河川敷内の植生および流木が
河川構造物(橋梁)に与える影響について
(昭和60年8月31日受理) 竹内邦良 坂本康 荻原能男Potential Effects of Riverside Vegetation
and Driftwoods on River Structures
KuniyoshiTAKEUCHI YasushiSAKAMOTO YoshioOGIHARAAbstruct Potential effects of riverside vegetation and driftwoods on structures in a river such as bridges and bank linings during a flood were investigated through laboratory experiments and field observation study in the Fuji River basin. Amodel of a river with piers of 1/50 scale was examined in our laboratory using chopsticks as model driftwoods. Experiments of closing phenomena between piers by driftwoods were conducted under various flow and driftwood conditions. It was found that closur6 between piers was related to water velocity, pier span and size distribution and drifting rate of woods. The origins of driftwoods and their potential effects were investigated in various sections and tributaries of the Fuji River. It was concluded that most of driftwoods were produced by landslides in upper streams.
1.はじめに
従来河川は,洪水をできるだけ早く下流に流すため の排水路という考え方が強く,そのため,河川敷内の 樹木等は河川の通水能を損なうものとして取り除かれ ることが多かった。しかし,かつては河川周辺の植生 を水害防備林として保全する考え方もありり,また近 年では,住環境整備への関心の高まりとともに河川に 親水機能をもたせ,公園として活用しようという考え 方も強くなってきた。それに応じて河川敷内の樹木等 を利用するための適切な植栽方法について,設計指針 をつくる必要もでてきた2)。しかし,設計の基礎となる 河川敷内の樹木等の河川工学上の意義については未だ 十分な検討がなされていない。 河川敷内の植生が河川管理上の問題となる場合とし ては,自生している状態で河川の通水能を損なう場合 ホ環境整備工学科,Department of Environmental Engineering ** y木工学科,Department of Civil Engineering と流脱した樹木が堤防・橋梁等の河川構造物に被害を 与える場合が考えられる。本論文では,後者の影響の うち流木による橋脚間閉塞の問題を室内実験により検 討し,また実際の河川での流木の発生原因と被害の可 能性を現地調査にもとついて考察するものである。 2.流木による橋脚間の閉塞に関する実験的検討 流脱した樹木が堤防・橋梁等の河川構造物に被害を 与える場合としてもっとも可能性があるのは,流木が 橋脚間に堆積して河積をせばめ,局所的に強い流れを 生じる場合である。本研究では,まずこのような現象 について実験的に検討した。なお流木が次々と橋脚に 引掛かり,それが累積して大きな流木塊を構成する現 象および構成されたものを適切に表現する用語が見当 たらないため,本論文では仮にそれらを「堆積」と表 現することにした。 2.1 実験方法 実験は,図一1に示すように本学土木工学科の実験開 水路(長さ9m90 cm,幅60.O cm,こう配1/185)に橋模型流木 模型橋脚 投入点 3.5cm .