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spamメールの現状と対策の動向:2. 技術的側面から見たspamメール対策  2.4 バウンスメール対策

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Academic year: 2021

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(1)2. 技術的側面から見た spam メール対策. 4 バウンスメール対策 岡山大学総合情報基盤センター . 山井 成良 [email protected] . ルは実際の spam メール発信者とは無関係のアドレスに. ■ バウンスメールによる被害  本来の SMTP の仕様. 1). 送り返されることになる.特に,同一ドメインの発信者 アドレスを付した spam メールが大量に発信された場合,. では,たとえば宛先不明など. バウンスメールはその詐称発信者ドメインの MTA(以. 再送信しても回復できない理由により中継先 MTA から. 下,被害 MTA)に集中して送られることになる.これ. 受信を拒否された場合には,受信できない理由ととも. により,被害 MTA が過負荷になったり詐称発信者アド. にメッセージを発信者に送り返すことになっている.バ. レス(以下,被害アドレス)が実在する場合にはディス. ウンスメール(bounce mail)とは,このような理由. クが溢れたりするなど,大きな被害が生じる.. により送り返されたメッセージを指す.また最近では,.  たとえば,平成 14 年 11 月に国内のプロバイダで発. spam メール対策の一環として,spam と疑われるメッ. 生した事例では,30 万通以上のバウンスメールが被害. セージに対して受取りを拒否したり,発信者に再送を. MTA に送られ,負荷の集中により最大 15 時間の配送遅. 促すメッセージを送り返したり( 「2.3 フィルタリング」. 延が生じ,また復旧までに約 2 日半を要したという被. の「自動確認付きホワイトリスト」 (p.760)参照)す. 害が発生している.また,国外でも平成 15 年 10 月に. る方法もよく用いられている.このようなものもバウン. 少なくとも米国の 2 つのドメインがそれぞれ 10 万通以. スメールの一種といえる.. 上のエラーメール集中による被害を受けている.この.  ところで,spam メールの宛先アドレスには,「1.2. ように,バウンスメールの集中は事実上 MTA に対する. spam メールの現状」(pp.747-751)で述べられている. サービス不能(DoS)攻撃といってもよく,普段から膨. ように使われそうなアドレスを手当たり次第作成したも. 大な数のメッセージを扱っている大規模なドメイン以外. のや,アドレス収集業者が Web のサーチエンジンと同. では大きな問題となる.特に,特定の個人やドメインを. 様の仕組みを用いて自動収集したものがよく用いられて. 標的にした,バウンスメールによる故意のサービス不能. いる.これらのアドレスには,以前は有効であったが. 攻撃は "Joe job" と呼ばれている.. 現在は無効になっているものや,電子メールやネット ニュースのメッセージ ID のように形式だけは電子メー ルアドレスに準拠しているが実際には無効であるもの. ■ バウンスメールの配送経路. などが大量に含まれており,実際に多くの spam メール.  バウンスメールによる被害への対策手法を紹介する. が宛先不明で発信者に送り返されている.これに spam. 前に,まずバウンスメールの配送経路について考える.. メール対策により送り返されるものを含めると,バウン. spam メールおよびこれに起因するバウンスメールの典. スメールの数はさらに多くなる.. 型的な配送経路を図 -1 に示す..  ところが,現時点における電子メールシステムの大多.  最近では,たとえばコンピュータウイルスの検出・駆. 数は発信者アドレスおよび他の MTA/MUA の認証を行っ. 除など管理上の理由によりメールゲートウェイを導入し. ていないため,発信者アドレスの詐称が容易であり,事. ているドメインが多数見受けられる.この場合,spam. 実上ほとんどの spam メールは発信者アドレスの詐称が. メールは spam 発信者の支配下にある MTA(spam 配送. 行われた状態で発信されている.このためバウンスメー. MTA)からまずメールゲートウェイに送られる.この. 762. 46 巻 7 号 情報処理 2005 年 7 月.

