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ベトナム ドレモンとスアンマイ -- 人々に愛され続ける子供向けエンターテイメント (特集 途上国のエンターテイメント事情)

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ベトナム ドレモンとスアンマイ -- 人々に愛され

続ける子供向けエンターテイメント (特集 途上国

のエンターテイメント事情)

著者

荒神 衣美

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

203

ページ

12-13

発行年

2012-08

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003899

(2)

●多様化する子供向け

エンターテイメント

  ベトナムの子供たちは、経済発 展にともなって、多様なエンター テイメントを楽しめるようになっ た。エンターテイメントの種類に は、遊園地など施設をともなうも のから、音楽鑑賞や読書など自宅 で気軽に楽しめるものまでさまざ まあるが、各々の質・内容が、こ こ数年でずいぶんと多様化してき ているように思う。   南部ホーチミン市における遊園 地事情については、本誌七月号の フォトエッセイに少し書かせてい ただいた。これまで、ホーチミン の子供にとって代表的な行楽施設 といえば、スイティエン、ダムセ ン公園、ダイナム・テーマパーク など、アトラクションてんこ盛り で、郊外に位置する広大な施設内 には奇抜で大掛かりなデコレー ション、という特徴を備えた場所 であった。一方、最近では、こう した伝統的ともいえるスタイルの 遊園地に加えて、就業体験型テー マパークやデパートに併設する ゲームセンターなど、街の中心部 およびそこから比較的近い場所で コンパクトに遊べるタイプのエン ターテイメント施設も出てきてい る。   こうした後楽施設は、多くの子 供たちにとっては、まだあくまで ﹁おでかけ﹂の場であり 、普通の 週末にちょくちょく訪れることの できる場所ではない。勉強をがん ばったご褒美に夏休みなどを利用 して親に連れて行ってもらう、と いうような場所である。   日々の生活に組み込まれた子供 向けエンターテイメントとして は、 音楽を聴く、 テレビを見る、 ︵漫 画︶本を読むなどが一般的と考え られる。これらは子供だけでなく 大人にも広く普及しているエン ターテイメントであり、ベトナム の街中を歩けば、木陰でバイクの 上に寝そべって新聞雑誌を読む男 性、道端で携帯電話にダウンロー ドした音楽を聞きながら声高らか に歌う若者、自宅やカフェで大音 量のテレビを楽しむ人など、エン ターテイメントに興じる人々の日 常が窺える。   子供・若者向けの歌やアニメに ついては、インターネットの普及 もあり、世界各国からさまざまな 類のものが入ってきており、想像 するに、流 行廃 りも激しくなって いる。このところの人気は、やは り韓流で、街中で耳に入る歌謡曲 のかなりの割合が韓国のものであ る。また、ゲームセンターなどに 行けば、ダンシングマシーンに陣 取って人気韓国人グループの流行 歌の振り付けをほぼ完璧に踊りこ む若者を見ることもできる。テレ ビの子供番組でも、 朝の七時半頃、 また夕方の六∼七時頃、つまり子 供のゴールデンタイムに、韓国か ら輸入された番組をしばしば見か ける。   そうしたなか 、韓流の広まる ずっと前に子供時代を経た大人か ら現役の子供にまで、広く愛され 続けている子供向けエンターテイ メントがある。それが ﹁ドレモン﹂ と﹁スアンマイ﹂である。

●ドレモン

  ﹁ドレモン﹂とは 、いわずと知 れた ﹁ドラえもん﹂ のことである。 ベトナム風にいうと ﹁ ドレモン ︵ ̶Dôrêmon ︶﹂となる 。ドレモン がベトナムに入ってきたのは、一 九九〇年代のことである。漫画本 とテレビのアニメ放送を通じて 、 ドレモンは急速にベトナムの子供 達の間に普及していった。ホーチ ミンのような都会はおろか、農村 まで行っても、比較的裕福な家の 子供ならドレモンの漫画本をシ リーズで持っていたりする。ドレ モンがベトナムに上陸した一九九 〇年代に幼少期を過ごした現役二 〇代の若者のなかには、ドレモン

ベト

ナム

ドレ

人々

され

る子

イメ

特 集

途上国の エンターテイメント 事情

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アジ研ワールド・トレンド No.203 (2012. 8)

