983a]. いる.外部監査人には馴染みのある在庫の陳. は,提示される証拠の順序効果17)に対するアカ. 腐化リスクを評価するタスクを使って,アカ. ウンタビリティの影響を検証している.結果は,. ウンタビリティの影響を検証した Johnson and. 実験ケースを読む前にアカウンタビリティが課. Kaplan[1991]でも,アカウンタビリティが,. された実験参加者は,実験ケースを読んだ後に. 外部監査人の判断のバラツキを小さくすること. アカウンタビリティが課された実験参加者およ. が示されている.. びアカウンタビリティのない実験参加者よりも. Kennedy[1993]では,企業継続性の判断タ. 順序効果 の 影響 を 受 け な かった.Tetlock and. スクにおいて,それまでの監査研究でその存在. Boettger[1994]では,アカウンタビリティが. が示されている系列位置効果18)の中の新近性. これから起こることとすでに起こっていること. 効果(た と え ば,Asare[1992])に 対 す る ア. への判断の影響を検証した結果,これから起こ. カウンタビリティの影響を検証した.結果は,. ることに関してのみ,アカウンタビリティの影. タスクに精通していない MBA に対するアカウ. 響がみられると報告している.. ン タ ビ リ ティに は,新近性効果 を 減少 さ せ る. 監査研究では,1980 年代中盤から 1990 年代. 効果が示されたが,タスクに精通した外部監査. 初期にかけて,レビュー・プロセスが外部監査. 人へのアカウンタビリティの影響は検出されな. 人の JDM に与える影響を,レビューを行う立. かった.. 場から検証した研究が多くみられる.Trotman. Cloyd[1997]では,アカウンタビリティは. and Yetton[1985]は,レビュー・プロセスが. 努力量(タスクにかける時間)を増加させる. 外部監査人の内部統制の有効性判断の差を減少. が,判断の質の向上については事前知識の有無. させる効果があるかを検証し,レビュー・プロ. によって異なることを報告している.アカウン. セスは著しく外部監査人の判断の差を減少さ. タビリティとタスクの複雑性の影響を検証した. せることを確認している.Libby and Trotman. Chang et al.[1997]でも,アカウンタビリティ. [1993]は,意思決定者とそのレビューアーに. は努力量を増加させるが,タスクの複雑性に関. 対して実験を行い,実際に意思決定には携わ らないレビューアーとしての性向が,有効なコ ントロールとして機能することを示している. . 17)同一の被験者が複数の実験的操作を受ける とき,実験の順序によって練習,順応,疲労が生 じたり,あるいは実験事態への心的飽和が起きる ことを順序効果とよぶ(心理学辞典[有斐閣]).. . 18)リスト形式で呈示された材料を記銘・学習 する場合,各項目の成績がリスト内でのその項目 の位置の影響を受けることを系列位置効果(serial position effect)とよぶ.また,リストの冒頭部で 呈示された項目の成績が優れていることを初頭効 果,終末部で呈示された項目の成績がすぐれてい ることを新近性効果(recency effect)とよぶ. (心 理学辞典[有斐閣] ).
(9) アカウンタビリティが内部監査人の判断・意思決定に与える影響に関する実証研究(池田) (37). 37. わらずパフォーマンスには影響を与えないこと. た学生に保守的から革新的まで 7 段階スケール. を報告している(タスクの複雑性とアカウン. で答えさせた.結果は,相手の見解が保守的(革. タビリティの影響を扱った研究には,Tan and. 新的)なら自分の考えも保守的(革新的)になり,. Kao[1999]などがある) .. 見解を知らない相手に対してアカウンタビリ. Hoffman and Patton[1997]では,アカウン. ティが課された学生は,アカウンタビリティが. タビリティによって外部監査人の不正リスクの. 課されない学生よりも革新的な考えを示した.. 判断が,より保守的になることを示している.. 監査研究 に お い て,Peecher[1996]は 外部. Asare et al.[2000]で は,分析的監査手続 タ. 監査人に対し,上司(つまり,アカウンタビリ. スクにおいて,アカウンタビリティが外部監査. ティのある)のクライアントに対する態度を,. 人を,より保守的にし,努力量を増加させるこ. 信頼している,客観的にみている,懐疑的にみ. とを報告している.DeZoort et al.[2006]は,. ている,の 3 段階に分け,さらクライアントの. アカウンタビリティが監査計画および監査証拠. 誠実性を操作して,クライアントがする説明の. の評価段階での外部監査人の重要性判断に対す. 正当性の評価を検証した.結果は,クライアン. る影響を,アカウンタビリティの強さを 4 段階. トを信頼している上司を持つ外部監査人が最も. に分けて検証した.さらに,そこに判断支援が. クライアントのする説明の正当性を高く評価し. 加わった場合の影響と努力量についての検証も. た.Turner[2001]は,Peecher[1996]と 同. 行った.結果 は,ア カウンタビリティが強く. 様 に,上司 の 態度 を 操作 し,外部監査人 の 証. なるほど計画段階での重要性判断が保守的にな. 拠探索の段階での判断への影響を検証した.結. り,証拠の評価段階でも調整額を重要と判断し. 果は,クライアントを信頼している上司を持つ. たことが示されている.監査支援に関しては,. 外部監査人は,クライアントに対する態度が不. アカウンタビリティの影響を緩和する効果を示. 明あるいは懐疑的な上司を持つ外部監査人より. している.一方,計画段階での重要性判断のバ. も,クライアントの主張を肯定する証拠を多く. ラツキは,アカウンタビリティが強いほど小さ. 探索した.. くなり,判断支援は,計画段階および証拠の評. Cohen and Trompeter[1998]は,パートナー. 価段階での重要性のバラツキを小さくする効果. の新規クライアントを獲得する態度(積極的か. を示している.努力量(タスクに使った時間と. 