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特集にあたって -- 資源外交研究の射程 (特集 世界の資源外交)

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特集にあたって -- 資源外交研究の射程 (特集 世

界の資源外交)

著者

池内 恵

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

211

ページ

2-3

発行年

2013-04

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003722

(2)

一.

﹁日本固有﹂の概念?

  ﹁資源外交﹂ は 日本独自 の概念 とい っていい 。この 語 を 直 訳 し て ﹁ resource d iplomacy ﹂とし た と ころで 、 諸 外 国でどれ だけ理 解 さ れるだろうか 。英語で resource diplomacy が全く使われないわけ ではないが 、 日 本 語で用いられる ほど の頻度ではない 。 もちろん こ の概念 に 関わる様々 な政治的 ・ 政 策的 ・ 経 済的な活動は各国 に存在 する が 、 それらを ﹁資源外交﹂ と 括 っ て議論がなされる こ とは必ず しも 一 般 的ではない の である。   日本でいう﹁資源外交﹂は、広 い 意 味 で の ﹁ エ ネ ル ギ ー 政 策 ︵ energ y policy ︶﹂ に重なるとこ ろが多いだろう。エネルギー政策 の 根 幹 に は ﹁ エ ネ ル ギ ー 戦 略 ︵ energ y strateg y ︶﹂があり 、国 際 的 に ﹁ エ ネ ル ギ ー 外 交 政 策 ︵ foreign policy of energ y ︶ ﹂ を 推進していくことになる。それに よ っ て ﹁ エ ネ ル ギ ー 安 全 保 障 ︵ energ y security ︶﹂を確保しよ うとする 。日本では ﹁資源外交﹂ という言葉に、これらの様々な角 度からの政策的意図が重なって読 み込まれていく。   それだけではない。上記の分野 は主に政府による政策に関わるも のだが、日本語の﹁資源外交﹂は より広い 、﹁資源をめぐる国際政 治 ・ 外交﹂という意味で用いられ、 民間企業が主体となる日本の海外 進出にもついてもしばしばその範 疇に入る。英語圏でもよく用いら れ る﹁ 資 源 の 政 治︵ resource politics ︶﹂ が 、一方で民間 ・多国 籍のエネルギー企業を、他方で各 国政府の規制や国営石油企業を含 む意味範囲をもって用いられるの と同様に、日本の﹁資源外交﹂と いう概念も、政府間の外交の主体 によって行われる外交よりも広い 範囲を含んだ形で用いられること が多い。   ﹁資源外交﹂が曖昧であるから といって、普遍性のない概念とし て退けてしまっていいのだろう か。あるいは﹁エネルギー安全保 障﹂ ﹁エネルギー外交政策﹂ といっ た個別の政策課題をもっぱら論 じ、 それらが総体としては単に ﹁資 源の政治﹂であると割り切ってし まえばいいのだろうか。あるいは 外務省が行う資源をめぐる ﹁外交﹂ に限定して、それが狭義の最も確 実な﹁資源外交﹂であると規定す ればすむのだろうか。   確かに 、﹁資源外交﹂という概 念を用いることでこれらの複数の 分野や政策課題が混同されてはな らない。しかし同時に、日本の戦 後において﹁資源外交﹂という概 念が定着し、幅広く用いられてき たことの意味は忘れ去られてはな らないだろう。   欧米先進国で必ずしも用いられ ない ﹁資源外交﹂という概念が 、 日本の戦後の経済発展の過程では 用いられざるを得なかったと考え れば、その背景にはなんらかの理 由があるはずだ。そして、そのよ うな視点から日本の資源外交を見 直せば、次には、日本に続き、日 本を追い越す勢いで経済発展を達 成しようとしている開発途上国の 現在と将来を見通す際にも、何ら かの有用な視角を提供してくれる のではないか。

二.特集の構成

  本特集は、日本の戦後史のなか に﹁資源外交﹂を位置づけなおす 歴史研究の成果・中間報告と、急 速に発展の過程にある新興国の参 入によって多様化し複雑になった 今現在の﹁資源外交﹂の研究の最 前線から記した論稿の両方を含ん でいる。   冒頭の平野克己﹁日中のアフリ カ政策│東アジアの資源安全保 障﹂では、欧州を中心に警戒や批 判されることも多い、中国の対ア フリカ資源外交を扱っている。中 国とアフリカの過去二〇年間の経 済発展が資源を媒介に交差し、加 熱し、 時に火花を散らす様を描く。 そしてこれを日本と比較するのだ が、日本の対アフリカの資源外交 は緊張を高める対中関係と連動し て意味を増す。さらに、対アフリ カ資源外交の場での韓国との協調 の可能性も示唆している。かつて のような二国間関係には留まら ず、アフリカをめぐって日中韓の 多元的な資源外交の空間が成立し

世界の資源外交

特 集

特集

資源外交

研究

2

アジ研ワールド・トレンド No.211 (2013. 4)