巳 一且 回収用 スクリーン 幅60cm,勾配1/185,水深4.5,7.1cm 図一1実験条件 表一1実験に使用した流木モデル 分 類 大 中 小 材 料 割りばし マッチ棒 麻ひも 平均長さ(cm) 10.15 4.4 2.0 平均断面(cm×cm) 0.40×0.50 0.22×0.22 平均体積(㎡) 2.03 0,213 標準混合比(9) 60 30 10 比重(注)(9/c㎡) 0.9前後 0.9前後 (注)湿潤状態での値 脚の模型を置き,模型流木を流して行なった。このと き水理学的条件は,長崎水害(昭和57年7月23日)3) で被災した蛎道橋(3径間,2橋脚)と村松橋(5径間, 4橋脚)を想定して決定した。模型は1/50の幾何学的 相似とした。模型橋脚としては直径3.5cmの塩化ビニ ールの表面にやすりで適当な粗度をつけたものを用い た。流量はフルードの相似則を用い,Fr=0.24(実験水 路での流量4.31/s,平均流速16cm/sに相当),とFr= 0.33(実験水路での流量121/s,平均流速28cm/sに相 当)の2種類の流れを基本とした。また流木の模型に は,現地の河川敷内残留流木の組成を参考にして,表 一1の割りばし・マッチ棒・麻ひもを単独に,あるいは 混合して用いた。これらはそれぞれ大流木,中流木, 小流木,およびこれらの混合体の模型である。 2.2流木の単独流下のパターン 橋脚間の流木による閉塞は,流木の橋脚への衝突と 引掛りから始まる。本研究でも,まずこの点から検討 した。 図一2に示すように円形断面の橋脚模型に向かって 中流木の模型であるマッチ棒を単独で流下させた場合 の橋脚周辺の流木の挙動は図一3に示すような(a)∼(d) の4パターンに分類される。この実験を流木の状態と 流速を変えて行った結果,図一3の(a)∼(d)の流下パタ ーンの出現率は表一2のようになった。すなわち,乾燥 した流木は橋脚に引掛からないが,水を含んでみかけ の比重が0.9程度になると,20∼27%も橋脚に引掛っ てしまう。この現象は模型規模に特有な表面張力の影 響によるとも考えられ,そのまま実際にあてはめるわ けにはいかないが,実際の流木でも水分量のような流 マソチ棒 橋脚モデル
{L…o
−→
橋脚モデル (楕円形) 一一一ュ:=):i・mm
65mm 図一2 橋脚模型 (a)流木は橋脚に全く接触しないで 滑って流下する場合 (b) 橋脚に接触するが,その側面を 流下する場合イう→
(c) 橋脚の先端に正面衝突してはね かえり,流下する場合 (d) 橋脚先端に止められる場合 図一3 流木の橋脚への接触と捕捉の状況 木の性質が堆積の開始に影響することは十分考えられ る。また,当然のことながら流速の小さい方が橋脚に 掛る割合が大きいため,橋脚の形による流れへの抵抗 の程度がこの割合に影響する。同様な実験を足立昭平, 大同淳之両氏4)が図一2に示す形状の橋脚モデルで行っ たときの結果を表一3に示す。足立らの実験での流木の 水分状態は報告されていないが,仮に水を含んだ状態 と考えて表一2,3を比べると,円形状橋脚のほうが橋脚 の上流側に流木が止められる(d)の割合がいくぶん大表一2 円形橋脚での流木流下状況 割 合 (%) 平均流速 モ香^sec (流木の状態) 苡d9/㎝・ (a) (b) (c) (d) 27.0 (十分水を含んだもの) @ 0.9前後 42.5 36.5 1.0 20.0 27.0 (十分乾いたもの) @ 0,4前後 92 8 0 0 23.3 (十分水を含んだもの) @ 0.9前後 41 33 0 26 23.3 (十分乾いたもの) @ 0.4前後 96 4 0 0 23.3 @} (十分乾いたものの表面を水でハらして、水になじませたもの) @ 0.4前後 74 22 0 4 表一3 尖頭楕円形橋脚での流木流下状況 割 合 (%〉
平均流速