消極的か)を操作し,そのパートナーにアカウ. 文字数)に関しても,アカウンタビリティが強. ンタビリティのある監査マネージャーが新規ク. いほど増加することが示された.. ライアントを獲得しようとするか,そして,ク. 3―2―2 相手の見解を知っている場合のアカウ. ライアントからのリスクの高い会計処理の提案. ンタビリティ. を受入れるかの判断について検証した.さら. 相手の見解を知っている場合のアカウンタ. に,同様の検証を既存のクライアントについて. ビ リ ティの 心理学 に お け る 実験研究 と し て,. も行った.結果は,クライアント獲得(維持). Tetlock[1983b]は,マイノリティー優遇措置. に対して積極的なパートナーを持つ監査マネー. (affirmative action)などの社会問題に対する. ジャーは,より積極的に新規クライアント獲得. 考えを,4 種類のアカウンタビリティ19)を課し. を試み,リスクの高い会計処理も積極的に認め. . 19)匿名(アカウンタビリティなし)およびア カウンタビリティのある相手の見解を知らない, アカウンタビリティのある相手の見解が革新的, アカウンタビリティのある相手の見解が保守的の 4 種類 .. ることを示している.その傾向は,新規クライ アントよりも既存のクライアントに対して,よ り 顕 著 だった.Tan et al.[1997]で は,在 庫 の陳腐化に関する外部監査人の判断が,Wilks [2002]では,企業の継続性に関する外部監査人.
(10) 38. (38). 横浜国際社会科学研究 第 20 巻第 1・2 号(2015 年 8 月). の判断が,それぞれアカウンタビリティのある. が上司(つまり,経営者)の構築した内部統制. パートナーの意見に近づくことを示している.. を評価するといった内部監査特有の状況がある. アカウンタビリティの研究とは異なるが,監. からである.この点が,監査チーム内でのレ. 査手続の中で,上司からクライアントの不当な. ビュー・プロセスによるアカウンタビリティの. 要求を受入れるよう圧力を受けた場合の外部. 影響を主に扱っている外部監査人の実験研究と. 監査人の判断を検証した研究に,DeZoort and. の違いである.会計事務所に所属している外部. Lord[1994]がある.結果は,服従圧力が強い. 監査人とは異なり,企業に属する内部監査人は,. ほど(すなわち,より高い職位からの服従圧. 同じ企業内の内部監査対象部署(あるいは,子. 力),外部監査人はクライアントからの不当な. 会社)に対して,完全に独立的な立場にあると. 要求を受入れることが報告されている.上司か. はいえないため,アカウンタビリティの内部監. ら受ける圧力を扱った内部監査 の研究として. 査人の JDM への影響は,外部監査人の JDM へ. は,Harrell et al.[1989]がある.この研究では,. の影響とは異なる可能性がある.そのため,内. 経営者が望む内部統制の有効性評価を知ってい. 部監査人を対象とした実験による検証は内部監. る内部監査人は,そのような知識のない内部監. 査研究に大きな貢献となることが期待できる.. 査人よりも,より経営者の望む評価を行うこと. 次からは,内部監査の実務に鑑みながら,先. が示される一方,内部監査人協会に所属してい. 行研究を参考に仮説を展開する.. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. る内部監査人は,内部監査人協会に所属してい ない内部監査人よりも経営者の望む評価結果に. 3―3 仮 説. 抵抗を示すことが報告されている.. これまでの論点の 1 つは, 「判断前に見解が. 3–2–3 内部監査人の JDM に対するアカウン. わかっていない相手に対して課されるアカウ. タビリティの実験研究の必要性. ンタビリティ」が意思決定者の正しい JDM を. 以上のように,心理学実験の手法を取り入れ. し よ う と す る “モ ティベーション”を 誘発 し,. た「相手の見解を知らない場合」および「相手. JDM に , より時間をかけ,慎重になることに. の見解を知っている場合」のアカウンタビリ. よって 正確性 や 一貫性,バ ラ ツ キ に ポ ジ ティ. ティの研究は,会計・監査分野において非常に. ブな影響を与えることであり,主に会計のプ. 多くのものが存在する.その研究結果は, 「相. ロフェッショナルである外部監査人の JDM へ. 手の見解を知らない場合」であれば,外部監. の影響を中心に論じてきた.これは,Tetlock. 査人の JDM の質に良い影響を与えるものが多. et al.[1989]による 1 つ社会的条件適合モデル. く, 「相手の見解を知っている場合」にはその. 20) (social contingency model) の 中 の 先制的自. 見解の正誤に関らず相手の見解に近づいていく. 21) 己批判(preemptive self-criticism) に分類さ. といったものが多い. 一方,内部監査人の JDM へのアカウンタビ リティの影響を実験で検証した先行研究は,筆 者が調査した限りでは存在せず,特に,執行側 に属している内部監査人がその執行側の長であ り直接のレポートラインである経営者に対する アカウンタビリティの研究は,外部監査人のア カウンタビリティ研究とは違った発見が期待で きる.それは,経営者は内部統制構築の責任者 であり,その直属の部下(つまり,内部監査人). . 20)Tetlock et al.[1989]では,重要な相手からの アカウンタビリティの要求に対処するための戦略を, 受容性ヒューリスティック(acceptability heuristic) , 先制的自己批判(preemptive self-criticism) ,防御 の 強化(defensive bolstering)の 3 つに特定し,実験を 行っている. 21)人は,アカウンタビリティのある相手の見 解を知らず,さらに過去に自分が行った判断(コ ミットメント)による制約を受けない場合,より多 次元的かつ柔軟性を持って思考しようと動機づけ られる(Tetlock et al.[1989] ,p. 633) ..