(2) 2. 技術的側面から見た spam メール対策 4. バウンスメール対策. spam 発信者. (1)spamメール. spam配送 MTA. (2)spamメール. 被害MTA. ール スメ ン バウ (5) (3)spamメール. メール ゲートウェイ. 宛先MTA (4) User unknown. 宛先ドメイン. 図 -1 バウンスメールの典型的な配送経路. 時点では,メールゲートウェイは宛先アドレスが実在す. ついては本特集の別稿で述べられているため,本稿では. るかどうかなどの検証は行わず,@ 以降のドメイン名. 触れない.. が自組織のものであれば送られてきた spam メールを受 理する.次に,メールゲートウェイは受け取った spam メールを宛先アドレスに対応する MTA(宛先 MTA)に 中継しようとするが,宛先 MTA はこのメールを受信す. 【宛先不明メールのメールゲートウェイでの受信 拒否】  まず,メールゲートウェイ側でバウンスメールを抑制. べきかどうかを検証し,たとえば宛先アドレスが実在し. する対策から紹介する.. ない場合には User unknown エラーを返すなど,受信を.  従来の場合,図 -2(a)に示すようにメールゲート. 拒否する場合にはその旨を応答する.その結果,メール. ウェイでは送信 MTA との間の SMTP セッションを完全. ゲートウェイは配送不能であることを通知するバウンス. に終了させてから宛先 MTA への中継を行っている.し. メールを作成し,詐称された発信者アドレス宛てに発信. たがって,発信者へのエラー発生の報告義務はメッセー. する.. ジ本文を受け付けた時点で送信 MTA からメールゲート.  このほかの配送経路としては,spam 配送 MTA から. ウェイに移管される.したがって,その後の宛先 MTA. 被害 MTA への直接配送があるが,最近では spam 配送. とのセッションで受取りが拒否されると,メールゲート. MTA としてゾンビ PC 上に仕掛けられている専用プロ. ウェイはバウンスメールを発信せざるを得ない.. グラムが用いられる場合が多く,その場合にはエラー処.  そこで,アプライアンス製品などでは,図 -2(b)に. 理が行われないのが通常であるため,バウンスメールの. 示すように,まず宛先 MTA に対して宛先アドレスが存. 配送経路としてはあまり問題とはならない.. 在するかを確認し,存在しない場合にはメールゲート ウェイが受信を拒否する方法がよく用いられている.こ. ■ バウンスメール集中への対策. の機能は本来は宛先不明メールに対するウイルス検出・.  前章で述べたように,多くのバウンスメールは spam. これによりエラー報告義務は送信 MTA 側にとどまるこ. メールの発信にはまったく無関係なドメインのメール. とになるため,バウンスメールの発生まで抑制するこ. ゲートウェイから送られることが多い.これらのゲート. とができる.受信を拒否された送信 MTA が spam 配送. ウェイからは同時に通常のメールも送られる可能性があ. MTA の場合にはこのエラーは無視されるが,そうでな. るため,バウンスメール集中の対策では通常メールの配. い場合には送信 MTA がバウンスメールを発信者に配送. 送に影響を及ぼさないように配慮する必要もある.した. するため,通常の宛先不明メールに対して配送不能通知. がって,ブロッキングなどの単純な手法ではうまくいか. が発信者に届けられる機能は損なわれない.. ないことが多い..  同様の方法として,大分大学では学内の利用者情報を.  バウンスメール集中の根本的な原因は,発信者認証が. 一元管理し,メールゲートウェイにおいてこの利用者情. 現在のところそれほど普及していない点にあるが,それ. 報を参照して宛先不明であるかどうかを判定する方法を. 以外にもいくつかの対策手法が知られている.以下では,. 採用している. 駆除などの無駄な処理を抑制するためのものであるが,. 2). .. そのうち代表的なものを紹介する.なお,発信者認証に IPSJ Magazine Vol.46 No.7 July 2005. 763.

