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巻頭言(立命館大学人文科学研究所紀要 111号)

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Academic year: 2021

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〈小特集〉ダークツーリズム研究の新地平

巻頭言

〈小特集〉ダークツーリズム研究の新地平

―ダークネスを射つ

Special Issue: New Horizon of Dark Tourism Studies:

Shooting the "Darkness"

本特集は、2015 年 11 月 8 日(日)、キャンパスプラザ京都・6 階・第 1 講 義室にて開催された、立命館大学人文科学研究所重点プロジェクト「グロー バル化とアジアの観光」主催ワークショップ「ダークツーリズム研究の新地 平―ダークネスを射つ」において交わされた議論を中心としたものであ る。 ある場所が多様な社会状況のもとで、何らかのポリティクスを通じて 「ダークネス」を帯びているのだとすれば、ダークツーリズムの場所を観光 する行為自体、すでに中立的ではないメッセージを帯びた媒体となっている のだと言える。 ダークツーリズムで観光されるものは、一体「誰にとってのダークネス」 なのか(ダークネスでないのか)? どのような状況のもと、地域の何を、いかにダークネスとする必要があっ た(なかった)のか? 地域のあるものをダークネスとする(ダークネスとしない)ことで、得ら れたもの(失われたもの)は何なのか? そもそもダークツーリズムとは、どのような社会的欲望に支えられた観光 なのか? これらのことを含め、〈ダークツーリズムとは何か?〉という問いを徹底 してクリティカルかつラディカルに問い直していく必要があろう。本特集

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2 立命館大学人文科学研究所紀要(111号) は、こうした問題意識をもって、ダークツーリズム研究の新地平をめざし編 纂された。 まず須藤論文では、人工的な「表象」と複雑性を抱えた「現実」が交錯す る「なまの現実」がテーマの体験型観光こそがダークツーリズムの特徴であ るとされる。このような「光」の表領域から「影」の裏領域へと侵入を試み る観光は、排除したはずの複雑性、多義性、他者性を社会のなかに再導入す ることによって、一方では日常に新しい視点と連帯をもたらす。また一方で は、観光を政策の全面に押し出す行政やコンサルタントや観光業者に先回り されることによって単なる「虚構」消費の一つ、あるいは政治的プロパガン ダへと回収され、「他者性」に向けた人々の主体的参与がスポイルされる可 能性を持つと、須藤は主張する。 木村論文では、産業遺産をめぐるフィールドワークにおける筆者の経験か ら、ダークツーリズムの実践の困難が論じられている。その際、木村は、ゲ ストがこうした「地域」のコンテクストを十分に理解し、ホストとともに作 り出す相互作用を十分に行うときにのみ、「持続可能な」ダークツーリズム が実現されるのだと主張する。 須永論文では「佂ヶ崎のまちスタディ・ツアー」の事例を、都市貧困と ツーリズムをめぐる諸研究の文脈に位置づけ、その可能性と現状について考 察が展開されている。このことを通じて、須永は、反貧困という社会変革の ための資源を生み出すツーリズムの可能性や、他者化に抗して<地続き>の 存在として佂ヶ崎を見る新たなまなざしが立ち現れてくる過程を明らかに する。 最後に佐々論文では、中国東北部において、韓国系の民族独立運動関連史 跡がどのような形で観光地化されているのかが考察されている。その際、 佐々は、特に青山里戦闘に関連する史跡や施設に焦点をあてて考察を展開し ている。

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3 〈小特集〉ダークツーリズム研究の新地平 以上の諸論稿を一つの契機に、「ダークツーリズム研究の新地平」につい て多種多様な議論や批判が様ざまな場所で活発に交わされるようになれば 幸いである。 2017年 3 月 遠藤英樹・藤巻正己(立命館大学文学部教授)

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