(11) アカウンタビリティが内部監査人の判断・意思決定に与える影響に関する実証研究(池田) (39). 39. れ,内部監査人においても同様の期待が導かれ. 状況において同様の期待が導かれる.よって,. る.よって,これまでにレビューした Tetlock. DeZoort and Lord[1994],Peecher[1996],. [1983a] ,Ashton[1990] ,Hoffman and Patton. Turner[2001],Wilks[2002]などの先行研究. [1997] ,Asare et al. [2000] ,DeZoort et al.. をベースに,以下の仮説を展開する.. [2006]などの先行研究をベースに,以下の仮 <H2> 判断前にアカウンタビリティが課され. 説を展開する.. た相手の見解を知っている内部監査人は,判断 <H1―a> 判断前に見解がわからない相手にア. 前にアカウンタビリティが課された相手の見解. カウンタビリティが課された内部監査人は,判. を知らない内部監査人に対して相手が望む結果. 断前にアカウンタビリティが課されない内部監. に近い判断をする.. 査人よりも保守的な判断をする. <H1―b> 判断前に見解のわからない相手にア. 多くの日系企業における内部監査部門では,. カウンタビリティが課された内部監査人の判断. 内部監査人の数も限られており,会計事務所の. のバラツキは,判断前にアカウンタビリティが. ような階層的組織とは異なっているため,公認. 課されない内部監査人の判断のバラツキよりも. 会計士監査で通常行われるようなランクごとの. 小さくなる.. 上位者による監査調書のレビュー・プロセスは. <H1―c> 判断前に見解のわからない相手にアカ. 確立されていない.内部監査実務において,ア. ウンタビリティが課された内部監査人が判断を. カウンタビリティのある相手として一般的に考. する際の努力量は,判断前にアカウンタビリ. えられるのは報告先であり,その殆どは経営者. ティが課されない内部監査人が判断をする際の. である.. 努力量よりも大きくなる.. 内部監査部門長は,内部監査報告書を経営者 に対して発行するだけでなく,通常,監査内容. も う 1 つ の 論点 である「判断前に見解がわ. の 詳細 を 経営者 に 直接説明・報告 す る 機会 が. かっている相手に対して課されるアカウンタ. あるため,常に経営者に対してはアカウンタビ. ビリティ」については,アカウンタビリティ. リティがあるといえる.ただし,経営者への説. が課された相手の好みを単に受入れることに. 明・報告の方法や頻度などは各社各様であり,. よって認知的な判断プロセスを省略し,JDM. 経営者が,より詳細な報告を求めたり,報告の. が相手の意見に近づいていく傾向になること. 頻度をあげればアカウンタビリティはより強い. を同じく外部監査人の JDM への影響を中心に. ものになる.判断前に経営者が期待する監査結. 論 じ た. こ れ は,Tetlock et al.[1989]に よ. 果がわかっている場合,そのような強いアカウ. る 社会的条件適合 モ デ ル の 受容性 ヒューリ ス. ンタビリティが課される状況では,内部監査人. ティック(acceptability heuristic) に 分類 さ. の JDM は,さらに経営者の期待する監査結果. れ,内部監査人においても,判断前にアカウン. に近づいていくことが予想される.このような. タビリティが課された相手の見解を知っている. アカウンタビリティの操作は,筆者の知る限り. 22). . 22)人は,アカウンタビリティのある相手の見 解を知っていて,過去に自分が行った判断(コミッ トメント)による制約を受けない場合,その相手 の意見を受入れやすく,自分の意見をその相手の 意見に,より近づける傾向にあること(Tetlock et al.[1989],p. 633).. これまでの外部監査人の JDM 研究には見当た らない.外部監査と内部監査の相違点を鑑みな がら Tetlock et al.[1989]による受容性ヒュー リスティック(acceptability heuristic)の概念 を発展させ,以下の仮説が導かれる..