@cm/sec (a) (b) (c) (d) 33.4 18.8 30.8 42.8 7.6 20.0 16.2 34.4 36.4 13.0 きいといえる。また,円形状橋脚では橋脚に全く接触 しない(a)が多いのに対し,足立らの形状の橋脚では接 触してから流木する(b),(c)が多いこともわかる。流木 の堆積には堆積開始のきっかけとなる(d)の状態と堆 積の成長を促す(b),(c)のような接触がともに必要であ るため,どちらが堆積しやすいかは一概にはいえない。 以上のように,橋脚の形状は流木堆積の開始と成長に 微妙に影響すると考えられる。 2.3 橋脚における流木堆積の実験 次に,実際のように橋脚が水路を横切って何本か並 んでいる場合の流木堆積について検討した。 橋脚モデルを水路に固定して流木ミックス(3種類 の模型流木を混合したもの)を一定の量で投入し,流 下状況や堰止められる様子を観察し,橋脚間を通過し たものをスクリーンで回収し,回収率を計算した。ま た,流木の堆積の進行による水面の変化,橋脚付近の 流速の変化を測定し,堰止められる様子や堰止められ たための影響も観察した。 (1)流木ミックスの流下状況及び堆積状況 実験により観察された流木堆積の様子は次のようで あった。まず流木は投入時のランダムな方向のままで 流下していく。この流木の1本が橋脚前面に止り堆積 が始まる。この状態は一時的な滞留であることも少な くないが,異なった種類の流木がからんだり,2本,3 本と堰止められるとはずれにくくなる。堆積は異なっ た種類がからみあって成長していく。堆積は最初に各 橋脚の上流側の水面付近にできるが,徐々に径間を結 ぶ横方向と橋脚上流側の水中下方へと成長していく。 径間が十分にない場合には,横方向の成長は径間の水 面を完全に閉塞し,さらに径間水中下方へと閉塞を進 める。 ② 流木の堆積量による水面落差 流木が橋脚に堆積すると,堆積量によって橋脚前後 の水面に図一4のように落差が生じる。この流木による 不完全閉塞時の堰止げ高△hを流木閉塞が流れに与え る影響の指標として考え,橋脚下流側の平均流速u。を 使って次式で整理し,検討した。 2 △h−K・」 (1)
ここに,Kは流木堆積の状態をあらわす係数とする。 係tw Kと流木の堆積重量Wの関係を実験値を用い て両対数グラフ上にプロットすると図一5のようにな る。図一5よりW>10g以上ではKα」,vmci)関係があ ることがわかる。ここでmは堆積重量がKに及ぼす 影響を示す係数である。図のように係数勿の値は0.4 ∼0.5程度で流量にあまり影響をうけなく,流木閉塞が 流れに与える影響を考える基礎となりうる。またKの 値は下流での平均流速u。が小さいほど大きくなる。こ の違いは,△hに含まれるべき上下流の流速変化を考 慮せず,下流の平均流速のみで(1)式のように整理した ことの影響と解釈できる。 100 50 × 10 6 4 2 1 橋脚模型 ● △九 @ 3ィ・・
図一4 水面落差 13−16 27−33 cm/s cm/S 材料 口 ■ Mix(80,10,10) o ● Mix(60,30,10) ▲ ▲ Mix(40,50,10) x 〕貿 大のみ + →ト Mix(60,10,0) o。早x食+ o ■ ♂ム◆ 口 十 ● o xE ● ●●●▲ ■ ◇ ● 十 ▲ ▲ ・ ∀ ■ ザ‘2 4610 20 40601002004006001000
w(9) 図一5 堆積重量Wと係数Kの関係(1)測定地点(外側の番号は地点番号) 橋脚模型の直径は3.5cm 上i荒
12345
下流 2cm 表一4 流木の堰止め率 00 10 20 30 40㍊Q↓i↓今霧ト・
60cm−S−−r
水路幅 (2)閉塞の起こる前 上流 1 2 3 4 5 00‘ 10 20 30 40 下流 34 19 36 15 30 40 25 39 16 40 43 (:) 52 0 40 53 13 41 10 26 49 21 51 16 52 (3)閉塞の起こった後 上流 1 2 3 4 5 斜線部は 00 10 堆積した 20 模型流木 30 40 下砲 単位はcm/sec.φ5mmのプロペラ流速計で測定. 流量1130cm3/sec.大:中=60:30.橋脚数4. 図一6 流木堆積前後の水路内流速分布 30 24 17 17 15 76 W2 14 P5 12941 13 P3 43 R1 R2 (3)流木堆積による流速分布の変化 流木による閉塞前後の流速分布の相違の一例を図一6 に示す。図中の流速は,水路床より高さ1cmの位置で 直径5mmのプロペラ流速計で測定した値である。流 木が堆積し閉塞状態になると,流木堆積の薄い河床付 近に水流が流れ込み,ここでの流速が局所的に大きく なる。このようなとき,橋脚基底部での洗堀が促進さ れ,橋脚の異常洗掘,倒壊が起こると考えられる。図 一6では閉塞の少ない側方壁面近くで流速が大きくな ることもわかる。このように,閉塞時に側方壁面近く で異常に大きな流速が生じることは,護岸の点から重 要なことと考えられる。 (4)橋脚に詰まる流木量に影響を与える因子 橋脚上流側に堆積する流木の割合を示す量として堰 止め率cを次式で定義する。堰止め・$・c一欝器影 (2)