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を原語で読むために日本語の勉強 を始め た と い う 学 生 も 少なくな い 。   登場人物たちの名前は、ベトナ ム人が呼びやすいようにするため か、ドレモンをはじめ、本来のも のから少しかえられている。しず かちゃんは ﹁スーカー ︵ X uka ︶ ﹂ 、 ジ ャ イ ア ン は﹁ チ ャ イ エ ン ︵ Chaien ︶ ﹂ 、 ス ネ 夫 は﹁ セ コ ︵ X êkô ︶﹂といった具合である。   インターネット上には、ベトナ ム語によるドレモン専門ページも あり、ベトナム語でドレモンの概 要、のび太の身体情報から各友達 との関係まで、さまざまな情報を 得 る こ と が で き る 。 ま た 、 Y ou T ube などを使えば 、ベトナム語 版のアニメ DVDがまだ普及して いないようなプログラムを先取り して楽しむこともできるようだ。

●スアンマイ

  ﹁スアンマイ﹂とは、 一九九〇年 代後半を中心に活動したホーチミ ン市出身のベトナム人子供歌手の 名前である 。一般には 、﹁ベー ・ スアンマイ﹂ ︵ Bé X uân Mai ス アンマイちゃん︶と呼ばれること が多い。一九九五年生まれのスア ンマイは、二歳のときに歌手とし ての活動を開始し、六歳︵二〇〇 一年︶になるまでに 、﹃ 小さな鷺 ︵ Con cò bé bé ︶﹄という名のつ く数々の童謡DVDを世に送り出 した。小さいながら整った顔立ち で上手に踊り歌うその愛らしい姿 は、子供達だけでなく保護者層に も受け、ベトナム全土で知らない 人はいないという存在になった。   スアンマイは、父が歌手、母が ギター奏者という音楽一家の出で ある。母方の家族がアメリカ国籍 を持っていたこともあり、スアン マイは九歳のときに母親とともに アメリカに移住している。 その後、 二〇〇九年以降、スアンマイはベ トナムに戻ってきて歌手活動をす る機会も持っているようだが、一 般的には、スアンマイはアメリカ に行ってしまったと捉えられてお り 、 彼女の姿は幼い頃のままで 人々の記憶に留まっている。スア ンマイ自身が一七歳になった今で も、彼女が幼少期に発表したDV Dがいたるところで販売されてお り、小さな子のいる家には必ずと いっていいほど﹁スアンマイ﹂が ある。

●長く愛される理由

  ドレモンはベトナムに上陸して 以降、 日本でのそれと同じように、 多くの子供達を魅了し続けてい る。ドレモンが古今東西を問わな い魅力を持っていることはここで 改めて主張するまでもないだろ う。ドレモンは、ただ夢を与える だけではなく、人間味あふれるス トーリーのなかに普遍的な価値観 や教訓がうまく描き出されている がゆえ、ベトナムにおいても長く 愛されているのだと考えられる。   スアンマイについても、同じこ とが言えると思う。スアンマイに 歌われる童謡のいくつかについ て、歌詞内容を見てみたい。スア ンマイの代表曲 ﹃ 小さな鷺 ︵

Con

cò bé bé

︶﹄では、子供が母親を慕 う気持ちと、母親の子供に対する 強い愛情が表現されている。 また、 人気曲のひとつである﹃家族みん な お 互 い が 好 き ︵

Cả

nh

à thươn

g

nh

au

︶﹄ では 、父さんにも母さん にも似ている僕に対する両親の愛 情、そして家族間の絆の強さがう たわれている。家族の絆を大切に する思い 。これはベトナム人が 、 時代が変わっても守っていきたい と考えている価値観に他ならな い。こうした価値観を無邪気に歌 い上げるスアンマイが、人々に愛 され続けることに何ら不思議はな いだろう。   経済発展が進む一方で、次第に 社会的なひずみも大きくなりつつ あるベトナム。農村部にはまだま だ素朴さも残っているとはいえ 、 都会では子供達がインターネット 等を通じていくらでも危うい情報 にアクセスできるという状況が 徐々に深刻度を増しており、日本 の親同様、ベトナムの親もどこま でそうした状況から子供を守るこ とができるか、 頭を悩ませている。 そうした社会変化のなかで、ドレ モンとスアンマイは、エンターテ イメントという形を通じて、子供 達に普遍的な価値観を伝え続ける 役割を担 っ て い る の か も し れ な い 。 ︵こうじん   えみ/アジア経済研究 所  東南アジアⅡ 研 究グループ︶ 本屋でドラえもんに読みふける子供たち(撮影:木村友紀)

ベトナム ドレモンとスアンマイ

― 人々に愛され続ける子供向けエンターテイメント ―

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アジ研ワールド・トレンド No.203 (2012. 8)

参照

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