(12) 40. (40). 横浜国際社会科学研究 第 20 巻第 1・2 号(2015 年 8 月). <H3–a> 判断前にアカウンタビリティが課さ. ン ケート 調査 で 内部監査 の 経験(回数)が な. れた相手の見解を知っている内部監査人に,さ. いと答えた 4 名およびアンケート調査に無回. らに強いアカウンタビリティを課すと,アカウ. 答 の 1 名 を 除 く 107 名 を 調査対象 の 実験参加. ンタビリティがある相手の見解を知っているだ. 者 と し た.実験参加者 107 名 の 内部監査 の 平. けの内部監査人の判断よりもその相手の見解に. 均経験年数は 5.1 年,実際に行った内部監査の. 近い判断をする.. 通算回数は平均で 24 回であった.また,内部 監査関連の資格保持者23)の割合は 71% であっ. ただし,アカウンタビリティのある相手の期. た.. 待を受入れることによって認知的な判断プロセ. 4―1―2 実験タスク. スは省略されるが,経営者への報告のために実. 実験に用いられた 6 ページからなるケース資. 際に行われる作業量が削減されるとは限らな. 料は,内部監査の実務経験 5 年以上の内部監査. い.実際には,経営者に対して強いアカウンタ. 人や会計・監査研究者数人のレビューを受け,. ビリティを感じることにより,判断前にアカウ. そのコメントを参考に修正を加える作業を 3 回. ンタビリティのある相手の見解を知らない状況. 繰り返した.さらに,本実験の約 1 か月前にパ. と同様に,作業量(すなわち,努力量)は大き. イロット・テストを実施し,その結果とパイ. くなることが予測される.たとえ,経営者が期. ロッテ・テスト参加者のコメントを参考に修正. 待する監査結果がわかっていて,そのとおりの. を加え最終版とした.. 結果を報告するにしても.よって,以下のよう. 実験参加者は,まず,目的と概要の書かれた. な仮説が導かれる.. インストラクションを読み,次に,ある計測器 の 製造・販売会社 P 社 の 内部監査部門長 と し. <H3–b> 判断前にアカウンタビリティのある. て部下 1 名と共にある海外子会社 S 社への内. 相手の見解を知っている内部監査人に,さらに. 部監査に行った際に遭遇したケースを読んだ. 強いアカウンタビリティを課すと,判断をする. 後,現場での判断を求められる.さらに,その. 際の努力量は,アカウンタビリティがある相手. 理由の記述も求められる.ケースは 2 つ用意さ. の見解を知っているだけの内部監査人が判断を. れた.ケース 1 では,監査先の海外子会社の社. する際の努力量よりも大きくなる.. 長の使った費用が,社内規程に従って正しく承. 4.ア カ ウ ン タ ビ リ ティが 内部監査人 の JDM に与える影響に関する実験研究. 認され,支払われているかを関連する証憑(費 用 の 申請書,領収書,支払伝票 な ど)1 年分, 全件チェックするつもりでいたが,監査先(S. こ こ で は,内部監査人を対象者(以下, 「実 験参加者」とする)として実験を行い,設定さ れた仮説を検証する.この実験では,内部監査 人に対して課されるアカウンタビリティと,ア カウンタビリティがある相手の内部監査に対す る期待を操作した要因計画が採用されている. 4―1 実験方法 4―1―1 実験参加者 実際に実験ケースに回答した内部監査人は, 112 名だった.ただし,そのうち,実験後のア. . 23)ここでは,IIA が認定する公認内部監査人 (Certified Internal Auditor,CIA) ,内部統制評価 指 導 士(Certification in Control Self-Assessment, CCSA),公 認 金 融 監 査 人(Certified Financial Services Auditor,CFSA) ,公認リスク管理監査人 (Certification in Risk Management Assurance, CRMA), 一 般 社 団 法 人 日 本 内 部 監 査 協 会 が 認 定 す る 内 部 監 査 士(Qualified Internal Auditor, QIA) ,ISACA が認定する公認情報システム監査人 (Certified Information Systems Auditor,CISA) , 経済産業省が認定するシステム監査技術者,公認会 計士(国内外)の資格を指す..