このとき橋脚径間長,流速,流木の混合状態による堰 止め率の変化は表一4のようになる。すなわち,(a)径間 長が短いと詰まりやすい,(b)平均流速が小さいと詰ま りやすい,(c)単独種類の投入よりもミックス投入の方 が詰まりやすく,この傾向は大流木の堆積に顕著に現 われる。これらのうち流木の性状に起因する(c)が重要 であるため,次項でさらに検討する。 (5)ミックス投入の際,橋脚に引掛る大きな流木の 橋脚の本数 流 量 流木の種類 せき止め率(%1 大のみ 0.6 大 ャ量12,000c〆sec ス均流速26cm/secMIX
大中小 2 i径間長大) 小 大のみ 2 ャ量4,400c㎡/sec ス均流速 @ 15.5cm/secMIX
大中小 14 S 11 P8 大のみ 3 大 ャ量12,200c㎡/sec ス均流速28cm/secMIX
大中小 64 6 P5 4 i径間長小) 大のみ 22 小 ャ量4,400c㎡/sec ス均流速16cm/secMIX
大中小 65 R8 55 S7 (注) 大中小の混合割合は標準混合の60:30:10である. 大:割りばし,中:マッチ棒,小:麻ひも. 割合 大・中・小の各模型流木である割ばし,マッチ棒, 麻ひもの混合重量比を60:30:10,40:50:10,80: 10:10の3種類に変えて実験した結果,橋脚に詰った 割ばし,大流木の重量wと橋脚に詰まった全模型流木 の重量Wとの関係は図一7,図一8,図一9に示すように なった。すなわち,橋脚に詰まった流木ミックスの混 合状態は,平均流速,径間長に関係なく,投入時のミ ックスの混合比に主に支配されるが,ミックスの総重 量に対する大流木の割合は,投入時よりも詰まったと きの方が一般に大きい。つまり,閉塞の主体はあくま で大きな流木であり,小さい流木,草はこれを補強す るものとして働くと考えられる。 (6)経過時間と堆積量の関係 橋脚上流側に堆積した流木重量Wと流木投入時か らの経過時間tの間に次の微分方程式が成り立つと仮 定した。dW
=kwn (3)dt
ここに,k, nは流木の詰まりやすさ,堆積の成長のし やすさを表わす係数である。 このとき,n≠1なら lnt −+a (4)lnW=
1−n _ln{fe(1−n)} (5) a− 1−n となる。この仮定に基づき実験結果を両対数グラフ上㊥150 ,、& 蟹i・・ 已 ㌣5。 雛 置 堅 0 投入材料大,中,・J・(60:30:10) @●平均流速15cm/secスパン5 @△平均流速28cm/secスパン5 @口平均流速15cm/secスパン3 ‘ ・一e一・7・ ‘ 50 100 150 200 橋脚に詰まった総重量W(g) 図一7 橋脚に捕捉された流木ミックスの総量Wと大 の量wの関係(1) ㊥70 ;・・ 響・・ 已・・ ㌣3・ 霊20 巴 室10 鯉 投入材料大,中,小(40:50:10)●平均流速16cm/secスパン5 「平均流速28cm/secスパン5 黒ス均流速16cm/secスパン3 ‘ ・一e一・・48 0 図一8 ③ §
e200
已 L oM100
褥 量 鯉 50 100 150 200 橋脚に詰まった総重量W(g) 橋脚に捕捉された流木ミックスの総量Wと大 の量wの関係(2) 投入材料大,中,小(80110;10) 恤ス均流速16cm/secスパン5 「平均流速28cm/secスパン5 黒ス均流速16cm/secスパン3 ▲ ・一e一・田 0 図一9 50 100 150 200 橋脚に詰った総重量W(g) 橋脚に捕捉された流木ミックスの総量Wと大 の量wの関係(3) にプロットすると図一10のようになる。グラフの直線 の傾きは1/(1−n)に相当するので,傾きが大きいほどn は大きく,堆積量は増加しやすい。したがって,図一10 からは,傾きの大きい「大」・「中」の組み合わせのほ うが「大」・「小」の組み合わせよりも堆積量は増加し やすいことがわかる。また,「小」の影響は少ないと仮 100 ③50
