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口絵

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Academic year: 2021

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(1)

寒山詩

多少般数人

天生百尺樹

「寒山詩」は、中国唐代の僧・寒山が詠んだ詩。現在 300篇を越える詩が残されている。小十郎はこの詩 を好み、扇や壺に書き記していた。晩年になり、「寒 山詩」に共感した小十郎が、数多の詩の中から特に 好んだものを選び、書き記したものと思われる。自 分の人生を悔いるような「一為書剣客」や、有為の人 物が役に立てずに埋もれている社会状況を嘆く「天 生百尺樹」等は、小十郎の教育観と通じるものがあ る。(76p「教育者・中川小十郎と園芸の趣味」参照) 多少般数人 百計求名利 心貪覓栄華 經営図富貴 心未片時歇 奔突如烟氣 家眷寔團圓 一呼百諾至 不過七十年 冰消瓦解置 死了萬事休 誰人承後嗣 水浸泥弾丸 方知無意智 「多少般数人」は、名利ばかりを求めて奔走し、70 歳を待たずして死んでいく人間の儚さを詠んだ詩。 「誰人承後嗣」という一文は、ただ自己の栄華のみを 求めただけでは大業を成し遂げることはできず、自 分の後を継ぐものを育むことがいかに重要かを強調 している。小十郎にとっての「教育」というものを知 る上で興味深い漢詩である。 天生百尺樹  翦作長條木  可惜棟梁材  抛之在幽谷  年多心尚勁  日久皮漸禿  識者取將来  猶堪挂馬屋  「天生百尺樹」は、多くの有望なる人物が社会の役に立 てずに「幽谷に在」るような状況を嘆いた詩である。こ のような埋もれた人材を掘り出すことが識者の使命で あり、小十郎の、自分自身がこの役割を果たしてきた という自覚の表れではないかと想像される。教育者と しての小十郎が、園芸を趣味にしていたこととも関連 して、本詩を壺に記して置いていたのではないかと考 えられよう。

2 花瓶(寒山詩「天生百尺樹」)

井野祝峰氏寄贈

1 瓶(寒山詩「多少般数人」)

(2)

一為書劒客二遇 聖明君東守文 不賞西征武不勲 學文兼学武學 武兼文今日 既老矣餘生 不足云  「一為書剣客」は、「不遇」のままに年月 を過ごし、年老いていくことを嘆いた 詩である。花瓶と扇の二点が残存して いることから、小十郎がこの詩を甚く 気に入っていた様子が想像される。ま た、本詩は小十郎自身の人生観と共通 性の多いものであり、彼はこの詩に自 分の人生を投影させていたのであろう。 このように、小十郎の趣味からは、彼 の人生観や社会への思いを読み取るこ とができる。小十郎の趣味である漢詩 は、彼の人物像を読み取っていく上で 欠かせない貴重な史料である。

一為書剣客

―祝峰窯と小十郎―

2015年、ひとつの花瓶が立命館 史資料センターに収蔵さ れる(図録番号3)。付属の桐箱に「中川小十郎先生筆 花瓶 平 安祝峰作」の由緒書きがあり、花瓶に記された漢詩の末尾に 「中川小十郎(花押)」とあったため、創立者 中川小十郎の史 料としてむかえられたのである。 当初は、これがいったい何であるか判然としなかったが、 作陶元である京都・東山の井野祝峰氏への聞き取りで、いく つかのことが明らかになった。花瓶に記された「昭和十三年」 は先代祝峰の時期にあたるが、京都の名士との交流があった ことから、中川とのつながりもそういったものではないかと お話いただいた。 残念ながら、その関係を明らかにする直接的な史料は残存 していないが、祝峰氏の手元に残っていた陶器の中に、花瓶3 にきわめてよく類似したもの(図録番号2)が発見されたこと は大きな成果であった。こちらは記名がなく花押のみとなっ ているが、白磁に藍で寒山詩をしたためているという構成は ぴたりと一致している。 なお、祝峰氏によると、花瓶3の筆致が花瓶2に比べ整って いることから、花瓶2は試作の段階で花瓶3は贈答用などの完 成品である可能性が高いようである。現在、花瓶2は祝峰氏 から寄贈され立命館 史資料センターに収蔵されている。 発見はこれだけにとどまらない。2016年には新設された 平井嘉一郎図書館 貴重書庫に収蔵されている瓶1、藍色の粉 末が付着した乳鉢(祝峰の印あり)も「発見」され、いずれも祝 峰のものであることが判明する。こうして作陶 祝峰窯、揮 毫 中川の陶器が多く発見されるにいたって、一遍通りでは ない中川と京都産業界との関係がより現実的になってきた。 また、乳鉢には「大正八年」の記述があり、祝峰窯との関係 も比較的長いスパンで見ることが可能かもしれない。なお、 中川は1916(大正5)年に京都市長第一候補者に選出されてお り、このころには京都の政財界ともつながりがあったことが 窺われるので、今後、新たな発見が期待される。 (眞杉 侑里)

3 花瓶(寒山詩「一為書剣客」)

4 軸(寒山詩「一為書剣客」)

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