(3) 特集. spam メールの現状と対策の動向. メール ゲートウェイ. 送信 MTA. 宛先MTA. SMTP セッション開始. 送信 MTA. メール ゲートウェイ. SMTP セッション開始 MAIL FROM. MAIL FROM 250 OK RCPT TO. 250 OK RCPT TO. SMTP セッション開始. 250 OK DATA. put 354 Start In 本文. MAIL FROM. エラー報告 義務発生. 250 OK RCPT TO. 250 OK. SMTP セッション終了 SMTP セッション開始. ウイルス 検出・駆除. バウンスメール 発信. 宛先MTA. MAIL FROM 250 OK RCPT TO. known 550 User un. known 550 User un. known 550 User un RSET. SMTP セッション終了. バウンスメール 発信. 次の判定のため セッションを再利用. SMTP セッション終了. (a) 従来の動作. (b) バウンスメール抑制動作 図 -2 メールゲートウェイにおける動作. には影響を与えない点に注意する.. 【バウンスメールの検証】.  たとえば,BATV の枠組みを用いた共有鍵認証方式で 3).  次に,バウンスメールを受信する被害 MTA での対策. ある PRVS(Simple Private Signature) では,図 -3 に. について紹介する.. 示すようにドメイン example.jp の発信用 MTA はエン.  被害アドレスとして実在のものが用いられた場合,被. ベロープ From アドレスのローカルパート(@ より左. 害 MTA では多数のバウンスメールが到着するだけでな. 側の部分)に検証用の情報 KDDDSSSSSS を付加して外. く,通常はこれらを被害アドレスのメールボックスに保. 部 MTA に発信する.もし,宛先アドレスに誤りがあり,. 存する.その結果,メールボックスに不要なバウンス. 外部 MTA からバウンスメールが送られてきた場合には,. メールが大量に保存され,ディスクが満杯になったり,. 受信用 MTA(送信用 MTA と同一のものでもよい)は宛. メールボックスの容量に制限を設けているサーバでは他. 先アドレスに KDDDSSSSSS の部分が存在するかどうか,. のメッセージを受け取れなかったりするなどの問題が生. 存在する場合にはそれが正しいかどうかを検証する.そ. じる.. の結果,検証に失敗すればそのバウンスメールを破棄す.  この問題を解決する方法として,バウンスメールが. るか受信を拒否する.なお,バウンスメール以外のメッ. 正規の利用者が発信したメッセージに対するものかどう. セージ(エンベロープ From アドレスが空でないメッ. かを検証する方法がある.その代表的な枠組みが BATV. セージ)に対しては,特別な処理は行われない.. 3). (Bounce Address Tag Validation) である.BATV では.  この枠組みの特徴としては,発信者認証とは異なり,. SMTP セッション中で MAIL FROM コマンドの引数とし. 自ドメインの MTA に導入するだけで十分な効果を発. て用いられるアドレス(エンベロープ From)を利用し. 揮する点が挙げられる.ただし,正しいエンベロープ. て検証を行う.この方法では本文中のヘッダに含まれる. From が spam 発信者に知られた場合,このアドレスを. 発信者アドレスは書き換えないため,受信者による返信. 発信者アドレスに流用して spam メールを発信されると. 764. 46 巻 7 号 情報処理 2005 年 7 月.

(4) 2. 技術的側面から見た spam メール対策 4. バウンスメール対策. MUA. MAIL FROM: <[email protected] > RCPT TO: <[email protected]>. 発信用MTA. MAIL FROM: <prvs=user/[email protected] > RCPT TO: <[email protected]>. 鍵K. エンベロープ Fromを書き換え. 外部MTA. 共有鍵表. エンベロープ Toを検証. ドメイン example.com. 鍵K. 受信用MTA. ドメイン example.jp. MAIL FROM: <> RCPT TO: <prvs=user/[email protected] >. K: 鍵番号 DDD: 日付( 1970年1月 1日からの経過日数)の下 3桁 SSSSSS: 4つ組( K ,DDD,発信者アドレス,鍵)のハッシュ値. 図 -3 PRVS における MTA の動作. Joe job 攻撃を受ける可能性は残されている.. 【ネームサーバを利用した被害 MTA の負荷分散】. から送られる点に着目し,バウンスメールと通常メール を異なる MTA で分離して処理を行う.  具体的には,図 -4 に示すように被害ドメインでは.  バウンスメールが特定の被害 MTA に集中して送られ. 2 種類の MTA(MTA1 と MTA2)を用意し,あらかじ. ると,その宛先が実在するかどうかにかかわらず,被害. め MTA1 の優先度が高くなるように DNS において MX. MTA が過負荷になったり通常のメールに配送遅延が生. レコードを設定しておく.また,MX レコードに対する. じたりする危険性がある.しかし,前節で述べたバウン. キャッシュの有効期限(TTL)を長め(たとえば 7 日). スメールの検証は,メールボックスの保護が目的であり,. に設定しておく.この状態では,普段から電子メール. 被害 MTA の過負荷には無力である.そこで,被害 MTA. をやり取りしている組織では,組織内の DNS サーバに. を過負荷から保護するためには,負荷分散が必要となる.. MX レコードがキャッシュされることになる.ここで被.  MTA の負荷分散手法としては,MTA の多重化が一般. 害ドメインにおいてバウンスメール集中の兆候を検出す. 的によく用いられている.普段から膨大な数のメールを. ると,被害ドメインの MX レコードのうち,優先度の. やり取りしている大規模なプロバイダでは,数十台以上. 高い方を削除する.その結果,普段は電子メールのや. の MTA を設置して負荷分散を行いながらサービスを提. り取りがない組織からは,配送先の問合せが被害ドメイ. 供している.しかし,中小規模の組織ではこのような大. ンの DNS サーバまで達するため,新たな電子メールが. 規模な多重化を行っていないため,短時間に数十万通も. MTA2 に送られる.一方,普段から電子メールのやり取. のバウンスメールが到着する状況では通常メールの配送. りがある組織からは,当該組織の DNS サーバにキャッ. 遅延が生じるのは避けられない.実際,冒頭で紹介した. シュされている MX レコードに従い,新たな電子メー. 国内プロバイダの例では,4 台の MTA を導入していた. ルは MTA1 に送られる.これらの動作の結果,普段か. にもかかわらず,通常メールの配送に大きな遅延が生じ. ら電子メールのやり取りがあるかどうかの違いにより配. ている.. 送先の MTA を分離でき,通常メールの配送遅延を小さ.  この問題に対する対策としては,DNS を利用した負 荷分散手法. 4). くすることが可能になる.. が提案されている.この方法では,中小.  この方法の特徴としては,前節の BATV と同様に,自. 規模の組織ではバウンスメールの大部分が普段は電子. ドメインの MTA に導入するだけで十分な効果を発揮す. メールをやり取りしていない組織のメールゲートウェイ. る点が挙げられる.また,たとえば MTA2 を被害ドメ IPSJ Magazine Vol.46 No.7 July 2005. 765.