蜘 o霊lo
巾1口 5 ● ● 流速 Mix ● 口 15cm/sec大,小 (60:10) △ 15cm/sec大,中 (60:30) ● 28cm/sec大,中,小 (60:30110) スパン5 1 5 10 20 経過時間t (分) 図一10橋脚に捕捉された流木ミックスの総量Wと 経過時間tの関係 定して15cm/sec「大」・「中」と28 cm/sec「大」・ 「中」・「小」を比べると,nは流速にあまり影響されな いともみえる。したがって,流木組成の与える影響を, 流速にかかわらずnの大きさで評価することも考え られる。 (7)橋脚閉塞後の流量変動による閉塞状況の変化 実際は実験条件と違って流量は時間によって変動す る。そこで次に,この流量変動により閉塞状況がどう 変化するか検討した。 完全に流木により閉塞された状態で流量を増したり 減らしたりして実験を続け堆積量がどう変化するか観 察したが,流量増加・減少いずれの変化に対しても堆 積していた流木量は変化しなかった。実際の橋脚でも 同様に,いったん橋脚に堆積した流木は自然にははず れず,人為的に除去する必要があると考えられる。 3.流木の発生原因と堆積特性に関する現地調査 2.の実験の結果,流木による橋脚間の閉塞と流速・ 径間長・流木量の関係を明らかにすることはできた。 そして,閉塞が起こるのはかなりの量の流木がかたま って,しかもある程度遅い流速で流れ,かつ径間長が 流木長に比して大きくない場合であることがわかっ た。しかし,閉塞がおこるような状態を人為的に作っ て実験を行なうだけでは,その状態が現実に頻繁に起 こる状態かどうかはわからない。この点を検討するた めには,実際に洪水時に流木の流下状況を知る必要が ある。しかし,洪水時の資料としては一部の河川につ いて流量の資料があるくらいで流木については資料が恥“ 流木構成比 ⑧ 調査地点 図一11調査地点 広瀬ダムΦ 2)④ なく,調査報告等の文献からその影響を推定すること はできなかった。 そこで,現実の流木の影響を評価するための手はじ めとして,洪水後の河川敷内の状況を観察し,その結 果を室内の流木実験による知見を参考にして検討,整 理することとした。ここでは,流木がどこからどのよ うに供給されるか,また流木が河川構造物に被害を与 える状況はどの程度現実にみられるかを,河川敷内に 取り残された流木等の観察により考察した。対象とし たのは図一11に示した富士川水系相川,笛吹川,釜無 川,早川および河口湖への流入河川である。検討は 1983年の台風5・6号による洪水直後の約90地点を対 象としたが,以下にはその一部のみを写真とともに紹 介する。 3.1流木の構成について まず,検討の対象となる流木について知るために, 河川敷内のその残存量と構成を次の4河川で調査し た。 相 川……甲府市上積翠寺町から同市宝2丁目合流 点まで 釜無川……韮崎市穴山橋から笛吹川合流点まで 笛吹川……三富村広瀬ダムから釜無川合流点まで 早 川……早川町万年橋から富士川合流点まで これらの調査の結果,流木構成は上流から下流に至る に従って例えば,表一5,表一6に示すような変化のある ことが認められた。すなわち,流木構成からみて上流 では大きな流木が,下流では小さな流木が多く含まれ ているが,最長流木は下流で見つけられた。ところで, 表一5 上流とF流での流木の構成比の違い 流木の太さの分類 上 流 下 流 大(φ23.3cm以上) ?iφ9,5∼223cm) ャ(φ3.2∼9.5cm) 9本(21%) R0本(70%) S本(9%) 8本(5%) S7本(26%) P23本(69%) 計 43本(100%) 178本(100%) (10m×10mの区域内に存在する本数) 表一6 上流と下流での最長・最大の流木の違い 上 流 下 流 最 長 ナ 太 φ 2m45cm R6.3cm 6m63cm Q4.8cm (注)上流:笛吹川上流広瀬ダム付近 下流:笛吹川中流鵜飼橋付近 上流の河川敷は下流の河川敷よりも狭く樹木が少ない し,もし河川敷内の樹木が河川流の力で脱木しても水 と一緒に流れてしまいやすい。