(13) アカウンタビリティが内部監査人の判断・意思決定に与える影響に関する実証研究(池田) (41). 41. 表 1 実験グループ 期待. グループ 1 不明. グループ 2 甘い監査. グループ 3 厳しい監査. グループ A アカウンタビリティなし. A1 [19]. A2 [16]. A3 [18]. グループ B アカウンタビリティあり. B1 [19]. B2 [18]. B3 [17]. アカウンタビリティ. 注: [ ]内の数字は実験参加者数を表し , 各グループ間で,社会人としての勤務期間, 内部監査の経験,監査関連資格の保持率それぞれの平均値に有意差はなかった .. 社経理部長)から全件チェックは拒否され,サ. プ B(B1,B2,B3)に割当てられた実験参加. ンプルベースでのチェックをお願いされ,その. 者は,氏名の記入が求められる.さらに,実験. 要望を受入れる判断をする可能性とその理由の. 終了後に自分の判断とその根拠となる説明を実. 記述が求められる.ケース 2 では,棚卸資産管. 際のケース中の内部監査部門長の立場で実験者. 理プロセスについて,現場での実地棚卸に内部. に説明することが求められる可能性も告知され. 監査手続の一環として立会うつもりでいたが,. る.一方,アカウンタビリティなしのグループ. 監査先(S 社物流担当部長)から立会の参加を. A(A1,A2,A3)に割当てられた実験参加者. 拒まれる.そのような状況で,監査先からの拒. は,ケース資料 1 ページ目のインストラクショ. 否を受入れ,立会への参加を見送るかの可能性. ンにおいて,無記名であることを知らされ,実. 判断とその理由の記述が求められる.各ケース. 験終了後の実験者への説明は要求されないこと. における 7 段階のリッカートスケールによる判. も告知される.. 断と説明文の長さ (文字数)が従属変数である.. ケース資料の 2 ページ目には前提条件として. なお,回答の制限時間は 20 分とした .. 監査直前の内部監査部門長と経営者との会話が. 本実験の独立変数は,判断前に内部監査人に. 記されている.そこでは,経営者が甘い監査を. 課されるアカウンタビリティと,そのアカウン. 期待するグループ 2(A2,B2)に割当てられ. タビリティのある相手の内部監査への期待であ. た実験参加者には,経営者から甘い監査を期待. り,そ れ ぞ れ 2 水準(アカウンタビリティあ. されていることがわかる文が,経営者が厳しい. り,アカウンタビリティなし)と 3 水準(期待. 監査 を 期待 す る グ ループ 3(A3,B3)に 割当. 不明,甘い監査を期待,厳しい監査を期待)で. てられた実験参加者には,経営者から厳しい監. 操作される(いずれも被験者間 2x3)要因計画. 査を期待されていることがわかる文が,経営者. が採用されている.実験参加者は,無作為に以. の期待がわからないグループ 1(A1,B1)の. 下の A1,A2,A3,B1,B2,B3 の 6 グループ. 前提条件にそれぞれ加えられている.さらに,. に割当てられる(表 1 を参照) .. グループ B(B1,B2,B3)の実験参加者には,. ケース資料の 1 ページ目のインストラクショ. グループ A(A1,A2,A3)の実験参加者への. ンにおいて,アカウンタビリティありのグルー. 前提条件に,経営者から説明・報告が要求され. 24). . 24)パイロット・テストの制限時間を 20 分とし, 終了後のパイロット・テスト参加者 10 名へのイン タビューの結果,すべて 20 分で十分回答できたと のコメントを得たため,本実験の制限時間も 20 分 とした.. ていることがわかる以下の 2 文が加えられ,ア カウンタビリティが操作されている. 「どんな結果になるか非常に心配なので,今 回の監査は,現地での実地監査が終わって帰国.
(14) 42. (42). 横浜国際社会科学研究 第 20 巻第 1・2 号(2015 年 8 月). したらすぐに私に監査結果の詳細を報告するよ. 関するそれらの質問に,普段の経営者からの内. うに. 」. 部監査部門に対する期待や過去の業務経験,内. 「現地で何か疑問な点があれば,その都度,. 部監査実務の経験年数,監査関連資格の有無な. 直接,私にメールをくれ. 」. どの実験参加者自身の属性や職歴,経験に関す る質問も加えた.. ケース資料の 3,4 ページにはそれぞれ別の ケース(ケース 1 とケース 2)が記され,判断. 4―2 結 果. と説明のための回答欄が用意されている.そ. 4―2―1 操作チェック. こでも,経営者が甘い監査を期待するグルー. 回答記入後 の ア ン ケート 結果 を も と に 操作. プ 2(A2,B2)の 実験参加者 に は,経営者 か. チェックを行った.ケース内容の理解のレベル. ら甘い監査を期待されていることがわかる文. を聞いた質問(1.全く理解できなかった~ 6.. が,経営者が厳しい監査を期待するグループ 3. よく理解できた)では,平均値が両ケースとも. (A3,B3)の実験参加者には,経営者から厳し. に 5.5 となっており,実験参加者は,ケース内. い監査を期待されていることがわかる文が,グ. 容をよく理解した上で回答していると考えられ. ループ 1(A1,B1)に 提示 し た ケース に そ れ. る.また,ケース内容が現実的にどの程度ある. ぞれ加えられている.さらに, グループ B(B1,. か聞いた質問(1.全くない~ 6.よくある)では,. B2,B3)の実験参加者には,グループ A(A1,. 平均値がそれぞれ 4.3(ケース 1),4.1(ケース. A2,A3)の実験参加者へ提示したそれぞれの. 2)となっており,概ね,現実的なケース内容. ケースに,経営者から説明・報告を要求する以. と認識して回答していることがわかる.. 