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ているともいえる。   工藤年博・渡邊真理子﹁ミャン マーの資源外交と中国﹂が示すよ うに、欧米諸国から経済制裁を受 けてきたミャンマーでの中国の資 源外交は活発だったが、その資源 収奪的特性がミャンマーの政権に 親欧米化路線に踏み切らせる原因 となったとも指摘される。世界の 資源外交は近い将来の間、 常に ﹁中 国ファクター﹂を軸に動いていく だろう。   続く畔蒜泰助﹁転換期のロシア 天然ガス外交と 3・ 11後の日露エ ネルギー協力の行方﹂では、ロシ アの天然ガスをめぐる資源エネル ギー外交の体制を、ガスプロム社 を中心に全体像を描く。そのうえ で、本年二月に浮上した国営石油 会社ロスネフチとエクソン・モー ビル社による極東地域でのLNG プラント建設計画がもたらしう る、近い将来の構図の変化を予期 し、日本の対ロシア資源外交の新 たな切り口を示唆する。こちらは ロシア内部の多元的なアクター間 の関係が浮上したことによって資 源外交の複雑さと可能性が増した ともいえよう。   鈴木一人﹁デザーテックをめぐ る欧州の資源外交﹂では、EUが 主体となり、中東・北アフリカ地 域に太陽熱・風力発電所のネット ワークを張り巡らせる ﹁デザー テック﹂計画を事例に、欧州共通 の資源外交の可能性と限界を明ら かにする。   山田真樹夫﹁湾岸産油国にとっ ての資源外交︱﹁レンティア﹂と ﹁脱/後期レンティア﹂の政治経 済分析試論﹂では、通常は資源輸 入国による資源外交の﹁対象﹂と される産油国・資源輸出国の視点 からの﹁資源外交﹂はありうるの かという斬新な視点を提示する。   特集の後半は日本の戦後史のな かに資源外交を位置づけ直す試み を複数紹介する。   宮城大蔵﹁戦後史のなかの資源 外交﹂は戦後史でしばしば用いら れる﹁資源外交﹂という概念その ものの使用に慎重に留保を付した うえで、戦後の対東南アジア外交 や対中東外交における資源外交の 意味と、現代的意義を探る。   続いて日本の対イラン資源外交 のケーススタディとして、一九七 〇年代初頭に設立され一九九〇年 代初頭まで存続した、三井物産と イラン国営石油化学︵IPC︶と の合弁によるイラン・ジャパン石 油化学︵IJPC︶に取り組んだ 三本の論稿を掲載する。 IJPC は元来がロレスタンの石油鉱区の 開発権と結びつけて発案された が、結局ロレスタンでは試掘に失 敗、大規模な石油化学事業だけが 日本に課されることになった。し かしこの事業は結果的に、それま での資源外交のように、資源その ものや開発権を獲得し、資源を日 本に導入するということにもっぱ ら心血を注ぐ段階から、資源産出 国に投資・進出し、技術供与と関 係強化のなかで資源の安定的供給 を確保するという、その後の資源 外交の手法の先駆となったともい える。   鈴木均﹁IJPCプロジェクト を再考する﹂では、 IJPC を手 掛かりに日本・イラン関係史を考 え直す作業と共に、IJPC を中 心に、イラン革命前後の日本・イ ラン関係の研究史を振り返り、今 後の研究課題と方向性を探る。   ケイワン ・アブドリ ﹁﹁テクノ クラート﹂が語る﹁開発独裁﹂下 のイラン石油化学産業の歴史﹂で は、資源外交を﹁受けて立つ﹂側 の認識が示された貴重な記録に基 づく論考である。アブドリ氏はす でに、イランのNPC会長を務め たバーゲル・モストーフィのオー ラル・ヒストリー記録﹁イランの 石油化学産業︱始まりから革命前 夜まで﹂のペルシア語から日本語 への全訳を終えているが、ここで はその記録からの抜粋により、革 命前のイラン側の資源政策の成り 立ちを明らかにし、IJPC をは じめとした日本との関係をイラン 側の視点から位置づける基礎資料 を示している。   小宮京﹁戦後財閥再編史とIJ PC﹂では、財閥解体の後の再統 合をめぐる経済人の間の ﹁ 政治﹂ のなかに、未曽有のIJPC とい う大事業に乗り出す契機を見出 す。こちらは日本の経済社会の側 の多元性が日本特有の ﹁資源外交﹂ に帰結する面に着目したアプロー チといえよう。   このように今現在の世界の資源 外交の研究の最先端から、歴史研 究やオーラル・ヒストリーに遡る 幅広い論文を収めた特集となった が、資源外交の厚みと多様性・多 元性を少しでも読者が感じ取れる ものとなっていれば幸いである。 ︵なお 、特集の後半部分は 、鈴木 均氏の論考で言及されているよう に、池内恵が研究代表者となって いる科学研究費補助金の研究プロ ジェクト ﹁対中東資源外交の比較 ・ 国際政治史﹂ ︵平成二三∼二五年 度︶の成果の一部である︶ ︵いけうち   さとし/東京大学先端 科学技術センター准教授︶

特集にあたって

― 資源外交研究の射程 ―

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アジ研ワールド・トレンド No.211 (2013. 4)

参照

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