このような条件で表一5 のように下流と同程度の流木が残留していることは, 河川敷よりも勾配が急で樹木の多い斜面から流木が供 給されることを示唆していると考えられる。このよう に,残存流木の量からみて,流木の主な供給源が河川 敷内の樹木であるとは考えにくい。 3.2 流木の供給について 流木の供給源となる可能性のあるものとして,まず 河川敷内に生育する雑草,樹木を釜無川の穴山橋一三郡 橋間で調査した。開国橋より下流(河床こう配i〈1/ 200)では約4mほどの樹高の雑木数本が群生する箇 所が数十米間隔にみられ,雑草が繁茂し堤防付近の上 砂流出を防いでおり,上流(河床こう配i>1/200)で は,河床に石礫が多く,水際より10mほど堤防側に樹 高約2mの雑木が生えていて水制のように機能して 河床洗堀防止,流水抵抗に役立つように見られた。河 口湖西川においても,同時期に同様な調査を実施して, 土砂流出防止,流水エネルギーの減勢などの効果を確 認できた。 このように,平常時の河川敷内の植生を見た限りで は,河川敷内の樹木が流木となって被害を及ぼすこと は考えにくい。以下写真を用いて,河川敷内だけでは なく河川周辺も含めて,さらに植生の影響を検討する。 小河川である相川下積翠寺あたり(写真一1),笛吹川 広瀬ダム付近(写真一2)では橋脚・岩に捕捉されたり 流速の遅い部分に取り残された流木がみられた。また, 河川敷内の樹木により止められた流木(写真一3)もみ られた。しかし,河川敷内の樹木が流脱した,あるい はしかかった状態は確認できなかった。流木がみられ たところより上流では斜面の崩壊部の方が顕著であり
写真一1相川下積翠寺 写真一2笛吹川広瀬ダム上流部 写真一3 笛吹川三富村牧丘付近 (写真一4),これにより流木が供給されたと考えられ る。このように上流部での流木の問題は,斜面崩壊, 山腹崩壊の問題といえよう。したがってこの対策のた めには,斜面崩壊の防止,崩壊後の流下物を砂防ダム でせき止めることなど,治山的対策が必要であろう。 笛吹川八幡橋(写真一5),鵜飼橋(写真一6)では橋脚 およびその下流側の流速の遅いところに流木がとり残 写真一4広瀬ダム付近の崩壊部 写真一5笛吹川八幡橋
離難難撫轟鞭輯撫難彗舞灘
写真一6笛吹川鵜飼橋 されていた。ただし径間が長く流量が大きいためか径 間をせばめるほどの量ではなかった。室内実験の結果 によると,一度捕捉された流木が流量の減少によって 再び流れることは少ない。したがって,洪水時にこれ より多量の流木があったとは考えにくく,このような 川幅,流量,橋脚構造であれば流木による閉塞は少な いといえる。またこのあたりの流木には人為的に伐採写真一7 釜無川・笛吹川合流点付近 写真一9 金川中原橋 写真一8釜無川鏡中条橋下流 されたと思われるものもみられた。 笛吹川と釜無川との合流点より下流(写真一7)では 橋脚等に捕捉された流木は笛吹川ほどみられなかっ た。合流点より下流では流木密度も小さいこと,流木 が捕捉されるようなゆるやかな流れの状態ではなかっ たことが原因として考えられる。ここでは,そのかわ りテトラポッド,水制に草が捕捉されていた。 釜無川河川敷内で立木が流脱しかかっているものが 一例(写真一8)見いだされた。これは根本に流木が大 量にたまり,根本の土砂が流されて傾いている例であ る。この場合,地盤が弱かったこと,単独にはえてい る木であったこと,流速の遅い部分であったことも影 響していると考えられる。 以上みてきたように,流木の供給は主に上流部の斜 面土砂崩壊,あるいは人為的な伐採材によると考えら れる。河川敷内の樹木の流脱も考えられるが,みたと ころではむしろ流木をせきとめる効果をもつ場合が多 い印象をうけた。また河川敷内の植生には水制効果も ある。 3.3河川構造物への影響について 写真一10 河口湖畔 次に,台風による河川災害地を,主として橋梁の被 災地域を中心に調査した。 流木の影響とも考えられる被害例として,石和町の 金川にかかる中原橋(写真一9)があった。ここでは河 岸に近い橋脚に流木が大量に詰まり,橋脚底部の上流 側が浮き上がっていた。