(5) 特集. spam メールの現状と対策の動向. 普段からメールのやりとりのある組織. 被害ドメイン. MTA. (3) 配送. (2) MTA1. (1) 配送先(MX)?. DNS サーバ. MTA1. キャッシュ: MX 1 MTA1 MX 2 MTA2. MTA2 (5) 配送. DNS サーバ. MTA. (2) 配送先(MX)?. MX 1 MTA1 (攻撃検出後削除) MX 2 MTA2. (1) 配送先(MX)? (3) MTA2. (4) MTA2. DNS サーバ 普段はメールのやりとりがない組織. 図 -4 DNS を用いた MTA の負荷分散. インの外部に設置することにより,バウンスメールによ. もバウンスメール対策の継続した開発および展開が望ま. る輻輳を軽減することも可能である.一方,この方法の. れる.. 欠点として,普段から電子メールのやり取りがある組織 でもキャッシュの有効期限切れや定期的なキャッシュ無 効化により新たな電子メールを MTA2 に送ってしまう 危険性がある点が挙げられる.この問題に対しては,問 合せ元の DNS サーバに応じて異なる MX レコードを返 す方法. 5). が提案されているが,今後の検証が待たれる. ところである.. ■ 今後の動向  バウンスメールによる被害は,発信者アドレスを特定 のドメインのものに固定して発信する spam メールが最 近ではあまり見受けられないためか,それほど重要視さ れていない.また,バウンスメール集中への対策手法の 開発も,実際に被害に遭わなければ検証が困難であるこ ともあり,他の問題点への対策と比べると進んでいない.  しかし,たとえばサイバーテロに用いられる潜在的な 危険性は無視できず,実際に平成 17 年 1 月には靖国神 社のメールサーバが以前から継続的に Joe job 攻撃を受 けているとの報道があった.このような現状から,今後. 766. 46 巻 7 号 情報処理 2005 年 7 月. 参考文献 1)Klensin, J. (ed.): Simple Mail Transfer Protocol, RFC2821, IETF (2001). 2)吉田和幸,矢田哲二,原山博文,伊藤哲郎 : spam メール対策と統 合メール管理システムについて,情報処理学会論文誌,Vol.46, No.4, pp.1035-1040 (Apr. 2005). 3)Levine, J., Crocker, D., Silberman, S. and Finch, T.: Bounce Address Tag Validation (BATV), http://mipassoc.org/batv/draft-levine-mass-batv-00.txt, 2004. 4)山井成良,繁田展史,岡山聖彦,宮下卓也,丸山 伸,中村素典 : 発 信者詐称 spam メールに起因するエラーメール集中への対策手法,第 3 回情報科学技術フォーラム情報技術レターズ,pp.313-316 (2004). 5) 丸 山  伸, 中 村 素 典, 岡 部 寿 男, 山 井 成 良 : 動 的 に 応 答 が 変 化 するネームサーバ技術のメール配送エージェントへの応用,情報 処理学会分散システム/インターネット運用技術研究会研究報告, 2004-DSM-32-14,pp.79-84 (2004). (平成 17 年 6 月 15 日受付).

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