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機器分析と試料の前処理

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Academic year: 2021

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(1)機器分析と試料の前処理. 教育人間科学部自然環境講座    教授  中村 栄子  私の主な仕事は環境水や排水中の微量成分や汚濁成分の分析法の開発であり、カドミウ ム、水銀、砒素などの重金属イオン、窒素やリン、界面活性剤、シアン化物イオンなどを 対象とし、30年近くになる。ここでは、微量の重金属イオンを対象とした時に用いた分析 機器とその時のいくつかの出来事を述べる。.  古い話で恐縮であるが、排水中のカドミウムや水銀の定量法の検討を行ったのは、1970 年代の初めの頃である。研究室には島津のAA−610型やAA・610S型の原子吸光分析装置、日. 立の124型自記分光光度計や平間理化の6型分光光度計などが設置されていた。当時、カド ミウムの定量には原子吸光光度法も用いられていたが、排水管理を行っている事業所等で はジチゾン四塩化炭素抽出吸光光度法を用いている場合も多かった。ジチゾンはほとんど の重金属イオンと錯形成して赤紐色のキレートを生成するため、目的の重金属イオンだけ を定量するにはp且調節とマスキング剤の巧みな組み合わせが必要となる。しかし、これら. の条件を適切にしても多量に亜鉛が共存する試料中のカドミウムを定量する場合、正の誤 差を生じることが知られていた。この原因及び除去法を検討し、カドミウムをヨウ化物イ オンの錯体としてあらかじめMIBKに抽出、分離する方法を確立した。ジチゾン法では用い る試薬の精製が必要であり、酸性で水に不溶、アルカリ性で水に易溶のジチゾンの性質を 利用してこれを精製したことや他の試薬溶液をジチゾン四塩化炭素溶液で振り混ぜて含ま れる不純物を抽出して精製したことなどが懐かしく思い出される。その中でも特に思い出 されるのは、アンモニア水である。ある日、いつものように実験をしていたら、空試験を 行ったはずの四塩化炭素相が真っ赤になっている。使った水や試薬溶液をチェックしたと ころ、新しく購入してその日封をきって使ったアンモニア水に原因があることがわかった。. アンモニア水のふたのパッキンにはゴムが使用されており、そのゴムから多量の亜鉛が溶 け出していたのである。購入した同じロット番号の数本のアンモニア水はいずれも亜鉛で 汚染されていた。今では考えられない話である。試薬の汚染は水銀の分析法の検討でも経 験したことである。水銀は還元気化や加熱気化により原子化され、気化された水銀蒸気は エアーポンプにより原子吸光分析装置に設置された吸収セルに送られて中空陰極ランプか らの水銀の共鳴線を吸収する。原子吸光光度法の中でも最も高感度であるため、検討にあ たっては用いる水、試薬溶液及び環境雰囲気にも細心の注意を払った。そんな中で試料の 前処理に用いる過マンガン酸カリウムの特級試薬はもちろんのこと原子吸光用試薬にも水 銀が含まれていたことや同じ試薬瓶中でも場所によって水銀の含有量が異なっていたこと. 一2一.

(2) などが判明した時は本当に驚かされた。この精製法を検討し、過マンガン酸カリウム溶液 に硫酸マンガン溶液の少量を加えて二酸化マンガンを生成させ、これに水銀を吸着、除去 する方法を見い出した。二酸化マンガンや過マンガン酸カリウムが水銀をよく吸着するこ とに着目し、これらを用いた水銀捕集剤を考案した。ガラスビーズ表面をフッ酸処理する ことにより過マンガン酸カリウムをその表面に付着させることに成功し、これをガラス管 に詰めて作成した水銀捕集管はそれまでに報告されていた金ウール捕集管に比べ、大きな 流速でも水銀を完全に捕集できる利点を持ち、大気や環境水中のpptレベルの水銀の定量を 可能にした。又、過マンガン酸カリウムの担体にガラスではなくシリカゲルを用いると、. 捕出した水銀を脱着できないことから、これをガス洗浄ビンなどに詰めて気相中の水銀除 去剤として用いることも見出した。.  これらの検討で活躍した原子吸光分析装置のAA−610型とAA−610S型はほとんど同じ性能. のものであり、中空陰極ランプの電流値、位置合わせ、波長合わせ、アセチレンや空気の 圧力合わせ、流量合わせ、バーナーの高さ、フレームの点火などすべてマニュアルで操作 するもので、吸光度測定値はレコーダーに記録されてそのシグナルの高さから検量線を作 成し、濃度を算出した。その後、島津のAA−640−13型(GFA−2が付属)が1976年頃に、同AA−660. 型が1993年に、同AA−6600型が1998年に設置された。 AA−640−13型には自動点火、 D2補正. 機能、オートゼロ機能が、AA−660型にはさらに自己反転補正機能、測定条件や検量線デー. タのファイル機能が増設され、AA−6600型はすべてWindows制御となっている。これらの 機器はそれぞれの特徴を生かし、すべて現役で活躍している。AA−610S型は設置場所を学 生実験室に移し、学部三年生の分析の実験に使っている。すべてマニュアルで操作するた め、原子吸光法の原理を説明するのには最適である。AA−640−13型は環境水の金属イオンの 定量に、AA−660型は高純度水中の微量金属イオンの定量に、 AA−6600型は黒鉛藩法による 定量にとそれぞれの役目を果たしている。.  もちろん、最新の機器は演算機能や記録機能に優れ、試料を導入すれば、たちまち濃度 を算:出してくれる。しかし、フレーム原子吸光法ではフレームの状態は燃料及び助燃料の 流量比によるだけではなく、周囲の状況(フレーム周囲の風の動き)にも影響されるので、. 検量線のデータが記録されているからと、測定時に標準溶液をまったく導入せずに記録デ ータを用いた場合、値は算出されるものの正しい測定値とはいえないだろう。又、測定す る試料の前処理に用いる水や試薬類のチェックを軽んじていたら、先に述べた例にもみら れるように、これらに測定対象物が不純物として含まれている場合は、なにを測っている のかわからなくなる。.  かなり古いことから書き始めたが、機器を使用するにあたり、測定前の試料調製がきわ めて重要であることがこの稚拙な一文からわかっていただければ幸いである。. 一3一.

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