これは室内実験で確認したよ うな閉塞に伴って発生した局所流も一因となったと考 えられる。中原橋は,全体をみれば川幅もあり流木が 閉塞しにくそうにもみえる。しかし,河岸に近いとこ ろでは,流木量が多く流速が遅くなっていたとも考え られる。室内実験では矩形断面水路を用いていたが, その場合でも河岸近くは閉塞による流速変化をうけや すかった。このように,河川敷内の植生の影響を考え るときにも,局部的な流れ方に十分留意する必要があ ろう。 河口湖畔浅川地区では河川流入部の湖岸近く(写真 一10)に取り残された流木が多い。ここでは洪水時には 水があふれ,どこが川かわからない状態になったとい う。この河口湖畔ではいくつか斜面崩壊部がみられた。 それにより供給された流木が土砂とともに勾配のゆる
写真一11早川春木川橋 やかになったこの部分に堆積し,被害を招いたと考え られる。 早川の春木川橋(写真一11)では橋脚の上流側の高い 位置が削られていた。位置からみて流木の衝突の影響 も考えられるが,主として土砂を含んだ流れによるも のと思われる。 被害にあった橋梁をみてみると,一般に,急流小河 川にあったこと以外に,経済的重要性が少なく,橋脚 の設計,管理にそれほど留意されなかった橋梁であっ たことが原因と考えられる。重要な橋梁では設計にお いても水の抵抗の少ない橋脚形が採用されており,そ のような橋脚形では流木もひっかかりにくく被害をお よぼすことが少ないと考えられる。 4. ま と め 本研究では,河川敷内の植生及び流木が河川構造物 に与える影響を考えるために,まず流木による橋脚間 閉塞を模型実験により検討した。それによると,堆積 は各橋脚の上流側の水面付近から始まり径間を結ぶ横 方向と橋脚上流側の水中下方へと徐々に成長してい く。このとき径間が十分長くないと,横方向の成長は径 間の水面を完全に閉塞し,さらに径間水中下方へと閉 塞を進める。そして,このような閉塞が起こるために は,径間が短く,流速が小さく,かつ流木が適当な割 合で混合した状態で流れてくることが必要であった。 また,閉塞の主体はあくまで大きな流木であり,小さ い流木,草はこれを補強するものとして働くと考えら れた。 次に,このような流木流下状況が実際におこりうる ものか,そのとき河川敷内植生が流木の供給源になり うるものかを実際の河川の観察から考察した。それに よると本研究で実施した富士川流域での踏査に限った 結果からは,室内実験で検討したような流木流下状況 および閉塞は実際には起こる可能性が少ないし,また 流木の供給源も崩壊斜面が主であるとの結論が得られ た。 以上のことから,河川敷内の木の流脱により生じた 流木が流路の閉塞という形で中・下流部へ被害を与え ることは少なく,流木が被害を与えるとしても,それ は流木が土砂と一体となって河積を減少させたり,橋 脚・堤防等への衝突で被害を与える場合であるといえ る。このようなことが防げるならば,河川敷から植生 をことさら除去する必要はなく,植生を生かした河川 空間造りが可能である。したがって,住環境整備への 要求の強い中下流部では,これらの治水上の障害を生 じないよう考慮した適正な植栽方法で,河川空間を活 用することも検討しなければならない。たとえば,河 川敷内の適切な植栽方法としては,河道内植栽は高水 敷内に限ること,高木(1m以上)の植栽は洪水時の流 速が十分小さい水裏部であること,堤防法尻・低水路 法尻から十分な距離をとること,高木・低木とも耐潤 性・耐風性樹木をもちいることなどが基本となるであ ろうが2),さらに植栽領域を拡大し,洪水時の流速が無 視できない部分にまで緑化をおよぼすためには,河川 の通水能にあたえる影響をも検討した上で,植生と水 制を組み合わせるなどの流脱防止工法,護岸としての 機能を果たせる形態など,新しい工法の開発を検討し ていく必要があろう。 5. あとがき 本研究は著者らの指導の下に,本学環境整備工学科 在学中の小沢伸行・柏木明彦・三田智の三名が,昭和 58年度卒業研究として行なった調査,実験を整理発展 させたものである。 また,本研究には文部省科学研究費補助金,昭和58, 59年度自然災害特別研究「富士川水系の河床低下と 橋脚・橋梁の安全性に関する研究」の援助を得た。