下の 1 文が加えられ,アカウンタビリティが操. 独立変数 の 1 つであるアカウンタビリティ. 作されている.. を 感 じ る 程度 を 聞 い た 質問(1.全 く 感 じ な かった~ 6.強く感じた)では,強いアカウン. 「この件に関しては,後で,君がどのような. タビリティを感じるように操作したグループ. 判断をしたか私に必ず報告・説明をするよう. B( B1,B2,B3)の 平 均 値 が 5.1(ケース 1) ,. に. 」. 4.9(ケース 2)に対してグループ A(A1,A2, A3)の平均値が 4.6(ケース 1) ,4.5(ケース 2). さ ら に,グ ループ B(B1,B2,B3)の 実験. と若干低かった.ケース 1,ケース 2 それぞれ. 参加者に提示された判断およびその説明を求め. 平均値の差は,統計的に 5% の有意水準であっ. る回答欄には,グループ A(A1,A2,A3)の. た.もう 1 つの独立変数であるアカウンタビリ. 実験参加者の回答欄に書いてある説明文に,経. ティのある相手(経営者)からの監査に対する. 営者から説明・報告を強く要求していることが. 期待について聞いた質問(1.監査先からのリ. わかる記述がそれぞれ加えられ,アカウンタビ. クエストを拒否すべき~ 6.監査先からのリク. リティが操作されている.. エストを受入れるべき)では,経営者の期待が. 4―1―3 回答記入後のアンケート. わからないよう操作したグループ 1(A1,B1). ケース資料の 5,6 ページの回答記入後のア. の平均値が両ケースともに 3.4,経営者が甘い. ンケートでは,実験参加者に対して,それぞれ. 監査を期待するよう操作したグループ 2(A2,. のケースの内容についての理解度と現実性,経. B2)の 平均値 は そ れ ぞ れ 4.4(ケース 1) ,4.6. 営者の発言から感じたアカウンタビリティの強. (ケース 2) ,経営者が厳しい監査を期待するよ. さの程度,経営者からの期待について 6 ポイン. う操作したグループ 3(A3,B3)の平均値はそ. ト・スケールでの回答を求めた.ケース内容に. れ ぞ れ 1.5(ケース 1) ,2.1(ケース 2)で あっ.
(15) アカウンタビリティが内部監査人の判断・意思決定に与える影響に関する実証研究(池田) (43). 43. 表 2 記述統計量・平均(標準偏差) パネル A:監査先要求受入れの可能性判断(7 ポイント・スケール) ケース 1 総平均 3.27(2.27) 経営者の期待 1.不明 2.甘い監査 A. アカウンタビリティなし 4.21(2.35) 4.94(2.24) B. アカウンタビリティあり 2.89(1.85) 4.61(2.25) ケース 2. 総平均 2.60(1.85) 1.不明 3.26(2.26) 2.05(0.91). A. アカウンタビリティなし B. アカウンタビリティあり パネル B:努力量(文字数) ケース 1. 総平均 82(36) 1.不明 66(20) 96(48). A. アカウンタビリティなし B. アカウンタビリティあり ケース 2. 総平均 71(31). A.アカウンタビリティなし B.アカウンタビリティあり. 1.不明 59(15) 79(21). 3.厳しい監査 1.67(0.97) 1.35(0.49). 経営者の期待 2.甘い監査 3.38(2.28) 3.39(2.21). 3.厳しい監査 1.78(1.06) 1.76(1.20). 経営者の期待 2.甘い監査 62(29) 96(25). 3.厳しい監査 71(30) 102(36). 経営者の期待 2.甘い監査 50(22) 78(40). 3.厳しい監査 66(29) 91(39). た. ケース 1, ケース 2 それぞれの平均値の差は,. 4―2―3 分散分析(ANOVA). 統計的に 1% の有意水準であった.なお,この. アカウンタビリティ(ACCTBLTY)と経営. 2 つの独立変数の操作について,期待した操作. 者 の 期待(EXPECT)が,監査先 か ら の 要求. と反対の回答をした実験参加者はいなかった.. を内部監査人が受入れる可能性判断およびその. 上記の分析結果から,2 つの独立変数は適切. 判断のための努力に対してどのような影響を与. に操作されたと考えられる.. え る か を,2 元配置分散分析(2x3)に よって. 4―2―2 記述統計量. 検証した結果が表 3 に示されている.. ケース 1,ケース 2 について,監査先からの. 監査先からの要求受入れの可能性判断. 要求を内部監査人が受入れる可能性判断とその. 表 3 の 分散分析(ANOVA)の パ ネ ル A を. 判断のための努力量(説明文の文字数) ,標準. みると,アカウンタビリティ(ACCTBLTY). 偏差が表 2 に示されている.. は,主効果としてケース 1 において 10% 水準. パネル A に示されているように,ケース 1,. で監査先からの要求を受入れる可能性判断に有. ケース 2 の監査先受入れの可能性判断の総平均. 意な影響を与えていることがわかる(p=0.070).. は,そ れ ぞ れ 3.27(標準偏差 2.27) ,2.60(標. 一方,ケース 2 においては,有意差は検出され. 準偏差 1.85)であり,ケース 2 の方が厳しい判. なかった(p=0.232).経営者の期待(EXPECT). 断をしていた.パネル B に示されている努力. については,両ケースにおいて有意な影響を. 量 の 総平均 は,ケース 1 は 82(標準偏差 36) ,. 与えていることがわかる(それぞれ,p<0.000,. ケース 2 は 71(標準偏差 31)であった.. p=0.001).アカウンタビリティ(ACCTBLTY) と経営者の期待(EXPECT)の交互作用は有意.
(16) 44. (44). 横浜国際社会科学研究 第 20 巻第 1・2 号(2015 年 8 月). 表 3 分散分析(ANOVA) パネル A:分散分析(監査先要求受入れの可能性判断) ケース 1 F値 ソース ACCTBLTY 3.345 EXPECT 27.766 ACCTBLTY x EXPECT 0.896. 有意確率 0.070 0.000 0.411. ケース 2 ソース ACCTBLTY EXPECT ACCTBLTY x EXPECT. F値 1.445 7.481 1.497. 有意確率 0.232 0.001 0.229. パネル B:分散分析(判断のための努力) ケース 1 ソース ACCTBLTY EXPECT ACCTBLTY x EXPECT. F値 24.865 0.474 0.018. 有意確率 0.000 0.624 0.982. ケース 2 ソース ACCTBLTY EXPECT ACCTBLTY x EXPECT. F値 18.903 2.139 0.218. 有意確率 0.000 0.123 0.804. 4.94 4.94 (2.24) (2.24). 4.21 (2.35). 1.67 (0.97). 4.61 (2.25). 2.89 (1.85). 1.35 (0.49). 図 2 監査先要求受入れの可能性判断-ケース 1 - 図2 監査先要求受入れの可能性判断-ケース1-.
(17) アカウンタビリティが内部監査人の判断・意思決定に与える影響に関する実証研究(池田) (45). 3.38. 3.39. (2.28). 3.26. (2.26). 1.78. (1.06). 45. (2.21). 2.05. (0.91). 1.76. (1.20). 図 3 監査先要求受入れの可能性判断-ケース 2 - 図3 監査先要求受入れの可能性判断-ケース2-. ではなかった(それぞれ,p=0.411,p=0.229) .. ウ ン タ ビ リ ティ(ACCTBLTY)あ り グ ルー. た だ し,経営者 の 期待(EXPECT)が 不明 な. プ(B1)の バ ラ ツ キ(そ れ ぞ れ,1.85,0.91). グループ 1(A1,B1)でケース 1,ケース 2 と. が,アカウンタビリティ(ACCTBLTY)なし. もに交互作用の傾向がみられるため(図 2,図. グループ(A1)のバラツキ(それぞれ,2.35,. 3 を 参照) ,単純主効果 の 検定 を 行った.そ の. 2.26)を有意(ケース 1 は 10% 水準)に下回っ. 結果,経営者 の 期待(EXPECT)が 不明 な グ. ていた(それぞれ,p=0.10,p<0.000).これは,. ル―プ 1(A1,B1)において,アカウンタビ. H1–b「判断前に見解のわからない相手にアカ. リティ(ACCTBLTY)ありグループ(B1)の. ウンタビリティが課された内部監査人の判断の. 平均(それぞれ,2.89,2.05)がアカウンタビ. バラツキは,判断前にアカウンタビリティが課. リ ティ( ACCTBLTY)な し グ ループ( A1). されない内部監査人の判断のバラツキよりも小. の平均(それぞれ,4.21,3.26)を有意に下回っ. さくなる.」を支持する結果である.. て い た(そ れ ぞ れ,p=0.030,p=0.034) .こ れ. 経 営 者 の 期 待( EXPECT)が わ かって い. は H1─a「判断前に見解がわからない相手にア. る グ ループ 2( A2,B2) お よ び グ ループ 3. カウンタビリティが課された内部監査人は,判. (A3,B3)においては,アカウンタビリティ. 断前にアカウンタビリティが課されない内部監. (ACCTBLTY)ありグループ(B2,B3)とア. 査人よりも保守的な判断をする. 」を支持して. カウンタビリティ(ACCTBLTY)なしグルー. いる.. プ(A2,A3)とでは,それぞれの経営者の期. 経営者 の 期待(EXPECT)が 不明 な グ ル―. 待のペアの平均(ケース 1 の A2(4.94)と B2. プ 1(A1,B1)でのバラツキの差では,Leven. ( 4.61),ケース 2 の A2( 3.38)と B2( 3.39)),. の 誤差分散 の 等質性検定 を 行った 結果,ア カ. ケース 1 の A3( 1.67)と B3( 1.35),ケース 2.
(18) 46. (46). 横浜国際社会科学研究 第 20 巻第 1・2 号(2015 年 8 月). の A3(1.78)と B3(1.76) )において有意な差. プ(B2)と経営者の期待不明なグル―プ(B1). は 検出 さ れ な かった.よって,H3–a「判断前. で は,有意差(ケース 2 は 10% 水準)が 検出. にアカウンタビリティが課された相手の見解を. さ れ(そ れ ぞ れ,p=0.017,p=0.063),経営者. 知っている内部監査人に,さらに強いアカウン. の期待不明なグループ(B1)と厳しい監査を. タビリティを課すと,アカウンタビリティがあ. 期待しているグループ(B3)とでは,ケース 2. る相手の見解を知っているだけの内部監査人の. に関しては有意差が検出さなかった(それぞれ,. 判断よりもその相手の見解に近い判断をする. 」. p=0.041,p>1.000).一方,甘 い 監査 を 期待 し. は棄却される.. ているグループ(B2)と厳しい監査を期待し. 次にアカウンタビリティ(ACCTBLTY)の. ているグル―プ(B3)では, アカウンタビリティ. グループに注目すると,アカウンタビリティな. なしのグループ A(A1,A2,A3)と同様に,. しのグループ A(A1,A2,A3)では,経営者. 強い有意差が検出された(それぞれ,p<0.000,. が甘い監査を期待しているグループ(A2)の. p=0.020).これは,H2「判断前にアカウンタ. 平均(そ れ ぞ れ,4.94,3.38) ,経営者 の 期待. ビリティが課された相手の見解を知っている内. (EXPECT)が 不明 な グ ル―プ(A1)の 平均. 部監査人は,判断前にアカウンタビリティが課. (それぞれ,4.21,3.26) ,経営者が厳しい監査. された相手の見解を知らない内部監査人に対し. を期待しているグループ(A3)の平均(それ. て相手が望む結果に近い判断をする.」を支持. ぞ れ,1.67,1.78)の 順番 で 監査先要求 の 受入. する結果である.これらの結果から,たとえ経. れ可能性判断が低くなっていた.単純主効果の. 営者からの具体的な指示がなかったとしても,. 検定の結果,甘い監査を期待しているグループ. アカウンタビリティが厳しい監査を経営者から. (A2)と経営者の期待が不明なグル―プ(A1). 依頼されている状況と同様の厳格な態度で内部. では,有意差は検出されなかった(それぞれ,. 監査を実施するモティベーションを内部監査人. p=0.741,p=1.000) .経営者 の 期待 が 不明 な グ. にもたらしているといえるのかもしれない.. ループ(A2)と厳しい監査を期待しているグ. 判断のための努力量(説明文の字数). ループ (A3)とでは,有意な差が検出された (そ. 表 3 の 分散分析(ANOVA)の パ ネ ル B を. れ ぞ れ,p<0.000,p=0.031) .ま た,甘 い 監査. みると,アカウンタビリティ(ACCTBLTY). を期待しているグループ(A2)と厳しい監査. は,ケース 1,ケース 2 ともに監査先の要求受. を期待しているグル―プ(A3)でも有意差が. 入れ可能性判断のために使われる努力に対して. 検出された(それぞれ,p<0.000,p=0.025) .. 有意な影響を与えていることがわかる(それ. 一方,アカウンタビリティありのグループ B. ぞ れ,p<0.000,p<0.000).一方,経営者 の 期. (B1,B2,B3)では,経営者が甘い監査を期待. 待(EXPECT)の影響に関しては,どちらの. しているグループ (B2)の平均(それぞれ,4.61,. ケースも有意差はみられなかった(それぞれ,. 3.39) ,経営者 の 期待 が 不明 な グ ル―プ(B1). p=0.624,p=0.123).また,アカウンタビリティ. の平均(それぞれ,2.89,2.05) ,経営者が厳し. (ACCTBLTY)と 経営者 の 期待(EXPECT). い監査を期待しているグループ (B3)の平均(そ. の 交互作用 も 有意 で は な かった(そ れ ぞ れ,. れぞれ,1.35,1.76)の順番で監査先要求の受. p=0.982,p=0.804). た だ し, 経 営 者 の 期 待. 入れ可能性判断が低かった.この順番は,アカ. (EXPECT)が不明なグループ 1(A1,B1)に. ウンタビリティなしのグループ A(A1,A2,. お い て,ケース 1,ケース 2 と も に 交互作用. A3)と一致している.ただし,単純主効果の. の 可能性 が 若干 み ら れ た た め(図 4,図 5 を. 検定の結果,アカウンタビリティなしのグルー. 参照),単純主効果の検定を行った.その結果. プとは逆に,甘い監査を期待しているグルー. は,全 て の 経営者 の 期待(EXPECT)に よ る.
(19) アカウンタビリティが内部監査人の判断・意思決定に与える影響に関する実証研究(池田) (47). 102 (36) 96 (48) 96 (25). 71 (30) 66 (20) 62 (29). -ケース1- 図図4 努力(文字数) 4 努力 ( 文字数 ) -ケース 1-. 91 (39) 79 (21) 78 (40) 66 (29) 59 (15) 50 (22). 図 図5 努力(文字数) 5 努力 ( 文字数 ) -ケース 2- -ケース2-. 47.
図
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